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特許7483120熱分解によるプラスチックのモノマーへの変換
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  • 特許-熱分解によるプラスチックのモノマーへの変換 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】熱分解によるプラスチックのモノマーへの変換
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/12 20060101AFI20240507BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C08J11/12 CES
C10G1/10 ZAB
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023501682
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 US2021070849
(87)【国際公開番号】W WO2022016177
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/050,793
(32)【優先日】2020-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598055242
【氏名又は名称】ユーオーピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】バーガー、ポール ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シー、イーリー
(72)【発明者】
【氏名】スン、ピン
(72)【発明者】
【氏名】モンタルバーノ、ジョセフ エー.
(72)【発明者】
【氏名】アッレグロ、2世、マイケル エス.
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィドフ、レフ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05639937(US,A)
【文献】米国特許第05136117(US,A)
【文献】特開2005-154510(JP,A)
【文献】特開昭56-088491(JP,A)
【文献】特表2016-523986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J11/00-11/28
B29B17/00-17/04
C10G1/00-99/00
C07C1/00-409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックをモノマーに変換するプロセスであって、
プラスチック供給物流を300~600℃の温度に加熱して、前記プラスチック供給物流を熱分解し、低温熱分解生成物流を提供すること、
前記低温熱分解生成物流から高温熱分解供給物流を取得すること、
前記高温熱分解供給物流を600~1100℃の高温に加熱して、前記高温熱分解供給物流を、モノマーを含む高温熱分解生成物流に更に熱分解すること、ここで、前記高温熱分解供給物流は希釈ガス流と接触され、前記希釈ガス流は0.6~20の炭素対ガスモル比で導入される、
及び
前記高温熱分解生成物流から前記モノマーを回収すること、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記低温熱分解生成物流を分離して、蒸気状低温熱分解生成物流及び高温熱分解供給物流を提供することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記高温熱分解供給物流が液体流である、請求項2に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の記載)
本出願は、その全体が本明細書に組み込まれる、2020年7月11日に出願された、米国仮出願第63/050,793号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本分野は、モノマーを生成するためのプラスチック材料のリサイクルである。
【背景技術】
【0003】
廃プラスチックの回収及びリサイクルは、何十年にもわたって本プロセスの最前線に関与してきた一般の人々の高い関心を集めている。過去のプラスチックリサイクルの枠組みは、機械的リサイクルとして説明することができる。機械的リサイクルには、リサイクル可能なプラスチック物品を選別、洗浄及び溶融して溶融プラスチック材料とし、新しい清浄な物品に再成形することが必要である。しかしながら、この機械的リサイクルプロセスが経済的であるかは証明されていない。溶融及び再成形の枠組みは、経済面及び品質面を含むいくつかの制約に直面している。材料回収施設におけるリサイクル可能なプラスチック物品の収集物には、リサイクル可能なプラスチック物品から分離する必要のあった非プラスチック物品が必然的に含まれる。同様に、異なる種類のプラスチックから成形された物品は、通常、同種のプラスチックから成形された物品の品質を有さないため、収集した異なる種類のプラスチック物品は、溶融前に互いに分離しなければならない。収集したプラスチック物品を非プラスチック物品から分離し、次いで同種のプラスチックに分離すると、プロセスの費用が増加し、経済性が低下する。更に、リサイクル可能なプラスチック物品は、溶融及び再成形の前に適切に洗浄して非プラスチック残留物を除去しなければならず、これもプロセスの費用を増加させる。また、回収されたプラスチックは、バージングレード樹脂の品質を有さない。プラスチックリサイクルプロセスの重荷である経済性及びリサイクルプラスチックの品質の低さにより、この再生可能資源の広範な再生は妨げられてきた。
【0004】
枠組み転換により、化学産業は、廃プラスチックをリサイクルするための新たな化学的リサイクルプロセスに迅速に対応することが可能となった。新たな枠組みは、350~600℃で作動する熱分解プロセスで、リサイクル可能なプラスチックを液体へ化学的に変換させることである。液体は、精製所において、燃料、石油化学物質、更には未使用プラスチック樹脂を製造するために再重合できるモノマーに精製することができる。熱分解プロセスでは、プロセスに供給されたプラスチック材料から収集された非プラスチック材料を分離する必要は依然としてあるものの、プラスチック材料の洗浄及び場合により選別は、化学的リサイクルにおいてそれほど重要ではない可能性がある。
【0005】
より高温の熱分解について研究が進められており、それは、更なる精製なしにプラスチックをモノマーに直接変換するための道筋と見なされている。プラスチックをモノマーへ戻す変換は、現時点ではまだ経済面で十分に開発されていない、再生可能資源を循環的にリサイクルする方法を提示する。必要とされるのは、プラスチック物品をモノマーへ直接戻すための実行可能なプロセスである。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、廃プラスチックからエチレン、プロピレン及び他の軽質オレフィンを高収率で生成することができるプラスチック熱分解プロセスについて記載する。プラスチック供給物は、低温熱分解プロセスで熱分解され、続いて高温熱分解プロセスでエチレン及びプロピレンなどのモノマーに直接熱分解される。低温熱分解プロセスからの、熱分解の不十分な生成物は、所望の低温生成物モノマーを保持しながら高温熱分解プロセスに供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示のプロセス及び装置の概略図である。
【0008】
定義
「連通」という用語は、列挙された構成要素間で流体の流れが動作可能に許容されることを意味し、これは「流体連通」として特徴付けることができる。
【0009】
「下流連通」という用語は、下流連通対象へ流れる流体の少なくとも一部が、それが流体連通している物体から動作可能に流れ得ることを意味する。
【0010】
「上流連通」という用語は、上流連通対象から流れる流体の少なくとも一部が、それが流体連通している物体へ動作可能に流れ得ることを意味する。
【0011】
「直接連通」という用語は、上流構成要素からの流体の流れが、他の介在する容器を通過することなく下流構成要素に入ることを意味する。
【0012】
「間接連通」という用語は、上流構成要素からの流体の流れが、介在する容器を通過した後に下流構成要素に入ることを意味する。
【0013】
「迂回」という用語は、物体が、迂回対象との下流連通から、少なくとも迂回する程度離れていることを意味する。
【0014】
「優勢な」、「優勢部分」又は「優勢である」という用語は、50%超、好適には75%超、好ましくは90%超を意味する。
【0015】
「炭素対ガスモル比」という用語は、プラスチック供給物流中の炭素原子のモル量と、希釈ガス流中のガスのモル量との比を意味する。回分式プロセスの場合、炭素対ガスモル比は、反応器内のプラスチック中の炭素原子のモル数と、反応器に添加されるガスのモル数との比である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、低温プラスチック熱分解プロセスを高温熱分解プロセスと合わせることによって、プラスチックをモノマーに変換するための2段階プロセス及び装置を見出した。低温熱分解プロセスからの、熱分解の不十分な生成物は、高温熱分解プロセスにおいて改良することができる。
【0017】
廃プラスチック流を熱分解するためのプロセスについて、図示するような一実施形態によるプロセス10を参照しながら取り扱う。プラスチック供給物は、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィンを含むことができる。いかなる種類のポリオレフィンプラスチックも、他のモノマーと無作為に混合されていても、又はブロックコポリマーとして混合されていても受け入れることができる。そのため、このプロセスにしたがって、より広範なプラスチックをリサイクルすることができる。本発明者らはまた、プラスチック供給物が混合ポリオレフィンであり得ることを見出した。ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブチレンを共に混合することができる。更に、他のポリマーをポリオレフィンプラスチックと混合するか、又は単独で供給物として提供することができる。単独で、又は他のポリマーと共に使用することができる他のポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリウレタン及びポリスルホンが挙げられる。このプロセスは、プラスチック供給物を、軽質オレフィンを含むより小さな分子に熱分解することから、多くの異なる種類のプラスチックを供給物中に用いることができる。プラスチック供給物流は、紙、木材、アルミニウム箔、いくつかの金属導電性充填剤、若しくはハロゲン化又は非ハロゲン化難燃剤などの非プラスチック不純物を含有してもよい。
【0018】
一実施形態において、プラスチック供給物流は材料リサイクル施設(MRF)から得ることができるが、それ以外は埋立て地に送られる。プラスチック供給物流は、低温熱分解反応器(LTPR)1のための供給原料として使用される。図において、プラスチック供給物流は、MRF拠点での最小限の選別及び洗浄を経て受け入れられる。プラスチック供給物は、圧密されたプラスチック物品の分別ベールからの、圧縮されたプラスチック物品であってもよい。プラスチック物品は、LTPR1に供給され得るプラスチックチップ又はプラスチック粒子に細断することができる。オーガ又は上昇ホッパを使用して、プラスチック供給物を物品全体又はチップとして反応器へ輸送することができる。プラスチック物品又はチップは、プラスチック融点を超えて加熱され溶融物となり、LTPR1へ注入されるか、又はオーガで送入してもよい。オーガは、プラスチック物品全体をLTPR1内に移動させ、それと同時に摩擦又は間接的な熱交換によってオーガ内のプラスチック物品を溶融物へと溶融し、溶融状態で反応器に入れるように動作してもよい。プラスチック供給物流は、供給ライン3からLTPR1に供給される。
【0019】
LTPR1は、連続撹拌槽反応器(CSTR)、ロータリーキルン、オーガ反応器又は流動床反応器であってもよい。一実施形態では、LTPR1はCSTRである。LTPR1は撹拌機を使用してもよい。LTPR1において、プラスチック供給物流は、プラスチック供給物流を熱分解して熱分解生成物流にする温度まで加熱される。LTPR1は、プラスチック供給物流中の全てのプラスチックが低温熱分解生成物に変換するために十分な滞留時間を与える。LTPR1は、温度300℃(572°F)~600℃(1112°F)、又は好ましくは380℃(716°F)~450℃(842°F)、圧力0.069MPa(ゲージ)(10psig)~1.38MPa(ゲージ)(200psig)、又は好ましくは0.138MPa(ゲージ)(20psig)~0.55MPa(ゲージ)(80psig)、プラスチック供給物の液空間速度0.1hr-1~2hr-1、又はより好ましくは0.2hr-1~0.5hr-1で作動し得る。窒素ブランケット又はライン4の専用窒素掃引流を、選択的に、17Nm/m(100scf/bbl)~850Nm/mプラスチック供給物(5,000scf/bbl)、又はより好ましくは170Nm/m(1000scf/bbl)~340Nm/mプラスチック供給物(2000scf/bbl)の流量でLTPR1に添加してもよい。ライン4の窒素掃引流は、全蒸気生成物中の不純ガス分圧を低減させるための希釈ガスとして機能する。
【0020】
LTPR1は、蒸気生成物流と相平衡状態にある液体を含む。液体流の一部は、LTPR1の液面下方の循環ライン8から、循環ポンプ9によって取り出してもよい。圧送流は、ライン8で加熱器6へ輸送してもよく、加熱器6は、軽質炭化水素を燃焼させて燃焼熱から熱を生成する焼却炉であってもよい。ライン8の圧送流は、加熱器6内で加熱され、ライン5を介してLTPR1へ戻されるが、その質量流量及び熱伝達率は、LTPR1へ戻るとき、加熱器6を介して全てのエンタルピー要件を提供するものである。必要な熱伝達は、加熱器6からのライン5の加熱液体流と、LTPR1内のプラスチック供給物流3とを混合することによって達成される。
【0021】
低温熱分解生成物は、蒸気状低温生成物流としてライン11でLTPR1の頂部付近から取り出してもよい。固形物を多く含む生成物流は、ライン7でLTPR1の底部から取り出してもよい。固形物を多く含む生成物流は、チャー及び非有機物を含み得る。LTPR1内の対流熱伝達は、ポンプ周囲流11からの混合と共に均一な加熱をもたらし、それは、オーガ又はロータリーキルン反応器に一般的に見られる外部間接加熱を通じて加熱される熱分解反応方法よりも有利である。
【0022】
ライン11の蒸気状低温生成物流は、窒素流によって選択的に担持される様々な炭化水素を含む。ライン11の低温熱分解生成物流から高温熱分解供給物流が取り出され、高温熱分解反応器(HTPR)12に供給される。LTPR1及びHTPR12が同じ場所にある場合、すなわち互いに50マイル以下、好適には10マイル以下、好ましくは1マイル以下離れている場合、ライン11の低温生成物流は、高温熱分解供給物流として、冷却せずにHTPR12に直接供給することができる。その場合、高温熱分解供給物流は、ライン11とライン120とを接続するライン118上の制御バルブを介して、ライン11の低温熱分解生成物流からライン120に取り込まれる。LTPR1及びHTPR12が、互いに50マイルを超えて、好適には10マイルを超えて、好ましくは1マイルを超えて位置するなど、同じ場所にない場合、蒸気状低温熱分解生成物流を冷却して、回収される生成物スレートの価値を長時間の輸送中に低下させ得る水素移動反応及び過分解反応を終了させてもよい。この場合、LTPR1はMRFに配置してもよい。一方、HTPR12は、例えば精製所に配置してもよい。
【0023】
後者の場合の急冷は、ライン11の蒸気状低温熱分解生成物流を転向させ、ライン111上の制御弁を介し、ライン111を通じ冷却器114へ送ることによって行うことができ、冷却器114を用いて、間接熱交換による蒸気と、ライン128の冷却された低温熱分解生成物流とを生成することができる。ライン128の冷却された低温熱分解流は、第1分離器130で分離され、ライン132の第1蒸気状低温熱分解生成物流及びライン134の第1液体低温熱分解生成物流が得られる。ライン132の第1蒸気状低温熱分解生成物流は、メタン及び乾燥ガスを含み得るため、ライン136で燃料流を第1蒸気状低温熱分解生成物流から取り出し、加熱器6内で燃料として燃焼させて、内部で熱を発生させることができる。第1分離器130は、温度40~70℃及び圧力350~410kPa(g)で運転され得る。
【0024】
ライン134の第1液体低温熱分解生成物流は、ライン120の高温熱分解供給物流とすることができる。しかしながら、ライン120の高温熱分解供給物流とされた低温熱分解生成物流の残りの部分から、有用なC2-C4オレフィンを含有することになる液化石油ガス流を分離するために、第2の分離が望ましい場合がある。その場合、ライン134の第1液体低温熱分解生成物流は、加熱及び/又は減圧され、第2分離器140で分離されて、ライン142の第2蒸気状低温熱分解生成物流及びライン144の第2液体低温熱分解生成物流が得られる。ライン142の第2蒸気状低温熱分解生成物流は、LPGを含み得るため、軽質オレフィンは、重合プロセス又は他の用途のためのモノマーとしてそこから回収され得る。C5+又はC6+炭化水素を有するライン144の冷却液体低温熱分解生成物流は、ライン120の高温熱分解供給物流とすることができる。第2分離器140は、温度45~80℃及び圧力150~250kPa(g)で運転され得る。
【0025】
更なる実施形態では、高温熱分解供給物流を選択的水素化に供して、ライン120の供給物流からのジオレフィン及びアセチレンをモノオレフィンに変換することができる。高温熱分解供給物流は、ライン121で転向させて選択的水素化反応器150へ送ることができる。水素は、ライン152で高温熱分解供給物流に添加される。選択的水素化反応器150は、通常、比較的穏やかな水素化条件で運転される。これらの条件では通常、炭化水素が液相材料として存在することになるので、反応器150は典型的には、高温熱分解反応器(HTPR)12の場所に位置する。反応物は通常、反応物を液相炭化水素として維持するのに十分な最小圧力下で維持される。したがって、好適な作動圧力は、276kPa(g)~5516kPa(g)(40psig~800psig)、又は345kPa(g)~2069kPa(g)(50及び300psig)の広範囲にわたる。25℃~350℃(77°F~662°F)、又は50℃~200℃(122°F~392°F)の比較的穏やかな温度が典型的に用いられる。選択的水素化触媒を通る反応物の液空間速度は、1.0hr-1超及び35.0hr-1超とするべきである。相当量のモノオレフィン系炭化水素の望ましくない飽和を避けるために、選択的水素化触媒床に入る物質中の水素対ジオレフィン系炭化水素のモル比は、0.75:1~1.8:1に維持される。
【0026】
ナフサ流中でジオレフィンを選択的に水素化することができる任意の好適な触媒を使用することができる。好適な触媒としては、銅と、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、亜鉛、モリブデン及びカドミウムなどの少なくとも1種の他の金属又はそれらの混合物とを含む触媒が挙げられるが、これらに限定されない。金属は、例えばシリカ及びアルミナなどの無機酸化物支持体に担持されていることが好ましい。選択的に水素化された高温熱分解供給物流は、ライン121でHTPR12に輸送される。水素化された放出物は、ライン154で反応器を出て水素分離器156に入り、ライン158の水素を多く含む塔頂流となり、これをスクラビング(図示せず)して塩化水素又は他の化合物を除去し、場合によっては補給水素流を補充した後に圧縮し、水素流152として戻すことができる。分離器156の底部からのライン160の水素化された高温熱分解供給物流は、供給物ライン14を介してHTPR12に輸送することができる。
【0027】
ライン14の高温熱分解供給物流は、プラスチック用の軽質オレフィンへの更なる変換に更に好適なC5+又はC6+材料を含むことができる。その結果、高温熱分解供給物流を高温熱分解に供して、更なる量の軽質オレフィンモノマーを回収用に生成することができる。ライン120の高温熱分解供給物流は、遠隔地、例えば遠隔地のMRFから液体として輸送されるか、又は近くの場所からガスとして輸送され、HTPR12に供給される。ライン14の高温熱分解供給物流は、場合により分配器を介し、HTPR12の側面16にある供給物入口15を通して、HTPR12に注入することができる。高温熱分解プロセスでは、ライン14の高温熱分解供給物流は、その由来を考慮してプラスチック供給物と見なされる。HTPR12では、高温熱分解供給物流を600~1100℃の高温に加熱し、高温熱分解供給物流を更に熱分解して、モノマーを含む高温熱分解生成物流にする。
【0028】
HTPR12に注入された供給物は、希釈ガス流と接触させることができる。希釈ガス流は、好ましくは不活性であるが、炭化水素ガスであってもよい。蒸気は、好ましい希釈ガス流である。希釈ガス流は、反応性オレフィン生成物を互いに分離して、軽質オレフィンに対する選択性を保持し、したがって、軽質オレフィンの高級オレフィンへのオリゴマー化又は軽質ガスへの過分解を回避する。希釈ガス流は、分配器を介して希釈物ライン18から供給してもよく、希釈物入口19を通じて分配してもよい。希釈ガス流は、希釈物入口19を通じてHTPR12に吹き込んでもよい。希釈物入口19は、HTPR12の底部にあってもよい。希釈ガス流は、高温熱分解供給物流をHTPR12の供給物入口15から反応器の出口20まで推進するために用いてもよい。一態様では、供給物入口15はHTPR12の下端にあってもよく、出口20は反応器の上端にあってもよい。HTPR12の壁16の内部を耐熱ライニングで被覆して反応器を断熱し、その熱を保存してもよい。
【0029】
高温熱分解供給物流は、600~1100℃、好適には少なくとも800℃、好ましくは850~950℃の熱分解温度に加熱するものとする。高温熱分解供給物流は、HTPR12に供給する前に高温熱分解温度まで予熱することができるが、好ましくは、HTPR12に入った後に高温熱分解温度まで加熱する。一実施形態では、高温熱分解供給物流は、高温熱担体粒子の流れと接触させることによって高温熱分解温度まで加熱する。高温熱担体粒子の流れは、担体ライン22で粒子入口23を通じて反応器に供給してもよい。一態様では、粒子入口23は、希釈物入口19と供給物入口15との間に配置してもよい。次いで、希釈ガス流は、高温熱担体粒子の流れと接触し、高温熱担体粒子の流れを移動させて、供給物ライン14から供給物入口15を通った高温熱分解供給物流と接触させる。
【0030】
熱担体粒子の流れ及び供給物流は、HTPR12に入る前に互いに接触することが企図され、この場合、供給物流及び熱担体粒子の流れは、同じ入口を通ってHTPR12に入ることができる。また、希釈ガス流の一部又は全部が熱担体粒子を反応器に送り込むことができることも企図され、この場合、希釈ガス流及び熱担体粒子の流れは、同じ入口を通ってHTPR12に入ることができる。更に、希釈ガス流は、高温熱分解供給物流を反応器に送り込むことができ、この場合、希釈ガス流及び高温熱分解供給物流は、同じ入口を通ってHTPR12に入ることができる。また、高温熱分解供給物流及び熱担体粒子の流れは、希釈ガス流の一部又は全部によってHTPR12に送り込まれることも企図され、この場合、希釈流、高温熱分解供給物流及び熱担体粒子の流れの少なくとも一部は、全て同じ入口を通ってHTPR12に入ることができる。
【0031】
別の実施形態では、供給物入口15及び粒子入口23は反応器の上端に配置してもよく、そこからダウナー反応器構成(図示せず)内を共に落下することができる。この実施形態では、希釈ガス流は、供給物及び熱担体粒子を上方に流動させるようには機能しない。
【0032】
高温熱分解供給物流を高温熱分解温度まで加熱すると、高温熱分解供給物流は気化し、軽質オレフィンを含むより小さな分子に熱分解される。気化及びより多くのモル数への変換は、どちらも体積を増加させ、供給物及び熱分解生成物を反応器出口20に向かって急速に移動させる。高温熱分解供給物流の供給物の体積膨張により、希釈ガス流は必ずしも供給物及び生成物を出口へ急速移動させる必要はない。しかしながら、希釈ガスはまた、生成物オレフィンを互いに、及び熱担体粒子から分離させて、軽質オレフィン選択性を低下させるオリゴマー化及び過分解を防止する役割を果たす。したがって、希釈ガス流を用いて、供給物流を、高温熱担体粒子の流れと接触しながら熱分解している状態で、反応器出口20に向けて移動させることができる。一態様において、本発明者らは、希釈ガス流を0.6~20の高い炭素対ガスモル比で導入できることを見出した。炭素対ガスモル比は、少なくとも0.7、好適には少なくとも0.8、より好適には少なくとも0.9、最も好適には少なくとも1.0であってよい。一態様では、炭素対ガスモル比は15を超えなくてもよく、好適には12を超えなくてもよく、より好適には9を超えなくてもよく、最も好適には7を超えなくてもよく、好ましくは5を超えない。高い炭素対ガスモル比は、重要なことに、生成物回収の際に生成物ガスを含む他のガスから分離しなければならない希釈ガスの量を減少させる。
【0033】
高温熱担体粒子の流れは、砂などの不活性固体粒子であってもよい。更に、球状粒子は、希釈ガス流によって最も浮揚又は流動させやすい可能性がある。球状αアルミナは、熱担体粒子の好ましい材料であり得る。球状αアルミナは、アルミナ溶液を噴霧乾燥し、続いてアルミナをαアルミナ結晶相に変換する温度で焼成することによって形成され得る。熱担体粒子の平均直径は、粒子の最大平均直径を指す。
【0034】
供給物流は、高速熱分解、及び真空熱分解、低速熱分解などの他の熱分解方法を含む様々な熱分解方法を用いて熱分解することができる。高速熱分解は、非常に短い滞留時間、典型的には0.5秒~0.5分の間に、供給原料に比較的高い温度を急速に加えることと、次に、化学平衡が起こり得る前に熱分解生成物の温度を急速に低下させることとを含む。この手法によって、ポリマーの構造は、解重合及び揮発反応によって最初に形成されるが有意な時間にわたって持続しない、反応性化学フラグメントに分解される。高速熱分解は、固定床熱分解反応器、流動床熱分解反応器、循環流動床反応器、又は高速熱分解が可能な他の熱分解反応器などの様々な熱分解反応器で実行することができる、強力で短時間のプロセスである。
【0035】
熱分解プロセスは、チャー、コークスと呼ばれる、熱担体粒子上に蓄積する炭素含有固形物、並びにオレフィン及び水素ガスを含む熱分解ガスを生成する。
【0036】
熱担体粒子及び高温熱分解供給物流は、反応器内で希釈ガス流によって流動させてもよい。高温熱分解供給物流及び熱担体粒子の流れは、希釈物入口19を通ってHTPR12に連続的に入る希釈ガス流によって流動させてもよい。熱担体粒子及び高温熱分解供給物流は、高密度気泡床内で流動させることができる。気泡床では、希釈ガス流及び熱分解されたプラスチック蒸気は、高密度微粒子床の認識可能な頂面を通って上昇する気泡を形成する。ガスに同伴された熱担体粒子のみが蒸気と共に反応器から出る。気泡床におけるガスの空塔速度は、典型的には、3.4m/s(11.2ft/s)未満であり、高密度床の密度は、典型的には、475kg/m(49.6lb/ft)超である。熱担体粒子とガスとの混合物は、触媒を迂回する拡散蒸気を伴って不均一である。高密度気泡床では、ガスは反応器出口20から出る。一方、固体熱担体粒子及びチャーは、HTPR12の底部出口(図示せず)から出てもよい。
【0037】
一態様において、HTPR12は、熱担体粒子の希釈相を用いた高速流動流れ様式(fast-fluidized flow regime)、若しくは輸送又は空圧搬送流れ様式(transport or pneumatic conveyance flow regime)で作動することができる。HTPR12は、ライザー反応器として作動する。高速流動流れ様式及び輸送流れ様式では、熱担体粒子の流れ、熱分解を受ける高温熱分解供給物流、及び希釈ガス流は、共に上方に流れる。いずれの場合も、熱分解材料及び熱担体粒子の準高密度床は、HTPR12の底部で熱分解を受ける。熱分解材料及び熱担体粒子は上方に移動する。希釈ガス流は、熱分解材料及び熱担体粒子の流れを浮揚させることができる。分離器30がHTPR12の外側に配置される場合、ガスと熱担体粒子との混合物は、反応器出口20から一緒に排出されてもよい。分離器30がHTPR12内に配置される場合、ガスは反応器出口20から排出され、熱担体粒子及びチャーは追加の熱担体粒子出口から出る。典型的には、熱担体粒子を排出する反応器出口20は、熱担体粒子入口23の上方にある。更に、輸送流れ様式及び高速流動流れ様式において、ガス状生成物からの熱担体粒子の分離は、熱担体粒子入口23及び/又は供給物入口15の上方で行われる。
【0038】
高速流動流れ様式における密度は、少なくとも274kg/m(17.1lb/ft)~475kg/m(49.6lb/ft)であり、輸送流れ様式では274kg/m3(17.1lb/ft)以下である。高速流動流れ様式では、高温熱分解供給物のガス空塔速度は、典型的には、少なくとも3.4m/s(11.2ft/s)~7.3m/s(15.8ft/s)である。輸送流れ様式では、高温熱分解供給物のガス空塔速度は、少なくとも7.3m/s(15.8ft/s)である。高速流動流れ様式において、希釈ガス流及び生成物ガスは上昇するが、高温固形物はガスに対してスリップする可能性があり、ガスは間接的な上昇軌道をとり得る。輸送流れ様式では、固形物のスリップは少ない。反応器内のプラスチック及び生成物ガスの滞留時間は、1~20秒、典型的には10秒以下である。
【0039】
高速流動流れ様式において、希釈ガス流及び生成物ガスは上昇するが、高温固形物はガスに対してスリップする可能性があり、ガスは間接的な上昇軌道をとり得る。輸送流れ様式では、固形物のスリップは少ない。反応器内の高温熱分解供給物流及び生成ガスの滞留時間は、1~20秒であり、典型的には10秒以下である。
【0040】
熱担体粒子、希釈ガス流及び高温熱分解生成物ガスを含む反応器放出物は、反応器出口20を通りHTPR12から出て、反応器放出物ライン28を分離器30へ輸送され得る。一態様において、分離器30を、HTPR12内に配置してもよい。分離器30をHTPR12内に配置する場合、熱担体粒子、希釈ガス流及び熱分解生成物ガスは、分離器30に入る。ライン28の反応器放出物は、温度600~1100℃及び圧力1.5~2.0バール(ゲージ)になる。
【0041】
分離器30は、求心加速を利用して熱分解ガス状生成物から熱担体粒子を分離するサイクロン分離器であってもよい。反応器放出物ライン28は、反応器放出物を、典型的には水平な角度の軌道でサイクロン分離器30に接線方向に流し込み、反応器放出物を求心的に加速させることができる。求心加速により、より高密度の熱担体粒子が外向きに引き寄せられる。粒子は角運動量を失い、サイクロン分離器30内を下降して下部触媒床に入り、熱担体汲出ライン32を通って出る。より低密度のガス状生成物は、サイクロン30内を上昇し、移送ライン34を通って排出される。一態様では、汲出ライン32の下端にストリッピングガスを添加することによって、熱分解ガス状生成物をライン32内の熱担体粒子からストリッピングしてもよい。この実施形態において、ストリッピングガス及びストリッピングされた熱分解ガスは、移送ライン34で分離器30を出る。
【0042】
一実施形態では、移送ライン34の高温熱分解生成物流を直ちに急冷して、高温熱分解生成物流中の軽質オレフィン選択性を低下させ得る水素移動反応及び過分解を防止及び終了させてもよい。急冷は以下の方法で行ってもよいが、他の急冷プロセスも企図される。高温熱分解生成物流は、移送ライン交換器36内で、場合によっては水との間接的な熱交換によって冷却され、希釈ガス流用の蒸気を生成することができる。ライン38の熱交換された高温熱分解生成物流は、300~400℃の温度であってもよい。一態様において、熱交換された高温熱分解生成物流は、移送ライン交換器36において、水との間接熱交換によって完全に急冷され、蒸気を生成してもよい。熱交換された高温熱分解生成物流が間接熱交換によって完全に急冷される場合、完全に冷却された高温熱分解生成物流は、30~60℃及び略大気圧、1~1.3バール(ゲージ)で移送ライン交換器36を出ることができるため、蒸気状高温熱分解生成物流の軽量成分を凝縮させることができる。
【0043】
代替的に、ライン38の熱交換された高温熱分解生成物流を、油急冷チャンバ42内で、ライン40からの燃料油などの油流によって直ちに急冷することにより、熱交換された高温熱分解生成物流を更に急冷してもよい。油流は、流れている熱交換された高温熱分解生成物流中に横方向に噴霧してもよい。熱交換された高温熱分解生成物流は蒸気相のままであり、油流は油急冷チャンバ42の底部から出る。油急冷チャンバ42を出た後の油流は、冷却し、油急冷チャンバへ再循環させてもよい。油急冷ガス状生成物流は、ライン44で油急冷チャンバを出て、更なる急冷のために水急冷チャンバ46に送達してもよい。ライン44の油急冷ガス状生成物流を、水急冷チャンバ46のライン48からの水流によって直ちに急冷することにより、油急冷ガス状生成物流を更に急冷してもよい。水流は、流れている油急冷ガス状生成物流中に横方向に噴霧することができる。水急冷されたガス状生成物流は、30~60℃及び略大気圧、1~1.3バール(ゲージ圧)に冷却されるため、ガス状生成物流の軽量成分を凝縮させる。
【0044】
移送ライン交換器36が、移送ライン34のガス状熱分解生成物流を、油又は水で直接急冷せず間接的に冷却する1つ又は一連の熱交換器を含み得る実施形態では、移送ライン38が、移送ライン交換器36を高温熱分解分離器55に直接接続する。
【0045】
ライン54の高温熱分解生成物流は、移送ライン熱交換器36で間接的にのみ急冷されるか、又は急冷チャンバ42及び46で追加的に直接急冷されるかに関わらず、急速冷却により部分的に凝縮される。高温熱分解生成物流は、高温熱分解分離器55内で分離され、分離器の上部から延びる塔頂ライン52内のガス状高温熱分解生成物流を、分離器の底部から延びる底部ライン57の液体高温熱分解生成物流から分離する。分離器55は、HTPR12と下流連通していてもよい。一実施形態において、水急冷チャンバ46に起因するなどの水性流が存在する場合、ライン50の水性流を高温熱分解分離器55内のブート(boot)から除去することができる。C5+炭化水素を含む液体高温熱分解生成物流は、水急冷チャンバのブート上方からライン57で除去してもよい。
【0046】
水ライン50の水性流は、場合により移送ライン交換器36及び/又は水ライン交換器56での熱交換によって気化させ、希釈ガス流として使用してもよい。送風機58は、蒸気を、希釈ライン19を通じ、希釈物入口19を介してHTPR12へ吹き込む。
【0047】
塔頂ライン52のガス状熱分解生成物流は、圧縮機80で2~3MPa(ゲージ)に圧縮してもよい。続いて、100~150℃の圧縮ガス状熱分解生成物流を、苛性ライン82で苛性洗浄容器90に供給してもよい。苛性洗浄容器90において、圧縮ガス状生成物流は、ライン92を通って苛性洗浄容器90に供給される水酸化ナトリウム水溶液と接触して、二酸化炭素などの酸性ガスを水酸化ナトリウムに吸収させる。二酸化炭素及び水酸化ナトリウムは炭酸ナトリウムを生成し、この炭酸ナトリウムは水相に入り、酸性ガスを多く含む流れとして苛性底部ライン96を通じて出て、再生及びリサイクルされる。洗浄したガス状高温熱分解生成物流は、分解ガスライン94で排出され、乾燥機100に供給されて、残留水分を除去する。
【0048】
乾燥機100では、洗浄したガス状高温熱分解生成物流をシリカゲルなどの吸着剤と接触させて水を吸着させることによって、又は加熱して水を蒸発させ、ガス状高温熱分解生成物流から除去することによって、洗浄したガス状高温熱分解生成物流から水を除去する。水流は、水ライン104で乾燥機100から除去される。乾燥ガス状高温熱分解生成物流は、乾燥分解ガスライン102で回収される。
【0049】
乾燥ガス状高温熱分解生成物流は、C2、C3及びC4オレフィンを含み、これらは回収され、重合によってプラスチックを製造するために使用され得る。本発明者らは、ガス状生成物から回収された生成物の少なくとも50重量%、典型的には少なくとも60重量%、好適には少なくとも70重量%が、価値あるエチレン、プロピレン及びブチレン生成物であることを見出した。本発明者らは、より低く、より経済的な炭素対希釈ガスモル比において、回収された生成物の少なくとも40重量%が価値ある軽質オレフィンであることを見出した。これらの軽質オレフィンの回収は、プラスチックリサイクルの循環経済を象徴する。重合プラントは現場にあってもよく、又は回収されたオレフィンを重合プラントに輸送してもよい。
【0050】
分離器30に戻ると、熱担体汲出ライン32の熱担体粒子は、熱分解プロセスからのコークスを蓄積している可能性がある。更に、熱分解プロセスからのチャー残留物も、最終的に熱担体汲出ライン32内で固体になり得る。熱担体粒子はまた、HTPR12において大部分の熱を放散しており、再加熱する必要がある。したがって、熱担体汲出ライン32は、熱担体粒子及びチャーを再熱器60に送達する。
【0051】
態様では、再熱器60に入る熱担体粒子の優勢部分(predominance)が分離器30を通過する。一実施形態では、再熱器60に入る熱担体粒子の全てが分離器30を通過する。
【0052】
熱担体粒子及びチャーは再熱器60に供給され、ライン62の空気などの酸素供給ガスと接触して、チャー及び低温熱担体粒子上のコークスを燃焼させる。再熱器60は、HTPR12とは別の容器である。コークスは、燃焼条件で酸素供給ガスと接触させることによって、使用済み触媒から燃焼除去される。燃焼熱は、熱担体粒子を再加熱する働きをする。熱担体粒子から燃焼除去されるコークス1kg当たり、10~15kgの空気が必要である。必要であれば、ライン64の燃料ガス流を再熱器60に添加して、HTPR12内の熱分解反応を推進するのに十分な熱を生成してもよい。燃料ガスは、ライン102のガス状高温熱分解生成物流から回収されたパラフィンから得ることができる。例示的な再加熱条件として、再熱器60内において、温度700℃~1000℃及び圧力1~5バール(絶対)が挙げられる。
【0053】
再加熱された熱担体粒子の流れは、再熱器60の温度で、ライン22から熱担体粒子入口23を通じて高温熱分解反応器12へ再循環される。燃料ガス及び同伴炭化物は、ライン66で再熱器を出て、塔頂ライン72の排気ガスとライン74の固形灰生成物とを分離する分離器70に送達される。
【0054】
実施例
本発明者らは、HDPEプラスチック供給物の熱分解反応を高温で行った。高温熱分解プロセスを再現するために、プラスチックペレットを水冷ジャケット管に通して、流動αアルミナ粒子の加熱床に落下させた。窒素ガスを使用し、プラスチックペレットを冷却チューブを通じて流動床に送達し、熱担体粒子の床を流動させた。窒素掃引ガスを使用して、床の上方の水冷ジャケット周辺に放出された熱分解プラスチックガスを掃引し、熱分解反応を急冷した。窒素掃引ガスは、プラスチックペレットの熱分解の間、流動床内のプラスチックと共存しなかったため、炭素対ガスモル比の計算には考慮しなかった。ガスクロマトグラフィーを使用して、熱分解の生成物を測定した。様々な熱分解条件及び生成物組成を表に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
生成物の40重量%に、高価値のC2-C4オレフィンが含まれる。価値ある芳香族も、相当量生成される。
【0057】
特定の実施形態
以下を特定の実施形態と併せて説明するが、本明細書は、前述の説明及び添付の特許請求の範囲の範囲を例解するものであり、限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【0058】
本発明の第1の実施形態は、プラスチックをモノマーに変換するためのプロセスであって、プラスチック供給物流を300~600℃の温度に加熱してプラスチック供給物流を熱分解し、低温熱分解生成物流を提供することと、低温熱分解生成物流から高温熱分解供給物流を取得することと、高温熱分解供給物流を600~1100℃の高温に加熱して、高温熱分解供給物流を、モノマーを含む高温熱分解生成物流に更に熱分解することと、高温熱分解生成物流からモノマーを回収することと、を含む。本発明の一実施形態は、低温熱分解生成物流を分離して、蒸気状低温熱分解生成物流及び高温熱分解供給物流を提供することを更に含む、本段落の第1の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、高温熱分解供給物流が液体流である、本段落の第1の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、高温熱分解流を、プラスチック供給物流が加熱される場所から高温熱分解供給物流が加熱される異なる場所まで輸送することを更に含む、本段落の第1の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、プラスチック供給物流を加熱する前に、プラスチック供給物流をその溶融温度を超えるまで予熱することを更に含む、本段落の第1の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、低温熱分解工程からの材料流を加熱器へ圧送することと、材料流を加熱することと、加熱された材料流を低温熱分解工程に再循環させることとを更に含む、本段落の第1の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、高温熱分解供給物流が高温熱担体粒子の流れとの接触によって高温に加熱される、本段落の第1の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、希釈ガス流の使用によって高温熱分解供給物流及び高温熱担体粒子の流れを浮揚させることを更に含む、本段落の第1の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、高温熱担体粒子の流れを熱担体粒子入口を通じて反応器に供給することと、熱担体粒子入口の上方で熱担体粒子からガス状生成物を分離することとを更に含む、本段落の第1の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、分離された熱担体粒子を再熱器において再加熱することと、高温熱担体粒子の流れを再熱器から反応器へ再循環させることとを更に含む、本段落の第1の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、高温熱分解供給物流を水素化処理して、ジオレフィンをモノオレフィンに変換するか、又は有機塩素含有化合物を塩化水素に分解することを更に含む、本段落の第1の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、熱分解反応を終了させるためにガス状生成物を冷却液で急冷することを更に含む、本段落の第1の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。
【0059】
本発明の第2の実施形態は、プラスチックをモノマーに変換するためのプロセスであって、プラスチック供給物流を300~600℃の温度に加熱してプラスチック供給物流を熱分解し、低温熱分解生成物流を提供することと、低温熱分解生成物流から高温熱分解供給物流を取得することと、高温熱分解供給物流を、高温熱担体粒子の流れと接触させることによって600~1100℃の高温に加熱して、高温熱分解供給物流を、モノマーを含む高温熱分解生成物流に更に熱分解することと、高温熱分解生成物流からモノマーを回収することと、を含む。本発明の一実施形態は、プラスチック供給物流を加熱する前に、プラスチック供給物流をその溶融温度を超えるまで予熱することを更に含む、本段落の第2の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、高温熱担体粒子の流れを熱担体粒子入口を通じて反応器に供給することと、熱担体粒子入口の上方で熱担体粒子からガス状生成物を分離することとを更に含む、本段落の第2の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、分離された熱担体粒子を再熱器で再加熱することと、高温熱担体粒子の流れを再熱器から反応器へ再循環させることとを更に含む、本段落の第2の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。
【0060】
本発明の第3の実施形態は、プラスチックをモノマーに変換するためのプロセスであって、プラスチック供給物流を300~600℃の温度に加熱してプラスチック供給物流を熱分解し、低温熱分解生成物流を提供することと、低温熱分解生成物流を分離して、蒸気状低温熱分解流及び液体低温熱分解流を提供することと、液体低温熱分解流を、高温熱分解供給物流として高温熱分解プロセスに供給することと、高温熱分解供給物流を600~1100℃の高温に加熱して、高温熱分解供給物流を、モノマーを含む高温熱分解生成物流に更に熱分解することと、高温熱分解生成物流からモノマーを回収することと、を含む。本発明の一実施形態は、液体低温熱分解生成物流を、プラスチック供給物流が加熱される場所から、蒸気状低温熱分解生成物流が高温熱分解供給物流とされる、精製所の異なる場所まで輸送することを更に含む、本段落の第3の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、プラスチック供給物流を加熱する前に、プラスチック供給物流をその溶融温度を超えるまで予熱することを更に含む、本段落の第3の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。本発明の一実施形態は、低温熱分解工程からの材料流を加熱器へ圧送することと、材料流を加熱することと、加熱された材料流を低温熱分解工程に再循環させることとを更に含む、本段落の第3の実施形態から本段落の先行実施形態までのうちの1つ、いずれか、又は全てである。
【0061】
更に詳述することなく、前述の説明を使用して、当業者が、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく本開示を最大限まで利用し、かつ本開示の本質的な特性を容易に確認することができ、本開示の様々な変更及び修正を行い、様々な使用及び条件に適合させることができると考えられる。したがって、先行する好ましい特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなるようにも本開示の残りを限定するものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる様々な修正及び同等の構成を網羅することを意図するものである。
【0062】
上記では、全ての温度は摂氏度で記載され、全ての部及び百分率は、別途記載のない限り、重量基準である。
図1