(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】付加製造法に使用するための散逸性金属前駆体を含むバインダ溶液
(51)【国際特許分類】
B22F 10/14 20210101AFI20240507BHJP
B22F 3/10 20060101ALI20240507BHJP
B22F 9/30 20060101ALI20240507BHJP
B22F 10/10 20210101ALI20240507BHJP
B22F 10/34 20210101ALI20240507BHJP
B22F 10/64 20210101ALI20240507BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240507BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240507BHJP
【FI】
B22F10/14
B22F3/10 C
B22F9/30
B22F10/10
B22F10/34
B22F10/64
B33Y10/00
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2023016197
(22)【出願日】2023-02-06
(62)【分割の表示】P 2021083981の分割
【原出願日】2021-05-18
【審査請求日】2023-02-06
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルンクマール、ナタラジャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、クォク ポン
(72)【発明者】
【氏名】アルバーツ、ウィリアム シー.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、シー
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン、メアリー キャスリン
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/088965(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/036126(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0007724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/10,9/30,10/10,10/14,10/34,
10/64
B33Y 10/00,70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダ溶液(36)の総重量に基づいて、0.5重量%以上40重量%以下の散逸性金属前駆体(36a)と、
第1の官能基、及び前記第1の官能基とは異なり、かつ前記第1の官能基とは相補性である第2の官能基を含む第1のポリマーストランドを有する熱可塑性バインダ(36b)と、
溶媒であって、散逸性金属前駆体(36a)及び熱可塑性バインダ(36b)が溶媒中に溶解される溶媒と、を含有し、
前記散逸性金属前駆体(36a)は、塩化ニッケル、塩化鉄、ギ酸ニッケル、塩化銅、硝酸銀、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、炭酸銀、過塩素酸銀、ハロゲン化銀、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、シュウ酸ニッケル脱水物、モリブデン酸アンモニウム四水和物、硝酸アルミニウム、塩化マグネシウム、硝酸バリウム、塩化バリウム、硝酸チタン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択された塩を含
み、
前記散逸性金属前駆体(36a)が、有機金属化合物を含み、前記有機金属化合物が、フェロセン、コバルトセン、鉄ペンタカーボニル、又はこれらの組合せを含む、バインダ溶液(36)。
【請求項2】
バインダ溶液(36)の総重量に基づいて、0.5重量%以上40重量%以下の散逸性金属前駆体(36a)と、
第1の官能基、及び前記第1の官能基とは異なり、かつ前記第1の官能基とは相補性である第2の官能基を含む第1のポリマーストランドを有する熱可塑性バインダ(36b)と、
溶媒であって、散逸性金属前駆体(36a)及び熱可塑性バインダ(36b)が溶媒中に溶解される溶媒と、を含有し、
前記散逸性金属前駆体(36a)は、塩化ニッケル、塩化鉄、ギ酸ニッケル、塩化銅、硝酸銀、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、炭酸銀、過塩素酸銀、ハロゲン化銀、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、シュウ酸ニッケル脱水物、モリブデン酸アンモニウム四水和物、硝酸アルミニウム、塩化マグネシウム、硝酸バリウム、塩化バリウム、硝酸チタン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択された塩を含み、
粘度が1 cP以上40 cP以下である、
バインダ溶液(36)。
【請求項3】
前記第1のポリマーストランドが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ炭酸ビニル、その誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は請求項2に記載のバインダ溶液(36)。
【請求項4】
部品を製造する方法(10)であって、
微粒子材料(24)の層(22)を作業面(32)上に堆積させる工程と、
微粒子材料(24)の層(22)中に、部品の層を表現するパターンでバインダ溶液(36)を選択的に塗布する工程であって、
前記バインダ溶液(36)は、
前記バインダ溶液(36)の総重量に基づいて、0.5重量%以上40重量%以下の散逸性金属前駆体(36a)、
第1の官能基、及び前記第1の官能基とは異なり、かつ前記第1の官能基とは相補性である第2の官能基を含む第1のポリマーストランドを有する熱可塑性バインダ(36b)、並びに
散逸性金属前駆体(36a)及び熱可塑性バインダ(36b)が溶解される溶媒
を含み、
前記散逸性金属前駆体(36a)は、塩化ニッケル、塩化鉄、ギ酸ニッケル、塩化銅、硝酸銀、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、炭酸銀、過塩素酸銀、ハロゲン化銀、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、シュウ酸ニッケル脱水物、モリブデン酸アンモニウム四水和物、硝酸アルミニウム、塩化マグネシウム、硝酸バリウム、塩化バリウム、硝酸チタン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択された塩を含み、
前記散逸性金属前駆体(36a)が、有機金属化合物を含み、前記有機金属化合物が、フェロセン、コバルトセン、鉄ペンタカーボニル、又はこれらの組合せを含む
工程と、
堆積工程と選択的塗布工程とを繰り返して塗布されたバインダ溶液(36)を含む微粒子材料(24)の複数の層(22)を形成する工程と、
塗布されたバインダ溶液(36)を含む微粒子材料(24)の複数の層(22)中の塗布されたバインダ溶液(36)を硬化させて、溶媒を蒸発させ、それによってグリーン体部品(60)を形成する工程と、
を有する方法(10)。
【請求項5】
部品を製造する方法(10)であって、
微粒子材料(24)の層(22)を作業面(32)上に堆積させる工程と、
微粒子材料(24)の層(22)中に、部品の層を表現するパターンでバインダ溶液(36)を選択的に塗布する工程であって、
前記バインダ溶液(36)は、
前記バインダ溶液(36)の総重量に基づいて、0.5重量%以上40重量%以下の散逸性金属前駆体(36a)、
第1の官能基、及び前記第1の官能基とは異なり、かつ前記第1の官能基とは相補性である第2の官能基を含む第1のポリマーストランドを有する熱可塑性バインダ(36b)、並びに
散逸性金属前駆体(36a)及び熱可塑性バインダ(36b)が溶解される溶媒
を含み、かつ
粘度が1 cP以上40 cP以下であり、
前記散逸性金属前駆体(36a)は、塩化ニッケル、塩化鉄、ギ酸ニッケル、塩化銅、硝酸銀、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、炭酸銀、過塩素酸銀、ハロゲン化銀、硫酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、シュウ酸ニッケル脱水物、モリブデン酸アンモニウム四水和物、硝酸アルミニウム、塩化マグネシウム、硝酸バリウム、塩化バリウム、硝酸チタン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択された塩を含む工程と、
堆積工程と選択的塗布工程とを繰り返して塗布されたバインダ溶液(36)を含む微粒子材料(24)の複数の層(22)を形成する工程と、
塗布されたバインダ溶液(36)を含む微粒子材料(24)の複数の層(22)中の塗布されたバインダ溶液(36)を硬化させて、溶媒を蒸発させ、それによってグリーン体部品(60)を形成する工程と、
を有する方法(10)。
【請求項6】
前記微粒子材料(24)が、金属微粒子材料を含み、前記金属微粒子材料が、ニッケル合金、コバルト合金、コバルトクロム合金、チタン合金、アルミニウム基材料、タングステン合金、ステンレス鋼合金、又はこれらの組み合わせを含む、請求項
4又は5に記載の方法(10)。
【請求項7】
グリーン体部品(60)を無酸素環境で第1温度以上に加熱して、熱可塑性バインダ(36b)の少なくとも一部を除去し、散逸性金属前駆体(36a)の少なくとも一部を焼結して、焼結された散逸性金属前駆体(36a)が微粒子材料(24)間の金属材料(64)のくびれ領域を形成し、それによって、ブラウン体部品(62)を形成し、
前記ブラウン体部品(62)を第2温度以上に加熱して微粒子材料(24)を焼結し、それによって、圧密部品(70)を形成する工程を更に有する、請求項6に記載の方法(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2020年5月26日に出願された米国仮出願第63/029,957号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれている「付加製造法に使用するための散逸性金属(fugitive metal)前駆体を構成するバインダ溶液」と題する。
【0002】
本明細書は、付加製造法に関する。より具体的には、本明細書は、付加製造法に使用するための散逸性金属前駆体を含むバインダ溶液を対象とする。
【背景技術】
【0003】
付加製造法は、3Dプリンティングとも呼ばれ、素材を層ごとに積み重ねて物品を形成するプロセスである。バインダ噴射は、バインダを使用して粉体の粒子を接合して三次元物体を形成することに基づく付加製造法の技術である。特に、バインダはビルドボリュームで粉体の層上に順次噴射され、そこで粉体とバインダの層が互いに接着して三次元物体を形成する。用途によっては、プリントされた部品は最終用途に適している。
【0004】
他の用途では、プリントされた三次元部品を完成部品に変換するために、バインダの除去や粉体の焼結のような後処理が必要となる場合がある。したがって、プリントされた部品は、取り扱い(例えば、移送、検査、粉体除去)に適したグリーン強度を有し、脱バインダ/焼結プロセス中の歪みを最小限に抑えるのに適したブラウン強度を有することが望ましい。しかしながら、バインダ噴射3Dプリントに従来利用可能であったバインダ溶液は、プリント後工程中のプリント部分の歪み及び損傷を防止するのに必要なブラウン強度を提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、グリーン強度を維持し、プリント後工程中にプリント部分に改善されたブラウン強度を提供する代替バインダ溶液の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示されるバインダ溶液の様々な実施形態は、空隙を充填し、微粒子材料の焼結前に粉体層の粒子間の接触及び架橋を提供し、それによってプリント部品のブラウン強度及び全体の剛性を改善する散逸性金属前駆体を含むことによって、これらのニーズを満たす。物品の密度を増加させることは、収縮を減少させ、プリントされた部品の強度を増加させ、これによって、亀裂及び歪みを減少させる。
【0007】
第1の態様A1によれば、バインダ溶液は、バインダ溶液の総重量に基づいて、0.5重量%以上40重量%以下の散逸性金属前駆体と、1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドを含む熱可塑性バインダと、溶媒であって、散逸性金属前駆体及び熱可塑性バインダが溶媒中に溶解されている溶媒とを含んでもよい。
【0008】
第2の態様A2は、第1の態様A1に係るバインダ溶液を含み、前記バインダ溶液が、バインダ溶液の総重量に基づいて、1重量%以上及び20重量%以下の散逸性金属前駆体を含む。
【0009】
第3の態様A3は、第1の態様A1又は第2の態様A2に係るバインダ溶液を含み、散逸性金属前駆体は、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、半金属、希土類金属
、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
第4の態様A4は、第1の態様A1~第3の態様A3のいずれかに係るバインダ溶液を含み、散逸性金属前駆体が有機金属化合物を含み、前記有機金属化合物がフェロセン、コバルトセン、鉄ペンタカルボニル、又はそれらの組み合わせを含む。
【0011】
第5の態様A5は、第1の態様A1~第4の態様A4のいずれかに係るバインダ溶液を含み、散逸性金属前駆体が塩を含み、前記塩がカルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、塩化物、ハロゲン化物、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む。
【0012】
第6の態様A6は、第5の態様A5に係るバインダ溶液を含み、前記塩は、塩化ニッケル、塩化鉄、ギ酸ニッケル、塩化銅、硝酸銀、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸アルミニウム、塩化マグネシウム、硝酸バリウム、塩化バリウム、硝酸チタン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0013】
第7の態様A7は、第1の態様A1~第6の態様A6のいずれかに係るバインダ溶液を含み、1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドのそれぞれは、1000g/mol以上、50,000g/mol以下の平均分子量を有する。
【0014】
第8の態様A8は、第1の態様A1~第7の態様A7のいずれかに係るバインダ溶液を含み、1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドの各々が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルカーボネート、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
第9の態様A9は、第1の態様A1~第8の態様A8のいずれかに係るバインダ溶液を含み、バインダ溶液の粘度は、1cP以上40cP以下である。
【0016】
第10の態様A10によれば、部品の製造方法は、作業面上に微粒子材料の層を堆積させる工程と、前記微粒子材料の層に部品の層を表現するパターンでバインダ溶液を選択的に塗布する工程と、微粒子材料の層の堆積とバインダ溶液の選択的な塗布とを繰り返し、前記バインダ溶液が塗布された複数層の粒子の層を形成する工程と、溶媒を蒸発させて粒子と塗布されたバインダ溶液とからなる複数の層を硬化させてグリーン体を形成する工程と、を含んでよく、前記バインダ溶液は、前記バインダ溶液の総重量に基づいて、0.5重量%以上40重量%以下の散逸性金属前駆体と、1つ又は複数の熱可塑性ポリマーストランドを含む熱可塑性バインダと、溶媒と、を含み、前記散逸性金属前駆体と前記熱可塑性ポリマーストランドとは前記溶媒に溶解されている。
【0017】
第11の態様A11は、第10の態様A10に係る方法を含み、プリントされたバインダ溶液の硬化が、塗布されたバインダ溶液を含む微粒子材料の複数の層を40℃以上80℃以下の温度で加熱することを含む。
【0018】
第12の態様A12は、第10の態様A10又は第11の態様A11に係る方法を含み、散逸性金属前駆体が、カルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、フォーマット、塩化物、ハライド、誘導体、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される塩を含む。
【0019】
第13の態様A13は、第10の態様A10~第12の態様A12のいずれかに係る方法を含み、微粒子材料が、金属微粒子材料を含み、前記金属微粒子材料が、ニッケル合金、コバルト合金、コバルトクロム合金、チタン合金、アルミニウム基材料、タングステン
合金、ステンレス鋼合金、又はこれらの組み合わせを含む。
【0020】
第14の態様A14は、第13の態様A13に係る方法を含み、前記グリーン体部品を無酸素環境で第1の温度より高く加熱して前記熱可塑性バインダの少なくとも一部を焼結し、前記散逸性金属前駆体の少なくとも一部を焼結して前記微粒子材料の間にネック状領域を形成してブラウン体部品を形成し、且つ前記ブラウン体部品を第2の温度以上に加熱して前記微粒子材料を焼結することを含む。
【0021】
第15の態様A15は、第10態様A10~第12の態様A12のいずれかに係る方法を含み、前記微粒子材料が、セラミック微粒子材料を含み、前記セラミック微粒子材料が、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、又はこれらの組合せを含む。
【0022】
第16の態様A16によれば、グリーン体部品は、微粒子材料の複数の層と、グリーン体部品の全重量に基づいて0.5重量%以上5重量%以下の散逸性金属前駆体と、グリーン体部品の全重量に基づいて0.5重量%以上3重量%以下の熱可塑性バインダと、を含み得、前記熱可塑性バインダは、1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドを含み、前記熱可塑性バインダは、微粒子材料の複数の層の微粒子材料を結合し、且つ、前記グリーン体部品は、1.0kPa以上のASTM B312-14に従って測定された3点曲げ強度を有する。
【0023】
第17の態様A17は、第16の態様A16に係るグリーン体部品を含み、前記散逸性金属前駆体は、カルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、塩化物、ハロゲン化物、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される塩を含む。
【0024】
第18の態様A18は、第16の態様A16又は第17の態様A17に係るグリーン体部品を含み、前記微粒子材料が、金属微粒子材料を含み、前記金属微粒子材料が、ニッケル合金、コバルト合金、コバルトクロム合金、チタン合金、アルミニウム基材料、タングステン合金、ステンレス鋼合金、又はこれらの組み合わせを含む。
【0025】
第19の態様A19は、第16の態様A16又は第17の態様A17に係るグリーン体部品を含み、ここに、微粒子材料は、セラミック微粒子材料を含み、セラミック微粒子材料は、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、又はこれらの組み合わせを含む。
【0026】
第20の態様A20は、第16態様A16~第19の態様A19のいずれか係るグリーン体部品を含み、1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドのそれぞれが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ炭酸ビニル、その誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0027】
本明細書に開示される実施形態のさらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部は、以下の詳細な説明、及び添付図面を含む、本明細書に記載されるように開示される実施形態を実施することによって、その説明から当業者に容易に明らかであるか、又は認識される。
【0028】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の双方が様々な実施態様を記述しており、クレームされた主題の性質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することを意図していることを理解されたい。添付図面は、種々の実施例をさらに理解するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成するものである。図面は、本明細書に記載され
た様々な実施形態を図示し、説明とともに、クレームされた主題の原理及び動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】従来のバインダ溶液を用いて形成された部品と、本明細書に記載される1つ以上の実施形態による散逸性金属前駆体を含む例示的なバインダ溶液を用いて形成された部品と、の強度対温度曲線を示すプロットである。
【
図2】本明細書に記載される1つ又は複数の実施形態に従う散逸性金属前駆体を含むバインダ溶液の例を用いた付加製造法プロセスを介して圧密化部品を製造する方法の実施形態のフロー図である。
【
図3】
図2の方法に従って圧密化部品を製造するために使用される付加製造装置の一実施形態のブロック図である。
【
図4】
図2の方法の操作から生じる圧密化部品が製造される微粒子材料の層の実施形態の概略図である。
【
図5】
図2の方法によるバインダ溶液の堆積後の微粒子材料の概略図である。
【
図6】
図2の方法による脱バインダ後の微粒子材料の概略図である。
【
図7】
図2の方法による焼結後の微粒子材料の概略図である。
【
図8】
図2の方法によって比較例のバインダ溶液を用いて形成されたサンプルの写真である。
【
図9】
図2の方法による焼結後の
図8のサンプルの写真である。
【
図11】
図2の方法によって本明細書に記載した1つ又は複数の実施形態による散逸性金属前駆体を含む例示的なバインダ溶液を用いて形成されたサンプルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ここで、付加製造法に使用するための散逸性金属前駆体バインダ溶液の様々な実施形態について詳細に言及する。
【0031】
特に、散逸性金属前駆体バインダ溶液の様々な実施例は、バインダ溶液、熱可塑性バインダ、及び溶媒の総重量に基づいて、0.5重量%以上40重量%以下の散逸性金属前駆体を含む。散逸性金属前駆体を含むバインダ溶液の様々な実施例、及び付加製造法におけるこのようなバインダ溶液の使用について、本明細書では、添付図面を具体的に参照しながら説明する。
【0032】
範囲は、本明細書では、「約」1つの特定の値、及び/又は「約」別の特定の値までと表現することができる。そのような範囲が表現されるとき、他の実施形態は、1つの特定の値及び/又は他の特定の値を含む。同様に、値が近似値として表現されるとき、先行する「約」の使用によって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるであろう。範囲の始点及び終点は、それぞれ他方の点(終点及び始点)との関連において重要な意味を持ち、且つ、当該他方の点とは独立した意味を有している。
【0033】
本明細書で使用される方向用語、例えば、上、下、右、左、前、後、上、下は、描画されるような図を参照してのみ作成され、絶対的な向きを意味することを意図するものではない。
【0034】
特に明記されていない限り、本明細書に記載される任意の方法は、その工程が特定の順序で実行されることを要求するものと解釈され、また、任意の装置固有の方向が要求されることは意図されていない。したがって、方法クレームが実際にその工程に従うべき順序
を記載しない場合、あるいは、いかなる装置クレームも個々の構成要素に対して順序や向きを実際には記載しないこと、あるいは、請求項又は明細書において、工程が特定の順序に限定されること、あるいは、装置の構成要素に対する特定の順序や向きが記載されないことは、いかなる点においても、順序や向きが推測されることを意図したものではない。これは、工程の配置、動作フロー、構成要素の順序又は方向に関する論理、文法組織又は句読法から導き出される単純な意味、及び明細書に記載された実施形態の数又は種類を含む、解釈のためのあらゆる可能な非明示的根拠について成立する。
【0035】
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が他の点を明確に指示しない限り、複数の言及を含み、従って、例えば、「a」構成要素への言及は、文脈が他の点を明確に示さない限り、2つ以上のそのような構成要素を有する態様を含む。
【0036】
本明細書で使用される用語「散逸性金属前駆体」は、脱バインダ及び/又は焼結の際に分解される金属塩又は有機金属化合物を指し、脱バインダ及び/又は焼結によって金属、金属酸化物、金属炭化物、又は金属窒化物の生成及び金属塩又は有機金属化合物の有機及び無機官能基の焼失をもたらす。
【0037】
本明細書で使用される「熱可塑性バインダ」という用語は、弱い非共有力(例えば、相互作用、結合)を介して相互作用して得る官能基を有し、これによってそれぞれの熱可塑性ポリマーのストランドを互いに結合するか、又はそれ以外の方法で連結する1つ又は複数の熱可塑性ポリマーストランドを含むバインダを指す。
【0038】
本明細書で使用される「弱い非共有力」という用語は、1kcal/mol以上7kcal/mol以上の結合又は力を有する水素結合、イオン結合、Van der Waals力などを指す。
【0039】
ここで用いる「標準温度及び圧力」及び「STP」という用語は、温度0℃、圧力101.325kPaを指す。
【0040】
ここで用いる「噴射可能性」という用語は、例えばプリンタヘッドからバインダ溶液を噴射させ得ることを指す。バインダ溶液は、全てのポリマー及び添加剤がバインダ溶液中で可溶化され、バインダ溶液が1~40センチポアズ(cP)の粘度を有する場合、「噴射可能」であると見なすことができる。
【0041】
本明細書で論じるように、バインダ溶液のパラメータ「粘度」は、ASTM E3116に準拠したレオメータを用いて測定される。
【0042】
本明細書で使用される「脱バインダ」という用語は、熱可塑性バインダの小さなオリゴマーへの熱分解が生じ、熱可塑性バインダの少なくとも一部が除去され、それによって、ブラウン体部品を形成するように、グリーン体部品を第1温度以上に加熱することを指す。
【0043】
本明細書で使用する「焼結」という用語は、ブラウン体部品を第2温度以上に加熱して、熱可塑性バインダの残存部分(例えば、脱バインダ中に形成されるオリゴマー残留物及び熱分解副産物)を除去し、粉体層の粒子を固化させ、それによって固化部分を形成することを指す。
【0044】
本明細書で使用される用語「分解」は、脱バインダ及び/又は焼結中の散逸性金属前駆体の金属のみへの還元及び散逸性金属前駆体の有機及び無機官能基の焼失を指す。
【0045】
本明細書で使用される用語「くびれた領域」は、微粒子材料の隣接する粒子間の金属材料の局所的変形を指す。
【0046】
本明細書で用いる「グリーン体部品」という用語は、熱可塑性バインダを除去するための熱処理を受けていないプリント部品を指す。
【0047】
本明細書で使用される「ブラウン体部品」という用語は、熱可塑性バインダの少なくとも一部を除去するために、デバインダ熱処理を受けたプリントされた部品を指す。
【0048】
本明細書で論じるように、部品のパラメータ「グリーン強度」及び「ブラウン強度」は、ASTM B312-14に準拠した3点曲げ強度試験を用いて測定される。
【0049】
バインダ噴射を含む付加製造法プロセスでは、バインダ溶液をプリンタヘッドから粉体の層上に次々と噴射して粉体の粒子を接合し、プリントされた三次元部品を形成する。上述したように、実施形態において、プリントされた三次元部品を圧密化部品に変換するために、後続の処理(例えば、脱バインダ及び焼結)が必要となり得る。したがって、プリントされた部品は、ハンドリング(例えば、転写、検査、脱粉末)に適したグリーン強度を有し、プリント後工程中の歪みを最小限に抑えるのに適したブラウン強度を有することが望ましい。これにより、圧密前の反りや部品の故障の発生が減少し、それによって製造スループットが向上する。
【0050】
しかしながら、従来の、熱可塑性バインダを含むバインダ溶液は、一般的には、プリント後工程中のプリント部品の歪み及び損傷を防止するために必要なブラウン強度を提供しない。具体的には、グリーン体部品の強度は、粒子摩擦及び粒子の機械的インターロックからの何らかの寄与と共に、バインダ溶液によって提供される。バインダ溶液によってもたらされる強度は、熱可塑性ポリマーストランド間に形成される弱い非共有結合力(例えば、ポリマーバインダと同様)によるものである。グリーン体部品が加熱されて熱可塑性バインダが除去され、ブラウン体部品(すなわち、粒子が一緒に焼結される前)を形成するため、プリント部品の機械的強度(すなわち、ブラウン強度)は、粒子間摩擦及び機械的連動に依存し、これは、粉体層(例えば、金属粒子)を形成するために一般的に使用される比較的大きいほぼ球形の粒子において制限される。ブラウン強度が低いため、部品が反ったり、機械的な故障を引き起こしたりすることがある。
【0051】
したがって、本明細書に記載されるバインダ溶液の様々な実施形態は、粉体層の粒子間の空隙を充填し、微粒子材料の焼結に先立って粉体層の粒子間の接触及び架橋を提供し、それによって、ブラウン強度及びプリントされた部品の全体的な剛性を改善する、散逸性金属前駆体を含む。さらに、物品の密度を増加させることは、収縮を減少させ、プリントされた部品の強度を増加させ、ひび割れ及び歪みを減少させる。
【0052】
次に
図1を参照すると、曲線Aによって示されるように、熱可塑性バインダを含む従来のバインダ溶液を用いて形成された部品は、グリーン体部品が熱可塑性バインダを除去するために加熱された後であって微粒子材料の焼結STの前には、不十分なブラウン強度BSを示す。対照的に、曲線Bによって示されるように、本明細書に開示される実施形態に係る、散逸性金属前駆体を含むバインダ溶液を用いて形成された部分は、グリーン体部品が熱可塑性バインダを除去するために加熱された後であるが、微粒子材料を焼結する前に、グリーン強度GSが低下するにつれて、改良されたブラウン強度BSを示す。前記ブラウン強度は、導電性雰囲気中で脱バインダが行われ、散逸性金属前駆体が分解して還元金属を形成し、その結果、ブラウン体部品の全体的な剛性が向上する場合に達成される。この改善された剛性はブラウン強度を付与し、脱バインダ後のグリーン強度を置き換える。
散逸性金属前駆体の分解は、散逸性金属前駆体の分解特性に依存して、より広範囲の温度で起こる可能性がある。
【0053】
上記のように、本明細書に記載されるバインダ溶液は、散逸性金属前駆体、熱可塑性バインダ、及び溶媒を含み得る。散逸性金属前駆体は、バインダ溶液中に付与された場合、脱バインダ工程のより低い温度で分解し、微粒子材料の焼結前に微粒子材料を結合し、それによってブラウン体部品に強度を付与することができる。散逸性金属前駆体によってもたらされる強度は、圧密化部品において微細な特徴の形成及び/又は大きな部分の形成を可能にする。例えば、張り出しのような片持梁部分を含む部分においては、ブラウン強度が弱いと、焼結前にプリント部品を一緒に保つ粒子間摩擦によって片持梁部分の重量が保持されないため、片持梁部分の崩壊又は亀裂に至る可能性がある。しかしながら、散逸性金属前駆体は、脱バインダ工程の間に分解してその場所での金属形成を可能にし得、これは、微粒子材料の焼結前に微粒子材料を接触させ、架橋させることによって、すべての熱可塑性バインダが焼結された後に、プリント部品に剛性及び強度を提供し、それによって、プリント部品全体の強度及び剛性を改善する。
【0054】
実施形態において、散逸性金属前駆体は、アルカリ土類金属(すなわち、周期表のII族の元素)、遷移金属(すなわち、周期表のIII族~XII族の元素)、ポスト遷移金属(すなわち、アルミニウム、ガリウム、インジウム、錫、タリウム、鉛、及びビスマス)、半金属(すなわち、ホウ素、珪素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、及びテルル)、希土類金属(すなわち、スカンジウム、イットリウム、及びランタニド)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態において、散逸性金属前駆体は、例えば、以下のものに限定されるものではないが、フェロセン、コバルトセン、鉄ペンタカルボニル、又はそれらの組み合わせのような、有機溶媒可溶性である有機金属化合物である。実施形態において、散逸性金属前駆体は塩、例えばカルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、塩化物、ハライド、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物である。水/有機溶媒可溶性である適切な塩の例としては、塩化ニッケル、塩化鉄、ギ酸ニッケル、塩化銅、硝酸銀、硝酸ニッケル、硝酸銅、炭酸ニッケル、炭酸銀、過塩素酸銀、ハロゲン化銀、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、シュウ酸ニッケル脱水物、モリブデン酸アンモニウム四水和物、硝酸アルミニウム、塩化マグネシウム、硝酸バリウム、塩化バリウム、硝酸チタン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。他の散逸性金属前駆体も考えられる。実施形態において、散逸性金属前駆体は、STPにおいて溶媒中で完全に溶解性である。
【0055】
実施形態において、バインダ溶液は、バインダ溶液の総重量に基づいて、0.5重量%以上及び40重量%以下の散逸性金属前駆体を含む。実施形態において、バインダ溶液中の散逸性金属前駆体の量は、0.5重量%以上、1重量%以上、又は2重量%以上であってもよい。実施形態において、バインダ溶液中の散逸性金属前駆体の量は、40重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下であってもよい。例えば、バインダ溶液中の散逸性金属前駆体の量は、0.5wt%以上40wt%以下、0.5wt%以上30wt%以下、0.5wt%以上25wt%以下、0.5wt%以上20wt%以下、0.5wt%以上15wt%以下、0.5wt%以上12wt%以下、0.5wt%以上10wt%以下、0.5wt%以上8wt%以下、0.5wt%以上6wt%以下、1重量%以上40重量%以下、1重量%以上30重量%以下、1重量%以上20重量%以下、1重量%以上15重量%以下、1重量%以上8重量%以下、1重量%以上6重量%以下、2重量%以上40重量%以下、2重量%以上30重量%以下、2重量%以上25重量%以下、重量%以上20重量%以下、2重量%以上15重量%以下、2重量%以上12重量%以下、2重量%以上8重量%以下、あるいは2重量%以上6重量%以下、又はこれらのいずれかのエンドポイントから形成されるいずれか及び全てのサブ範囲である。
【0056】
バインダ溶液は、さらに、少なくとも1つのバインダを含む。バインダは、バインダ溶液の溶媒の一部又は全部を蒸発させる硬化工程の後に、微粒子材料及びその層を一緒に結合させることにより、グリーン体部品に強度を付与する。適切なバインダとしては、熱可塑性バインダ、熱硬化性バインダ、及びワックスや糖などの非ポリマー性バインダ(グルコース、フルクトース、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
実施形態では、バインダは、1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドを含む熱可塑性バインダを含む。実施形態では、熱可塑性バインダは、酸素の存在を必要とせずに、一般により低分子量のオリゴマー、二酸化炭素及び水に分解する熱可塑性ポリマーのクラスから選択される。したがって、実施例では、熱可塑性バインダは、脱バインダ及び焼結の際に清浄かつ容易に除去され、熱可塑性バインダ及び分解生成物(例えば、チャー及び金属酸化物)を実質的に含まない圧密化部品を生成することができる。
【0058】
実施形態において、1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドは、第1のポリマーストランドを含む。実施形態において、第1のポリマーストランドは、少なくとも第1の官能基を含む。第1の熱可塑性ポリマーストランドの官能基は、例えば水素結合ドナー、水素結合アクセプタ、負に荷電した基、正に荷電した基、又はこれらの組み合わせを含んでもよいがこれらには限定されない。実施形態において、第1の官能基は、第1の熱可塑性ポリマーストランドのバックボーンの一部である。実施形態において、第1のポリマーストランドの第1の官能基は、熱可塑性バインダの第2のポリマーストランドの官能基と相補性であって、第1及び第2のポリマーストランドの非共有結合を容易にする。例えば、実施形態において、第1の官能基は、第1及び第2のポリマーストランドの弱い非共有結合を可能にする、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン、チオール、アミド、又は他の適切な官能基から選択される。
【0059】
水溶性の実施形態においては、第1のポリマーストランドは、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリアクリルアミド(PAAm)、これらの誘導体、及びこれらの組み合わせなどのポリマーを含むが、これらに限定されない。有機溶媒可溶性の実施形態では、第1のポリマーストランドは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ炭酸ビニル、その誘導体、及びこれらの組み合わせを含む。実施形態において、第1のポリマーストランドは、1,000g/mol以上50,000g/mol以下の平均分子量(Mw又は重量平均)を有する。実施形態において、第1のポリマーストランドは、平均分子量が1,000g/mol以上50,000g/mol以下、1,000g/mol以上30,000g/mol以下、1,000g/mol以上25,000g/mol以下、1,000g/mol以上23,000g/mol以下、5,000g/mol以上30,000g/mol以下、5,000g/mol以上25,000g/mol以下、5,000g/mol以上23,000g/mol以下、7,000g以上30,000g/mol以下、7,000g以上25,000g/mol以下、7,000g/mol以上23,000g/mol以下、9,000g/mol以上50,000g/mol以下、9,000g/mol以上30,000g/mol以下、9,000g/mol以上25,000g/mol以下、9,000g/mol以上23,000g/mol以下、13,000g/mol以上50,000g/mol以下、13,000g/mol以上30,000g/mol以下、13,000g/mol以上25,000g/mol以下、13,000g以上 23,000g/mol以下、23,000g/mol以上50,000g/mol以下、23,000g/mol以上30,000g/mol以下、23,000g/mol以上25,000g/mol以下、25,000g/mol以上50,000g/mol以下、25,000g/mol以上30,000g/mol以下、30,000g/mol以上50,000g/mol以下、又はこれらのいずれかのエンド
ポイントから形成されるすべてのサブ範囲である。
【0060】
第1のポリマーストランドは、バインダ溶液中に、バインダ溶液の全重量を基準として1重量%以上15重量%以下、1重量%以上10重量%以上、1重量%以上7重量%以下、3重量%以上15重量%以下、3重量%以上10重量%以下、3重量%以上7重量%以下、5重量%以上15重量%以下、5重量%以上10重量%以下、5重量%以上7重量%以下、又はこれらのいずれかのエンドポイントから形成されるすべてのサブ範囲だけ含まれる。実施形態において、第1のポリマーストランドは、STPで溶媒中に少なくとも80重量%可溶であってよい。
【0061】
実施形態において、1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドは、さらに第2のポリマーストランドを含む。水溶性バインダの実施形態では、第2のポリマーストランドは、少なくとも、第1のポリマーストランドの第1の官能基とは異なる第2の官能基を含む。第2の熱可塑性ポリマーストランドの官能基は、例えば水素結合ドナー、水素結合アクセプタ、負に荷電した基、正に荷電した基、又はこれらの組み合わせを含んでもよいがこれらのものには限定されない。実施形態において、第2の官能基は、第2の熱可塑性ポリマーストランドのバックボーンの一部である。実施形態において、第2のポリマーストランドの第2の官能基は、熱可塑性バインダの第1のポリマーストランドの第1の官能基と相補性であって第1及び第2のポリマーストランドの非共有結合を容易にする。例えば、実施形態において、第2の官能基は、第1及び第2のポリマーストランドの弱い非共有結合を可能にする、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン、チオール、アミド、又は他の適切な官能基から選択されてもよい。
【0062】
水溶性バインダの実施形態では、第2のポリマーストランドは、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PmAA)、それらの誘導体、及びこれらの組合せなどのポリマーを含むがこれらには限定されない。実施形態において、第2のポリマーストランドは、100g/mol以上10,000g/mol以下の平均分子量(Mw即ち重量平均分子量)を有する。例えば、第2のポリマーストランドは、100g/mol以上10,000g/mol以下、100g/mol以上5000g/mol以下、500g/mol以上10,000g/mol以下、若しくは500g/mol以上5000g/mol以下の平均分子量、又はこれらのエンドポイントのいずれかから形成される任意の及びすべてのサブ範囲の平均分子量を有し得る。
【0063】
第2のポリマーストランドは、バインダ溶液の総重量に基づいて、1重量%以上10重量%以下、1重量%以上9重量%以下、1重量%以上8重量%以下、1重量%以上7重量%以下、1重量%以上6重量%以下、又は1重量%以上5重量%以下、又はこれらのエンドポイントのいずれかから形成される任意の及びすべてのサブ範囲でバインダ溶液中に存在する。実施形態において、第2のポリマーストランドは、STPで溶媒中に少なくとも80重量%可溶性であってもよい。
【0064】
水溶性バインダの実施態様において、第1のポリマーストランドは、第2のポリマーストランドとは異なるポリマーを含む。実施形態では、第1のポリマーストランドは、ポリビニルアルコール(PVA)を含み、第2のポリマーストランドは、ポリアクリル酸(PAA)を含む。
【0065】
グリーン体部品がプリント後工程中の取り扱いに耐えるのに十分なグリーン強度を有するように第1のポリマーストランド及び第2のポリマーストランドは、第1のポリマーストランドと第2のポリマーストランドとの間の結合を可能にする量でバインダ溶液に含まれる。実施形態において、第1のポリマーストランドと第2のポリマーストランドとの重量比は、3:1以上7:1以下である。例えば、第1のポリマーストランドと第2のポリ
マーストランドとの重量比は、3:1、4:1、5:1、6:1、又は7:1であり得る。実施形態において、バインダ溶液は、ポリビニルアルコール(PVA)とポリアクリル酸(PAA)とを3:1以上4:1以下の重量比で含む。
【0066】
実施形態において、1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドは、第3のポリマーストランドをさらに含む。第3のポリマーストランドは、ポリオキサゾリン、ポリビニルメチルエーテル無水マレイン酸(PVME-MA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルエーテル-無水マレイン酸(PVME-MA)、及びポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリブチルメタクリレート(PBMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、それらの誘導体、及びそれらの組合せなどの有機溶媒可溶性ポリマーを含むが、これらに限定されない。実施形態において、第3のポリマーストランドは、100g/mol以上10,000g/mol以下の平均分子量(Mw即ち重量平均分子量)を有する。例えば、第3のポリマーストランドは、100g/mol以上10,000g/mol以下、100g/mol以上5000g/mol以下、500g/mol以上10,000g/mol以下、又は500g/mol以上5000g/mol以下の平均分子量、又はこれらのエンドポイントのいずれかから形成される任意の及びすべてのサブ範囲の平均分子量を有し得る。
【0067】
実施形態において、第3のポリマーストランドは、バインダ溶液中に、バインダ溶液の総重量に基づいて1重量%以上10重量%以下、1重量%以上9重量%以下、1重量%以上8重量%以下、1重量%以上7重量%以下、1重量%以上6重量%以下、1重量%以上5重量%以下、又はこれらのエンドポイントのいずれかから形成されるいずれかのサブ範囲で存在する。実施形態において、第3のポリマーストランドは、STPで溶媒中に少なくとも80重量%可溶性であってもよい。
【0068】
加えて、バインダ溶液は、少なくとも1つの溶媒をさらに含む。溶媒は、選択された熱可塑性バインダ及びバインダ溶液中にあり得る他の添加物に応じて、水性又は非水性であり得る。溶媒は、微粒子材料、熱可塑性バインダ、又はバインダ溶液中に存在し得る任意の他の添加物と反応しないように、一般に非反応性(例えば、不活性)であってもよい。実施形態では、溶媒の少なくとも一部は、熱硬化の前に、微粒子材料の層へのバインダ溶液の沈着中に容易に蒸発し得、微粒子材料の結合を容易にし得る。実施形態において、溶媒は、水、塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソール、2-メトキシエタノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール、エチレングリコール、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコール、テトラヒドロフラン(THF)、メチルエチルケトン(MEK)、トリクロロエチレン(TCE)、又はそれらの組み合わせであり得るが、これらには限定されない。実施形態では、溶媒は、バインダ溶液の総重量に基づいて1wt%以上85wt%以下、1wt%以上75wt%以下、1wt%以上50wt%以下、1wt%以上25wt%以下、1wt%以上10wt%以下、10wt%以上85wt%以下、10wt%以上75wt%以下、10wt%以上50wt%以下、10wt%以上25wt%以下、25wt%以上85wt%以下、25wt%以上75wt%以下、25wt%以上50wt%以下、50重量%以上85重量%以下、あるいは50重量%以上75重量%以上、あるいはこれらのいずれかのエンドポイントから形成された全てのサブ範囲が存在する。
【0069】
実施形態において、バインダ溶液は、硝酸ニッケル、ポリビニルピロリドン(PVP)、及び2-メトキシエタノールを含む。
【0070】
実施態様において、バインダ溶液は、フェロセン、ポリスチレン、及びベンゼン、トルエン、又はジクロロエタンのような塩素化溶媒を含む。
【0071】
実施形態において、バインダ溶液は、塩化ニッケル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、及び水を含む。
【0072】
実施形態において、バインダ溶液は、ギ酸ニッケル、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、及び水を含む。
【0073】
実施形態において、バインダ溶液は、塩化鉄、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、及び水を含む。
【0074】
実施態様において、バインダ溶液は、ギ酸鉄、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、及び水を含む。
【0075】
実施形態において、バインダ溶液の粘度は、バインダ溶液の噴射可能性を保証するために、プリンタヘッドの仕様を満たす。実施形態において、バインダ溶液は、1cP以上40cP以下、1cP以上35cP以下、1cP以上25cP以下、1cP以上20cP以下、2cP以上40cP以下、2cP以上35cP以下、2cP以上30cP以下、2cP以上25 cP以下、さらに2cP以上20 cP以下の粘度、又はこれらのいずれかのエンドポイントから形成される任意の及びすべてのサブ範囲の粘度を有する。このような粘度を達成するために、実施形態では、任意の添加剤としてレオロジー改質剤がバインダ溶液に含まれてもよい。
【0076】
したがって、実施形態において、バインダ溶液は、任意に、バインダ溶液の噴射可能性及びバインダ溶液の粘度を調節することによるバインダ溶液の微粒子材料の層中へのバインダ溶液の堆積を容易にする1つ又は複数の添加剤を含んでもよい。任意の添加剤としては、界面活性剤、希釈剤、粘度調整剤、分散剤、安定剤、又は任意の他の添加剤が挙げられる。実施形態において、界面活性剤は、熱可塑性バインダ及び/又は粒子状材料の特性に応じて、イオン性(例えば、双性イオン性、カチオン性、アニオン性)又は非イオン性であってもよい。実施態様において、界面活性剤は、ポリプロピオキシ第四アンモニウムクロリド(例えば、エボニック工業から入手可能なVARIQUAT(登録商標)CC 42 NS)、ヘキサン酸のオリゴマー(例えば、クロダ先進物質から入手可能なHYPERMER(登録商標)KD2)、脂肪酸とアルキルアミンとのアルキレンエステル、2-[4-(2,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノール(例えば、ダウ・ケミカル・カンパニーから入手可能なTRITON(登録商標)X-100)、ポリオキシエチレン(80)ソルビタンモノオレアート(例えば、クロダ・アメリカ社から入手可能なTWEENTM 80)、ポリオキシエチレン-23-ラウリルエーテル(例えば、クロダ・アメリカ社から入手可能なBRIJTM L23)を含み得る(株)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)、又はその組み合わせを含み得る。
【0077】
次に、
図2を参照すると、本明細書に記載した実施形態によるバインダ溶液を用いて、付加製造法を介して圧密化部品を製造する方法が、10で示されている。方法10の態様の議論を容易にするために、方法10を実行するために使用され得る付加製造装置30の実施形態を示すブロック図である
図3も参照されたい。方法10は、
図4に示すように、粒子状材料24の層22を作業面上に堆積させる(例えば、粉体ベッドを作成する)ことによってブロック12で開始する。実施形態において、層22は、10ミクロン(μm)以上200μm以下の厚さ26を有していてもよい。部品をプリントするために使用される微粒子材料24は、部品の種類及び最終使用に応じて異なる場合がある。
【0078】
特に、微粒子材料24は、ニッケル合金(例えば、インコネル625、インコネル718、Rene’108、Rene’80、Rene’142、Rene’195、及びR
ene’M2、Marm-247)、コバルト合金(例えば、Hans 188、L605、X40、X45、及びFSX414)、コバルト・クロム合金、チタン合金、アルミニウム基材料、タングステン合金、ステンレス鋼合金、又はこれらの組み合わせなどの金属微粒子材料を含んでもよい。実施形態において、金属微粒子材料は、1ミクロン(μm)以上75μm以下の粒度分布を有する粒子を含んでもよい。そのような微粒子材料は、限定ではなく例として、燃料チップ、燃料ノズル、シュラウド、マイクロミキサ、又はタービンブレードを含む金属物品をプリントするために使用されてもよい。
【0079】
実施形態において、微粒子材料24は、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、又はこれらの組み合わせなどのセラミック微粒子材料を含んでもよい。実施形態において、セラミック微粒子材料は、0.1μm以上100μm以下の粒度分布を有する粒子を含んでもよい。このような微粒子材料は、例えば医療及び輸送産業で使用するためにセラミック物品をプリントするために使用することができるがこれらには限定されない。
【0080】
図2に戻って参照すると、ブロック14において、微粒子材料24の堆積に続いて、方法10は、パターンに従って、層22の一部にバインダ溶液を選択的に堆積することに続く。例えば、バインダ溶液は、プリントされる圧密部品の層の表現を含むCADデザインに基づいて制御装置によって操作されるプリンタヘッドを用いて、粒子状材料24の層22に選択的にプリントすることができる。
【0081】
例えば、
図3に示すように、付加製造装置30は、ブロック14(
図2)の動作に従って、バインダ溶液を層22に選択的に堆積させるバインダ噴射プリンタであってもよい。実施形態において、バインダ噴射プリンタ30は、微粒子材料24の層22を支持する作業面32と、バインダ溶液36を収容するリザーバ34と、リザーバ34に流体結合されたプリンタヘッド38とを含んでもよい。プリンタヘッド38は、バインダ溶液36を微粒子材料24の層22に選択的に堆積させて、バインダ溶液36をプリントされる圧密化部品の層を表現するパターンで層22上にプリントする。実施形態において、バインダ噴射プリンタ30は、バインダ噴射プリンタ30の動作を制御するための制御システム42を含んでもよい。制御システム42は、分散制御システム(DCS)又は完全又は部分的に自動化された任意のコンピュータベースのワークステーションを含むことができる。実施形態において、制御システム42は、汎用コンピュータ又は特定用途向けデバイスを採用した任意の適切なデバイスであってもよく、一般に、バインダ噴射プリンタ30の動作を制御するための1つ又は複数の命令を記憶するメモリ回路44を含んでもよい。メモリ回路44は、プリントされる集約部品の構造を表すCADデザインを記憶することができる。プロセッサは、1つ又は複数の処理装置(例えば、マイクロプロセッサ46)を含んでもよく、メモリ回路44は、本明細書に記載される動作を制御するために、プロセッサによって実行可能な命令を集合的に記憶する、1つ又は複数の、有形で固定の機械読み取り可能な媒体を含んでもよい。
【0082】
材料の層に堆積されるバインダ溶液36は、例えば、散逸性金属前駆体36a及び熱可塑性バインダ36bを含む、本明細書に記載されるバインダ溶液の実施形態のいずれか1つであり得る。実施形態では、特定のバインダ溶液36は、層22を形成するために使用される微粒子材料24に少なくとも部分的に基づいて選択される。例えば、実施形態では、バインダ溶液36の散逸性金属前駆体36a及び微粒子材料24は、同じ要素のうちの1つ以上を含み得る。例えば、微粒子材料24がニッケルを含む金属微粒子材料である実施形態において、バインダ溶液36の散逸性金属前駆体36aは、ニッケル又はニッケル基化合物を含み得る。別の例として、微粒子材料24が、ニッケル合金、コバルト合金、コバルトクロム合金、チタン合金、アルミニウム基材料、タングステン合金、ステンレス鋼合金などを含む金属微粒子材料である実施形態では、バインダ溶液36は、塩化ニッケ
ル、塩化鉄、ギ酸ニッケル、塩化銅、硝酸銀、硝酸銅などを含む塩の形態の散逸性金属前駆体36aを含む。別の例として、微粒子材料24が、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、又は窒化ホウ素を含むセラミック微粒子材料であり、バインダ溶液36は、硝酸アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、硝酸チタンなどを含む塩の形の散逸性金属前駆体36aを含む。
【0083】
次に
図5を参照すると、堆積後、バインダ溶液36は、微粒子材料24の外面54を少なくとも部分的に被覆し、それによってバインダ被覆粒子を生成する。本明細書で議論されるように、硬化の際に、バインダ溶液36の熱可塑性バインダは、微粒子材料24の層22にプリントされたバインダ溶液36のパターンに従って微粒子材料24を結合して、グリーン体部品60の層を形成する。
【0084】
方法10においては、ブロック12及び14の動作を繰り返して、所望の数の層がプリントされるまで、層を交互に積層して部品を構成し続けることができる。バインダ溶液36の熱可塑性バインダは、各連続層22を結合し、プリント部品にある程度の強度(例えば、グリーン強度)を与え、プリントされたグリーン体部品60の構造の一体性が、プリント後の工程(例えば、転写、検査、脱粉末)中に維持されるようにする。すなわち、バインダ溶液36の熱可塑性バインダによってもたらされるグリーン強度は、層22内の微粒子材料24とブロック(例えば、レジスト)との間の結合を維持し、グリーン体部品60のハンドリング及びプリント後処理中の層22の層間剥離を防止する。
【0085】
図2のブロック12及び14に記載されているように、層22の堆積及びバインダ溶液36のプリントに続いて、方法10は、ブロック16において、バインダ溶液36を硬化させてグリーン体部品60を形成するとともに続く。例えば、上述のように、バインダ溶液36は、散逸性金属前駆体、熱可塑性バインダ、及び溶媒の混合物である。バインダ溶液36中の溶媒の一部は、バインダ溶液36の堆積(例えば、プリント)中に蒸発させることができるが、ある量の溶媒は、微粒子材料24の層22内に留まってよい。したがって、実施形態では、バインダ溶液36は、プリント層22に残留する溶媒を蒸発させ、プリント層22の効率的な結合を可能にし、それによってグリーン体部品60を形成するのに適した温度で熱硬化されてもよい。熱は、IRランプ及び/又は加熱されたプレートを用いてプリント部品に加えることができ、又は、プリント部品をオーブンに入れることによって行うことができる。実施形態において、バインダ溶液36を硬化させることは、25℃以上100℃以下、30℃以上90℃以下、35℃以上80℃以下、又は40℃以上70℃以上、又はこれらのエンドポイントのいずれかから形成された任意のサブ範囲、又は全てのサブ範囲の温度でプリントされた層22を加熱することを含む。
【0086】
実施形態では、部品を硬化させて溶媒を除去した後、グリーン体部品60に存在する熱可塑性バインダが、複数の層22の微粒子材料24を結合する。実施形態において、グリーン体部品60における散逸性金属前駆体の量は、グリーン体部品60の総重量に基づいて、0.5重量%以上5重量%以下、0.5重量%以上4.5重量%以下、0.5重量%以上4重量%以下、0.5重量%以上3.5重量%以下、0.5重量%以上3重量%以下、0.5重量%以上2.5重量%以下、0.5重量%以上2重量%以下、0.5重量%以上1.5重量%以下、1重量%以上5重量%以下、1重量%以上4.5重量%以下、1重量%以上4重量%、1重量%以上3.5重量%以下、1重量%以上3重量%以下、1重量%以上2.5重量%以下、1重量%以上2重量%以下、1.5重量%以上5重量%以下、1.5重量%以上4.5重量%以下%、1.5重量%以上4重量%以下、1.5重量%以上3.5重量%以下、1.5重量%以上3重量%以下、1.5重量%以上2.5重量%以下、2重量%以上5重量%以下、2重量%以上4.5重量%以下、2.5重量%以上4重量%以下、2.5重量%以上3.5重量%以下、3重量%以上5重量%以下、3重量%以上4.5重量%以下、3重量%以上4重量%以上、又はこれらのいずれかのエンドポイン
トから形成されるいずれかのサブ範囲である。実施形態において、グリーン体部品60における熱可塑性バインダの量は、グリーン体部品60の総重量を基準として、0.5重量%以上3重量%以下、0.5重量%以上2.5重量%以下、0.5重量%以上2重量%以下、0.5重量%以上1.5重量%以下、1重量%以上3重量%以下、1重量%以上2.5重量%以下、1重量%以上2重量%以下、1.5重量%以上3重量%以下、1.5重量%以上、又はさらに2wt%以上3wt%以下、又はこれらのエンドポイントのいずれかから形成される任意の及びすべてのサブ範囲である。実施形態において、微粒子材料は、散逸性金属前駆体の量とグリーン体部品60内の熱可塑性バインダの量とを合計した後の残りのパーセンテージの実質的に全てを構成する。実施形態では、グリーン体部品60内の微粒子材料、熱可塑性材料、及び散逸性金属前駆体の重量パーセンテージを決定するために、グリーン体部品60を形成するために使用される微粒子材料が秤量される。次に、グリーン体部品60を、散逸性金属前駆体を用いずに熱可塑性バインダを用いてプリントし、計量する。熱可塑性バインダを用いてプリントされたグリーン体部品の重量から微粒子材料の重量を差し引いて、熱可塑性バインダの重量を決定する。次いで、グリーン体部品60を熱可塑性バインダ及び散逸性金属前駆体を用いてプリントし、秤量する。熱可塑性バインダ及び散逸性金属前駆体を有するプリントされたグリーン体部品60の重量から熱可塑性バインダによってプリントされたグリーン体部品の重量を差し引いて散逸性金属前駆体の重量を決定する。次いで、各構成要素の重量パーセンテージを計算することができる。
【0087】
硬化後に除去及び焼結などの後プリント工程のためにグリーン体部品60を準備するために、非結合粒子(例えば、バインダ溶液36によって結合されていない微粒子材料24)は、粉体層から除去されてもよい。
【0088】
硬化後、グリーン体部品60は任意の乾燥工程(図示せず)を経て、グリーン体部品60内に残留する可能性のある残留溶媒及び/又は他の揮発性材料を除去することができる。例えば、グリーン体部品60は、真空中、不活性雰囲気(例えば、窒素(N2)、又はアルゴン(Ar))下、又はわずかに上昇した温度又は室温の空気中で乾燥してもよい。
【0089】
実施形態において、グリーン体部品60は、5MPa以上、5.5MPa以上、6MPa以上、6.5MPa以上、7MPa以上、7.5MPa以上、8MPa以上、8.5MPa以上、9MPa以上、9.5MPa以上、又は10MPa以上の強度を有する。
【0090】
グリーン体部品60を形成するためのバインダ溶液36の硬化に続いて、方法10は、ブロック18において、グリーン体部品60を第1温度以上に加熱して、熱可塑性バインダの少なくとも一部を除去し(例えば、脱バインダ)、ブラウン体部品62を形成する。実施形態において、バインダ溶液36の散逸性金属前駆体の分解温度は、第1温度よりも低い。そのように、脱バインダ中に、バインダ溶液36の散逸性金属前駆体の少なくとも一部が分解し、結果として金属材料64のその場での金属形成が生じる。例えば、
図6に示すように、脱バインダ工程の間、バインダ溶液36の散逸性金属前駆体は、ナノメートル規模の寸法の金属材料64に分解し得る。金属材料64は、体積に対する表面積の比率が非常に高く、焼結に向けて高い駆動力を提供し得る。金属材料64が焼結するにつれて、微粒子材料24の隣接する粒子間の金属材料64のくびれた領域のような「ブリッジ」の形成を促進し得る。微粒子材料24を架橋する金属材料64のくびれた領域は、それによって、熱可塑性バインダが燃え尽きた後であるが、微粒子材料24の圧密化(すなわち、焼結)に先立って、ブラウン体部品62のブラウン強度を増加させる。実施形態において、第1の温度は、60℃以上700℃以下、70℃以上600℃以下、75℃以上500℃以下、さらに80℃以上400℃以下であるか、又はこれらのいずれかのエンドポイントから形成される任意の及びすべてのサブ範囲である。
【0091】
実施形態において、グリーン体部品60を第1温度より高く加熱することは、無酸素環境(例えば、真空チャンバ内/不活性雰囲気下)又は空気中でグリーン体部品60を加熱することを含んでもよい。金属の実施形態では、脱バインダは、例えば、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、その他の不活性ガス、又は真空下などの無酸素環境下で行うことができるが、これらに限定されるものではない。セラミックの実施形態では、脱バインダは、空気中で、又は処理される特定の材料に適した任意の他の環境で実行してもよい。
【0092】
実施形態において、ブラウン体部品62は、1MPa以上、1.5MPa以上、2MPa以上、2.5MPa以上、3MPa以上、3.5MPa以上、4MPa以上、4.5MPa以上、又は5MPa以上の強度を有してよい。
【0093】
図2に示す方法10は、最後に、ブロック20において、ブラウン体部品62を第2の温度より高く加熱して、微粒子材料24を焼結し、それによって圧密化部品70を形成する。実施形態において、第2の温度は、微粒子材料24が焼結する温度以上である。このように、ブラウン体部品62を第2温度以上に加熱することにより、微粒子材料24は金属材料64(
図6)と共に焼結し、これにより
図7に示すような金属相72を形成する。実施形態では、第2の温度は75℃以上1500℃以下、75℃以上1450℃以下、75℃以上1400℃以下、100℃以上1500℃以下、100℃以上1450℃以下、100℃以上1400℃以下、200℃以上1500℃以下、200℃以上1450℃以下、200℃以上1400℃以下、300℃以上1500℃以下、300℃以上1450℃以下、300℃以上1400℃以下、400℃以上1500℃以下、400℃以上1450℃以下、400℃以上1400℃以下、又はこれらのいずれかのエンドポイントから形成された全てのサブ範囲の温度である。実施形態において、ニッケル合金、コバルト合金、又はステンレス鋼合金は、400℃以上900℃以下の温度で分解し得る。
【0094】
実施形態において、ブラウン体部品62を第2の温度より高く加熱することは、ブラウン体部品62を無酸素環境(例えば、真空チャンバ/不活性雰囲気)で加熱することを含んでもよい。金属の実施形態では、焼結は、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、別の不活性ガス、又は真空下で行われてもよい。セラミックの実施形態では、焼結は、空気中、又は処理される特定の材料に適した任意の他の環境で行われてもよい。
【0095】
実施形態において、方法10における
図2に示されるブロック18の脱バインダ及びブロック20の焼結は、単一の工程で生じる。
【0096】
本明細書に記載される種々の実施形態は、方法10を参照して記載されるが、本明細書に記載されるバインダ溶液の実施形態は、当業者によって公知であり、使用される種々の方法と共に使用され得ることを理解されたい。特に、硬化及び焼結は、多数の異なる方法、多数の異なる工程、及び多数の異なる位置で達成され得る。
【実施例】
【0097】
実施形態は、以下の例によってさらに明確になる。これらの例は、上述の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。
【0098】
1つの比較及び4つの実施例のバインダ溶液を分析のために調製した。比較及び実施例のバインダ溶液の配合組成を表1に(重量%で)示す。
【0099】
【0100】
比較例1及び実施例1、2の各バインダ溶液を用いて、対応するプリント部品の試料を作製した。焼結に続いて、各焼結試料について元素分析(LECO装置: CS844 C/Sアナライザ及びONH836酸素/窒素/水素元素分析装置)を行った。元素分析の結果を表2に示す。
【0101】
【0102】
表2に示すように、実施例1及び2のバインダ溶液を用いて形成した試料は、焼結後に比較例1のバインダ溶液から形成した試料と同様の炭素及び酸素量を有していた。理論によって拘束されることを望むものではないが、バインダ溶液に金属塩NiCl2を添加しても、焼結部品の化学成分(例えばチャーリング)にマイナスの影響はなかったことを示唆している。
【0103】
また、比較例1のバインダ溶液を用いて形成した2つの試料と、実施例1のバインダ溶液を用いて形成した2つの試料とを、
図8(比較例1)及び
図11(実施例1)に示すように2つのセッターブロックにわたってスパン状に配置した。試料は、矩形形状のシリコーン型に散逸性金属前駆体粉体を充填し、熱可塑性バインダ(例えば、ドロッパを介して)を添加して湿式ブロックを作製することにより形成した。シリコーン型を通常のオーブンに入れ、200℃で1時間硬化させた。冷却後、試料ブロックを鋳型から排出した。サンプルをオーブンに入れ、1390℃で6時間焼結した。
図9及び
図10に示すように、比較例1のバインダ溶液を用いて形成した試料は、重力により焼結時に垂れ下がった。
図12及び
図13に示すように、実施例1のバインダ溶液を用いて形成した試料の方がへたりが少なかった。理論によって束縛されることを望むものではないが、比較例1のバインダ溶液を用いて形成された試料と比較して、実施例1のバインダ溶液を用いて形成された試料のへたりが減少したことは、実施例1のバインダ溶液中の散逸性金属前駆体(例えば、NiCl
2)の存在に起因する可能性があると考えられる。
【0104】
発明のさらなる態様は、以下の節の主題によって提供される:
【0105】
1.バインダ溶液の総重量に基づいて0.5重量%以上かつ40重量%以下の散逸性金属前駆体を含むバインダ溶液と、1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドを含む熱可塑性バインダと、溶媒とを含み、前記散逸性金属前駆体及び前記熱可塑性バインダが溶媒中に溶解される溶媒溶液。
【0106】
2.バインダ溶液が、バインダ溶液の総重量に基づいて、1重量%以上かつ20重量%以下の散逸性金属前駆体を含む、先行項のいずれかに記載のバインダ溶液。
【0107】
3.散逸性金属前駆体が、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、半金属、希土類金属、及びこれらの組合せからなる群から選択される、先行項のいずれかに記載のバ
インダ溶液。
【0108】
4.散逸性金属前駆体が、有機金属化合物を含み、前記有機金属化合物が、フェロセン、コバルトセン、鉄ペンタカーボニル、又はこれらの組合せを含む、先行項のいずれかに記載のバインダ溶液。
【0109】
5.散逸性金属前駆体が塩を含み、前記塩がカルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、塩化物、ハロゲン化物、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む、先行項のいずれかに記載のバインダ溶液。
【0110】
6.塩が、塩化ニッケル、塩化鉄、ギ酸ニッケル、塩化銅、硝酸銀、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸アルミニウム、塩化マグネシウム、硝酸バリウム、塩化バリウム、硝酸チタン、又はこれらの組み合わせを含む、先行項のいずれかに記載のバインダ溶液。
【0111】
7.1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドのそれぞれが、1000g/mol以上50,000g/mol以下の平均分子量を有する、先行項のいずれかに記載のバインダ溶液。
【0112】
8.1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドの各々が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ炭酸ビニル、その誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、先行項のいずれかに記載のバインダ溶液。
【0113】
9.バインダ溶液の粘度が1cP以上40 cP以下である、上記いずれかの項に記載のバインダ溶液。
【0114】
10.部品を製造する方法であって、作業面上に微粒子材料の層を堆積させる工程と、前記微粒子材料の層にバインダ溶液を、前記部品の層を表現するパターンで選択的に塗布する工程であって、ここで、前記バインダ溶液が、前記バインダ溶液の総重量に基づいて0.5重量%以上40重量%以下の散逸性金属前駆体と、1つ又は複数の熱可塑性ポリマーストランドを含む熱可塑性バインダと、溶媒と、を含み、前記散逸性金属前駆体と前記熱可塑性バインダとが前記溶媒に溶解されている工程と、前記微粒子材料を堆積させ、前記バインダ溶液を選択的に塗布する工程を繰り返して塗布されたバインダ溶液を含む複数の層の微粒子材料の層を形成する工程と、前記塗布されたバインダ溶液を含む微粒子材料の複数の層の中の塗布されたバインダ溶液を硬化させて、溶媒を蒸発さ、それによってグリーン体部品を形成する工程と、を含む方法。
【0115】
11.塗布されたバインダ溶液を硬化させる段階は、40℃以上80℃以下の温度で、塗布されたバインダ溶液を含む微粒子材料の複数の層を加熱する段階を含む、上記いずれかの項に記載の方法。
【0116】
12.散逸性金属前駆体が、カルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、塩化物、ハロゲン化物、それらの誘導体、及びそれらの組合せから成る群から選択される塩を含む、先行項のいずれかに記載の方法。
【0117】
13.前記微粒子材料は、金属微粒子材料を含み、前記金属微粒子材料は、ニッケル合金、コバルト合金、コバルトクロム合金、チタン合金、アルミニウム基材料、タングステン合金、ステンレス鋼合金、又はこれらの組合せを含む、先行項のいずれかに記載の方法。
【0118】
14.前記方法が、前記グリーン体部品を無酸素環境で第1温度以上に加熱して、前記熱可塑性バインダの少なくとも一部を除去し、前記焼結された散逸性金属前駆体が、前記微粒子材料間に金属材料のくびれ領域を形成することによって、ブラウン体部品を形成するように、前記散逸性金属前駆体の少なくとも一部を焼結する工程と、前記ブラウン体部品を第2温度以上に加熱して、前記微粒子材料を焼結することによって、圧密化部品を形成する工程と、をさらに含む、上記いずれかの項に記載の方法。
【0119】
15.前記微粒子材料が、セラミック微粒子材料を含み、前記セラミック微粒子材料が、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、又はこれらの組合せを含む、先行項のいずれかに記載の方法。
【0120】
16.微粒子材料の複数の層と、前記グリーン体部品の総重量に対して0.5重量%以上5重量%以下の散逸性金属前駆体と、前記グリーン体部品の総重量に対して0.5重量%以上3重量%以下の熱可塑性バインダとを含み、前記熱可塑性バインダが1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドを含み、前記熱可塑性バインダが前記複数の層又は微粒子材料の微粒子材料を結合し、前記グリーン体部品がASTM B312-14に従って測定された5MPa以上の3点曲げ強度を含むグリーン体部品。
【0121】
17.散逸性金属前駆体が、カルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、塩化物、ハロゲン化物、それらの誘導体、及びそれらの組合せから成る群から選択される塩を含む、先行項のいずれかのグリーン体部品。
【0122】
18.前記微粒子材料は、金属微粒子材料を含み、前記金属微粒子材料は、ニッケル合金、コバルト合金、コバルトクロム合金、チタン合金、アルミニウム基材料、タングステン合金、ステンレス鋼合金、又はこれらの組合せを含む、先行項のいずれかに記載のグリーン体部品。
【0123】
19.前記微粒子材料は、セラミック微粒子材料を含み、前記セラミック微粒子材料は、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、又はこれらの組み合わせを含む、先行項のいずれかに記載のグリーン体部品。
【0124】
20.1つ以上の熱可塑性ポリマーストランドの各々が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ炭酸ビニル、その誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、先行項のいずれかのグリーン体部品。
【0125】
上記実施形態、及びそれらの特徴は、例示的なものであり、開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に提供される他の実施形態の任意の1つ又は複数の特徴と単独又は任意の組み合わせで提供することができる。
【0126】
開示の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の修正及び変形を本開示に加えることができることは、当業者に明らかである。したがって、本開示は、それらが特許請求範囲及びそれらの同等物の範囲内に入ることを条件に、本開示の変形及び変形をカバーすることを意図している。
【0127】
以下、本願の付記項を記載する。
(付記項1)
バインダ溶液(36)の総重量に基づいて、0.5重量%以上40重量%以下の散逸性金属前駆体(36a)と、
1つ又は複数の熱可塑性ポリマーストランドを含む熱可塑性バインダ(36b)と、
溶媒であって、散逸性金属前駆体(36a)及び熱可塑性バインダ(36b)が溶媒中に溶解される溶媒と、を含む
バインダ溶液(36)。
(付記項2)
前記散逸性金属前駆体(36a)が、アルカリ土類金属、遷移金属、ポスト遷移金属、半金属、希土類金属、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、付記項1に記載のバインダ溶液(36)。
(付記項3)
散逸性金属前駆体(36a)が、有機金属化合物を含み、前記有機金属化合物が、フェロセン、コバルトセン、鉄ペンタカーボニル、又はこれらの組合せを含む、付記項1又は付記項2に記載のバインダ溶液(36)。
(付記項4)
前記散逸性金属前駆体(36a)が、塩を含み、前記塩が、カルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ギ酸塩、塩化物、ハロゲン化物、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物を含む、付記項1~3のいずれか一項に記載のバインダ溶液(36)。
(付記項5)
前記1つ又は複数の熱可塑性ポリマーストランドの各々が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ炭酸ビニル、その誘導体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、付記項1~4のいずれか一項に記載のバインダ溶液(36)。
(付記項6)
バインダ溶液の粘度が1 cP以上40 cP以下である、付記項1~5のいずれか一項に記載のバインダ溶液(36)。
(付記項7)
部品を製造する方法(10)であって、
微粒子材料(24)の層(22)を作業面(32)上に堆積させる工程と、
微粒子材料(24)の層(22)中に、部品の層を表現するパターンでバインダ溶液(26)を選択的に塗布する工程であって、
前記バインダ溶液(36)は、
前記バインダ溶液(36)の総重量に基づいて、0.5重量%以上40重量%以下の散逸性金属前駆体(36a)、
1つ又は複数の熱可塑性ポリマーストランドを含む熱可塑性バインダ(36b)、及び
溶媒
を含み、前記溶媒は、散逸性金属前駆体(36a)及び熱可塑性バインダ(36b)が溶解される溶媒である工程と、
堆積工程と選択的塗布工程とを繰り返して塗布されたバインダ溶液(36)を含む微粒子材料(24)の複数の層(22)を形成する工程と、
塗布されたバインダ溶液(36)を含む微粒子材料(24)の複数の層(22)中の塗布されたバインダ溶液(36)を硬化させて、溶媒を蒸発させ、それによってグリーン体部品(60)を形成する工程と、
を有する方法(10)。
(付記項8)
前記散逸性金属前駆体(36a)が、カルボン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、フォーマット、塩化物、ハライド、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選
択される塩を含む、付記項7に記載の方法(10)。
(付記項9)
前記微粒子材料(24)が、金属微粒子材料を含み、前記金属微粒子材料が、ニッケル合金、コバルト合金、コバルトクロム合金、チタン合金、アルミニウム基材料、タングステン合金、ステンレス鋼合金、又はこれらの組み合わせを含む、付記項7又は付記項8のいずれかに記載の方法(10)。
(付記項10)
グリーン体部品(60)を無酸素環境で第1温度以上に加熱して、熱可塑性バインダ(36b)の少なくとも一部を除去し、散逸性金属前駆体(36a)の少なくとも一部を焼結して、焼結された散逸性金属前駆体(36a)が微粒子材料(24)間の金属材料(64)のくびれ領域を形成し、それによって、ブラウン体部品(62)を形成し、前記ブラウン体部品(62)を第2温度以上に加熱して微粒子材料(24)を焼結し、それによって、圧密部品(70)を形成する工程を更に有する、付記項9に記載の方法(10)。