(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】建物健全性検証システム
(51)【国際特許分類】
G01M 7/02 20060101AFI20240507BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240507BHJP
【FI】
G01M7/02 H
G01M99/00 Z
(21)【出願番号】P 2023033796
(22)【出願日】2023-03-06
(62)【分割の表示】P 2019050045の分割
【原出願日】2019-03-18
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 啓介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】林 政輝
(72)【発明者】
【氏名】杉村 義文
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/189506(WO,A1)
【文献】特開2016-200937(JP,A)
【文献】特開2009-150729(JP,A)
【文献】特開2015-004526(JP,A)
【文献】特開2008-091981(JP,A)
【文献】特開2002-228540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 7/00- 7/02
G01M 99/00
G01H 1/00- 17/00
G01V 1/01
G08B 21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の複数の階にそれぞれ設けられた第1系統の振動検出センサの計測データに基づいて前記建物の健全性を検証する第1検証部を含む第1情報処理装置と、
前記第1系統の振動検出センサと同じまたは少なくとも一部が異なる前記建物の複数の階にそれぞれ設けられた第2系統の振動検出センサの計測データに基づいて前記建物の健全性を検証する第2検証部を含む第2情報処理装置と、
を備え、
前記第1情報処理装置と前記第2情報処理装置とは、ソフトウェアの再起動またはソフトウェアの更新のタイミングが互いにずれた時刻に設定されており、前記第1情報処理装置と前記第2情報処理装置とのうち一方におけるソフトウェアの再起動時またはソフトウェアの更新時には、前記第1情報処理装置と前記第2情報処理装置とのうち他方により前記建物に関するモニタリングが継続される、
建物健全性検証システム。
【請求項2】
前記第2系統の複数の振動検出センサは、前記第1系統の振動検出センサとは少なくとも一部が異なる前記建物の複数の階に分かれて配置されている、
請求項1に記載の建物健全性検証システム。
【請求項3】
前記第1系統の複数の振動検出センサは、互いの間に1つ以上の階を飛ばして前記建物の複数の階に分かれて配置された2つの振動検出センサを含み、
前記第1検証部は、前記建物の2つ以上の階の健全性を纏めて検証し、
前記第1検証部により纏めて検証される前記2つ以上の階と、前記第2検証部により検証される階とは、少なくとも1つの同じ階を含む、
請求項2に記載の建物健全性検証システム。
【請求項4】
前記第1検証部による前記第1系統の振動検出センサの計測データを用いた検証結果と、前記第2検証部による前記第2系統の振動検出センサの計測データを用いた検証結果とを比較することで、前記第1検証部により纏めて健全性が検証された複数の階と、前記第2検証部により纏めて健全性が検証された複数の階とのなかで、実際にどの階に損傷が生じているかを検証する総合検証部をさらに備えた、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の建物健全性検証システム。
【請求項5】
前記第1系統の複数の振動検出センサは、前記第1系統の振動検出センサがそれぞれ設けられた前記複数の階に亘りカスケード接続を用いて接続され、
前記第2系統の複数の振動検出センサは、前記第2系統の振動検出センサがそれぞれ設けられた前記複数の階に亘りカスケード接続を用いて接続されている、
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の建物健全性検証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物健全性検証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震発生後の建物の健全性を検証する方法について関心が高まっている。例えば、建物の各階に設けられたセンサの検出結果に基づき、建物の健全度を評価する建物安全性検証システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物の健全性を検証するシステムが単系統のシステムであると、センサの故障などシステムの一部に不具合が生じていたときと偶然重なって地震が発生した場合に、建物の検証が困難になる場合があり得る。このため、建物健全性検証システムは、信頼性のさらなる向上という観点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、信頼性のさらなる向上を図ることができる建物健全性検証システム、建物健全性検証方法、および建物健全性検証システムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、建物の複数の階にそれぞれ設けられた第1系統の振動検出センサの計測データに基づいて前記建物の健全性を検証する第1検証部を含む第1情報処理装置と、前記第1系統の振動検出センサと同じまたは少なくとも一部が異なる前記建物の複数の階にそれぞれ設けられた第2系統の振動検出センサの計測データに基づいて前記建物の健全性を検証する第2検証部を含む第2情報処理装置と、を備え、前記第1情報処理装置と前記第2情報処理装置とは、ソフトウェアの再起動またはソフトウェアの更新のタイミングが互いにずれた時刻に設定されており、前記第1情報処理装置と前記第2情報処理装置とのうち一方におけるソフトウェアの再起動時またはソフトウェアの更新時には、前記第1情報処理装置と前記第2情報処理装置とのうち他方により前記建物に関するモニタリングが継続される、建物健全性検証システムである。
【0007】
また、上記建物健全性検証システムにおいて、前記第2系統の複数の振動検出センサは、前記第1系統の振動検出センサとは少なくとも一部が異なる前記建物の複数の階に分かれて配置されている。
【0008】
また、上記建物健全性検証システムにおいて、前記第1系統の複数の振動検出センサは、互いの間に1つ以上の階を飛ばして前記建物の複数の階に分かれて配置された2つの振動検出センサを含み、前記第1検証部は、前記建物の2つ以上の階の健全性を纏めて検証し、前記第1検証部により纏めて検証される前記2つ以上の階と、前記第2検証部により検証される階とは、少なくとも1つの同じ階を含む。
【0009】
また、上記建物健全性検証システムにおいて、前記第1検証部による前記第1系統の振動検出センサの計測データを用いた検証結果と、前記第2検証部による前記第2系統の振動検出センサの計測データを用いた検証結果とを比較することで、前記第1検証部により纏めて健全性が検証された複数の階と、前記第2検証部により纏めて健全性が検証された複数の階とのなかで、実際にどの階に損傷が生じているかを検証する総合検証部をさらに備える。
【0010】
また、上記建物健全性検証システムにおいて、前記第1系統の複数の振動検出センサは、前記第1系統の振動検出センサがそれぞれ設けられた前記複数の階に亘りカスケード接続を用いて接続され、前記第2系統の複数の振動検出センサは、前記第2系統の振動検出センサがそれぞれ設けられた前記複数の階に亘りカスケード接続を用いて接続されている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、信頼性の向上を図ることができる建物健全性検証システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態の建物健全性検証システムの構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態の建物健全性検証システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態の表示装置に表示される検証結果の内容の一例を示す図である。
【
図4】改修前の建物健全性検証システムの構成例を示す図である。
【
図5】改修前の建物健全性検証システムを、第1実施形態の建物健全性検証システムに改修する過程の一例を示す図である。
【
図6】第2実施形態の建物健全性検証システムの構成例を示す図である。
【
図7】第2実施形態の建物健全性検証システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態の総合検証部の検証内容の一例を説明するための図である。
【
図9】第2実施形態の故障診断部の故障診断内容の一例を説明するための図である。
【
図10】第3実施形態の建物健全性検証システムの構成例を示す図である。
【
図11】第1変形例の建物健全性検証システムの構成例を示す図である。
【
図12】第2変形例の建物健全性検証システムの構成例を示す図である。
【
図13】第3変形例の建物健全性検証システムの構成例を示す図である。
【
図14】第4変形例の建物健全性検証システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態の建物健全性検証システム、建物健全性検証方法、および建物健全性検証システムの製造方法を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0022】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態の建物健全性検証システム1は、例えば、地震発生後に建物の健全性を検証するシステムである。なお本願で言う「建物」とは、ビルや家屋に限らず、橋梁やその他の構造物でもよい。また本願で言う「建物の層」とは、建物の変形性状を考える上で一体として取り扱うことができる建物の一部分を意味する。「建物の層」は、例えば、建物の各階(各階の床、梁、柱、および壁などで構成される部分)を意味する。
【0023】
<1.全体構成>
図1は、本実施形態の建物健全性検証システム1の構成例を示す図である。建物健全性検証システム1は、例えば、第1センサ群10Aと、第2センサ群10Bと、第1検証部300Aを含む第1情報処理装置20Aと、第2検証部300Bを含む第2情報処理装置20Bとを備えている。本実施形態では、第1センサ群10Aと第1検証部300Aとにより、第1系統の建物健全性検証サブシステム1aが構成されている。また、第2センサ群10Bと第2検証部300Bとにより、第2系統の建物健全性検証サブシステム1bが構成されている。第1系統の建物健全性検証サブシステム1aと、第2系統の建物健全性検証サブシステム1bとは互いに独立して運用可能である。以下、これら構成について説明する。
【0024】
<2.建物>
図1に示す例では、建物1000は、例えば13階建てのビルであり、1階(1F)101、2階(2F)102、3階(3F)103、…、および屋上100Rを有する。ただし、建物1000は、12階建て以下のビルでもよく、14階建て以上のビルでもよい。1階101は、建物1000の「基準層(例えば地上部分における最下層)」の一例である。基準層は、建物1000に地震動が入力される場合に、地面と同じ揺れ(同じ震度)が生じる層である。基準層は、例えば建物1000の1階101であるが、建物1000の地下階や、建物1000の基礎部分でもよい。このため建物1000の変形例では、符号102の層が1階(1F)であり、符号101の層が地下階(または基礎部分)でもよい。
【0025】
<3.第1センサ群および第2センサ群>
<3.1 第1センサ群および第2センサ群の配置>
次に、第1センサ群10Aおよび第2センサ群10Bについて説明する。第1センサ群10Aおよび第2センサ群10Bは、健全性の検証対象となる建物1000に設けられる。
【0026】
第1センサ群10Aは、例えば、第1から第7センサSA1~SA7を含む。第1センサSA1は、例えば1階101の床部に設置されている。第2から第7センサSA2~SA7は、例えば建物1000の奇数階の床部に設置されている。すなわち、第2センサSA2は、例えば3階103の床部に設置されている。第3センサSA3は、例えば5階105の床部に設置されている。同様に、第4から第7センサSA4~SA7は、例えば、7階107,9階109,…,13階113の床部に設置されている。なお、第1センサ群10Aは、屋上100Rに設置される第8センサSA8を有してもよい。これは後述する全ての実施形態および変形例でも同様である。以下では、第1センサ群10Aに含まれるセンサSA1~SA7を互いに区別しない場合は、単に「センサSA」と称する。センサSAは、建物1000の各層に生じる振動を検出可能なセンサであり、例えば加速度センサである。センサSAは、「第1系統の振動検出センサ」の一例である。
【0027】
なお本願において「床部に設置」とは、床面上に設置される場合に限定されず、床部の内部(ある階の床面と1つ下の階の天井面との間)に設置される場合も含む。また、各センサSAは、各階の床部に限定されず、各階の天井部や梁、壁などに設けられてもよい。これは第2センサ群10Bについても同様である。
【0028】
第1センサ群10Aに含まれる第1から第7センサSA1~SA7は、ケーブルCAによってカスケード接続されている。すなわち、第7センサSA7は、ケーブルCAによって、第6センサSA6に接続されている。第6センサSA6は、ケーブルCAによって、第5センサSA5に接続されている。同様に、第5から第3センサSA5~SA3は、ケーブルCAによって、1つ下の奇数階のセンサSAに接続されている。第2センサSA2は、ケーブルCAによって第1センサSA1に接続されている。第1センサSA1は、ケーブルCAによって、第1情報処理装置20Aに接続されている。言い換えると、第2から第7センサSA2~SA7は、第1情報処理装置20Aに直接に接続されていない。例えば、第7センサSA7の検出結果(計測データ)は、第6センサSA6、第5センサSA5、第4センサSA4、第3センサSA3、第2センサSA2、および第1センサSA1を順に経由して、第1情報処理装置20Aに出力される。第7センサSA7の検出結果は、第7センサSA7の検出結果であることを示す識別情報(第7センサSA7のIDなど)と紐付けられて、第7センサSA7から第1情報処理装置20Aに送信される。これらは、他のセンサSAについても同様である。
【0029】
第2センサ群10Bは、例えば、第1から第8センサSB1~SB8を含む。第1センサSB1は、第1センサ群10Aの第1センサSA1と同様に、例えば1階101の床部に設置されている。一方で、第2から第7センサSB2~SB7は、例えば建物1000の偶数階の床部に設置されている。すなわち、第2センサSB2は、例えば2階102の床部に設置されている。第3センサSB3は、例えば4階104の床部に設置されている。同様に、第4から第7センサSB4~SB7は、例えば、6階106,8階108,…,12階112の床部に設置されている。第8センサSB8は、屋上100Rに設置されている。以下では、第2センサ群10Bに含まれるセンサSB1~SB8を互いに区別しない場合は、単に「センサSB」と称する。センサSBは、建物の各層に生じる振動を検出可能なセンサであり、例えば加速度センサである。センサSBは、「第2系統の振動検出センサ」の一例である。本実施形態では、センサSBは、センサSAとは少なくとも一部が異なる建物1000の複数の階に設けられている。
【0030】
第2センサ群10Bに含まれる第1から第8センサSB1~SB8は、ケーブルCBによってカスケード接続されている。すなわち、第8センサSB8は、ケーブルCBによって、第7センサSB7に接続されている。第7センサSB7は、ケーブルCBによって、第6センサSB6に接続されている。同様に、第6から第3センサSB6~SB3は、ケーブルCBによって、1つ下の偶数階のセンサSBに接続されている。第2センサSB2は、ケーブルCBによって第1センサSB1に接続されている。第1センサSB1は、ケーブルCBによって、第2情報処理装置20Bに接続されている。言い換えると、第2から第8センサSB2~SB8は、第2情報処理装置20Bに直接に接続されていない。例えば、第8センサSB8の検出結果(計測データ)は、第7センサSB7、第6センサSB6、第5センサSB5、第4センサSB4、第3センサSB3、第2センサSB2、および第1センサSB1を順に経由して、第2情報処理装置20Bに出力される。第8センサSB8の検出結果は、第8センサSB8の検出結果であることを示す識別情報(第8センサSAのIDなど)と紐付けられて、第8センサSB8から第2情報処理装置20Bに送信される。これらは他のセンサSBについても同様である。
【0031】
以上のように、本実施形態では、センサSAとセンサSBとは、建物1000の高さ方向に交互に設けられている。建物1000には、第1系統のセンサSAと第2系統のセンサSBとのうちいずれか一方のみが配置された層が複数存在する。
【0032】
センサSAおよびセンサSBは、各階において略同じ場所に設置されている。例えば、センサSAが各階の床部に設置される場合、センサSBも各階の床部に設置される。センサSAが各階の天井部に設置される場合、センサSBも各階の天井部に設置される。また、各階の平面方向においても、センサSAおよびセンサSBは、略同じ場所に設置されると好ましい。例えば、上方から見た場合、1つ以上のセンサSAと1つ以上のセンサSBは、互いに重なる位置に配置されている。
【0033】
<3.2 ある観点によるセンサSA,SBの配置例>
ここで、ある観点によるセンサSA,SBの配置例について説明する。建物1000は、第1層(例えば3階103)と、第1層に隣り合う第2層(例えば4階104)とを含む。第1系統のセンサSAは、第1層および第2層を挟むように配置された第1振動検出センサ(例えば第2センサSA2)と第2振動検出センサ(例えば第3センサSA3)とを含む。第2系統のセンサSBは、少なくとも第1層を挟むように配置された第3振動検出センサ(例えば第2センサSB2)と第4振動検出センサ(例えば第3センサSB3)とを含む。この観点では、第2センサSB2は、第2階102の床部に設けられる場合に限定されず、第3階103の床部に設けられてもよい。
【0034】
ここで、本願において「層を挟むように」とは、「層の少なくとも一部を挟むように」の意味で用いている。すなわち、例えば、3階103の床部に設けられた第2センサSA2と、5階105の床部に設けられた第3センサSA3との間には、3階103は挟まれるものとする。
【0035】
<3.3 別の観点によるセンサSA,SBの配置例>
別の観点によるセンサSA,SBの配置例について説明する。建物1000は、第1層(例えば3階103)と、第1層に隣り合う第2層(例えば4階104)と、第1層に対して第2層とは反対側から隣り合う第3層(2階102)とを含む。第1系統のセンサSAは、第1層および第2層を挟むように配置された第1振動検出センサ(例えば第2センサSA2)と第2振動検出センサ(例えば第3センサSA3)とを含む。第2系統のセンサSBは、第1層および第3層を挟むように配置された第3振動検出センサ(例えば第2センサSB2)と第4振動検出センサ(例えば第3センサSB3)とを含む。
【0036】
<4.第1情報処理装置および第2情報処理装置>
次に、第1情報処理装置20Aおよび第2情報処理装置20Bについて説明する。第1情報処理装置20Aおよび第2情報処理装置20Bの各々は、例えば、パーソナルコンピュータのような情報処理装置である。第1情報処理装置20Aおよび第2情報処理装置20Bの各々は、操作部100(
図2参照)と、表示装置200(
図2参照)とを備えている。操作部100は、例えば、キーボードやマウスなどでもよく、表示装置200と一体に設けられたタッチ入力式(タッチパネル式)の入力装置でもよい。表示装置200は、液晶ディスプレイや、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイなどであり、画像や映像が表示される表示画面を有する。第1情報処理装置20Aおよび第2情報処理装置20Bは、センサSA1およびセンサSB1と同様に、例えば建物1000の1階101に設置される。なお、第1情報処理装置20Aおよび第2情報処理装置20Bは、建物1000の外部(例えば建物1000とは別に存在するデータ監視室)などに設けられてもよい。
【0037】
<5.建物健全性検証システムの機能構成>
図2は、建物健全性検証システム1の機能構成を示すブロック図である。本実施形態では、第1情報処理装置20Aと第2情報処理装置20Bとは、互いに接続されておらず、完全に独立している。また、第1情報処理装置20Aと第2情報処理装置20Bとでは、ソフトウェアの再起動やソフトウェアの更新のタイミングが互いにずれた時刻に設定されている。第1情報処理装置20Aは、第1検証部300Aを含む。一方で、第2情報処理装置20Bは、第2検証部300Bを含む。
【0038】
<5.1 第1検証部>
まず第1検証部300Aについて説明する。第1検証部300Aは、例えば、第1情報処理部302Aと、第1入力部304Aと、第1出力部306Aと、第1記憶部308Aとを有する。第1検証部300Aの各機能部(例えば、第1情報処理部302A、第1入力部304A、および第1出力部306A)の一部または全部は、例えば、第1情報処理装置20Aに搭載されたCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサが第1記憶部308Aに格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。なおこれらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。第1記憶部308Aは、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはフラッシュメモリのような半導体記憶装置により実現される。
【0039】
ここで先に、第1入力部304Aと、第1記憶部308Aについて説明する。第1入力部304Aは、第1情報処理装置20Aの操作部100に対する管理者(ユーザ)の操作に基づき、第1系統のセンサSAの設置階情報308Aaを第1記憶部308Aに書き込む。第1系統のセンサSAの設置階情報308Aaとは、第1系統のセンサSA(第1から第7センサSA1~SA7)が設置された建物1000の複数の階を示す情報(すなわち、建物1000のなかでセンサSAがどの階に設置されているかを示す情報)である。
【0040】
次に、第1情報処理部302Aについて説明する。第1情報処理部302Aは、建物1000に地震動が入力された場合、第1系統の第1センサSA1の計測データに基づいて、建物1000が位置する地点での地震の震度を算出する。地震の震度の算出方法は、例えば気象庁が震度を算出する手法と同様の手法である。第1情報処理部302Aにより算出された震度を示す情報は、第1出力部306Aに送られる。
【0041】
また、第1情報処理部302Aは、建物1000に地震動が入力された場合、第1系統のセンサSA(第1から第7センサSA1~SA7)の計測データに基づき、建物1000の各階の健全性を検証する。本実施形態では、第1情報処理部302Aは、第1系統のセンサSA(第1から第7センサSA1~SA7)の計測データと、第1記憶部308Aに記憶された第1系統のセンサSAの設置階情報308Aaとに基づき、建物1000の各階の健全性を検証する。なお本願において「各階の健全性を検証する」とは、第1系統と第2系統とのうち同じ系統に含まれる隣り合う2つのセンサに挟まれる複数の層(例えば3F103と4F104)の健全性を纏めて検証する場合も含む。
【0042】
本実施形態では、第1情報処理部302Aは、第1センサSA1および第2センサSA2の計測データと、第1センサSA1および第2センサSA2の設置階を示す設置階情報308Aaとに基づき、1階101および2階102の健全性(例えば損傷の有無や程度)を纏めて検証する。同様に、第1情報処理部302Aは、第2センサSA2および第3センサSA3の計測データと、第2センサSA2および第3センサSA3の設置階を示す設置階情報308Aaとに基づき、3階103および4階104の健全性(例えば損傷の有無や程度)を纏めて検証する。また、第1情報処理部302Aは、第3センサSA3および第4センサSA4の計測データと、第3センサSA3および第4センサSA4の設置階を示す設置階情報308Aaとに基づき、5階105および6階106の健全性(例えば損傷の有無や程度)を纏めて検証する。他の階についても同様である。第1情報処理部302Aにより検証された各階の健全性を示す情報は、第1出力部306Aに送られる。
【0043】
ここで、ある階(例えば3階103)の健全性の検証方法の一例は、次のとおりである。例えば、検証対象の階(3階103)を挟むように配置された2つのセンサSA2,SA3の計測データに含まれる加速度が2回積分されることで、各センサSA2,SA3の設置個所の加速度方向の変位が算出される。また、設置階情報308Aaに基づき、2つのセンサSA2,SA3の間の高さ方向の距離が算出される。そして、2つのセンサSA2,SA3の設置個所の加速度方向の変位の差分を、2つのセンサSA2,SA3の間の高さ方向の距離で除算することで、3階103および4階104を1つの層とした場合の層間変形角Δ(ラジアン)が算出される。第1情報処理部は、算出された層間変形角Δ(ラジアン)を第1記憶部308Aに記憶された所定の閾値と比較することで、3階103および4階104の健全性(例えば損傷の有無や程度)を判定する。
【0044】
なお、各階の健全性の検証方法の詳細および変形例は、本出願人により先に提案されている「建物安全性検証システム及び建物安全検証方法(特開2014-134436号公報)」、「建物健全度評価システムおよび建物健全度評価方法(特開2017-227507号公報)、および「建物耐震性評価システム及び建物耐震性評価方法(特開2014-16249号公報)のうち1つ以上に開示された方法を用いることができる。あるいは、各階の健全性は、建物1000の質点系モデルを用いてシミュレーション解析を行うことで検証されてもよい。
【0045】
なお、上述した文献に開示された方法が適用される場合、第1系統のセンサ群10Aおよび第2系統のセンサ群10Bのそれぞれは、屋上100Rに設けられた微振動センサや傾斜センサを有してもよい。この場合、第1系統のセンサ群10Aに含まれる微振動センサおよび傾斜センサは、例えば第1系統のセンサSAにカスケード接続される。また、第2系統のセンサ群10Bに含まれる微振動センサおよび傾斜センサは、例えば第2系統のセンサSBにカスケード接続される。
【0046】
第1出力部306Aは、第1情報処理部302Aにより算出された地震の震度、および第1情報処理部302Aにより検証(判定)された各階の健全性(例えば損傷の有無や程度)を示す情報を、第1情報処理装置20Aの表示装置200に表示させる。第1情報処理装置20Aの表示装置200に表示される情報は、第1系統のセンサSAに基づく第1検証結果の一例である。
【0047】
図3は、表示装置200に表示される検証結果の内容の一例を示す図である。本実施形態では、第1情報処理部302Aにより纏めて検証された複数の階(複数の層)の健全性は、互いに同じ内容が表示される。例えば、第2センサSA2および第3センサSA3の計測データに基づき3階103および4階104の損傷の程度が大きいと判定された場合は、表示装置200には3階103および4階104の損傷の程度が大きいことを示す情報IM1が表示される。なお、表示装置200に表示される内容の詳細および変形例は、例えば、上記3つの文献(特開2014-134436号公報、特開2017-227507号公報、特開2014-16249号公報のうち1つ以上に開示された内容を用いることができる。
【0048】
<5.2 第2検証部>
次に、第2検証部300Bについて説明する。第2検証部300Bは、例えば、第2情報処理部302Bと、第2入力部304Bと、第2出力部306Bと、第2記憶部308Bとを有する。第2検証部300Bの各機能部(例えば、第2情報処理部302B、第2入力部304B、および第2出力部306B)の一部または全部は、第2情報処理装置20Bに搭載されたCPUなどのプロセッサが第2記憶部308Bに格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。なおこれらの機能部のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGAなどのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。第2記憶部308Bは、例えば、HDDまたはフラッシュメモリのような半導体記憶装置により実現される。
【0049】
ここで先に、第2入力部304Bと、第2記憶部308Bについて説明する。第2入力部304Bは、第2情報処理装置20Bの操作部100に対する管理者の操作に基づき、第2系統のセンサSBの設置階情報308Baを第2記憶部308Bに書き込む。第2系統のセンサSBの設置階情報308Baとは、第2系統のセンサSB(第1から第8センサSB1~SB8)が設置された建物1000の複数の階を示す情報(すなわち、建物1000のなかでセンサSBがどの階に設置されているかを示す情報)である。
【0050】
次に、第2情報処理部302Bについて説明する。第2情報処理部302Bは、建物1000に地震動が入力された場合、第2系統の第1センサSB1の計測データに基づいて、建物1000が位置する地点での地震の震度を算出する。地震の震度の算出方法は、例えば気象庁が震度を算出する手法と同様の手法である。第2情報処理部302Bにより算出された震度を示す情報は、第2出力部306Bに送られる。
【0051】
また、第2情報処理部302Bは、建物1000に地震動が入力された場合、第2系統のセンサSB(第1から第8センサSB1~SB8)の計測データに基づき、建物1000の各階の健全性を検証する。本実施形態では、第2情報処理部302Bは、第2系統のセンサSB(第1から第8センサSB1~SB8)の計測データと、第2記憶部308Bに記憶された第2系統のセンサSBの設置階情報308Baとに基づき、建物1000の各階の健全性を検証する。
【0052】
本実施形態では、第2情報処理部302Bは、第1センサSB1および第2センサSB2の計測データと、第1センサSB1および第2センサSB2の設置階を示す設置階情報308Baとに基づき、1階101の健全性(例えば損傷の有無や程度)を検証する。また、第2情報処理部302Bは、第2センサSB2および第3センサSB3の計測データと、第2センサSB2および第3センサSB3の設置階を示す設置階情報308Baとに基づき、2階102および3階103の健全性(例えば損傷の有無や程度)を纏めて検証する。同様に、第2情報処理部302Bは、第3センサSB3および第4センサSB4の計測データと、第3センサSB3および第4センサSB4の設置階を示す設置階情報308Baとに基づき、4階104および5階105の健全性(例えば損傷の有無や程度)を検証する。他の階についても同様である。第2情報処理部302Bにより検証された各階の健全性を示す情報は、第2出力部306Bに送られる。なお、第2情報処理部302Bによる健全性の検証方法は、第1情報処理部302Aによる健全性の検出方法と同様である。
【0053】
第2出力部306Bは、第2情報処理部302Bにより算出された地震の震度、および第2情報処理部302Bにより検証(判定)された各階の健全性(例えば損傷の有無や程度)を示す情報を、第2情報処理装置20Bの表示装置200に表示させる。なお、第2出力部306Bにより第2情報処理装置20Bの表示装置200に表示される内容は、第1出力部306Aにより第1情報処理装置20Aの表示装置200に表示される内容と同様である。第2情報処理装置20Bの表示装置200に表示される情報は、第2系統のセンサSBに基づく第2検証結果の一例である。
【0054】
以上説明した第1情報処理装置20Aおよび第2情報処理装置20Bによる処理は、建物1000に地震動が入力された場合、互いに独立して(例えば互いに並行して)実施される。そして、第1情報処理装置20Aによる検証結果(第1系統による検証結果)は、第1情報処理装置20Aの表示装置200に表示される。第2情報処理装置20Bによる検証結果(第2系統による検証結果)は、第2情報処理装置20Bの表示画面に表示される。管理者は、第1情報処理装置20Aの表示装置200に表示される内容と、第2情報処理装置20Bの表示装置200に表示される内容とのうちいずれか一方、または両方を確認し、建物1000の健全性(例えば損傷の有無や程度)を把握することができる。
【0055】
<6.建物健全性検証システムの製造方法>
次に、建物健全性検証システム1の製造方法について説明する。ここでは、複数のセンサS(センサS1~S14)が建物1000に既設されている状態から、建物健全性検証システム1が設けられた状態に改修する方法について説明する。
【0056】
図4は、改修前の健全性検証システムZの構成例を示す図である。改修前の建物健全性検証システムZは、例えば、例えば、センサ群10と、検証部300を含む情報処理装置20とを備えている。センサ群10は、例えば、センサS1~S14を含む。センサS1~S14は、建物1000の各階(例えば全ての階)に1つずつ配置されている。以下では、センサS1~S14を互いに区別しない場合は、単に「センサS」と称する。センサSは、建物1000の各層に生じる振動を検出可能なセンサであり、例えば加速度センサである。センサSは、「振動検出センサ」の一例である。センサS1~S14は、ケーブルCによってカスケード接続されている。
【0057】
情報処理装置20は、操作部100と、表示装置200と、検証部300とを備えている。検証部300は、センサS1~S14の計測データに基づいて建物1000の各階の健全性を検証する。検証部300は、1つの観点における「第1検証部」の一例である。
【0058】
図5は、改修前の建物健全性検証システムZを建物健全性検証システム1に改修する過程の一例を示す図である。
図5に示すように、本改修では、建物1000の1F101に、第2系統用の1つのセンサSB1が新しく設置される。また、建物1000の1F101には、第2情報処理装置20Bが設置される。そして、情報処理装置20(第1情報処理投資20A)に、第1検証部300Aを実現するために必要なソフトウェア(プログラム)をインストールする。同様に、第2情報処理装置20Bに、第2検証部300Bを実現するために必要なソフトウェア(プログラム)をインストールする。なお、検証部300を実現するために情報処理装置20にすでにインストールされているソフトウェアにより第1検証部300Aが実現可能である場合は、上記インストールは不要である。
【0059】
本改修では、既設のセンサS1~S14を、第1系統のセンサSAと、第2系統のセンサSBに振り分ける処理が行われる。この振り分けは、例えば、情報処理装置20(第1情報処理装置20A)の操作部100を用いて入力された情報に基づき、センサS1~S14のなかで第1系統のセンサSAとして使用されるセンサを情報処理装置20(第1情報処理装置20A)の第1記憶部308Aに登録するとともに、第2情報処理装置20Bの操作部100を用いて入力された情報に基づき、センサS1~S14のなかで第2系統のセンサSBとして使用されるセンサを第2情報処理装置20Bの第2記憶部308Bに登録することで行われる。本実施形態では、センサS1~S14のうち、S1,S3,S5,S7,S9,S11,S13を、第1系統のセンサSA1,SA2,SA3,SA4,SA5,SA6,SA7として登録する。また、センサS1~S14のうち、S2,S4,S6,S8,S10,S12,S14を、第2系統のセンサSB2,SB3,SB4,SB5,SB6,SB7,SB8として登録する。
【0060】
また、第1系統のセンサSA1~SA7および情報処理装置20(第1情報処理投資20A)を、
図1に示すように、ケーブルCAによってカスケード接続する。同様に、第2系統のセンサSB1~SB8および第2情報処理投資20Bを、
図1に示すように、ケーブルCBによってカスケード接続する。これにより、建物健全性検証システムZが建物健全性検証システム1に改修される。
【0061】
なお、建物健全性検証システム1の製造方法は、上記例に限定されない。例えば、センサSA,SB、情報処理装置20A,20Bは、建物1000に対して全て新設されてもよい。また例えば、第1系統のセンサSAと情報処理装置20Aが既設の建物健全性検証システムZに対して、第2系統のセンサSBと情報処理装置20Bを追加で設置することで建物健全性検証システム1が実現されてもよい。これらいくつかの製造方法は、後述する全ての実施形態および変形例についても同様に適用可能である。
【0062】
以上説明した第1実施形態の構成によれば、建物の健全性を検証する建物健全性検証システムの信頼性のさらなる向上を図ることができる。ここで、建物健全性検証システムが1系統のシステムである場合、冗長性がなく、センサの故障などシステムに一部に不具合が発生した場合に、その建物のモニタリングを継続できなくなるおそれがある。言い換えると、センサの故障などシステムの一部に不具合が生じていたときと偶然重なって地震が発生した場合に、建物の検証が困難になる場合があり得る。また、建物健全性検証システムが1系統のシステムである場合、システムのメンテナンスに伴うソフトウェアの再起動時やソフトウェアの更新時と偶然重なって地震が発生した場合に、建物の検証が困難になる場合があり得る。
【0063】
そこで、本実施形態では、建物健全性検証システム1は、建物1000の複数の階にそれぞれ設けられた第1系統のセンサSAの計測データに基づいて建物1000の各階の健全性を検証する第1検証部300Aと、第1系統のセンサSAと同じまたは少なくとも一部が異なる建物1000の複数の階にそれぞれ設けられた第2系統のセンサSBの計測データに基づいて建物1000の各階の健全性を検証する第2検証部300Bとを備える。このような構成によれば、センサの故障などシステムに一部に不具合が発生した場合に、第1系統と第2系統とのうちいずれか一方は一時的に建物1000のモニタリングを継続できなくなるおそれがあるが、他の一系統により建物1000のモニタリングを継続することができる。また、第1系統の情報処理装置20Aと第2系統の情報処理装置20Bとでソフトウェアの再起動や更新のタイミングをずらすことで、いずれか一方の系統のソフトウェアの再起動時や更新時と偶然重なって地震が発生した場合でも、他の一系統により建物1000の健全性の検証を行うことができる。これにより、建物健全性検証システム1の信頼性のさらなる向上を図ることができる。
【0064】
ここで、建物1000の各階に設置されたセンサSA,SBの検出結果を情報処理装置20A,20Bに伝えるためには、各センサSA,SBに接続されたケーブルをそれぞれ直接に情報処理装置20A,20Bまで延ばすことも考えられる。しかしながらこの場合、下の階層になるほどケーブルの本数が増え、作業工数の増加やレイアウトの制約をもたらす場合がある。一方で、本実施形態では、上述したようなカスケード接続を用いて各階に設置されたセンサSA,SBと情報処理装置20A,20Bとを接続している。このような構成によれば、作業工数を減少させることができるとともに、レイアウトの制約を小さくすることができる。
【0065】
ただし、カスケード接続の場合、中継地点となるセンサSA,SBのうち1つに故障が発生すると、故障したセンサよりも上層階からセンサの検出結果が届かなくなる可能性がある。しかしながら本実施形態では、第1系統のセンサSAと、第2系統のセンサSBは、それぞれ独立して、第1情報処理装置20Aまたは第2情報処理装置20Bに接続されている。このような構成によれば、一方の系統に含まれる1つのセンサが故障した場合であっても、他の系統に含まれるセンサの検出結果は正常に情報処理装置に送られる。このため、カスケード接続により作業工数の低減やレイアウトの制約の低減を図りつつ、建物健全性検証システム1の信頼性のさらなる向上を図ることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1情報処理装置20Aと第2情報処理装置20Bとうち少なくとも一方に、第1情報処理部302Aによる健全性の検証結果と、第2情報処理部302Bによる健全性の検証結果との比較に基づき、建物1000の健全性のより詳細な検証を行う総合検証部3022が設けられた点で、第1実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0067】
図6は、第2実施形態の建物健全性検証システム1の構成例を示す図である。本実施形態では、第1情報処理装置20Aと第2情報処理装置20Bとを電気的に接続するケーブルCCが設けられている。すなわち、第1情報処理装置20Aと第2情報処理装置20Bとは、ケーブルCCを通じて互いに通信することができる。
【0068】
図7は、第2実施形態の建物健全性検証システム1の機能構成を示すブロック図である。ここでは先に、第2情報処理装置20Bについて説明する。本実施形態の第2情報処理装置20Bの第2情報処理部302Bは、第2系統検証部3031を含む。第2系統検証部3031は、第1実施形態の第2情報処理部302Bと同じ機能を持つ。すなわち第2系統検証部3031は、建物1000に地震動が入力された場合、第2系統の第1センサSB1の計測データに基づいて、建物1000が位置する地点での地震の震度を算出する。また、第2系統検証部3031は、建物1000に地震動が入力された場合、第2系統のセンサSB(第1から第8センサSB1~SB8)の計測データと、第2記憶部308Bに記憶された第2系統のセンサSBの設置階情報308Baとに基づき、建物1000の各階の健全性(例えば損傷の有無や程度)を検証する。第2系統検証部3031による算出結果および検証結果は、ケーブルCCを介して第1情報処理装置20Aの第1情報処理部302Aに出力される。
【0069】
次に、第1情報処理装置20Aについて説明する。本実施形態の第1情報処理装置20Aの第1情報処理部302Aは、例えば、第1系統検証部3021と、総合検証部3022と、故障診断部3023とを有する。
【0070】
第1系統検証部3021は、第1実施形態の第1情報処理部302Aと同じ機能を持つ。すなわち第1系統検証部3021は、建物1000に地震動が入力された場合、第1系統の第1センサSA1の計測データに基づいて、建物1000が位置する地点での地震の震度を算出する。また、第1情報処理部302Aは、建物1000に地震動が入力された場合、第1系統のセンサSA(第1から第7センサSA1~SA7)の計測データと、第1記憶部308Aに記憶された第1系統のセンサSAの設置階情報308Aaとに基づき、建物1000の各階の健全性(例えば損傷の有無や程度)を検証する。第1系統検証部3021による算出結果および検証結果は、総合検証部3022に出力される。
【0071】
次に、総合検証部3022について説明する。総合検証部3022は、第1系統検証部3021による第1系統のセンサSAの計測データを用いた検証結果と、第2系統検証部3031による第2系統のセンサSBの計測データを用いた検証結果とに基づき、建物1000の各階の健全性(例えば損傷の有無や程度)を総合的に検証する。
【0072】
図8は、総合検証部3022の検証内容の一例を説明するための図である。
図8中において、「第1系統による検証結果」とは、第1系統検証部3021による第1系統のセンサSAの計測データを用いた建物1000の各階の健全性の検証結果を示す。「第2系統による検証結果」とは、第2系統検証部3031による第2系統のセンサSBの計測データを用いた建物1000の各階の健全性の検証結果を示す。「総合検証結果」は、総合検証部3022による検証結果を示す。
【0073】
総合検証部3022は、第1系統検証部3021による検証結果と、第2系統検証部3031による検証結果とを比較し、第1系統検証部3021により纏めて健全性が検証された複数の階(複数の層)と、第2系統検証部3031により纏めて健全性が検証された複数の階(複数の層)とのなかで、実際にどの階(どの層)に損傷が生じているかをより高い精度で検証する。例えば、総合検証部3022は、各階(各層)について、第1系統検証部3021による検証結果と、第2系統検証部3031による検証結果とを比較する。総合検証部3022は、検証対象の階(層)について、第1系統検証部3021による検証結果と第2系統検証部3031による検証結果とが異なる場合(例えば、損傷の程度が異なる場合)、例えば、第1系統検証部3021による検証結果と第2系統検証部3031による検証結果とのうち小さいほうの検証結果を、その階(その層)についての総合的な検証結果とする。一方で、検証対象の階(層)について、第1系統検証部3021による検証結果と第2系統検証部3031による検証結果とが同じ場合(例えば、損傷の程度が同じ場合)、例えば、第1系統検証部3021による検証結果(または第2系統検証部3031による検証結果)を、その階(その層)についての総合的な検証結果とする。
【0074】
図8に示す例では、第1系統検証部3021による検証結果では、9階109と10階110とが纏めて検証されて損傷の程度が「大」と判定されている。一方で、第2系統検証部3031による検証結果では、8階108と9階109とが纏めて検証されて損傷の程度が「大」と判定されており、10階110と11階111とが纏めて検証されて損傷の程度が「中」と判定されている。この場合、総合検証部3022は、9階109について、損傷の程度が「大」であり、10階110については、損傷の程度が「中」であると判定する。言い換えると、例えば、9階109の構造部材が損傷した場合、10階110に設置された第2系統のセンサSB6と、11階111に設置された第1系統のセンサSA6との検出結果に基づき、損傷階を特定することができる。総合検証部3022による検証結果は、第1出力部306Aに出力される。
【0075】
ただし、総合検証部3022による検証方法は、上記例に限定されない。例えば、総合検証部3022は、検証対象の階(層)について、第1系統検証部3021による検証結果と第2系統検証部3031による検証結果とが異なる場合(例えば、損傷の程度が異なる場合)、例えば、第1系統検証部3021による検証結果と第2系統検証部3031による検証結果とのうち大きいほうの検証結果を、その階(その層)についての総合的な検証結果としてもよい。この場合、
図8に示す例では、8階108から10階110について損傷の程度が「大」と判定されてもよい。
【0076】
次に、故障診断部3023について説明する。故障診断部3023は、第1検証部300Aの検証結果(第1系統検証部3021の検出結果)と、第2検証部300Bの検証結果(第2系統検証部3031の検証結果)とに基づいて第1検証部300Aと第2検証部300Bの各検証部の良否を診断する。本実施形態では、故障診断部3023は、第1系統検証部3021による検証結果と、第2系統検証部3031による検証結果との比較に基づき、第1系統検証部3021および第2系統検証部3031の良否を診断する。以下に説明する良否の診断は、平常時においても所定の周期で実施されてもよいし、建物1000に地震動が入力された場合に実施されてもよい。この診断は、センサSA,SBには平常時でも風による建物1000の微振動などが入力されるため、平常時においても実施可能である。
【0077】
例えば、故障診断部3023は、第1系統検証部3021による建物1000の各階の検証結果(例えば損傷の程度)と、第2系統検証部3031による建物1000の各階の検証結果(建物の損傷の程度)とを比較する。そして、故障診断部3023は、これらの比較結果において、第1系統検証部3021による建物1000のある階の検証結果と、第2系統検証部3031による建物1000の同じ階の検証結果との差異が閾値以上である場合に、その階に対応したセンサSAまたはセンサSBに異常があると診断する。
【0078】
図9は、故障診断部3023の故障診断内容の一例を説明するための図である。
図9では、例えば、第1系統検証部3021による建物1000の各階の検証結果(例えば損傷の程度)と、第2系統検証部3031による建物1000の各階の検証結果(建物の損傷の程度)との差分値dがプロットされたグラフになる。
図9中のラインBLは、差分値dがゼロである基準線を示す。また、ラインBLの両側に位置するラインth1,th2は、センサSA,SBが異常であるか否かを判定するための閾値を示す。ラインth1,th2は、「第1検証部300Aの検証結果と、第2検証部300Bの検証結果とに基づいて第1検証部300Aと第2検証部300Bの各検証部の良否を診断するための診断基準」の一例である。この診断基準(ラインth1,th2の値)は、診断基準情報308Abとして、例えば第1記憶部308Aに記憶されている。
【0079】
図9に示す例では、第1系統検証部3021による5階から8階105~108の検証結果と、第2系統検証部3031による5階から8階105~108の検証結果との差分値daが閾値th2を超えている。一方で、第1系統検証部3021による4階104および9階109の検証結果と、第2系統検証部3031による4階104および9階109の検証結果との差分値dは、閾値th1と閾値th2との間の範囲に収まっている。この場合、故障診断部3023は、6階106に設置されたセンサSB4(4階104の検証結果に影響するセンサ)や、8階108に設置されたセンサSB5(9階109の検証結果に影響するセンサ)には異常はなく、7階107に配置されたセンサSA4に異常があると診断する。故障診断部3023による診断結果は、第1出力部306Aおよび総合検証部3022に出力される。
【0080】
総合検証部3022は、故障診断部3023により特定のセンサに異常があると診断された場合、第1系統検証部3021による検証結果および第2系統検証部3031による検証結果のなかで、異常があると診断されたセンサが関係する検証結果を無視し、建物1000の各階の健全性を検証する。例えば
図9に示す例(7階107に配置されたセンサSA4に異常があると診断された例)では、総合検証部3022は、第1系統検証部3021による5階から8階105~108の検証結果を無視し、第2系統検証部3031による5階から8階105~108の検証結果を、総合検証部3022による建物1000の検証結果として採用する。なお本実施形態のように各階にセンサSA,SBのいずれかが設けられていると1つのセンサが故障した場合に影響する範囲を小さくすることができる。
【0081】
第1出力部306Aは、総合検証部3022により検証された建物1000の各階の健全性(例えば損傷の有無や程度)を示す情報を第1情報処理装置20Aの表示装置200に出力して表示させる。すなわち、第1出力部306Aは、「第1検証部300Aによる第1系統のセンサSAの計測データを用いた検証結果と、第2検証部300Bによる第2系統のセンサSBの計測データを用いた検証結果とに基づいた建物の健全性検証結果を出力する検証結果出力部」の一例である。
【0082】
また、第1出力部306Aは、故障診断部3023による診断結果を示す情報を第1情報処理装置20Aの表示装置200に表示させる。なお、第1出力部306Aにより表示装置200に表示される情報は、故障診断部3023により診断された各センサSA,SBの異常の有無を示す情報を伴ってもよいし、
図9に示すようなグラフのみが表示されてもよい。グラフのみが表示される場合で、管理者はグラフを見ることで、センサSA,SBの異常の有無を確認することができる。また、第1出力部306Aは、総合検証部3022により検証された建物1000の各階の健全性(例えば損傷の有無や程度)を示す情報および故障診断部3023による診断結果を示す情報を表示装置200に表示させることに代えて/加えて、それら情報を紙に印刷して出力してもよい。
【0083】
このような構成によれば、第1実施形態と同様に、建物健全性検証システム1の信頼性をさらに向上させることができる。さらに本実施形態では、第1検証部300Aによる第1系統のセンサSAの計測データを用いた検証結果と、第2検証部300Bによる第2系統のセンサSBの計測データを用いた検証結果とに基づいた建物1000の健全性検証結果が出力される。このような構成によれば、第1検証部300Aによる第1系統のセンサSAの計測データを用いた検証結果と、第2検証部300Bによる第2系統のセンサSBの計測データを用いた検証結果とを個別にみる場合よりもより精度が高い情報(例えば分解能が高い情報)を得ることができる。
【0084】
本実施形態では、第1検証部300Aおよび第2検証部300Bは、第1検証部300Aの検証結果と、第2検証部300Bの検証結果とに基づいて第1検証部300Aと第2検証部300Bの各検証部の良否を診断するための診断基準が予め定められている。このような構成によれば、第1検証部300Aおよび第2検証部300Bを用いて、互いの故障などを早期に発見することができる。
【0085】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1情報処理装置20Aおよび第2情報処理装置20Bに加えて、第3情報処理装置40が設けられた点で、第2実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第2実施形態と同様である。
【0086】
図10は、第3実施形態の建物健全性検証システム1の構成例を示す図である。本実施形態では、建物健全性検証システム1は、例えば、第1情報処理装置20A´と、第2情報処理装置20B´と、第3情報処理装置40を有する。第1情報処理装置20A´は、第1検証部300Aを有するが、操作部100および表示装置200は有さない。第1検証部300Aの検証結果(第1系統検証部3021による検証結果)は、第3情報処理装置40に出力される。同様に、第2情報処理装置20B´は、第2検証部300Bを有するが、操作部100および表示装置200は有さない。第2検証部300Bの検証結果(第2系統検証部3031による検証結果)は、第3情報処理装置40に出力される。
【0087】
第3情報処理装置40は、例えば、情報処理部402と、入力部404と、出力部406と、記憶部408とを有する。第3情報処理装置40の各機能部(例えば、情報処理部402、入力部404、および出力部406)の一部または全部は、第3情報処理装置40に搭載されたCPUなどのプロセッサが記憶部408に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することで実現される。なおこれらの機能部のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGAなどのハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。第2記憶部308Bは、例えば、HDDまたはフラッシュメモリのような半導体記憶装置により実現される。
【0088】
情報処理部402は、総合検証部3022と、故障診断部3023とを含む。総合検証部3022および故障診断部3023の処理の詳細は、第2実施形態と同様である。
【0089】
入力部404は、操作部100に対する管理者の操作に基づき、第1系統のセンサSAの設置階情報308Aaを第1情報処理装置20Aの第1記憶部308Aに書き込むとともに、第2系統のセンサSBの設置階情報308baを第2情報処理装置20Bの第2記憶部308Bに書き込む。
【0090】
出力部406は、第1情報処理部302Aにより算出された地震の震度、および第1情報処理部302Aにより検証(判定)された各階の健全性(例えば損傷の有無や程度)を示す情報を、第3情報処理装置40の表示装置200に表示させる。また、出力部406は、第2情報処理部302Bにより算出された地震の震度、および第2情報処理部302Bにより検証(判定)された各階の健全性(例えば損傷の有無や程度)を示す情報を、第3情報処理装置40の表示装置200に表示させる。
【0091】
また、出力部406は、上記内容に代えて/加えて、第2実施形態の第1出力部306Aと同様に、総合検証部3022により検証さえた建物1000の各階の健全性(例えば損傷の有無や程度)を示す情報を第3情報処理装置40の表示装置200に表示させる。また、第1出力部306Aは、第2実施形態の第1出力部306Aと同様に、故障診断部3023による診断結果を示す情報を第1情報処理装置20Aの表示装置200に出力して表示させる。
【0092】
このような構成によれば、第2実施形態と同様に、建物健全性検証システム1の信頼性をさらに向上させることができる。
【0093】
(変形例)
次に、
図11から
図14を参照し、第1から第3実施形態の変形例について説明する。
【0094】
(第1変形例)
図11に示すように、センサSA(またはセンサSB)は、建物1000に対して1階おきに設けられる必要はなく、2階おき、3階おき、またはそれ以上の間隔で配置されてもよい。
図11に示す例では、センサSAが設けられていない階(層)には、センサSBが設けられている。ただし、建物1000は、センサSA,SBの両方を有しない階(層)が存在してもよい。
【0095】
(第2変形例)
図12に示すように、センサSA(またはセンサSB)は、複数の階(層)に対して不等間隔で設けられてもよい。例えば、センサSA(またはセンサSB)は、一部の階(層)に対して1階おきまたは2階おきに設けられ、別の階(層)に対して3階おきまたはそれ以上の間隔で配置されてもよい。
【0096】
(第3変形例)
図13に示すように、センサSB(またはセンサSA)は、建物1000の全高に亘って設けられる必要はなく、建物1000のなかで損傷が生じやすそうな部分に集中的に設けられてもよい。例えば、
図13に示す例では、第1系統のセンサSAによって、建物1000の全体に対する大まかな検証を行うことができる。一方で、第2系統のセンサSBによって、建物1000の損傷が生じやすそうな部分について集中的に検証を行うことができる。
【0097】
(第4変形例)
図14に示すように、センサSAおよびセンサSBは、建物1000の全ての階(全ての層)にそれぞれ設けられてもよい。
【0098】
以上、実施形態および変形例に係る建物健全性検証システム1、建物健全性評価方法、および建物健全性検証システム1の製造方法について説明したが、実施形態は上記例に限定されない。また本願でいう「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【符号の説明】
【0099】
1…建物健全性検証システム、20A…第1情報処理装置、20B…第2情報処理装置、40…第3情報処理装置、300A…第1検証部、302A…第1情報処理部、304A…第1入力部、306A…第1出力部、308A…第1記憶部、300B…第2検証部、302B…第2情報処理部、304B…第2入力部、306B…第2出力部、308B…第2記憶部、1000…建物、3021…第1系統検証部、3022…総合検証部、3023…故障診断部、3031…第2系統検証部、SA(SA1~SA7)…第1系統のセンサ、SB(SB1~SB8)…第2系統のセンサ。