(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】止水チューブを用いた管の仮つなぎ方法、管の入替工法、止水チューブ
(51)【国際特許分類】
F16L 55/134 20060101AFI20240508BHJP
F16L 55/18 20060101ALI20240508BHJP
F16L 1/028 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F16L55/134
F16L55/18 B
F16L1/028 Z
(21)【出願番号】P 2022059627
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】508135862
【氏名又は名称】株式会社二友組
(73)【特許権者】
【識別番号】591141027
【氏名又は名称】内外ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】水谷 公隆
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 隆藏
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194020(JP,A)
【文献】特開2008-106443(JP,A)
【文献】特開2020-133649(JP,A)
【文献】特表平07-504016(JP,A)
【文献】米国特許第10392896(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第109237195(CN,A)
【文献】国際公開第2020/094975(WO,A1)
【文献】中国実用新案第208703276(CN,U)
【文献】中国実用新案第214467022(CN,U)
【文献】特開平06-127225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/00
F16L 1/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管状の両端部が閉じたチューブ体と、該チューブ体に取り付けられ内部に気体を注入可能なバルブとを備えた止水チューブを用いて、離間した管どうしの間を仮つなぎする仮つなぎ方法であり、
管と管の間に、端部を各管に差し入れて仮つなぎ管をわたす工程と、
前記仮つなぎ管の一方の端部付近に第1止水チューブを巻き付ける工程と、
前記仮つなぎ管と一方の管との隙間が埋まるまで、第1止水チューブに気体を注入する工程と、
前記仮つなぎ管の他方の端部付近に第2止水チューブを巻き付ける工程と、
前記仮つなぎ管と他方の管との隙間が埋まるまで、第2止水チューブに気体を注入する工程と、
を備えることを特徴とする、管の仮つなぎ方法。
【請求項2】
前記第1止水チューブを前記一方の管に巻き付ける工程において、
前記第1止水チューブをオーバーラップさせて巻き付ける、
請求項1記載の管の仮つなぎ方法。
【請求項3】
前記第2止水チューブを前記他方の管に巻き付ける工程において、
前記第2止水チューブをオーバーラップさせて巻き付ける、
請求項1又は2記載の管の仮つなぎ方法。
【請求項4】
前記第1止水チューブまたは前記第2止水チューブをオーバーラップさせた部分において、面ファスナーを巻き付けてオーバーラップした部分が保持されている、
請求項1乃至3のいずれか1項記載の管の仮つなぎ方法。
【請求項5】
前記第1止水チューブまたは前記第2止水チューブをオーバーラップさせた部分において、密着テープによって接着して保持されている、
請求項1乃至3のいずれか1項記載の管の仮つなぎ方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の仮つなぎ方法を備える管の入替工法であり、
道路を開削する工程と、
既設管の一部を撤去して、撤去された空間の一部に新設管を設置する工程と、
前記新設管を設置する工程後、残存する前記既設管と前記新設管の間において、前記仮つなぎ方法を行う工程と、
道路を埋め戻す工程と、を備える、
管の入替工法。
【請求項7】
再度、道路を開削する工程と、
前記第1止水チューブ及び前記第2止水チューブから気体を抜く工程と、
前記仮つなぎ管を撤去する工程と、
前記既設管が撤去された空間の一部に、または既設管の一部をさらに撤去した空間の一部に、さらに新設管を設置して該新設管を延伸する工程と、
前記新設管を延伸する工程後、残存する前記既設管と前記新設管の間において、前記仮つなぎ方法を行う工程と、
再度、道路を埋め戻す工程と、を備える、
請求項6記載の管の入替工法。
【請求項8】
離間した管どうしの間を仮つなぎする仮つなぎ管の外周にチューブを巻き付けて、該チューブ内に気体を注入して、該管と該仮繋ぎ管との隙間を埋める止水チューブであり、
直管状の両端部が閉じたチューブ体と、
前記チューブ体に取り付けられ内部に気体を注入可能なバルブと、を備えたことを特徴とする、
止水チューブ。
【請求項9】
前記チューブ体の長さは、前記仮つなぎ管の円周の長さより長く、
前記仮つなぎ管の外周に巻き付けた時に、前記チューブ体と前記仮つなぎ管の外周長との差分を、オーバーラップさせて巻き付け可能である、
請求項8記載の止水チューブ。
【請求項10】
前記チューブ体を外側から覆う保護カバーを備える、
請求項9記載の止水チューブ。
【請求項11】
前記チューブ体は、前記保護カバーよりも伸縮性の高い材質である、
請求項10記載の止水チューブ。
【請求項12】
前記保護カバーは、布製または合成樹脂製である、
請求項10又は11記載の止水チューブ。
【請求項13】
前記チューブ体は、ゴム製である、
請求項10乃至12のいずれか1項記載の止水チューブ。
【請求項14】
オーバーラップ量が、全周の1/60~1である、
請求項9乃至13のいずれか1項記載の止水チューブ。
【請求項15】
オーバーラップ量が、全周の1/20~1/4である、
請求項9乃至13のいずれか1項記載の止水チューブ。
【請求項16】
オーバーラップ量が、10.0~60.0cmである、
請求項9乃至13のいずれか1項記載の止水チューブ。
【請求項17】
一方の管の内径D1、他方の管の内径D2、仮つなぎ管の外径D3、D1>D2>D3とした時の、止水チューブの全長L1が、下記式1を満たす、
請求項9乃至16のいずれか1項記載の止水チューブ。
π×D1+10cm < L1 <π×D1+60cm (式1)
【請求項18】
一方の管の内径D1、他方の管の内径D2、仮つなぎ管の外径D3、D1>D2>D3とした時の、止水チューブの厚みt1が、下記式2を満たす、
請求項9乃至16のいずれか1項記載の止水チューブ。
3cm< t1 <(D2-D3)/2 (式2)
【請求項19】
気体を封入した状態における幅が、5cm以上である、
請求項9乃至18のいずれか1項記載の止水チューブ。
【請求項20】
前記チューブ体は、閉塞部材を前記チューブ体の本体部両端に接着することで両端部が閉じられた、
請求項9乃至19のいずれか1項記載の止水チューブ。
【請求項21】
前記チューブ体は、前記チューブ体の両端の内側を接着することで両端部が閉じられた、
請求項9乃至19のいずれか1項記載の止水チューブ。
【請求項22】
前記接着に、加硫接着又は接着剤による接着を用いた、
請求項20又は請求項21記載の止水チューブ。
【請求項23】
前記チューブ体は、挟込具で前記チューブ体の両端を挟み込むことで両端部が閉じられた、
請求項9乃至19のいずれか1項記載の止水チューブ。
【請求項24】
前記バルブは、ナットと、一対のワッシャと、を備える、
請求項9乃至23のいずれか1項記載の止水チューブ。
【請求項25】
前記バルブは、さらに、一対のゴム製ワッシャを備える、
請求項24記載の止水チューブ。
【請求項26】
前記バルブは、ゴム製のバルブベースを備える、
請求項9乃至25のいずれか1項記載の止水チューブ。
【請求項27】
前記バルブは、オーバーラップしない位置に配されている、
請求項9乃至26のいずれか1項記載の止水チューブ。
【請求項28】
前記保護カバーは、
前記チューブ体のオーバーラップ部分に対応する位置のいずれか一方の外周面に、防水の面ファスナーのオス側又はメス側のいずれか一方が設けられていて、
前記チューブ体のオーバーラップ部分に対応する位置のいずれか他方の外周面に、防水の面ファスナーのオス側又はメス側のいずれか他方が設けられている、
請求項10、又は請求項10を引用する請求項11乃至27のいずれか1項記載の止水チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水チューブを用いた管の仮つなぎ方法、管の入替工法、止水チューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部におけるインフラ整備が進むと共に、既設の排水管等の構造物の老朽化が顕在化してきた。特に古くから都市機能を備えた市街地では、多くの排水管等がこれらの老朽化に伴い、造り替えを必要とする時期に来ている。これらの都市構造物のうち、道路や下水道管などは生活に密着しており、特に排水管等が破損すると生活に直結しているだけに大きな問題となる。このために事前に排水管等の破損や劣化の状況を調査し、これらの老朽化した排水管の入れ替えを行って維持管理している。
【0003】
排水管の管路の入替工事においては、道路を開削して、老朽化した既設の排水管を撤去し、新しい排水管を布設する。入替工事の作業時間外においては交通を阻害しないように通行止めを解除するため、掘削した箇所を埋め戻し、仮舗装後に道路を開放する。このとき、布設配管内の流水を停止させないようにするため、老朽化した既設管と新設管を仮つなぎ管で接続し、仮つなぎ管と既設管及び新設管との間の隙間に土のうを設置する方法がある。
【0004】
しかし、前者の方法では、土のうの隙間から下水が漏れた時に埋め戻した土が流れ込み、道路陥没が生じることがある。また、土のうを製作し設置する手間と時間がかかる。土のうの撤去時に土のうが破れた場合に撤去作業が困難で産業廃棄物となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、既設管と新設管などの管どうしの間の流水を、既設管及び新設管と仮つなぎ管の隙間に土のうを用いることなく良好に行うことができ、構造が簡単で、手間と時間を要さずかつ低コストに仮つなぎ管の離脱及び外管内への土砂及び下水の流入を防ぐ効果を発揮することを可能とする止水チューブ及び止水チューブを用いた仮つなぎ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様にかかる管の仮つなぎ方法は、直管状の両端部が閉じたチューブ体と、該チューブ体に取り付けられ内部に気体を注入可能なバルブとを備えた止水チューブを用いて、離間した管どうしの間を仮つなぎする仮つなぎ方法であり、管と管の間に、端部を各管に差し入れて仮つなぎ管をわたす工程と、前記仮つなぎ管の一方の端部付近に第1止水チューブを巻き付ける工程と、前記仮つなぎ管と一方の管との隙間が埋まるまで、第1止水チューブに気体を注入する工程と、前記仮つなぎ管の他方の端部付近に第2止水チューブを巻き付ける工程と、前記仮つなぎ管と他方の管との隙間が埋まるまで、第2止水チューブに気体を注入する工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、(1)離間した既設管と新設管などの管どうしを接続する仮つなぎ管を仮置きし、(2)止水チューブを仮つなぎ管の外周に巻き付けて、(3)既設管及び新設管に仮つなぎ管を挿入し、(4)止水チューブ内に気体を注入して膨らませるという4つのステップだけで、仮つなぎ管と既設管及び新設管との隙間を埋めて空気圧により固定して土砂及び水の流入を防ぐことができる。したがって、小規模かつ低コストで土砂及び水の流入を防ぐことができる。
【0009】
また、この止水チューブによる仮つなぎ方法は、前記第1止水チューブを前記一方の管に巻き付ける工程において、前記第1止水チューブをオーバーラップさせて巻き付けることを特徴とする。この構成によれば、止水チューブをオーバーラップさせて巻き付けているので、止水チューブの管からの剥離を防止することができる。また、前記第2止水チューブについても、同様にオーバーラップさせて巻き付けることで、止水チューブの管からの剥離を防止することができる。
【0010】
また、この止水チューブによる仮つなぎ方法は、前記第1止水チューブまたは前記第2止水チューブをオーバーラップさせた部分において、面ファスナーを巻き付けてオーバーラップした部分が保持されている。この構成によれば、止水チューブのオーバーラップ部分に、面ファスナーを巻きつけて固定するので、止水チューブを仮つなぎ管に確実に固定することができる。また、面ファスナーであれば、工事終了後に面ファスナーを取り外して、再利用することもできる。
【0011】
また、この止水チューブによる仮つなぎ方法は、前記第1止水チューブまたは前記第2止水チューブをオーバーラップさせた部分において、密着テープによって接着して保持されている構成としてもよい。これにより、オーバーラップ部を確実に固定することができる。
【0012】
本発明の一の態様にかかる管の入替工法は、前記の仮つなぎ方法を備える管の入替工法であり、道路を開削する工程と、既設管の一部を撤去して、撤去された空間の一部に新設管を設置する工程と、前記新設管を設置する工程後、残存する前記既設管と前記新設管の間において、前記仮つなぎ方法を行う工程と、道路を埋め戻す工程と、を備える。
【0013】
この構成によれば、従来は管の入替時に、既設管と新設管の仮つなぎ時に、土のうを用いて土砂や水をせき止めていたところ、本発明により手間と時間とコストを大幅に削減できる。また、既設管と新設管が仮つなぎ管でつながっているので、道路を埋め戻しても管内を流体が通過でき、また別途バイパス管を設置しなくてよい。
【0014】
また、この管の入替工法は、再度、道路を開削する工程と、前記第1止水チューブ及び前記第2止水チューブから気体を抜く工程と、前記仮つなぎ管を撤去する工程と、前記既設管が撤去された空間の一部に、または既設管の一部をさらに撤去した空間の一部に、さらに新設管を設置して該新設管を延伸する工程と、前記新設管を延伸する工程後、残存する前記既設管と前記新設管の間において、前記仮つなぎ方法を行う工程と、再度、道路を埋め戻す工程と、を備える。
【0015】
この構成によれば、従来は、土のうを設置、土のうを撤去、土のうを再度設置と、非常に手間と時間がかかっていたところ、手間と時間とコストを大幅に削減できる。また、この工法であれば、止水チューブを何度も転用できるし、工事が完全に終了した後でも、別の工事にこの止水チューブを利用することができる。
【0016】
本発明の一の態様にかかる止水チューブは、離間した管どうしの間を仮つなぎする仮つなぎ管の外周にチューブを巻き付けて、該チューブ内に気体を注入して、該管と該仮繋ぎ管との隙間を埋める止水チューブであり、直管状の両端部が閉じたチューブ体と、前記チューブ体に取り付けられ内部に気体を注入可能なバルブと、を備えたことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、この止水チューブは、チューブ体とバルブを備え、気体をバルブから注入したときに、チューブ体を膨らませることができ、仮つなぎ管や離間した管の形状に合わせて変形することができるので、仮つなぎ管と管との隙間を確実に埋めることができる。
【0018】
また、仮つなぎ管と管との隙間を埋める方法が、仮つなぎ管の外周に巻き付けた止水チューブを気体で膨らませるだけでよく、土のうやウエスを隙間に詰める作業が不要となり、隙間を埋める施工が容易であり、経済的である。また、チューブ体の内圧を高めて摩擦による固定力を増大させることができ、固定の安定性も確保しやすい。
【0019】
また、この止水チューブは、前記チューブ体の長さは、前記仮つなぎ管の円周の長さより長く、前記仮つなぎ管の外周に巻き付けた時に、前記チューブ体と前記仮つなぎ管の外周長との差分を、オーバーラップさせて巻き付け可能であることを特徴とする。この構成によれば、チューブ体の長さが、仮つなぎ管の円周より長く、止水チューブを仮つなぎ管の外周にオーバーラップさせて巻き付け可能なので、止水チューブの仮つなぎ管からの剥離を防止することができる。
【0020】
また、この止水チューブは、前記チューブ体を外側から覆う保護カバーを備えることを特徴とする。この構成によれば、チューブ体を外側から保護カバーで覆っているので、チューブ体の表面を保護することができる。
【0021】
また、この止水チューブは、前記チューブ体が、前記保護カバーよりも伸縮性の高い材質である。この構成によれば、保護カバーは強度が高く破損しづらく、気体の出し入れを行うチューブ体は柔軟であるため、様々な形状の隙間に沿うことができ、止水性能が向上する。
【0022】
また、この止水チューブは、前記保護カバーが、布製または合成樹脂製であることを特徴とする。この構成によれば、保護カバーが布製であれば、管表面形状への追従性、及び擦れや摩耗への耐性が優れる。保護カバーが合成樹脂製であれば、成形、加工が他の材料に比べて容易で、軽く、柔軟性や耐水性に優れる。
【0023】
また、この止水チューブは、前記オーバーラップ量が、全周の1/60~1であることを特徴とする。オーバーラップ量が、全周の1/60未満であると止水チューブの仮つなぎ管からの剥離が起こり易く、1より大きいとオーバーラップ部分が3重になり、安定性にかける。
【0024】
好ましくは、前記オーバーラップ量が全周の1/30~1/2であり、より好ましくは、前記オーバーラップ量が全周の1/20~1/4である。この構成によれば、止水するための十分なオーバーラップ量が得られながら、取り回しがしやすく安定性がよい。
【0025】
また、この止水チューブは、オーバーラップ量が、10.0~60.0cmであることを特徴とする。オーバーラップ量が、10.0cm未満であると止水チューブの仮つなぎ管からの剥離が起こり易く、60.0cmより大きいと止水チューブの巻きつけの安定性にかける。
【0026】
また、この止水チューブは、一方の管の内径D1、他方の管の内径D2、仮つなぎ管の外径D3、D1>D2>D3とした時の、止水チューブの全長L1が、下記式1を満たすことが望ましい(
図16参照)。この構成によれば、剥離やもれが起こりづらく、巻きつけの安定性や取り回しが好適である。
π×D1+10cm < L1 <π×D1+60cm (式1)
【0027】
また、この止水チューブは、一方の管の内径D1、他方の管の内径D2、仮つなぎ管の外径D3、D1>D2>D3とした時の、止水チューブの厚みt1が、下記式2を満たすことが望ましい(
図16参照)。この構成によれば、十分な強度を備え、隙間に確実に挿入することができる。
3cm< t1 <(D2-D3)/2 (式2)
【0028】
また、この止水チューブは、気体を封入した状態における幅が5cm以上である。この構成によれば、気体を封入した状態で5cm以上の奥行きとすることで、土砂や水などを十分に防ぐことができる。
【0029】
また、この止水チューブは、前記チューブ体が、ゴム製であることを特徴とする。これにより、汎用な部材を用いて、高弾性の止水チューブを提供することができるため、容易に製造することができる。また、防水・防塵の観点で高いシール性を確保することができる。また、チューブ体の両端部を閉じる手段として加硫接着を採用することが可能となり、強度が十分で、かつ、生産性にも優れるものとなる合理的な止水チューブを提供することができる。また、バルブを取り付けるための穴あけ加工がしやすい。
【0030】
また、この止水チューブは、前記チューブ体が、閉塞部材を前記チューブ体の本体部両端に接着することで両端部が閉じられたことを特徴とする。この構成によれば、チューブ体の本体部両端に閉塞部材を接着し両端部が閉じられているので、チューブ体の端部のエアシール性、及び管表面形状への追従性に優れる。
【0031】
また、この止水チューブは、前記チューブ体が、前記チューブ体の両端の内側を接着することで両端部が閉じられたことを特徴とする。これにより、チューブ体の両端を閉じるための部品が不要となる。
【0032】
また、この止水チューブは、前記接着に、加硫接着又は接着剤による接着を用いたことを特徴とする。この構成によれば、加硫接着による接着では、チューブ体がゴム製である場合に、高強度の接着が可能となる。接着剤による接着では、別途の粘着テープなど別の部材を必要とせず、接着剤を塗布するだけでよいから、特殊な加工も必要とせず、低コストでチューブ体の両端部を閉じることができる。
【0033】
好ましくは、この止水チューブは、前記チューブ体が、挟込具で前記チューブ体の両端を挟み込むことで両端部が閉じられたものである。
【0034】
また、この止水チューブは、前記バルブが、ナットと、一対のワッシャとを備えることを特徴とする。バルブは、ナットと一対にワッシャによって、チューブ体に固定されており、高い機械的負荷に耐えることができる。
【0035】
また、この止水チューブは、前記バルブは、さらに、一対のゴム製ワッシャを備えることを特徴とする。これにより、エアシール性を向上させることができる。
【0036】
また、この止水チューブは、前記バルブがゴム製のバルブベースを備えることを特徴とする。ゴム製のチューブ体に直接取り付ける場合に、加硫接着によりバルブをチューブ体に強固に取り付けることができる。
【0037】
また、この止水チューブは、前記バルブがオーバーラップしない位置に配されている。この構成によれば、止水チューブがオーバーラップする際に、バルブが邪魔になりづらくなるため、止水性がバルブによって妨げられにくく、止水性が向上する。
【0038】
また、この止水チューブは、前記保護カバーが、前記チューブ体のオーバーラップ部分に対応する位置のいずれか一方の外周面に、防水の面ファスナーのオス側又はメス側のいずれか一方が設けられていて、前記チューブ体のオーバーラップ部分に対応する位置のいずれか他方の外周面に、防水の面ファスナーのオス側又はメス側のいずれか他方が設けられていることを特徴とする。これにより、オーバーラップ部を確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の止水チューブ、管の仮つなぎ方法、入替工法によれば、構造が簡単で手間と時間を要さずかつ低コストに仮つなぎ管の離脱及び外管内への土砂及び水の流入を防止する効果を発揮することを可能とする止水チューブ、管の仮つなぎ方法、入替工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の実施形態にかかる止水チューブを示すもので、(a)は概略斜視図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図2】
図1に示す止水チューブを巻き付けた仮つなぎ管を既設管及び新設管に挿入した状態を示す説明図である。
【
図3】
図1に示す止水チューブを巻き付けた仮つなぎ管を既設管及び新設管に挿入し、止水チューブを膨らませた状態を示す説明図である。
【
図4】
図1に示す止水チューブを巻き付けた仮つなぎ管を新設管に挿入した状態を示す部分拡大断面図である。
【
図5】
図1に示す止水チューブを巻き付けた仮つなぎ管を新設管に挿入し、止水チューブを膨らませた状態を示す部分拡大断面図である。
【
図8】チューブ体の両端を閉じる方法を示す斜視図である。
【
図9】チューブ体の両端を閉じる方法の変形例を示す斜視図である。
【
図10】チューブ体の両端を閉じる方法の変形例を示す斜視図である。
【
図11】本実施形態にかかるバルブを取り付けた状態を示す部分拡大断面図である。
【
図12】
図11に示すバルブの変形例を取り付けた状態を示す部分拡大断面図である。
【
図13】
図11に示すバルブの変形例を取り付けた状態を示す部分拡大断面図である。
【
図14】
図1に示す止水チューブの変形例を示すもので(a)は概略斜視図、(b)は(a)のD-D断面図である。
【
図15】
図1に示す止水チューブを巻き付けた仮つなぎ管を既設管及び新設管に挿入した状態の変形例を示す説明図である。
【
図16】(a)は本発明の実施形態にかかる止水チューブを示す概略斜視図、(b)は止水チューブを巻き付けた仮つなぎ管を既設管及び新設管に挿入した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の一実施形態にかかる止水チューブについて詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は、適宜組み合わせることも可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0042】
<1.止水チューブの構造>
図1(a)(b)に示すように、止水チューブ1は、チューブ体2と、バルブ3と、チューブ体を外側から覆う保護カバー4と、を備える。
【0043】
チューブ体2は、両端が閉じた直管状の形状を有し、ゴム製である。また、チューブ体2は、空気注入前の状態で扁平状態であり、空気を注入することで断面形状が中空円筒形で、断面形状の外形が丸形となるようになっている。
【0044】
チューブ体2の長さに特に制限はないが、仮つなぎ管40の円周の長さより長く、仮つなぎ管40の外周に巻き付けた時に、チューブ体2と仮つなぎ管40外周長との差分を、オーバーラップさせて巻き付けることが可能となっている。
【0045】
具体的にはチューブ体2の長さは850mm以上、6000mm以下である。また、オーバーラップ量は、止水チューブの巻きつけの安定性の観点から、10.0~60.0cmであり、好ましくは20.0~50.0cmである。また、オーバーラップ量が、止水チューブの巻きつけの安定性の観点から、全周の1/60~1であり、好ましくは1/30~1/2であり、より好ましくは、1/20~1/4である。また、チューブ体2の肉厚は、好ましくは1.0mm以上で5.0mm以下である。より好ましくは、強度の観点から2.0mm以上で、柔軟性及びコストの観点から3.0mm以下である。
【0046】
チューブ体2は、ゴム製である。ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中で、強度に優れる天然ゴム、またはエアシール性に優れるブチルゴム、または耐油性に優れるニトリルゴムやクロロプレンゴムが好ましい。また、ゴムにナイロン繊維またはポリエステル繊維、ケブラー繊維などで補強してもよく、チューブ体2を高強度なものとすることができる。なお、ゴムの代わりにこすれ摩擦や引っ張りに強い軟質ポリ塩化ビニルを使用してもよい。
【0047】
チューブ体2は、チューブ体2の両端部が閉じた形状を有する。チューブ体2の本体部20両端を閉じる方法としては、
図8に示すように、チューブ体2の本体部20の端部に閉塞部材5を加硫接着させることが好ましい。この場合、端部のエアシール性、及び管表面形状への追従性が優れる。また、閉塞部材5はチューブ体2の本体部20と同じゴム製であるが、他の材質で構成されてもよく、特に限定されない。
【0048】
但し、本発明はこの方法に限定されることはなく、チューブ体2の端部を閉じることさえできれば如何なる方法も採用することができる。例えば、
図9に示すように、チューブ体2の本体部20両端の内側の接着範囲6を加硫接着もしくは接着剤で接着する方法や、
図10に示すように、二枚の金属板でチューブ体2の本体部20の端部を挟み込みネジで締め付けたり、クリップでチューブ体2の本体部20の両端を挟み込むなど、挟込具7でチューブ体2の両端を挟み込む方法が挙げられる。
【0049】
保護カバー4は、チューブ体2を外側から覆うよう取り付けられる。保護カバー4によってチューブ体2の表面を保護することができる。このため、チューブ体2の寿命を長くすることができる。
【0050】
保護カバー4の素材は、一例として布製である。布製であるので、管表面形状への追従性、擦れ・摩擦への耐性に優れる。布としては、綿、ナイロン、ポリエステル、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、アラミドや、それらの混紡あるいはポリウレタンとの混紡等が挙げられるが、特に限定されない。伸縮性を有する素材であることが好ましい。織り方としては、例えば、平織、綾織(ツイル)、朱子織、多重織、ドビー織、ジャガード織、模紗織等、バスケット織等が挙げられるが、特に限定されない。
【0051】
なお、保護カバー4の素材に関しては、合成樹脂製を用いてもよく、耐水性に優れる。合成樹脂として、軟質塩化ビニル樹脂やポリエチレン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
また、保護カバー4は、
図14及び
図15に示すように、チューブ体2のオーバーラップ部分に対応する位置のいずれか一方の外周面に、防水の面ファスナー9のオス側又はメス側のいずれか一方が設けられていて、チューブ体2のオーバーラップ部分に対応する位置のいずれか他方の外周面に、防水の面ファスナー9のオス側又はメス側のいずれか他方が設けられている構成としてもよい。この場合、バルブ3の位置を、例えば、面ファスナー9の部分を避けるように、チューブ体2の中央付近に設ける構成としてもよい。
【0053】
バルブ3は、
図1に示すように、チューブ体2の長手方向の所用箇所、例えば長手方向一端部寄りの外周面部に取り付けられ、チューブ体2内部に気体を注入可能に構成されている。バルブ3は、自動車タイヤチューブや自転車タイヤチューブ用のバルブであってもよいし、その他の開閉バルブであってもよい。
【0054】
バルブ3に注入する気体は、好ましくは圧縮空気であるが、窒素ガス等その他の気体であってもよい。
【0055】
バルブ3は、
図11に示すように、バルブ本体部30と、コア31と、ナット32と、一対のワッシャ33を備える。一対のワッシャ33はチューブ体2と保護カバー4を挟み込むように配置される。ナット32は、チューブ体2と保護カバー4の外側に配置されたワッシャ33の外側に配置される。バルブ3は、ナット32と一対にワッシャ33によって、チューブ体2と保護カバー4に固定されており、高い機械的負荷に耐えることができる。
【0056】
また、バルブ3は、
図12に示すように、さらに、一対のゴム製ワッシャ34を備えていてもよい。一対のゴム製ワッシャ34は、ワッシャ33と保護カバー4との間、及びワッシャ33とバルブ本体部30の底部との間に配置される。これにより、エアシール性を向上させることができる。
【0057】
また、バルブ3は、
図13に示すように、ナット32と一対のワッシャ33に代え、ゴム製のバルブベース35を備えていてもよい。ゴム製のバルブベース35はバルブ本体部30の一端に全周を囲んで接着し接続されている。バルブベース35はゴム製であるので、弾性及び伸張性に優れる。ゴム製のチューブ体2と直接加硫接着や接着剤を使用し接着する際に、ゴム製のバルブベースを備えるバルブを採用するのが特に好ましい。
【0058】
<2.管の入替工法>
(管の入替工事)
以上のように構成した止水チューブによる管の入替工法について説明する。
この管の入替工法は、道路を開削して、老朽化した既設の排水管(既設管41)を撤去し、新しい排水管(新設管42)を布設していく。入替工事の作業時間外においては交通を阻害しないように通行止めを解除するため、掘削した箇所を埋め戻し、仮舗装後に道路を開放する。このとき、布設配管内の流水を停止させないようにするため、離間した既設管41と新設管42を、止水チューブを用いて仮つなぎ管40で接続する。
【0059】
(止水チューブによる仮つなぎ方法)
入替工事の作業終了後、まず離間した既設管41と新設管42を接続する仮つなぎ管40を仮置きする。そして、仮つなぎ管40の外周に、上述した止水チューブ1を巻き付ける。このとき、止水チューブ1は、収縮状態である。また、
図6に示すように、止水チューブ1を仮つなぎ管40の周方向にオーバーラップさせて巻き付けられている。オーバーラップ量は10.0~60.0cmであり、好ましくは20.0~50.0cmである。
【0060】
オーバーラップ部8は、本実施形態の一例として、帯状面ファスナー10を巻き付けて固定する。なお、オーバーラップ部8は、
図14に示すように、上述した保護カバー4に設けられた防水の面ファスナー9で接着してもよく、密着テープによって接着されてもよいし、金具等で固定してもよい。
【0061】
次に、
図2に示すように、仮つなぎ管40を、既設管41及び新設管42に挿入する。
図4は、新設管42に止水チューブ1を巻き付けた仮つなぎ管40を挿入した状態を示す部分拡大断面図である。
【0062】
次に、止水チューブ1内にバルブ3から気体を注入し、止水チューブ1を膨らませる。
図3に示すように、止水チューブ1のバルブ3にコンプレッサーや自転車用空気入れなどの加圧空気供給源(図示せず)から気体を注入し、止水チューブを膨らませ、既設管41及び新設管42の内周面に圧接させ、仮つなぎ管40と既設管41及び新設管42との隙間を埋めて空気圧により固定して土砂及び水の流入を防ぐことができる。
図5は、新設管42に止水チューブ1を巻き付けた仮つなぎ管40を挿入し、止水チューブ1を膨らませた状態を示す部分拡大断面図である。チューブ体2がゴム製なので、
図5のように仮つなぎ管が蛇腹管であるような場合でも隙間を良好に埋めることができる。
【0063】
また、
図7に示すように、止水チューブ1はオーバーラップした状態で仮つなぎ管40と既設管41及び新設管42との隙間を埋めることとなる。止水チューブ1が十分に膨張したら、バルブ3を閉じて止水チューブ1の収縮を防ぐ。なお、止水チューブ1に加圧空気を注入して膨張させるときには、加圧空気供給源より供給する加圧空気の圧力を、止水チューブ1に過剰な膨張による損傷が生じない圧力範囲に予め設定しておくようにすればよい。
【0064】
この状態で、道路を埋め戻して、仮舗装後に道路を開放する。このようにすることで、従来は管の入替工事の際、既設管と新設管の仮つなぎを行う時に、土のうを用いて土砂や水をせき止めていたところ、止水チューブを用いることで、手間と時間とコストを大幅に削減できる。また、既設管と新設管が仮つなぎ管でつながっているので、道路を埋め戻しても管内を流体が通過でき、別途バイパス管を設置しなくてよい。
【0065】
(続きの工事)
そして翌日、再度道路を開削し、続きの工事を行う。そして、また次の日以降に続きの作業をするため、その日の作業終了後、開削した道路を元に戻す際に、前記した止水チューブによる仮つなぎ方法を用いて、翌日以降の作業に備える。
【0066】
上記の工事と仮つなぎ方法とを、管の入替工事が完了するまで繰り返し行う。このようにすることで、従来は、土のうを設置、土のうを撤去、土のうを再度設置と、非常に手間と時間がかかっていたところ、手間と時間とコストを大幅に削減できる。また、この工法であれば、同じ止水チューブを何度も利用でき、工事が完全に終了した後も、別の現場でこの止水チューブを転用することができる。
【0067】
以上の通り、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属するものである。
【0068】
前記実施形態では、止水チューブ1に保護カバー4を設けたが、この保護カバー4を有しない止水チューブ1を採用してもよい。また、前記実施形態では、止水チューブ1を仮つなぎ管40に巻き付けた後、その仮つなぎ管40を既設管41及び新設管42に挿入しているが、仮つなぎ管40を既設管41及び新設管42に挿入した後、止水チューブ1を仮つなぎ管40に巻き付けてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 止水チューブ
2 チューブ体
3 バルブ
4 保護カバー
5 閉塞部材
6 接着範囲
7 挟込具
8 オーバーラップ部
9 面ファスナー
10 帯状面ファスナー
20 チューブ体の本体部
30 バルブ本体部
31 コア
32 ナット
33 ワッシャ
34 ゴム製ワッシャ
35 バルブベース
40 仮つなぎ管
41 既設管
42 新設管
43 マンホール