(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】355MPaグレードの海洋工学用低温耐性の熱間圧延されたH字型鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240507BHJP
C22C 38/16 20060101ALI20240507BHJP
C21D 8/00 20060101ALI20240507BHJP
C21C 5/28 20060101ALI20240507BHJP
C21C 7/00 20060101ALI20240507BHJP
B21B 1/088 20060101ALI20240507BHJP
B22D 11/00 20060101ALN20240507BHJP
【FI】
C22C38/00 301Z
C22C38/16
C21D8/00 B
C21C5/28 Z
C21C7/00 F
B21B1/088 Z
B22D11/00 A
(21)【出願番号】P 2022559703
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 CN2021096629
(87)【国際公開番号】W WO2022022040
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】202010758762.3
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520449079
【氏名又は名称】山東鋼鉄股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG IRON AND STEEL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ヂァオ,ペイリン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヂォンシュエ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ウェンシィー
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,チァオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ジャンジュン
(72)【発明者】
【氏名】シァン,グゥオミィン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,フイリアン
(72)【発明者】
【氏名】ニン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】マァー,チアン
(72)【発明者】
【氏名】ヂェン,リー
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ウェンジャン
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103540844(CN,A)
【文献】特開昭62-174324(JP,A)
【文献】特開昭59-096218(JP,A)
【文献】特開平03-100141(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0001490(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/00- 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
355MPaグレードの海洋工学用低温耐性の熱間圧延されたH字型鋼であって、
化学成分比率(wt%)は、重量パーセントで、C:0.040~0.070、Si:0.015~0.30、Mn:1.20~1.50、P≦0.015、S≦0.010、Nb:0.020~0.040、Ti:0.008~0.025、Ni:0.10~0.50、Al:0.015~0.050、B:0.0003~0.0008、As+Sn+Cu+Zn≦0.04であり、残りはFe及び不可避な不純物であり
、鋼におけるガスを重量パーセントでN≦0.0040、T.[O]≦0.0015
であり、-30℃での横方向の衝撃エネルギー≧51J、-60℃での縦方向の衝撃エネルギー≧110Jを満たす、
ことを特徴とするH字型鋼。
【請求項2】
請求項1に記載された355MPaグレードの海洋工学用低温耐性の熱間圧延されたH字型鋼の製造方法であって、
溶銑及び鋼屑を製錬、精錬及び連続鋳造して鋳造ビレットを製造し、そして、該鋳造ビレットを加熱及び均熱温度を1180~1250℃、加熱時間を120~180minに制御して加熱した後、炉から取り出して圧延するステップと、
粗圧延の圧延開始温度を1150℃以上に制御し、精密圧延前に温度
を下げる処理を行い、該精密圧延の圧延開始温度を980℃以下として再結晶制御圧延を行うステップと、
前記精密圧延の最終圧延温度を780℃~815℃に制御し、圧延部材を冷却床において冷却し、製品の温度を150℃以下に降下した後、矯正機に入れて矯正するステップと、を含む、
ことを特徴とするH字型鋼の製造方法。
【請求項3】
前記精密圧延の累計圧延率を12%以上とする、
ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記精密圧延は、速度制御圧延を用い、圧延速度を1.8~2.5m/sに減速して制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製錬技術、圧延成形技術分野に属し、具体的に、海洋工学用低温耐性の熱間圧延されたH字型鋼及びその製造方法に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本願は、2020年7月31日に出願した中国特許出願第202010758762.3号に基づく優先権を主張し、この中国特許出願の全ての内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
北極・南極等の極寒地域に専用のH字型鋼は、主に建物、船舶、橋梁、発電所設備、水利、エネルギー、化学工業、クレーン輸送機械及び荷重の比較的高い他の鋼構造部材に適用される。上記地域は環境温度が一年中-50℃以下であるので、特に鋼材の低温衝撃靭性等、鋼材への要件が極めて高くなる。従来の材質の熱間圧延されたH字型鋼は強度、低温耐性又は溶接の操作性の面でいずれも該地域の材料への使用要件を完全に満たすことができない。構造材料として使用されるH字型鋼は経済性に優れた材料であり、極寒地域での応用が次第に増加している。特殊用途製品として、各企業は、設備の特性に応じて低温耐性の鋼製品の開発及び製造を行っている。
【0004】
出願番号CN102021475Aの中国特許出願において、低温耐性の構造用の熱間圧延されたH字型鋼の製造方法を開示しており、その鋼の成分比率(wt%)は、C:0.12~0.22%、Si:0.10~0.4%、Mn:1.1~1.50%、P≦0.025%、S≦0.025%、Nb:0.02~0.05%、残りはFeと微量不純物である。この発明は、圧延工程において、圧延変形システムが大きな圧延量の分塊圧延を用いて大きな圧延率で最終圧延する必要があり、圧延力が高すぎるため、一部の仕様の生産を実現できず、実現した最後の2パスの累積圧延率(reduction rate)が30%~40%であり、精密圧延パスの変形量を60%~70%に制御し、圧延機の機能への要件が高い。
【0005】
出願番号CN103667910Aの中国特許出願において、優れた低温衝撃靱性を有する熱間圧延されたH字型鋼及びその製造方法を開示しており、その鋼の成分比率(wt%)は、C:0.05~0.18%、Si:0.15~0.40%、Mn:1.0~1.50%、V:0.010~0.050%、Nb:0.015~0.050%、Ti:0.005~0.025%、Al≦0.035%、P≦0.020%、S≦0.015%、残りはFeと不可避的な不純物である。この発明は、Nb、V、Ti等の様々なマイクロ合金化元素を用い、横方向の衝撃靱性が反映されず、炭素の含有量が高いため、溶接性能が低すぎる。炭素の含有量が比較的高いと異常組織が出現しやすいため、衝撃靱性が変動し、このため、その後のユーザの応用に一定の影響を与えてしまう。
【0006】
出願番号CN101255527Aの中国特許出願において、優れた低温衝撃靱性を有するホウ素が添加されたH字型鋼及びその製造方法を開示しており、この発明では、その鋼の成分比率(wt%)は、C:0.08~0.20%、Mn:1.00~1.60%、Si:0.10~0.55%、P≦0.025%、S≦0.025%、Nb:0.015~0.035%、B:0.0005~0.0012%であり、残りはFeと微量の不純物である。炭素の含有量が高すぎるため、溶接性能が低すぎて、製品の低温温度が縦方向において-40℃である。
【0007】
特許番号CN105018861Bの中国特許において、低コストの焼きならし圧延・熱間圧延されたH字型鋼及びその製造方法を開示しており、H字型鋼の化学成分は、重量パーセント(%)で、C:0.04~0.15、Si:0.15~0.50、Mn:0.95~1.65、P≦0.020、S≦0.015、Al≧0.02、Cu≦0.55、Cr≦0.30、Ni≦0.50、Mo≦0.10、B≦0.03、V:0.02~0.060、As+Sn+P+S≦0.04、残りはFe及び不可避な不純物である。この特許は、単一のVのマイクロ合金化を用い、衝撃靱性が比較的低く、亀裂感度指数が比較的高く、したがって、極寒的な環境における使用がある程度に制限されている。
【0008】
上記の従来技術において、簡単なマイクロ合金化は鋳造ビレットの表面品質の向上にとって不利になり、靱性の向上が大幅に制約されているとともに、炭素の含有量が高すぎることによる溶接欠陥を引き起こしやすく、圧延機の負荷が大きくなり、圧延部材の湾曲及び頭部の偏移、寸法が制御されにくく、装置への要件が高く、H字型鋼の総合性能及び最終製品の寸法合格率が比較的低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記課題を解決ために、本発明は、355MPaグレードの海洋工学用低温耐性の熱間圧延されたH字型鋼及びその製造方法を提供することが目的をとし、この鋼は極地の低温環境において海洋工学の分野の範囲内で使用される低温耐性の熱間圧延されたH字型鋼であり、製造プロセスが簡単且つ確実で、低温条件において衝撃靱性が優れ、比較的低い溶接亀裂感度を有し、溶接性能が優れた等の特徴を有し、南極・北極等の極寒地域の海上石油プラットフォームプロジェクト及び風力発電プロジェクト等の分野における熱間圧延されたH字型鋼材料の応用ニーズを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するために、本発明は以下の技術案を用いる。
【0011】
355MPaグレードの海洋工学用低温耐性の熱間圧延されたH字型鋼であって、前記H字型鋼の成分比率(wt%)は、C:0.040~0.070、Si:0.015~0.30、Mn:1.20~1.50、P≦0.015、S≦0.010、Nb:0.020~0.040、Ti:0.008~0.025、Ni:0.10~0.50、Al:0.015~0.050、B:0.0003~0.0008、As+Sn+Cu+Zn≦0.04であり、残りはFe及び不可避な不純物である。製錬工程において、鋼におけるガスを重量パーセントでN≦0.0040、T.[O]≦0.0015に制御する。
【0012】
前記H字型鋼は、炭素当量指標CEV=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15≦0.37であり、亀裂感度指数Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B≦0.20である。
【0013】
好ましくは、0.01≦As+Sn+Cu+Zn≦0.04である。
【0014】
本発明に係る355MPaグレードの熱間圧延されたH字型鋼における各化学元素の設計原理は、以下のとおりである。
【0015】
炭素:該H字型鋼の強度は355MPaグレードが求められるため、低炭素成分の設計は、低温耐性のH字型鋼における微細なパーライト組織の占有比率が合理的であることが確保され、多角形フェライトの比率を向上させ、強度が確保される上で靱性を大幅に向上させることに寄与する。一方で、低炭素の設計は、ウィッドマンステッテン(Widmanstatten)及び異形パーライト組織(variant pearlite structures)が生成することを回避することができるとともに、包晶領域以下に制御することにより亀裂及び偏析組織を制御することが容易であり、したがって、炭素の含有量が高すぎてはならず、0.05%~0.09%に制御する。
【0016】
シリコン:Siは、脱酸素元素であり、強度の向上に寄与するとともに、表面に大量のSi含有Fe2SiO4を形成することにより表面品質に影響することを回避するために、Siの含有量の上限を0.30%以下、好ましくは0.25%以下、より好ましくは0.20%以下として設定する。
【0017】
マンガン:Mnは、オーステナイト構造を安定させ、鋼の焼入れ性を高めるとともに、固溶強化の形式で鋼の強度を向上させることができるが、高めすぎると異常組織が生成しやすくなってしまう。強度及び亀裂感度を確保するために、Mnの含有量を好ましくは1.20%以上、より好ましくは1.30%以上として設定する。Mn元素は鋼において比較的高い偏析傾向を有し、過剰的に添加すると靱性、可塑性等の力学的な性質指標を損なってしまう。したがって、総合的に考慮すると、このH字型鋼におけるMnの含有量を1.20~1.50%範囲内に制御する。
【0018】
リン:リン元素が多すぎると、粒界を脆化しやすく、したがって、リンを低く制御すればするほど効果が高くなり、低温靱性を向上させ、Pを0.015%以下に制御する。
【0019】
硫黄:硫黄元素が多すぎると、より多くのMnS等の硫化物が生成しやすく、型鋼が複雑に変形し、最終的に異なる形態の硫化物の介在物を得て、低温靱性を低下させるため、したがって、S≦0.01%である。
【0020】
As、Sn、Cu、Zn:鋼における残留元素として低温衝撃靱性に大きく影響するとともに、表面品質にも大きく影響する。したがって、As、Sn、Cu、Znは鋼における完全に除去できない元素として、その含有量をできる限り減少させるべきである。生産実践、装置能力及びコスト制御を組み合わせて、残留元素の下限値を特に限定せずに、4種類の主な残留元素の総量をAs+Sn+Cu+Zn≦0.04%範囲内に制御する。
【0021】
アルミニウム:Alは、低温鋼の製造工程において強脱酸素元素として添加使用される。鋼における酸素の含有量を可能な限り低く確保するために、介在物の含有量を減少させ、且つ脱酸素後の過剰なアルミニウムも鋼における窒素元素と更にAlN析出物を形成することができ、鋼の強度を向上させることができ、且つ熱処理における加熱工程において、オーステナイト結晶粒を微細化することができる。したがって、脱酸素元素及び結晶粒微細化強化元素として、本発明において、アルミニウムの含有量を0.015~0.050%以内に制御する。
【0022】
チタン:チタンは、強力な炭窒化物形成元素であり、マイクロTi処理を行った鋼にTiを添加することは鋼におけるNを固定することに寄与し、形成されたTiNは鋼ビレットを加熱する際にオーステナイト結晶粒が成長しすぎないようにすることができ、それにより元のオーステナイト結晶粒を微細化する役割を果たす。TiNは一般的に高温で形成され、マイクロチタン処理された鋼において、Tiは一般的にTiN形式で存在して役割を果たす。同時に、Tiを含有する析出物は溶接時に更に熱影響領域の結晶粒の成長を阻止することができ、最終製品の鋼板の溶接性能を改善する役割を果たすこともできる。したがって、本発明において、Tiの添加量を0.008~0.025%以下に制御することが選択される。
【0023】
ニオブ:Nbは、オーステナイトの非再結晶温度を大幅に上昇させ、圧延の制御と協力して結晶粒を微細化する役割を果たす。鋼材の強度を改善し、鋼の靱性を著しく向上させることができ、特に低温靱性の効果が明らかであり、ごく微量のNbは、マトリックス構造の粒子を著しく微細化し、強度を向上させることができる。本発明において、Nbの含有量を0.02~0.040%に制御する。
【0024】
ニッケル:Niは、固溶強化により鋼材の強度を向上させ、低温靱性を向上させる極めて有効な元素でもあるとともに、鋼の連続鋳造工程における高温塑性を向上させ、欠陥の発生を減少させることができる。Niは、オーステナイト領域を拡大して、焼入れ性を向上させる役割を果たす一方で、パーライトの薄層を微細化することでパーライトを微細化し、結晶粒微細化強化の役割を果たすことができる。同時に、適量のニッケルは、耐食性にも一定の役割も果たし、鋼材の寿命を延ばす。したがって、該鋼において、Niの含有量を0.10~0.50%範囲内に制御する。
【0025】
ホウ素:B元素は、鋼において焼入れ性を著しく向上させ、鋼の高温強度を向上させ、更に力学的性質、冷間変形性、溶接性能及び高温性能等を改善することができる。B元素を添加した後に形成した針状フェライトは、亀裂拡大を効果的に阻止することができ、それにより組織の靱性を向上させる。同時に、Bを含有する析出相はリン、硫黄の粒界での偏在及びそれによる粒界亀裂を低減することができ、低温靱性を向上させることもできる。B元素を過剰に添加するとBが粒界に過剰に析出して網状のBを含有する相を生成するようにし、これは逆に粒界強度に影響し、衝撃靱性を低下させる。総合的に考慮すると、Bを0.0003~0.0008%として添加する。
【0026】
窒素:Nの含有量が高すぎると、鋳造ビレットの品質欠陥を引き起こしやすくため、本発明においては、窒素の含有量が0.0040%以下であるように求められる。
【0027】
酸素:大きな粒子の酸化物介在物を形成して鋼の靱性及び可塑性を悪化させることを回避するために、本発明においては、全酸素の含有量がT.[O]≦0.0015%であるように求められる。
【0028】
前記H字型鋼は、降伏強度≧355MPa、引張強度≧470MPa、伸び率≧22%、-30℃での横方向の衝撃エネルギー≧51J、-60℃での縦方向の衝撃エネルギー≧110Jであり、延性脆性遷移温度が-65℃よりも低い。
【0029】
本発明の上記低温耐性の熱間圧延されたH字型鋼の製造方法は、溶銑前処理→転炉製錬→LF精錬→長方形/ビレットの鋳込み→加熱炉による再加熱→高圧水による脱スケール→温度制御圧延・制御冷却→低温矯正→定寸鋸切り→収集・スタック等を行う工程を主として含む。
【0030】
溶銑及び鋼屑を製錬、精錬及び連続鋳造により成分要件を満たす鋳造ビレットに製造し、そして、再加熱後に圧延し、圧延工程において、制御圧延及び制御冷却を行う。制御圧延及び制御冷却の主なプロセスは、精密圧延の圧延開始温度を980℃以下として再結晶制御圧延を行い、精密圧延の累計圧延率を12%以上とする。フレーム間で圧延部材を噴霧冷却し、精密圧延が速度制御圧延を用い、圧延速度を1.8~2.5m/sに減速して制御し、最終の精密圧延の圧延温度を780℃~815℃に制御する。圧延部材を冷却床において自然的に冷却し、製品の温度を150℃以下に降下した後、矯正機に入れて矯正し、圧延材の最終製品の仕様のフランジ厚さ範囲を8~15mmとし、異なる仕様のH字型鋼の力学的性質の検出をフランジ箇所でサンプリングして行う。
【0031】
本発明は、複合マイクロ合金化を用いて加工熱処理を行い、異なるビレット型の異なる仕様の製品の大量製造を実現することができ、大型の海洋工学プロジェクト用の複数の仕様・少量の型鋼の生産ニーズに適応し、マイクロ合金化を用いて20以上の異なる仕様のH字型鋼の製造を実現することができる。最終の圧延温度を815℃以下に制御し、再結晶及び部分的な非再結晶制御圧延に基づいて組織制御を厳しく行い、微細P+F組織を得ることを主とする。本発明による精密圧延の累計圧延率が12%よりも大きく、異なるフランジ厚さに対して圧延速度の制御を行うことにより組織微細化を実現する。本発明は、一般的な型鋼圧延機において、製品の力学的性質、特に良好な極めて低い横方向及び縦方向の低温耐性の衝撃靱性を実現することができる。
【0032】
本発明は、超低炭素設計を用い、鋳造ビレットに重大な内部品質欠陥が発生することを回避するとともに、再結晶圧延と組み合わせて、圧延力が著しく低減し、圧延機の圧延負荷を低下させ、Ni元素の添加は、鋳造ビレットの矯正工程における亀裂発生確率を改善し、複合マイクロ合金化により、複数の仕様の断面を変更可能なH字型鋼製品の生産により適用する。中間容器・ストッパー取鍋技術を使用して、アルミニウム脱酸素注入工程における注水口が詰まりやすい問題をより良く解決した。
【0033】
好ましくは、本発明は、更に低温耐性の熱間圧延されたH字型鋼の製造方法を提供し、溶銑前処理→転炉製錬→LF精錬→長方形/ビレットの鋳込み→加熱炉による再加熱→高圧水による脱スケール→温度制御圧延→制御冷却→低温矯正→定寸鋸切り→収集・スタックなどを行う工程を含み、具体的なプロセス制御は、以下の通りである。
【0034】
1)転炉製錬の工程において、低硫黄・低ヒ素の高炉溶銑を用い、上下複合吹錬転炉内スラグ化システムがシングルスラグプロセスを用いて製錬し、最終スラグのアルカリ度及び終点目標値を厳しく制御し、最終スラグのアルカリ度を2.0~3.8に制御し、スラグを止めて出鋼し、出鋼工程がアルミニウムマンガン鉄脱酸素合金化を用いる。出鋼工程においてバッチ別に脱酸素剤、シリコン鉄、金属マンガン、ニオブ鉄合金、ニッケル板等を加え、脱酸素合金化が完了した後に、合金シュートから鋼の流れに合わせて合成スラグを加え、転炉成分が内部統制の目標要件を満たすように確保する。
【0035】
2)LF精錬の工程において、炭化カルシウム、シリコンカルシウムバリウム、アルミニウム粒子を用いて、スラグ調整を行い、ステーションから搬出する前にトップスラグを白色スラグ又は黄白色スラグにする必要がある。ステーションに入って初期サンプルを取った後に酸素を定量し、例えば[O]≦20ppmにし、酸素ポテンシャルが要件を満たさない場合、酸素ポテンシャルを調整した後にチタンワイヤを供給し、カルシウムワイヤを供給する前にホウ素ワイヤを供給し、全工程がプロセス要件に応じてアルゴンガスの底吹きを行い、前期に必要に応じてアルゴンガス圧力を適切に高く調整することができ、ソフトブロー時間を15分間以上とし、精錬サイクルを25分間以上とする。
【0036】
3)連続鋳造の工程において、連続鋳造は、完全保護注入プロセスを用い、大きな取鍋の長い注水口を使用し、シールリングを追加し、中間容器がストッパー取鍋を用いて溶鋼を鋳込み、鋳造ビレットの引抜き速度を制御し、注水口が詰まることを回避し、過熱度を15~30℃に制御し、鋳造ビレットの引抜き速度を0.7~1.0m/minとし、製錬された溶鋼を様々な断面の長方形ビレットまたは正方形ビレットに鋳造する。
【0037】
4)加熱の工程において、ビレットは、熱間供給・熱間装入型炉を用いて再加熱され、加熱及び均熱温度を1200~1260℃に制御し、加熱時間を120~180minとし、次に炉から取り出して圧延する。ノズルの動作圧力を25MPa以上とし、加熱炉内に加熱により発生したミルスケールをきれいに整理するとともに、Ni元素の添加による表面品質の問題を確保する。
【0038】
5)制御圧延及び制御冷却の工程において、圧延工程は、制御圧延及び制御冷却を行う。制御圧延及び制御冷却の主なプロセスは、精密圧延の圧延開始温度を980℃以下として再結晶制御圧延を行い、精密圧延の累計圧延率を12%以上とする。フレーム間で圧延部材を噴霧冷却し、精密圧延が速度制御圧延を用い、圧延速度を1.8~2.5m/sに減速して制御し、精密圧延の最終の圧延温度を780℃~815℃に制御する。圧延部材を冷却床において自然的に冷却し、製品の温度を150℃以下に降下した後、矯正機に入れて矯正し、圧延材の最終製品の仕様のフランジ厚さ範囲を8~15mmとし、異なる仕様のH字型鋼の力学的性質の検出をフランジ箇所でサンプリングして行う。
【発明の効果】
【0039】
従来技術に比べて、本発明の利点は以下のとおりである。
【0040】
(1)超低炭素設計を用い、一般的な圧延機において圧延を実現しやすく、圧延力は小さく、他の特許における0.10%以上の炭素の含有量の同じ仕様の型鋼の圧延力よりも10%以上減少し、装置への要件が低下するとともに、炭素当量を著しく低下させ、溶接性能を向上させる。(2)極めて低い残留元素の制御を微細組織の制御と組み合わせて、低温靱性を著しく向上させる。(3)Nb、V、Ti複合マイクロ合金化を用いるとともに、適量のB、Ni元素を添加し、強度が確保される前提で、低温衝撃靱性を向上させるとともに、一定のTiの含有量により熱影響領域の安定性を向上させることができる。(4)中間容器・ストッパー取鍋制御技術を用い、Al脱酸素を実現することができ、溶鋼の純度を向上させ、連続鋳造工程において注水口が詰まる問題を解決し、本発明はこのような問題をより良く解決することができる。(5)圧延機の速度の制御を冷却プロセス(即ち、噴霧冷却プロセス)と組み合わせることにより、加工熱処理を実現し、再結晶制御圧延及び部分的非再結晶制御と組み合わせて、マトリックス構造の微細化を満たし、超微フェライト及びパーライトを得て、H字型鋼の性能を全体的に向上させる。(6)複数の仕様の中小型の低温耐性の熱間圧延されたH字型鋼の製造に適応する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の実施例1において得られたH字型鋼の組織構造図である。
【
図2】本発明の実施例2において得られたH字型鋼の組織構造図である。
【
図3】本発明の実施例3において得られたH字型鋼の組織構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図面と実施例を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0043】
(実施例1~3)
長方形ビレットを用いる場合の製錬及び圧延成形工程における制御パラメータは、表1に示される。
【0044】
【0045】
実施例1~3における具体的な化学成分については表2を参照する。
【0046】
【0047】
連続鋳造工程における具体的なプロセスパラメータについては表3を参照する。
【0048】
【0049】
得られた製品に対して性能検査を行い、力学的性質において使用される試料のサンプリング位置がH字型鋼のフランジ上の縁部から中心部の1/3までの箇所に位置し、参照標準はBS EN ISO 377-1997≪力学的性質試験試料のサンプリング位置及び製造≫であり、降伏強度、引張強度、伸び率の試験方法については標準ISO 6892-1-2009≪金属材料の室温引張試験方法≫を参照し、衝撃エネルギー試験方法は標準ISO 148-1≪金属材料シャルピー振り子式衝撃試験≫を参照し、結果については表4を参照する。
【0050】
【0051】
本発明において詳しく説明しない内容はいずれも本技術分野の一般的な技術知識を用いてもよい。
【0052】
最後に説明されるように、以上の実施例は、本発明の技術案を説明するためのものであって、限定するものではない。実施例を参照して本発明を詳しく説明したが、当業者であれば理解されるように、本発明の技術案に対して行われる修正や同等の置換は、いずれも本発明の技術案の趣旨及び範囲から逸脱しないものであり、それらはいずれも本発明の特許請求の範囲内に含まれるべきである。