(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】膨張弁
(51)【国際特許分類】
F25B 41/335 20210101AFI20240508BHJP
F16K 31/68 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F25B41/335 B
F16K31/68 S
(21)【出願番号】P 2020091153
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】早川 潤哉
(72)【発明者】
【氏名】青木 裕太郎
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-038821(JP,A)
【文献】特開2015-055388(JP,A)
【文献】特開2009-236147(JP,A)
【文献】実開昭60-156373(JP,U)
【文献】実開平04-011366(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0194140(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/31、41/33、41/335
F16K 31/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸に沿って接続された第1流路と第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間に同軸に形成された弁座とを備えた弁本体と、
前記弁本体内に、移動可能に配置された受動部材と、
前記受動部材に取り付けられ、前記弁座に対して着座可能な弁体と、
前記弁本体に取り付けられたパワーエレメントと、
第2軸に沿って前記パワーエレメントから前記受動部材に駆動力を伝達する作動部材と、を有し、
前記第1軸と前記第2軸とは並行
し、
前記弁本体は、基体と、前記基体に取り付けられた蓋体とを有し、前記パワーエレメントは、前記基体と前記蓋体との間に配置されており、
前記蓋体は、前記受動部材の一部に嵌合する中空円筒部を備えている、
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項2】
第1軸に沿って接続された第1流路と第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間に同軸に形成された弁座とを備えた弁本体と、
前記弁本体内に、移動可能に配置された受動部材と、
前記受動部材に取り付けられ、前記弁座に対して着座可能な弁体と、
前記弁本体に取り付けられたパワーエレメントと、
第2軸に沿って前記パワーエレメントから前記受動部材に駆動力を伝達する作動部材と、を有し、
前記第1軸と前記第2軸とは並行し、
前記弁本体は、基体と、前記基体に取り付けられた蓋体とを有し、前記パワーエレメントは、前記基体と前記蓋体との間に配置されており、
前記基体は、前記受動部材の移動を案内するガイド部を有し、
前記蓋体は、前記受動部材の一部に嵌合する中空円筒部を備えている、
ことを特徴とする膨張弁。
【請求項3】
前記蓋体は、前記パワーエレメントに当接する調整部材を螺合するねじ穴を有する、
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の膨張弁。
【請求項4】
第1軸に沿って接続された第1流路と第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間に同軸に形成された弁座とを備えた弁本体と、
前記弁本体内に、移動可能に配置された受動部材と、
前記受動部材に取り付けられ、前記弁座に対して着座可能な弁体と、
前記弁本体に取り付けられたパワーエレメントと、
第2軸に沿って前記パワーエレメントから前記受動部材に駆動力を伝達する作動部材と、を有し、
前記第1軸と前記第2軸とは並行し、
前記弁本体は、前記第1流路及び前記第2流路に並行して、前記パワーエレメントを挟んで前記
第1流路及び前記第2流路に対して反対側に第3流路を有する、
ことを特徴とす
る膨張弁。
【請求項5】
前記弁本体は、基体と、前記基体に取り付けられた蓋体とを有し、前記パワーエレメントは、前記基体と前記蓋体との間に配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の膨張弁。
【請求項6】
前記基体は、前記受動部材の移動を案内するガイド部を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載の膨張弁。
【請求項7】
前記蓋体は、前記受動部材の一部に嵌合する中空円筒部を備えている、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の膨張弁。
【請求項8】
前記蓋体は、前記パワーエレメントに当接する調整部材を螺合するねじ穴を有する、
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の膨張弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の空調装置などに用いられる冷凍サイクルシステムにおいては、設置スペースや配管を省略するために、冷媒の通過量を温度に応じて調整する感温式の膨張弁が使用されている。一般的な膨張弁は、パワーエレメントの駆動により弁体を開閉させることで、冷媒入口側から冷媒出口側へと供給される冷媒の流量を制御している。また、パワーエレメントの駆動力は、作動棒を介して弁本体内の弁体に伝達される。
【0003】
ここで、従来の膨張弁においては、オリフィスを通過する冷媒がクランク状に折れ曲がった冷媒流路を通過するため、冷媒のスムーズな流れが阻害され、異音発生を招くおそれがあった。また、作動棒と弁体とが直列に連結されているため、作動棒の軸線方向に沿って弁本体が長くなるという問題もある。
【0004】
これに対し特許文献1には、レシーバ側に連通する第1ポートと、該第1ポートに直列に配置されエバポレータへ向かう第2ポートとを備え、ポートの軸線方向に可動な弁体が配設された弁本体を有する膨張弁が開示されている。この膨張弁によれば、第1ポートと第2ポートとが直列に配置されるため、スムーズな冷媒の流れを確保することで異音の発生を抑制できる。また、弁体の可動方向と弁体を駆動する作動棒の移動方向とを直交させているため、作動棒の軸線方向に沿った弁本体の長さを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の膨張弁においては、作動棒の先端に形成される第1カム面と、弁体に形成され該第1カム面に当接する第2カム面とが設けられている。作動棒が軸線方向に移動することにより第1カム面が第2カム面を押圧すると、弁体が作動棒の軸線と直交する方向に移動可能となっている。
【0007】
ここで、作動棒の移動量を弁体に精度良く伝達するためには、第1カム面と第2カム面を精度よく形成する必要があり、製造コストが増大する。また、第1カム面と第2カム面との間に生じる摩擦により、弁体のスムーズな移動を行えないおそれがある。さらに作動棒が弁本体の戻り流路に交差して配置されているため、戻り流路内を流れる冷媒が作動棒に当たり、異音の原因となるカルマン渦などを生じさせるおそれもある。
【0008】
そこで本発明は、弁本体内におけるスムーズな流体の流れを確保するとともに、弁体の精度良い移動を確保できる膨張弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明による膨張弁は、
第1軸に沿って接続された第1流路と第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間に同軸に形成された弁座とを備えた弁本体と、
前記弁本体内に、移動可能に配置された受動部材と、
前記受動部材に取り付けられ、前記弁座に対して着座可能な弁体と、
前記弁本体に取り付けられたパワーエレメントと、
第2軸に沿って前記パワーエレメントから前記受動部材に駆動力を伝達する作動部材と、を有し、
前記第1軸と前記第2軸とは並行し、
前記弁本体は、基体と、前記基体に取り付けられた蓋体とを有し、前記パワーエレメントは、前記基体と前記蓋体との間に配置されており、
前記蓋体は、前記受動部材の一部に嵌合する中空円筒部を備えている、ことを特徴とする。
本発明による膨張弁は、
第1軸に沿って接続された第1流路と第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間に同軸に形成された弁座とを備えた弁本体と、
前記弁本体内に、移動可能に配置された受動部材と、
前記受動部材に取り付けられ、前記弁座に対して着座可能な弁体と、
前記弁本体に取り付けられたパワーエレメントと、
第2軸に沿って前記パワーエレメントから前記受動部材に駆動力を伝達する作動部材と、を有し、
前記第1軸と前記第2軸とは並行し、
前記弁本体は、基体と、前記基体に取り付けられた蓋体とを有し、前記パワーエレメントは、前記基体と前記蓋体との間に配置されており、
前記基体は、前記受動部材の移動を案内するガイド部を有し、
前記蓋体は、前記受動部材の一部に嵌合する中空円筒部を備えている、ことを特徴とする。
本発明による膨張弁は、
第1軸に沿って接続された第1流路と第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間に同軸に形成された弁座とを備えた弁本体と、
前記弁本体内に、移動可能に配置された受動部材と、
前記受動部材に取り付けられ、前記弁座に対して着座可能な弁体と、
前記弁本体に取り付けられたパワーエレメントと、
第2軸に沿って前記パワーエレメントから前記受動部材に駆動力を伝達する作動部材と、を有し、
前記第1軸と前記第2軸とは並行し、
前記弁本体は、前記第1流路及び前記第2流路に並行して、前記パワーエレメントを挟んで前記第1流路及び前記第2流路に対して反対側に第3流路を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、弁本体内におけるスムーズな流体の流れを確保するとともに、弁体の精度良い移動を確保できる膨張弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態における膨張弁を、冷媒サイクルシステムに適用した例を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における膨張弁を切断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明にかかる実施形態について説明する。本実施形態において、パワーエレメントの軸線方向をLとする。
【0013】
(膨張弁の概要)
図1を参照して、本実施形態における膨張弁1の概要について説明する。
図1は、本実施形態における膨張弁1を、冷媒サイクルシステム100に適用した例を模式的に示す概略断面図である。
図2は、本実施形態における膨張弁を切断して示す斜視図である。
【0014】
本実施形態では、膨張弁1は、コンプレッサ101と、コンデンサ102と、エバポレータ104とに接続されており、これらにより冷媒サイクルシステム100が構成される。
【0015】
膨張弁1は、弁本体2と、弁体(ボール)3と、付勢装置4と、作動棒(作動部材)5と、パワーエレメント8とを具備する。
【0016】
弁本体2は、基体200と、蓋体210とを有する。直方体形状の基体200は、袋穴状の大径開口201を備えている。大径開口201の底面202側は長円断面形状であり、それ以外は円形断面形状を有する。大径開口201の底面202には、中空円筒状のガイド部203が形成されている。ガイド部203の内側に弁室VCが形成されている。弁室VCは、第2流路22に連通している。
【0017】
略円筒状の蓋体210は、大径開口201内に嵌合される円盤部211と、円盤部211の片面から突出した中空円筒部212とを有する。円盤部211の外周に形成された周溝にO-リングOR1が配置され、大径開口201との間を密封している。
【0018】
中空円筒部212は、円盤部211の軸線に対して偏位した位置において、ガイド部203に対向するように形成されている。円盤部211における中空円筒部212が設けられた面に対向する面(
図2で上面)には、中空円筒部212と同軸に円筒状の第1流路21が形成されている。
【0019】
また蓋体210には、第1流路21と並列して、ねじ穴204が形成されている。ねじ穴204には、外周に雄ねじを形成した円筒状の調整部材220が螺合可能に取りつけられている。
【0020】
大径開口201の底面202の近傍に配置される付勢装置4は、円形の線材を螺旋状に巻いたコイルばね41と、受動部材42とを有する。受動部材42は、被駆動部421と駆動部422とを並設してなる略長円筒形状を有する。
【0021】
被駆動部421は、大径開口201の底面202に対向して凹部423を形成しており、凹部423内にはコイルばね41が収容されている。コイルばね41は、後述するパワーエレメント8に対して相互に中心を合わせて配置されると好ましい。
【0022】
駆動部422は、ガイド部203に隙間嵌めにて嵌合する嵌合孔424と、嵌合孔424と同軸に蓋体210側に突出する有頂円筒状のサポート部425とを有する。ガイド部203の外周に形成された周溝にO-リングOR3が配置され、嵌合孔424との間を密封している。
【0023】
サポート部425の頂壁には、その中央に形成された円錐状の凹部に弁体3が溶接により固着されており、また弁体3の周囲には複数の連通穴426が形成されている。
【0024】
サポート部425は、蓋体210の中空円筒部212の下端側に嵌合している。サポート部425の外周に形成された周溝にO-リングOR2が配置され、中空円筒部212の内周との間を密封している。
【0025】
中空円筒部212は、仕切り壁215を備え、仕切り壁215の中央に小開口216が形成されている。小開口216の弁体3側端部に弁座217が形成されている。
【0026】
蓋体210の円盤部211と、受動部材42の被駆動部421との間に円筒状空間であるエレメント室ECが形成され、エレメント室EC内にパワーエレメント8と作動棒5が配置されている。
【0027】
パワーエレメント8は、蓋部材82と、ダイアフラム83と、受け部材84の外周を溶接により固着した構造を有し、蓋部材82とダイアフラム83とで形成された空間POには、注入孔から作動ガスが注入され栓81により封止されている。ダイアフラム83と受け部材84との間の空間LSには、ダイアフラム83に接するようにしてストッパ部材85が配置されている。ストッパ部材85の袋穴内に挿通された作動棒5の突出端が、被駆動部421に当接している。作動棒5は省略でき、その場合にはストッパ部材85が作動部材となる。
【0028】
基体200において、第2流路22に対してパワーエレメント8を挟んで反対側に、戻り流路(第3流路)23が形成されている。戻り流路23とエレメント室ECとは、連通路24を介して連通している。連通路24は、戻り流路23を流れる冷媒が流れこみやすいように傾いて形成されている。
【0029】
基体200と蓋体210を組みつけた弁本体2において、第1流路21は、例えば供給側流路であり、弁室VCには、供給側流路を介して冷媒(流体ともいう)が供給される。第2流路22は、例えば排出側流路であり、弁室VC内の流体は、第2流路22を介して膨張弁外に排出される。第1流路21と弁室VCとの間は、小開口216により接続されている。
図1に示すように、第1流路21と、小開口216と、弁座217と、弁室VCと、第2流路22は、軸線(第2軸)Lに平行な共通軸線(第1軸)Oを持つ。
【0030】
弁室VC内に配置された弁体3が、環状の弁座217に着座しているとき、第1流路21と第2流路22とは非連通状態となる。ただし、弁体3が弁座217に着座しているときでも、制限された量の冷媒を通過させることがある。一方、弁体3が弁座217から離間しているとき、第1流路21と第2流路22とは連通状態となる。
図1、2は、弁体3が弁座217から離間した状態を示している。
【0031】
被駆動部421の対向する面に突出端を当接させた作動棒5は、コイルばね41による付勢力に抗して、軸線Lに沿って受動部材42を弁体3が開弁する開弁方向に押圧することができる。作動棒5が開弁方向に移動するとき、弁体3は、共通軸線Oに沿って弁座217から離間し、膨張弁1が開状態となる。作動棒5のストローク(可動範囲)が、弁体3の最大リフト量に相当する。
【0032】
(膨張弁の組付)
コイルばね41を凹部423に収容した受動部材42を、基体200の大径開口201に取り付けて、ガイド部203の外周に嵌合孔424の内周を嵌合させる。
【0033】
その後、作動棒5とストッパ部材85とを組付けたパワーエレメント8を大径開口201に挿入し、受動部材42の被駆動部421の対向する面に作動棒5の突出端を当接させ、さらに大径開口201に蓋体210の円盤部211を嵌合させる。このとき、中空円筒部212の先端内周をサポート部425の外周に嵌合させることで、基体200と蓋体210の位置決めがなされる。かかる状態で、不図示の締結手段を用いて、基体200と蓋体210とが固定される。
【0034】
蓋体210のねじ穴204に螺合させた調整部材220を螺動させることにより、調整部材220がパワーエレメント8の端部に付与する押圧力を変更できる。これにより、作動ガスの圧力に対する作動棒5の移動量の調整を行うことができる。
【0035】
(膨張弁の動作)
図1を参照して、膨張弁1の動作例について説明する。コンプレッサ101で加圧された冷媒は、コンデンサ102で液化され、膨張弁1に送られる。また、膨張弁1で断熱膨張された冷媒はエバポレータ104に送り出され、エバポレータ104で、エバポレータの周囲を流れる空気と熱交換される。エバポレータ104から戻る冷媒は、膨張弁1(より具体的には、戻り流路23)を通ってコンプレッサ101側へ戻される。
【0036】
膨張弁1には、コンデンサ102から高圧冷媒が供給される。より具体的には、コンデンサ102からの高圧冷媒は、第1流路21を介して弁室VCに供給される。
【0037】
弁体3が、弁座217に着座しているとき(換言すれば、膨張弁1が閉状態のとき)には、弁室VCの上流側の第1流路21と弁室VCの下流側の第2流路22とは、非連通状態である。他方、弁体3が、弁座217から離間しているとき(換言すれば、膨張弁1が開状態のとき)には、弁室VCに供給された冷媒は、第2流路22を通ってエバポレータ104へ送り出される。なお、膨張弁1の閉状態と開状態との間の切り換えは、パワーエレメント8に接続された作動棒5によって行われる。
【0038】
パワーエレメント8のダイアフラム83は、ストッパ部材85を介して作動棒5の一端に接続される。このため、空間PO内の作動ガスが液化されると収縮が生じ、作動棒5はパワーエレメント8に近接する方向に移動し、それによりコイルばね41の付勢力により受動部材42がガイド部203により案内されつつ同方向に変位して、弁体3が弁座217に着座する。これにより第1流路21側から弁室VCへと向かう冷媒の流れが制限される。
【0039】
一方、液化された空間PO内の作動ガスが気化されると膨張が生じ、作動棒5はパワーエレメント8から離間する方向に移動して受動部材42に駆動力を伝達し、それによりコイルばね41の付勢力に抗して受動部材42が同方向に変位して弁体3が弁座217から離間する。これにより、第1流路21側から小開口216及び連通穴426を介して弁室VCへと向かう冷媒の流れが許容される。こうして、膨張弁1の開状態と閉状態との間の切り換えが行われる。
【0040】
戻り流路23を流れる冷媒の一部は、連通路24を介してエレメント室EC及びパワーエレメント8の空間LSに進入する。このため、戻り流路23を流れる冷媒の温度、圧力に応じて、空間LS内の作動ガスの相(気相、液相等)が変化し、作動棒5が駆動される。換言すれば、
図1に記載の膨張弁1では、エバポレータ104から膨張弁1に戻る冷媒の温度、圧力に応じて、膨張弁1からエバポレータ104に向けて供給される冷媒の量が自動的に調整される。
【0041】
本実施形態によれば、第1流路21と、小開口216と、弁室VCと、第2流路22が、共通軸線Oに沿ってストレートに配置されているため、これらを通過する冷媒の流れがスムーズになり、異音などの発生を抑制できる。
【0042】
また、パワーエレメント8を、弁本体2内部のエレメント室EC内に配置したため、外部環境から隔離されることで、空間PO内の作動ガスが主として戻り流路23を流れる冷媒の温度、圧力の影響を受け、これにより作動棒5の精度良い動作を確保できる。特に、エレメント室ECの内壁を形成する部位を断熱性の高い素材(例えば樹脂)などから形成することで、エレメント室EC内の環境を外部環境から良好に隔離することができ、作動棒5のさらに精度良い動作を確保できる。
【0043】
さらに本実施形態では、作動棒5の移動方向(軸線L)と弁体3の移動方向(共通軸線O)とが平行であるため、一般的に複雑な構造であって摩擦などが生じやすい駆動方向変換手段を設ける必要がなく、弁体3のスムーズな移動を確保できるともに、膨張弁1を低コストで製造できる。また、作動棒5の移動量が弁体3の移動量に等しいため、調整部材220を用いたパワーエレメント8の調整も容易に行える。
【0044】
また、膨張弁1の戻り流路23内に突出する部材を設けていないため、戻り流路23内を冷媒がスムーズに流れ、異音の原因となるカルマン渦などを生じさせることがない。
【0045】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明の範囲内において、上述の実施形態の任意の構成要素の変形が可能である。また、上述の実施形態において任意の構成要素の追加または省略が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 :膨張弁
2 :弁本体
200 :基体
210 :蓋体
3 :弁体
4 :付勢装置
5 :作動棒
8 :パワーエレメント
217 :弁座
21 :第1流路
22 :第2流路
23 :戻り流路
41 :コイルばね
42 :受動部材
100 :冷媒サイクルシステム
101 :コンプレッサ
102 :コンデンサ
104 :エバポレータ
VC :弁室
EC :エレメント室