(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】シューズ
(51)【国際特許分類】
A43B 23/02 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
A43B23/02 102
(21)【出願番号】P 2023191868
(22)【出願日】2023-10-24
【審査請求日】2023-10-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515244900
【氏名又は名称】広田 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】広田 貴彦
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-006577(JP,A)
【文献】特開2006-212134(JP,A)
【文献】特許第6233764(JP,B1)
【文献】実公昭31-007650(JP,Y1)
【文献】実公昭61-003363(JP,Y2)
【文献】米国特許第7802381(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0053432(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0177262(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 1/00- 23/30
A43C 1/00- 19/00
A43D 1/00-999/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッドソールと、前記ミッドソールの上に設けられ前記ミッドソールとの間に足指を収納する内部空間を形成するアッパーと、を備えるシューズであって、
前記アッパーは、
前記ミッドソールに固定されたアッパー本体と、
前記アッパー本体の前記足指側の端部に連結され、前記連結された部分を中心に前記アッパー本体に近接するように自在に回転する可動爪先部と、
前記アッパー本体の側に設けられた第1連結部と、
前記第1連結部に対応して前記可動爪先部の内表面の上にのみ設けられた第2連結部と、を有し、
前記可動爪先部の回転によって前記内部空間の爪先側の領域が開放され
、前記第1連結部と前記第2連結部とが
連結部材を介して連結すること
、又は、それぞれ互いに対応する固定具である前記第1連結部と前記第2連結部とが直接連結することによって
、回転した前記可動爪先部を前記アッパー本体の側に固定して、前記爪先側の領域の開放状態を保持する、
シューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、可動爪先部とアッパー本体とを連結させることによって、内部空間の開放状態の保持及び解除を切り替え可能なシューズが開示されている。具体的には、特許文献1では、可動爪先部の外表面に設けられた固定部(固定装置)と、アッパー本体の外表面に設けられた固定部とを連結させることによって、内部空間の開放状態が保持される。また、固定部同士を分離することによって、開放状態が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、内部空間が閉じられた通常状態において、可動爪先部の外表面に固定部が露出するので、可動爪先部の美観が低下し易い。
【0005】
本開示は、上記した問題に着目して為されたものであって、内部空間の開放状態の保持及び解除を切り替え可能なシューズにおいて、美観の低下を抑制できると共に製造負担を抑制できる、新規なシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るシューズは、ミッドソールと、前記ミッドソールの上に設けられ前記ミッドソールとの間に足指を収納する内部空間を形成するアッパーと、を備えるシューズであって、前記アッパーは、前記ミッドソールに固定されたアッパー本体と、前記アッパー本体の前記足指側の端部に連結され、前記連結された部分を中心に前記アッパー本体に近接するように自在に回転する可動爪先部と、前記アッパー本体の側に設けられた第1連結部と、前記第1連結部に対応して前記可動爪先部の内表面の上にのみ設けられた第2連結部と、を有し、前記可動爪先部の回転によって前記内部空間の爪先側の領域が開放され、回転した前記可動爪先部を、前記第1連結部と前記第2連結部とが連結することによって前記アッパー本体の側に固定して、前記爪先側の領域の開放状態を保持する。
【0007】
本開示の一態様に係るシューズによれば、第2連結部が、可動爪先部の内表面の上にのみ設けられる。すなわち、内部空間が閉じられた通常状態において、可動爪先部の外表面には第2連結部は、露出しない。また、第2連結部を可動爪先部の内表面の上にのみ設ければ済むので、製造負担を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係るシューズによれば、内部空間の開放状態の保持及び解除を切り替え可能なシューズにおいて、美観の低下を抑制できると共に製造負担を抑制できる、新規なシューズを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るシューズの構成の概略を内部空間が閉鎖された状態で模式的に説明する斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るシューズの先端を内部空間が閉鎖された状態で部分的に拡大して説明する断面図である。
【
図3】本実施形態に係るシューズの先端の内部空間が開放され、かつ、第1連結部と第2連結部とが連結されていない状態を部分的に拡大して説明する断面図である。
【
図4】本実施形態に係るシューズの先端の内部空間が開放され、かつ、第1連結部と第2連結部とが連結された状態を部分的に拡大して説明する断面図である。
【
図5】本実施形態に係るシューズの構成の概略を内部空間が開放された状態で模式的に説明する斜視図である。
【
図6】第1変形例に係るシューズの先端の内部空間が開放され、かつ、第1連結部と第2連結部とが連結された状態を部分的に拡大して説明する断面図である。
【
図7】第2変形例に係るシューズの先端の内部空間が開放され、かつ、第1連結部と第2連結部とが連結された状態を部分的に拡大して説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を図面を参照しつつ説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各装置や各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、各装置や各部材の個数は、特に言及されない限り、1つに限定されず、複数であってよい。
【0011】
また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本開示の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
【0012】
<本実施形態に係るシューズの構造>
まず、本実施形態に係るシューズを、
図1~
図5を参照しつつ説明する。通常、シューズは、右足側及び左足側の一対で構成されている。右足側及び左足側のシューズは互いに対称的な構造を有するため、以下の説明においては右足側のシューズを単に「シューズ」と称して例示的に説明し、左足側についての重複説明を省略する。
図1中の右足側のシューズでは、ファスナー9が設けられた下側に、右足の親指が位置する。
【0013】
本実施形態に係るシューズは、例えば、
図1に示すように、ミッドソール1と、ミッドソール1の上に設けられミッドソール1との間に足指を収納する内部空間を形成するアッパー(2a,2b)と、を備える歩行用シューズである。
図1中では、前側FRと後側RRとの間を延びる双方向矢印によって、シューズの前後方向(
図2中の左右方向)が例示されている。
【0014】
(アッパー)
アッパー(2a,2b)のアッパー本体2a及び可動爪先部2bは、例えば、牛革、豚革等の柔軟性を有する天然皮革の布地素材で作製できる。また、アッパーの素材は、天然皮革の他に、人口皮革やダブルラッセル等であってもよい。アッパー(2a,2b)の厚みは、適宜設定できる。
【0015】
アッパー(2a,2b)は、ミッドソール1に固定されたアッパー本体2aと、端部においてアッパー本体2aの足指側の端部に連結され、連結された部分を中心にアッパー本体2aに近接するように自在に回転する可動爪先部2bとを備える。
【0016】
(アッパー本体)
アッパー本体2aには、複数の紐孔12が形成される。
図1中には、紐孔12に靴紐13が通された状態が例示されている。本実施形態では、アッパー本体2aの表面上で最も前側FRに位置する靴紐13よりも後側RR側に第1連結部2a1が配置される。このため、外観上、第1連結部2a1が見立ち難く、結果、シューズ全体の美観の低下を抑制できる。第1連結部2a1については後で具体的に説明する。
【0017】
(可動爪先部)
可動爪先部2bは足指の親指側である内側、5本の足指の先端、足指の小指側である外側及び5本の足指の上部を一体的に包んで覆う。可動爪先部2bの外観は、一般的なシューズのアッパーの爪先部分とほぼ同じである。可動爪先部2bは、
図1中の破線状の仮想線で示す折り曲げ位置Vでアッパー本体2aと連結されているが、下側のミッドソール1側とは着脱自在に取り付けられている。
【0018】
図2に示すように、シューズの内部空間でミッドソール1の上面上には、足底への衝撃を緩衝するインソール11が配置されている。なお、インソール11は、ミッドソール1に着脱自在に設けられてもよい。ミッドソール1の下には、トレッドパターンを有するアウトソール6が設けられている。詳細なトレッドパターンの図示は省略する。ミッドソール1は、例えば、天然ゴムやプラスチック等を含むゴム材料等で作製でき、シューズの靴底本体をなす。
【0019】
(開閉機構)
可動爪先部2bがミッドソール1と着脱自在であることにより、可動爪先部2b及びミッドソール1間に、足指を包む内部空間を部分的に開閉する開閉機構が設けられている。開閉機構により、内部空間が閉鎖される状態と開放される状態とが切り換えられる。内部空間は、
図2に示すように、可動爪先部2bの位置がミッドソール1上の先端でアッパー本体2aと外表面同士を揃えて固定されることにより閉鎖される。
【0020】
また、内部空間は、可動爪先部2bがミッドソール1から分離するようにアッパー本体2aの外表面側に向かって回転することにより開放される。本実施形態では、開閉機構にスライドファスナーが使用され、スライドファスナーは、アッパー(2a,2b)の先端に露出するように取り付けられている。
【0021】
図2に示すように、スライドファスナーは帯状の下側テープ7aと、下側テープ7aの上端に帯の延びる方向に沿って並設された複数のエレメント(務歯)からなる下側エレメント群8aとを備える。またスライドファスナーは、下側テープ7aの上に設けられた帯状の上側テープ7bと、上側テープ7bの下端に、複数のエレメントが下側エレメント群8aと噛み合うように揃えて並設された上側エレメント群8bとを備える。
【0022】
スライドファスナーには、
図1に示したように、上側エレメント群8b及び下側エレメント群8aの頭部同士を自在に離合させるスライダー9と、スライダー9に設けられた引手10とが設けられている。スライドファスナーは、親指の付け根から5本の足指の先端側を経由して小指の付け根に至る領域に亘って設けられ、開閉領域を形成する。スライドファスナーの開口部は、ほぼ水平に延びる。
【0023】
次に、本実施形態の連結構造を構成する第1連結部2a1、第2連結部2b1及び連結部材5について具体的に説明する。
【0024】
(第1連結部)
図2に示すように、本実施形態では、第1連結部2a1は、アッパー本体2aの表面の上に設けられた第1固定具3aである。第1固定具3aのホックは、縫い付けや接着等によって、アッパー本体2aの表面の上に取り付けられる。本実施形態では、第1固定具3aは、ホックであるが、本開示ではこれに限定されず、例えば第1固定具3aは、マジックテープや磁石等の他の固定用の部材であってよい。
【0025】
(第2連結部)
図2に示すように、第2連結部2b1は、第1連結部2a1に対応して可動爪先部2bの内表面の上にのみ設けられる。本実施形態では、第2連結部2b1は、可動爪先部2bの内表面の一部の部分によって構成される。なお、本開示では、第2連結部2b1は、可動爪先部2bとは異なる部材によって構成されてもよい。
【0026】
(連結部材)
連結部材5は、アッパー本体2aと可動爪先部2bとの間を前後方向(
図2中の左右方向)に沿って延びる。本実施形態では、皮革製で帯状の連結部材5(
図5参照)が例示されているが、本開示では連結部材の形状及び素材は、アッパー本体2aと可動爪先部2bとの間を延びる部材であれば、例えば紐状、板状、棒状等、任意である。ただし、帯状の連結部材5は、引っ張り強度の確保や取り扱いが容易である点で好ましい。
【0027】
連結部材5は、中央部5aと、前端部5bと、後端部5cとを有する。連結部材5の
図2中の左側の前端部5bは、縫い付けや接着等によって第2連結部2b1と連結する。連結部材5の
図2中の右側の後端部5cには、第2固定具3bが設けられる。本実施形態では、第2固定具3bは、第1固定具3aのホックに対応するホックである。なお、本開示ではこれに限定されず、例えば第2固定具3bは、第1固定具3aに対応するマジックテープや磁石等の他の固定用の部材であってよい。
【0028】
本実施形態では、連結部材5の後端部5cが前端部5bを中心として回転可能であるように、前端部5bが、第2連結部2b1に固定される。連結部材5の後端部5cの第2固定具3bは、内部空間の爪先側の領域が開放された状態で、第1連結部2a1と連結する。連結によって、爪先側の領域が開放された状態が保持される。
【0029】
本実施形態では、アッパー本体2aと可動爪先部2bとの間を延びる連結部材5が設けられる場合が例示されたが、本開示では、連結部材は、必須ではない。例えば、可動爪先部2bを2回折り曲げて対向させることによって、連結部材5を用いることなく、アッパー本体2aと可動爪先部2bとを直接連結してもよい。ただし、連結部材5が設けられることによって、アッパー2を1回折り曲げれば済むので、アッパー2を2回折り曲げる必要がない分、アッパー本体2aと可動爪先部2bとの間を容易に連結できる。
【0030】
(押さえ部)
本実施形態では、可動爪先部2bの内表面の上に、押さえ部4が設けられる。押さえ部4は、例えば、帯状の皮革部材で構成できる。
図5に示すように、押さえ部4では、左右方向の両端が内表面に固定されると共に中央部分が内表面に固定されないことによって、中央部分において可動爪先部2bの内表面と押さえ部4との間に空隙4aが形成される。なお、左右方向は、前後方向に対して水平面内で直交する。
【0031】
図2に示すように、形成された空隙4aには、連結部材5の後端部5cの側の部分を第2固定具3bと共に収納できる。押さえ部4によって、通常時、連結部材5の後端部5cの側の部分が内部空間で足指に接触することを抑制できる。なお、本開示では、押さえ部は必須ではない。
【0032】
(連結構造の他の形態)
本実施形態では、第1連結部2a1が設けられる位置が、アッパー本体2aの表面の上である場合が例示された。しかし、本開示ではこれに限定されず、例えば、第1連結部2a1が設けられる位置は、アッパー本体2aの表面の上に限定されず、アッパー本体2aの側に適宜設定できる。
【0033】
具体的には例えば、アッパー本体2aにおいて靴紐13が、第1連結部として用いられてもよい。連結部材5の一端が第1連結部としての靴紐13に引っ掛けられることによって、連結部材5と第1連結部とを連結できる。
【0034】
また、アッパー本体2aにおいて足指が差し込まれる開口部の足首側の縁2cの部分(
図1参照)が、第1連結部として用いられてもよい。例えば、連結部材5の一端が第1連結部としての開口部の足首側の縁2cの部分に引っ掛けられることによって、連結部材5と第1連結部とを連結できる。
【0035】
<シューズの使用方法>
図1及び
図2に示したアッパー(2a,2b)の先端を開放する場合、使用者は、まず、スライドファスナーの引手10を介してスライダー9を親指側から小指側に移動させ、上側エレメント群8b及び下側エレメント群8aを分離する。
【0036】
そして、
図3に示すように、使用者は、アッパー(2a,2b)の可動爪先部2bをアッパー本体2aに向かって回転させて折り曲げ位置Vで折り曲げることによって、内部空間を開放する。
図3中では、可動爪先部2bがめくれることによって、可動爪先部2bの内表面上の第2連結部2b1の連結部材5が外側に露出した状態が例示されている。
【0037】
折り曲げによって、可動爪先部2b側の外表面とアッパー本体2a側の外表面とが近接して対向する。そして、
図4に示すように、使用者は、押さえ部4の空隙4aから連結部材5の後端部5cを抜き出す。そして、使用者は、抜き出された連結部材5の後端部5cを例えば手指で摘まんで抜き出す。
【0038】
そして、使用者は、連結部材5の後端部5cを前端部5aを中心としてアッパー本体2a側の第1連結部2a1側に向かって回転させつつ、可動爪先部2bを第1連結部2a1の側に向かって引き上げる。結果、可動爪先部2bの第2連結部2b1の連結部材5の後端部5cの第2固定具3bと、アッパー本体2a側の第1連結部2a1の第1固定具3aとが互いに近接する。
【0039】
次に、
図4に示すように、使用者は、可動爪先部2bの連結部材5の第2固定部3bと、アッパー本体2a側の第1固定部3aとを連結する。第1固定部3aと第2固定部3bとが連結されることにより、折り曲げられた可動爪先部2b及びアッパー本体2aのそれぞれの外表面同士が近接位置で対向すると共に、可動爪先部2bがアッパー本体2aの側に固定される。このため、内部空間の開放状態が保持される。
【0040】
図5中には、連結部材5によってアッパー本体2aと可動爪先部2bとが連結された状態場合が例示されている。シューズの内部空間が開放されることにより、5本の足指の上面が開口部に露出する。
【0041】
一方、内部空間の爪先側の領域を閉鎖する場合、使用者は、可動爪先部2bの連結部材5の第2固定部3bを第1固定部3aから分離させる。そして、使用者は、連結部材5部材を用いて可動爪先部2bをシューズの先端側に向かって回転させる。
【0042】
そして、使用者は、アッパー本体2aへの可動爪先部2bの固定を解除し、可動爪先部2bを元の位置に復元して、上側エレメント群8a及び下側エレメント群8bを重ね合わせる。そして、スライドファスナーの引手10を介してスライダー9を移動させることにより、上側エレメント群8a及び下側エレメント群8bを噛み合わせて結合させれば、内部空間は閉鎖される。
【0043】
(作用効果)
本実施形態に係るシューズによれば、第2連結部2b1が、可動爪先部2bの内表面の上にのみ設けられる。すなわち、内部空間が閉じられた通常状態において、可動爪先部2bの外表面には第2連結部2b1は、露出しない。
【0044】
また、第2連結部2b1を可動爪先部2bの内表面の上にのみ設ければ済むので、例えば、連結部として機能する磁石のような部材が予め設定された位置に固定された状態で、アッパー2の外表面と内表面とを貼り合わせる必要がない。このため、アッパー2の外表面と内表面とを貼り合わせる場合に比べ、製造負担を抑制できる。よって、可動爪先部2bの美観の低下を抑制できると共に製造負担を抑制できる、新規なシューズを提供できる。
【0045】
また、本実施形態では、連結部材5を介して第1連結部2a1と第2連結部2b1とが連結される。このため、第1連結部2a1と第2連結部2b1とを連結する際、互いの接近のために第1連結部2a1又は第2連結部2b1を引っ張る距離を、連結部材5を用いない場合に比べて短くできる。結果、第1連結部2a1と第2連結部2b1との連結作業の負担を低減できる。
【0046】
(第1変形例)
本実施形態では、連結部材5の後端部5cが前端部5bを中心として回転可能であるように、前端部5bが第2連結部2b1に固定された場合が例示されたが、本開示では、連結構造は、これに限定されない。
図6中に例示された第1変形例では、連結部材5の前端部5bが後端部5cを中心として回転可能であるように、後端部5cが第1連結部2a1に固定される場合が例示されている。
【0047】
また、本実施形態では、第1連結部2a1が第1固定具3aである場合、すなわち、第1連結部2a1がアッパー本体2aとは別部材の固定装置である場合が例示された。しかし、本開示ではこれに限定されない。例えば、第1連結部は、アッパー本体2aを構成する部材そのものであってもよい。第1変形例では、アッパー本体2aにおいて連結部材5の後端部5cが固定される部分が第1連結部2a1を構成する場合が例示されている。
【0048】
連結部材5の後端部5cは、縫い付けや接着等によってアッパー本体2aに固定される。
図6中には、後端部5cとアッパー本体2aとの内側に破線状に描かれた糸14によって、後端部5cがアッパー本体2aに縫い付けられた場合が例示されている。また、連結部材5の前端部5bには、前フック部5dが設けられる。前フック部5dは、例えば、樹脂や金属等によって作製できる。
【0049】
また、第1変形例では、可動爪先部2bの内表面の上に、留め部16が設けられる。留め部16は、前フック部5dが可動爪先部2bに対して着脱自在に取り付けられる部材である。留め部16は、例えば
図5中の収納部4と同様に構成できる。
【0050】
第1変形例では、留め部16の左右方向の中央に形成された空隙16aを用いて、留め部16の前側FRの部分に、前フック部5dの内側の凹部を取り付け可能である。なお、本開示では、前フック部5dが可動爪先部2bに対して着脱自在に取り付けられる限り、前フック部と留め部16とについては、任意の素材や形状を採用できる。第1変形例における他の部材については、本実施形態における同名の部材と同様であるため、重複説明を省略する。
【0051】
(作用効果)
第1変形例では、本実施形態と同様に、可動爪先部2bの美観の低下を抑制できると共に製造負担を抑制できる。また、第1変形例では、連結部材5が可動爪先部2bの内表面の上に配置されない分、内部空間が閉じられた通常状態において、連結部材5が足指に接触することを抑制できる。このため、使用時の負担が低減する。第1変形例の他の作用効果は、本実施形態と同様である。
【0052】
(第2変形例)
本実施形態では、連結部材5の後端部5cが前端部5bを中心として回転可能であるように、前端部5bが第2連結部2b1に固定された場合が例示された。また、第1変形例では、連結部材5の前端部5bが後端部5cを中心として回転可能であるように、後端部5cが第1連結部2a1に固定される場合が例示された。しかし、本開示では、連結部材5の前端部5bと後端部5cとのうち一方がアッパー2に固定されることは必須ではない。
図7中に例示された第2変形例では、連結部材5の前端部5bと後端部5cとの両方が、アッパー2に対して着脱自在である。
【0053】
具体的には、
図7に示すように、第2変形例では、アッパー本体2aに形成された切り欠き17が第1連結部2a1を構成する。切り欠き17には、連結部材5の後端部5cに設けられた後フック部5eが、アッパー本体2aに対して着脱自在に取り付けられる。なお、本開示では、第1連結部は切り欠きに限定されず、例えば開口部や凹部等であってもよい。また、後フック部5eは、例えば
図6中の前フック部5dと同様に構成できる。第2変形例における他の部材については、本実施形態又は第1変形例における同名の部材と同様であるため、重複説明を省略する。
【0054】
(作用効果)
第2変形例では、本実施形態と同様に、可動爪先部2bの美観の低下を抑制できると共に製造負担を抑制できる。また、第2変形例では、連結部材5の前端部5bと後端部5cとの両方がアッパー2に対して着脱自在であるので、内部空間が閉じられた通常状態において、アッパー2の外表面の上に連結部材5が配置されない。すなわち、通常状態において、連結部材5が看取されることがない。このため、通常状態におけるアッパー2の美観の低下を一層抑制できる。第2変形例の他の作用効果は、本実施形態又は第1変形例と同様である。
【0055】
<その他の実施形態>
本開示は上記の開示した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本開示を限定するものであると理解すべきではない。本開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。
【0056】
例えば、本実施形態では、スライドファスナーの開閉機構により可動爪先部2bがミッドソール1に固定され内部空間が閉鎖される状態と、可動爪先部2bがミッドソール1から分離され内部空間が開放される状態とが切り換えられた。しかし可動爪先部2bがアッパー本体2aに対して回転可能に連結されている限り、開閉機構は必須ではない。換言すると、開口部を閉鎖するための構造がなくても、例えば、開口部としての切り欠き等が存在するだけであっても本開示は実施できる。
【0057】
また、可動爪先部2bは、5本の足指の左右の側方だけでなく、更に先端及び上側の領域も覆っていたが、先端及び上側の領域の遮蔽を必須とするものではない。少なくとも左右いずれか一方の側方が開閉自在に遮蔽されていればよい。
【0058】
また、本実施形態では、可動爪先部2bの回転は、1枚のアッパー(2a,2b)が折り曲げられることで実現されていたが、本開示ではこれに限定されない。例えば蝶番のような金属製部材や、柔軟性を有する他の皮革部材等を連結具として用意し、連結具をそれぞれ別々の部材からなるアッパー本体及び可動爪先部間に介在させて、両者を開閉自在に連結することもできる。
【0059】
また、本開示に係るシューズは、歩行用シューズに限定されることなく、他の用途、例えばランニングシューズや登山用シューズ等、他の各種用途で使用される靴に適用することもできる。また、使用者の性別にも限定されず、男性用及び女性用のいずれにも適用できる。
【0060】
また、
図1~
図7中に示したそれぞれのシューズに含まれる構成を部分的に組み合わせて本開示を構成することもできる。本開示は、上記に記載していない様々な実施形態等を含むとともに、本開示の技術的範囲は、上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 ミッドソール
2a アッパー本体
2a1 第1連結部
2b 可動爪先部
2b1 第2連結部
2c 縁
3a 第1固定具
3b 第2固定具
4 押さえ部
4a 空隙
5 連結部材
5a 中央部
5b 前端部
5c 後端部
5d 前フック部
5e 後フック部
6 アウトソール
7a 下側テープ
7b 上側テープ
8a 下側エレメント群
8b 上側エレメント群
9 スライダー
10 引手
11 インソール
12 紐孔
13 靴紐
14 糸
16 留め部
16a 空隙
17 切り欠き
FR 前側
RR 後側
V 折り曲げ位置
【要約】
【課題】 内部空間の開放状態を保持可能なシューズにおいて、美観の低下を抑制できると共に製造負担を抑制できる、新規なシューズを提供できる。
【解決手段】 シューズは、ミッドソール1と、ミッドソール1との間に足指を収納する内部空間を形成するアッパー(2a,2b)と、を備えるシューズであって、アッパー(2a,2b)は、ミッドソール1に固定されたアッパー本体2aと、アッパー本体2aの足指側の端部に連結され、連結された部分を中心にアッパー本体2aに近接するように自在に回転する可動爪先部2bと、アッパー本体2aの側に設けられた第1連結部2a1と、第1連結部2a1に対応して可動爪先部2bの内表面の上にのみ設けられた第2連結部2b1と、を有し、可動爪先部2bの回転によって内部空間の爪先側の領域が開放され、回転した可動爪先部2bを、第1連結部2a1と第2連結部2b1とが連結することによってアッパー本体2aの側に固定する。
【選択図】
図5