IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プロポーレ株式会社の特許一覧

特許7483248防災備蓄倉庫および防災備蓄倉庫の製造方法
<>
  • 特許-防災備蓄倉庫および防災備蓄倉庫の製造方法 図1
  • 特許-防災備蓄倉庫および防災備蓄倉庫の製造方法 図2
  • 特許-防災備蓄倉庫および防災備蓄倉庫の製造方法 図3
  • 特許-防災備蓄倉庫および防災備蓄倉庫の製造方法 図4
  • 特許-防災備蓄倉庫および防災備蓄倉庫の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】防災備蓄倉庫および防災備蓄倉庫の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20240508BHJP
   E06B 5/01 20060101ALI20240508BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
E04H1/12 307
E06B5/01
E06B5/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020085272
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021179132
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】520167793
【氏名又は名称】プロポーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦 毅
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】使用しなくなった地上置きのコンクリート受水槽の再利用,[online],2014年12月,インターネット<URL:https://www.mansion.co.jp/post/qa/building1412>,[検索日]2023/12/13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
E06B 5/00,5/01
E04H 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災用品を備蓄する防災備蓄倉庫であって、
受水槽から形成される倉庫本体と、
前記倉庫本体の側面に設けられた側面出入口と、
前記倉庫本体の天井に設けられた天井出入口と、
を備え
前記側面出入口には外開式ドアが開閉可能に設けられている、
防災備蓄倉庫。
【請求項2】
前記外開式ドアは防水扉として構成される、
請求項に記載の防災備蓄倉庫。
【請求項3】
前記外開式ドアの一部は透明または半透明に形成されている、
請求項1または2のいずれかに記載の防災備蓄倉庫。
【請求項4】
前記外開式ドアの開閉に連動して、前記天井出入口に設けられた蓋も開閉する、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の防災備蓄倉庫。
【請求項5】
受水槽を利用して防災備蓄倉庫を製造する方法であって、
前記受水槽を下処理するステップと、
前記受水槽を倉庫本体とし、その側面に出入口を形成するステップと、
前記出入口に外開式ドアを取り付けるステップと、
を含む受水槽を利用して防災備蓄倉庫を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災備蓄倉庫および防災備蓄倉庫の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年大規模災害に備えるべく、マンション等の建物で防災用品を備蓄することが推奨されている。そこで特許文献1には、集合住宅のパイプスペースに隣接する予備スペース区画を防災用備蓄倉庫として利用可能にすることが記載されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-178737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、これから建設する新たな建物を対象とするものであり、既存の建物に防災備蓄倉庫を設ける技術ではない。
【0005】
ところで、上水道の給水方式には、受水槽方式と直給水方式とがある。受水槽方式は、配水管から建物内の各給水用具(給水先)までの間に受水槽を設け、受水槽に溜めた水を加圧ポンプ等により給水する技術である。直給水方式は、受水槽を経由せずに、配水管から各給水用具へ直接給水する技術である。なお、直給水方式には、増圧ポンプを用いない直接直結方式と、増圧ポンプを用いる直接増圧方式とがある。
【0006】
近年の公共水道では、衛生面から受水槽を廃止し、直給水方式(直接増圧方式)への切替を推奨している。直給水方式を採用することにより、水質が向上する上に、ポンプや受水槽などの保守費用が不要となる。一方、受水槽は不要となるが、受水槽を撤去するには費用がかかる。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、直給水方式への切替によって不要となる受水槽を有効利用し、既存の建物の耐災害性を向上させることができるようにした防災備蓄倉庫および防災備蓄倉庫の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明は、受水槽を防災備蓄倉庫として使用する。
【0009】
本発明の一つの観点に従う防災備蓄倉庫は、防災用品を備蓄する防災備蓄倉庫であって、受水槽から形成される倉庫本体と、倉庫本体の側面に設けられた側面出入口と、倉庫本体の天井に設けられた天井出入口と、を備える。
【0010】
側面出入口には外開式ドアが開閉可能に設けられてもよい。
【0011】
外開式ドアは防水扉として構成されてもよい。
【0012】
外開式ドアの一部は透明または半透明に形成されてもよい。
【0013】
外開式ドアの開閉に連動して、天井出入口に設けられた蓋も開閉してもよい。
【0014】
本発明の他の観点に従う受水槽を利用して防災備蓄倉庫を製造する方法は、受水槽を下処理するステップと、受水槽を倉庫本体とし、その側面に出入口を形成するステップと、出入口に外開式ドアを取り付けるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、不要となった受水槽を防災備蓄倉庫として有効に利用することができ、建物の耐災害性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】受水槽を利用した防災備蓄倉庫の全体概要図。
図2】防災備蓄倉庫の概略斜視図。
図3】受水槽方式から直給水方式へ切り替えられた建物の説明図。
図4】直給水方式と受水槽方式を並べて示す説明図。
図5】受水槽方式の受水槽付近を示す概要図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態では、受水槽方式から直給水方式へ切り替えられた建物に残された受水槽を防災備蓄倉庫として活用することにより、建物の耐災害性を向上させる。
【実施例1】
【0018】
図1図5を用いて第1実施例を説明する。先に、図4および図5を用いて、本実施例を適用しない場合の比較例を説明する。
【0019】
図4は、直給水方式と受水槽方式を並べて示す説明図である。図4中の左側の建物101(1)は直給水方式(直接増圧方式)を採用しており、図4中の右側の建物101(2)は受水槽方式を採用している。
【0020】
給水方式を先に説明すると、建物101(1)の各階102には、水道栓などの給水用具103が設置されており、給水用具103と増圧ポンプ104を接続する送水管105には、各戸メータ106が設けられている。増圧ポンプ104は、配水管107から管路1071を介して供給された水を増圧して、送水管105へ送り出す。
【0021】
受水槽方式を説明する。建物101(2)の上部には送水管105と揚水管111とに接続される高置水槽110が設置されている。受水槽108は、建物101(2)の1階または2階などの低層階に設置される。
【0022】
受水槽108には、配水管107からの水が管路1072を介して供給される。受水槽108に溜まった水は、加圧ポンプ109により揚水管111へ送り込まれ、高置水槽110に供給される。そして、高置水槽110から送水管105を介して各戸の給水用具103へ水が供給される。
【0023】
図5は、受水槽108を拡大して示す。受水槽108の上部には、受水槽108が防災備蓄倉庫1として使用される際に「天井出入口」として利用される開口部13が設けられており、その開口部13には点検用ハッチ131が設けられている。点検用ハッチ131は、例えば、矢示F2に示すように、外に向かって開くように取り付けられている。なお、受水槽108は、例えば、建物101(2)の低層階に設けられる。点検用ハッチ131は、受水槽108が防災備蓄倉庫1として使用される際に「天井出入口13に設けられた蓋131」として利用される。図1図3では、蓋131を上部蓋131と呼ぶ。
【0024】
以上が本実施例を適用する前の建物の構造である。次に、図1図3を用いて、本実施例の構成を説明する。
【0025】
図1は、受水槽108を利用した防災備蓄倉庫1の全体概要図である。図2は、防災備蓄倉庫1の概略斜視図を示す。図3は、受水槽方式から直給水方式へ切り替えられた建物の説明図である。
【0026】
図4図5で述べた受水槽方式から直給水方式へ切り替えた場合、受水槽108および加圧ポンプ109は不要となる。そこで、本実施例では、受水槽108を防災備蓄倉庫1の倉庫本体11として再利用する。受水槽108は、その内部に床や棚など造作し、側面に出入口12を設ける。これらの造作は「受水槽の下処理」の例である。側面出入口12には、矢示F1方向に示すように、ドア121が外に向かって開くように取り付けられる。
【0027】
ここで、受水槽108は飲み水を貯蔵するための装置であるから、受水槽である限りその側面に出入口12を設ける余地はない。さらに、受水槽108の天井には、もともと開口部13が設けられているため、開口部13を用いて倉庫本体11内に防災用品を出し入れすることも可能である。したがって、不要になった受水槽108を防災備蓄倉庫1の倉庫本体11として使用するならば、側面出入口12を設ける必要はない。しかし、本実施例では、防災用品の出し入れを容易にすべく、あえて側面出入口12を設けている。なお、受水槽108の開口部13は、防災備蓄倉庫1の天井出入口13となり、防災備蓄倉庫1が万が一水没した場合の水没時用出入口となる。
【0028】
ドア121は、防水扉として構成されるのが好ましい。すなわち、ドア121と側面出入口12とが接触する領域にはシール部材(不図示)が設けられており、ドア121が閉まった状態では、外部の液体(雨水など)が倉庫本体11へ浸入するのを防止する。
【0029】
受水槽108は、マンションなどの建物の低層階に設置されるため、受水槽108を利用した防災備蓄倉庫1では、側面出入口12を開閉するドア121を外開式ドアとすると共に、防水扉として構成する。これにより、倉庫本体11の周囲に水が押し寄せた場合でも、水の圧力に抗して、倉庫本体11内への浸水を防止できる。
【0030】
さらに、外開式の防水扉であるドア121には、可視光線に対して透明な窓部122を設けることができる。窓部122を介して、外部から倉庫本体11内の様子を視認することができる。逆に、倉庫本体11内から窓部122を介して外部の様子を視認することもできる。これにより、防災備蓄倉庫1の管理者は、ドア121を開けずに倉庫本体11内の様子を伺うこともできる。
【0031】
窓部122の形状は特に問わない。例えば、矩形状、正方形状、円形状、楕円状、三角形状などの種々の形状で窓部122を形成できる。さらに、窓部122は一つに限定されず、複数の窓部122をドア121に設けてもよい。図1では、ドア121の幅方向中心に、ドア121の長手方向に延びる細長い矩形状の窓部122を設ける場合を示す。窓部122は透明に限らず半透明でもよい。
【0032】
側面出入口12のドア121と天井出入口13を施蓋する上部蓋131とが連動して開閉するように構成してもよい。例えば、ドア121を開くと、リンク機構15により上部蓋131も開く構成としてもよい。逆に、上部蓋131が開かれた場合であっても、外開式ドア121は開扉しないように構成される。大雨などで防災備蓄倉庫1に水が押し寄せた場合に、側面出入口12から水が倉庫本体11内へ浸入するのを防止しつつ、上部蓋131だけを開けて倉庫本体11内の様子を確認したり、防災用品14を取り出したりできるようにするためである。
【0033】
外開式ドア121の開扉に連動して上部蓋131も開くように構成することにより、天井出入口13からの光を倉庫本体11内に導いて照明として利用したり、空気の通り抜けを促進して倉庫本体11内の空気を交換することができる。
【0034】
倉庫本体11内には、防災用品14が収容されている。図1では、簡略化して示すが、防災用品は、例えば、図示せぬ棚に収容されたり、倉庫本体11の内壁面に着脱可能に取り付けられたりしている。防災用品としては、例えば、飲料水、食料、照明器具、電池、毛布、スコップ、工具類、安全帽、軍手、簡易トイレ、マスクなどである。これらは防災用品の一例であり、本実施例では倉庫本体11に収容する物品の種類を問わない。
【0035】
防災備蓄倉庫1は、コンクリート製の土台16の上に設けられてもよい。土台16内に空間を設け、その空間には不要となったポンプ109または新設されるポンプ104などが収容されてもよい。
【0036】
図3は、図4で述べた建物101(2)を受水槽方式から直給水方式へ切り替えた様子を示す。不要となった受水槽は撤去されずに防災備蓄倉庫1として利用される。図3では高置水槽110の記載を省略しているが、高置水槽110は撤去してもよいし、そのまま置いてもよい。高置水槽110に水を溜めておくことにより、火災時の消火に使用することもできる。
【0037】
このように構成される本実施例によれば、受水槽方式から直給水方式へ切り替わったことにより不要となった受水槽108を倉庫本体11として活用することにより、低コストで防災備蓄倉庫1を設けることができる。
【0038】
受水槽108およびポンプ109の保守費用が不要となるので、その保守に要した費用を防災用品の購入費として使用したり、受水槽108を防災備蓄倉庫1に改修する際の費用に使用することができる。
【0039】
マンションなどの建物には余分な空間はほとんどなく、防災備蓄倉庫を後から設置するのは難しい上に、もし設置するとしても高額の費用がかかる。これに対し、本実施例によれば、受水槽108を有効に活用して防災備蓄倉庫1を低コストに設置することができるため、既存の建物の耐災害性を大きく向上させることができ、その建物の価値を高くすることができる。例えばコロナウィルスなどの感染症が蔓延した場合には、自宅での待機や療養が重要となるが、各家庭で備蓄できる防災用品の種類や量には限界がある。これに対し、本実施例では、既存の建物に防災備蓄倉庫1を後付けできるため、建物内の各家庭での待機、避難、療養を長期にわたって支えることができる。
【0040】
さらに、本実施例によれば、受水槽を利用した防災備蓄倉庫1には、その側面に出入口12を設けるため、防災用品の出し入れが容易となり、ユーザである住人や管理人の使い勝手が向上する。
【0041】
さらに、本実施例によれば、側面出入口12には外開式ドア121を設けるため、もしも大雨等で防災備蓄倉庫1の周囲に水が押し寄せた場合でも、水の圧力によってドア121は閉扉方向に押圧される。このため、本実施例によれば、ドア121の防水機能を発揮せしめて、防災備蓄倉庫1内への水の浸入を抑制することができる。
【0042】
さらに、本実施例によれば、外開式ドア121を防水扉として構成するため、さらに防水性能を高めることができ、防災備蓄倉庫1の性能を向上させることができる。
【0043】
さらに、本実施例によれば、外開式ドア121には透明または半透明の窓部122を設けるため、外部から防災備蓄倉庫1内の様子を確認でき、使い勝手が向上する。
【0044】
さらに、本実施例によれば、外開式ドア121の開閉に連動して、天井出入口13に設けられた上部蓋131も開閉させるため、ドア121の開扉に応じて上部蓋131を開くことにより、光や空気を倉庫本体11へ導くことができる。
【0045】
さらに、本実施例によれば、上部蓋131を開いた場合でも、外開式ドア121は閉じたままであるため、倉庫本体11の下側に水が押し寄せている場合に、倉庫本体11へ浸水するのを防止できる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。上述の実施形態において、添付図面に図示した構成例に限定されない。本発明の目的を達成する範囲内で、実施形態の構成や処理方法は適宜変更することが可能である。
【0047】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれる。さらに特許請求の範囲に記載された構成は、特許請求の範囲で明示している組合せ以外にも組合せることができる。
【符号の説明】
【0048】
1:防災備蓄倉庫、11:倉庫本体、12:側面出入口、13:天井出入口、14:防災用品、15:リンク、101:建物、102:各階、103:給水用具、104:ポンプ、105:送水管、106:給水メータ、107:配水管、121:外開式ドア、131:上部蓋
図1
図2
図3
図4
図5