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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】光電センサ
(51)【国際特許分類】
   H01H 35/00 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
H01H35/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020037912
(22)【出願日】2020-03-05
(65)【公開番号】P2021140945
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】高市 克志
(72)【発明者】
【氏名】宮田 毅
(72)【発明者】
【氏名】駒井 和斉
(72)【発明者】
【氏名】大原 英憲
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-247461(JP,A)
【文献】特開平05-274967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 35/00
G01S 17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象物を検出するための光電センサであって、
検出光を投光する複数の光源と、
前記複数の光源の少なくとも1つにより投光された前記検出光を受光する受光部と、
前記複数の光源による投光を制御する制御部と、
を備える光電センサと、
投光する光源の数を選択するための操作を受け付け、該操作に応じた入力信号を生成する入力部と、
を備え、
前記制御部は、前記入力信号に基づいて前記複数の光源の中から少なくとも2つの前記光源を選択し、選択した前記少なくとも2つの光源を同時に投光させ、
前記複数の光源から投光される検出光の投光領域が互いに異なる、
検出システム
【請求項2】
前記複数の光源は、電気的に並列に接続されている、
請求項1に記載の検出システム
【請求項3】
前記複数の光源は、仮想の第1直線に沿って配置されている、
請求項1又は2に記載の検出システム
【請求項4】
前記受光部は、仮想の第2直線に沿って配置された複数の受光素子を有する受光素子アレイを含み、
前記仮想の第1直線と前記仮想の第2直線とが交差している、
請求項3に記載の検出システム
【請求項5】
前記複数の光源は、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)アレイを含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の検出システム
【請求項6】
前記光源から投光される検出光は、可視光線帯域の第1光と、赤外光線帯域の第2光と、を含み、
前記第1光と前記第2光とを分離する分離部を、さらに備え、
前記受光部は、分離された前記第2光を受光する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の検出システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光電センサは、検出光を検出対象物に向けて投光し、その反射光を検出することで、光電センサから検出対象物までの距離を測定したり、光電センサから所定の距離だけ離れた検出対象物の有無を判定したりするために用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スポットビームを投光する複数のVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)を光源として用いて、広範囲の物体を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-67831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光電センサによる検出光の検出は、検出対象物の色柄又は表面状態(粗度及びたわみなど)などの影響を受ける。光電センサでは、検出対象物の色柄による影響を受けないようにするために、できるだけ小さいスポットビームを検出光として用いる試みがされている。しかしながら、スポットビームが小さいと、検出光の検出が物体の表面状態による影響を受けやすくなる。例えば、粗度が高い検出対象物では、検出光の検出が困難になる場合がある。
【0006】
検出対象物の色柄による影響を抑えつつ、表面状態の影響も抑える方法として、細い線状のラインビームを検出光として用いる方法が考えられる。これにより、検出対象物の表面状態による検出への影響がラインビームの幅方向(線の長さ方向)に平均化され、検出対象物における表面状態による検出への影響が抑制される。
【0007】
しかしながら、検出対象物のサイズが変わる場合には、光電センサの光学系の設定を変更し、ラインビームの長さを調整する手間が生じる。
【0008】
そこで、本発明は、より簡便に様々なサイズの検出対象物に対応できる光電センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る光電センサは、検出対象物を検出するための光電センサであって、検出光を投光する複数の光源と、複数の光源の少なくとも1つにより投光された検出光を受光する受光部と、複数の光源による投光を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の光源の中から少なくとも2つの光源を選択し、選択した少なくとも2つの光源を同時に投光させ、複数の光源から投光される検出光の投光領域が互いに異なる。
【0010】
この態様によれば、制御部は、検出対象物のサイズに応じて、検出光を投光する複数の光源の数を制御することができる。このとき、光電センサに設けられた光学系の設定を変更する必要がなく、より簡便に様々なサイズの検出対象物に対応できる。
【0011】
上記態様において、複数の光源は、電気的に並列に接続されていてもよい。
【0012】
この態様によれば、並列に接続された光源の各々にかかる電圧を簡便に制御することができる。このため、より簡便に投光する光源を選択することが可能になる。
【0013】
上記態様において、複数の光源は、仮想の第1直線に沿って配置されていてもよい。
【0014】
この態様によれば、投光部により投光される検出光を受光するための受光部を簡便に設計することが可能になる。
【0015】
上記態様において、受光部は、仮想の第2直線に沿って配置された複数の受光素子を有する受光素子アレイを含み、仮想の第1直線と仮想の第2直線とが交差していてもよい。
【0016】
この態様によれば、仮想の第1直線と仮想の第2直線とが交差しているため、ある光源から投光された検出光が、他の光源の検出光を受光するための受光素子アレイに入射されることが抑止される。この結果、より精度よく検出対象物を検出することが可能になる。
【0017】
上記態様において、複数の光源は、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)アレイであってもよい。
【0018】
この態様によれば、より簡便に光源をアレイ化することができる。従って、より簡便に光電センサを製造することが可能になる。
【0019】
上記態様において、光源から投光される検出光は、可視光線帯域の第1光と、赤外光線帯域の第2光と、を含み、第1光と第2光とを分離する分離部を、さらに備え、受光部は、分離された第2光を受光してもよい。
【0020】
この態様によれば、受光部による第1光の受光が抑制されるため、外乱光となる可視光帯域の光の影響を受けにくくなる。この結果、より精度よく検出対象物を検出することが可能になる。また、第1光は視認可能であるため、ユーザは、第2光が検出対象物に投光されている範囲を、第1光に基づき認識することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、より簡便に様々なサイズの検出対象物に対応できる光電センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る検出システムの構成を示す機能ブロック図である。
図2】同実施形態に係る投光部の一例を示す構成図である。
図3】光電センサが1つの検出光を検出対象物に向けて投光している様子を示す図である。
図4】光電センサが3つの検出光を検出対象物に向けて投光している様子を示す図である。
図5】第1実施形態に係る受光ユニットの構成を示す機能ブロック図である。
図6】同実施形態に係る受光部の構成を示す図である。
図7】ゲイン調整テーブルの一例を示す図である。
図8】第1実施形態に係る光電センサに投光条件が設定される際の処理例を示すフローチャートである。
図9】第1実施形態に係る光電センサが検出対象物を検出する際の処理例を示すフローチャートである。
図10】第2実施形態に係る光電センサの構成を示す機能ブロック図である。
図11】検出対象物に検出光及びガイド光が投光されている様子の一例を示す図である。
図12】検出対象物に検出光及びガイド光が投光されている様子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る検出システムの構成を示す図である。本実施形態に係る検出システムは、検出対象物の有無を判定し、判定結果を出力するものであり、主として、入力部110、光電センサ10、及び出力部30を備える。
【0025】
入力部110は、ユーザからの入力操作を受け付け、入力信号を生成できる。入力部110は、例えば、ボタン、キーボード、マウス、タッチパネル又はスイッチなどの各種の入力操作を受け付ける装置を備えてもよい。入力部110は、例えば、光電センサ10の投光する光源を選択するための操作を受け付けてもよいし、投光する光源の数を選択するための操作を受け付けてもよい。入力部110は、受け付けた操作に応じた入力信号を生成し、例えばIO-LINK通信を利用して入力信号を光電センサ10に送信してもよい。
【0026】
入力部110は、例えば、光電センサ10が備える光源の数に応じて、それぞれの光源のON又はOFFを個別に設定できる。入力部110は、ユーザからのボタンによる操作を受け付け、複数の光源のON又はOFFを選択して、選択結果を表す入力信号を生成してもよい。あるいは、入力部110は、通信コマンドにより、光源の数に応じたbitパターン(1:ON、0:OFF)でON又はOFFを指定し、指定した結果を光電センサ10に送信してもよい。
【0027】
また、入力部110には、例えば頻繁に使われることが想定される光源のON/OFFのパターンが予め登録されていてもよい。この場合、入力部110は、ユーザによる選択操作によりbitパターンを選択し、選択したbitパターンを光電センサ10に送信してもよい。ここで、選択操作は、例えば入力部110が備えるボタンの操作であってもよいし、通信コマンドを入力する操作であってもよい。
【0028】
ここで、光源の数が9個の場合について、3つのbitパターンを例示する。ここで、9個の光源は、2つの端(左端および右端)を結ぶ一直線上に、左端から右端まで等間隔で並んでいるものとして説明する。また、ここで示すbitパターンにおいて、1はON、0はOFFに対応しているものとする。例えば、9個すべての光源をONにするbitパターンは、「111111111」である。また、9個の光源のうち、両端からそれぞれ2つずつの光源をOFFとし、中央の5つの光源をONにするbitパターンは、「001111100」である。さらに、中央の1つの光源のみをONにし、残りの光源をすべてOFFとするbitパターンは、「000010000」である。
【0029】
また、bitパターンは、これらの例に限定されるものではなく、ユーザの操作により任意のbitパターンが適宜設定されてもよい。ユーザは、検出対象物の品種のサイズ等に応じて、設定されたbitパターンから1つのbitパターンを選択し、投光する光源を選択することができる。このとき、bitパターンを選択する操作は、入力部110のボタンの操作、入力部110に通信コマンドを入力する操作、又は入力部110に接続された外部線によりに指示する操作であってよい。
【0030】
ユーザは、検査対象物が移動するライン上における当該検査対象物の位置、又は検出対象箇所の位置に応じて投光箇所を選択することもできる。ここでも、光源の数が9個であり、これらの光源が一直線上に並んでいるものとして説明する。光電センサ10が設置されている位置に対して左寄りの箇所を検査対象物10が通過する場合には、例えば、左端から2番目の光源のみをONにするbitパターンである「010000000」が用いられてもよい。また、光電センサ10が設置されている位置に対して中央を検査対象物10が通過する場合には、中央の光源のみをONにするbitパターンである「000010000」が用いられてもよい。さらに、光電センサ10が設置されている位置に対して右寄りの箇所を検査対象物10が通過する場合には、右端から2番目の光源のみをONにするbitパターンである「000000010」が用いられてもよい。
【0031】
なお、入力部110は、画像を検出する機能を備えていてもよい。入力部110は、当該機能に基づき、例えば検出対象物のサイズを検出し、当該サイズに応じて投光する光源を指定するための入力信号を生成してもよい。
【0032】
本実施形態に係る光電センサ10は、三角測距方式の光電センサであり、複数の光源により検出光を同時に投光し、光電センサ10から所定の距離に位置する検出対象物20により反射された検出光を受光することができる。光電センサ10は、検出光を受光した場合には検出対象物が存在していると判定し、検出光を受光しなかった場合には検出対象物が存在していないと判定することができる。また、光電センサ10は、検出対象物10までの距離を判別することが可能な距離設定型の光電センサであってもよい。光電センサ10は、判定結果を出力部30に出力できる。
【0033】
出力部30は、液晶ディスプレイなどの各種の出力装置であってもよい。出力部30は、各種の情報を出力することができる。出力部30は、例えば、光電センサ10の判定結果を表示してもよい。
【0034】
図1に示すように、光電センサ10は、制御部120、投光ユニット130、受光ユニット140、投光レンズ150及び受光レンズ152を備える。
【0035】
制御部120は、例えばCPU(Central Processing Unit)などにより構成されてもよい。制御部120は、入力信号に基づき、投光ユニット130及び受光ユニット140の動作を制御することができる。より具体的には、制御部120は、投光ユニット130が備える複数の光源の中から少なくとも2つの光源を選択し、選択した少なくとも2つの光源を同時に投光させることができる。
【0036】
投光ユニット130は、検出光を投光することができる。投光ユニット130は、複数の光源を含む投光部を備えている。当該複数の光源の各々は、スポットビームを検出光として投光することができる。また、当該複数の光源の各々は、例えば、VCSELなどの各種の半導体レーザであってもよい。さらに、複数の光源はアレイ化されていてもよく、光源をVCSELにすることで、簡便に複数の光源をアレイ化することが可能となる。
【0037】
図2は、本実施形態に係る投光部132の一例を示す構成図である。図2に示すように、投光部132は、3つのアノード電極134a~c、3つの光源136a~c、及び接地されたカソード電極138を備える。本実施形態に係る投光部132では、光源136a~cがx軸方向の直線(破線で示された仮想の第1直線160)に沿って配置されている。なお、これらの光源136a~cの中心は、すべてが仮想の第1直線160の上に位置している必要はなく、検出対象物の検出が可能な範囲で、光源136a~cの中心が仮想の第1直線160からずれていてもよい。
【0038】
これらの光源136は、電気的に並列に接続されている。このように、本実施形態では、複数の光源136が電気的に並列に接続されているため、複数の光源136のそれぞれにかかる電圧を、簡便に制御することができる。この結果、複数の光源136の投光/非投光を容易に制御し、簡便に投光する光源136を選択することが可能になる。
【0039】
アノード電極134とカソード電極138との間に所定の電圧がかかると、光源136から検出光が投光される。本実施形態では、複数の光源136が同時に検出光を投光することができる。投光された検出光は、投光レンズ150を通過して光電センサ10から検出対象物20に向けて投光される。このとき、複数の光源136から投光される検出光の投光領域は、互いに異なっている。換言すれば、検出対象物の表面に照射される複数の検出光の領域の各々は、互いに重ならない。
【0040】
また、電圧がかかる光源136を選択することで、投光する光源を選択することができる。例えば光源136a~cの各々にスイッチなどが設けられ、制御部120により、当該スイッチのオン/オフを切り替えることで、光源136a~cの各々の投光/非投光が制御されてもよい。
【0041】
本実施形態に係る投光部132には、3つの光源136a~cが設けられているが、投光部132に設けられている光源の数は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、図2では、3つの光源136a~cは、接続点137において接続されているが、これに限らず、それぞれの光源136は、接続点137を介さずに、直接的にカソード電極138に接続されていてもよい。
【0042】
図3及び図4は、光電センサ10により検出光が検出対象物に向けて投光されている様子の一例を示す図である。
【0043】
光電センサ10は、検出対象物のサイズに応じて、投光する検出光の数を変更することができる。図3では、光電センサ10が、1つの検出光40を検出対象物22に向けて投光している。図4では、光電センサ10が、3つの検出光42を検出対象物24に向けて同時に投光している。図4に示す例では、図3で検出される検出対象物22よりも大きいサイズの検出対象物24について、光電センサ10により有無の判定が行われている。このように、本実施形態に係る光電センサ10によれば、検出対象物のサイズに応じて投光する光源を選択することができる。本実施形態では、検出光の数を変更するときに、光電センサ10の光学系における設定の変更などの手間をかけなくてもよいため、簡便に様々な検出対象物のサイズに対応することができる。
【0044】
また、検出光のスポットサイズを小さくすることで、検出対象物の色柄による影響を抑制することができる。さらに、複数の投光領域が互いに異なるように複数の光源が検出光を同時に投光することで、検出対象物の表面状態による影響を抑制できる。従って、本実施形態に係る光電センサ10によれば、検出対象物の色柄及び表面状態による影響を抑制しつつ、簡便に様々なサイズの検出対象物に対応可能である。
【0045】
図5は、本実施形態に係る受光ユニット140の構成を示す機能ブロック図である。図5に示すように、受光ユニット140は、受光部142、ゲイン調整部144、及び信号処理部146を備える。
【0046】
受光部142は、複数の光源の少なくとも1つにより投光された検出光を受光することができる。より具体的には、受光部142は、検出対象物20により反射された検出光を、受光レンズ152を介して受光することができる。受光部142は、例えば、所定の直線に沿って配置された複数の受光素子を有する受光素子アレイを複数備えていてもよい。より具体的には、受光部142は、例えば、多分割フォトダイオードなどの受光素子アレイを備えてもよいし、一次元のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)撮像素子アレイを備えてもよい。光電センサ10が距離設定型である場合には、受光部142は、2分割フォトダイオードで構成されてもよい。ここで、2分割フォトダイオードの一方をN(Near)側、もう一方をF(Far)側とも称する。このとき、光電センサ10から検出対象物20までの距離が所定の距離よりも近い場合には、F側の光量よりもN側の光量が大きくなり、光電センサ10から検出対象物20までの距離が所定の距離よりも遠い場合には、N側の光量よりもF側の光量が大きくなるように、2分割フォトダイオードの位置が調整され得る。受光部142は、検出光を受光すると、受光した検出光の光量などに応じた受光信号を生成し、ゲイン調整部144に伝達する。
【0047】
図6は、本実施形態に係る受光部142が備える受光素子の一例を示す図である。図6に示すように、受光部142には、6分割フォトダイオード143が配置されている。6分割フォトダイオード143は、投光ユニット130が備える3つの光源136a~cが投光する検出光139a~cを受光する。6分割フォトダイオード143は、x軸と直交しているy軸の方向の直線(破線で示された仮想の第2直線162)に沿って6つのフォトダイオードを備えている。図6には、仮想の第1直線160と平行な仮想の直線161が示されている。ここで、仮想の第2直線162は、仮想の直線161と交差(より具体的には直交)している。このため、6分割フォトダイオード143は、光源136a~cからの検出光を受光できるため、検査対象物の表面状態による検出への影響が平均化されることで、より精度よく検出対象物を検出できる。なお、ここでは、多分割フォトダイオード143の分割数を6として説明したが、多分割フォトダイオードの分割数はこれに限られるものではない。また、ここでは、受光部142が備える受光素子アレイ(6分割フォトダイオード143)の数は1つであるものとして説明したが、受光部142は複数の受光素子アレイを備えてもよい。例えば、受光部142は、光源の数に応じた数の撮像素子アレイを備えていてよい。
【0048】
図5に戻って、受光ユニット140の構成について説明する。ゲイン調整部144は、制御部120による制御に応じて、ゲイン調整を行う機能を有する。具体的には、ゲイン調整部144は、投光する光源の数に応じたゲイン調整を行う。制御部120は、図7に示すようなゲイン調整テーブルを内部パラメータとして保持している。ゲイン調整テーブルには、投光する光源の数に応じたゲイン設定値が記録されている。より具体的には、ゲイン設定値は、投光する光源の数におよそ反比例するように設定されている。制御部120は、ゲイン調整テーブルに基づき、ゲイン設定値をゲイン調整部144に伝達する。ゲイン調整部144は、ゲイン設定値に基づいて受光信号のゲイン調整を行い、調整済信号が生成する。ゲイン調整部144は、例えば、ゲイン設定値に応じて、オペアンプを用いた増幅回路(図示せず。)における抵抗を調整し、受光信号を増幅することで調整済信号を生成してもよい。生成された調整済信号は、信号処理部146に伝達される。
【0049】
信号処理部146は、取得した各種の信号について、各種の処理を行うことができる。例えば、信号処理部146は、制御信号に基づき、光源が検出光を投光するための投光信号を生成し、投光ユニット130に伝達する。これにより、投光ユニット130の投光が制御される。このように、本実施形態では、制御部120は、信号処理部146を介して、投光ユニット130による検出光の投光を制御することができる。
【0050】
また、信号処理部146は、調整済信号に基づいて判定結果を生成し、出力部30に伝達することができる。信号処理部146は、例えば、調整済信号と閾値とを比較し、比較結果に基づいて検出対象物の有無に関する判定結果を生成してもよい。また、信号処理部146は、光電センサ10が距離設定型であり、受光部142が2分割フォトダイオードである場合には、2つの領域(N側とF側)の光量の大小関係に応じて、検出対象物20が所定の距離より遠いか否かを判定することができる。このように、本実施形態では、信号処理部146は、判定部としての機能を有する。
【0051】
図8は、本実施形態に係る光電センサ10に投光条件を設定する際の処理例を示すフローチャートである。以下、同図のフローチャートに沿って、光電センサ10における処理例を説明する。
【0052】
まず、光電センサ10の入力部110は、ユーザからの入力を受け付ける(ステップS101)。例えば、入力部110は、3つの光源による検出光の投光を設定するためのボタンを押下する操作を受け付ける。入力部110は、操作に応じた入力信号を投光条件として制御部120に送信する。
【0053】
次いで、制御部120は、投光条件を切り替える(ステップS103)。例えば、制御部120は、入力信号に基づき、投光ユニット130が備える3つの光源に検出光を投光させるための制御信号をゲイン調整部144及び信号処理部146に伝達する。これにより、ステップS101において入力された投光条件に応じて、投光条件が切り替えられる。
【0054】
次いで、ゲイン調整部144は、図7を参照して説明したゲイン調整テーブルを用いて、ゲイン設定値(例えば、16.7kΩ)に基づきゲイン調整を行う。
【0055】
以上、光電センサ10において投光条件が設定される際の処理例について説明した。次いで、図9を参照して、光電センサ10の検出対象物20を検出する際の処理例について説明する。図9は、本実施形態に係る光電センサ10が検出対象物20を検出する際の処理例を示すフローチャートである。図9に示す処理は、例えば、入力部110が投光を開始するための操作を受け付けた際に開始されてもよい。
【0056】
まず、信号処理部146は、設定された投光条件に基づき投光信号を生成する(ステップS201)。ここでは、信号処理部146は、3つの光源が検出光を投光するための投光信号を生成し、投光ユニット130に伝達する。
【0057】
次いで、投光ユニット130は、投光信号に基づき検出光を投光する(ステップS203)。例えば、投光ユニット130は、3つの光源に同時に検出光を投光させる。検出対象物20が所定の位置に存在する場合には、投光された検出光は検出対象物20により反射される。
【0058】
次いで、受光ユニット140の受光部142は、検出対象物20により反射された検出光を、受光レンズ152を介して受光する(ステップS205)。受光部142は、検出光を受光すると、受光信号を生成してゲイン調整部144に伝達する。ゲイン調整部144は、受光信号を増幅して調整済信号を信号処理部146に伝達する。
【0059】
次いで、信号処理部146は、調整済信号に基づき判定結果を生成する(S207)。信号処理部146は、例えば、検出対象物20が存在していることを表す判定結果を生成する。あるいは、信号処理部146は、検出対象物20が所定の距離より遠いか否かを判定し、判定結果を生成してもよい。信号処理部146は、生成した判定結果を出力部30に伝達する。
【0060】
次いで、出力部30は、判定結果を出力する(ステップS209)。例えば、出力部30は、検出対象物20が検出されたことを表す文字情報を表示してもよい。
【0061】
以上、本実施形態に係る光電センサ10の処理について説明した。本実施形態によれば、制御部120が、投光ユニット130の投光部132が備える複数の光源の中から少なくとも2つの光源を選択し、選択した少なくとも2つの光源を同時に投光させる。このとき、これらの光源が投光する検出光の投光領域が互いに異なっている。本実施形態によれば、投光する光源を変更する際に光電センサ10の光学系の設定を変更する必要がないため、簡便に検出光が投光される範囲を変更することができる。この結果、より簡便に様々なサイズの検出対象物に対応することが可能になる。
【0062】
また、本実施形態に係る光電センサ10によれば、より大きいサイズの検出対象物には、より多くの光源から検出光を投光することができる。この結果、検出対象物の表面状態による影響が平均化され、より精度よく検出対象物を検出することが可能になる。
【0063】
また、本実施形態によれば、検出光としてスポットビームを用いるため、ラインビームの実現に必要な複雑な光学系を用いる必要がない。従って、本実施形態に係る光電センサ10は、より簡易な光学系により作製することができる。
【0064】
また、光電センサ10が距離設定型であり、受光部142が2分割フォトダイオードである場合には、検出光のスポットサイズが大きくなると、2分割フォトダイオードの2つの領域に余分な反射光が入るようになる。このため、検出対象物20に色柄がある場合には、色柄による反射光量がノイズとなり、2つの領域における光量のバランスが影響を受ける。このため、スポットビームを小さくしてバランスが影響を受ける確率を低下させることで、検出対象物の色柄の影響を低減し、より精度よく検出対象物20を検出することができる。
【0065】
[第2実施形態]
第2実施形態では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、主に異なる点について説明する。
【0066】
図10は、第2実施形態に係る光電センサ12の構成を示す機能ブロック図である。第2実施形態に係る光電センサ12は、第1実施形態に係る光電センサ10と異なり、分離部153を備えている。分離部153は、特定の波長の光のみを透過させるフィルタを含む。
【0067】
また、第2実施形態に係る投光ユニット131が備える光源は、検出光に加えてガイド光を投光する。具体的には、光源は赤外線帯域の光(以下、単に「赤外光」とも称する。)を検出光として投光し、可視光線帯域の光(以下、単に「可視光」とも称する。)をガイド光として投光する。可視光は、例えば赤色光であってもよい。また、赤外光には、850~950nm程度の波長を有する光も含まれるものとする。
【0068】
本実施形態では、制御部120は、投光ユニット130が備える光源による検出光の投光を制御するための制御信号だけでなく、光源によるガイド光の投光を制御するための制御信号を信号処理部146に伝達する。具体的には、制御部120は、検出光を投光する光源と、当該光源と所定の位置関係を満たすガイド光を投光する光源とを関連付けて、関連付けた光源が連動して投光するように、光源の投光を制御する。
【0069】
本実施形態では、検出光とガイド光とが交互に並んで検査対象物10に投影されるように投光される。制御部120は、検出光を投光する光源と、当該光源に隣接するガイド光を投光する光源とを関連付けて、関連付けた光源が連動して投光するように光源を制御する。つまり、ある検出光を投光する光源が選択されると、当該光源に隣接するガイド光を投光する光源も選択されて、互いに隣接する検出光及びガイド光が同時に投光される。これにより、1つ1つの光源単位で、検出光を投光する光源が選択されているか否かをユーザが確認することができる。すなわち、ユーザは、いずれの光源が検出光を投光しているのかを確認することができる。このとき、ゲイン調整は、ガイド光の投光と連動して行われてよい。例えば、ガイド光を投光する光源の数に応じたゲイン調整が行われてよい。
【0070】
図11及び図12を参照して、検出対象物の表面に検出光及びガイド光が投光されている様子の一例について説明する。図11には、検出対象物の表面200に、5個の検出光の投光領域(第1投光領域400)と、10個のガイド光の投光領域(第2投光領域402)とが示されている。5個の第1投光領域400の各々の上下には、第2投光領域402が示されている。図11に示すように、5つの第1投光領域400の各々が互いに重ならないように、検出光が投光されている。
【0071】
本実施形態では、検出光が赤外光であるため、ユーザは第1投光領域400を視認することができないが、可視光による第2投光領域402を視認することで、検出光の投光領域を推測することができる。特に、投光される検出光の数が変化した場合に、ユーザは、どの範囲に検出光が投光されているのかを簡便に推測することができる。
【0072】
また、図12に示すように、検出光の投光領域(第1投光領域404)とガイド光の投光領域(第2投光領域406)とが、交互に一直線上に並ぶように、検出光及びガイド光が投光されてもよい。
【0073】
なお、検出光の投光領域及びガイド光の投光領域は、図11又は図12に示された領域に限定されるものではない。また、複数の第1投光領域の間隔は、適宜設計され得る。例えば、複数の第1投光領域が互いに接するように、複数の光源により検出光が投光されてもよい。さらに、複数の第2投光領域は、互いに重なっていてもよい。
【0074】
図10に戻って、第2実施形態に係る光電センサ12の構成について説明する。検出対象物20により反射された検出光及びガイド光は、光電センサ12に入射すると、分離部153によりガイド光が遮光され、主に検出光が受光レンズ152を通過して受光ユニット141により受光される。受光ユニット141は、受光した検出光に基づき、検出対象物20の有無などを判定することができる。
【0075】
以上説明した第2実施形態に係る光電センサ12によれば、受光ユニット141は、赤外光を検出光として受光し、検出対象物20の有無を判定する。このため、可視光が外乱光として受光されることが抑制されるため、より精度よく検出対象物20の有無を判定することができる。また、ユーザは、可視光であるガイド光を認識することで、投光される光源が変更された際に、検出光が投光される範囲の変化を簡便に推測することが可能になる。
【0076】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0077】
また、上記実施形態では、光電センサ10は、光電センサ10から所定の距離だけ離れた位置における検出対象物の有無を判定するものとして説明した。これに限らず、光電センサは、三角測距方式の各種の光電センサであってもよく、例えば検出対象物の変位を検出可能な変位センサなどであってもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、3つの光源136a~cが並列に接続されている例について説明した。これに限らず、一部の光源が直列に接続されていてもよい。この場合、これらの直列に接続された一部の光源は、いずれも同時に投光又は非投光となるように構成されていてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、投光する光源の数に応じて、ゲイン調整部144がゲイン調整を行う。これに代えて、投光する光源の数に応じて、光源が投光する時間又はパワー(光源に流れる電流)などを変更してもよい。また、投光する光源の数に応じて、受光部142が備えるシャッター(図示せず。)を開く時間を調整することで、受光部142が受光する時間が調整されてもよい。また、受光ユニットは、投光する光源の数に応じて、検出対象物の有無を判定するための閾値を変更してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、仮想の第1直線160と仮想の第2直線162とが直交している例について説明したが、仮想の第1直線と仮想の第2直線とは直交してなくてもよく、仮想の第1直線と仮想の第2直線とは、検出光が検出可能な範囲で交差していればよい。
【0081】
[付記1]
検出対象物(20,22,24)を検出するための光電センサ(10,12)であって、
検出光(40,42)を投光する複数の光源(136)と、
前記複数の光源(136)の少なくとも1つにより投光された前記検出光(40,42)を受光する受光部(142)と、
前記複数の光源(136)による投光を制御する制御部(120)と、
を備え、
前記制御部(120)は、前記複数の光源(136)の中から少なくとも2つの前記光源(136)を選択し、選択した前記少なくとも2つの光源(136)を同時に投光させ、
前記複数の光源(136)から投光される検出光(40,42)の投光領域が互いに異なる、
光電センサ(10,12)。
【0082】
[付記2]
前記複数の光源(136)は、電気的に並列に接続されている、
付記1に記載の光電センサ(10,12)。
【0083】
[付記3]
前記複数の光源(136)は、仮想の第1直線に沿って配置されている、
付記1又は2に記載の光電センサ(10,12)。
【0084】
[付記4]
前記受光部(142)は、仮想の第2直線に沿って配置された複数の受光素子を有する受光素子アレイ(143)を含み、
前記仮想の第1直線と前記仮想の第2直線とが交差している、
付記3に記載の光電センサ(10,12)。
【0085】
[付記5]
前記複数の光源(136)は、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER)アレイを含む、
付記1から4のいずれか1項に記載の光電センサ(10,12)。
【0086】
[付記6]
前記光源(136)から投光される検出光(40,42)は、可視光線帯域の第1光と、赤外光線帯域の第2光と、を含み、
前記第1光と前記第2光とを分離する分離部(153)を、さらに備え、
前記受光部(142)は、分離された前記第2光を受光する、
付記1から5のいずれか1項に記載の光電センサ(10,12)。
【符号の説明】
【0087】
10,12…光電センサ、20,22,24…検出対象物、30…出力部、40,42…検出光、110…入力部、120…制御部、130,131…投光ユニット、132…投光部、134…アノード電極、136…光源、137…接続点、138…カソード電極、140,141…受光ユニット、142…受光部、143…受光素子アレイ、144…ゲイン調整部、146…信号処理部、150…投光レンズ、152…受光レンズ、153…分離部、160…仮想の第1直線、162…仮想の第2直線、200…表面、40,42…検出光、400,404…第1投光領域、402,406…第2投光領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12