IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 加藤 善彦の特許一覧

<>
  • 特許-スピーカー装置 図1
  • 特許-スピーカー装置 図2
  • 特許-スピーカー装置 図3
  • 特許-スピーカー装置 図4
  • 特許-スピーカー装置 図5
  • 特許-スピーカー装置 図6
  • 特許-スピーカー装置 図7
  • 特許-スピーカー装置 図8
  • 特許-スピーカー装置 図9
  • 特許-スピーカー装置 図10
  • 特許-スピーカー装置 図11
  • 特許-スピーカー装置 図12
  • 特許-スピーカー装置 図13
  • 特許-スピーカー装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】スピーカー装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
H04R1/02 101D
H04R1/02 101B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023137207
(22)【出願日】2023-08-25
【審査請求日】2023-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523323826
【氏名又は名称】加藤 善彦
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 善彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 国夫
【審査官】金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-043097(JP,U)
【文献】実開平04-048791(JP,U)
【文献】特表2017-519419(JP,A)
【文献】実開昭61-068588(JP,U)
【文献】特表平08-507665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるオーディオ信号に基づいて音波を出力するスピーカーユニットと、一方及び他方に開口端が設けられた筐体と、上方に向かって開口し、所定の液体が収容された液体容器と、を備え、
前記スピーカーユニットは、その背面が前記筐体の内部空間に露出するように、前記一方の開口端を閉塞し、
前記液体容器には、前記他方の開口端が挿通され、
前記筐体の外周面と前記液体容器の内周面との間には、前記液体容器の外部と連通する間隙が形成され、
前記筐体の内部空間から、前記他方の開口端を介して外部に至る経路には、前記液体が介在し、
前記他方の開口端が前記液体容器に挿通されることで、前記筐体の外周面と前記液体容器の内周面との間には、その全周に亘って前記間隙が形成される、スピーカー装置。
【請求項2】
前記筐体は、上下方向に延びる略筒形状であり、断面視における前記筐体の左右方向の幅は、断面視における前記液体容器の左右方向の幅よりも小さい、請求項1に記載のスピーカー装置。
【請求項3】
前記筐体と前記液体容器とは、分離可能である、請求項1に記載のスピーカー装置。
【請求項4】
前記他方の開口端は、前記液体に浸漬され、
前記液体は、前記間隙を介して外気にさらされている、請求項1に記載のスピーカー装置。
【請求項5】
前記液体は、不揮発性である、請求項4に記載のスピーカー装置。
【請求項6】
前記間隙には、通気性を有するフィルター部材が設けられている、請求項4に記載のスピーカー装置。
【請求項7】
前記液体容器は、前記液体の排出を制御する開閉バルブを有する、請求項4に記載のスピーカー装置。
【請求項8】
前記筐体は、前記一方の開口端が設けられた第一筐体と、前記他方の開口端が設けられた第二筐体と、を有し、
前記第一筐体と前記第二筐体とは、相互に着脱可能に連結されている、請求項1に記載のスピーカー装置。
【請求項9】
前記液体は、柔軟性を有する袋体に、袋体内部に所定の空間が形成されるように封入され、
前記他方の開口端は、前記袋体に載置されることで閉塞されている、請求項1に記載のスピーカー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカー装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、高忠実度な音楽再生を行うために、スピーカーユニットをエンクロージャーに収めた形式のスピーカー装置が広く利用されてきた。
【0003】
エンクロージャーに収められていないスピーカーユニットから音を再生した場合、スピーカーユニット背面から出る音の内、振動周波数が低い低音域の逆位相音が正面に回り込み、正面から出る正位相音と干渉し、打ち消し合う。
このため、上記スピーカーユニットからは、低音域の乏しい高音域に偏った貧弱な再生音しか得られない。
【0004】
これまで、スピーカーユニット背面からの逆位相音を制御する様々な方式のエンクロージャーが開発され、高忠実度再生の試みが続けられてきた。
現在市販されているスピーカーのエンクロージャーの型式は、密閉型とバスレフ型の二つの方式が主流となっている。
【0005】
密閉型は、スピーカーユニット背面から出る逆位相音を、音響的に密閉された空間に閉込めることによって、この逆位相音を遮断する方式である。
バスレフ型は、密閉型エンクロージャーの一部にバスレフポートと呼ばれる中空の筒を形成し、ヘルムホルツ共振を利用して、スピーカーユニット背面から出る逆位相音を、正面の正位相音と同じ位相として、バスレフポートから放出する方式である。
【0006】
このように、スピーカー装置のエンクロージャーの型式は、スピーカーユニット背面から出る逆位相音を、再生音の音質を損なうことなく如何に処理するか、といった点を主眼に開発・改良等がなされてきた。
【0007】
例えば、特許文献1には、エンクロージャー内の空気を大気圧の十分の一程度に減圧することによって、減圧空間下での音波の伝播しにくさを利用したスピーカー装置として発明され、エンクロージャー内の空気を減圧後に密閉することにより、エンクロージャー内部に発せられた音波が、エンクロージャー内壁で反射して振動板に戻り干渉することで発生する打消しと歪み振動を原理的に解消し、可聴音域の全域に渡り十分な音圧と明瞭な音質で再生する方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2021-087187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、密閉型及びバスレフ型のスピーカー装置は、下記のような問題点を内包している。
【0010】
即ち、密閉型では、エンクロージャーに収められたスピーカーユニットのコーン紙が正面に振動するとき、エンクロージャー内の空気圧は低圧になり、コーン紙が背面に振動するとき、エンクロージャー内の空気圧は高圧になる。
この結果、エンクロージャー内の空気圧の変動は、コーン紙に対し空気バネのように作用し、信号電流に忠実に動こうとするコーン紙の振動を妨げることとなる。
このような振動の妨げは、エンクロージャーを大型化すれば、ある程度解決できるが、大型化は実用上・コスト上の大きな制約となる。
【0011】
また、バスレフ型では、スピーカーユニットから発せられる直接的な再生音は、コーン紙がボイスコイルに直結しているため、電磁制動力により入力波形に忠実に振動するように制御されるが、バスレフポートから放出される音には、この電磁制動力は働かない。
この結果、バスレフポートから放出される低音域の音は、音圧レベルは高いものの、過渡特性が悪く、高忠実度な再生音とは言えない。
この他、バスレフ型では、バスレフポートから放出される共振点付近以外の音(エンクロージャー内で複雑に反射した反射音)が、正面の正位相音に干渉する等して、音質を損う。
【0012】
上記のように、密閉型のスピーカー装置では、低域再生音圧の不足や大型化、バスレフ型のスピーカー装置では、密閉型の低域不足をある程度解決しているものの、特有の構造に起因した音質の劣化、といった問題を内包している。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、高忠実度な再生が可能なスピーカー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、入力されるオーディオ信号に基づいて音波を出力するスピーカーユニットと、一方及び他方に開口端が設けられた筐体と、所定の液体が収容された液体容器と、を備え、
前記スピーカーユニットは、その背面が前記筐体の内部空間に露出するように、前記一方の開口端を閉塞し、
前記液体容器には、前記他方の開口端が挿通され、
前記筐体の外周面と前記液体容器の内周面との間には、前記液体容器の外部と連通する間隙が形成され、
前記筐体の内部空間から、前記他方の開口端を介して外部に至る経路には、前記液体が介在している。
【0015】
本発明によれば、筐体の内部空間から、他方の開口端を介して間隙に至る経路に、液体が介在し、液体を介して筐体の内部空間の空気圧は外部の大気圧と繋がっている。
また、スピーカーユニット(コーン紙)の振動は、筐体の内部空間の空気圧を変化させる。筐体の内部空間の空気圧の変化は、大気圧との圧力の差を生じ、圧力の差は筐体内の液体の液面を押し上げ或いは押し下げる。押し上げ或いは押し下げられた筐体内の液体は、液体容器との間で流出入し、筐体の内部空間に生じた圧力差は解消され、大気圧と等しくなる。
この一連の液体の動きによって、空気バネの発生は抑制される。
【0016】
即ち、コーン紙の振動エネルギーが液体の位置エネルギーに置き換わることによって筐体の内部空間では空気バネが抑制されるため、コーン紙の振動が阻害されない。
また、スピーカーユニットのコーン紙の振動は、筐体の内部空間から液体を振動させるが、液体の音響インピーダンスが空気中とは大きく異なるため、筐体内の音響エネルギーが流体を介して筐体外へ伝播する事象は無視できる。
このため、スピーカーユニットからの再生音が、低音から高音の全帯域に渡ってマスキングされず、微小な信号の再生能力に優れた、濁りのないきめ細やかでリアルな音質となる。
【0017】
加えて、本発明によれば、上記の通り、空気バネの発生が抑制されるため、大容積を必要とせず、筐体全体を小型化することができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記他方の開口端は、前記液体に浸漬され、前記液体は、前記間隙を介して外気にさらされている。
【0019】
このような構成とすることで、コーン紙の背面から出る音を直接液体に伝播させることで、空気バネの発生を抑制する効果を高めることができ、よりリアルな音質の再生音を得ることができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記液体は、不揮発性である。
【0021】
このような構成とすることで、液体を長期に亘って使用できる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記間隙には、通気性を有するフィルター部材が設けられている。
【0023】
このような構成とすることで、液体内部に不純物が混入する事態を抑制できる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、前記液体容器は、前記液体を排出する開閉バルブを有する。
【0025】
このような構成とすることで、液体の排出後に本スピーカー装置の移設・運搬が容易となる。
【0026】
本発明の好ましい形態では、前記筐体は、前記一方の開口端が設けられた第一筐体と、前記他方の開口端が設けられた第二筐体と、を有し、前記第一筐体と前記第二筐体とは、相互に着脱可能に連結されている。
【0027】
このような構成とすることで、第一筐体と第二筐体とを個別に扱う等が可能となり、移設・運搬時や収納時等の利便性が向上する。
【0028】
本発明の好ましい形態では、前記液体は、柔軟性を有する袋体に、袋体内部に所定の空間が形成されるように封入され、前記他方の開口端は、前記袋体に載置されることで閉塞されている。
【0029】
このような構成とすることで、液体を用いることによるリアルな音質での再生を可能としつつ、液体の漏洩を防止することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、簡易な構成で、高忠実度な再生が可能なスピーカー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態1に係るスピーカー装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係るスピーカー装置のPP線断面図である。
図3】本発明の実施形態1に係るスピーカー装置の動作態様の説明図である。
図4】本発明の実施形態1に係るスピーカー装置の使用態様の説明図である。
図5】本発明の実施形態2に係るスピーカー装置を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態2に係るスピーカー装置の示す図であって、(a)QQ線断面図、(b)RR線断面図である。
図7】本発明の実施形態2に係るスピーカー装置の動作態様の説明図である。
図8】本発明の実施形態2に係るスピーカー装置の使用態様の説明図である。
図9】本発明の実施形態3に係るスピーカー装置の斜視図である。
図10】本発明の実施形態3に係るスピーカー装置のSS線断面図である。
図11】本発明の実施形態3に係るスピーカー装置の使用態様の説明図である。
図12】本発明の実施形態1、2に係るスピーカー装置の変更例を示す図である。
図13】本発明の実施形態1、2に係るスピーカー装置の変更例を示す図である。
図14】本発明の実施形態1、2に係るスピーカー装置の変更例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<実施形態1>
以下、図1図4を用いて、本発明の実施形態1に係るスピーカー装置について説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
また、これらの図において、符号Xは、本実施形態に係るスピーカー装置を示す。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0033】
図1及び図2に示すように、スピーカー装置Xは、入力されるオーディオ信号に基づいて音波を出力するスピーカーユニット1と、一方(上方)及び他方(下方)に開口端E1、E2が設けられた筐体2と、所定の液体Lが収容された液体容器3と、を備えている。
【0034】
液体Lは、不揮発性であり化学的に安定した油等が好ましく、特に、例えば室温状態下での使用では市販のオリーブオイル等が好適に用いられ、氷点下の環境下での使用にはエンジン用潤滑油等が好適に用いられる。
【0035】
本実施形態におけるスピーカーユニット1は、その背面が筐体2の内部空間Sに露出するように、開口端E1を閉塞している。
また、スピーカーユニット1の接続端子jは、筐体2の側面から突出している。
【0036】
なお、スピーカーユニット1は、例えば、ダイナミック型スピーカーユニットが用いられる。
【0037】
本実施形態における筐体2は、略円筒状体である。
また、筐体2の底面には、この底面と液体容器3の底面とを所定の距離離間させておく複数のスペーサーmが設けられている。
なお、スペーサーmは、筐体2や液体容器3に予め取付けられていても良く、これらと別体に構成されていても良い。
【0038】
本実施形態における液体容器3は、上方に向かって開口した略有底円筒状体であり、内部に液体Lが一定量注ぎ込まれている。
【0039】
ここで、特に図2に示すように、開口端E2は、液体Lに浸漬されている。
詳述すれば、開口端E2を含む筐体2の下部が液体Lに浸漬され、これにより、内部空間Sには、開口端E2を介して液体Lが浸入している。
【0040】
また、筐体2の外周面と液体容器3の内周面との間には、その全周に亘って間隙gが形成されており、この間隙gに通気性を有するフィルター部材fが設けられている。
詳述すれば、フィルター部材fは、例えば、スポンジ等で形成される略円環状の部材であり、間隙gに通気性を保ちながら詰められるように設けられている。
【0041】
スピーカー装置Xが上記構成となされることで、内部空間Sから、開口端E2を介して間隙gに至る経路Rに、液体Lが介在することとなる。
【0042】
以下、図3及び図4を用いて、スピーカー装置Xの使用態様について説明する。
【0043】
図3に示すように、接続端子jに所定のオーディオ機器(図示せず)を接続し、音楽を再生した場合、コーン紙の振動によって生ずる内部空間Sの正又は負の圧力により、内部空間Sの液体Lが、開口端E2を介して流入或いは流出し、空気バネの発生を抑制する。
【0044】
詳述すれば、図3(a)に示すように、コーン紙が内部空間Sの方向に振動すると、内部空間Sの空気圧が上昇するが、この際、内部空間Sに侵入している液体Lが押下げられ、押下げられた液体Lは、内部空間Sの空気圧が外気圧と等しくなるように、開口端E2を介して液体容器3に流出する。
【0045】
また、図3(b)に示すように、コーン紙が内部空間Sと反対の方向に振動すると、内部空間Sの空気圧が低下するが、この際、外気圧が間隙g直下の液体Lを押下げ、内部空間Sに侵入している液体Lを押上げ、内部空間Sの空気圧が外気圧と等しくなるように、液体Lは、開口端E2を介して内部空間Sに流入する。
【0046】
このように、コーン紙の振動に応じて内部空間S内の液体Lの液面が上下するため、内部空間Sの空気圧は外気圧と等しい状態に保たれ、コーン紙の振動を阻害する空気バネの発生が抑制される。
また、コーン紙の背面からの逆位相の音は、液体Lを上下させる位置エネルギーに置換わるため、音響エネルギーとして外部に放出されない。
さらに、コーン紙の背面の音は、空気と流体の音響インピーダンスが大きく異なるため、液体Lを通して外部に伝播しない。
【0047】
なお、スピーカー装置Xの移設・運搬等を行う場合、使用者は、フィルター部材fを取外し(図4(a))、筐体2を上方に持ち上げれば良い(図4(b))。
これにより、使用者は、筐体2(及びスピーカーユニット1)と液体容器3とを分離させることができる。
【0048】
以上の通り、本実施形態によれば、液体Lにより空気バネの発生が抑制され、再生音は、コーン紙前面からの正位相成分のみとなり、低音から高音の全帯域に渡ってマスキングされず、微小な信号の再生能力に優れた、濁りのないきめ細やかでリアルな音質となる。
【0049】
また、上記の通り、空気バネの発生が抑制されるため、筐体2全体を小型化することができる。
【0050】
また、開口端E2が液体Lに浸漬され、液体Lが間隙gを介して外気にさらされていることで、コーン紙の背面の音圧が直接液体Lに作用し、空気バネの発生を抑制する効果を効果的に発生させることができ、よりリアルな音質の再生音を得ることができる。
【0051】
また、液体Lが不揮発性であることで、液体Lを長期に亘って使用できる。
【0052】
また、間隙gに通気性を有するフィルター部材fが設けられていることで、液体L内部に不純物が混入する事態を抑制できる。
【0053】
<実施形態2>
以下、図5図8を用いて、本発明の実施形態2に係るスピーカー装置について説明する。
なお、同実施形態において、先の実施形態と基本的に同一の構成要素については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
また、これらの図において、符号Yは、本実施形態に係るスピーカー装置を示す。
【0054】
図5及び図6に示すように、スピーカー装置Yは、スピーカーユニット1と、一方(前方)及び他方(後方底部)に開口端E1、E2が設けられた筐体2と、液体Lが収容された液体容器3と、を備えている。
【0055】
本実施形態におけるスピーカーユニット1の接続端子jは、後述する第一筐体21の背面から突出している。
【0056】
本実施形態における筐体2は、開口端E1が設けられた第一筐体21と、開口端E2が設けられた第二筐体22と、を有している。
【0057】
第一筐体21は、略直方体状の箱状体であり、開口端E1の他、その後面に連通孔p1が設けられている。
第二筐体22は、略逆L字状の箱状体であり、開口端E2の他、その前面に連通孔p2が設けられている。
【0058】
ここで、第一筐体21及び第二筐体22は、相互に着脱可能に連結されている。
詳述すれば、第一筐体21及び第二筐体22は、連通孔p1、p2を連通させた状態で、一対の連結手段tにより連結されている。
【0059】
各連結手段tは、略L字状の金具t1と、これに挿通され、第一筐体21に貫入されるネジt2と、により構成されており、各金具t1は、第二筐体22に固着されている。
なお、各連結手段tは、第一筐体21及び第二筐体22の当接部分の左右にそれぞれ設けられているが、設置個所や設置個数については、特に限定されないし、連結手段tの構成も、既知の手段であれば、本実施形態の構成に限定されない。
また、内部空間Sの密閉度を高めるために、第一筐体21及び第二筐体22の当接箇所にパッキン等が設けられていても良い。
【0060】
本実施形態における液体容器3は、上方に向かって開口した略直方体状の容器であり、内部に液体Lが一定量注ぎ込まれている。
【0061】
ここで、特に図6に示すように、第二筐体22と液体容器3は、第二筐体22の外周面から液体容器3の内周面に亘って懸架された懸架部kにより、一体となされている。
懸架部kは、図6(b)に示すように、各面に一つずつ設けられている。
なお、図6(b)において、液体Lの図示は省略している。
【0062】
また、液体容器3の前面と第一筐体21の後面とは、間隔dだけ離間している。
これにより、液体Lが、内部空間Sの音圧を外気に放出しやすくなる。
【0063】
スピーカー装置Yが上記構成となされることで、内部空間Sから、開口端E2を介して間隙gに至る経路Rに、液体Lが介在することとなる。
その他、間隙gにフィルター部材fが設けられている構成については、実施形態1と同様である。
【0064】
図7に示すように、本実施形態のスピーカー装置Yも、音楽を再生した場合、実施形態1のスピーカー装置Xと同様の原理でもって、コーン紙の振動に応じて内部空間S内の液体Lの液面が上下し、空気バネの発生が抑制される。
【0065】
なお、液体Lの交換やスピーカー装置Yの移設・運搬等を行う場合、使用者は、各ネジt2を取外し(図8(a))、第二筐体22(及び液体容器3)を後方に移動させれば良い(図8(b))。
これにより、使用者は、第一筐体21(及びスピーカーユニット1)と第二筐体22(及び液体容器3)とを分離させることができる。
【0066】
以上の通り、本実施形態によれば、実施形態1と略同様の効果を奏する上、通常のスピーカー装置のようにスピーカーユニット1を正面に向いた態様としつつ、第一筐体21と第二筐体22とを個別に扱う等が可能となり、移設・運搬時や収納時等の利便性が向上する。
【0067】
<実施形態3>
以下、図9図11を用いて、本発明の実施形態3に係るスピーカー装置について説明する。
なお、同実施形態において、先の実施形態と基本的に同一の構成要素については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
また、これらの図において、符号Zは、本実施形態に係るスピーカー装置を示す。
【0068】
図9及び図10に示すように、スピーカー装置Zは、スピーカーユニット1と、一方(前方)及び他方(後方底部)に開口端E1、E2が設けられた筐体2と、液体Lが収容された液体容器3と、を備えている。
【0069】
本実施形態における液体Lは、柔軟性を有する袋体Aに、その内部に所定の空間が形成されるように、緩やかに封入されている。換言すれば、袋体A内の液体Lの量は、袋体Aの表面に張力が生じない所定の量である。
また、液体Lが封入された状態の袋体Aは、特に図10に示すように、液体容器3の底面全面を覆いつつ、その外周面(側面)の略全周が液体容器3の内周面に当接した状態で、液体容器3に収容されている。
なお、袋体Aの素材としては、例えば樹脂素材が好適に用いられる。
【0070】
本実施形態における筐体2は、実施形態1と同様に略円筒状体である。
また、筐体2は、その外周面から四方に突設された突設部hを有している。
これにより、各突設部hが液体容器3の開口縁部に載置されることで、筐体2は、その開口端E2と液体容器3の底面とが所定の距離離間された状態で、液体容器3に挿通されている。
【0071】
ここで、本実施形態においては、液体容器3に、液体Lが封入された状態の袋体Aが収容されているため、特に図10に示すように、筐体2は、その開口端E2が、袋体Aを押圧変形させた状態で、液体容器3に挿通される。
これにより、筐体2が袋体Aに載置され、開口端E2側の開口が袋体Aにより閉じられた状態となり、内部空間Sは密閉状態となる。
【0072】
また、上記の通り、液体Lが袋体Aに緩やかに封入されているため、袋体Aの上面には液体Lによる張力が発生しておらず、図10に示すように、開口端E2側の開口を閉じている上面は、押圧変形部分を除いて液体容器3の底面と略平行となされている。
さらに、液体Lは、図10に示すように、袋体Aを介して、開口端E2と液体容器3の底面と空間を満たすように袋体Aに封入されているが、コーン紙の振動によっても密閉状態が維持されれば、これよりも少ない量であっても良い。
【0073】
スピーカー装置Zが上記構成となされることで、内部空間Sから、開口端E2を介して間隙gに至る経路Rに、液体L及び袋体Aが介在することとなる。
その他、スピーカーユニット1や液体容器3の構成については、実施形態1と同様である。また、本実施形態においては、スペーサーmやフィルター部材fは不要となる。
【0074】
図示は省略するが、本実施形態のスピーカー装置Zも、音楽を再生した場合、実施形態1のスピーカー装置Xと同様の原理でもって、コーン紙の振動に応じて内部空間S内の袋体Aに封入された液体Lの液面が上下し、空気バネの発生が抑制される。
【0075】
なお、袋体Aの交換やスピーカー装置Yの移設・運搬等を行う場合、使用者は、筐体2(及びスピーカーユニット1)を上方に移動させれば良い(図11)。
これにより、使用者は、筐体2(及びスピーカーユニット1)と液体容器3とを分離させることができる。
【0076】
以上の通り、本実施形態によれば、実施形態1と同様に、液体Lを用いることによるリアルな音質での再生を可能としつつ、液体Lの漏洩を防止することができる。
【0077】
<変更例>
なお、上記の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0078】
例えば、スピーカー装置Xにおける液体容器3及びスピーカー装置Yにおける液体容器3は、液体Lを排出する開閉バルブvを有していても良い。
これにより、液体Lの移設・運搬作業等が容易となる。
【0079】
また、既存のエンクロージャー型式である、ケルトン型、フロントロードホーン型等の各型式は、その構造の一部が密閉型筐体で構成されている。
これらの各型式の密閉型筐体部分を、スピーカー装置Yの型式に置換えることで、これら各型式の再生音質が向上する。
【0080】
また、スピーカー装置Xは、図13に示すように変更されても良い。
即ち、スピーカーユニット1と同様のスピーカーユニット1´を、内部空間Sにおけるスピーカーユニット1と液面との間に、スピーカーユニット1と平行に設置しても良い。
このとき、接続端子j及びj´は、アンプの出力端子に、同相で並列に接続する。
【0081】
このように構成されたスピーカー装置Xにおいて、スピーカーユニット1及び1´は、入力信号に対し同相で振動し、スピーカーユニット1及び1´との間の内部空間S1には全く空気バネが働かない。
一方、スピーカーユニット1´と液面との間の内部空間S2は、図1等に示したスピーカー装置Xと同様の原理でもって、コーン紙の振動に応じて、内部空間S2内の液体Lの液面が上下し、空気バネの発生が抑制される。
これにより、スピーカーユニット1´は、内部空間S1の空気圧を、大気圧と常に等しく保つために動作し、スピーカーユニット1´の振動は外部に伝播せず、スピーカーユニット1は、常に完全に空気バネのない状態で入力信号に忠実に振動する。
【0082】
結果的に、スピーカー装置Xからは、スピーカーユニット1からの音だけが、リニアリティに優れた、より高忠実度な音質で再生される。
なお、この変更例は、スピーカー装置Y及びZでも、各々の内部空間Sにスピーカーユニット1´の設置が可能であり、各々の装置で、より高忠実度な音の再生が実現される。
【0083】
また、スピーカー装置Xは、図14に示すように変更されても良い。
即ち、筐体2において、内部空間Sのスピーカーユニット1と液面との間に、スピーカーユニット1と平行に、液体Lを透過させないが空気圧を良く伝えるギャザー状(ひだ状)の膜u1が設置されていても良い。
また、間隙gにも、同様にギャザー状(ひだ状)の膜u2を設置されていても良い。
なお、膜u1、u2は、例えば樹脂により形成される。
【0084】
これにより、内部空間Sは、膜u1によって、内部空間S1と内部空間S2とに仕切られる。
このとき、内部空間S1は、膜u1によって密閉状態となり、同様に内部空間S2も密閉状態である。
【0085】
また、膜u1が空気圧を良く伝播させるため、内部空間S1と内部空間S2は、空気圧に対し一体として動作する。
また、膜u2も空気圧を良く伝播させるため、筐体2の外周面と液体容器3の内周面との間の液体Lは、膜u2を介して大気圧にさらされた状態となる。
【0086】
このように、液体Lを透過させず、空気圧を良く伝播する膜u1、u2によって、図1等に示すスピーカー装置Xと同様の原理で、液体Lの液面の上下でもって、空気バネの発生が抑制され、リアルな音質での再生を可能としつつ、液体Lの漏洩を防止することができる。
なお、本変更例においては、フィルター部材fは不要となる。
また、本変更例はスピーカー装置Yにおいても同様に応用可能である。
【0087】
また、スピーカー装置X~Zを、ローパスフィルター及び低音再生用のパワーアンプ等に接続することで、所謂サブウーファーとして用いることができる。
【0088】
この他、スピーカー装置X、Yにおいても、スピーカー装置Zのように、袋体Aに封入された液体Lを用いても良い。
【0089】
なお、出願書類中の「略」は、その後に続く形状に面取りや丸め加工がなされていること、また、形状を構成する要素がその形状の目的を阻害しない範囲内で変形や長さ変更されているものを含むことを意味する概念である。
【符号の説明】
【0090】
X~Z スピーカー装置
1 スピーカーユニット
2 筐体
E1、E2 開口端
3 液体容器
S 内部空間
g 間隙
L 液体
A 袋体
【要約】      (修正有)
【課題】簡易な構成で、高忠実度再生が可能なスピーカー装置を提供する。
【解決手段】スピーカー装置Xは、接続端子jに入力されるオーディオ信号に基づいて音波を出力するスピーカーユニット1と、一方及び他方に開口端E1、E2が設けられた筐体2と、所定の液体Lが収容された液体容器3と、を備える。スピーカーユニット1は、その背面が筐体2の内部空間Sに露出するように、一方の開口端E1を閉塞し、液体容器3には、他方の開口端E2が挿通され、筐体2の外周面と液体容器3の内周面との間には、液体容器3の外部と連通する間隙gが形成され、筐体2の内部空間Sから、他方の開口端E2を介して外部に至る経路には、液体Lが介在している。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14