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特許7483261磁気着脱機構および連結体の連結分離システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】磁気着脱機構および連結体の連結分離システム
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/02 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
H01F7/02 F
H01F7/02 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020170041
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061843
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】多田隈 建二郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将広
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼根 英里
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 昌己
(72)【発明者】
【氏名】昆陽 雅司
(72)【発明者】
【氏名】田所 諭
(72)【発明者】
【氏名】岡田 佳都
(72)【発明者】
【氏名】大野 和則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知也
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212705(JP,A)
【文献】特開2019-107957(JP,A)
【文献】特表2021-515391(JP,A)
【文献】特開2019-209776(JP,A)
【文献】実開平7-43721(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石から成り、対象物に磁気的に吸着する吸着位置と、前記対象物から剥離する剥離位置との間で、前記対象物に対して相対的に移動可能に設けられた吸着用磁石と、前記吸着用磁石と連動するよう設けられ、前記吸着用磁石の前記吸着位置からの移動距離に対して、前記吸着用磁石の吸着力とは反対の特性を有する補償連動部とを有し、前記補償連動部を往復移動させることにより、前記吸着用磁石を前記吸着位置と前記剥離位置とに移動可能に設けられた内部力補償型磁石ユニットと、
一端が前記補償連動部に連結されて、前記吸着用磁石から離れる方向に伸びる連結部材と、
所定の磁気パターンを有し、前記連結部材を介して前記補償連動部と共に往復移動するよう前記連結部材の他端に設けられた着脱側磁気鍵と、
前記着脱側磁気鍵の磁気パターンと極性が反対の磁気パターンを有し、前記着脱側磁気鍵に対して所定の位置関係にあるとき、前記着脱側磁気鍵との間に磁気吸引力が働くよう設けられた操作側磁気鍵とを、
有することを特徴とする磁気着脱機構。
【請求項2】
前記着脱側磁気鍵は、外表面の少なくとも一部に第1円滑表面部を有し、
前記操作側磁気鍵は、外表面の少なくとも一部に第2円滑表面部を有し、
前記着脱側磁気鍵の前記第1円滑表面部に対して、所定の向きで前記第2円滑表面部を接触または近接させた状態で、前記第1円滑表面部に沿った所定の方向に向かって前記操作側磁気鍵を相対的に移動させたとき、前記所定の位置関係になるよう構成されていることを
特徴とする請求項1記載の磁気着脱機構。
【請求項3】
第1連結部と第2連結部とを連結した連結体の連結分離システムであって、
請求項1または2記載の磁気着脱機構を有し、
前記第1連結部は、前記内部力補償型磁石ユニットと前記連結部材と前記着脱側磁気鍵とが取り付けられており、
前記第2連結部は、前記内部力補償型磁石ユニットの前記吸着用磁石が前記吸着位置のとき、前記吸着用磁石の磁気吸引力により前記第1連結部と連結し、前記吸着用磁石が前記剥離位置のとき、前記第1連結部から分離するよう設けられていることを
特徴とする連結体の連結分離システム。
【請求項4】
前記連結体が所定の姿勢で所定の場所にあるとき、前記所定の位置関係になるよう、前記着脱側磁気鍵および前記操作側磁気鍵が配置されていることを特徴とする請求項3記載の連結体の連結分離システム。
【請求項5】
前記吸着用磁石が前記吸着位置のとき、前記連結体を前記所定の場所から所定の第1の方向に向かって移動させることにより、前記着脱側磁気鍵と前記操作側磁気鍵との間に働く磁気吸引力で前記着脱側磁気鍵が移動して、前記吸着用磁石を前記吸着位置から前記剥離位置に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項4記載の連結体の連結分離システム。
【請求項6】
前記吸着用磁石が前記剥離位置のとき、前記連結体を前記所定の場所から所定の第2の方向に向かって移動させることにより、前記着脱側磁気鍵と前記操作側磁気鍵との間に働く磁気吸引力で前記着脱側磁気鍵が移動して、前記吸着用磁石を前記剥離位置から前記吸着位置に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項4または5記載の連結体の連結分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気着脱機構および連結体の連結分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な装置等において、所定の機能を有する部分や部品などをモジュール化し、それらのモジュールを着脱可能に構成することが行われている。例えば、ドローンなどの各種移動体において、モジュール化設計および各モジュールの連結・分離を行う機構が数多く提案されている(例えば、非特許文献1または2参照)。また、合体再変形ロボットや列車などでも、容易に着脱可能な連結器そのものの研究開発や実用化が進められている(例えば、非特許文献3参照)。このようなモジュール化および各モジュールの着脱機構は、各モジュールの交換や修理を容易にするため、装置全体のメンテナンスの効率化につながっている。
【0003】
なお、磁気による着脱を容易に行えるものとして、いわゆる内部力補償型磁石ユニット(IBマグネット;Internally-Balanced Magnetic Unit)がある(例えば、非特許文献3または特許文献1参照)。内部力補償型磁石ユニットは、永久磁石の吸着力Fが、吸着面に接近するほど急激に増大する非線形特性を有するため、この吸着力Fを、同等の特性を有する非線形ばねや別の永久磁石(補償用磁石)等の復元力Fで補償するものである。この機構では、永久磁石の内部力Finter(=F-F)が変位によらず0となるため、永久磁石は常に平衡状態となり、永久磁石の移動には力を要さない。また、この機構では、永久磁石を吸着面に接触させることにより、非線形ばねや補償用磁石の反力Fが機構全体を対象面に押し付けるため、吸着状態にすることができる。また、永久磁石を吸着面から離すことにより、非線形ばねや補償用磁石等の反力Fが小さくなるため、吸着面から容易に剥離することができる。このように、内部力補償型磁石ユニットは、永久磁石を小さい力で移動させるだけで、永久磁石の吸着状態を切替可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Jose Baca, Nohelia Jimenez Kyle, Winfield-Simone, Tay Brianna, Tijerina Hans, Baierlipp Jonathan, Cor-tez Hector Moreno, “Design and Simulation Analysis of a Modular Aerial System”, Proceedings of the Latin Ameri-can Congress on Automation and Robotics, LACAR 2019: Advances in Automation and Robotics Research, p.112-118
【文献】Baca, J., Ferre, M., Aracil, R., “A heterogeneous modular robotic design for fast response to a diversity of tasks”, Ro-bot. Auton. Syst., 2012, 60(4), p.522-531
【文献】S. Murata, E. Yoshida, A. Kamimura, H. Kurokawa, K. Tomita, S. Kokaji, “M-TRAN: self-reconfigurable modular robotic system”, IEEE/ASME Transactions on Mechatronics, Dec. 2002, Volume 7 , Issue 4 ,p.431-441
【文献】広瀬茂男、今里峰久、工藤良昭、梅谷陽二、「内部力補償型磁気吸着ユニット」、日本ロボット学会誌、1985年2月、Vol. 3、No. 1、p.10-19
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-212705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1乃至3に記載のような従来のモジュールの着脱機構は、着脱するためのトリガ部分が幾何学的な凹凸を有し、その凹凸の形状を利用してトリガ部分を作動させ、各モジュールを着脱するようになっている。しかし、この着脱機構では、その凹凸に外部のものが引っかかったりぶつかったりするなどの外界からの作用により、トリガ部分が予期しないタイミングで作動してしまうことがあるという課題があった。例えば、ドローンなどの移動体では、移動により外界との接触が多くなるため、移動の最中に予期せずトリガ部分が作動する可能性が高く、分解して破損したり、周囲の環境に悪影響を与えたりする危険性がある。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、予期しないタイミングでの着脱を防ぐことができ、着脱する際には、容易に着脱することができる磁気着脱機構および連結体の連結分離システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る磁気着脱機構は、永久磁石から成り、対象物に磁気的に吸着する吸着位置と、前記対象物から剥離する剥離位置との間で、前記対象物に対して相対的に移動可能に設けられた吸着用磁石と、前記吸着用磁石と連動するよう設けられ、前記吸着用磁石の前記吸着位置からの移動距離に対して、前記吸着用磁石の吸着力とは反対の特性を有する補償連動部とを有し、前記補償連動部を往復移動させることにより、前記吸着用磁石を前記吸着位置と前記剥離位置とに移動可能に設けられた内部力補償型磁石ユニットと、一端が前記補償連動部に連結されて、前記吸着用磁石から離れる方向に伸びる連結部材と、所定の磁気パターンを有し、前記連結部材を介して前記補償連動部と共に往復移動するよう前記連結部材の他端に設けられた着脱側磁気鍵と、前記着脱側磁気鍵の磁気パターンと極性が反対の磁気パターンを有し、前記着脱側磁気鍵に対して所定の位置関係にあるとき、前記着脱側磁気鍵との間に磁気吸引力が働くよう設けられた操作側磁気鍵とを、有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る磁気着脱機構は、着脱側磁気鍵と操作側磁気鍵とが、互いに極性が反対の磁気パターンを有しており、所定の位置関係にあるとき、互いの間に磁気吸引力が働くため、磁気吸引力が働いた状態で操作側磁気鍵を相対的に動かすことにより、着脱側磁気鍵を動かすことができる。これにより、操作側磁気鍵を相対的に動かして、着脱側磁気鍵と共に補償連動部を往復移動させることができ、吸着用磁石を吸着位置と剥離位置との間で移動させて、対象物を着脱することができる。このように、本発明に係る磁気着脱機構は、磁気吸引力を利用して着脱を行うことができ、従来の凹凸の形状を利用して着脱を行うものと比べて、外界からの作用を受けにくいため、予期しないタイミングでの着脱を防ぐことができる。
【0010】
本発明に係る磁気着脱機構は、内部力補償型磁石ユニット(IBマグネット)を利用しているため、小さい力で補償連動部と共に吸着用磁石を動かすことができる。このため、着脱側磁気鍵と操作側磁気鍵との間の磁気吸引力が小さくても、吸着用磁石を動かすことができ、対象物を容易に着脱することができる。
【0011】
本発明に係る磁気着脱機構は、着脱側磁気鍵および操作側磁気鍵の磁気パターンを複雑にすることにより、外界からの作用をより受けにくくすることができ、予期しない着脱を防ぐ効果を高めることができる。また、本発明に係る磁気着脱機構で、補償連動部は、吸着用磁石の吸着力とは反対の特性を有するものであればいかなるものであってもよく、例えば、非線形バネを有するものや、別の永久磁石を有するものであってもよい。
【0012】
本発明に係る磁気着脱機構で、前記着脱側磁気鍵は、外表面の少なくとも一部に第1円滑表面部を有し、前記操作側磁気鍵は、外表面の少なくとも一部に第2円滑表面部を有し、前記着脱側磁気鍵の前記第1円滑表面部に対して、所定の向きで前記第2円滑表面部を接触または近接させた状態で、前記第1円滑表面部に沿った所定の方向に向かって前記操作側磁気鍵を相対的に移動させたとき、前記所定の位置関係になるよう構成されていてもよい。
【0013】
この場合、第1円滑表面部に対して、第2円滑表面部を接触または近接させた非接触の状態で相対的に移動させるだけで、着脱側磁気鍵と操作側磁気鍵との間に磁気吸引力を働かせて、吸着用磁石を移動させることができ、容易に対象物を着脱することができる。また、着脱のトリガ部分が、第1円滑表面部および第2円滑表面部であり、トリガ部分の表面に凹凸がないため、外界からの作用を特に受けにくく、予期しない着脱を防ぐ効果をより高めることができる。
【0014】
本発明に係る連結体の連結分離システムは、第1連結部と第2連結部とを連結した連結体の連結分離システムであって、本発明に係る磁気着脱機構を有し、前記第1連結部は、前記内部力補償型磁石ユニットと前記連結部材と前記着脱側磁気鍵とが取り付けられており、前記第2連結部は、前記内部力補償型磁石ユニットの前記吸着用磁石が前記吸着位置のとき、前記吸着用磁石の磁気吸引力により前記第1連結部と連結し、前記吸着用磁石が前記剥離位置のとき、前記第1連結部から分離するよう設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る連結体の連結分離システムは、本発明に係る磁気着脱機構により、磁気吸引力を利用して第1連結部と第2連結部とを連結したり分離したりすることができる。これにより、従来の凹凸の形状を利用して着脱を行うものと比べて、外界からの作用を受けにくく、予期しないタイミングでの着脱を防ぐことができる。また、磁気着脱機構の内部力補償型磁石ユニット(IBマグネット)により、小さい力で吸着用磁石を動かすことができ、第1連結部と第2連結部との間の連結や分離を容易に行うことができる。
【0016】
本発明に係る連結体の連結分離システムは、前記連結体が所定の姿勢で所定の場所にあるとき、前記所定の位置関係になるよう、前記着脱側磁気鍵および前記操作側磁気鍵が配置されていることが好ましい。この場合、連結体を所定の姿勢で所定の場所に相対的に移動させることにより、着脱側磁気鍵と操作側磁気鍵との間に磁気吸引力を働かせることができ、第1連結部と第2連結部との間の連結や分離を行うことができる。連結体が同じ姿勢および同じ場所のときにのみ、連結や分離を行うため、安定した運用を行うことができる。
【0017】
また、この場合、前記吸着用磁石が前記吸着位置のとき、前記連結体を前記所定の場所から所定の第1の方向に向かって移動させることにより、前記着脱側磁気鍵と前記操作側磁気鍵との間に働く磁気吸引力で前記着脱側磁気鍵が移動して、前記吸着用磁石を前記吸着位置から前記剥離位置に移動可能に構成されていてもよい。これにより、連結体を移動させるだけで、第1連結部と第2連結部とを容易に分離することができる。また、前記吸着用磁石が前記剥離位置のとき、前記連結体を前記所定の場所から所定の第2の方向に向かって移動させることにより、前記着脱側磁気鍵と前記操作側磁気鍵との間に働く磁気吸引力で前記着脱側磁気鍵が移動して、前記吸着用磁石を前記剥離位置から前記吸着位置に移動可能に構成されていてもよい。これにより、連結体を移動させるだけで、第1連結部と第2連結部とを容易に連結することができる。これらの場合、連結体は、例えば、能動的に移動可能なドローンなどの各種移動体や、搬送されて受動的に移動するものから成ることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、予期しないタイミングでの着脱を防ぐことができ、着脱する際には、容易に着脱することができる磁気着脱機構および連結体の連結分離システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態の磁気着脱機構の断面図である。
図2】本発明の実施の形態の連結体の連結分離システムの、(a)連結体がドローンから成る一例を示す平面図、(b)連結体がドローンと搬送物とから成る一例を示す側面図、(c)連結体がドローンと、ドローンを吊り下げる天井等の部位から成る一例を示す側面図である。
図3】本発明の実施の形態の連結体の連結分離システムの、連結体がドローンから成り、ポールの上部で連結や分離を行う例を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態の連結体の連結分離システムの、連結体がドローンから成り、離着陸を行うレールに吊り下げられた状態で、連結や分離を行う例を示す側面図である。
図5】本発明の実施の形態の連結体の連結分離システムの、連結力を高めた一例を示す(a)分離状態、(b)連結直前または分離直後の状態、(c)連結状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図5は、本発明の実施の形態の磁気着脱機構および連結体の連結分離システムを示している。
図1に示すように、磁気着脱機構10は、内部力補償型磁石ユニット11と連結部材12と着脱側磁気鍵13と操作側磁気鍵14とを有している。
【0021】
内部力補償型磁石ユニット11は、支持部21と吸着用磁石22と補償連動部23とを有している。支持部21は、外形が円柱状を成し、一方の表面の中央に、所定の深さを有する円形の凹部21aを有している。また、支持部21は、その円形の凹部21aの底部と他方の表面の中央部とを貫通して設けられた貫通孔21bを有している。貫通孔21bは、凹部21aの内径よりも小さい内径を有している。
【0022】
吸着用磁石22は、薄い円柱状の永久磁石から成り、凹部21aの内径よりやや小さい直径と、凹部21aの深さより小さい厚みとを有している。吸着用磁石22は、外周面が凹部21aの内壁面に対向するよう、支持部21の凹部21aの内部に配置されている。吸着用磁石22は、中心線方向に沿って、凹部21aの内側で往復移動可能に設けられている。
【0023】
補償連動部23は、取付部材23aと非線形バネ23bとを有している。取付部材23aは、細長く、貫通孔21bに挿入されており、一端が凹部21aの内側で吸着用磁石22に取り付けられ、吸着用磁石22と連動するよう設けられている。取付部材23aは、凹部21aの外側の他端にフランジ部23cが設けられている。非線形バネ23bは、貫通孔21bの周囲の支持部21の他方の表面と、フランジ部23cとの間に伸縮可能に取り付けられている。非線形バネ23bは、吸着用磁石22の吸着位置からの移動距離と、吸着用磁石22の吸着力との関係に対し、その吸着力を打ち消す力を、支持部21とフランジ部23cとの間に及ぼすよう設けられている。これにより、補償連動部23は、吸着用磁石22の吸着位置からの移動距離に対して、吸着用磁石22の吸着力とは反対の特性を有するようになっている。
【0024】
内部力補償型磁石ユニット11は、凹部21aの開口側で吸着用磁石22と吸着可能に設けられた磁石1aを有する対象物1に対して着脱可能に構成されている。すなわち、内部力補償型磁石ユニット11は、補償連動部23を往復移動させることにより、吸着用磁石22を、凹部21aの開口側で対象物1に磁気的に吸着する吸着位置と、凹部21aの底部側で対象物1から剥離する剥離位置との間で、対象物1に対して相対的に移動可能に構成されている。内部力補償型磁石ユニット11は、吸着用磁石22が吸着位置のとき、非線形バネ23bの反力が支持部21を対象物1に押し付けることにより、対象物1に吸着可能になっている。また、吸着用磁石22を吸着位置から剥離位置に移動させるとき、非線形バネ23bの反力が小さくなることにより、対象物1から容易に剥離可能になっている。なお、図1に示す一例では、内部力補償型磁石ユニット11は、非特許文献3に示すIBマグネットから成っているが、特許文献1に示すような、別の永久磁石を利用したもの等から成っていてもよい。
【0025】
連結部材12は、細長いロッドから成り、吸着用磁石22から離れる方向に伸びるよう、一端が取付部材23aのフランジ部23cに連結されている。連結部材12は、吸着用磁石22による磁場の影響をほとんど受けない位置まで、他端が伸びている。なお、連結部材12は、吸着用磁石22に動力を伝達して吸着用磁石22を移動可能であれば、ロッドに限らず、ワイヤーや流体を利用した構成など、いかなる構成を有していてもよい。
【0026】
着脱側磁気鍵13は、所定の磁気パターンを有し、連結部材12を介して補償連動部23と共に往復移動するよう、連結部材12の他端に取り付けられている。着脱側磁気鍵13は、連結部材12の伸張方向に沿って磁気パターンが変化するよう設けられている。また、着脱側磁気鍵13は、磁気パターンが変化する方向に沿った外表面が円滑に形成されて、第1円滑表面部13aを成している。なお、図1に示す一例では、着脱側磁気鍵13は、3つの磁石13bを並べて、所定の磁気パターンを形成している。
【0027】
操作側磁気鍵14は、着脱側磁気鍵13の磁気パターンと極性が反対の磁気パターンを有している。操作側磁気鍵14は、着脱側磁気鍵13に対して所定の位置関係にあるとき、すなわち、その磁気パターンが着脱側磁気鍵13の磁気パターンと対向し、さらに着脱側磁気鍵13との距離が所定の範囲内にあるとき、着脱側磁気鍵13との間に磁気吸引力が働くよう設けられている。操作側磁気鍵14は、その磁気パターンが変化する方向に沿った外表面が円滑に形成されて、第2円滑表面部14aを成している。なお、図1に示す一例では、操作側磁気鍵14は、3つの磁石14bを並べて、着脱側磁気鍵13の磁気パターンと極性が反対の磁気パターンを形成している。
【0028】
磁気着脱機構10は、着脱側磁気鍵13の磁気パターンと操作側磁気鍵14の磁気パターンが変化する方向を揃えて、着脱側磁気鍵13の第1円滑表面部13aに対して、操作側磁気鍵14の第2円滑表面部14aを接触または近接させた状態から、各磁気パターンが変化する方向に向かって操作側磁気鍵14を相対的に移動させたとき、所定の位置関係になり、着脱側磁気鍵13と操作側磁気鍵14との間に磁気吸引力が働くようになっている。
【0029】
次に、作用について説明する。
磁気着脱機構10は、着脱側磁気鍵13と操作側磁気鍵14とが、互いに極性が反対の磁気パターンを有しており、所定の位置関係にあるとき、互いの間に磁気吸引力が働くため、磁気吸引力が働いた状態で操作側磁気鍵14を相対的に動かすことにより、着脱側磁気鍵13を動かすことができる。このとき、内部力補償型磁石ユニット(IBマグネット)11により、着脱側磁気鍵13と共に、補償連動部23および吸着用磁石22を小さい力で往復移動させることができる。これにより、吸着用磁石22を吸着位置と剥離位置との間で移動させて、対象物1を容易に着脱することができる。このように、磁気着脱機構10は、磁気吸引力を利用して着脱を行うことができ、従来の凹凸の形状を利用して着脱を行うものと比べて、外界からの作用を受けにくいため、予期しないタイミングでの着脱を防ぐことができる。
【0030】
また、磁気着脱機構10は、着脱側磁気鍵13の第1円滑表面部13aに対して、操作側磁気鍵14の第2円滑表面部14aを接触または近接させた非接触の状態で相対的に移動させるだけで、着脱側磁気鍵13と操作側磁気鍵14との間に磁気吸引力を働かせて、吸着用磁石22を移動させ、容易に対象物1を着脱することができる。このように、着脱のトリガ部分が、第1円滑表面部13aおよび第2円滑表面部14aであり、トリガ部分の表面に凹凸がないため、外界からの作用を特に受けにくく、予期しない着脱を防ぐ効果をより高めることができる。
【0031】
また、磁気着脱機構10は、着脱側磁気鍵13および操作側磁気鍵14の磁気パターンを複雑にすることにより、外界からの作用をより受けにくくすることができ、予期しない着脱を防ぐ効果をさらに高めることができる。磁気着脱機構10は、操作側磁気鍵14がある状況でのみ、対象物1の着脱を行うことができ、限定性の効果が高い。
【0032】
磁気着脱機構10は、本発明の実施の形態の連結体の連結分離システムに利用することができる。すなわち、図2乃至図5に示すように、本発明の実施の形態の連結体の連結分離システムは、第1連結部31と第2連結部32とを磁気着脱機構10により連結した連結体30を、連結したり分離したりするためのシステムである。連結体30は、連結および分離する部位を有するものであれば、いかなるものであってもよい。図2乃至図4に示す具体的な一例では、連結体30、第1連結部31または第2連結部32が、ドローンから成るが、ドローン以外の各種移動体や、搬送されて受動的に移動するものから成っていてもよい。
【0033】
第1連結部31は、磁気着脱機構10の内部力補償型磁石ユニット11と連結部材12と着脱側磁気鍵13とが取り付けられている。第2連結部32は、対象物1に対応しており、磁気着脱機構10の吸着用磁石22と吸着可能に設けられた永久磁石32aを有している。第2連結部32は、内部力補償型磁石ユニット11の吸着用磁石22が吸着位置のとき、吸着用磁石22の磁気吸引力により第1連結部31と連結し、吸着用磁石22が剥離位置のとき、第1連結部31から分離するよう設けられている。なお、第1連結部31および第2連結部32は、逆であってもよい。
【0034】
図2に示す連結体30、第1連結部31または第2連結部32がドローンから成る例では、2つに分離可能に設けられたドローン本体の一方が第1連結部31、他方が第2連結部32であってもよく、プロペラを有する駆動部が第1連結部31、その駆動部を着脱可能に設けられたドローン本体が第2連結部32であってもよい(図2(a)参照)。これらの場合、ドローンを機能部位ごとに分解することができ、分解した機能部位ごとに修理や交換などのメンテナンスを容易に行うことができる。また、搬送物を搬送可能に設けられたドローンが第1連結部31、搬送物が第2連結部32であってもよい(図2(b)参照)。この場合、搬送物を受け取る場面でのみ、操作側磁気鍵14を利用すればよく、所望の場所や人に搬送物を届けることができる。また、吊り下げ可能に設けられたドローンが第1連結部31、ドローンを吊り下げる天井等の部位が第2連結部32であってもよい(図2(c)参照)。この場合、所望の場所や時間に離着陸を行うことができる。
【0035】
本発明の実施の形態の連結体の連結分離システムは、磁気着脱機構10により、磁気吸引力を利用して第1連結部31と第2連結部32とを連結したり分離したりすることができる。これにより、従来の凹凸の形状を利用して着脱を行うものと比べて、外界からの作用を受けにくく、予期しないタイミングでの着脱を防ぐことができる。また、磁気着脱機構10の内部力補償型磁石ユニット11により、小さい力で吸着用磁石22を動かすことができ、第1連結部31と第2連結部32との間の連結や分離を容易に行うことができる。
【0036】
なお、本発明の実施の形態の連結体の連結分離システムは、連結体30が所定の姿勢で所定の場所にあるとき、所定の位置関係になるよう、着脱側磁気鍵13および操作側磁気鍵14が配置されていてもよい。図3に示す一例では、連結体30がドローンから成り、ドローン本体が中央部で2つに分離可能に設けられており、分離するドローン本体の一方が第1連結部31、他方が第2連結部32になっている。また、垂直に立てられたポール41の上端に、操作側磁気鍵14が取り付けられている。また、ドローンが、ポール41の上端付近に所定の向きで停止または接近したとき、ドローンの着脱側磁気鍵13と、ポール41の上端の操作側磁気鍵14との間に磁気吸引力が働くよう、着脱側磁気鍵13および操作側磁気鍵14が配置されている。
【0037】
このとき、ドローンを、ポール41の上端付近に所定の向きで停止または接近させることにより、着脱側磁気鍵13と操作側磁気鍵14との間に磁気吸引力を働かせることができ、ドローン本体を2つに分離することができる。また、その位置で2つに分離していたドローン本体を連結させることもできる。このように、ドローンが同じ姿勢および同じ場所のときにのみ、連結や分離を行うため、安定した運用を行うことができる。
【0038】
さらに、本発明の実施の形態の連結体の連結分離システムは、吸着用磁石22が吸着位置のとき、連結体30を所定の場所から所定の第1の方向に向かって移動させることにより、着脱側磁気鍵13と操作側磁気鍵14との間に働く磁気吸引力で着脱側磁気鍵13が移動して、吸着用磁石22を吸着位置から剥離位置に移動可能に構成されていてもよい。また、吸着用磁石22が剥離位置のとき、連結体30を所定の場所から所定の第2の方向に向かって移動させることにより、着脱側磁気鍵13と操作側磁気鍵14との間に働く磁気吸引力で着脱側磁気鍵13が移動して、吸着用磁石22を剥離位置から吸着位置に移動可能に構成されていてもよい。
【0039】
この場合、図4に示す具体的な一例では、連結体30がドローンから成り、レール42に吊り下げられて移動して、離陸および/または着陸可能に設けられており、プロペラを有する駆動部が第1連結部31、その駆動部を着脱可能に設けられたドローン本体が第2連結部32になっている。また、レール42に吊り下げられてドローンが移動するとき、ドローンの着脱側磁気鍵13との間に磁気吸引力が働くよう、ドローンの着脱側磁気鍵13が通過する位置に、操作側磁気鍵14が配置されている。
【0040】
このとき、ドローン本体と駆動部とが連結されたドローンを、レールに沿って一方に移動させることにより、着脱側磁気鍵13と操作側磁気鍵14との間に磁気吸引力を働かせて、吸着用磁石22を吸着位置から剥離位置に移動させ、ドローン本体と駆動部とを分離することができる。また、駆動部が分離されたドローン本体を、レールに沿って逆方向に移動させることにより、着脱側磁気鍵13と操作側磁気鍵14との間に磁気吸引力を働かせて、吸着用磁石22を剥離位置から吸着位置に移動させることができ、どこかの位置で、駆動部をドローン本体に連結することができる。なお、分離時にも連結時にも、着脱側磁気鍵13と操作側磁気鍵14との間に磁気吸引力が働くため、分離や連結と同時に、レールに沿って移動するドローンやドローン本体を減速させたり、加速させたりすることもできる。
【0041】
また、図5に示すように、本発明の実施の形態の連結体の連結分離システムで、第1連結部31は、着脱側磁気鍵13と操作側磁気鍵14との間に磁気吸引力を働かせて、吸着用磁石22を剥離位置から吸着位置に移動させて第2連結部32の永久磁石32aに吸着させたとき、第2連結部32に向かって突出し、吸着用磁石22を吸着位置から剥離位置に移動させて第2連結部32の永久磁石32aから剥離させたとき、突出した状態から元に戻る嵌合凸部43を有し、第2連結部32は、その永久磁石32aと吸着用磁石22とが吸着しているとき、第1連結部31から突出した嵌合凸部43を嵌合可能に設けられた嵌合凹部44を有していてもよい。
【0042】
この場合、第1連結部31と第2連結部32との連結時に、吸着用磁石22だけでなく、嵌合凸部43でも連結するため、連結力を高めることができる。図5に示す一例では、第1連結部31の連結部分がテーパ状に突出しており、第2連結部32の連結部分がその突出した部分と嵌合するよう窪んでいる。また、第1連結部31の突出した連結部分の側面に複数の嵌合凸部43を有し、第2連結部32の窪んだ連結部分の側面に、突出した各嵌合凸部43を嵌合可能に設けられた複数の嵌合凹部44を有している。
【符号の説明】
【0043】
1 対象物
1a 磁石

10 磁気着脱機構
11 内部力補償型磁石ユニット
21 支持部
21a 凹部
21b 貫通孔
22 吸着用磁石
23 補償連動部
23a 取付部材
23b 非線形バネ
23c フランジ部
12 連結部材
13 着脱側磁気鍵
13a 第1円滑表面部
13b 磁石
14 操作側磁気鍵
14a 第1円滑表面部
14b 磁石

30 連結体
31 第1連結部
32 第2連結部
32a 永久磁石

41 ポール
42 レール
43 嵌合凸部
44 嵌合凹部
図1
図2
図3
図4
図5