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  • 特許-ろ過助材を用いた固液分離装置 図1
  • 特許-ろ過助材を用いた固液分離装置 図2
  • 特許-ろ過助材を用いた固液分離装置 図3
  • 特許-ろ過助材を用いた固液分離装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ろ過助材を用いた固液分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 37/02 20060101AFI20240508BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20240508BHJP
   B03C 1/22 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B01D37/02 F
B03C1/00 A
B03C1/00 B
B03C1/22
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020184063
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074209
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000197746
【氏名又は名称】株式会社石垣
(72)【発明者】
【氏名】氏家 秀隆
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-146717(JP,A)
【文献】特開2018-085938(JP,A)
【文献】特開2005-058959(JP,A)
【文献】特開昭57-102246(JP,A)
【文献】特開2006-231291(JP,A)
【文献】実開平06-024709(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/04,35/10-37/04
B03C 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ布表面に磁性を付与した不定形ろ過助材(7)を所定の厚さだけ積層し、ろ過・脱水ゾーンにてろ過助材(7)を透過可能な液分をドラム(2)内部に吸引して外部に排出するとともに、ろ過助材(7)を透過できない懸濁物質をろ過助材(7)の表面に堆積させるプリコート式真空脱水機において、
プリコート層の表層に近い一部のろ過助材(7)をプリコート層(8)で捕捉した懸濁物質と共に連続的に掻き取る剥離手段(S1)と、
懸濁物質とろ過助材(7)とを分離する分離手段(S2)と、
ろ過助材(7)を回収する回収手段(S3)と、
ろ過助材(7)を真空脱水機の積層手段(S5)に送る返送手段(S4)と、
剥離手段(S1)とろ過・脱水ゾーンとの間でドラムに張設したろ布に向かって下方向に傾斜して先端部がプリコート層(8)の設定厚となる位置に設置した積層板(21)上に返送されたろ過助材(7)が連続的にろ布表面に残留するプリコート層(8)上に再積層する積層手段(S5)と、を備える
ことを特徴とする真空脱水機。
【請求項2】
前記分離手段(S2)は、
分離槽(10)と攪拌装置(11)と磁気ロール(12)で構成し、
磁気ロール(12)は、
上ロール(13)と下ロール(14)に掛け回したベルト(15)と、
ベルト(15)内周面に付設した磁気板(16)と、
ベルト(15)からろ過助材(7)を剥離する掻取装置(17)と、を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の真空脱水機
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活排水や工場排水などの被処理水に含まれている懸濁物質を分離除去するろ過助材を用いた固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被処理水中の微細な懸濁物質を分離除去する固液分離装置として、ドラム表面にろ布を張り、ろ過助材をプリコートしてろ過を行う真空脱水機が知られている。
また、引用文献1には、被処理水に磁性を有する磁性粉を加え、化学反応あるいは凝集剤によって被処理水中の汚濁物を磁性粒子に吸着させて磁性フロックを形成し、磁場発生装置にてドラム外周上のろ過面上に付着させて固液分離を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-66375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、珪藻土等の微細粒子をろ過助材としてプリコートした真空脱水機は、精密ろ過が可能であり、ろ過された被処理水中の懸濁物質はプリコート上に堆積する。掻き取り装置にて懸濁物質を除去する際に、懸濁物質と同時にプリコート層の表層を掻き取るため、回収する固形物量が増加し、固形物を処理する後処理の負担が増大していた。また、プリコート層が掻き取られて脱水性能を満足しないほど薄くなると、被処理水の供給を停止してろ過助材を投入し、プリコート層を新たに所定の厚みになるよう形成し直す必要があった。
【0005】
特許文献1に記載される固液分離装置は、回収する固形物側に磁性を付与してろ過面上に付着させるものであるが、磁性フロックを形成させるために磁性粉を添加するので、回収固形物量が増加する。回収した固形物が磁性を帯びているので、搬送する際に取扱いに手間を要し、処分方法によっては注意が必要となる。
【0006】
本発明は、磁性を付与したろ過助材でプリコートし、固形物の回収時にプリコートろ材と懸濁物質を分離し、ろ過助材をプリコートろ材として再利用するろ過助材を用いた固液分離装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ろ布表面に磁性を付与した不定形ろ過助材を所定の厚さだけ積層し、ろ過・脱水ゾーンにてろ過助材を透過可能な液分をドラム内部に吸引して外部に排出するとともに、ろ過助材を透過できない懸濁物質をろ過助材の表面に堆積させるプリコート式真空脱水機において、プリコート層の表層に近い一部のろ過助材をプリコート層で捕捉した懸濁物質と共に連続的に掻き取る剥離手段と、懸濁物質とろ過助材とを分離する分離手段と、ろ過助材を回収する回収手段と、ろ過助材を真空脱水機の積層手段に送る返送手段と、剥離手段とろ過・脱水ゾーンとの間でドラムに張設したろ布に向かって下方向に傾斜して先端部がプリコート層の設定厚となる位置に設置した積層板上に返送されたろ過助材が連続的にろ布表面に残留するプリコート層上に再積層する積層手段と、を備えるもので、容易にプリコートしたろ過助材を捕捉した懸濁物質から分離・回収し、固液分離装置に返送・再積層することで再利用可能である。
【0008】
分離手段は、分離槽と攪拌装置と磁気ロールで構成し、磁気ロールは、上ロールと下ロールに掛け回したベルトと、ベルト内周面に付設した磁気板と、ベルトからろ過助材を剥離する掻取装置と、を備えるので、回収固形物からろ過助材と懸濁物質を容易に分離可能であり、懸濁物質の搬送・処分に手間を要しない。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、粒径の小さいろ過助材に磁性を付与してプリコートするため、安定した精密ろ過運転が可能となる。また、ろ過助材に磁性を付与させているため、回収固形物からろ過助材と懸濁物質との分離が容易であり、回収固形物量が増加することなく、懸濁物質の搬送・処分に手間が掛からない。さらに、ろ過助材をプリコートろ材として再利用可能である。真空脱水機に適用すると被処理液のろ過運転だけでなく、ろ過助材の分離・回収・再利用が連続的に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る真空脱水機を用いたシステム図である。
図2】同じく、真空脱水機の要部詳細図である。
図3】同じく、磁気ロールの縦断面図である。
図4】同じく、積層手段の要部詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係る真空脱水機を用いたシステム図であり、図2は真空脱水機の要部詳細図である。
原液を満たした原液槽1と、原液槽1に下側を浸漬させて回転自在に支架している円筒体のドラム2とを備えている。ドラム2の円周面は多孔性の支持床3で構成してあり、その上にろ布4を張設している。ドラム2の内部には吸引管5を連通させており、真空ポンプ6により吸引管5を介してドラム2内を減圧させている。
【0013】
ろ布4の表面には粒状のろ過助材7により所定の厚さだけプリコート層8を形成してあり、原液槽1に供給された原液はドラム2内の減圧によりドラム2に向かって吸引される。プリコート層8を透過可能な液分はドラム2内部に吸引されて外部に排出するとともに、プリコート層8を透過できない懸濁物質はプリコート層8の表面に堆積する。
【0014】
<剥離手段>
ドラム2は所定の回転数にて矢印方向に回転しており、原液槽1内でプリコート層8の表面に堆積した懸濁物質は大気下で自重による重力分離を経た後、剥離手段S1によって掻き取られる。この時、プリコート層8の表層に近い一部のろ過助材7が懸濁物質とともに剥離手段S1によって掻き取られ、後段の分離槽10に排出される。本実施例では剥離手段S1としてスクレーパ9を用いているが、他の手段を適用してもよい。
【0015】
<ろ過助材>
プリコート層8を形成する粒状のろ過助材7には、フェライト法、共沈型担磁法、高分子添加型担磁法、マグネタイト担磁法、表面収着型担磁法等の公知の手段にて磁性を付与している。
【0016】
ろ過助材7としては、例えば、灰石膏、パーライト、活性炭、ビーズ等、種々の材質が使用可能であるが、粒径が100μm以下で多孔質な珪藻土を使用することが望ましい。
【0017】
<分離手段>
剥離手段S1によって掻き取られた懸濁物質とプリコート層8の一部のろ過助材7は後段の分離手段S2にて懸濁物質とろ過助材7とに分離される。
【0018】
本実施例では、分離槽10と攪拌装置11と磁気ロール12で分離手段S2を構成している。具体的には、分離槽10に排出されたろ過助材7と懸濁物質は公知の攪拌装置11により攪拌しつつ、磁性体を有する磁気ロール12にてろ過助材7を吸着して懸濁物質と分離している。
【0019】
図3は磁気ロール12の縦断面図であって、磁気ロール12は上ロール13と下ロール14に掛け回した無端状のベルト15で構成した磁気ロール12であり、少なくとも一方のロールを駆動することでベルト15を周回させている。上ロール13から下ロール14に亘ってベルト15内周面に磁気板16を付設してあり、磁気板16の磁力によりベルト15の外周面にろ過助材7を吸着させる。ろ過助材7はベルト15の外周面に吸着した状態で上ロール13側に搬送され、掻取装置17によりベルト15表面から剥離する。必要に応じて各ロールに磁力を付与してもよい。
【0020】
攪拌装置11は羽根車を機械的に回転させるパドル式攪拌やエアーを供給して攪拌する空気式撹拌式等、公知の攪拌装置を使用できる。また、必要に応じて攪拌時に希釈水を供給してもよい。
【0021】
懸濁物質は分離槽10の下方に設けた排出管から外部に排出される。外部に排出する際に、磁性体によりろ過助材を回収してもよい。
【0022】
<回収手段>
分離手段S2にて分離されたろ過助材7は回収手段S3に搬送される。本実施例では、回収手段S3を回収槽18で構成しており分離したろ過助材7を貯留している。回収槽18では必要に応じて洗浄、殺菌を行ってもよい。本実施例では回収手段S3として独立設置した回収槽18を用いているが、ろ過助材7の回収量が少量の場合は、搬送用のポンプ19等に連設するシュートを回収槽18としてもよい。
【0023】
<返送手段>
回収手段S3にて回収されたろ過助材7は、返送手段S4にて真空脱水機に返送される。本実施例では、返送手段S4をポンプ19と返送管20にて構成している。回収槽18内のろ過助材7をポンプ19にて圧送し、返送管20を介して搬送する。本実施例では返送手段S4としてポンプ19および返送管20を用いているが、ベルトコンベア等の公知の返送手段S4を適用してもよい。
【0024】
<積層手段>
ろ過助材7は返送手段S4を介して積層手段S5に搬送される。積層手段S5は真空脱水機に設けてあり、真空脱水機のプリコート層8にろ過助材7を連続的に積層している。具体的には、真空脱水機の剥離手段S1(スクレーパ9)とろ過・脱水ゾーンとの間に設置してあり、プリコート層から懸濁物質を剥離する際に設定厚より薄くなったプリコート層を再積層するものである。
【0025】
図4に示すように、本実施例では、積層板21上にろ過助材7を返送し、傾斜した積層板21上をろ過助材7が自重で移動することにより連続的にプリコート層8に再吸着させている。
【0026】
積層板21はプリコート層8に向かって下方向に傾斜しており、先端部がプリコート層8の設定厚となる位置に設置している。剥離手段S1により薄くなったプリコート層8に、磁力と吸引力により分離・回収したろ過助材7を連続的に吸着させるとともに、プリコート層8の厚みが設定厚以上にならないよう積層板21の先端部にて調整する。
【0027】
常時、新しいプリコート層8を原液に浸漬させることで安定した連続ろ過が可能となり、清澄度の高い処理水が得られる。
【0028】
本実施例では、磁性を付与したろ過助材を真空脱水機のプリコート層として用いているが、例えば、キャンドルフィルター、リーフフィルター、フィルタープレス等の固液分離装置のプリコート材として適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、食品・医薬品・化学薬品・石油産業等、粒径の小さい懸濁物質を含む被処理水を固液分離する精密ろ過を必要とする産業に適用でき、プリコート材の再利用による廃棄物の低減が可能で、環境配慮型の固液分離装置となるものである。
【符号の説明】
【0030】
7 ろ過助材
8 プリコート層
10 分離槽
11 撹拌装置
12 磁気ロール
13 上ロール
14 下ロール
15 ベルト
16 磁気板
17 掻取装置
S1 剥離手段
S2 分離手段
S3 回収手段
S4 返送手段
S5 積層手段
図1
図2
図3
図4