(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】シリンジのプランジャー操作補助具
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
A61M5/315 510
(21)【出願番号】P 2020045282
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 能利
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 誠也
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030436(JP,A)
【文献】特開昭59-111766(JP,A)
【文献】国際公開第03/004080(WO,A1)
【文献】特開2004-141176(JP,A)
【文献】米国特許第05300041(US,A)
【文献】登録実用新案第3208190(JP,U)
【文献】特開昭60-242865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
A61C 5/62
A61C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性物質が充填される筒状容器の一端側に、受け側の指先等の受け側部位が掛止される容器側フランジ部が設けられ、
前記筒状容器の内部をプランジャーヘッドが移動して筒状容器の他端側から流動性物質を吐出させるプランジャーの、前記プランジャーヘッドとは反対側の端部に、押動側の指先等の操作部位が押し当てられるプランジャー側フランジ部が設けられ、
前記プランジャー側フランジ部を押動させて、プランジャーを筒状容器に対して移動させる力が加えられる、前記プランジャー側フランジ部に取り付けられるシリンジのプランジャー操作補助具であって、
前記プランジャー側フランジ部と着脱して、装着時にプランジャーを軸方向に延伸させた状態に取り付けられる受け側補助部材と、
前記受け側補助部材に係合して、該受け側補助部材に対してプランジャーの軸方向に対する延伸位置を変更可能で、操作部位が当接する操作用フランジ部が設けられた操作側補助部材と、
からな
り、
前記受け側補助部材は、雌ネジ部が設けられた円筒形の接続筒を有し、
前記操作側補助部材は、前記接続筒の雌ネジ部と螺合する雄ネジ部が設けられた円柱部と、前記接続筒を収容する円筒形の収容筒とを有し、
前記接続筒の外側面と前記収容筒の内側面のいずれか一方に係合受け部が、他方に係合部が設けられ、
前記係合受け部と係合部のいずれか一方が円筒形の軸方向の複数箇所に設けられ、他方が一箇所に設けられていることを特徴とするシリンジのプランジャー操作補助具。
【請求項2】
流動性物質が充填される筒状容器の一端側に、受け側の指先等の受け側部位が掛止される容器側フランジ部が設けられ、
前記筒状容器の内部をプランジャーヘッドが移動して筒状容器の他端側から流動性物質を吐出させるプランジャーの、前記プランジャーヘッドとは反対側の端部に、押動側の指先等の操作部位が押し当てられるプランジャー側フランジ部が設けられ、
前記プランジャー側フランジ部を押動させて、プランジャーを筒状容器に対して移動させる力が加えられる、前記プランジャー側フランジ部に取り付けられるシリンジのプランジャー操作補助具であって、
前記プランジャー側フランジ部と着脱して、装着時にプランジャーを軸方向に延伸させた状態に取り付けられる受け側補助部材と、
前記受け側補助部材に係合して、該受け側補助部材に対してプランジャーの軸方向に対する延伸位置を変更可能で、操作部位が当接する操作用フランジ部が設けられた操作側補助部材と、
からな
り、
前記受け側補助部材は、雄ネジ部が設けられた円筒形の接続筒を有し、
前記操作側補助部材は、前記接続筒の内側に挿入される円柱部と、前記接続筒を収容して前記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が設けられた円筒形の収容筒とを有し、
前記接続筒の内側面と前記円柱部の外側面のいずれか一方に係合受け部が、他方に係合部が設けられ、
前記係合受け部と係合部のいずれか一方が円筒形の軸方向の複数箇所に設けられ、他方が一箇所に設けられていることを特徴とするシリンジのプランジャー操作補助具。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のシリンジのプランジャー操作補助具であって、
前記受け側補側助部材と操作側補助部材とのいずれか一方に
設けられた雄ネジ部
と、他方に
設けられた雌ネジ
部とが螺合することで任意の位置で係合することを特徴とするシリンジのプランジャー操作補助具。
【請求項4】
請求項
1に記載のシリンジのプランジャー操作補助具であって、
前記係合部が、受け側補助部材の接続筒の先端部の外側面の一箇所に環状の突起によって設けられ、
操作側補助部材の収容筒に、前記環状の突起を受容する環状の窪みによる前記係合受け部が複数箇所に設けられていることを特徴とするシリンジのプランジャー操作補助具。
【請求項5】
請求項
2に記載のシリンジのプランジャー操作補助具であって、
前記係合部が、操作側補助部材の円柱部の先端部の外側面の一箇所に環状の突起によって設けられ、
受け側補助部材の接続筒に、前記環状の突起を受容する環状の窪みによる前記係合受け部が複数箇所に設けられていることを特徴とするシリンジのプランジャー操作補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジに組み合わされるプランジャーに装着されるシリンジのプランジャー操作補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、注射器等のシリンジには薬液等の流動性物質が充填される筒状容器と、筒状容器に対して軸方向に摺動して充填されている流動性物質を筒状容器の先端の注出口から押し出すプランジャーとを備えている。このプランジャーを筒状容器に対して移動させて押し出す動作を、操作者の手指を用いて行うものがある。例えば、人差し指と中指とを筒状容器の端部に形成された容器側フランジ部に筒状容器の中央側から掛止させ、親指の腹側をプランジャーの端部に形成されたプランジャー側フランジ部に外方側から当接させてプランジャーを押し込むことで、筒状容器に充填されている流動性物質を筒状容器の先端部から押し出して吐出させる。
【0003】
筒状容器から薬液等を押し出す操作が数回に分けて分注される場合がある。また、例えば、歯科用材料等の場合では、二種以上の多成分薬液が各別に筒状容器に充填されて、これらの筒状容器が並設されて一体化されたカートリッジが用いられる(特許文献1参照)。このカートリッジが混合器に連結されて、使用時に混合器で多成分薬液を混合させて混合器の先端から吐出させて分注される。
【0004】
また、例えば、歯科材料用シリンジの場合には、流動性物質に粘性が高い材料が充填され、この粘性材料を吐出させる際にプランジャーを押動させるために大きな力を要する。特に、多成分の粘性材料が各別に筒状容器に充填されているカートリッジでは、夫々の筒状容器に備えられている複数のプランジャーを同時に押動させることを要するので、押動させるために大きな力を要する。また、粘性材料の残量によってプランジャーのストロークが変化するから、押動する力の変化等の操作性が変化する虞が生じている。特に、充填量の減少に伴われて容器側フランジ部とプランジャー側フランジ部との距離(以下、「フランジ間距離」と称する場合がある。)が小さくなると、粘性材料の稠度等によっては操作者による操作が円滑に行われず、円滑に吐出させ難い場合が生じる。
【0005】
このため、容器側フランジ部とプランジャー側フランジ部との距離が小さくなった場合に、このフランジ間距離を大きくすることで、円滑な操作性を維持させるためのシリンジ用補助具が、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-93441号公報
【文献】意匠登録第1478319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されたシリンジ用補助具は、シリンジのプランジャー部後端に取り付けられ、プランジャー全長を延長させることにより、容器側フランジ部とプランジャー側フランジ部との距離を大きくするものとされている。
このシリンジ用補助具では、限定されている所定の長さの補助具が取り付けられるものであるため、フランジ間距離が所定の第一の大きさとなった場合に装着され、このフランジ間距離が狭められて第二の大きさとなった場合には、操作性が低下してしまう虞がある。すなわち、このシリンジ用補助具の装着可能となるフランジ間距離が限定されてしまい、円滑な操作性の維持を確保できない虞がある。
【0008】
そこで、本発明は、筒状容器に充填される粘性材料等の流動性物質の充填量によっても、操作性を維持できるようにしたシリンジのプランジャー操作補助具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決して目的を達成するために、本発明に係るシリンジのプランジャー操作補助具は、流動性物質が充填される筒状容器の一端側に、受け側の指先等の受け側部位が掛止される容器側フランジ部が設けられ、前記筒状容器の内部をプランジャーヘッドが移動して筒状容器の他端側から流動性物質を吐出させるプランジャーの、前記プランジャーヘッドとは反対側の端部に、押動側の指先等の操作部位が押し当てられるプランジャー側フランジ部が設けられ、前記プランジャー側フランジ部を押動させて、プランジャーを筒状容器に対して移動させる力が加えられる、前記プランジャー側フランジ部に取り付けられるシリンジのプランジャー操作補助具であって、前記プランジャー側フランジ部と着脱して、装着時にプランジャーを軸方向に延伸させた状態に取り付けられる受け側補助部材と、前記受け側補助部材に係合して、該受け側補助部材に対してプランジャーの軸方向に対する延伸位置を変更可能で、操作部位が当接する操作用フランジ部が設けられた操作側補助部材と、からなることを特徴としている。
【0010】
また、上述のシリンジのプランジャー操作補助具であって、前記受け側補側助部材と操作側補助部材とのいずれか一方に雄ネジ部を、他方に雌ネジ部を設け、これら雄ネジ部と雌ネジ部とが螺合することで任意の位置で係合することが好ましい。
【0011】
また、上述のシリンジのプランジャー操作補助具であって、前記受け側補助部材は、雌ネジ部が設けられた円筒形の接続筒を有し、前記操作側補助部材は、前記接続筒の雌ネジ部と螺合する雄ネジ部が設けられた円柱部と、前記接続筒を収容する円筒形の収容筒とを有し、前記接続筒の外側面と前記収容筒の内側面のいずれか一方に係合受け部が、他方に係合部が設けられ、前記係合受け部と係合部のいずれか一方が円筒形の軸方向の複数箇所に設けられ、他方が一箇所に設けられていることが好ましい。
【0012】
また、上述のシリンジのプランジャー操作補助具であって、前記係合部が、受け側補助部材の接続筒の先端部の外側面の一箇所に環状の突起によって設けられ、操作側補助部材の収容筒に、前記環状の突起を受容する環状の窪みによる前記係合受け部が複数箇所に設けられていることが好ましい。
【0013】
また、上述のシリンジのプランジャー操作補助具であって、前記受け側補助部材は、雄ネジ部が設けられた円筒形の接続筒を有し、前記操作側補助部材は、前記接続筒の内側に挿入される円柱部と、前記接続筒を収容して前記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部が設けられた円筒形の収容筒とを有し、前記接続筒の内側面と前記円柱部の外側面のいずれか一方に係合受け部が、他方に係合部が設けられ、前記係合受け部と係合部のいずれか一方が円筒形の軸方向の複数箇所に設けられ、他方が一箇所に設けられている構造とすることができる。
【0014】
また、上述のシリンジのプランジャー操作補助具であって、前記係合部が、操作側補助部材の円柱部の先端部の外側面の一箇所に環状の突起によって設けられ、受け側補助部材の接続筒に、前記環状の突起を受容する環状の窪みによる前記係合受け部が複数箇所に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るシリンジのプランジャー操作補助具によれば、筒状容器内の流動性物質が減少してフランジ間距離が小さくなった場合であっても、プランジャーの操作性を維持できる。しかも、流動性物質の残量に応じてフランジ間距離を変更できるので、筒状容器内の流動性物質の残量に応じた操作性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係るプランジャー操作補助具を示す図であり、(A)は容器側フランジ部とプランジャー側フランジ部とを分離した状態の正面図であり、平面図と底面図とを併記してあり、(B)は(A)における1-1線に沿って切断して示す断面図である。
【
図2】本発明の第二の実施形態に係るプランジャー操作補助具を示す図であり、(A)は容器側フランジ部とプランジャー側フランジ部とを分離した状態の正面図であり、平面図と底面図とを併記してあり、(B)は(A)における2-2線に沿って切断して示す断面図である。
【
図3】本発明に係るシリンジのプランジャー操作補助具の構造を説明する模式図であり、受け側補助部材と操作側補助部材とを分離して示している。
【
図4】本発明に係るシリンジのプランジャー操作補助具の動作を説明する模式図である。
【
図5】本発明に係るシリンジのプランジャー操作補助具を用いるのに適したシリンジを例示するものであり、シリンジの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に、
図5を参照して、本発明に係るシリンジのプランジャー操作補助具を装着するのに適したシリンジを説明する。なお、
図5は、二種類の流動性物質を同時に吐出させるよう、二本の筒状容器101、102が並設された構造とされているシリンジを示している。
シリンジ100は、異なる成分の流動性物質が充填された二本の筒状容器101、102と、これら筒状容器101、102の夫々に組み合わされるプランジャー103、104とにより構成されている。プランジャー103、104の夫々の前端部は筒状容器101、102内に収容されており、この前端部に図示しないプランジャーヘッドが設けられている。また、後端部には、これらプランジャー103、104と一体とされたプランジャー側フランジ部105が設けられている。なお、このプランジャー側フランジ部105は操作性等によって種々の形状のものとされており、
図5では外形が楕円形のものが示されている。
筒状容器101、102は並設されており、後端部には、これら筒状容器101、102と一体とされた容器側フランジ部106が設けられている。また、筒状容器101、102の夫々の前端部には図示しないノズル部が設けられており、筒状容器101、102に充填された流動性物質はこのノズル部から各別に吐出される。また、使用前の状態では、このノズル部にノズルキャップ107が取り付けられている。
【0018】
流動性物質を吐出させるには、例えば、人差し指と中指との受け側部位を容器側フランジ部106に筒状容器101、102の前端側から掛止させ、親指や掌等の操作部位をプランジャー側フランジ部105にプランジャー103、104とは反対側、すなわち外方側から押し当てる。そして、操作部位を受け側部位に向かって押し込むとプランジャー側フランジ部105が容器側フランジ部106に接近する方向に移動し、プランジャー103、104が筒状容器101、102に対して前進して筒状容器101、102内の流動性物質がノズル部から吐出される。
また、このシリンジ100を使用する際にはノズルキャップ107を取り外して、露呈したノズル部に図示しない混合器を接続させて、流動性物質をノズル部から吐出させる。吐出された二種類の流動性物質は混合器で混合された後、混合器から吐出される。
【0019】
(第一の実施形態)
図1は第一の実施形態に係るシリンジのプランジャー操作補助具1を示し、このプランジャー操作補助具1は、操作側補助部材11と、シリンジ100のプランジャー側フランジ部105に着脱自在に取り付けられて設けられる受け側補助部材12とから構成されている。なお、
図1(A)に、操作側補助部材11と受け側補助部材12とが分離された状態を示してあり、
図1(B)は
図1(A)における1-1線に沿って切断して示す断面図である。また、これら操作側補助部材11と受け側補助部材12とは、合成樹脂により成形加工することが好ましい。
【0020】
受け側補助部材12の基端部には、プランジャー側フランジ部105と着脱自在とされて、プランジャー側フランジ部105が収容される収容部12aが設けられている。この収容部12aは、ベース板12bと押え板12dとによって設けられている。すなわち、ベース板12bの一方の面であって、プランジャー側フランジ部105が着脱される側の面には、外周縁の一部に起立させた支持柱12cが設けられ、この支持柱12cの先端部に内側に向かって張り出した押え板12dが設けられている。そして、ベース板12bと押え板12dとの対向した面の間の空間が収容部12aとされる。収容部12aとなる空間は、一方の側が開口されており、他方の側が支持柱12cによって制限壁12eとされている。また、この収容部12aにプランジャー側フランジ部105が収容された状態で、プランジャー側フランジ部105の開口側の端部に係合する突起部12fがベース板12bのプランジャー側フランジ部105と着脱される側の面に設けられている。このため、プランジャー側フランジ部105が、制限壁12eと突起部12fとによって位置決めされて、収容部12aに収容されることにより、受け側補助部材12がプランジャー側フランジ部105に取り付けられる。
【0021】
受け側補助部材12のベース板12bの他方の面であって、操作側補助部材11と連結される側の面には、円筒形の接続筒12gが設けられている。この接続筒12gの内側面には、
図1(B)に示すように、雌ネジ部12hが形成されており、外側面の先端部には、突起により係合部となる係合突起12iが環状に設けられている。
【0022】
一方、操作側補助部材11は、表側面に手指の操作部位が押し当てられる操作用フランジ部11aと、この操作用フランジ部11aの裏側面に立設させた円柱部11bと、この円柱部11bの外側に同心円に設けられた収容筒11cとを備えている。円柱部11bは、受け側補助部材12の接続筒12gに挿入される。この円柱部11bの外側面には、雌ネジ部12hと螺合する雄ネジ部11dが形成されている。収容筒11cの内側面の三箇所には、収容筒11cの軸方向に沿って係合受け部である係合溝11e1と係合溝11e2、係合溝11e3とが設けられている。これら係合溝11e1、11e2、11e3は、いずれも、接続筒12gに形成された係合突起12iと係脱自在な窪みにより環状に設けられている。
【0023】
(第一の実施形態の作用)
図1に示す第一の実施形態に係るシリンジのプランジャー操作補助具1の作用を、
図3と
図4に示す模式図を参照して説明する。
【0024】
図3は受け側補助部材12の収容部12aにプランジャー側フランジ部105が収容されて、プランジャー側フランジ部105に受け側補助部材12が取り付けられ、操作側補助部材11が受け側補助部材12と連結される前の状態を示している。
プランジャー操作補助具1をシリンジ100のプランジャー側フランジ部105に装着するには、受け側補助部材12の収容部12aにプランジャー側フランジ部105を収容させる。このとき、収容部12aの開口側からプランジャー側フランジ部105を収容部12aに押し込んで、制限壁12eに突き当てるとともに、突起部12fに係合させると、プランジャー側フランジ部105に受け側補助部材12が取り付けられる。
【0025】
プランジャー側フランジ部105に取り付けられた受け側補助部材12の接続筒12gを収容筒11cに収容させながら、雌ネジ部12hに雄ネジ部11dを螺合させるよう操作側補助部材11を回転させると、操作側補助部材11が受け側補助部材12に対して前進する。収容筒11cの最奥部まで前進させた状態が
図4(A)に示されており、この位置まで前進した状態では、接続筒12gの係合突起12iが収容筒11cの最も奥部にある係合溝11e3に係合した状態となる。
また、操作用フランジ部11aの表側面と容器側フランジ部106の筒状容器101、102側の面との距離を操作間距離Lとし、係合突起12iと係合溝11e3とが係合した状態における操作間距離Lを、操作間距離L
1とする。
図4(A)に示す最奥部まで前進した状態にある操作側補助部材11を、前進時とは逆方向に回転させると、係合突起12iが係合溝11e3から離脱して、操作側補助部材11が受け側補助部材12に対して後退する。係合突起12iが係合溝11e2に合致する位置まで後退すると、
図4(B)に示すように、この係合突起12iが係合溝11e2と係合した状態となる。この状態における、操作間距離Lを操作間距離L
2とする。
そして、
図4(B)示す位置からさらに操作側補助部材11を後退させて、係合突起12iが係合溝11e1に合致する位置まで後退すると、
図4(C)に示すように、係合突起12iが係合溝11e1と係合した状態となる。この状態における操作間距離Lを操作間距離L
3とする。
これらの操作間距離Lは、
L
1<L
2<L
3 (式1)
となる。
なお、係合突起12iが係合溝11e1、11e2、11e3のいずれかと係合した状態では、操作側補助部材11と受け側補助部材12との位置関係が位置決めされる状態となる。
【0026】
例えば、プランジャー操作補助具1が装着されていない初期の状態で、プランジャー側フランジ部105が押し込まれて、プランジャー103、104が前進し、流動性物質が筒状容器101、102から吐出されると、筒状容器101、102内の流動性物質の量が減じられてプランジャー側フランジ部105と容器側フランジ部106とのフランジ間距離が小さくなる。フランジ間距離が小さくなった場合に、プランジャー側フランジ部105の操作性を維持することを要する場合には、プランジャー側フランジ部105にプランジャー操作補助具1を装着する。
【0027】
初期の状態からプランジャー側フランジ部105が押し込まれた場合には、フランジ間距離の減少は小さい場合がある。このような場合には装着されたプランジャー操作補助具1における操作間距離Lは小さくてよく、この場合には、
図4(A)に示すように、接続筒12gの係合突起12iを収容筒11cの最奥部の係合溝11e3に係合させる。この状態では、操作間距離Lが最小の操作間距離L
1となってプランジャー側フランジ部105の操作性が維持される。
次いで、流動性物質を筒状容器101、102から吐出させるためにプランジャー側フランジ部105が押し込まれると、フランジ間距離がより小さくなる。この場合には、操作側補助部材11を回転させて受け側補助部材12に対して後退させて、係合突起12iが係合溝11e2に係合した状態とする。この状態では、操作間距離Lを操作間距離L
1よりも僅かに大きくして中間の大きさの操作間距離L
2とする。これにより、操作間距離Lがプランジャー側フランジ部105の操作性が維持される大きさに確保される。
さらに、流動性物質を筒状容器101、102から吐出させるためにプランジャー側フランジ部105が押し込まれると、フランジ間距離がさらに小さくなる。この場合には、操作側補助部材11を回転させて受け側補助部材12に対してさらに後退させて、係合突起12iが係合溝11e2に係合した状態とする。この状態では、操作間距離Lが操作間距離L
2よりも大きい操作間距離L
3となる。これにより、操作間距離Lがプランジャー側フランジ部105の操作性が維持される大きさに確保される。
筒状容器101、102内の全ての流動性物質が突出された場合には、プランジャー操作補助具1をシリンジ100から取り外す。この場合、プランジャー側フランジ部105が突起部12fを回避する位置まで、ベース板12bから離隔させて、収容部12aから離脱させる。これにより、別のシリンジ100についてプランジャー操作補助具1を用いることができる。
【0028】
(第二の実施形態)
図2は第二の実施形態に係るシリンジのプランジャー操作補助具2を示し、このプランジャー操作補助具2は、操作側補助部材21と、シリンジ100のプランジャー側フランジ部105に着脱自在に取り付けられて設けられる受け側補助部材22とから構成されている。なお、
図2(A)に、操作側補助部材21と受け側補助部材22とが分離された状態を示してあり、
図2(B)は
図2(A)における2-2線に沿って切断して示す断面図である。また、これら操作側補助部材21と受け側補助部材22とは、合成樹脂により成形加工することが好ましい。
【0029】
受け側補助部材22の基端部には、プランジャー側フランジ部105と着脱自在とされて、プランジャー側フランジ部105が収容される収容部22aが設けられている。この収容部22aは、ベース板22bと押え板22dとによって設けられている。すなわち、ベース板22bの一方の面であって、プランジャー側フランジ部105が着脱される側の面には、外周縁の一部に起立させた支持柱22cが設けられ、この支持柱22cの先端部に、内側に向かって張り出した押え板22dが設けられている。そして、ベース板22bと押え板22dとの対向した面の間の空間が収容部22aとされる。この収容部22aとなる空間は、一方の側が開口されており、他方の側が支持柱22cによって制限壁22eとされている。また、この収容部22aにプランジャー側フランジ部105が収容された状態で、プランジャー側フランジ部105の開口側の端部に係合する突起部22fがベース板22bのプランジャー側フランジ部105と着脱される側の面に設けられている。このため、プランジャー側フランジ部105が、制限壁22eと突起部22fとによって位置決めされて、収容部22aに収容されることにより、受け側補助部材22がプランジャー側フランジ部105に取り付けられる。
【0030】
受け側補助部材22のベース板22bの他方の面であって、操作側補助部材11と連結される側の面には、円筒形の接続筒22gが設けられている。この接続筒22gの外側面には雄ネジ部22hが形成されており、内側面には、
図2(B)に示すように、接続筒22gの軸方向に沿って三箇所に係合受け部である係合溝22i1と係合溝22i2、係合溝22i3とが設けられている。これら係合溝22i1、22i2、22i3は、いずれも環状の窪みによって設けられている。
【0031】
一方、操作側補助部材21は、表側面に手指の操作部位が押し当てられる操作用フランジ部21aと、この操作用フランジ部21aの裏側面に立設させた円柱部21bと、この円柱部21bの外側に同心円に設けられた収容筒21cとを備えている。円柱部21bは、受け側補助部材22の接続筒22gに挿入される。この円柱部21bの先端部の外側面には、接続筒22gの係合溝22i1、22i2、22i3の夫々と係合する突起により、係合部となる係合突起21dが環状に設けられている。また、収容筒21cは受け側補助部材22の接続筒22gを収容すると共に、内側面に接続筒22gの雄ネジ部22hと螺合する雌ネジ部21eが形成されている。
【0032】
この第二の実施形態に係るプランジャー操作補助具2も、
図1に示す第一の実施形態に係るプランジャー操作補助具1の場合と同様に、プランジャー側フランジ部105に受け側補助部材22の収容部22aを収容させることで、プランジャー側フランジ部105に装着される。
プランジャー側フランジ部105に装着された受け側補助部材22の接続筒22gを操作側補助部材21の収容筒21cに収容させて、雄ネジ部22hと雌ネジ部21eとを螺合させるように、操作側補助部材21を回転させる。この回転により操作側補助部材21が受け側補助部材22に対して前進すると、円柱部21bに設けられた係合突起21dが係合溝22i1、22i2、22i3のいずれかと係合して、操作間距離Lが異なる位置に操作側補助部材21を位置させることができる。
したがって、プランジャー側フランジ部105の操作性を維持させることができる。
【0033】
以上に説明した実施形態では、操作側補助部材の受け側補助部材に対する進退を雄ネジ部と雌ネジ部との螺合構造により行わせてある。このため、係合突起と係合溝とが係合しない位置であっても操作側補助部材を受け側補助部材に対する位置を調整して位置決めすることができる。したがって、操作者にとって操作性が良好となる位置で操作側補助部材を位置決めさせることができる。
さらに、操作側補助部材を受け側補助部材に対して進退可能とする構造であって、受け側補助部材に対する操作側補助部材の位置を調整できる構造であれば、プランジャー側フランジ部の操作性を維持することができる。例えば、操作側補助部材と受け側補助部材とを螺合構造により連結させる場合には、螺合により受け側補助部材に対する操作側補助部材の位置を無段階で調製できるので、操作者に応じて最適の位置に操作側補助部材を位置決めできるので好ましい。
【0034】
本発明に係るシリンジのプランジャー操作補助具によれば、シリンジの筒状容器に充填されている流動性物質の残量が減少した場合にフランジ間距離が小さくなった場合であっても、プランジャー側フランジ部に装着することで、プランジャー側フランジ部の操作性を維持できる。しかも、操作用フランジ部と容器側フランジ部との距離を変更できるので、流動性物資の残量に応じた操作性の維持に寄与する。
【符号の説明】
【0035】
1 プランジャー操作補助具
11 操作側補助部材
11a 操作用フランジ部
11b 円柱部
11c 収容筒
11e 雌ネジ部
11d 雄ネジ部
11e1 係合溝
11e2 係合溝
11e3 係合溝
12 受け側補助部材
12a 収容部
12b ベース板
12c 支持柱
12d 押え板
12e 制限壁
12f 突起部
12g 接続筒
12h 雌ネジ部
12i 係合突起
2 プランジャー操作補助具
22 受け側補助部材
22a 収容部
22b ベース板
22c 支持柱
22d 押え板
22e 制限壁
22f 突起部
22g 接続筒
22h 雄ネジ部
22i1 係合溝
22i2 係合溝
22i3 係合溝
21 操作側補助部材
21a 操作用フランジ部
21b 円柱部
21c 収容筒
21d 係合突起
21e 雌ネジ部
100 シリンジ
101、102 筒状容器
103、104 プランジャー
105 プランジャー側フランジ部
106 容器側フランジ部
107 ノズルキャップ
L 操作間距離