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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】二次電池の異常検知装置及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/367 20190101AFI20240507BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20240507BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240507BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20240507BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20240507BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20240507BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/52
H01M10/48 P
G01R31/389
G01R31/396
G01R31/378
H02J7/00 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023025743
(22)【出願日】2023-02-22
(62)【分割の表示】P 2019565083の分割
【原出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2023067894
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2018002680
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018017091
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭
(72)【発明者】
【氏名】豊高 耕平
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/029832(WO,A1)
【文献】特開2013-117410(JP,A)
【文献】特開2012-122787(JP,A)
【文献】特開2016-114584(JP,A)
【文献】特開2013-118757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50
G01R 31/36
G01R 19/00
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1観測値となる二次電池の電圧値を検出する第1の検出手段と、
第2観測値となる二次電池の電流値を検出する第2の検出手段と、
回帰モデルを用いて推定電圧値を算出する算出部と、
前記第1観測値の電圧値と前の時刻に得た推定電圧値との差分を入力する比較器と、前記第1観測値の電圧値と前記前の時刻に得た推定電圧値との差分を入力するニューラルネットワーク構成部と、を有し、前記比較器と前記ニューラルネットワーク構成部との両方の出力のORをとった値又はANDをとった値に基づいて二次電池が異常かどうかを判定する判定部と、を有する二次電池の異常検知装置。
【請求項2】
第1観測値となる二次電池の電圧値を検出する第1の検出手段と、
第2観測値となる二次電池の電流値を検出する第2の検出手段と、
回帰モデルを用いて推定電圧値を算出する算出部と、
前記第1観測値の電圧値と前の時刻に得た推定電圧値との差分を入力する比較器と、前記比較器の出力を入力するニューラルネットワーク構成部と、を有し、前記ニューラルネットワーク構成部の出力に基づいて二次電池が異常かどうかを判定する判定部と、を有する二次電池の異常検知装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記回帰モデルは、状態方程式に基づくカルマンフィルタである二次電池の異常検知装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、前記二次電池は、リチウムイオン二次電池である二次電池の異常検知装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、前記二次電池は、全固体電池である二次電池の異常検知装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の前記異常検知装置を備えた二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一様態は、物、方法、又は、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置または電子機器の製造方法に関する。また、本発明の一様態は、蓄電装置の充電制御方法、蓄電装置の状態推定方法、及び蓄電装置の異常検知方法に関する。特に、蓄電装置の充電システム、蓄電装置の状態推定システム、および蓄電装置の異常検知システムに関する。
【0002】
なお、本明細書中において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものである。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電池(二次電池ともいう)、リチウムイオンキャパシタ、ニッケル水素電池、全固体電池、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
【0003】
また、本発明の一態様は、ニューラルネットワークを用いた蓄電装置の異常検知システム及び蓄電装置の状態推定装置に関する。また、本発明の一態様は、ニューラルネットワークを用いた車両に関する。また、本発明の一態様は、ニューラルネットワークを用いた電子機器に関する。また、本発明の一態様は、車両に限定されず、構造体などに設置された太陽光発電パネルなどの発電設備から得られた電力を貯蔵するための蓄電装置にも適用できる状態推定システム及び設備異常検知システムに関する。
【背景技術】
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、もしくはノート型コンピュータ等の携帯情報端末、ゲーム装置、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車、又は、電動バイクなど、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0005】
また、電気自動車は電動モータのみを駆動部とする車両であるが、エンジンなどの内燃機関と電動モータの両方を備えたハイブリッド自動車もある。自動車に用いられる二次電池も複数個を一つの電池パックとして、複数セットの電池パックが自動車の下部に配置されている。
【0006】
電気自動車やハイブリッド自動車や電動バイクに用いる二次電池は、充電回数、放電深度、充電電流、充電する環境(温度変化)などによって劣化が生じる。使用者の使い方にも依存し、充電時の温度や、急速充電する頻度や、回生ブレーキによる充電量や、回生ブレーキによる充電タイミングなども劣化に関係する可能性がある。また、電気自動車やハイブリッド自動車に用いる二次電池は、経時劣化などにより、短絡などの異常が発生する恐れがある。
【0007】
また、電気自動車やハイブリッド自動車や電動バイクに用いる二次電池は、長期間使用することが前提であるため、十分な信頼性を有することが望まれている。
【0008】
リチウムイオン二次電池は、設計容量(DC)のうち、電池の残容量(RC)が満充電容量(FCC(Full Charge Capacity))にしめる割合、即ち充電率(SOC)が設計容量の0%から100%全て使用する設定になっておらず、過放電を防ぐため0%ではなくマージンが5%(または10%)程度とられている。また、過充電を防ぐため100%ではなくマージン5%(または10%)程度がとられており、結果として、設計容量の5%から95%の範囲内(または10%から90%の範囲内)で使用しているといわれている。実際には二次電池に接続されるBMS(Battery Management System)を用いて上限電圧Vmaxと下限電圧Vminの電圧範囲を設定することで設計容量の5%から95%の範囲内(または10%から90%の範囲内)で使用する。
【0009】
二次電池は使用することや経時変化や温度変化により劣化が生じる。二次電池の内部の状態、特にSOC(充電率)を正確に知ることで二次電池を管理する。SOCを正確に知ることで上限電圧Vmaxと下限電圧Vminの電圧範囲を広くすることもできる。従来ではクーロンカウント法によりSOC推定がされている。
【0010】
特許文献1には、二次電池の残容量の演算に、ニューラルネットワークを用いる一例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許公開第2006/0181245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
二次電池の異常を検出し、例えば二次電池の安全性を低下させる現象を早期に検出し、使用者に警告、または二次電池の動作条件を変更することにより、安全性を確保することを課題の一つとしている。
【0013】
また、従来の二次電池の異常検知は、二次電池の劣化が生じて誤差が発生すると補正が必要であるが、フィードバックによる補正も入らず、不十分であるため精度が低く、精度を高めることも課題の一つとしている。
【0014】
また、二次電池に大きなノイズが発生した場合、二次電池の内部抵抗やSOCなどをモニタリングすると、入力されたノイズデータによって、後に推定されるSOCの数値に誤差が生じる。理想的には、異常検知をおこないつつ、他のパラメータ(内部抵抗やSOCなど)も高い精度で予測する二次電池の制御システムを課題の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
リチウムイオン電池では、電流・電圧・温度のパラメータのみが測定でき、内部抵抗やSOC(充電率)は直接測定することが困難である。そこで、回帰モデル(回帰的な式)、例えば、回帰分析や、カルマンフィルタや、重回帰分析で計算処理して内部抵抗やSOCを推定する。
【0016】
カルマンフィルタは、無限インパルス応答フィルタの一種である。また、重回帰分析は多変量解析の一つであり、回帰分析の独立変数を複数にしたものである。重回帰分析としては、最小二乗法などがある。回帰分析では観測値の時系列が多く必要とされる一方、カルマンフィルタは、ある程度のデータの蓄積さえあれば、逐次的に最適な補正係数が得られるメリットを有する。また、カルマンフィルタは、非定常時系列に対しても適用できる。
【0017】
二次電池の内部抵抗及びSOCを推定する方法として、非線形カルマンフィルタ(具体的には無香料カルマンフィルタ(UKFとも呼ぶ))を利用することができる。また、拡張カルマンフィルタ(EKFともよぶ)を用いることもできる。
【0018】
カルマンフィルタを用いて二次電池の内部抵抗及びSOCを推定することは知られており、その手法のみでは突発的な異常、具体的にはマイクロショートなどを検出することが困難となっている。二次電池の内部抵抗及びSOCを推定する場合には事後状態推定値を出力として扱うが、本発明では、状態推定値は直接使わず、観測値と事前状態推定値の差分を用いることで突発的な異常の検出を可能とする。
【0019】
上記課題を解決するために、本明細書で開示する二次電池の異常検知装置及び異常検知システム及び異常検知方法は、以下の手段を用いる。
【0020】
カルマンフィルタを用い、ある時点における観測値(電圧)と事前状態変数を用いて推定した電圧との差を検出する。あらかじめしきい値電圧を設定し、検出された差電圧により突発的な異常、具体的にはマイクロショートなどを検出する。マイクロショートなどを検出することによって二次電池の異常を早期に検知することができる。
【0021】
マイクロショートとは、二次電池の内部の微小な短絡のことを指しており、二次電池の正極と負極が短絡して充放電不可能の状態になるというほどではなく、微小な短絡部でわずかに短絡電流が流れてしまう現象を指している。マイクロショートの原因の一つは、充放電が複数回行われることによって、正極活物質の不均一な分布により、正極の一部と負極の一部で局所的な電流の集中が生じ、セパレータの一部が機能しなくなる箇所が発生、または副反応による副反応物の発生によりミクロな短絡が生じていると言われている。
【0022】
理想的な二次電池としては、二次電池の小型化のため、セパレータの薄化が望まれており、さらに、高い電圧での急速給電による充電が望まれており、どちらも二次電池にマイクロショートが生じやすい構成となっている。また、マイクロショートが繰り返し発生することで二次電池の異常発熱、及び発火などの重大事故に繋がる可能性がある。
【0023】
従って、マイクロショートが発生した場合に早期に検出し、未然に重大事故を防ぐための異常検知システム、または二次電池の制御システム、または二次電池の充電システムを構成する。マイクロショートは二次電池特有の異常であり、従来、マイクロショートに注目し、マイクロショートを検出する方法及びシステムは存在していなかった。本発明者らは、マイクロショートが発生した時に大きく変動する値を見出し、その値を算出する方法およびシステムを構築する。さらに、AI(AI:Artificial Intelligence)のシステム(ニューラルネットワーク)を用いてフィードバックによる補正を入れて二次電池の異常発生の検出を行う。
【0024】
二次電池の異常発生の検出を行う測定モデルを以下に示す。ここでモデルとは二次電池の異常検知システムのモデルであり、システムへの入力に対して予め定められた手順に従って計算もしくはシミュレーションを行うことによってシステムからの出力を決定する。回帰や学習などの手段によって、システムの入力に対して最適な出力を決定することができる仕組み(例えば、ニューラルネットワーク、隠れマルコフモデル、多項式関数近似など)をモデルとする。これらのモデルは一例であり、限定されない。
【0025】
事前推定予測ステップではモデル及び入力値を利用し、事後推定ステップ(フィルタリングステップとも呼ぶ)では観測値を利用する。
【0026】
【数1】
【0027】
上記式は、システムの状態の遷移を記述する状態方程式である。
【0028】
ある時点(時刻k)において観測値y(k)はx(k)と以下のような関係にある。
【0029】
【数2】
【0030】
は状態空間を観測空間に線形写像する役割を担う観測モデルである。w(k)は観測雑音である。上記式は観測方程式である。
【0031】
状態方程式と観測方程式を合わせて状態空間モデルと呼ぶ。
【0032】
また、事前状態推定値(左辺)は以下の式で表せる。
【0033】
【数3】
【0034】
なお、kは0、1、2、などの整数、kは時間である。u(k)は入力信号であり二次電池の場合電流値となり、x(k)は状態変数を表している。
【0035】
また、事前誤差共分散(左辺であるP(k)は共分散行列の逆行列である)は以下の式で表せる。
【0036】
【数4】
【0037】
事前推定予測ステップでは状態方程式に基づき、事前状態推定値及び状態の事前共分散行列を算出する。時刻kにおける事後状態推定値及び状態の事後共分散行列と状態方程式に基づき、時刻k+1における事前状態推定値及び事前共分散行列を算出する。
【0038】
推定値と実測の電圧(観測値)を比較し、カルマンフィルタにより、誤差の重み付け係数であるカルマンゲインを算出して、推定値を補正する。フィルタリングステップで用いるカルマンゲインg(k)は以下の式で表すことができる。
【0039】
【数5】
【0040】
フィルタリングステップで用いる事後状態推定値(左辺)は、以下の式で表すことができる。
【0041】
【数6】
【0042】
また、フィルタリングステップで用いる事後誤差共分散行列P(k)は以下の式で表すことができる。
【0043】
【数7】
【0044】
上述した二次電池の異常発生の検出を行う測定モデルにより、以下の式の値、即ちある時点における観測値(電圧)と事前状態変数を用いて推定した電圧との差(差電圧)を監視し、その値の挙動が大きく変化した場合をマイクロショートなどの異常が発生したとみなすことで検出する。
【0045】
【数8】
【0046】
比較器などにより上記式の差電圧の値が、あるしきい値を越えたとして信号を出力し、異常を検出した場合、ディスプレイに異常信号を外部に連絡する表示ための信号、またはスピーカにブザーなどの警告のための信号を出力する。本明細書では、「検出」と「検知」の用語は使い分ける。「検知」は、異常データを検出し、その異常データが正しい場合に、外部に連絡する、即ち、他の回路への信号を出力することを検知と呼ぶこととする。「検出」は、異常データをピックアップすることのみを指し、ノイズ(正しくない異常データ)も含む、と定義する。従って、「検出」は「検知」の一部であるが、イコールではなく、「検知」は他の回路への通知(信号出力)を少なくとも含む。
【0047】
また、充電状態から放電状態への切り替え時、または放電状態から充電状態への切り替え時に差電圧が大きく変動し、ノイズが発生する。このノイズの発生は二次電池の異常に繋がる現象ではないため、このノイズを除去するために比較器を複数設けてもよい。
【0048】
本明細書で開示する発明の構成は、第1観測値となる二次電池の電圧値を検出する第1の検出手段と、第2観測値となる二次電池の電流値を検出する第2の検出手段と、状態方程式に基づくカルマンフィルタを用いて事前状態推定値(推定電圧値)を算出する算出部と、第1観測値の電圧値と、前の時刻に得た推定電圧値との差分を求め、あるしきい値範囲を超えると二次電池が異常(マイクロショートなど)であると判定する判定部と、を有する異常検知装置である。
【0049】
上記構成において、判定部は1つまたは複数の比較器を有する。複数の比較器を用いることでノイズを除去でき、異常検出の誤差が低減できる。
【0050】
さらに、ニューラルネットワークを用いて時系列の差電圧のデータを学習し、異常か正常かを判断し検知することが好ましい。上記構成において、第1観測値の電圧値と、前の時刻に得た推定電圧値との差分を入力するニューラルネットワーク構成部と、を有する。
【0051】
また、本明細書で開示する他の構成は、二次電池が異常であるかを判定する異常検知方法であって、状態方程式に基づくカルマンフィルタを用いて推定電圧値を出力する事前推定予測ステップと、事後状態推定値及び事後誤差共分散行列を算出するフィルタリングステップとを有する異常検知方法である。
【0052】
また、本明細書で開示する他の構成は、コンピュータを、状態方程式に基づくカルマンフィルタを用いて事前状態推定値(推定電圧値)を算出する算出部、前記観測値の電圧値と、前の時刻に得た推定電圧値との差分を求め、あるしきい値範囲を超えると二次電池が異常であると判定する判定部、として機能させるためのプログラムである。
【0053】
上記異常検知装置や、上記方法や、上記プログラムを実行するコンピュータを用いて、二次電池の異常検知システムを構成することもできる。コンピュータは、例えば電気自動車の制御装置、スマートフォン、ノート型のパーソナルコンピュータであり、その構成として制御部、記憶部、及び入出力部を有する。制御部はCPU(またはMPU、MCU(Micro Controller Unit))などを有する。また、制御部は、GPU(Graphics Processing Unit)を用いることもできる。また、CPUとGPUを一つに統合したチップをAPU(Accelerated Processing Unit)と呼ぶこともあり、このAPUチップを用いることもできる。また、AIシステムを組み込んだIC(推論チップとも呼ぶ)を用いてもよい。AIシステムを組み込んだICは、ニューラルネット演算を行う回路(マイクロプロセッサ)と呼ぶ場合もある。
【0054】
記憶部はRAM、ROM、及びHDDなどを有する。入出力部は操作部、表示部、及び通信部などを有する。また、上記プログラムは、コンピュータの記憶部に記憶されていることに限定されず、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されたプログラムをコンピュータが読みだして実行するようにしてもよい。コンピュータが読み取り可能な記憶媒体は、例えばCD-ROMなどのディスク、磁気テープ、USBメモリ、フラッシュメモリなどである。また、インターネット、LAN(Local Area Network)、無線LAN等の接続回線に接続された装置に上記プログラムを記憶させておき、コンピュータがこれらの接続回線からプログラムを読みだして実行するようにしてもよい。
【0055】
また、本明細書で開示する他の構成は、マイクロショートを検知する異常検知システムであって、第1観測値となる二次電池の電圧値を検出する第1の検出手段と、第2観測値となる二次電池の電流値を検出する第2の検出手段と、状態方程式に基づくカルマンフィルタを用いて事前状態推定値(推定電圧値)を算出する算出部と、第1観測値の電圧値と、前の時刻に得た推定電圧値との差分を求め、あるしきい値範囲を超えると二次電池が異常(マイクロショートなど)であると判定する判定部と、を有し、マイクロショート起因のデータの異常を検知する異常検知システムである。
【0056】
本明細書で開示する二次電池の異常検知システムは、常時または定期的に二次電池の監視を行う。サンプリング周期(及び演算周期)は適宜設定することができる。また、本明細書で開示する二次電池の異常検知システムは、二次電池の監視システムとも呼べる。さらに、温度センサや、カメラや、ガスセンサなどを用いて二次電池の外表面温度の異常、外形変形などの異常を検出することも二次電池の異常検知システムに含めると、より確実に異常検出を可能とすることもできる。
【0057】
異常と判断した予測誤差をそのままカルマンフィルタに入力せずに代わりに正常と判断した予測誤差を入力する。異常値を用いず二次電池の内部抵抗及びSOCを算出することで推定の精度を高める。
【0058】
本明細書で開示する発明の他の構成は、二次電池の充電状態を推定する二次電池の状態推定方法であって、二次電池から観測値のデータを取得し、回帰モデルを用いて事前状態推定値を算出し、観測値と事前状態推定値の差である予測誤差電圧Vdを算出し、予測誤差電圧Vdのデータが予め設定したしきい値を超えるか否かに基づいてデータがノイズかどうかを判定し、ノイズと判定されたデータに代えて、異常検出前のk個のデータの平均値を回帰モデルに入れ替えて入力して補正し、ノイズ検出後も異常検知を続ける二次電池の状態推定方法である。
【0059】
マイクロショートの問題は充電中に発生する。例えば1本のみの電池で構成されている場合は、充電器で電流が制御されるため、マイクロショート時には見た目の電流値は変化せず、電圧値に変化が現れる。ただし並列電池になると、電圧変化は小さくなり検出が難しくなる。また、この電圧変化は電池使用の上下限電圧範囲内にあるため、特別な検知機構が必要である。また、電流に関しては並列電池では、マイクロショートが発生すると内部抵抗が低くなるため、健常電池に流れる電流量は相対的に小さくなり、異常電池に多くの電流が流れることになり危険である。ただし、組電池全体の電流は制御された値が保たれる為、異常を検知することが難しい。また、一般的な組電池の構成であれば、各直列段の電圧をモニターすることが普通であるが、全電池の電流をモニターすることはコスト、配線の煩雑さから採用するのは難しい。
【0060】
図14にフロー図を示したように、比較回路で信号REFと比較して小さい、即ち、式8の値<REFとなった時をマイクロショートなどの異常発生とみなし、この異常を検出した後、予測誤差のデータを作成、例えば1ステップから4ステップ前までの正常な予測誤差の平均をカルマンフィルタに投入する。異常を検知した後も正確にSOCを求めることができる。カルマンフィルタの利点は、高精度に残容量予測が可能であり、さらに初期残容量が未知であったとしても残容量予測が可能であるといえる。
【0061】
従来、マイクロショート発生前後で推定値に誤差が生じ、真の容量値とずれが発生する問題があった。マイクロショート発生に起因するデータを取り除き、正常な値を入力することで推定の結果の精度を上げることができる。
【0062】
そこで、異常検知の元となったデータを異常検知後の推測に用いないようにすることで、異常検知後にもマイクロショートが繰り返し発生するまでは、二次電池の使用を可能とすることができる。
【0063】
二次電池の充電状態の推定を行う推定方法を以下に示す。二次電池の異常発生の検出を行った後、引き続き推定を行う手順を繰り返す。推定には、回帰や学習などの手段によって、システムの入力に対して最適な出力を決定することができる仕組み(例えば、ニューラルネットワーク、隠れマルコフモデル、多項式関数近似など)を用いる。学習を行うためには学習のための大量のデータ及び分析を用いることが好ましいため、ワークステーションまたはサーバアプライアンス上のサイト内で実施してもよく、その場合には1以上のサーバを用い、データの蓄積、及び分析を自動化またはオペレータの連携を伴う半自動化で行う。また、予め大量のデータの記憶及び分析が終了し結果が得られている場合には、それらの結果をシステム、具体的にはプログラムまたはICチップのメモリに組み込むことでサーバを用いることなく異常検出及び充電状態の推定を行うこともできる。
【0064】
また、二次電池を充電するために無線で電力を給電する場合においても、本明細書で開示する二次電池の異常検知システムを用いることもできる。数W以上の電力を、数十センチ以下に離した距離で無線伝送する方式としては、電磁誘導方式、磁界共鳴方式がある。電磁誘導方式としては、Qi(チー)規格がある。また磁界共鳴方式としては、WiPower規格がある。送電装置からの電力を受電コイルで受け取り、その受電コイルと二次電池の間に異常検知装置を設ければよい。異常検知装置が異常検知した場合には、送電装置からの電力をストップする指示を通信機能(無線LANやブルートゥース(Blue tooth(登録商標)))を用いて行う。
【0065】
本明細書で以下に説明される実施形態は、種々のコンピュータハードウェア、若しくはソフトウェアを含む、専用コンピュータまたは汎用コンピュータの使用を含む。また、本明細書で以下に説明される実施形態は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体を使用して実装することができる。また、記録媒体は、RAM、ROM、光ディスク、磁気ディスク、またはコンピュータによってアクセスされうる任意の他のストレージ媒体を含んでもよい。また、本明細書で以下に説明される実施形態に一例として示されているアルゴリズム、構成要素、フロー、プログラムなどはソフトウェアにおいて実装される、或いはハードウェア及びソフトウェアの組み合わせにおける実装が可能である。
【発明の効果】
【0066】
上述の数式8の値(差電圧)を監視することにより容易、且つ、精度の高い二次電池の異常検出が可能となる。さらにニューラルネットワークを用いてフィードバックによる補正を入れて二次電池の異常検出を行うことで、より精度の高い二次電池の異常検出が可能となる。
【0067】
また、一つの二次電池に対しての異常検知にかぎらず、直列接続された複数の二次電池に対して異常検知を行うこともできる。
【0068】
また、二次電池は電解液を用いるリチウムイオン二次電池に限定されず、固体電解質を用いる全固体電池、ナトリウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池なども用いることができる。カリウムイオン二次電池は、リチウムやナトリウムに比べて溶媒を引き寄せる力が弱く、イオンが自由に電解液中を移動できる。二次電池の種類やサイズが変更される場合には、しきい値もその二次電池に合わせて適宜設定する。全固体電池においてもマイクロショートは発生しうるため、本明細書で開示する異常検知システムは、有用である。
【0069】
本明細書で開示する異常検知システムは、ICチップなどに搭載し、車両のシステムの一部に組み込むこともでき、有用である。また、他の機能回路(ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)、GPU(Graphics Processing Unit)、PMU(Power Management Unit)など)と統合した一つのICチップで構成されてもよい。
【0070】
本明細書で開示する異常検知システムは、検出タイミングを短縮することができ、リアルタイムでの異常検出を実現できる。また、充電時または放電時など二次電池の状態にかかわらず異常検出を実現できる。
【0071】
また、リアルタイムで二次電池の異常を検知し、異常の検知に用いたノイズを除去して他のパラメータ(内部抵抗やSOCなど)も高い精度で予測する二次電池の制御システムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】本発明の一態様を示す等価回路モデルである。
図2】(A)は、本発明の一態様を示す機能ブロック図であり、(B)は差電圧と時間の関係を示す図である。
図3】本発明の一態様を示す機能ブロック図である。
図4】本発明の一態様を示す機能ブロック図である。
図5】本発明の一態様を示す機能ブロック図である。
図6】本発明の一態様を示す機能ブロック図である。
図7】本発明の一態様を示す機能ブロック図である。
図8】本発明の一態様を示す測定モデルを用いたシミュレーション結果を示すグラフ図である。
図9】本発明の一態様を示す測定モデルを用いたシミュレーション結果を示すグラフ図である。
図10】本発明の一態様を示す電気自動車のブロック図及び二次電池の斜視図である。
図11】移動体の一例を示す図。
図12】二次電池の一例を示す斜視図。
図13】二次電池の一例を示す断面図及び斜視図。
図14】本発明の一態様を示すフローである。
図15】本発明の一態様を示す等価回路モデルを示す図である。
図16】本発明の一態様を示すシステム図である。
図17】本発明の一態様を示すシステム図である。
図18】本発明の一態様を示すフローである。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0074】
(実施の形態1)
図1は、異常検出に用いる電池の等価回路モデル(電池モデルとも呼ぶ)の一例である。図1中に示すR0は直列抵抗成分、R1、R2、R3、R4は抵抗である。また、C2、C3、C4は容量である。
【0075】
図1中のマイクロショートモデル400にパルス信号をある一定時間間隔で印加してマイクロショートを疑似的に発生させて電池モデルの数値シミュレーションを行う。本実施の形態では数値シミュレーションを用いて説明するが、実際には異常のある電池の電圧を監視する。
【0076】
図1中に示すOCVは、開回路電圧(Open Circuit Voltage)の略称であり、電池が外部回路から切り離されて十分時間が経ち、電池内部の電気化学反応が平衡状態となった時の正極と負極の電位差としている。
【0077】
図2(A)は機能ブロックの一例を示す図であり、推定ロジックとも呼べる。
【0078】
図2(A)において遅延回路402は、時刻kでの状態推定値を時刻(k+1)での推定に用いるための回路である。図2(A)においてAとbはモデルから得られる行列である。Cは、観測係数ベクトルである。Z-1は遅延回路である。
【0079】
図2(A)において符号401で示した部分が観測値(電圧)と事前状態変数を用いて推定した電圧との差(差電圧)の部分である。差電圧が急峻に変化するとマイクロショートが発生したとみなすことができるため、この差電圧の値を比較器403に入力し、比較器403にて参照信号(REF)で与えられたしきい値と比較することで異常かどうかの判定を行う。比較器403において入力された2つの値のうち、比較して低い方を出力LOとする。1ステップ期間内に数回にわたりREFを変更してマルチレベルで比較を行ってもよい。
【0080】
図2(B)に二次電池の端子電圧と、差電圧と時間の関係グラフを示す。横軸が時間、縦軸が電圧である。端子電圧の値では変動がそれほど大きくないため、マイクロショートの発生タイミングを特定することが困難である。一方、図2(B)に示すように中央に急峻な変動が差電圧(観測値と事前状態推定値の電圧差)に表れており、マイクロショートの発生のタイミングと一致している。従って差電圧を監視することでマイクロショートの発生を判定できる。
【0081】
さらに、同じ入力データを用いて図2(A)で示される推定ロジックを一部共通させて用いることでSOC推定値も出力することもできる。回路規模を大きくすることなくSOC推定値を出力することができる。
【0082】
(実施の形態2)
本実施の形態では、さらにニューラルネットワーク(NN)を用いて精度を高める構成について以下に説明する。
【0083】
図3は機能ブロックの一例を示す図である。実施の形態1とはニューラルネットワーク部404を有している点で異なっている。図3(A)中のNNはニューラルネットワーク部であり、出力LO(k)としている。
【0084】
図3(A)において符号401で示した部分が観測値(電圧)と事前状態変数を用いて推定した電圧との差(差電圧)の部分であり、この差電圧の値をニューラルネットワーク部404に入力し、学習データと比較することで異常かどうかの判定を行う。また、ニューラルネットワーク部404に入力されたデータを蓄積し、学習データの一部とすることでさらに精度を上げることもできる。
【0085】
また、図3(B)は他のバリエーションの一つである。図3(B)に示す機能ブロックは、比較器とニューラルネットワーク(NN)の両方に差電圧の値を入力し、両方の出力のORをとる。また、ORではなく、ANDとしてもよい。
【0086】
また、図4(A)は他のバリエーションの一つである。図4(A)に示す機能ブロックは、比較器の出力をニューラルネットワーク(NN)に入力し、出力された値で異常かどうかの判定を行う。
【0087】
また、図4(B)は他のバリエーションの一つである。図4(B)に示す機能ブロックは、比較器の出力をニューラルネットワーク(NN)に入力し、比較器とニューラルネットワーク(NN)のANDをとった値で異常かどうかの判定を行う。
【0088】
また、図5(A)は、他のバリエーションの一つである。図5(A)に示す機能ブロックは、カルマンゲインg(k)を通過後のデータを用いて異常検出する構成としている。
【0089】
(実施の形態3)
本実施の形態では、さらにもう一つの比較器を用いて精度を高める構成について以下に説明する。
【0090】
時間の経過と差電圧の値の関係を調べ、マイクロショートの発生時とは異なる誤差がある。本発明者らは、二次電池において充電と放電の切り替え時に誤差が発生することを見出した。図6(A)に示すように端子電流が放電のタイミングで変化しているようすがわかる。
【0091】
充電と放電の切り替え時にはプラス側のオーバーシュートが見られない。これに対し、図6(B)に示したようにマイクロショートが発生するとプラス側とマイナス側の両方にオーバーシュートが生じている。プラス側のオーバーシュートは予測誤差分の修正が次のステップに反映されたためである。先にマイナス側のオーバーシュートが生じた後、プラス側にオーバーシュートが生じている。この違いにより、プラス側のオーバーシュートのみの場合には誤差としてマイクロショート発生と判定しない構成とする。
【0092】
図5(B)に示したように比較器を2つ設け、比較器1にマイナス側のオーバーシュートの値(REF1)を入力し、比較器2にプラス側のオーバーシュートの値(REF2)を入力し、遅延回路を用いて1ステップ前の比較器の出力と現時点での比較器の出力をAND演算する。
【0093】
上記構成により充電と放電の切り替え時などのノイズを除去し、マイクロショートの異常検出の精度を高めることができる。
【0094】
本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0095】
(実施の形態4)
本実施の形態では、図10を用いて電気自動車(EV)に適用する例を示す。
【0096】
図10(A)に電気自動車のブロック図の一例を示す。
【0097】
電気自動車には、メインの駆動用の二次電池として第1のバッテリ301と、モータ304を始動させるインバータ312に電力を供給する第2のバッテリ311が設置されている。本実施の形態では、第2のバッテリ311の電源で駆動する異常監視ユニット300が第1のバッテリ301を構成する複数の二次電池をまとめて監視する。
【0098】
第1のバッテリ301は、主に42V系(高電圧系)の車載機器に電力を供給し、第2のバッテリ311は14V系(低電圧系)の車載機器に電力を供給する。第2のバッテリ311は鉛蓄電池がコスト上有利のため採用されることが多い。鉛蓄電池はリチウムイオン二次電池と比べて自己放電が大きく、サルフェーションとよばれる現象により劣化しやすい欠点がある。第2のバッテリ311をリチウムイオン二次電池とすることでメンテナンスフリーとするメリットがあるが、長期間の使用、例えば3年以上となると、製造時には判別できない異常発生が生じる恐れがある。特にインバータを起動する第2のバッテリ311が動作不能となると、第1のバッテリ301に残容量があってもモータを起動させることができなくなることを防ぐため、第2のバッテリ311が鉛蓄電池の場合は、第1のバッテリから第2のバッテリに電力を供給し、常に満充電状態を維持するように充電されている。
【0099】
本実施の形態では、第1のバッテリ301と第2のバッテリ311の両方にリチウムイオン二次電池を用いる一例を示す。第2のバッテリ311は鉛蓄電池や全固体電池を用いてもよい。
【0100】
円筒型の二次電池の例について図12(A)及び図12(B)を参照して説明する。円筒型の二次電池600は、図12(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0101】
図12(B)は、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。二次電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO)やリン酸鉄リチウム(LiFePO)などの活物質を含む正極と、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な黒鉛等の炭素材料からなる負極と、エチレンカーボネートやジエチルカーボネートなどの有機溶媒に、LiBFやLiPF等のリチウム塩からなる電解質を溶解させた非水電解液などにより構成される。
【0102】
円筒型の二次電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0103】
電解液を用いるリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、外装体とを有する。なお、リチウムイオン二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「-極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
【0104】
図12(C)に示す2つの端子には充電器が接続され、蓄電池1400が充電される。図12(C)中において1406は、電解液、1408はセパレータである。蓄電池1400の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。図12(C)では、蓄電池1400の外部の端子から、正極1402の方へ流れ、蓄電池1400の中において、正極1402から負極1404の方へ流れ、負極から蓄電池1400の外部の端子の方へ流れる電流の向きを正の向きとしている。つまり、充電電流の流れる向きを電流の向きとしている。
【0105】
本実施の形態では、リチウムイオン二次電池の例を示すが、リチウムイオン二次電池に限定されず、二次電池の正極材料として例えば、元素A、元素X、及び酸素を有する材料を用いることができる。元素Aは第1族の元素および第2族の元素から選ばれる一以上であることが好ましい。第1族の元素として例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を用いることができる。また、第2族の元素として例えば、カルシウム、ベリリウム、マグネシウム等を用いることができる。元素Xとして例えば金属元素、シリコン及びリンから選ばれる一以上を用いることができる。また、元素Xはコバルト、ニッケル、マンガン、鉄、及びバナジウムから選ばれる一以上であることが好ましい。代表的には、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、リン酸鉄リチウム(LiFePO)が挙げられる。
【0106】
負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極活物質層は、導電助剤およびバインダを有していてもよい。
【0107】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。
【0108】
また、二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンを用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。
【0109】
また、タイヤ316の回転による回生エネルギーは、ギア305を介してモータ304に送られ、モータコントローラ303やバッテリーコントローラ302から第2のバッテリ311に充電、または第1のバッテリ301に充電される。
【0110】
また、第1のバッテリ301は主にモータ304を回転させることに使用されるが、DCDC回路306を介して42V系の車載部品(電動パワステ307、ヒーター308、デフォッガ309など)に電力を供給する。後輪にリアモータを有している場合にも、第1のバッテリ301がリアモータを回転させることに使用される。
【0111】
また、第2のバッテリ311は、DCDC回路310を介して14V系の車載部品(オーディオ313、パワーウィンドウ314、ランプ類315など)に電力を供給する。
【0112】
また、第1のバッテリ301は、複数の二次電池を含むモジュールの集合で構成される。例えば、図12(A)に示した円筒形の二次電池600を用いる。図10(B)に示すように、円筒形の二次電池600を、導電板613および導電板614の間に挟んでモジュールを構成してもよい。図10(B)には二次電池間にスイッチを図示していない。複数の二次電池600は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後、さらに直列に接続されていてもよい。複数の二次電池600を有するモジュールを構成することで、大きな電力を取り出すことができる。
【0113】
車載の二次電池において、複数の二次電池からの電力を遮断するため、工具を使わずに高電圧を遮断できるサービスプラグまたはサーキットブレーカを有しており、第1のバッテリ301に設けられる。例えば、2個から10個のセルを有する電池モジュールを48個直接に接続する場合には、24個目と25個目の間にサービスプラグまたはサーキットブレーカを有している。
【0114】
図11において、本発明の一態様である二次電池の異常検知システムを用いた車両を例示する。図11(A)に示す自動車8400の二次電池8024は、電気モーター8406を駆動するだけでなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。自動車8400の二次電池8024は、図10(B)に示した円筒形の二次電池600を、導電板613および導電板614の間に挟んでモジュールとしたものを用いてもよい。
【0115】
図11(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する二次電池にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図11(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された二次電池8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8500に搭載された二次電池8024を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0116】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0117】
また、図11(C)は、本発明の一態様の二次電池を用いた二輪車の一例である。図11(C)に示すスクータ8600は、二次電池8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。二次電池8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。
【0118】
また、図11(C)に示すスクータ8600は、座席下収納8604に、二次電池8602を収納することができる。二次電池8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。
【0119】
二次電池8602は、全固体電池を用いることができる。二次電池8602は、複数のラミネート型の二次電池で構成する。ここでは全固体電池を用いたラミネート型の二次電池の一例を図13(D)に示す。
【0120】
図13(D)に示すラミネート型の二次電池500は、正極リード電極510と負極リード電極511を有する。
【0121】
ラミネート型の二次電池の作製手順を簡単に説明する。まず、正極と負極を用意する。正極は正極集電体を有し、正極活物質層は正極集電体の表面に形成されている。また、正極は正極集電体が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負極は負極集電体を有し、負極活物質層は負極集電体の表面に形成されている。また、負極は負極集電体が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。
【0122】
そして、負極、固体電解質層及び正極を積層する。ここでは負極を5組、正極を4組使用する例を示す。次に、正極のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いればよい。同様に、負極のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極511の接合を行う。
【0123】
次に外装体上に、負極、固体電解質層及び正極を配置する。固体電解質層としては、リチウムイオンを伝導できる固体成分を含む材料層(セラミックなど)であればよい。例えば、固体電解質層はセラミック粉末またはガラス粉末をスラリー化してシートを成型する。セラミックの定義は金属、非金属を問わず、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物などの無機化合物の材料である。ガラスは非晶質であり、ガラス転移現象を有する材料と定義されるが、微結晶体化させたものをセラミックガラスと呼ぶこともある。セラミックガラスは結晶性を有するため、X線回析法により確認することができる。固体電解質としては酸化物固体電解質、硫化物固体電解質などを用いることができる。また、正極活物質層や負極活物質層にも固体電解質を含ませており、導電助剤を含ませてもよい。導電助剤は、電子伝導性を有している材料であればよく、例えば、炭素材料、金属材料などを用いることができる。
【0124】
また、正極活物質として用いられる酸化物固体電解質としては、LiPO、LiBO、LiSiO、LiGeO、LiNbO、LiVO、LiTiO、LiZrOなどを用いることができる。また、これらの複合化合物であってもよく、例えばLiBO-LiSiOなどを挙げることができる。また、固体電解質の表面は1nm以上20nm以下のコート層で少なくとも一部覆われていてもよく、コート層の材料は、Liイオン伝導性酸化物を用いる。
【0125】
負極活物質として用いられる酸化物固体電解質としては、Nb、LiTi12、SiOなどを挙げることができる。本明細書等において、SiOは例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、SiOと比較してシリコンの組成が多い材料を指し、SiOと表すこともできる。ここでxは1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下がより好ましい。
【0126】
また、正極活物質として用いられる硫化物固体電解質としては、Li及びSを含む材料、具体的にはLi11、LiS-SiS、LiS-Pなどを挙げることができる。
【0127】
次に、外装体を折り曲げる。その後、外装体の外周部を接合する。外装体は金属箔と有機樹脂フィルムとを積層したラミネートフィルム、例えば、アルミニウム箔やステンレス箔を用い、接合には、例えば熱圧着等を用いればよい。このようにして、図13(D)に示すラミネート型の二次電池500を作製することができる。また、ここでは1枚のラミネートフィルムを用いて接合する例を示したが、2枚のラミネートフィルムを重ねて周縁部を接着させて封止する構成としてもよい。
【0128】
また、図13(A)は、固体電池の概念を示す図であり、正極81と負極82の間に固体電解質層83を有する。また、固体電池には薄膜型全固体電池とバルク型全固体電池がある。薄膜型全固体電池は、薄膜を積層することによって得られる全固体電池であり、バルク型全固体電池は微粒子を積層することによって得られる全固体電池である。
【0129】
図13(B)は、バルク型全固体電池の一例であり、正極81の近傍に粒子状の正極活物質87と、負極82の近傍に粒子状の負極活物質88を有し、それらの隙間を埋めるように固体電解質層83が配置される。正極81と負極82との間を加圧プレスによって空隙がなくなるように複数種類の粒子を充填させている。
【0130】
また、図13(C)は、薄膜型全固体電池の一例である。薄膜型全固体電池は気相法(真空蒸着法、溶射法、パルスレーザー堆積法、イオンプレーティング法、コールドスプレー法、エアロゾルデポジション法、スパッタリング法)を用いて成膜する。図13(C)では基板84上に配線電極85、86を形成した後、配線電極85上に正極81を形成し、正極81上に固体電解質層83を形成し、固体電解質層83及び配線電極86上に負極82を形成してリチウムイオン蓄電池を作製する例である。基板84としては、セラミックス基板、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板などが挙げられる。
【0131】
本実施の形態は、他の実施の形態の記載と適宜組み合わせることができる。
【0132】
(実施の形態5)
二次電池のSOCを推定する方法の一例を図14に示す。図14は、フロー図であり、マイクロショートなどの異常を検知した後、予測誤差のデータを作成、例えば1ステップから4ステップ前までの正常な予測誤差の平均をカルマンフィルタに投入する。異常を検出した後も正確にSOCを求めることができる。
【0133】
比較器などにより上記式の差電圧の値が、あるしきい値を越えたとして信号を出力し、異常を検知する。比較器に入力するしきい値の電圧信号REFと比較を行って異常を判断する。異常を検知したタイミングのデータは、後の推定で用いず、代わりに数ステップ前までの平均値を推定アルゴリズムに入力するようにする。上記数式8の差電圧の値が、電圧信号REFを下回ると、前のステップの数回分の平均値と差し替える。従って、上記数式8の差電圧の値が、比較器に入力される電圧信号REFを下回ると、その差電圧はカルマンフィルタのループには投入されない。代わりに平均値が推定アルゴリズムに入力されることで、異常が発生してもSOCの推定などを精度高く行うことができる。マイクロショートの異常を検知したタイミングのデータを用いず、代わりに数ステップ前までの平均値を推定アルゴリズムに入力すれば、上記数式8の差電圧の値は、マイクロショートの発生しない場合のデータと近似する。
【0134】
図14のフローを実行するための具体的なシステム図を図16に示す。図16において、二次電池の充電状態推定装置は、少なくとも比較器403と、遅延回路と、AND回路405と、マルチプレクサ407を有している。AND回路にはクロック信号CLKを入力する。また、比較器403には参照信号REFを入力する。図16は一例であり、特に限定されず、二次電池の充電状態を推定する二次電池の充電状態推定装置は、第1観測値となる二次電池の電圧値を検出する検出手段と、回帰モデルを用いて推定電圧値を算出する算出部と、第1観測値の電圧値と、前の時刻に得た推定電圧値との差分を求め、あるしきい値範囲を超えると二次電池が異常であると判定する判定部と、を有し、判定部は、1つまたは複数の比較器と、マルチプレクサと、遅延回路を有する。図16中のMUXはマルチプレクサである。二次電池の充電状態推定装置は、さらに第2観測値となる二次電池の電流値を検出する第2の検出手段を有してもよい。図16では、FIR(Finite Impulse Response)フィルタを用いている。また、図17にシステム図の異なる一例を示す。図17では、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタを用いている。図17中のNは時間kのうち十分大きな値である無限時間とした場合を指している。
【0135】
また、異常を検出したデータをカルマンフィルタのループに入力しないとしても、異常検出時のマイクロショートにより消失した電流を正確に計算し、反映させることでSOCをより正確な数値とすることができる。また、図18にフロー図を示す。図18に示したように、比較回路で信号REFと比較して小さい値をLOとして出力、即ち、式8の値<REFとなった時をマイクロショートなどの異常発生とみなし、この異常を検知する。
【0136】
異常を検出したデータは予測誤差電圧であり、状態方程式を用いてマイクロショート時の電流Imicroを求める。図15(A)及び図15(B)に示す等価回路モデルを用いて以下に説明する。図15(A)及び図15(B)において、OCVは放電時の電位差であり、V、V、V、Vは、各箇所での電圧である。
【0137】
【数9】
【0138】
上記式は、図15(A)における回路の状態変数x(k)である。図15(A)においてはマイクロショート発生前の状態と対応する等価回路モデルである。
【0139】
また、u(k)は電流IBAT(k)である。u(k)は入力信号であり二次電池の場合、電流値となる。
【0140】
【数10】
【0141】
状態方程式を構成するbは定数であり、Tはサンプリング周期である。
【0142】
【数11】
【0143】
上記式はカルマンフィルタの状態方程式である。なお、上記式中の抵抗R、R、R、容量C、C、C、満充電容量FCCも式を拡張して状態変数x(k)に入れてもよい。
【0144】
次にマイクロショート発生時の状態を図15(B)に示す等価回路モデルとみなして以下に算出手順を示す。
【0145】
【数12】
【0146】
上記式は、マイクロショート発生時を時刻k+1とした場合の関係式である。また、各箇所での電流は以下に示すことができる。
【0147】
【数13】
【0148】
また、抵抗R及び容量Cにかかる電圧Vは、以下の式となる。
【数14】
【0149】
また、抵抗R及び容量Cにかかる電圧Vは、以下の式となる。
【0150】
【数15】
【0151】
また、抵抗R及び容量Cにかかる電圧Vは、以下の式となる。
【0152】
【数16】
【0153】
上記式のうち以下に示す数値が1より非常に小さい場合や精度をそれほど求めない場合は、以下に示す値を1としてもよい。
【0154】
【数17】
【0155】
上記式を1とする場合、計算量を減らせることができる。
【0156】
【数18】
【0157】
上記式を計算してマイクロショート時の電流(Imicro)を求めることができる。上記式に示すように、1ステップ前で推定したR、OCV、予測誤差電圧を含んだ電圧VIN及び電流IBATの観測値を用いてマイクロショート時の電流を算出している。R(k)は観測誤差の共分散である。
【0158】
【数19】
【0159】
上記式中のSOC(k)は事前推定予測ステップ時のカルマンフィルタ内部のSOCデータに相当する。また、上記式中の左辺の値をフィルタリングステップ直前にカルマンフィルタ内部のSOCデータに置き換えることでカルマンフィルタの内部のSOCにマイクロショート時の電流を反映することができる。
【0160】
上述した演算を行うSOCの推定処理において、上記数式を実行できるプログラムをマイクロコンピュータもしくはマイクロプロセッサなどに移植することで、SOCを算出することもできる。
【0161】
本実施の形態は他の実施の形態と組み合わせることができる。
【実施例1】
【0162】
図7は、カルマンフィルタの演算を行う機能ブロックの一例である。実施の形態1とは比較器がない部分以外は同一である。図7中の符号401で示した差電圧の値が、マイクロショートの発生にとって重要であり、その値を監視することで二次電池の異常検出を行う。
【0163】
マイクロショートを定期的に発生させた電流を疑似的に作成したデータを用い、シミュレーションを行う。
【0164】
図8はシミュレーション結果を示しており、横軸に時間、縦軸に差電圧、具体的には観測値(電圧)と事前状態変数を用いて推定した電圧との差(差電圧)を示している。
【0165】
図8において、定期的にプラス側及びマイナス側にオーバーシュートが見られているデータがマイクロショート有りのデータである。また、マイナス側のみにオーバーシュートがみられるデータがマイクロショートなしのデータであり、比較例である。また、マイナス側のみにオーバーシュートがみられる点は、充電から放電に切り替える際に電圧が変動する点に対応している。図8において比較例の、マイナス側のみにオーバーシュートがみられる点は、-0.0213Vであるため、この値よりも大きい、例えば-0.03Vをしきい値とすれば誤差として異常と検出しないようにすることもできる。
【0166】
なお、図9図8のデータを加工し、見やすくするために縦軸を左右に分けて表示している。また、図8の検証に用いたデータは、マイクロショートの波形を定期的に入れたデータであり、図8において、13回発生させているが、実際の二次電池は、ランダムに発生し、ピークの大きさも二次電池の使用状況(充電または放電)によっても変化しうる。いずれにおいてもマイクロショートが検出されれば、その二次電池は劣化が加速される、或いは使用不可となるため、検出されたことの警告を使用者に通知できることは有用である。マイクロショートの発生の原因はまだ特定されていないが、製造時の金属紛の混入という説もあり、製造直後では異常検出できないが、充放電を繰り返すことによって異常部分(導通部分)が成長形成され、マイクロショートが発生する可能性がある。マイクロショートの発生する二次電池を充放電すると劣化が急激に進み、突然に使用不可能となる場合がある。従って、マイクロショートの検出が可能な本発明の手法は有用である。
【0167】
カルマンフィルタでは、バッテリ等価回路モデルにバッテリの入力値を入力し、それらの出力を比較し、差があれば、この差にカルマンゲインをかけてフィードバックし、誤差が最小になるようにバッテリ等価回路モデルを修正していく。これを逐次繰り返す。
【0168】
なお、カルマンフィルタは逐次合わせていくシステムなので図8及び図9の開始付近の誤差は無視できる。
【0169】
図7中の符号401で示した差電圧の値は、-0.0631Vを最低値とし、+0.0324Vを最大値としている。また、マイクロショートを発生させた点での0に近いピーク点は、マイナス側で-0.0386V、プラス側で+0.0186Vであった。従って、全てのマイクロショートを検出するのであれば、しきい値をマイナス側で-0.0386V、プラス側で+0.0186Vとし、比較器などを用いて検出すればよい。これらの値は用いる二次電池によって異なるため、用いる二次電池の特性データを用いて適宜予めシミュレーションを行い、その結果に基づいて、しきい値などを決定すればよい。
【0170】
なお、図8図9に示すシミュレーション結果は、アナログ・デバイセズ社が提供する回路シミュレータであるLTspice(Simulation program with integrated circuit emphasis)を用いて得たものである。
【符号の説明】
【0171】
1 比較器、2 比較器、81:正極、82:負極、83:固体電解質層、84:基板、85:配線電極、86:配線電極、87:正極活物質、88:負極活物質、300:異常監視ユニット、301:バッテリ、302:バッテリーコントローラ、303:モータコントローラ、304:モータ、305:ギア、306:DCDC回路、307:電動パワステ、308:ヒーター、309:デフォッガ、310:DCDC回路、311:バッテリ、312:インバータ、313:オーディオ、314:パワーウィンドウ、315:ランプ類、316:タイヤ、400:マイクロショートモデル、401:符号、402:遅延回路、403:比較器、404:ニューラルネットワーク部、405:AND回路、407:マルチプレクサ、600:二次電池、601:正極キャップ、602:電池缶、603:正極端子、604:正極、605:セパレータ、606:負極、607:負極端子、608:絶縁板、609:絶縁板、611:PTC素子、612:安全弁機構、613:導電板、614:導電板、1400:蓄電池、1402:正極、1404:負極、8021:充電装置、8022:ケーブル、8024:二次電池、8400:自動車、8401:ヘッドライト、8406:電気モーター、8500:自動車、8600:スクータ、8601:サイドミラー、8602:二次電池、8603:方向指示灯、8604:座席下収納
図1
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図7
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