(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240507BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240507BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20240507BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
C23C16/458
C23C14/50 E
(21)【出願番号】P 2023503422
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2022037638
(87)【国際公開番号】W WO2023153021
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2022018429
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】竹林 央史
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-149422(JP,A)
【文献】特開2020-150071(JP,A)
【文献】特開2006-344766(JP,A)
【文献】特表2016-513947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
C23C 16/458
C23C 14/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するプラグ挿入穴と、
前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性基材と、
前記導電性基材に設けられ、前記プラグ挿入穴に連通する連通穴と、
前記ウエハ載置面に載置されるウエハと導通可能なように前記プラグ挿入穴に配置され、下面が前記セラミックプレートの下面の高さ以下に位置し、前記連通穴に供給されたガスが前記ウエハ載置面へ流通するのを許容する導電性プラグと、
を備え、
前記ウエハ載置面は、前記ウエハを支持する多数の小突起を有し、
前記導電性プラグは、前記ウエハと前記小突起と前記ウエハ載置面のうち前記小突起の設けられていない基準面とで囲まれた領域に前記ガスを供給し、
前記導電性プラグの上面は、前記小突起の上面と同じ高さにある、
半導体製造装置用部材。
【請求項2】
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するプラグ挿入穴と、
前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性基材と、
前記導電性基材に設けられ、前記プラグ挿入穴に連通する連通穴と、
前記ウエハ載置面に載置されるウエハと導通可能なように前記プラグ挿入穴に配置され、下面が前記セラミックプレートの下面の高さ以下に位置し、前記連通穴に供給されたガスが前記ウエハ載置面へ流通するのを許容する導電性プラグと、
を備え、
前記ウエハ載置面は、前記ウエハを支持する多数の小突起を有し、
前記導電性プラグは、前記ウエハと前記小突起と前記ウエハ載置面のうち前記小突起の設けられていない基準面とで囲まれた領域に前記ガスを供給し、
前記小突起の上面は、前記ウエハと接触する導電性被膜を有し、
前記導電性プラグの上面は、前記導電性被膜よりも低い位置にあり、
前記導電性プラグは、前記導電性被膜に接続されている、
半導体製造装置用部材。
【請求項3】
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するプラグ挿入穴と、
前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性基材と、
前記導電性基材に設けられ、前記プラグ挿入穴に連通する連通穴と、
前記ウエハ載置面に載置されるウエハと導通可能なように前記プラグ挿入穴に配置され、下面が前記セラミックプレートの下面の高さ以下に位置し、前記連通穴に供給されたガスが前記ウエハ載置面へ流通するのを許容する導電性プラグと、
を備え、
前記ウエハ載置面は、前記ウエハを支持する多数の小突起を有し、
前記導電性プラグは、前記ウエハと前記小突起と前記ウエハ載置面のうち前記小突起の設けられていない基準面とで囲まれた領域に前記ガスを供給し、
前記プラグ挿入穴は、内周面に雌ネジ部を有し、
前記導電性プラグは、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を外周面に有
し、
前記導電性プラグの上面は、前記小突起の上面と同じ高さにある、
半導体製造装置用部材。
【請求項4】
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するプラグ挿入穴と、
前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性基材と、
前記導電性基材に設けられ、前記プラグ挿入穴に連通する連通穴と、
前記ウエハ載置面に載置されるウエハと導通可能なように前記プラグ挿入穴に配置され、下面が前記セラミックプレートの下面の高さ以下に位置し、前記連通穴に供給されたガスが前記ウエハ載置面へ流通するのを許容する導電性プラグと、
を備え、
前記ウエハ載置面は、前記ウエハを支持する多数の小突起を有し、
前記導電性プラグは、前記ウエハと前記小突起と前記ウエハ載置面のうち前記小突起の設けられていない基準面とで囲まれた領域に前記ガスを供給し、
前記プラグ挿入穴は、内周面に雌ネジ部を有し、
前記導電性プラグは、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を外周面に有し、
前記小突起の上面は、前記ウエハと接触する導電性被膜を有し、
前記導電性プラグの上面は、前記導電性被膜よりも低い位置にあり、
前記導電性プラグは、前記導電性被膜に接続されている、
半導体製造装置用部材。
【請求項5】
前記導電性プラグの材料は、Si又はSiCである、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項6】
前記連通穴の内周面には、前記セラミックプレートの下面と当接するように絶縁管が配置されている、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項7】
前記プラグ挿入穴は、内周面に雌ネジ部を有し、
前記導電性プラグは、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を外周面に有する、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【請求項8】
前記導電性プラグは、上から下に向かって拡径する拡径部を有し、
前記プラグ挿入穴は、前記拡径部と当接可能な形状となっている、
請求項1又は2に記載の半導体製造装置用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置用部材としては、ウエハ載置面を有する静電チャックが冷却装置上に設けられたものが知られている。例えば、特許文献1の半導体製造装置用部材は、冷却装置に設けられたガス供給孔と、ガス供給孔と連通するように静電チャックに設けられた凹部と、凹部の底面からウエハ載置面まで貫通する細孔と、凹部に充填された絶縁材料からなる多孔質プラグとを備えている。ヘリウム等のバックサイドガスがガス供給孔に導入されると、そのガスはガス供給孔、多孔質プラグおよび細孔を通ってウエハの裏面側の空間に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した半導体製造装置用部材では、ウエハ上部のプロセスガスをハイパワーでプラズマ化する際に、バックサイドガスが通過する細孔内でも意図せずプラズマが生成してしまい、ウエハの裏面がエッチングされてしまうことがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ウエハの裏面が意図せずにエッチングされてしまうのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の半導体製造装置用部材は、
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するプラグ挿入穴と、
前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性基材と、
前記導電性基材に設けられ、前記プラグ挿入穴に連通する連通穴と、
前記ウエハ載置面に載置されるウエハと導通可能なように前記プラグ挿入穴に配置され、下面が前記セラミックプレートの下面の高さ以下に位置し、前記連通穴に供給されたガスが前記ウエハ載置面へ流通するのを許容する導電性プラグと、
を備えたものである。
【0007】
この半導体製造装置用部材では、導電性プラグを備える。導電性プラグは、ウエハ載置面に載置されるウエハと導通可能なようにプラグ挿入穴に配置され、下面がセラミックプレートの下面の高さ以下に位置し、連通穴に供給されたガスがウエハ載置面へ流通するのを許容する。そのため、導電性基材を利用してウエハ載置面に載置されるウエハの上部にプラズマを発生させる際、導電性プラグはセラミックプレートのプラグ挿入穴内の電位勾配が生じるのを防止する役割を果たす。これにより、導電性プラグの内部でのプラズマの生成が抑制される。その結果、ウエハの裏面が意図せずにエッチングされてしまうのを抑制することができる。
【0008】
[2]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記導電性プラグの材料は、Si又はSiCセラミックであってもよい。ウエハとしてシリコンウエハを用いる場合には、Si製の導電性プラグを用いることが同じ組成のため好ましい。また、SiCセラミック製の導電性プラグであれば、使用期間(寿命)を長くすることができるため好ましい。
【0009】
[3]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]又は[2]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記連通穴の内周面には、前記セラミックプレートの下面と当接するように絶縁管が配置されていてもよい。こうすれば、ウエハと導電性基材との間の沿面距離が長くなる。そのため、ウエハと導電性基材との間で沿面放電(火花放電)が起きるのを抑制することができる。
【0010】
[4]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]~[3]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記ウエハ載置面は、前記ウエハを支持する多数の小突起を有していてもよく、前記導電性プラグは、前記ウエハと前記小突起と前記ウエハ載置面のうち前記小突起の設けられていない基準面とで囲まれた領域に前記ガスを供給してもよい。こうすれば、ウエハとセラミックプレートとの接触面積が小さくなるため、パーティクルが発生しにくい。また、ガスとしてヘリウムガスのような熱伝導ガスを用いれば、ウエハとセラミックプレートとの熱伝導が良好になる。
【0011】
[5]上述した半導体製造装置用部材(前記[4]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記導電性プラグの上面は、前記小突起の上面と同じ高さにあってもよい。こうすれば、導電性プラグはウエハ載置面に載置されるウエハと直接接触する。
【0012】
[6]上述した半導体製造装置用部材(前記[4]に記載の半導体製造装置用部材)において、前記小突起の上面は、前記ウエハと接触する導電性被膜を有していてもよく、前記導電性プラグの上面は、前記導電性被膜よりも低い位置にあってもよく、前記導電性プラグは、前記導電性被膜に接続されていてもよい。こうすれば、導電性プラグはウエハ載置面に載置されるウエハと導電性被膜を介して間接的に接触する。また、導電性プラグの上面を小突起の上面と同じ高さにする場合には、導電性プラグの上面に高い位置精度が要求されるが、ここでは導電性プラグの上面は小突起の上面を覆う導電性被膜よりも低い位置にあるため、そのような高い位置精度は要求されない。
【0013】
[7]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]~[6]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記プラグ挿入穴は、内周面に雌ネジ部を有していてもよく、前記導電性プラグは、前記雌ネジ部に螺合する雄ネジ部を外周面に有していてもよい。こうすれば、導電性プラグをプラグ挿入穴に接着固定する場合に比べて、導電性プラグの交換作業をスムーズに行うことができる。また、導電性プラグの高さを容易に調整することができる。
【0014】
[8]上述した半導体製造装置用部材(前記[1]~[7]のいずれかに記載の半導体製造装置用部材)において、前記導電性プラグは、上から下に向かって拡径する拡径部を有していてもよく、前記プラグ挿入穴は、前記拡径部と当接可能な形状となっていてもよい。こうすれば、導電性プラグの下面から供給されるガスの圧力によって導電性プラグが浮き上がるのを抑制することができる。
【0015】
[9]本発明のもう一つの半導体製造装置用部材は、
上面にウエハ載置面を有するセラミックプレートと、
前記セラミックプレートを上下方向に貫通するセラミックプレート貫通穴と、
前記セラミックプレートの下面に設けられた導電性基材と、
前記導電性基材に設けられ、前記セラミックプレート貫通穴に連通する連通穴と、
前記セラミックプレート貫通穴の内周面を被覆し、前記ウエハ載置面に載置されるウエハと導通可能なように設けられ、下端が前記セラミックプレートの下面の高さ以下に位置し、前記連通穴に供給されたガスが前記ウエハ載置面へ流通するのを許容する導電膜と、
を備えたものとしてもよい。
【0016】
この半導体製造装置用部材では、セラミックプレート貫通穴の内周面を被覆する導電膜を備える。導電膜は、ウエハ載置面に載置されるウエハと導通可能なように設けられ、下端がセラミックプレートの下面の高さ以下に位置し、連通穴に供給されたガスがウエハ載置面へ流通するのを許容する。そのため、導電性基材を利用してウエハ載置面に載置されるウエハの上部にプラズマを発生させる際、導電膜はセラミックプレート貫通穴内の電位勾配が生じるのを防止する役割を果たす。これにより、セラミックプレート貫通穴の内部でのプラズマの生成が抑制される。その結果、ウエハの裏面が意図せずにエッチングされてしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図8】導電性プラグ50の代わりに導電膜123を備えた別例を示す部分拡大図。
【
図10】導電性プラグ50の別例を示す部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は半導体製造装置用部材10の縦断面図、
図2はセラミックプレート20の平面図、
図3は
図1の部分拡大図である。
【0019】
半導体製造装置用部材10は、セラミックプレート20と、冷却プレート30と、金属接合層40と、導電性プラグ50と、絶縁管60とを備えている。
【0020】
セラミックプレート20は、アルミナ焼結体や窒化アルミニウム焼結体などのセラミック製の円板(例えば直径300mm、厚さ5mm)である。セラミックプレート20の上面は、ウエハ載置面21となっている。セラミックプレート20は、電極22を内蔵している。セラミックプレート20のウエハ載置面21には、
図2に示すように、外縁に沿ってシールバンド21aが形成され、全面に複数の円形小突起21bが形成されている。シールバンド21a及び円形小突起21bは同じ高さであり、その高さは例えば数μm~数10μmである。電極22は、静電電極として用いられる平面状のメッシュ電極であり、直流電圧を印加可能となっている。この電極22に直流電圧が印加されるとウエハWは静電吸着力によりウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面及び円形小突起21bの上面)に吸着固定され、直流電圧の印加を解除するとウエハWのウエハ載置面21への吸着固定が解除される。なお、ウエハ載置面21のうちシールバンド21aや円形小突起21bの設けられていない部分を、基準面21cと称する。
【0021】
プラグ挿入穴24は、セラミックプレート20を上下方向に貫通する貫通穴である。
図3に示すように、プラグ挿入穴24の上部は、円筒状の太径部24aになっており、プラグ挿入穴24の下部は、円筒状の細径部24bになっている。つまり、プラグ挿入穴24は、段付き穴になっている。プラグ挿入穴24は、セラミックプレート20の複数箇所(例えば
図2に示すように周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所)に設けられている。プラグ挿入穴24には、後述する導電性プラグ50が配置されている。
【0022】
冷却プレート30は、熱伝導率の良好な円板(セラミックプレート20と同じ直径かそれよりも大きな直径の円板)である。冷却プレート30の内部には、冷媒が循環する冷媒流路32やガスを導電性プラグ50へ供給するガス穴34が形成されている。冷媒流路32は、平面視で冷却プレート30の全面にわたって入口から出口まで一筆書きの要領で形成されている。ガス穴34は、円筒状の穴であり、プラグ挿入穴24に対向する位置に設けられている。冷却プレート30の材料は、例えば、金属材料や金属マトリックス複合材料(MMC)などが挙げられる。金属材料としては、Al、Ti、Mo又はそれらの合金などが挙げられる。MMCとしては、Si,SiC及びTiを含む材料(SiSiCTiともいう)やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。冷却プレート30の材料としては、セラミックプレート20の材料と熱膨張係数の近いものを選択するのが好ましい。冷却プレート30は、RF電極としても用いられる。具体的には、ウエハ載置面21の上方には上部電極(図示せず)が配置され、その上部電極と冷却プレート30とからなる平行平板電極間に高周波電力を印加するとプラズマが発生する。
【0023】
金属接合層40は、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とを接合している。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。金属接合層40は、ガス穴34に対向する位置に金属接合層40を上下方向に貫通する丸穴42を有する。本実施形態の金属接合層40及び冷却プレート30が本発明の導電性基材に相当し、丸穴42及びガス穴34が連通穴に相当する。
【0024】
導電性プラグ50は、ガス穴34に供給されたガスがウエハ載置面21へ流通するのを許容するプラグであり、プラグ挿入穴24に配置されている。導電性プラグ50の上部は、円柱状の太径部50aになっており、導電性プラグ50の下部は、円柱状の細径部50bになっている。つまり、導電性プラグ50は、段付きの円柱部材になっている。導電性プラグ50の段差部50cは、プラグ挿入穴24の段差部24cと接着剤によって接着されている。接着剤は、樹脂(有機)接着剤でもよいし、無機接着剤でもよい。これに代えて又は加えて、導電性プラグ50の太径部50aの外周面とプラグ挿入穴24の太径部24aの内周面とが接着されていてもよいし、導電性プラグ50の細径部50bの外周面とプラグ挿入穴24の細径部24bの内周面とが接着されていてもよい。導電性プラグ50の材料は、電気伝導性の材料であれば特に限定されず、例えば金属でもよいし、導電性セラミックでもよい。ウエハWがシリコンウエハの場合には、Si製の導電性プラグ50が好ましく、使用期間(寿命)を長くしたいならば、SiCセラミック製の導電性プラグ50が好ましい。導電性プラグ50は、貫通穴52を有する。貫通穴52は、導電性プラグ50を上下方向に貫通している。貫通穴52は、本実施形態では、中心軸に沿って設けられている。導電性プラグ50の上面には、
図4に示すように、貫通穴52を中心として放射状に複数(ここでは3本)のスリット溝54が設けられている。導電性プラグ50の上面の高さは、小突起21bの上面の高さと一致している。導電性プラグ50の下面は、絶縁管60の内部(セラミックプレート20の下面の高さ以下)に位置している。
【0025】
絶縁管60は、緻密質セラミック(例えば緻密質アルミナなど)で形成された平面視円形の管である。絶縁管60の外周面は、金属接合層40の丸穴42の内周面及び冷却プレート30のガス穴34の内周面と図示しない接着層を介して接着されている。接着層は、有機接着層(樹脂接着層)でもよいし無機接着層でもよい。なお、接着層は、更に絶縁管60の上面とセラミックプレート20の下面との間に設けられていてもよい。絶縁管60の内部は、導電性プラグ50の貫通穴52に連通している。そのため、絶縁管60の内部にガスが導入されると、そのガスは導電性プラグ50の貫通穴52及びスリット溝54を通過してウエハWの裏面に供給される。
【0026】
次に、こうして構成された半導体製造装置用部材10の使用例について説明する。まず、図示しないチャンバー内に半導体製造装置用部材10を設置した状態で、ウエハWをウエハ載置面21に載置する。そして、チャンバー内を真空ポンプにより減圧して所定の真空度になるように調整し、セラミックプレート20の電極22に直流電圧をかけて静電吸着力を発生させ、ウエハWをウエハ載置面21(具体的にはシールバンド21aの上面や円形小突起21bの上面)に吸着固定する。次に、チャンバー内を所定圧力(例えば数10~数100Pa)の反応ガス雰囲気とし、この状態で、チャンバー内の天井部分に設けた図示しない上部電極と半導体製造装置用部材10の冷却プレート30との間に高周波電圧を印加させてプラズマを発生させる。ウエハWの表面は、発生したプラズマによって処理される。冷却プレート30の冷媒流路32には、冷媒が循環される。ガス穴34には、図示しないガスボンベからバックサイドガスが導入される。バックサイドガスとしては、熱伝導ガス(例えばヘリウム等)を用いる。バックサイドガスは、絶縁管60及び導電性プラグ50を通って、ウエハWの裏面とウエハ載置面21の基準面21cとの間の空間に供給され封入される。このバックサイドガスの存在により、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が効率よく行われる。
【0027】
次に、半導体製造装置用部材10の製造例について
図5及び
図6に基づいて説明する。
図5及び
図6は半導体製造装置用部材10の製造工程図である。まず、セラミックプレート20、冷却プレート30及び金属接合材90を準備する(
図5A)。セラミックプレート20は、電極22及びプラグ挿入穴24を備えている。この段階では、セラミックプレート20の上面はフラットな面であり、シールバンド21aや円形小突起21bは設けられていない。プラグ挿入穴24は、太径部24a、細径部24b及び段差部50cを有している。冷却プレート30は、冷媒流路32を内蔵し、ガス穴34を備えている。金属接合材90は、最終的に丸穴42になる丸穴92を備えている。
【0028】
そして、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面とをTCBによって接合して接合体94を得る(
図5B)。TCBは、例えば以下のように行われる。まず、セラミックプレート20の下面と冷却プレート30の上面との間に金属接合材90を挟み込んで積層体とする。このとき、セラミックプレート20のプラグ挿入穴24と金属接合材90の丸穴92と冷却プレート30のガス穴34とが同軸になるように積層する。そして、金属接合材90の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材90は金属接合層40になり、丸穴92は丸穴42になり、セラミックプレート20と冷却プレート30とを金属接合層40で接合した接合体94が得られる。このときの金属接合材90としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材90は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0029】
続いて、絶縁管60を用意し、金属接合層40の丸穴42の内周面及び冷却プレート30のガス穴34の内周面に接着剤を塗布したあと、そこに絶縁管60を挿入し、絶縁管60を丸穴42及びガス穴34に接着固定する(
図5C)。接着剤は、樹脂(有機)接着剤でもよいし、無機接着剤でもよい。その後、セラミックプレート20の上面(ウエハ載置面21)をブラスト加工することにより、シールバンド21a、円形小突起21b及び基準面21c(
図2参照)を形成する。
【0030】
続いて、導電性プラグ50を用意し、段差部24cに接着剤を塗布したあと、細径部50bをプラグ挿入穴24の上部開口から差し込み、導電性プラグ50の段差部50cとプラグ挿入穴24の段差部24cとを接着固定する(
図6A及び
図6B)。導電性プラグ50の寸法は、導電性プラグ50の段差部50cとプラグ挿入穴24の段差部24cとが一致したときに、導電性プラグ50の上面の高さが円形小突起21bの上面の高さと一致する(
図3参照)と共に導電性プラグ50の下面が絶縁管60の内部(セラミックプレート20の下面の高さ以下)に位置するように設計されている。接着剤は、樹脂(有機)接着剤でもよいし、無機接着剤でもよい。以上のようにして、半導体製造装置用部材10が得られる(
図6B)。
【0031】
以上詳述した半導体製造装置用部材10は、導電性プラグ50を備える。導電性プラグ50は、ウエハ載置面21に載置されるウエハWと導通可能なようにプラグ挿入穴24に配置され、下面がセラミックプレート20の下面の高さ以下に位置し、ガス穴34に供給されたガスがウエハ載置面21へ流通するのを許容する。そのため、冷却プレート30を利用してウエハ載置面21に載置されるウエハWの上部にプラズマを発生させる際、導電性プラグ50はセラミックプレート20のプラグ挿入穴24内の電位勾配が生じるのを防止する役割を果たす。これにより、導電性プラグ50の内部(つまり貫通穴52やスリット溝54)でのプラズマの生成が抑制される。その結果、ウエハWの裏面が意図せずにエッチングされてしまうのを抑制することができる。なお、導電性プラグ50の下面は、導電性部材の上面(上述した実施形態では金属接合層40の上面)の高さ以下に位置することが好ましい。
【0032】
また、半導体製造装置用部材10では、導電性プラグ50の材料は、Si又はSiCセラミックであってもよい。ウエハWとしてシリコンウエハを用いる場合には、Si製の導電性プラグ50を用いることが同じ組成のため好ましい。また、SiCセラミック製の導電性プラグ50であれば、使用期間(寿命)を長くすることができるため好ましい。
【0033】
更に、半導体製造装置用部材10では、丸穴42及びガス穴34の内周面には、セラミックプレート20の下面と当接するように絶縁管60が配置されている。そのため、ウエハWと冷却プレート30との間の沿面距離が長くなる。したがって、ウエハWと冷却プレート30との間で沿面放電(火花放電)が起きるのを抑制することができる。
【0034】
更にまた、半導体製造装置用部材10では、ウエハ載置面21は、ウエハWを支持する多数の小突起21bを有しており、導電性プラグ50は、ウエハWと小突起21bとウエハ載置面21のうち小突起21bの設けられていない基準面21cとで囲まれた領域にガスを供給する。これにより、ウエハWとセラミックプレート20との接触面積が小さくなるため、パーティクルが発生しにくい。また、ガスとしてヘリウムガスのような熱伝導ガスを用いれば、ウエハWとセラミックプレート20との熱伝導が良好になる。
【0035】
そして、小突起21bを備えた半導体製造装置用部材10では、導電性プラグ50の上面は、小突起21bの上面と同じ高さにある。そのため、導電性プラグ50はウエハ載置面21に載置されるウエハWと直接接触する。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0037】
上述した実施形態では、導電性プラグ50の上面の高さは、小突起21bの上面の高さと一致するものとしたが、これに限定されない。例えば、
図7に示すように、ウエハ載置面21の全面に導電膜23を形成し、導電性プラグ50の上面を、小突起21bの上面に形成された導電膜23よりも低くなるようにしてもよい。導電性プラグ50は、導電膜23に接続されている。導電膜23は、導電性材料で形成されていればよく、例えばTiやTiNで形成されていてもよい。こうすれば、導電性プラグ50はウエハ載置面21に載置されるウエハWと導電膜23を介して間接的に接触する。また、導電性プラグ50の上面を小突起21bの上面と同じ高さにする場合には、導電性プラグ50の上面に高い位置精度が要求されるが、ここでは導電性プラグ50の上面は小突起21bの上面を覆う導電膜23よりも低い位置にあるため、そのような高い位置精度は要求されない。なお、導電膜23のうち小突起21bの上面を覆う部分が本発明の導電性被膜に相当する。また、上述した実施形態では、導電性プラグ50の上面にスリット溝54を形成したが、
図7では、スリット溝54を省略して貫通穴52のみとすることができる。
【0038】
図7において、導電性プラグ50を用いる代わりに、
図8に示す導電膜123を用いてもよい。
図8では、上述した実施形態と同じ構成については同じ符号を付した。
図8では、セラミックプレート20を上下方向に貫通する穴をセラミックプレート貫通穴124と称する。導電膜123は、ウエハ載置面21の全面及びセラミックプレート貫通穴124の内周面を被覆する。導電膜124は、小突起21bの上面も被覆しているため、ウエハ載置面21の小突起21bに載置されるウエハWと導通する。導電膜123の下端は、セラミックプレート20の下面の高さ以下に位置している。なお、導電膜123の下端は、導電性基材の上面(金属接合層40の上面)の高さ以下に位置していることが好ましい。導電膜123は、筒状に形成されているため、連通穴34に供給されたガスがウエハ載置面21へ流通するのを許容する。
図8では、導電性基材(金属接合層40及び冷却プレート30)を利用してウエハ載置面21に載置されるウエハWの上部にプラズマを発生させる際、導電膜123はセラミックプレート貫通穴124内の電位勾配が生じるのを防止する役割を果たす。これにより、セラミックプレート貫通穴124の内部でのプラズマの生成が抑制される。その結果、ウエハWの裏面が意図せずにエッチングされてしまうのを抑制することができる。導電膜123は、例えば溶射やメッキなどで作製することができる。なお、
図8ではセラミックプレート貫通穴124を段付き穴としたが、特に段付き穴に限定されるものではなく、例えばストレート形状の穴としてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、導電性プラグ50は、プラグ挿入穴24に接着固定されるものとしたが、これに限定されない。例えば、
図9に示すように、導電性プラグ50は、プラグ挿入穴24に螺合していてもよい。プラグ挿入穴24は、
図9に示すように、内周面に雌ネジ部を有する。導電性プラグ50は、
図9に示すように、外周面に雄ネジ部を有する。導電性プラグ50の外周面に形成された雄ネジ部は、プラグ挿入穴24の内周面に形成された雌ネジ部に螺合する。この場合、導電性プラグ50の上面の高さが、小突起21bの上面の高さと一致するように、プラグ挿入穴24の雌ネジ部に導電性プラグ50の雄ネジ部を螺合させればよい。こうすれば、導電性プラグ50をプラグ挿入穴24に接着固定する場合に比べて、導電性プラグの交換作業をスムーズに行うことができる。また、半導体製造装置用部材10を繰り返し使用すると、導電性プラグ50が消耗して、導電性プラグ50の上面の高さが小突起21bの上面よりも低くなる場合がある。このような場合、導電性プラグ50の雄ネジ部をプラグ挿入穴24の雌ネジ部に対して回転させることで、導電性プラグ50の上面の高さが小突起21bの上面の高さと一致するように容易に調整することができる。
【0040】
上述した実施形態では、導電性プラグ50は、貫通穴52を有するものとしたが、これに限定されない。例えば、
図10及び
図11に示すように、導電性プラグ50は、貫通穴52に代えて、ガス通路53を有していてもよい。ガス通路53は、導電性プラグ50の外周面に沿って1つ以上(ここでは4つ)形成されている。ガス通路53は、細径部50bの外周面の下端から段差部50cを通り、太径部50aの外周面の上端に至るように形成された溝である。導電性プラグ50の上面には、
図11に示すようにスリット溝が形成されていなくてもよいし、
図12に示すようにスリット溝55が形成されていてもよい。また、導電性プラグ50は、ガス通路53に加えて、上述した実施形態の貫通穴52やスリット溝54を有していてもよい。
【0041】
上述した実施形態の導電性プラグ50の代わりに、
図13に示す導電性プラグ150~650を用いてもよい。なお、
図13では、
図3と同じ構成要素については同じ符号を付し、説明を省略した。これらの導電性プラグ150~650を用いる場合には、セラミックプレート20に設けるプラグ挿入穴24もそれぞれに合った形状に変更する。
図13Aの導電性プラグ150は、上底が下底よりも大きい逆円錐台形状である。
図13Bの導電性プラグ250は、下底が上底よりも大きい円錐台形状である。
図13Cの導電性プラグ350は、逆円錐台の下面に円柱を連結した形状である。
図13Dの導電性プラグ450は、円錐台の上面に円柱を連結した形状である。
図13Eの導電性プラグ550は、大径の円柱の上面に小径の円柱を連結した形状である。
図13Fの導電性プラグ650は、円柱形状である。このうち、導電性プラグ250,450,550は、上から下に向かって拡径する拡径部Eを有する。そのため、導電性プラグ250,450,550の下から上へ流通するガスの圧力が導電性プラグ250,450,550に加わったとしても、拡径部Eがプラグ挿入穴24の内周面に突き当たるため、導電性プラグ250,450,550が浮き上がるのを抑制することができる。なお、これらの導電性プラグ150~550の外周面に雄ネジ部を設け、プラグ挿入穴24の雌ネジ部と螺合するようにしてもよい。また、導電性プラグ150~650は、貫通穴52に代えて又は加えてガス通路53(
図10及び
図11)を有していてもよい。その場合、導電性プラグ150~650は、上面にスリット溝55(
図12)が形成されていてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、絶縁管60を用いたが、絶縁管60の代わりに
図14に示すガス通路162を内蔵する絶縁プラグ160を用いてもよい。絶縁プラグ160は、緻密質セラミックからなる円柱体の内部に螺旋状のガス通路162を設けたものである。ガス通路162の上端は円柱体の上面に開口し、ガス通路162の下端は円柱体の下面に開口している。絶縁プラグ160を用いた場合には、絶縁管60に比べてウエハWと冷却プレート30との沿面距離がより長くなるため、導電性プラグ50内での火花放電をより抑制することができる。
【0043】
上述した実施形態では、絶縁管60を設けたが、絶縁管60を省略してもよい。また、冷却プレート30にガス穴34を設ける代わりに、ガスチャネル構造を設けてもよい。ガスチャネル構造として、冷却プレート30の内部に設けられ平面視で冷却プレート30と同心円のリング部と、冷却プレート30の裏面からリング部へガスを導入する導入部と、リング部から各導電性プラグ50へガスを分配する分配部(上述したガス穴34に相当)とを備える構造を採用してもよい。導入部の数は、分配部の数よりも少なく、例えば1本としてもよい。
【0044】
上述した実施形態において、セラミックプレート20に内蔵される電極22として、静電電極を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、電極22に代えて又は加えて、セラミックプレート20にヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよいし、RF電極を内蔵してもよい。
【0045】
上述した実施形態では、セラミックプレート20と冷却プレート30とを金属接合層40で接合したが、金属接合層40の代わりに樹脂接着層を用いてもよい。その場合、冷却プレート30が本発明の導電性基材に相当する。
【0046】
本出願は、2022年2月9日に出願された日本国特許出願第2022-18429号を優先権主張の基礎としており、引用によりその内容の全てが本明細書に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えばウエハをプラズマ処理する装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 半導体製造装置用部材、20 セラミックプレート、21 ウエハ載置面、21a シールバンド、21b 小突起、21c 基準面、22 電極、23 導電性被膜、24 プラグ挿入穴、24a 太径部、24b 細径部、24c 段差部、30 冷却プレート、32 冷媒流路、34 ガス穴、40 金属接合層、42 丸穴、50,150,250,350,450,550,650 導電性プラグ、50a 太径部、50b 細径部、50c 段差部、52 貫通穴、53 ガス通路、54,55 スリット溝、60 絶縁管、90 金属接合材、92 丸穴、94 接合体、160 絶縁プラグ、162 ガス通路、E 拡径部、W ウエハ。