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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】排水ソケット
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/14 20060101AFI20240508BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
E03D11/14
E03C1/12 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020151308
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045621
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】友成 弘志
(72)【発明者】
【氏名】酒井 洋和
(72)【発明者】
【氏名】京田 寿和
(72)【発明者】
【氏名】行廣 直紀
(72)【発明者】
【氏名】東江 伸治
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-101393(JP,A)
【文献】特開2004-143922(JP,A)
【文献】特開2016-148186(JP,A)
【文献】実開平06-030289(JP,U)
【文献】特開平08-333790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生陶器に備え付けられた排水を流出させるための第一排水口と、
壁面に備え付けられた排水を流出させるための第二排水口と、
第一排水口と第二排水口を接続する排水ソケットにおいて、
記排水ソケットに設けられ、前記衛生陶器に当接することで前記第一排水口と前記排水ソケット間の漏水を防ぐシール材と、を備え、
前記排水ソケットには、衛生陶器の施工時における前記シール材の押し付け力のバラツキに伴うシール材の潰れバラツキを抑制する組付けバラツキ吸収手段が設けられており、
前記組付けバラツキ吸収手段は、シール材の両側を覆うように設けられた壁部と、
前記両側の壁部によって構成されたシール格納部と、を備え、
前記壁部は衛生陶器の施工時における前記シール材の押し付け力方向に可動自在に設けられていることを特徴とする排水ソケット。
【請求項2】
前記壁部は、予め決められた長さ以上可動しないように構成されていることを特徴とする請求項記載の排水ソケット。
【請求項3】
前記壁部は、シール格納部の内周側の壁が可動するよう構成され、シール格納部の外周側の壁は、予め決められた長さ以上シールを潰さない長さとして形成された固定壁として構成されていることを特徴とする請求項記載の排水ソケット。
【請求項4】

シール材の両側にある壁部の内、排水流路側の壁部が可動し、他方の壁部は予め決められた長さで固定されており、排水流路側の壁部は、衛生陶器の組付け前、シール材より衛生陶器側に突出していることを特徴とする請求項記載の排水ソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水ソケットに係り、特に、衛生陶器の排水口と壁面に設けられた排水口とを連結する排水ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の主な小便器や洗面器の取り付け方法は、衛生陶器が重いが故に、衛生陶器上部にある回転可能な支持部材をフックにかけ、重さを利用して衛生陶器の下部を壁面側にスイングさせて、壁面に取り付けるものである。また、上記方法は、小便器や洗面器の排水口(以後、第一排水口と呼ぶ。)と壁面の排水口(以後、第二排水口と呼ぶ。)を接続する排水ソケットに設けられたシール材を小便器や洗面器のスイングにより潰して、水漏れがないようシールも完了させるものである(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-148186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の排水ソケットの構造では、上記の方法で小便器や洗面器を壁面の排水口に取り付ける際、シール材が適正位置で適正量潰れず、排水流路からはみ出ることや、排水流路から離れた位置でシールがされてしまうという問題が起きていた。
具体的に、上記方法だとシール材が適正な位置で適正量潰れない原理を説明すると、衛生陶器の重量が大きいため、組付け時、施工者が衛生陶器を手から離す位置が多少異なるだけでも(例えば1cm離す位置が変わるだけでも)、シール材に加わるモーメント、及び、接触状態が大きくバラツき、ひいてはシール材の潰れ量が大きく変化してしまうためである。特に、衛生陶器は陶器という焼き物であるが故に、同一製品だとしても重量にバラツキが発生してしまい、それに伴いシール材に加わるモーメントが大きくバラツいてしまう。
また、重量だけでなく成形面に関しても陶器特有のバラツキが生じてしまう他、衛生陶器を壁面に取り付けるための支持部材や壁面自体のバラツキにより、シール材に当たる衛生陶器の面形状が変化するため、シール材の潰れ量と潰れ方を大きく変化させる原因となる。
結果として、シール材の潰れ量が衛生陶器の組付けごとに異なってしまうため、シール材が排水流路にはみ出すことや、排水流路から離れた位置でシールが行われることが起きてしまう。シール材が排水流路にはみだすと、シール材に排水流路を流れる排水に晒される時間が多くなる。ゴムを素材とするシール材は、長時間排水に晒されることで、加水分解による分子量の低下からシール材の崩壊を導くため、シール不良を起こす原因となる。逆に排水流路から離れた位置でシールが行われると、衛生陶器と排水ソケットの間に、排水流路径を一部大きくするような隙間が生じてしまい、排水が隙間により一部剥離、淀みが発生し、排水不良であることや、外部への漏水を起こす原因となる。
それらを起こさないために、従来施工者は姿勢の悪い状態を維持しながら、シール材の位置を調整することや、衛生陶器を手から離す位置を工夫していたため施工者の時間と労力がとてもかかっていた。特に冬季のように環境温度が低いと、シール材は弾性しにくく上述した問題は発生しやすい傾向がある。
つまり、施工者の負担を鑑みて、現在の取り付け方法は、衛生陶器が重いが故に衛生陶器をスイングさせるという方法を用いていたが、最終的に施工者がシール材の位置調整や衛生陶器を手から離す位置を工夫しなくてはならないため、施工者の負担を考えた時には改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明によれば、衛生陶器に備え付けられた排水を流出させるための第一排水口と、壁面に備え付けられた排水を流出させるための第二排水口と、第一排水口と第二排水口を接続する排水ソケットにおいて、壁面と衛生陶器の裏面上部間に設けられたフックと回転支持部材からなる取付用ハンガーと、前記排水ソケットに設けられ、前記衛生陶器に当接することで前記第一排水口と前記排水ソケット間の漏水を防ぐシール材と、を備え、前記排水ソケットには、衛生陶器の施工時における前記シール材の押し付け力のバラツキに伴うシール材の潰れバラツキを抑制する組付けバラツキ吸収手段を設けたことを特徴としている。
【0006】
排水ソケットに、衛生陶器の施工時におけるシール材に加わるモーメントや、力が加わる面形状のバラツキを吸収してシール材の潰れバラツキを吸収する組付けバラツキ吸収手段を設けたことにより、施工者は、重い衛生陶器の組付けに対してシール材の潰れバラツキを発生させないように姿勢の悪い状態を維持しながら慎重に組み付けていた従来の過酷な施工作業の負担を大幅に軽減でき、衛生陶器の施工作業現場において極めて実用上優れた効果を奏することができるようになったものである。
具体的には、組付けバラツキ吸収手段によって、施工者が衛生陶器の上部にある回転可能な支持部材をフックにかけ、陶器の重さを利用して衛生陶器の下部を壁面側にスイングして近づける際、施工者が衛生陶器から手を離す位置や衛生陶器の重量のバラツキによるモーメントの変化に起因したシール材の潰れ量や潰れ方向を意識する必要がないため極めて楽な作業で、シール不良を発生させない施工が可能になったものである。
【0007】
本発明の一態様に係る排水ソケットにおいて、好ましくは、組付けバラツキ吸収手段は、シール材の両側を覆うように設けられた壁部と、前記両側の壁部によって構成されたシール格納部を備え、前記壁部は衛生陶器の施工時における前記シール材の押し付け方向に可動自在に設けられていることを特徴としている。
【0008】
衛生陶器の形状や重さ、施工者が衛生陶器を離す位置によって、シール材に付与される潰し力や潰し方向が変化する。しかし、本件発明においては、シール材に付与される潰し力や潰し方向が変化しても壁部が可動しながらシール材が格納された空間であるシール格納部の容積空間を維持するように構成されているため、施工者が慎重な施工をしなくてもシール材が適正な位置からずれてしまうことがなくシール不良を発生させることがない。
【0009】
本発明の一態様に係る排水ソケットにおいて、好ましくは、前記壁部は、予め決められた長さ以上可動しないように構成されていることを特徴としている。
【0010】
衛生陶器の形状や重さ、施工者が衛生陶器を離す位置によって、シール材に付与される潰し力や潰し方向が変化する。その中でも特に、潰し力や潰し方向の変化の影響がシール材を潰しすぎる方へ働くと、両側の壁部も可動しすぎてしまい、シール格納部の容積空間を維持できず、シール材が適正な位置からずれてしまう。しかし、本件発明においては、壁部は予め決められた長さ以上可動しないように構成されているため、施工者が慎重な施工をしなくても、壁部が必要以上可動しないため、シール材が適正な位置からずれてしまうことがなく、適正位置でシール材を充填させることが可能なため、シール不良を発生させることがない。
【0011】
本発明の一態様に係る排水ソケットにおいて、好ましくは、前記壁部は、シール格納部の内周側の壁が可動するよう構成され、シール格納部の外周側の壁は予め決められた長さ以上シール材を潰さない長さとして形成された固定壁として構成されていることを特徴としている。
【0012】
シール材が格納された空間であるシール格納部の容積空間を維持されていれば、一定以上のシール材がシール格納部で充填されることになり、シール性は問題ない。
しかし、壁部の一方側が予め決められた長さ以上可動しない場合、使用するシール材の厚みや衛生陶器の成形面によっては、シール材がシール格納部からはみ出ることがある。シール格納部におけるシール材の充填率が確保してある前提でシール材がはみ出るとしたら、シール材の劣化を招く排水流路側でなく、排水ソケットの外周側にシール材がはみ出る方ため、悪影響が少ない。
しかし、本件発明においては、一方側の可動壁は、排水流路側であることにより、潰し力や潰し方向の変化の影響がシール材の潰れすぎる方へ働き、シール材が潰れすぎたとしても、可動壁はシール材の潰れ量に対して追従するため、はみ出るとしても、排水流路側ではなく、排水ソケットの外周側にシール材がはみ出る。
そのため、施工者が衛生陶器から手を離す位置や衛生陶器の重量のバラツキによるモーメントの変化に起因したシール材の潰れ量や潰れ方向を意識する等の慎重な施工をしなくても、シール材が排水流路に入ることはなく、シール不良を発生させることがない。
【0013】
本発明の一態様に係る排水ソケットにおいて、好ましくは、シール材の両側にある壁部の内、排水流路側の壁部が可動し、他方の壁部は予め決められた長さで固定されており、排水流路側の壁部は、衛生陶器の組付け前、シール材より衛生陶器側に突出していることを特徴としている。
【0014】
可動式の壁部を予め決められた位置で止まるようにするには、壁部もしくは排水ソケットに工夫がいり、実現にはコストがかかる。
シール材の両側にある壁部の内、排水流路側の壁部が可動し、他方の壁部は予め決められた長さで固定されており、排水流路側の壁部は、衛生陶器の組付け前、シール材より衛生陶器側に突出していることにより、実用性のある壁部をコストがかからず作成することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の排水ソケットによれば、施工者が特段配慮した作業をせずとも、シール不良なく、を防ぐことができ、正確に衛生陶器の排水口と排水ソケットを組み付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による小便器を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態による排水ソケットの第一壁部を除いた箇所示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による排水ソケットにシール材を組み込ませた状態を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態による小便器の組付け前を示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態による小便器の組付け後を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態による排水ソケットの組付け前の様態を示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態による排水ソケットの組付け途中の様態を示す断面図である。
図8】本発明の一実施形態による排水ソケットの組付け後の様態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1により、本発明の一実施形態による排水ソケットが適用される衛生陶器について説明する。本発明の一実施形態では、衛生陶器の中でも小便器を具体例として記載するが、小便器のように裏面上部を回転自在に壁部にとりつけ、下部をスイングによって壁部に近づけ取り付けるもの(例えば洗面器)であれば、本件発明の効果を奏することができる。
図1は本発明の一実施形態による小便器の便器本体の側面断面図である。この小便器1は、背後の壁面Wに取付けられる壁掛け式の小便器であり、陶器製である。この小便器1は、その背後の壁面Wに取付けられた状態で便器本体2の最下部が床面Fよりも上方に位置している。
【0019】
小便器1は、汚物を受けるためのボウル部7と、ボウル部7を洗浄するための洗浄水を供給する吐水部5を備えている。小便器1は、表面に釉薬層が形成され、後方に排水を下流に運ぶための排水路9と小便器1の後面に排水を排出するための第一排水口11が形成されている。
【0020】
次に図2、又は、図3により、本発明の一実施形態による排水ソケット13の構造について説明する。
図2、又は、図3に示すように、排水ソケット13は、小便器1を組付けた後、第一排水口11と排水ソケット13の間からの漏水を防ぐためのシール材19とを備えている。また、小便器1の前後方向に対して可動する第一壁部17をシール材19の排水流路18側に、組付け時にシール材19の外径方向の変形を抑制しながら予め決められた長さ以上の潰れを防止する第二壁部15をシール材19の排水流路18側ではない他方側に備えている。つまり、壁部は第一壁部17と第二壁部15の2つがある。また、シール材19は第一壁部17と第二壁部15の間に格納される。シール材19が格納される場所をシール格納部20と呼ぶ。第一壁部17と第二壁部15、シール格納部20を合わせて組付けバラツキ吸収手段と呼ぶ。シール材19はシール材格納部20に保持され、シール材格納部20の内側に第一壁部17を配置し、外側に第二壁部15を配置する。
【0021】
小便器1の施工時におけるシール材に加わるモーメントや、力が加わる面形状のバラツキを吸収してシール材の潰れ量のバラツキを吸収する第一壁部17を設けたことにより、施工者は、重い衛生陶器の組付けに対してシール材の潰れバラツキを発生させないように姿勢の悪い状態を維持しながら慎重に組み付けていた従来の過酷な施工作業の負担を大幅に軽減でき、衛生陶器の施工作業現場において極めて実用上優れた効果を奏することができるようになったものである。
具体的には、第一壁部17は円筒状に形成されており、シール材19と排水流路18の間に位置しているため、小便器1の組付け時、モーメントによってシール材19が大きく潰れることや、偏った潰れ方をしたとしても、第一壁部17が、シール材19の押し付け方向に可動し、シール材19の排水流路18への流入を物理的に防止することで実現している。
【0022】
また、第二壁部15があることにより、小便器1のスイングによるシール材19の潰れが起こった際、第一壁部17と第二壁部15の内部でシール材19が充填されていくため、シール材に付与される潰し力や潰し方向が変化しても、壁部が可動しながらシール材19が格納された空間であるシール格納部20の容積空間を維持するため、シール材19が排水流路18にはみ出ることはなく、排水流路18から離れた位置でシールが行われることもないため、施工者が特段配慮した作業をすることなく、シール不良や排水不良を起こす事がない。
【0023】
第二壁部15は予め決められた長さ突出していることにより、シール材19が第二壁部15よりも外周側に潰れすぎることを抑制しつつも、シール材19へかかる力が大きくなった場合には、第二壁部15よりも外側にシール材19を逃がすことができるため、シール材19に力がかかりすぎた場合には全体に負荷がかからないよう、シール材19を第二壁部より排水ソケット13の外周側へ逃がすことで力を分散させることができる。これにより、シール材19に加わるモーメントによらず、施工者が特段配慮した作業をすることなく、シール不良や排水不良を起こすことなく、正確に第一排水口11と排水ソケット13を組み付けることが可能である。
【0024】
次に図2、乃至、図8を用いて、第一実施例の小便器1の組付け順序、及び、排水ソケット13の動作原理について説明する。
初めに、図4、又は、図5に示すように、施工者は小便器1を持ち上げ、小便器1の裏面上部に備えられた回転支持部材23、24を壁面Wに備えられたフック21に上部から引っ掛けるように保持させる。なお、小便器1の裏面上部にフック21、壁面Wに回転支持部材23を備えても良い。
【0025】
なお、小便器1の支持方法については、このような形態に限られず、フック21や回転支持部材23、24が、他部品に干渉しないような配置であれば、小便器1の正面側壁部の裏面に沿って左右方向に延びるように形成された単一の回転支持部材23、24を設けてもよいし、3つ以上の複数の回転支持部材23、24を左右方向に間隔を置いて設けてもよい。
【0026】
また、小便器1の表面全体については、釉薬が塗布されることにより平滑な表面になるような表面処理がされており、小便器1の表面に結露等が付着したままの状態になることを防ぐことができるようになっているが、フック21と回転支持部材23、24の表面については、このような表面処理がなされておらず、把持を行った際に、これらの把持部分に適度な摩擦力が作用するようになっている。
【0027】
また、小便器1の回転支持部材23、24を壁面Wのフック21に取り付けた後は、陶器製の小便器1の自重で回転支持部23、24と壁面Wのフック21との互いの係合が強化されるため、小便器1を壁面Wに確実に固定することができ、小便器1を壁面Wに簡単に設置することができる。
さらに、小便器1が壁面Wに設置された状態では、小便器1の回転支持部23、24が便器本体1の外部から隠蔽されている状態となるため、小便器1の美観性が損なわれることを防ぐこともでき、設置状態の美観性を確保することができる小便器1を提供することができる。
【0028】
施工者は回転支持部材23、24を壁面のフック21に把持を完了させた後、第一排水口11と排水ソケット13に組付ける。その際、施工者は小便器1の下部を支え、陶器の重さを利用して小便器1の下部を壁面W側にスイングさせて排水ソケット13の第一壁部17に当てる。
【0029】
排水ソケット13は小便器1に組付ける前、図3に示してあるように、第一壁部17はシール材19より小便器1側へ突出している。これにより、組付け時、小便器1や壁面Wにある程度バラツキがあったとしても、確実に初動からシール材19よりも、先に小便器1があたる。シール材19を押し込む過程では、排水流路18に近い箇所は、第一壁部17がシール材19を押し込む形になる。これにより、組付け時の初動から、シール材19が小便器1に当たって潰れて広がり、シール材19が排水流路18に入ることがない。
そのため、第一壁部17とシール材19との位置関係を、施工者が目視で確認することが必要なくなるため、施工者が特段配慮した作業をすることなく、正確に第一排水口11と排水ソケット13を組み付けることが可能である。
【0030】
図6、乃至、図8に示してあるように、第一壁部17は円筒部14とリブ16を備えており、円筒部14は排水流路18を一部形成し、リブ16は円筒部14の小便器1側の端に、円筒部14を囲むように外側に突出して形成されている。
小便器1と第一壁部17が衝突する前は、図6のような関係になっており、シール材19より小便器1側にリブ16がある。小便器1が図6の状態よりスイングすると小便器1の突出部22にリブ16が衝突し、第一壁部17が小便器1の押し付けに伴い、押しつけ方向に可動する。
第一壁部17が可動するとともに、シール材19は小便器1の裏面とリブ16の壁面W側の面により、小便器1の押し付け方向に潰れると同時に、第一壁部17と排水ソケット13から延出している第二壁部15で囲まれた、シール材格納部20内でシール材19の充填率が高まっていく。ある程度、小便器1の押し付けが完了すると図7のようになり、シール材格納部20内がシール材19で満たされているようすが分かる。リブ16の小便器1の間においても、シール材19が充填されているが、第一壁部17は小便器1の突出部22とリブ16が当接したまま可動することにより、排水流路18へシール材19がはみ出ない。
図7よりさらに小便器1の押し付けが進み、第一壁部17の可動が収束し、小便器1と排水ソケット13が組み上がったようすが図8である。図7の際にシール格納部20にシール材19が充填されきっているため、小便器1のさらなる押し付けにより力を受けたシール材19の一部が第二壁部15を乗り越えるよう外側にはみ出る。また、図7の状態から図8の状態になる過程においても、小便器1の突出部22とリブ16が当接したまま可動するため、図8に示されているとおり、組付け後も排水流路18へシール材19がはみ出ない。
上述した、小便器1の突出部22と排水ソケット13の第一壁部17の衝突前から組上がりまでの中で、第二壁部15は排水ソケット13に固定されており、排水ソケット13との位置関係が変わらないため、潰し力や潰し方向の変化の影響がシール材を潰しすぎる方へ働いたとしても、第一壁部17と第二壁部15が可動しすぎてしまってシール格納部20の容積空間を維持できないということはなく、シール材を適正な位置に留めておくことが可能であり、施工者が慎重な施工をしなくても、壁部Wが必要以上可動しないため、シール材が適正な位置からずれてしまうことがないことが分かる。
また、第二壁部15が予め決められた長さで固定されるよう作成することにより、実用性のある壁部をコストがかからず作成することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 小便器
5 吐水部
7 ボウル部
9 排水路
11 第一排水口
13 排水ソケット
14 円筒部
15 第二壁部(組付けバラツキ吸収手段)
16 リブ
17 第一壁部(組付けバラツキ吸収手段)
18 排水流路
19 シール材
20 シール材格納部(組付けバラツキ吸収手段)
21 フック
22 突出部
23、24 回転支持部材
25 第二排水口
W 壁面
F 床面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8