(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】コンクリート材料打設用型枠
(51)【国際特許分類】
E04G 9/05 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
E04G9/05
(21)【出願番号】P 2020007279
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 信也
(72)【発明者】
【氏名】奈須野 恭伸
(72)【発明者】
【氏名】藤野 賢一
(72)【発明者】
【氏名】岡山 誠
(72)【発明者】
【氏名】酒井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】小島 篤史
(72)【発明者】
【氏名】林 英俊
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0157636(US,A1)
【文献】特開平11-324317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0017783(US,A1)
【文献】特開2007-285030(JP,A)
【文献】特開2020-002768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00- 9/06
E04G 11/08-11/18
E04G 17/00-17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート材料打設領域を定めるように用いられるコンクリート材料打設用型枠であって、
前記コンクリート材料打設領域に面する前面と、前記前面とは反対側の背面と、前記前面と前記背面とを接続する側面と、を有するパネル部材と、
前記パネル部材を保持する保持部材と、を有する型枠ユニットを備え、
前記保持部材は、
前記パネル部材の前記背面に対向して設けられ、前記パネル部材を支持する支持部と、
前記支持部から前記パネル部材の前記側面に沿って突出して設けられ、前記側面を囲う縁部と、を有し、
前記支持部は、前記パネル部材の前記背面に沿って延在する基部と、前記基部から前記パネル部材とは反対側に突出して設けられ中空に形成される複数の凸部と、を有し、
前記凸部の頂部には、前記パネル部材の前記背面と交差する方向に貫通して形成された第1貫通孔が設けられる、
前記型枠ユニットを並設したコンクリート材料打設用型枠。
【請求項2】
コンクリート材料打設領域を定めるように用いられるコンクリート材料打設用型枠であって、
前記コンクリート材料打設領域に面する前面と、前記前面とは反対側の背面と、前記前面と前記背面とを接続する側面と、を有するパネル部材と、
前記パネル部材を保持する保持部材と、を有する型枠ユニットを備え、
前記保持部材は、
前記パネル部材の前記背面に対向して設けられ、前記パネル部材を支持する支持部と、
前記支持部から前記パネル部材の前記側面に沿って突出して設けられ、前記側面を囲う縁部と、を有し、
前記支持部は、前記パネル部材の前記背面に沿って延在する基部と、前記基部から前記パネル部材とは反対側に突出して設けられ中空に形成される複数の凸部と、を有し、
前記支持部は、
前記凸部の側壁に前記パネル部材の前記背面に沿う方向に貫通して形成された第2貫通孔と、
前記第2貫通孔の周縁と前記凸部の頂部との間に渡って設けられ前記側壁を補強する側壁リブと、を更に有する、
前記型枠ユニットを並設したコンクリート材料打設用型枠。
【請求項3】
コンクリート材料打設領域を定めるように用いられるコンクリート材料打設用型枠であって、
前記コンクリート材料打設領域に面する前面と、前記前面とは反対側の背面と、前記前面と前記背面とを接続する側面と、を有するパネル部材と、
前記パネル部材を保持する保持部材と、を有する型枠ユニットを備え、
前記保持部材は、
前記パネル部材の前記背面に対向して設けられ、前記パネル部材を支持する支持部と、
前記支持部から前記パネル部材の前記側面に沿って突出して設けられ、前記側面を囲う縁部と、を有し、
前記支持部は、前記パネル部材の前記背面に沿って延在する基部と、前記基部から前記パネル部材とは反対側に突出して設けられ中空に形成される複数の凸部と、を有し、
前記支持部は、隣り合う前記凸部を互いに接続する接続リブを更に有する、
前記型枠ユニットを並設したコンクリート材料打設用型枠。
【請求項4】
前記接続リブは、前記基部から離れるにつれ肉厚が薄くなる、
請求項3に記載のコンクリート材料打設用型枠。
【請求項5】
コンクリート材料打設領域を定めるように用いられるコンクリート材料打設用型枠であって、
前記コンクリート材料打設領域に面する前面と、前記前面とは反対側の背面と、前記前面と前記背面とを接続する側面と、を有する
中空のパネル部材と、
前記パネル部材を保持する保持部材と、を有する型枠ユニットを備え、
前記保持部材は、
前記パネル部材の前記背面に対向して設けられ、前記パネル部材を支持する支持部と、
前記支持部から前記パネル部材の前記側面に沿って突出して設けられ、前記側面を囲う縁部と、を有し、
前記支持部は、前記パネル部材の前記背面に沿って延在する基部と、前記基部から前記パネル部材とは反対側に突出して設けられ中空に形成される複数の凸部と、を有し、
前記保持部材は、前記縁部に設けられ前記パネル部材と着脱可能に係合する係合部を更に有し、
前記係合部は、前記縁部から内側に突出しており、前記パネル部材の前記側面に差し込まれる、
前記型枠ユニットを並設したコンクリート材料打設用型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート材料を打設する際に用いられるコンクリート材料打設用型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造体を構築する際には、型枠を用いてコンクリート材料打設領域を定め、コンクリート材料打設領域にコンクリート材料を打設する。コンクリート材料の硬化後は、型枠は解体され、コンクリート構造体から分離される。
【0003】
型枠は打設されたコンクリート材料の圧力を受けるため、強度が要求される。特許文献1には、パネル部材を背面側から補強材によって補強した型枠が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された型枠では、パネル部材が変形又は破損してコンクリート構造体の形状等の品質が低下したり、打設されたコンクリート材料の温度を保ちながらコンクリート材料を硬化させることができずコンクリート構造体の強度等の品質が低下したりするおそれがある。
【0006】
本発明は、コンクリート構造体の品質を高めることができるコンクリート材料打設用型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンクリート材料打設領域を定めるように用いられるコンクリート材料打設用型枠であって、コンクリート材料打設領域に面する前面と、前面とは反対側の背面と、前面と背面とを接続する側面と、を有するパネル部材と、パネル部材を保持する保持部材と、を有する型枠ユニットを備え、保持部材は、パネル部材の背面に対向して設けられ、パネル部材を支持する支持部と、支持部からパネル部材の側面に沿って突出して設けられ、側面を囲う縁部と、を有し、支持部は、パネル部材の背面に沿って延在する基部と、基部からパネル部材とは反対側に突出して設けられ中空に形成される複数の凸部と、を有し、凸部の頂部には、パネル部材の背面と交差する方向に貫通して形成された第1貫通孔が設けられ、型枠ユニットが並設されている。
また、本発明は、コンクリート材料打設領域を定めるように用いられるコンクリート材料打設用型枠であって、コンクリート材料打設領域に面する前面と、前面とは反対側の背面と、前面と背面とを接続する側面と、を有するパネル部材と、パネル部材を保持する保持部材と、を有する型枠ユニットを備え、保持部材は、パネル部材の背面に対向して設けられ、パネル部材を支持する支持部と、支持部からパネル部材の側面に沿って突出して設けられ、側面を囲う縁部と、を有し、支持部は、パネル部材の背面に沿って延在する基部と、基部からパネル部材とは反対側に突出して設けられ中空に形成される複数の凸部と、を有し、支持部は、凸部の側壁にパネル部材の背面に沿う方向に貫通して形成された第2貫通孔と、第2貫通孔の周縁と凸部の頂部との間に渡って設けられ側壁を補強する側壁リブと、を更に有し、型枠ユニットが並設されている。
また、本発明は、コンクリート材料打設領域を定めるように用いられるコンクリート材料打設用型枠であって、コンクリート材料打設領域に面する前面と、前面とは反対側の背面と、前面と背面とを接続する側面と、を有するパネル部材と、パネル部材を保持する保持部材と、を有する型枠ユニットを備え、保持部材は、パネル部材の背面に対向して設けられ、パネル部材を支持する支持部と、支持部からパネル部材の側面に沿って突出して設けられ、側面を囲う縁部と、を有し、支持部は、パネル部材の背面に沿って延在する基部と、基部からパネル部材とは反対側に突出して設けられ中空に形成される複数の凸部と、を有し、支持部は、隣り合う凸部を互いに接続する接続リブを更に有し、型枠ユニットが並設されている。
また、本発明は、コンクリート材料打設領域を定めるように用いられるコンクリート材料打設用型枠であって、コンクリート材料打設領域に面する前面と、前面とは反対側の背面と、前面と背面とを接続する側面と、を有する中空のパネル部材と、パネル部材を保持する保持部材と、を有する型枠ユニットを備え、保持部材は、パネル部材の背面に対向して設けられ、パネル部材を支持する支持部と、支持部からパネル部材の側面に沿って突出して設けられ、側面を囲う縁部と、を有し、支持部は、パネル部材の背面に沿って延在する基部と、基部からパネル部材とは反対側に突出して設けられ中空に形成される複数の凸部と、を有し、保持部材は、縁部に設けられパネル部材と着脱可能に係合する係合部を更に有し、係合部は、縁部から内側に突出しており、パネル部材の側面に差し込まれ、型枠ユニットが並設されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンクリート構造体の品質を高めることができるコンクリート材料打設用型枠を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート材料打設用型枠を示し、(a)は、コンクリート材料打設用型枠をコンクリート材料打設領域側から見た正面図であり、(b)は、コンクリート材料打設用型枠を
図1(a)における矢印IBの方向に見た平面図であり、(c)は、コンクリート材料打設用型枠を
図1(a)における矢印ICの方向に見た側面図である。
【
図2】(a)は、
図1に示す型枠ユニットの斜視図であり、(b)は、型枠ユニットの分解斜視図である。
【
図3】型枠ユニットを並設し連結した状態を示す拡大断面図である。
【
図4】(a)は、保持部材の平面図であり、(b)は、保持部材の正面図であり、(c)は、保持部材の側面図であり、(d)は、保持部材の背面図である。
【
図5】(a)は、
図4(a)に示すVA-VA線に沿う断面図であり、(b)は、
図4(a)に示すVB-VB線に沿う断面図であり、(c)は、
図4(a)に示すVC-VC線に沿う断面図であり、(d)は、
図4(a)に示すVD-VD線に沿う断面図である。
【
図6】保持部材と横端太とを締結した状態を示す拡大断面図である。
【
図7】保持部材を重ねた状態を示す拡大断面図である。
【
図8】保持部材の製造に用いられる金型を説明するための図である。
【
図9】(a)は、本発明における実施形態の第1変形例に係る保持部材の背面図であり、(b)は、本発明における実施形態の第2変形例に係る保持部材の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係るコンクリート材料打設用型枠(単に「型枠」とも称する)1について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1(a)は、型枠1をコンクリート材料打設領域2側から見た正面図であり、
図1(b)は、型枠1を
図1(a)における矢印IBの方向に見た平面図であり、
図1(c)は、型枠1を
図1(a)における矢印ICの方向に見た側面図である。
【0013】
建築現場や工事現場においてコンクリート構造体を構築する際には、
図1に示すように、型枠1を用いてコンクリート材料打設領域2を定め、コンクリート材料打設領域2にコンクリート材料を打設する。型枠1は、複数の型枠ユニット100を横端太3に固定して型枠ユニット100を水平方向に並設すると共に横端太3を縦端太4に固定して型枠ユニット100を鉛直方向に並設することにより構築される。横端太3及び縦端太4は、例えばH型鋼である。コンクリート材料の硬化後は、型枠1は解体され、型枠ユニット100はコンクリート構造体から分離される。
【0014】
図1では、既設コンクリート構造体上にコンクリート材料打設領域2を定めるように型枠1を構築した例を示しているが、地盤上にコンクリート材料打設領域2を定めるように型枠1を構築してもよい。
【0015】
図2(a)は、型枠ユニット100の斜視図である。
図2(a)に示すように、型枠ユニット100は、パネル部材10と、パネル部材10を保持する保持部材20と、を備えている。型枠ユニット100を並設した状態では、保持部材20が横端太3(
図1参照)に締結される。パネル部材10は、保持部材20に着脱可能であり、
図2(b)は、パネル部材10を保持部材20から取り外した状態を示している。
【0016】
パネル部材10は、コンクリート材料打設領域2(
図1参照)に面する前面11と、前面11とは反対側の背面12と、前面11と背面12とを接続する側面13と、を有している。本実施形態では、パネル部材10は、略直方体状に形成されており、4つの側面13がパネル部材10に形成されている。
【0017】
以下において、前面11の長辺に沿う寸法及び方向を「長さ」及び「長さ方向」とそれぞれ称し、前面11の短辺に沿う寸法及び方向を「幅」及び「幅方向」とそれぞれ称する。
【0018】
コンクリート構造体の表面は、前面11に対応した形状で形成される。例えば、前面11が平らであるパネル部材10を用いた場合には、コンクリート構造体の表面は平らに形成される。前面11に凹凸が形成されたパネル部材10を用いた場合には、コンクリート構造体の表面に凹凸が形成される。型枠ユニット100では、パネル部材10が保持部材20に着脱可能であるため、パネル部材10の交換より、コンクリート構造体の表面の形状を変更することができる。また、パネル部材10が保持部材20に着脱可能であるため、パネル部材10が損傷したときには、パネル部材10の交換のみで型枠ユニット100を使用することができる。
【0019】
パネル部材10の前面11は、第1スキン層により構成され、背面12は第2スキン層により構成される。第1スキン層と第2スキン層との間のコア層は、中空の六角柱形状のセルを複数並べたいわゆるハニカム構造を有している。第1スキン層、第2スキン層及びコア層は、例えばポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いて形成される。
【0020】
パネル部材10では、第1スキン層と第2スキン層との間のコア層がハニカム構造を有しているため、パネル部材10の内部には、空気層が形成される。したがって、パネル部材10の断熱性を高めることができる。これにより、打設されたコンクリート材料の温度を保ちながらコンクリート材料を硬化させることができ、コンクリート構造体の強度を高めることができる。
【0021】
また、第1スキン層と第2スキン層との間に設けられたハニカム構造により、パネル部材10を軽量化しつつ曲げ強度を高めることができる。したがって、型枠1の構築及び解体が容易になると共に、パネル部材10の変形を軽減することができ、コンクリート構造体の形状等の品質を高めることができる。
【0022】
第1スキン層と第2スキン層との間のコア層は、ハニカム構造に限られず、例えば、中間構造は円柱形状又は接頭円錐形状のセルを複数並べた構造であってもよい。また、パネル部材10として、公知のプラスチック製段ボールを用いてもよい。これらの場合においても、打設されたコンクリート材料の温度を保ちながらコンクリート材料を硬化させることができると共に、パネル部材10を軽量化しつつ曲げ強度を高めることができる。
【0023】
保持部材20は、パネル部材10を支持する支持部30と、支持部30からパネル部材10の側面13に沿って突出して設けられる縁部40と、を有している。保持部材20は、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を用いて射出成形により形成され、支持部30と縁部40とは一体化されている。保持部材20は、他の成形法によっても形成可能であり、例えばプレス成型により形成可能である。
【0024】
支持部30は、パネル部材10の背面12に対向して設けられる。そのため、パネル部材10は、コンクリート材料が打設されたときには支持部30に押付けられる。したがって、打設されたコンクリート材料の圧力よるパネル部材10の変形を軽減することができ、コンクリート構造体の形状等の品質を高めることができる。
【0025】
縁部40は、環状に形成され、パネル部材10の側面13を囲う。
【0026】
図3は、型枠ユニット100を並設し連結した状態を示す拡大断面図である。
図3に示すように、型枠ユニット100を並設した状態では、隣り合う型枠ユニット100の縁部40同士が隣接する。したがって、型枠1の構築時及び解体時にパネル部材10の側面13が別のパネル部材10の側面13に接触しないようにすることができ、パネル部材10の変形及び破損を軽減することができる。これにより、コンクリート構造体の形状等の品質を高めることができる。
【0027】
図2(b)に示すように、縁部40と支持部30とによって、略直方体状の窪みが形成されている。縁部40における内側の長さL2はパネル部材10の長さL1と略等しく、縁部40における内側の幅W2はパネル部材10の幅W1と略等しい。そのため、パネル部材10は、縁部40の内側に嵌合する。
【0028】
図2及び
図3に示すように、パネル部材10が保持部材20の支持部30に押付けられた状態では、縁部40は、パネル部材10の前面11と略面一になる。そのため、型枠ユニット100を並設してコンクリート材料を打設することによって形成されるコンクリート構造体の表面を平らにすることができる。
【0029】
縁部40には、内側に突出する爪(係合部)50が設けられる。爪50は、パネル部材10の側面13に差し込まれ、パネル部材10と係合する。そのため、パネル部材10の側面13が縁部40からはみ出ないようにすることができる。したがって、縁部40とパネル部材10との境界に形成される段差を小さくすることができ、コンクリート構造体の表面をより平らにすることができる。パネル部材10のコア層におけるセルの側壁は、第1スキン層及び第2スキン層よりも薄く形成されている。そのため、爪50は、コア層におけるセルの側壁を押して係合し易い。
【0030】
パネル部材10は、縁部40と支持部30とによって形成される窪みに押し込むことによって保持部材20に差し込まれる。爪50の表面は、パネル部材10を保持部材20に差し込む方向に対して傾斜している。そのため、パネル部材10を保持部材20に容易に差し込むことができる。
【0031】
パネル部材10に支持部30から離す方向の力を加えたときには、爪50はパネル部材10の側面13から外れ、パネル部材10と爪50との係合が解除される。つまり、爪50は、パネル部材10と着脱可能に係合する。
【0032】
支持部30には、縁部40とは反対側に突出する枠部31が設けられている。枠部31によって、支持部30の外郭31aが構成されている。
【0033】
縁部40は、支持部30の外郭31aに対してパネル部材10の側面13とは反対側に膨出する膨出面41を有している。型枠ユニット100が並設された状態では、隣り合う型枠ユニット100の膨出面41同士が接触する。そのため、隣り合う型枠ユニット100の支持部30は間隔を空けて対向し、隣り合う型枠ユニット100の縁部40の隙間の大きさは、縁部40の成形精度により定まる。したがって、縁部40の成形精度を高めるだけで隣り合う型枠ユニット100の縁部40の隙間を小さくすることができ、打設されたコンクリート材料が隣り合う型枠ユニット100の間に流入するのを低減することができる。
【0034】
支持部30の枠部31には、外郭31aに開口する孔32が形成されている。型枠ユニット100を並設した状態において、隣り合う型枠ユニット100の孔32にボルト5を挿入してボルト5にナット6を螺合することにより、隣り合う型枠ユニット100の保持部材20同士を締結することができる。隣り合う型枠ユニット100の支持部30の間にワッシャ7を挟むことにより、支持部30同士の間隔を調整することができる。
【0035】
図4(a)は、保持部材20の平面図であり、
図4(b)は、保持部材20の正面図であり、
図4(c)は、保持部材20の側面図であり、
図4(d)は、保持部材20の背面図である。
図5(a)は、
図4(a)に示すVA-VA線に沿う断面図であり、
図5(b)は、
図4(a)に示すVB-VB線に沿う断面図である。
図5(c)は、
図4(a)に示すVC-VC線に沿う断面図であり、
図5(d)は、
図4(a)に示すVD-VD線に沿う断面図である。なお、
図5では、パネル部材10を保持部材20に取付けた状態を示している。
【0036】
図4及び
図5に示すように、支持部30は、パネル部材10の背面12に沿って延在する平板状の基部33と、基部33からパネル部材10とは反対側に突出する複数の凸部34と、を有している。凸部34は、基部33に開口33aが形成されるように中空に形成されている。具体的には、
図5(b)及び
図5(d)に示すように、凸部34は、基部33における開口33aの周縁からパネル部材10とは反対側に延びる側壁34aと、側壁34aによって囲われた空間に面する頂部34bと、を有している。基部33の開口33aは、パネル部材10によって塞がれる。
【0037】
図4(d)では、凸部34の配置を明確にするために、凸部34の頂部34bにドット模様のハッチングを付している。
【0038】
型枠ユニット100では、凸部34が中空に形成されているため、凸部34の内部に空気層が形成される。したがって、保持部材20の断熱性を向上させることができる。これにより、打設されたコンクリート材料の温度を保ちながらコンクリート材料を硬化させることができ、コンクリート構造体の強度等の品質をより高めることができる。
【0039】
複数の凸部34は、長さ方向及び幅方向に並べられている。長さ方向に隣り合う凸部34は、長さ方向に延びる接続リブ35aを介して互いに接続されている。同様に、幅方向に隣り合う凸部34は、幅方向に延びる接続リブ35bを介して互いに接続されている。そのため、隣り合う凸部34の間が接続リブ35a,35bによって補強される。したがって、パネル部材10を強固に支持することができ、パネル部材10の変形を軽減することができる。これにより、コンクリート構造体の形状等の品質を高めることができる。
【0040】
凸部34の頂部34bには、パネル部材10の背面12と交差する方向に貫通して形成された第1貫通孔36が設けられる。第1貫通孔36には、パネル部材10を保持部材20から取り外すためのジグ(図示省略)を挿入可能である。保持部材20からパネル部材10を取り外すときには、ジグを第1貫通孔36に挿入してパネル部材10の背面12を押せばよい。したがって、パネル部材10を容易に取り外すことができる。また、パネル部材10の前面11にジグを当てなくてもよいため、前面11が損傷しないように保持部材20からパネル部材10を取り外すことができる。
【0041】
図6は、保持部材20と横端太3とを締結した状態を示す拡大断面図である。
図6に示すように、凸部34の側壁34aには、パネル部材10の背面12に沿う方向に貫通して形成された第2貫通孔37が設けられる。第2貫通孔37には、保持部材20と横端太3とを締結するためのL字形フック8を挿入可能である。L字形フック8は、一端が第2貫通孔37に挿入され、他端が横端太3に形成された孔(図示省略)に挿入される。L字形フック8の他端にナット9を螺合することにより、保持部材20が横端太3に締結される。
【0042】
第2貫通孔37は、パネル部材10を保持部材20に差し込む際の空気抜き孔としても機能する。凸部34の全てに第2貫通孔37を形成してもよい。
【0043】
凸部34の側壁34aには、第2貫通孔37の周縁と凸部34の頂部34bとの間に渡って側壁リブ38が設けられる。そのため、側壁34aは、側壁リブ38によって補強される。したがって、保持部材20と横端太3とを強固に締結することができる。また、側壁リブ38によって、第2貫通孔37が補強されている。
【0044】
図4に示すように、支持部30は、保持部材20におけるパネル部材10とは反対側の背部21を構成する。背部21は、外寸が縁部40の内寸よりも小さく形成される。具体的には、背部21の長さL3は、縁部40における内側の長さL2よりも小さく、背部21の幅W3は、縁部40における内側の幅W2よりも小さい。
【0045】
図7は、複数の保持部材20を重ねた状態を示す拡大断面図である。保持部材20の背部21の外寸が縁部40の内寸よりも小さいため、パネル部材10が取付けられていない複数の保持部材20を重ねた状態では、
図7に示すように、保持部材20の背部21が縁部40に入る。したがって、重ねられた保持部材20が崩れないようにすることができる。
【0046】
図8は、保持部材20の製造に用いられる金型60を説明するための図である。金型60は、上金型60a及び下金型60bを有している。上金型60aと下金型60bとによって画定される空間に熱可塑性樹脂が射出されると、保持部材20が成形される。熱可塑性樹脂の硬化後、上金型60aが固定された状態で、下金型60bを、保持部材20が付いた状態で離す方向(
図8に示す下向き白抜き矢印の方向)に移動する。その後、保持部材20を下金型60bから離す。これにより、保持部材20が金型60から取り外される。
【0047】
図8(a)に示すように、凸部34の側壁34aは、下金型60bに設けられた凹型61bと上金型60aに設けられた凸型61aとによって囲まれた空間に熱可塑性樹脂が流れて形成される。凹型61bは、開口部の寸法が底面の寸法より大きく、凸型61aは、根元の寸法が先端の寸法より大きい。そのため、下金型60bを上金型60aからスムーズに外すことができる。よって、凸部34における側壁34aの肉厚を、
図8に示す上下方向において均一にすることができる。
【0048】
また、凸部34の外寸は、基部33から離れるにつれ小さくなっている。そのため、下金型60bの凹型61bの内寸を、凹型61bの底部に向かうにつれ小さくすることができる。したがって、下金型60bの凹型61bから保持部材20の凸部34を容易に抜き出すことができる。
【0049】
図8(b)に示すように、保持部材20の接続リブ35a,35bは、下金型60bに設けられた凹型62bによって成形される。接続リブ35a,35bは、基部33から離れるにつれ肉厚が薄くなっている。そのため、下金型60bの凹型62bの内寸を、凹型62bの底部に向かうにつれ小さくすることができる。したがって、下金型60bの凹型62bから保持部材20の接続リブ35a,35bを容易に抜き出すことができる。
【0050】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0051】
縁部40は、パネル部材10の側面13を囲う。そのため、型枠ユニット100を並設した状態では、隣り合う型枠ユニット100の縁部40同士が隣接する。したがって、型枠1の構築時及び解体時にパネル部材10の側面13が別のパネル部材10の側面13に接触しないようにすることができ、パネル部材10の変形及び破損を軽減することができる。これにより、コンクリート構造体の形状等の品質を高めることができる。
【0052】
型枠ユニット100では、凸部34が中空に形成されている。そのため、凸部34の内部に空気層が形成される。したがって、保持部材20の断熱性を向上させることができる。これにより、打設されたコンクリート材料の温度を保ちながらコンクリート材料を硬化させることができ、コンクリート構造体の強度等の品質をより高めることができる。
【0053】
爪50は、縁部40に設けられパネル部材10と係合する。そのため、パネル部材10の側面13が縁部40からはみ出ないようにすることができる。したがって、縁部40とパネル部材10との境界に形成される段差を小さくすることができ、コンクリート構造体の表面をより平らにすることができる。
【0054】
縁部40は、支持部30の外郭31aに対してパネル部材10の側面13とは反対側に膨出する膨出面41を有している。型枠ユニット100が並設された状態では、隣り合う型枠ユニット100の膨出面41同士が接触する。そのため、隣り合う型枠ユニット100の支持部30は間隔を空けて対向し、隣り合う型枠ユニット100の縁部40の隙間の大きさは、縁部40の成形精度により定まる。したがって、縁部40の成形精度を高めるだけで隣り合う型枠ユニット100の縁部40の隙間を小さくすることができ、打設されたコンクリート材料が隣り合う型枠ユニット100の間に流入するのを低減することができる。
【0055】
保持部材20の背部21は、外寸が縁部40の内寸よりも小さく形成される。そのため、パネル部材10が取付けられていない複数の保持部材20を重ねた状態では、保持部材20の背部21が縁部40に入る。したがって、重ねられた保持部材20が崩れないようにすることができる。
【0056】
凸部34の頂部34bには、パネル部材10を保持部材20から取り外すためのジグを挿入可能な第1貫通孔36が形成される。そのため、ジグを第1貫通孔36に挿入してパネル部材10の背面12を押すことができる。したがって、パネル部材10を容易に取り外すことができると共に、パネル部材10の前面11にジグを当てなくてもよいため、前面11が損傷しないように保持部材20からパネル部材10を取り外すことができる。
【0057】
凸部34の側壁34aには、第2貫通孔37の周縁と凸部34の頂部34bとの間に渡って側壁リブ38が設けられる。そのため、側壁34aは、側壁リブ38によって補強される。したがって、保持部材20と横端太3とを強固に締結することができる。
【0058】
凸部34の内寸は、基部33から離れるにつれ小さくなっている。そのため、上金型60aの凸型61aの外寸を、凸型61aの先端から基端に向かうにつれ大きくすることができ、上金型60aの凸型61aを保持部材20の凸部34から容易に抜き出すことができる。したがって、保持部材20を容易に成形することができる。
【0059】
また、凸部34の外寸は、基部33から離れるにつれ小さくなっている。そのため、下金型60bの凹型61bの内寸を、凹型61bの底部に向かうにつれ小さくすることができ、下金型60bの凹型61bから保持部材20の凸部34を容易に抜き出すことができる。したがって、保持部材20を容易に成形することができる。
【0060】
長さ方向に隣り合う凸部34は、長さ方向に延びる接続リブ35aを介して互いに接続されており、幅方向に隣り合う凸部34は、幅方向に延びる35bを介して互いに接続されている。そのため、隣り合う凸部34の間が接続リブ35a,35bによって補強される。したがって、パネル部材10を強固に支持することができ、パネル部材10の変形を軽減することができる。
【0061】
保持部材20の接続リブ35a,35bは、基部33から離れるにつれ肉厚が薄くなっている。そのため、下金型60bの凹型62bの内寸を、凹型62bの底部に向かうにつれ小さくすることができ、下金型60bの凹型62bから保持部材20の接続リブ35a,35bを容易に抜き出すことができる。したがって、保持部材20を容易に成形することができる。
【0062】
型枠1を合成樹脂製にすることで、金属製型枠よりも軽量化することができる。そのため、クレーン等で型枠1を吊って施工する場合に、クレーンのモータ等、型枠1の周辺機器を小型化することができる。
【0063】
中空のパネル部材10は、表面全体に断熱効果があり、更に、保持部材20に凸部34を形成することで断熱効果が向上する。したがって、型枠1全体として、断熱効果を大きくすることができる。
【0064】
型枠1を合成樹脂製にすることで、再利用が可能になる。具体的には、コンクリート材料打設後のパネル部材10にはコンクリート材料が付着することがあるが、保持部材20は、コンクリート材料が付着したパネル部材10を取り換えることで再利用することができる。また、この保持部材を粉砕した再生材料を用いて保持部材20を成形することも可能であり、合成樹脂を再利用することができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0066】
上記実施形態では、
図4(d)に示すように、保持部材20における複数の凸部34は間隔を空けて配置されているが、本発明は、この形態に限られない。例えば、
図9(a)に示すように、長さ方向及び幅方向に対して傾斜する斜め方向に隣り合う凸部34を隣接させてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、
図4(d)に示すように、保持部材20の凸部34は枠部31から離間して配置されているが、本発明は、この形態に限られない。例えば、
図9(b)に示すように、凸部34を枠部31に隣接させてもよい。
【0068】
上記実施形態では、横端太3に保持部材20を締結する場合について説明したが、縦端太4に保持部材20を締結してもよい。
【0069】
上記実施形態では、型枠ユニット100を並設した型枠1について説明したが、本発明は、型枠ユニット100を単体で設置した型枠にも適用可能である。
【0070】
また、型枠1は、縁部40を備えていなくてもよい。つまり、型枠1は、パネル部材10と支持部30とを備え、支持部30が、基部33と、中空に形成される複数の凸部34と、を有する形態であってもよい。この形態においても、凸部34の内部に空気層が形成される。したがって、支持部30の断熱性を向上させることができる。これにより、打設されたコンクリート材料の温度を保ちながらコンクリート材料を硬化させることができ、コンクリート構造体の強度等の品質をより高めることができる。
【0071】
上記実施形態では、パネル部材10が熱可塑性樹脂を用いて形成される場合について説明したが、パネル部材10は、熱可塑性樹脂以外の材料、例えば、鉄、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウム及びこれらの合金を用いて形成されていてもよい。同様に、保持部材20は、熱可塑性樹脂以外の材料、例えば、鉄、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウム及びこれらの合金を用いて形成されていてもよい。
【0072】
パネル部材10及び保持部材20を熱可塑性樹脂を用いて形成した場合には、鉄、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウム及びこれらの合金を用いて形成した場合と比較して、型枠ユニット100を軽量化することができる。したがって、型枠1の構築及び解体が容易になる。
【0073】
パネル部材10を熱可塑性樹脂を用いて形成し、保持部材20を、鉄、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウム及びこれらの合金を用いて形成した場合、熱可塑性樹脂の有する特性により、打設され硬化するコンクリートの品質が向上し、且つ、保持部材20は金属により形成されるので型枠ユニット100の剛性を確保することができる。
【符号の説明】
【0074】
1・・・コンクリート材料打設用型枠
2・・・コンクリート材料打設領域
100・・・型枠ユニット
10・・・パネル部材
11・・・前面
12・・・背面
13・・・側面
20・・・保持部材
21・・・背部
30・・・支持部
33・・・基部
34・・・凸部
34a・・・側壁
34b・・・頂部
35a,35b・・・接続リブ
36・・・第1貫通孔
37・・・第2貫通孔
38・・・側壁リブ
40・・・縁部
41・・・膨出面
50・・・爪(係合部)