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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20240508BHJP
   E03D 11/13 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D11/13
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020021507
(22)【出願日】2020-02-12
(65)【公開番号】P2021127581
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】原 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】頭島 周
(72)【発明者】
【氏名】江崎 一也
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-190187(JP,A)
【文献】特開2010-180673(JP,A)
【文献】実開平05-087080(JP,U)
【文献】特開2015-187350(JP,A)
【文献】特開2017-40046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/02
E03D 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部の少なくとも前方及び左右両側の外周部に設けられたスカート部と、このスカート部の後方に設けられた後方側壁部と、を備えた便器本体と、
この便器本体の後方側壁部の側方を覆うように取り付けられるカバー部材と、を有し、
上記便器本体の後方側壁部は、上記スカート部の後端側に境界壁面を形成する境界壁部と、この境界壁部の後方側に設けられ誘導壁部と、を備えており、
上記誘導壁部は、その側面上に形成された被取付面と、この被取付面上に設けられた固定領域と、この固定領域に対して接着される第1固定部材と、を含み、
上記カバー部材は、上記被取付面に取り付けられる取付部と、この取付部の取付面上に設けられて上記第1固定部材に対して接着して固定可能な第2固定部材と、を備えており、
上記誘導壁部は、上記カバー部材の上記取付部が上記被取付面に取り付けられる際、上記第1固定部材及び上記第2固定部材同士が互いに接着することにより、上記取付面を上記被取付面上の上記固定領域まで誘導するように構成され、
上記第1固定部材は、上記境界壁面との間に隙間を形成するように上記境界壁面に対して後方側に離間して配置されており、
上記誘導部の被取付面は、上記固定領域が設けられていない基準面と、上記固定領域が設けられている固定領域面と、この固定領域面を上記基準面に対して面外方向に突出させるように形成される段差部と、を備えていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記境界壁面の上端部は、上記境界壁面の下端部よりも前方側に設けられている請求項記載の水洗大便器。
【請求項3】
さらに、使用者の局部を洗浄可能にする局部衛生洗浄装置を有し、この局部衛生洗浄装置は、上記便器本体における上記ボウル部よりも後方側の上面に設けられて機能部を内蔵する筐体を備えており、この筐体の前方側下端部の前後方向位置は、上記カバー部材の前方側上端部が取り付けられる上記便器本体の後方側壁部における境界壁部の上端部の前後方向位置とほぼ同一位置に配置されている請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記便器本体の後方側壁部における上記境界壁部の境界壁面は、上記便器本体の上端部から下端部に亘って設けられている請求項1乃至の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記段差部は、上記被取付面における上方且つ前方側から下方且つ後方側に向かって長手方向に延びる縦壁部と、上記被取付面の横幅方向に延びる横壁部と、を備えており、上記縦壁部の縦幅寸法(L1)は、上記横壁部の横幅寸法(L2)よりも大きくなるように設定されている請求項記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器として、例えば、特許文献1、2に記載されているように、陶器製の便器本体の外周部を形成するスカート部において、その便器本体の前後方向の中央部よりも後方側の少なくとも一部を外側から覆うようにカバー部材が取り外し可能に取り付けられているものが知られている。これらのカバー部材は、例えば、メンテナンス時、停電時の便器洗浄操作時、及び、便器本体の清掃時に取り外され、便器本体の表面の拭き掃除等が可能となっている。
また、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、便器本体のスカート部の後端部に取り付けられるカバー部材の前縁部は、便器本体のスカート部の後端面における前方側の上端部から後方側の下端部に向かって下り傾斜する傾斜面に沿うように、前方側の上端部から後方側の下端部に向かって下り傾斜している。さらに、カバー部材が便器本体に取り付けられる際には、カバー部材の前縁部が便器本体のスカート部の後端面(傾斜面)に当接しながら外側に向けて弾性変形された後、傾斜面に当接する方向に付勢されるようになっている。また、カバー部材の前縁部における内面(裏側面)には、一条のスポンジ(緩衝体)が貼着されており、カバー部材が便器本体に対して取り付けられた状態では、カバー部材の前縁部の裏側面のスポンジが便器本体のスカート部の後端面(傾斜面)に隙間なく当接するようになっている。
さらに、上述した特許文献2に記載されている従来の水洗大便器においては、カバー部材の取付部の取付面には、面ファスナ等の固定部材が設けられている一方、カバー部材の取付部が取り付けられる陶器製の便器本体側の被取付面においても面ファスナ等の固定部材の接着されており、カバー部材の取付部の面ファスナが係合可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-190673号公報(特許第5465441号公報)
【0004】
【文献】発明推進協会公開技報公技番号2019-501373号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器においては、使用者側或いは便器本体側からの小水等の汚水が誤って便器本体の上面等の一部にかかり、便器本体とカバー部材との隙間に入り込んだ場合には、便器本体に対して取り付けられた状態のカバー部材の前縁部における内面に貼着されたスポンジに汚水が付着して滞留し、臭気や汚れの発生の原因となるという問題がある。また、カバー部材の前縁部の内面とスポンジとの貼着面(接着面)に汚水が浸入した場合には、スポンジの緩衝体としての機能が損なわれると共に、スポンジとカバー部材との貼着力も弱まり、スポンジ自体がカバー部材から剥がれてしまうという問題がある。加えて、機械的な寸法精度が乏しい陶器製の便器本体を使用した場合、様々な配慮を実現することが難しいという大前提がある。
さらに、上述した特許文献2に記載されている従来の水洗大便器においては、カバー部材の取付部が取り付けられる陶器製の便器本体の被取付面(陶器面)に面ファスナが接着されている。このため、便器本体とカバー部材との隙間に入り込んだ汚水が、便器本体の被取付面(陶器面)と面ファスナとの接着面に浸入した場合には、接着面の接着力が弱まってしまい、カバー部材が面ファスナと共に便器本体から外れてしまうおそれがあるという問題がある。
したがって、便器本体とカバー部材との隙間に入り込んだ汚水により、カバー部材が面ファスナ等の固定部材と共に便器本体から意図せずに外れてしまうことをいかに効果的に抑制するかが近年要請されている課題となっている。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点及び近年要請された課題を解決するためになされたものであり、便器本体とカバー部材との隙間に入り込んだ汚水により、カバー部材が固定部材と共に便器本体から意図せずに外れてしまうことを効果的に抑制することができる水洗大便器を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部の少なくとも前方及び左右両側の外周部に設けられたスカート部と、このスカート部の後方に設けられた後方側壁部と、を備えた便器本体と、この便器本体の後方側壁部の側方を覆うように取り付けられるカバー部材と、を有し、上記便器本体の後方側壁部は、上記スカート部の後端側に境界壁面を形成する境界壁部と、この境界壁部の後方側に設けられて上記カバー部材の取付部が取り付けられる被取付面を含み且つ上記カバー部材の取付部を上記被取付面の固定領域まで誘導可能にする誘導壁部と、を備えており、上記被取付面の固定領域には、上記カバー部材の取付部を上記被取付面の固定領域に対して固定する固定部材が接着されており、上記固定部材は、上記境界壁面との間に隙間を形成するように上記境界壁面に対して後方側に離間して配置されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、従来の水洗大便器では、例えば、使用者側或いは便器本体側からの小水等の汚水が誤って便器本体の上面等の一部にかかってしまうと、便器本体とカバー部材との隙間に入り込み、便器本体やカバー部材に接触した汚水が、便器本体やカバー部材との接触面を伝って、カバー部材の取付部や便器本体の一部の被取付面に付着したり、カバー部材の取付部を便器本体の一部に固定する固定部材に付着したりするという問題があった。
特に、従来の水洗大便器では、カバー部材の取付部を便器本体の被取付面の固定領域に対して固定する固定部材として、例えば、被取付面に対して接着剤等により接着される面ファスナ等の部材を採用した場合には、面ファスナと被取付面との接着面に汚水が浸入し、接着面の接着力が弱まってしまい、カバー部材が面ファスナと共に便器本体から外れてしまうおそれがあるという問題があった。
そこで、本発明では、便器本体の後方側壁部の誘導壁部がカバー部材の取付部を被取付面の固定領域まで誘導可能にすると共に、この誘導壁部の被取付面の固定領域において、カバー部材の取付部を被取付面の固定領域に対して固定する固定部材が接着されていても、この固定部材について、便器本体の後方側壁部における境界壁部の境界壁面に対して後方側に離間して配置することにより、固定部材と境界壁面との間に隙間を形成することができた。
これにより、万一、使用者側或いは便器本体側からの小水等の汚水が誤って便器本体の上面等の一部にかかってしまい、便器本体の後方側壁部とカバー部材との隙間に入り込んだ場合であっても、便器本体やカバー部材に接触した汚水が、便器本体の後方側壁部の境界壁部の境界壁面と誘導壁部の被取付面の固定部材との間の隙間内を流下することになる。
したがって、本発明によれば、汚水が固定部材に付着したり、誘導壁部の被取付面の固定領域と固定部材との接着面に浸入して付着したりすることを抑制することができるため、カバー部材が固定部材と共に便器本体から意図せずに外れてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記誘導部の被取付面は、上記固定領域が設けられていない基準面と、上記固定領域が設けられている固定領域面と、この固定領域面を上記基準面に対して面外方向に突出させるように形成される段差部と、を備えている。
このように構成された本発明においては、万一、使用者側或いは便器本体側からの小水等の汚水が誤って便器本体の上面等の一部にかかってしまい、便器本体の後方側壁部とカバー部材との隙間に入り込んだ場合であっても、誘導部の被取付面の固定領域面を基準面に対して面外方向に突出させる段差部が形成されているため、汚水が段差部を乗り越えることなく、便器本体の後方側壁部の境界壁部の境界壁面と誘導壁部の被取付面の固定部材との間の隙間内を流下することになる。
また、誘導部の被取付面の基準面と固定領域面との間に設けられた段差部により、固定領域面と固定部材との接着面を基準面よりも面外方向に突出させることができるため、固定領域面と固定部材との接着面に対して汚水が浸入して付着することを効果的に抑制することができる。
よって、カバー部材が固定部材と共に便器本体から意図せずに外れてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記境界壁面の上端部は、上記境界壁面の下端部よりも前方側に設けられている。
このように構成された本発明においては、便器本体の後方側壁部における境界壁部の境界壁面の上端部が境界壁面の下端部よりも前方側に設けられているため、便器本体の後方側壁部における境界壁部の境界壁面について、便器本体の後方側壁部の前方側かつ上端側から後方側かつ下端側に向かって下り傾斜する傾斜面にすることができる。
したがって、万一、例えば、便器本体の前方の立位排尿時の使用者側からの小水等の汚水が便器本体の後方側壁部の境界壁面の上端部付近にかかったとしても、その汚水について、境界壁面の上端部付近に滞留させることなく、便器本体の後方側壁部の境界壁面の前方側かつ上端部側から下り傾斜する傾斜面に沿って伝わせながら、後方側かつ下端部側にスムーズに流下させることができる。
よって、誘導壁部の被取付面の固定領域と固定部材との接着面に対して汚水が浸入して付着することをより効果的に抑制することができるため、カバー部材が固定部材と共に便器本体から意図せずに外れてしまうことをさらにより効果的に抑制することができる。
一方、本発明では、採用していないが、仮に、便器本体の後方側壁部の境界壁面の上端部が境界壁面の下端部よりも後方側に設けられた場合には、便器本体の後方側壁部の境界壁部の境界壁面が、便器本体の後方側壁部の後方側かつ上端側から前方側かつ下端側に向かって下り傾斜する傾斜面になる。
これにより、境界壁部の内側から後方側に設けられた誘導壁部の被取付面、及び、この被取付面の固定領域に固定される固定部材が境界壁面の下り傾斜する傾斜面よりも下方に位置することになる。よって、この傾斜面に沿って前方側かつ下端部側に伝って流下する汚水の一部が、傾斜面の下方に対向する被取付面や固定部材に落下する等、固定部材と誘導壁部の被取付面の固定領域との接着面に汚水が予期せぬ方向から浸入して付着するリスクが増大することになる。
そこで、本発明によれば、便器本体の後方側壁部の境界壁部の境界壁面の上端部が境界壁面の下端部よりも前方側に設けられていることにより、固定部材と誘導壁部の被取付面の固定領域との接着面に対して、汚水が予期せぬ方向から浸入することを抑制することができ、カバー部材が固定部材と共に便器本体から意図せずに外れてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、さらに、使用者の局部を洗浄可能にする局部衛生洗浄装置を有し、この局部衛生洗浄装置は、上記便器本体における上記ボウル部よりも後方側の上面に設けられて機能部を内蔵する筐体を備えており、この筐体の前方側下端部の前後方向位置は、上記カバー部材の前方側上端部が取り付けられる上記便器本体の後方側壁部における境界壁部の上端部の前後方向位置とほぼ同一位置に配置されている。
このように構成された本発明においては、使用者の局部を洗浄可能にする局部衛生洗浄装置における機能部を内蔵する筐体が便器本体におけるボウル部よりも後方側の上面に設けられており、この筐体の前方側下端部の前後方向の位置が、カバー部材の前方側上端部が取り付けられる便器本体の後方側壁部における境界壁部の上端部の前後方向の位置とほぼ同一位置に配置されている。
これにより、万一、例えば、便器本体の前方の立位排尿時の使用者側からの小水等の汚水が局部衛生洗浄装置の筐体の上方部分等にかかり、筐体の前方側下端部に流下してきたとしても、この汚水について、筐体の前方側下端部の前後方向位置とほぼ同一の前後方向位置に配置されている便器本体の後方側壁部における境界壁部の上端部から境界壁面に沿って下方側に流下させることができる。
したがって、局部衛生洗浄装置側からの汚水が、固定部材と誘導壁部の被取付面の固定領域との接着面に対して予期せぬ方向から浸入することを効果的に抑制することができる。よって、カバー部材が固定部材と共に便器本体から意図せずに外れてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記便器本体の後方側壁部における上記境界壁部の境界壁面は、上記便器本体の上端部から下端部に亘って設けられている。
このように構成された本発明においては、万一、便器本体の後方側壁部の上端部にかかった小水等の汚水が便器本体の後方側壁部とカバー部材との隙間に入り込んだ後、境界壁部の境界壁面上にかかってしまったとしても、この境界壁面が便器本体の上端部から下端部に亘って設けられているため、境界壁面上に沿って流下する汚水について、便器本体の上端部と下端部の途中で停滞することを防ぐことができ、便器本体の下端部までスムーズに流下させることができる。
また、境界壁面上に沿って流下する汚水について、便器本体の上端部と下端部の途中で停滞することによって、固定部材と誘導壁部の被取付面の固定領域との接着面に対して、汚水が予期せぬ方向から浸入することをより効果的に抑制することができ、カバー部材が固定部材と共に便器本体から意図せずに外れてしまうことをさらにより効果的に抑制することができる。
さらに、汚水が境界壁面を流下した後、便器本体の下端部から浸出することにより、いち早く汚水の浸出を見つけ出すことができるため、清掃性を向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記段差部は、上記被取付面における上方且つ前方側から下方且つ後方側に向かって長手方向に延びるように形成される縦壁部と、上記被取付面の横幅方向に延びる横壁部と、を備えており、上記縦壁部の縦幅寸法(L1)は、上記横壁部の横幅寸法(L2)よりも大きくなるように設定されている。
このように構成された本発明においては、万一、誘導壁部の被取付面における段差部の上方の便器本体の上面等が汚水等で被水した後、段差部の横壁部上端付近等に汚水がかかってしまったとしても、段差部の縦壁部の縦幅寸法(L1)が横壁部の横幅寸法(L2)よりも大きくなるように設定されているため(L1>L2)、汚水が段差部の上端付近(横壁部等)に滞留することなく、段差部の横壁部に沿って横幅方向に流れやすくなり、その後、段差部の縦壁部に沿って流下しやすくなる。
したがって、段差部の上端付近に流れ込んだ汚水について、便器本体の後方側壁部の境界壁部の境界壁面と誘導壁部の被取付面の固定部材との間の隙間内をスムーズに流下させることができる。
よって、汚水が便器本体の上端部と下端部の途中で停滞することを防ぐことができ、便器本体の下端部までスムーズに流下させることができるため、固定部材と誘導壁部の被取付面の固定領域面との接着面に対して、汚水が予期せぬ方向から浸入することをより効果的に抑制することができ、カバー部材が固定部材と共に便器本体から意図せずに外れてしまうことをさらにより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水洗大便器によれば、便器本体とカバー部材との隙間に入り込んだ汚水により、カバー部材が固定部材と共に便器本体から意図せずに外れてしまうことを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器の側面図である。
図2】本発明の一実施形態による水洗大便器を斜め後方かつ上方から見た分解斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器の便器本体の後方側壁部及びカバー部材の分解平面図である。
図4図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体の後方側壁部における境界壁部及び誘導壁部の部分を拡大した部分拡大斜視図である。
図5図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の側面図を部分的に拡大した部分拡大側面図であり、カバー部材の前側取付部が取り付けられる便器本体の後方側壁部が見えるようにカバー部材の一部を破断した図である。
図6図5に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体の後方側壁部において、誘導壁部及びその面ファスナの部分を拡大した部分拡大側面図である。
図7】本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体の後方側壁部における境界壁部及び誘導壁部の部分を斜め上方から見た部分拡大斜視図である。
図8図5のVIII-VIII線に沿った縦断面である。
図9図6のIX-IX線に沿った平面断面斜視図である。
図10図6のX-X線に沿った平面断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器の側面図である。また、本発明の一実施形態による水洗大便器を斜め後方かつ上方から見た分解斜視図である。
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、その後方側に設けられたタンク装置4と、便器本体2に対して取り外し可能に取り付けられてタンク装置4の左右両側を覆う一対のカバー部材6と、を備えている。
なお、図2では、一方側のカバー部材6のみを図示し、他方側のカバー部材の図示は省略している。
【0016】
つぎに、図2に示すように、便器本体2は、汚物を受けるボウル部8と、このボウル部8の上縁に形成されるリム部10と、ボウル部8の底部から延びてボウル部8内の汚物を排出する排水トラップ部(図示せず)と、これらのボウル部8及び排水トラップ部(図示せず)の前方及び左右両側の外周部に設けられたスカート部12と、を備えている。
【0017】
また、図1及び図2に示すように、水洗大便器1は、便器本体2におけるボウル部8及びスカート部12よりも後方側のリム部10の上面に設けられて使用者の局部を洗浄可能にする局部衛生洗浄装置14を備えている。
さらに、図1及び図2に示すように、タンク装置4は、水道等の給水源(図示せず)から供給された洗浄水を貯水する貯水タンク16と、この貯水タンク16の上部に設けられて貯水タンク16内に洗浄水を給水するタンク給水部18と、この貯水タンク16内の洗浄水を便器本体2に圧送するポンプ20等を備えている。
また、局部衛生洗浄装置14は、タンク装置4の貯水タンク16の上方のタンク給水部18よりも前側に配置されている。
【0018】
なお、本実施形態では、タンク装置4としては、ポンプ20の補圧を利用して貯水タンク16内の洗浄水を便器本体2に供給することができるような形態について説明するが、このような形態に限られず、他の形態についても適用可能である。
例えば、貯水タンクに貯水した洗浄水について重力を利用して便器本体2に供給する、いわゆる、重力給水式の貯水タンクの形態を採用してもよいし、或いは、水道水の給水圧を直接利用した水道直圧式の形態やフラッシュバルブ式の形態を採用してもよい。
【0019】
つぎに、図3は、本発明の第1実施形態による水洗大便器の便器本体の後方側壁部及びカバー部材の分解平面図である。
図2及び図3に示すように、便器本体2は、さらに、スカート部12の後方に設けられた後方側壁部22を備えている。この後方側壁部22は、境界壁部24及び誘導壁部26をそれぞれ備えている。
また、図4は、図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体の後方側壁部における境界壁部及び誘導壁部の部分を拡大した部分拡大斜視図である。
図3及び図4に示すように、便器本体2の後方側壁部22の境界壁部24は、スカート部12の後端側に設けられてスカート部12との境界面(境界壁面28)を形成している。
さらに、図3及び図4に示すように、便器本体2の誘導壁部26は、境界壁部24の後方側に設けられてカバー部材6が取り付けられる被取付面30を形成している。ここで、被取付面30は、タンク装置4の側面S0に対してほぼ平行に設けられている(図3参照)。
また、カバー部材6の取付部32は、その前方側と後方側に前方側取付部32a及び後方側取付部32bをそれぞれ備えており、便器本体2の誘導壁部26の被取付面30は、カバー部材6の取付部32における前方側取付部32aの取付面32cを被取付面30の固定領域A1まで誘導することができるようになっている。
ちなみに、カバー部材6の取付部32の後方側取付部32bは、タンク装置4の後方側に設けられた後方側被取付部4aに対して取り外し可能に取り付けられるようになっている。
【0020】
ここで、図1及び図2に示すように、カバー部材6の前縁部6aは、前方側かつ上方側から後方側かつ下方側に向かって斜め下方に下り傾斜するように延びている。
また、図2及び図3に示すように、カバー部材6の前方側取付部32aは、カバー部材6の前方側取付部32aの裏側面(取付面32c)に設けられた複数(3つ)の面ファスナ34を備えている。
これらの面ファスナ34は、カバー部材6の前方側かつ上方側から後方側かつ下方側に向かって下り傾斜して延びる前縁部6aに対して前後方向とほぼ平行に配置され、かつ、隣接する面ファスナ34同士が所定間隔を置いて配置されている。
さらに、図3及び図4に示すように、便器本体2の誘導壁部26における被取付面30の固定領域A1には、カバー部材6の前方側取付部32aの取付面32cにおける面ファスナ34を被取付面30の固定領域A1に対して固定する固定部材(面ファスナ36)が接着剤等により接着されている。
ここで、面ファスナ34,36については、一方を雄側のファスナ部材とし、他方を雌側のファスナ部材としており、互いの面ファスナ34,36同士が接着して固定可能となっている。
【0021】
つぎに、図5は、図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器1の側面図を部分的に拡大した部分拡大側面図であり、カバー部材6の前側取付部32が取り付けられる便器本体2の後方側壁部22が見えるようにカバー部材6の一部を破断した図である。
まず、図4及び図5に示すように、便器本体2の後方側壁部22における境界壁部24において、境界壁面28の上端部28aは、境界壁面28の下端部28bよりも前方側に設けられている。
また、図4及び図5に示すように、境界壁面28は、便器本体2の後方側壁部22の上端部22a(後方側リム部10の上面10a)から後方側壁部22の下端部22bに亘って設けられている。
【0022】
つぎに、図2図5に示すように、局部衛生洗浄装置14は、便器本体2におけるボウル部8よりも後方側のリム部10の上面10aに設けられて機能部14aを内蔵する筐体14bを備えている。
図5に示すように、局部衛生洗浄装置14の筐体14bの上面は、後方側から前方側に向かって下り傾斜する傾斜面14cを形成する部分を備えている。
また、図1及び図5に示すように、局部衛生洗浄装置14の筐体14bの前方側下端部14dの前後方向位置P1は、カバー部材6の前方側上端部6bが取り付けられる便器本体2の境界壁部24における境界壁面28の上端部28aの前後方向位置P2とほぼ同一位置に配置されている。
【0023】
つぎに、図6は、図5に示す本発明の一実施形態による水洗大便器1の便器本体2の後方側壁部22において、誘導壁部26の被取付面30及びその面ファスナ36の部分を拡大した部分拡大側面図である。また、図7は、本発明の一実施形態による水洗大便器1の便器本体2の後方側壁部22における境界壁部24及び誘導壁部26の部分を斜め上方から見た部分拡大斜視図である。さらに、図8は、図5のVIII-VIII線に沿った縦断面図である。また、図9は、図6のIX-IX線に沿った平面断面斜視図である。さらに、図10は、図6のX-X線に沿った平面断面斜視図である。
図5図7に示すように、便器本体2の誘導壁部26における被取付面30の固定領域A1に接着された面ファスナ36は、便器本体2の後方側壁部22における境界壁部24の境界壁面28に対して後方側に離間して配置されている。
これにより、便器本体2の後方側壁部22における境界壁部24の境界壁面28と誘導壁部26における被取付面30上の面ファスナ36の前側端面36aとの間には隙間G1が形成されている(図5図6参照)。
【0024】
つぎに、図7図10に示すように、便器本体2の後方側壁部22における誘導壁部26の被取付面30は、固定領域A1が設けられていない基準面30aと、固定領域A1が設けられている固定領域面30bと、この固定領域面30bを基準面30aに対して面外方向(面法線ベクトルNの方向)に突出させるように形成される段差部G2と、を備えている。
すなわち、図10に示すように、誘導壁部26の被取付面30における固定領域A1が設けられていない基準面30aには、面ファスナ36が接着されていない。
一方、図7図9に示すように、面ファスナ36は、誘導壁部26の被取付面30における固定領域面30b上のみに接着されている。
また、図9に示すように、固定領域面30bと面ファスナ36との接着面C1は、段差部G2により、基準面30aよりも面外方向(水平左右方向の外側)に配置されている。 さらに、図6及び図8に示すように、段差部G2は、被取付面30における上方且つ前方側から下方且つ後方側に向かって長手方向に延びるように形成される縦壁部30cと、被取付面30の横幅方向に延びる横壁部30dと、を備えている。
また、図6縦壁部30cの縦幅寸法L1は、横壁部の横幅寸法L2よりも大きくなるように設定されている(L1>L2)。
【0025】
つぎに、図1図10を参照して、上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1の作用について説明する。
まず、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、従来の水洗大便器では、例えば、使用者側或いは便器本体側からの小水等の汚水が誤って便器本体の上面等の一部にかかってしまうと、便器本体とカバー部材との隙間に入り込み、便器本体やカバー部材に接触した汚水が、便器本体やカバー部材との接触面を伝って、カバー部材の取付部や便器本体の一部の被取付面に付着したり、カバー部材の取付部を便器本体の一部に固定する固定部材に付着したりするという問題があった。
特に、従来の水洗大便器では、カバー部材の取付部を便器本体の被取付面の固定領域に対して固定する固定部材として、例えば、被取付面に対して接着剤等により接着される面ファスナ等の部材を採用した場合には、面ファスナと被取付面との接着面に汚水が浸入し、接着面の接着力が弱まってしまい、カバー部材が面ファスナと共に便器本体から外れてしまうおそれがあるという問題があった。
そこで、本実施形態の水洗大便器1では、便器本体2の後方側壁部22の誘導壁部26がカバー部材6の前方側取付部32aを被取付面30の固定領域A1まで誘導可能にすると共に、この誘導壁部26の被取付面30の固定領域A1において、カバー部材6の前方側取付部32aの面ファスナ34を被取付面30の固定領域A1に対して固定する面ファスナ36が接着されていても、この面ファスナ36について、境界壁部24の境界壁面に対して後方側に離間して配置することにより、境界壁面28との間に隙間G1を形成することができた。
これにより、万一、便器本体2の前方の使用者側或いは便器本体2側からの小水等の汚水Wが誤って便器本体2の上面等の一部にかかってしまい、便器本体2の後方側壁部22とカバー部材6との隙間に入り込んだ場合であっても、便器本体2やカバー部材6に接触した汚水Wが、便器本体2の後方側壁部22の境界壁部24の境界壁面28と誘導壁部26の被取付面30の面ファスナ36との間の隙間G1内を流下することになる(図6図7参照)。
したがって、汚水Wが便器本体2の後方側壁部22の誘導壁部26の面ファスナ36やこれに取り付けられたカバー部材6の前方側取付部32aの取付面32cの面ファスナ34に付着することを抑制することができる。
また、汚水Wが誘導壁部26の被取付面30の固定領域A1と面ファスナ36との接着面C1(図7図9参照)に浸入して付着したりすることを抑制することができるため、カバー部材6が面ファスナ34,36と共に便器本体から意図せずに外れてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0026】
つぎに、本実施形態による水洗大便器1によれば、万一、使用者側或いは便器本体2側からの小水等の汚水Wが誤って便器本体2の上面等の一部にかかってしまい、便器本体2の後方側壁部22とカバー部材6との隙間に入り込んだ場合であっても、誘導壁部26の被取付面30の固定領域面30bを基準面30aに対して面外方向(面法線ベクトルNの方向)に突出させる段差部G2が形成されている(図7図9参照)。
これにより、汚水Wが段差部G2を乗り越えることなく、便器本体2の後方側壁部22の境界壁部24の境界壁面28と誘導壁部26の被取付面30の面ファスナ36との間の隙間G1内を流下することになる(図6図7参照)。
また、便器本体2の後方側壁部22の誘導壁部26における被取付面30の基準面30aと固定領域面30bとの間に設けられた段差部G2により、誘導壁部26の被取付面30の固定領域面30bと面ファスナ36との接着面C1について、基準面30aよりも面外方向(面法線ベクトルNの方向)に突出させることができ、接着面C1に対して汚水Wが浸入して付着することを効果的に抑制することができる(図7図9参照)。
よって、カバー部材6が面ファスナ34,36と共に便器本体2から意図せずに外れてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0027】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、便器本体2の後方側壁部22における境界壁部24の境界壁面28の上端部28aが境界壁面28の下端部28bよりも前方側に設けられている。
これにより、便器本体2の後方側壁部22における境界壁部24の境界壁面28について、便器本体2の後方側壁部22の前方側かつ上端側から後方側かつ下端側に向かって下り傾斜する傾斜面にすることができる。
したがって、万一、例えば、図7に示すように、便器本体2の前方の立位排尿時の使用者側からの小水等の汚水Wが便器本体2の後方側壁部22の境界壁面28の上端部28a付近にかかったとしても、その汚水Wについて、境界壁面28の上端部28a付近に滞留させることなく、便器本体2の後方側壁部22の境界壁面28の前方側かつ上端部28a側から下り傾斜する傾斜面S1(図6図7参照)に沿って伝わせながら、後方側かつ下端部側にスムーズに流下させることができる。
よって、誘導壁部26の被取付面30の固定領域A1と面ファスナ36との接着面C1に対して汚水Wが浸入して付着することをより効果的に抑制することができるため、カバー部材6が面ファスナ34,36と共に便器本体2から意図せずに外れてしまうことをさらにより効果的に抑制することができる。
一方、本実施形態では、採用していないが、仮に、便器本体2の後方側壁部22の境界壁面28の上端部が境界壁面28の下端部よりも後方側に設けられた場合には、便器本体2の後方側壁部22の境界壁部24の境界壁面が、便器本体2の後方側壁部22の後方側かつ上端側から前方側かつ下端側に向かって下り傾斜する傾斜面になる。
これにより、境界壁部24の内側から後方側に設けられた誘導壁部26の被取付面30、及び、この被取付面30の固定領域A1に固定される面ファスナ36が境界壁面28の下り傾斜する傾斜面S1よりも下方に位置することになる。よって、この傾斜面S1に沿って前方側かつ下端部側に伝って流下する汚水Wの一部が、傾斜面S1の下方に対向する被取付面30や面ファスナ36に落下する等、面ファスナ36と誘導壁部26の被取付面30の固定領域A1との接着面C1に汚水Wが予期せぬ方向から浸入して付着するリスクが増大することになる。
そこで、本実施形態では、便器本体2の後方側壁部22の境界壁部24の境界壁面28の上端部28aが境界壁面28の下端部28bよりも前方側に設けられている。これにより、面ファスナ36と誘導壁部26の被取付面30の固定領域A1との接着面C1に対して、汚水Wが予期せぬ方向から浸入することを抑制することができ、カバー部材6が面ファスナ34,36と共に便器本体2から意図せずに外れてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0028】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、使用者の局部を洗浄可能にする局部衛生洗浄装置14における機能部14aを内蔵する筐体14bが便器本体2におけるボウル部8よりも後方側のリム部10の上面10aに設けられている。
また、この筐体14bの前方側下端部14dの前後方向位置P1が、カバー部材6の前方側上端部6bが取り付けられる便器本体2の境界壁部24における境界壁面28の上端部28aの前後方向位置P2とほぼ同一位置に配置されている。
これにより、万一、例えば、図5に示すように、便器本体2の前方の立位排尿時の使用者側からの小水等の汚水Wが局部衛生洗浄装置14の筐体14bの上面(傾斜面14c)等の上方部分にかかり、筐体14bの前方側下端部14dに流下してきたとしても、この汚水Wについて、筐体14bの前方側下端部14dの前後方向位置とほぼ同一の前後方向位置P1に配置されている便器本体2の後方側壁部22における境界壁部24の境界壁面28の上端部28aから境界壁面28に沿って下方側に流下させることができる。
したがって、局部衛生洗浄装置14側からの汚水Wが、面ファスナ36と誘導壁部26の被取付面30の固定領域A1との接着面C1に対して予期せぬ方向から浸入することを効果的に抑制することができる。
よって、カバー部材6が面ファスナ34,36と共に便器本体2から意図せずに外れてしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、図4図7に示すように、万一、便器本体2の後方側壁部22の上端部22aにかかった小水等の汚水Wが便器本体2の後方側壁部22とカバー部材6との隙間に入り込んだ後、境界壁部24の境界壁面28上にかかってしまったとしても、この境界壁面28が便器本体2の後方側壁部22の上端部22aから下端部22bに亘って設けられている。
よって、境界壁面28上に沿って流下する汚水Wについて、便器本体2の後方側壁部22の上端部22aと下端部22bの途中で停滞することを防ぐことができ、便器本体2の後方側壁部22の下端部22bまでスムーズに流下させることができる。
また、境界壁面28上に沿って流下する汚水Wについて、便器本体2の後方側壁部22の上端部22aと下端部22bの途中で停滞することによって、面ファスナ36と誘導壁部26の被取付面30の固定領域A1との接着面C1に対して、汚水Wが予期せぬ方向から浸入することをより効果的に抑制することができ、カバー部材6が面ファスナ34,36と共に便器本体2から意図せずに外れてしまうことをさらにより効果的に抑制することができる。
さらに、汚水Wが境界壁面28を流下した後、便器本体2の後方側壁部22の下端部22bから浸出することにより、いち早く汚水Wの浸出を見つけ出すことができるため、清掃性を向上させることができる。
【0030】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、万一、境界壁面28の内端28cと誘導壁部26の被取付面30との間の段差部G2の上方の便器本体2の上面等が汚水等で被水した後、段差部G2の上端部付近に汚水がかかってしまったとしても、図6図8図9に示すように、段差部G2の縦壁部30cの縦幅寸法L1が段差部G2の横壁部30dの横幅寸法L2よりも大きくなるように設定されている(L1>L2)。
これにより、汚水W1が段差部G2の上端付近(横壁部30d等)に滞留することなく、段差部G2の横壁部30dに沿って横幅方向に流れやすくなり、その後、段差部G2の縦壁部30cに沿って流下しやすくなる。
したがって、段差部G2の上端付近に流れ込んだ汚水W1について、便器本体2の後方側壁部22の境界壁部24の境界壁面28と誘導壁部26の被取付面30の面ファスナ36との間の隙間G1内をスムーズに流下させることができる。
よって、汚水W1が便器本体2の後方側壁部22の上端部22aと下端部22bの途中で停滞することを防ぐことができ、便器本体2の下端部22bまでスムーズに流下させることができる。
したがって、面ファスナ36と誘導壁部26の被取付面30の固定領域面30bとの接着面C1に対して、汚水Wが予期せぬ方向から浸入することをより効果的に抑制することができ、カバー部材6が面ファスナ34,36と共に便器本体2から意図せずに外れてしまうことをさらにより効果的に抑制することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、便器本体2の後方側壁部22の誘導壁部26における被取付面30の固定領域A1に対してカバー部材6の前側取付部32を固定する固定部材として、面ファスナ34,36をそれぞれ採用し、一方を雄側のファスナ部材、他方を雌側のファスナ部材とした形態について説明した。
しかしながら、固定部材については、面ファスナ以外の他の形態を採用してもよく、例えば、マグネット等を採用してもよい。
また、複数の面ファスナ34,36のそれぞれの個数についても、3個ずつに限られず、3個以外の複数に設定してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 本発明の一実施形態による水洗大便器
2 便器本体
4 タンク装置
4a 後方側被取付部
6 カバー部材
6a カバー部材の前縁部
6b カバー部材の前方側上端部
8 便器本体のボウル部
10 便器本体のリム部
10a 後方側リム部の上面
12 便器本体のスカート部
14 局部衛生洗浄装置
14a 機能部
14b 筐体
14c 筐体の上面の傾斜面
14d 筐体の前方側下端部
16 貯水タンク
18 タンク給水部
20 ポンプ
22 便器本体の後方側壁部
22a 便器本体の後方側壁部の上端部
22b 便器本体の後方側壁部の下端部
24 便器本体の後方側壁部の境界壁部
26 便器本体の後方側壁部の誘導壁部
28 便器本体の後方側壁部の境界壁部の境界壁面
28a 境界壁面の上端部
28b 境界壁面の下端部
28c 境界壁面の内端
30 便器本体の後方側壁部の誘導壁部の被取付面
30a 基準面
30b 固定領域面
30c 段差部の縦壁部
30d 段差部の横壁部
32 カバー部材の取付部
32a カバー部材の前方側取付部
32b カバー部材の後方側取付部
32c カバー部材の前方側取付部の取付面
34 面ファスナ(カバー部材の取付部)
36 面ファスナ(固定部材)
36a 面ファスナの前側端面
A1 固定領域
C1 誘導壁部の被取付面の固定領域と面ファスナとの接着面
L1 段差部の縦壁部の縦幅寸法
L2 段差部の横壁部の横幅寸法
N 被取付面の面法線ベクトル
G1 境界壁部の境界壁面と誘導壁部の被取付面の面ファスナの前側端面との間の隙間
G2 段差部
P1 局部衛生洗浄装置の筐体の前方側下端部の前後方向位置
P2 便器本体の境界壁部における境界壁面の上端部の前後方向位置
S0 タンク装置の側面
S1 傾斜面
W 小水等の汚水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10