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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】シースルー型ディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20240508BHJP
   G02B 17/08 20060101ALI20240508BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B17/08
H04N5/64 511A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021551743
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2020038512
(87)【国際公開番号】W WO2021070970
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2019188256
(32)【優先日】2019-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】張 言
(72)【発明者】
【氏名】清川 清
(72)【発明者】
【氏名】酒田 信親
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-290102(JP,A)
【文献】特開平06-051264(JP,A)
【文献】特開平07-274097(JP,A)
【文献】特表2015-519595(JP,A)
【文献】米国特許第06504658(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 17/08、27/01-27/02
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2焦点の1つを共焦点とする第1及び第2の楕円凹面鏡を有し、第1の楕円凹面鏡の前記共焦点以外の焦点に入射する物体光を第2の楕円凹面鏡の前記共焦点以外の焦点に結像させる光学系と、
前記物体光を遮光しない位置に配置されたディスプレイと、
前記物体光の光路上に配置され、前記ディスプレイから出射されたディスプレイ光を前記物体光に重畳させる光学手段、
を備えたことを特徴とするシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項2】
第1及び第2の楕円凹面鏡は、前記共焦点を対称点として互いに対向配置されることを特徴とする請求項1に記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記共焦点にピンホールを配置するピンホールマスクを更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項4】
ユーザが装置を装着した際に、第1の楕円凹面鏡の前記共焦点以外の焦点と、第2の楕円凹面鏡の前記共焦点以外の焦点とが、共に、正面を向いたユーザの眼球の光軸上又は視線上に位置するように、第1及び第2の楕円凹面鏡が配置されたことを特徴とする請求項1~の何れかに記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記物体光を遮光し得る遮光パネルを更に備え、
前記遮光パネルは、第1の楕円凹面鏡における前記物体光の入射光路上であって、前記光学手段の前段に配置されたことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項6】
第1の楕円凹面鏡における前記物体光の反射光を前記共焦点に集光する集光レンズ系を更に備えたことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項7】
第1の楕円凹面鏡における前記物体光の反射光を前記共焦点に集光する第1の集光レンズ系と、前記共焦点を通過した光を集束する第2の集光レンズ系を更に備えたことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項8】
前記集光レンズ系は、凹レンズと凸レンズから構成される系、又は、凹凸レンズから構成される系であることを特徴とする請求項に記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項9】
前記ディスプレイと前記光学手段が各2セット設けられ、
各々の前記光学手段は、前記物体光の上下の最大取り込み角に沿って傾斜配置され、
各々の前記ディスプレイから出射されたディスプレイ光が、前記物体光に重畳されたことを特徴とする請求項1~8の何れかに記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項10】
前記最大取り込み角は、上が30~35°であり、下が45~50°であることを特徴とする請求項9に記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項11】
前記光学手段は、第1の楕円凹面鏡における前記物体光の入射光路上に配置され、
前記ディスプレイは、第1の楕円凹面鏡と前記物体光を発する物体の間で、かつ、前記物体光を遮光しない位置に配置された、ことを特徴とする請求項1~10の何れかに記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項12】
前記光学手段は、第1の楕円凹面鏡における前記物体光の反射光路上に配置され、
前記ディスプレイは、第1の楕円凹面鏡と第2の楕円凹面鏡の間で、かつ、前記物体光を遮光しない位置に配置された、ことを特徴とする請求項1~10の何れかに記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項13】
前記光学手段は、ハーフミラー、又は、ビームスプリッタであることを特徴とする請求項1~12の何れかに記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項14】
前記遮光パネルは、空間光変調器を用いて、前記物体光の空間分布を変調して2次元的に遮光することを特徴とする請求項5に記載のシースルー型ディスプレイ装置。
【請求項15】
請求項1~14の何れかのシースルー型ディスプレイ装置を備えたヘッドマウントディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シースルー型のディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
VR(Virtual Reality;仮想現実)の技術において、光学シースルー型という方式を用いたHMD(Head Mounted Display;ヘッドマウントディスプレイ)がある。これは、現実の世界を見ながら、その上に画像を重ねることができるというものであり、必要な情報のみディスプレイの表面に表示しながら、外の様子をシースルーで見ることが可能となることから、利用者の安全の確保が図られるという利点があり、今後も市場が拡大すると予想されている。
【0003】
光学シースルー型のHMD装置では、一般に、重ね合わせる画像と、背景が混ざり合い、重ね合わせる画像が正確に表現されない場合があり、そこで、画素単位での遮光が可能な遮光板を用いた光学シースルー型のHMD装置が知られている(非特許文献1~3を参照)。
非特許文献1~3のように、異なる光学系に基づく様々な取組はあるが、いずれも画角が狭く、使用用途が限定されるという課題がある。
【0004】
そこで、画角を広げるべく、複数の液晶パネルを重ねることが試みられている(非特許文献4を参照)。例えば、液晶パネルを2枚重ねると画角は広いが画像はボケるという新たな課題が発生する。また、液晶パネルを3枚以上重ねると画角は広く、かつボケは解消されるが、システム構成が複雑となる上に、全体的に暗くなり、いずれにしても実用には供しないという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】K. Kiyokawa, M. Billinghurst, B. Campbell and E. Woods, "An occlusion capable optical see-through head mount display for supporting co-located collaboration," The Second IEEE and ACM International Symposium on Mixed and Augmented Reality, 2003. Proceedings., Tokyo, Japan, 2003, pp. 133-141.
【文献】O. Cakmakci, Yonggang Ha and J. P. Rolland, "A compact optical see-through head-worn display with occlusion support," Third IEEE and ACM International Symposium on Mixed and Augmented Reality, Arlington, VA, USA, 2004, pp. 16-25. doi: 10.1109/ISMAR.2004.2
【文献】Austin Wilson and Hong Hua, "Design and prototype of an augmented reality display with per-pixel mutual occlusion capability," Opt. Express 25, 30539-30549 (2017)
【文献】A. Maimone and H. Fuchs, "Computational augmented reality eyeglasses," 2013 IEEE International Symposium on Mixed and Augmented Reality (ISMAR), Adelaide, SA, 2013, pp. 29-38. doi: 10.1109/ISMAR.2013.6671761
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況に鑑みて、本発明は、簡素な構成で、画角の広さ及び視野の明るさを確保しつつ、画像のボケを防止することができるシースルー型ディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明のシースルー型ディスプレイ装置は、2焦点の1つを共焦点とする第1及び第2の楕円凹面鏡を有し、第1の楕円凹面鏡の共焦点以外の焦点に入射する物体光を第2の楕円凹面鏡の共焦点以外の焦点に結像させる光学系と、物体光を遮光しない位置に配置されたディスプレイと、物体光の光路上に配置され、ディスプレイから出射されたディスプレイ光を物体光に重畳させる光学手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
楕円凹面鏡が2つの焦点を有するという特性を生かして、2つの楕円凹面鏡を用いて、2焦点の1つを共焦点とすることで、画角を広くすることができる。
また、ディスプレイと、ディスプレイから出射されたディスプレイ光を物体光に重畳させる光学手段により、ディスプレイで形成された実像を虚像として前方の景色と重ね合わせて視認することが可能となる。ディスプレイは物体光を遮光しない位置に配置されたるため、視野が遮られることが無いように構成する。なお、ここで、物体光とは、装置の外部の物体などの反射光のことであり、例えば、遠くの景色であれば建物や山から到達する反射光のことである。光学手段としては、ハーフミラー、ビームスプリッタを好適に用いることができる。
【0009】
本発明のシースルー型ディスプレイ装置において、第1及び第2の楕円凹面鏡は、共焦点を対称点として互いに対向配置されることでもよい。
楕円凹面鏡が2つの焦点を有するという特性を生かして、2つの楕円凹面鏡を用いて、2焦点の1つを共焦点とし該共焦点を対称点として互いに対向配置することで、シンプルな構成で画角を広くすることができる。
【0010】
本発明のシースルー型ディスプレイ装置は、共焦点にピンホールを配置するピンホールマスクを更に備えたことが好ましい。
ピンホールマスクを用いることで、瞳孔を通過する光が水晶体の屈折力の影響を受けることがなくなり、簡単な仕組みで入射光の向きを制限することができる。これにより、物体光すなわち透かして見える絵と、ディスプレイで形成されて重ねられる絵の何れについても、ボケて見えることなく、鮮明に見ることができる。
本発明のシースルー型ディスプレイ装置は、ユーザが装置を装着した際に、第1の楕円凹面鏡の共焦点以外の焦点と、第2の楕円凹面鏡の共焦点以外の焦点とが、共に、正面を向いたユーザの眼球の光軸上又は視線上に位置するように、第1及び第2の楕円凹面鏡が配置されることが好ましい。これにより、物体から発せられる物体光が第1の楕円凹面鏡に入射した高さとユーザの眼に届いた際の高さが一致し、装置の装着時と非装着時の視野の同一性をより向上させることができる。
【0011】
本発明のシースルー型ディスプレイ装置は、物体光を遮光し得る遮光パネルを更に備え、遮光パネルは、第1の楕円凹面鏡における物体光の入射光路上であって、光学手段の前段に配置されたことが好ましい。
遮光パネルを用いることで、ディスプレイで形成された画像の光学手段による虚像を透けさせることなく、コントラストを高めて表示することが可能となる。遮光パネルは、ディスプレイで形成される画像の光学手段による虚像と同じピクセル位置で遮光するように制御され、画像のコントラストを高める。遮光パネルの具体的な構成としては、例えば、電圧を変えることによって光の透過性が変化する液晶シャッタなどが挙げられる。
ここで、遮光パネルは、空間光変調器を用いて、物体光の空間分布を変調して2次元的に遮光するものでもよい。
【0012】
本発明のシースルー型ディスプレイ装置は、第1の楕円凹面鏡における物体光の反射光を共焦点に集光する集光レンズ系を更に備えたことが好ましい。
第1の楕円凹面鏡における物体光の反射光を共焦点に集光する集光レンズ系を備えることにより、ピンホールを通過する光量を上げることができ、映像の明るさを向上させることが可能となる。
【0013】
本発明のシースルー型ディスプレイ装置は、第1の楕円凹面鏡における物体光の反射光を共焦点に集光する第1の集光レンズ系と、共焦点を通過した光を集束する第2の集光レンズ系を更に備えたことでもよい。かかる構成とされることにより、よりコンパクトな形状の装置とすることが可能となる。
【0014】
本発明のシースルー型ディスプレイ装置において、集光レンズ系は、凹レンズと凸レンズから構成される系、又は、凹凸レンズから構成される系であることが好ましい。
例えば、第1の楕円凹面鏡とピンホールマスクの間に、凹レンズ、凸レンズの順に配置することで、凹レンズにおいて集光した光を、凸レンズによって集束させてピンホールへ誘導することが可能となり、ピンホールを通過する光量を効果的に向上させることができる。また、ピンホールマスクを使用しない場合においても、集光することによりユーザの眼に到達する光量を向上できるため、ユーザは明るい視野が得られることとなる。
【0015】
本発明のシースルー型ディスプレイ装置は、ディスプレイと光学手段が各2セット設けられ、各々の光学手段は、物体光の上下の最大取り込み角に沿って傾斜配置され、各々のディスプレイから出射されたディスプレイ光は、光学手段によって反射し、物体光に重畳される。
一般に、人の眼は左右は180°以上見ることができるが、上下では人体の構造上そうならず、そのため、物体光を遮光せずにディスプレイを配置するスペースが生まれることになる。そこで、各々の光学手段を、ユーザの視野を妨げることなく物体光の上下の最大取り込み角に沿って傾斜配置し、さらにユーザの視野を妨げることなくディスプレイを配置する。各々のディスプレイ映像は、光学手段により虚像として、物体光と重なり、物体とディスプレイ映像が重なって見えることになる。この場合、2つのディスプレイ映像は、一体化してあたかも1つのディスプレイの映像になるのが好ましく、2つの光学手段の配置を調整し、不連続な映像にならないようにすることが好ましい。
【0016】
本発明のシースルー型ディスプレイ装置において、最大取り込み角は、上が30~35°であり、下が45~50°であることから、各々の光学手段は、物体光の上下の最大取り込み角に沿って傾斜配置されることが好ましい。
人体の構造上、人の顔には額があるため、下よりも上がやや視野が狭いといわれている。そこで、最大取り込み角につき、上を30~35°、下を45~50°とすることで、視野を妨げることのない構成とすることができる。
【0017】
本発明のシースルー型ディスプレイ装置において、光学手段は、第1の楕円凹面鏡における物体光の入射光路上に配置され、ディスプレイは、第1の楕円凹面鏡と物体光を発する物体の間で、かつ、物体光を遮光しない位置に配置されたことが好ましい。
第1の楕円凹面鏡と物体との間に光学手段とディスプレイを設けることで、第1及び第2の楕円凹面鏡とピンホールマスクの配置を行った上で、光学手段及びディスプレイを取り付けることができ製造が容易となる。
【0018】
本発明のシースルー型ディスプレイ装置において、光学手段は、第1の楕円凹面鏡における物体光の反射光路上に配置され、ディスプレイは、第1の楕円凹面鏡と第2の楕円凹面鏡の間で、かつ、物体光を遮光しない位置に配置されたことでもよい。
第1の楕円凹面鏡と第2の楕円凹面鏡の間に光学手段とディスプレイを設けることで、装置をコンパクトな構成とすることができる。
【0019】
本発明のヘッドマウントディスプレイ装置は、上記の何れかの光学シースルー型ディスプレイ装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のシースルー型ディスプレイ装置によれば、簡素な構成で、画角の広さ及び視野の明るさを確保しつつ、画像のボケを防止することができるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1のシースルー型ディスプレイ装置の機能ブロック図
図2】実施例1のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図
図3】実施例1のシースルー型ディスプレイ装置の光路の説明図
図4】従来のシースルー型ディスプレイ装置の視認映像のイメージ図
図5】実施例1のシースルー型ディスプレイ装置の視認映像のイメージ図
図6】2つの楕円凹面鏡の説明図
図7】実施例2のシースルー型ディスプレイ装置の機能ブロック図
図8】実施例2のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図
図9】実施例3のシースルー型ディスプレイ装置の機能ブロック図
図10】実施例3のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図
図11】実施例4のシースルー型ディスプレイ装置の機能ブロック図
図12】実施例4のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図
図13】実施例5のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図
図14】実施例6のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図
図15】実施例7のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0023】
図1は、実施例1のシースルー型ディスプレイ装置の機能ブロック図を示している。実施例1のシースルー型ディスプレイ装置1は、第1の楕円凹面鏡21、第2の楕円凹面鏡22、ピンホールマスク3、遮光パネル4、カラー液晶ディスプレイ5、ハーフミラー6、凹レンズ7及び凸レンズ8から構成されている。
シースルー型ディスプレイ装置1を用いて、遠方の景色や近くの物を見るとする。外の景色や物から到来する物体光10(太陽光や照明光の反射光)は、遮光パネル4を通り、第1の楕円凹面鏡21において反射する。また、カラー液晶ディスプレイ5から出射されたディスプレイ光は、ハーフミラー6により反射された後、物体光10と同様に、第1の楕円凹面鏡21において反射する。第1の楕円凹面鏡21において反射した光は、凹レンズ7において集光され、凸レンズ8において集束し、ピンホールマスク3へと誘導される。ピンホールマスク3へと誘導された光は、第2の楕円凹面鏡22において反射し、ユーザの眼9に到達する。
【0024】
図2は、実施例1のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図を示している。シースルー型ディスプレイ装置1は、第1の楕円凹面鏡21、第2の楕円凹面鏡22、ピンホールマスク3、遮光パネル4、カラー液晶ディスプレイ(5a,5b)、ハーフミラー(6a,6b)、集光レンズ系15の凹レンズ7及び凸レンズ8から構成される。
ピンホールマスク3には、ピンホール3aが設けられている。ピンホールカメラと同様、近距離から遠距離まで全てピントが合わせられ、撮影される像に歪みが生じない等のメリットをそのまま享受でき、ユーザの眼9の瞳孔を通過する光は、水晶体の屈折力の影響を受けることがなく、簡単な仕組みで、ユーザの眼9の瞳孔への入射光の向きを制限することができる。これにより、遠方の景色や近くの物の物体光による映像と、ディスプレイで形成された映像とが重ねられた場合において、どちらの映像についても、ピントがボケて映るということがなく、ユーザは両方の映像を鮮明に視認することができる。
【0025】
図4は、従来のシースルー型ディスプレイ装置の視認映像のイメージ図であり、(1)は後景に焦点を合わせた状態、(2)は前景に焦点を合わせた状態を示している。それぞれ視認映像12においては、前景としてリング状の表示映像14が表示され、後景として直方体形状の物体11及び背景13が表示されている。図4(1)に示すように、ピンホールマスク3を用いない場合には、後景に焦点を合わせると、物体11は鮮明に見えるが、カラー液晶ディスプレイ(5a,5b)によって表示された表示映像14はピントがボケてしまう。これに対して、図4(2)に示すように、前景に焦点を合わせると、表示映像14は鮮明に見えるが、その反面、物体11はピントがボケてしまう。本発明のシースルー型ディスプレイ装置の場合では、ピンホール3aが設けられたピンホールマスク3を用いることにより、このようなピントのボケを解消し、前景と後景の両方を鮮明に視認することができる。
しかしながら、ピンホール3aは、小さな針穴であることから、前後の絵が鮮明に見えたとしても、画角が狭くなってしまうという問題があり、本発明のシースルー型ディスプレイ装置1においては、第1の楕円凹面鏡21と第2の楕円凹面鏡22という2つの楕円凹面鏡が用いられている。これらの2つの楕円凹面鏡を用いる特徴について、図6を参照しながら説明する。
【0026】
図6は、2つの楕円凹面鏡の説明図であり、(1)は1つの楕円凹面鏡の場合、(2)は2つの楕円凹面鏡について一方の焦点を共にする場合を示している。図6(1)に示すように、楕円凹面鏡2においては、焦点Fと焦点Fが存在する。このように、2点の焦点を持つ楕円凹面鏡2では、一方の焦点を通る光が楕円面での点Pで反射され、もう一方の焦点を通ることになる。例えば、焦点Fから点Pへと発せられた光Rは、点Pにおいて反射し光Rとなり、焦点Fを通ることになる。そこで、図6(2)に示すように、楕円凹面鏡21と楕円凹面鏡22という2つの楕円凹面鏡を用い、楕円凹面鏡21の焦点Fと楕円凹面鏡22の焦点F’を共焦点とすると、焦点Fから楕円凹面鏡21の点Pへと発せられた光Rは、点Pにおいて反射して光Rとなり、焦点Fを通る。楕円凹面鏡21の焦点Fと楕円凹面鏡22の焦点F’は共焦点であるから、焦点Fを通った光Rは、焦点F’から楕円凹面鏡22の点P’へと発せられた光R’と同じであり、点P’において反射して光R’となり、焦点F’を通ることとなる。したがって、共焦点の位置とピンホール3aの位置を合わせることができれば、画角を広げることが可能となる。
【0027】
図2の実施例1のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージに示すように、第1の楕円凹面鏡21と第2の楕円凹面鏡22は、2焦点の1つを共焦点とし、共焦点を対称点として互いに対向配置され、第1の楕円凹面鏡21における共焦点以外の焦点に入射する物体光10を第2の楕円凹面鏡22における共焦点以外の焦点に結像させる光学系を備えている。ピンホールマスク3に設けられたピンホール3aは、第1の楕円凹面鏡21と第2の楕円凹面鏡22の共焦点の位置に配置されている。なお、第1の楕円凹面鏡21と第2の楕円凹面鏡22が、2焦点の1つを共焦点とし、共焦点を対称点として互いに対向配置されることは必須の構成ではなく、後述する実施例6のように、共焦点を対称点として互いに対向配置されない構成を採用することも可能である。
【0028】
ここで、本実施例のシースルー型ディスプレイ装置1における物体光やディスプレイ光の光路について説明する。図3は、実施例1のシースルー型ディスプレイ装置の光路の説明図であり、(1)は物体光、(2)はディスプレイ光の光路を示している。なお、図3(1)では、カラー液晶ディスプレイ(5a,5b)、ハーフミラー(6a,6b)などは図示していない。また、図3(2)では、物体11は図示していない。
図3(1)に示すように、物体光(10a~10c)は、遮光パネル4を通り、第1の楕円凹面鏡21において反射する。これに対して、物体光10dは、遮光パネル4によって遮られている。かかる遮光パネル4の機能や構造については、後述する。第1の楕円凹面鏡21において反射した物体光(10a~10c)は、凹レンズ7において集光され、凸レンズ8において集束し、ピンホールマスク3へと誘導される。ピンホールマスク3へと誘導された光は、物体光(20a~20c)として第2の楕円凹面鏡22において反射し、ユーザの眼9に到達する。
ユーザが眼9を動かして上目にした場合には、物体光20aが眼に入り、下目にした場合には、物体光20cが眼に入ることになる。物体光20aは、物体11による物体光10aと同じであり、物体11の上側の映像になる。また、物体光20cは、物体11による物体光10cと同じであり、物体11の下側の映像になる。図2又は図3(1)に図示するとおり、物体11の物体光の上下の取り込み角が大きく、上下の視野角は人の視野角の範囲をカバーできている。
【0029】
一方、ディスプレイ光の光路についても物体光と類似した光路となる。すなわち、図3(2)に示すように、カラー液晶ディスプレイ5aから発せられたディスプレイ光は、ハーフミラー6aにより反射する。同様に、カラー液晶ディスプレイ5bから発せられたディスプレイ光は、ハーフミラー6bにより反射する。ディスプレイ光は、第1の楕円凹面鏡21において反射し、凹レンズ7において集光され、凸レンズ8において集束し、ピンホールマスク3へと誘導される。ピンホールマスク3へと誘導された光は、第2の楕円凹面鏡22において反射し、ユーザの眼9に到達する。ディスプレイ光についても、ユーザが眼9を動かして上目にした場合には、虚像50の上方が眼に入り、下目にした場合には、虚像50の下方が眼に入ることになる。なお、ディスプレイ光は、物体光(20a~20c)と重畳して表示される。
【0030】
遮光パネル4は、具体的には液晶シャッタであり、電圧を変えることによって光の透過性が変化するものである。液晶シャッタは、2次元マトリクスのピクセル単位に、必要なピクセル位置だけ光を透過させたり、透過させなかったりすることが可能である。カラー液晶ディスプレイ5aは、第1の楕円凹面鏡21における共焦点以外の焦点に入射する物体光の上側に設けられ、カラー液晶ディスプレイ5bは下側に設けられている。また、ハーフミラー6aは上側、ハーフミラー6bは下側に設けられており、ハーフミラー6aは、カラー液晶ディスプレイ5aにおいて形成された映像から出射されるディスプレイ光を反射し、ハーフミラー6bは、カラー液晶ディスプレイ5bにおいて形成された映像から出射されるディスプレイ光を反射する役割を果たす。
【0031】
図5は、実施例1のシースルー型ディスプレイ装置の視認映像のイメージ図であり、(1)は遮光パネルが設けられない又は遮光を行わない場合、(2)は、遮光を行った場合を示している。図中の視認映像12では、図4と同様に、前景としてリング状の表示映像14が表示され、後景として直方体形状の物体11及び背景13が表示されている。図5(1)に示すように、遮光パネルが設けられない又は遮光を行わない場合には、後景の映像が透過してしまうため、表示映像14のコントラストが低下するという問題がある。具体的には、後景の内、より暗い配色となっている物体11と重畳する表示映像14の部位14aについては、黒色に表示されているが、より明るい配色となっている背景13と重畳する表示映像14の部位14bについては、灰色に表示されている。
これに対して、遮光パネル4により遮光を行った場合は、リング状の表示映像14が、部位14aだけではなく、部位14bについても黒色に表示されており、コントラストが向上していることが分かる。このように、遮光パネル4を設けることにより、ディスプレイで形成された映像のハーフミラーによる虚像50を透けさせることなく、コントラストを高めて表示することが可能となる。また、図5(1)に示すように、あえてコントラストを低下させて表示するといったことも可能である。
【0032】
図2に示すように、凹レンズ7は、第1の楕円凹面鏡21において反射した光を集光するものであり、凸レンズ8は、凹レンズ7において集光した光をさらに集束し、ピンホールマスク3に設けられたピンホール3aへと誘導する。凹レンズ7及び凸レンズ8が設けられることにより、凹レンズ7において集光した光を、凸レンズ8によって集束させてピンホールへ誘導することが可能となり、ピンホールを通過する光量を効果的に向上させることができる。
ピンホール3aを通過した光は第2の楕円凹面鏡22において反射して、ユーザの眼9に到達する。
【実施例2】
【0033】
図7は、実施例2のシースルー型ディスプレイ装置の機能ブロック図を示している。また、図8は、実施例2のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図を示している。実施例2のシースルー型ディスプレイ装置100は、実施例1に示すシースルー型ディスプレイ装置1と同様に、第1の楕円凹面鏡21、第2の楕円凹面鏡22、ピンホールマスク3、遮光パネル4、カラー液晶ディスプレイ5及びハーフミラー6を備えるが、実施例1に示すシースルー型ディスプレイ装置1と異なり、集光レンズ系の凹レンズ及び凸レンズは用いていない。集光レンズ系を設けることにより、ピンホールを通過する光量を上げることができ、ユーザが視認する映像の明るさを向上させることができるが、この集光レンズ系を設けなくても、ユーザは十分に視認できる。
図8に示すように、シースルー型ディスプレイ装置100を用いて、遠方の景色や近くの物を見ると、景色や物から到来する物体光10は、遮光パネル4を通り、第1の楕円凹面鏡21に入射し反射する。カラー液晶ディスプレイ(5a,5b)から出射されたディスプレイ光は、ハーフミラー(6a,6b)により反射された後、物体光10と同様に、第1の楕円凹面鏡21に入射し反射する。第1の楕円凹面鏡21において反射した光は、そのままピンホールマスク3へと誘導され、ピンホールマスク3へと誘導された光は、第2の楕円凹面鏡22に入射し反射して、ユーザの眼9に到達する。
【実施例3】
【0034】
図9は、実施例3のシースルー型ディスプレイ装置の機能ブロック図を示している。実施例3のシースルー型ディスプレイ装置101は、第1の楕円凹面鏡21、第2の楕円凹面鏡22、遮光パネル4、カラー液晶ディスプレイ5、ハーフミラー6、凹レンズ7及び凸レンズ8から構成されている。すなわち、実施例3のシースルー型ディスプレイ装置101は、実施例1のシースルー型ディスプレイ装置1とは異なり、ピンホールマスク3が設けられていない構成である。第1の楕円凹面鏡21において反射した光は、凹レンズ7を通過した後、レンズ7の光軸に沿って進み、凸レンズ8によって集光される。実施例1では集光点にピンホールマスク3があったが、本実施例の場合、ピンホールマスク3を介することなく、第2の楕円凹面鏡22において反射し、ユーザの眼9に到達する。
【0035】
図10は、実施例3のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図を示している。シースルー型ディスプレイ装置101は、第1の楕円凹面鏡21、第2の楕円凹面鏡22、遮光パネル4、カラー液晶ディスプレイ(5a,5b)、ハーフミラー(6a,6b)、集光レンズ系15の凹レンズ7及び凸レンズ8から構成される。第1の楕円凹面鏡21において反射した光は、凹レンズ7を通過した後、レンズ7の光軸に沿って進み、凸レンズ8によって集光されることにより、第1の楕円凹面鏡21で反射する光を多く取り込むことができ、ユーザの眼に到達する光量を増やし、ユーザが明るい視野を得ることができる。なお、本実施例のシースルー型ディスプレイ装置101には、ピンホールマスク3が設けられていないことから、若干、像がぼやけることになる。
【実施例4】
【0036】
図11は、実施例4のシースルー型ディスプレイ装置の機能ブロック図を示している。実施例4のシースルー型ディスプレイ装置102は、第1の楕円凹面鏡21、第2の楕円凹面鏡22、遮光パネル4、カラー液晶ディスプレイ5及びハーフミラー6から構成されている。すなわち、実施例4のシースルー型ディスプレイ装置101は、実施例1のシースルー型ディスプレイ装置1とは異なり、ピンホールマスク3、凹レンズ7及び凸レンズ8が設けられていない構成である。
図12は、実施例4のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図を示している。シースルー型ディスプレイ装置102は、第1の楕円凹面鏡21、第2の楕円凹面鏡22、遮光パネル4、カラー液晶ディスプレイ(5a,5b)及びハーフミラー(6a,6b)から構成される。
このように、シースルー型ディスプレイ装置102は、ピンホールマスク3、凹レンズ7及び凸レンズ8が設けられない構成とすることで、よりシンプルな構造とすることができ、装置の低コスト化が図れる。また、装置の軽量化、コンパクト化を図ることができる。
【実施例5】
【0037】
図13は、実施例5のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図を示している。シースルー型ディスプレイ装置103は、第1の楕円凹面鏡21、第2の楕円凹面鏡22、ピンホールマスク3、遮光パネル4、カラー液晶ディスプレイ(5a,5b)、ハーフミラー(6a,6b)及び凸レンズ(8a,8b)から構成される。
シースルー型ディスプレイ装置103は、実施例1のシースルー型ディスプレイ装置1とは異なり、2枚の凸レンズ(8a,8b)を備える。また、実施例1のシースルー型ディスプレイ装置1では、第1の楕円凹面鏡21とピンホールマスク3の間に凹レンズ7及び凸レンズ8を配置するのに対し、実施例5のシースルー型ディスプレイ装置103では、第1の楕円凹面鏡21とピンホールマスク3の間に凸レンズ8aを配置し、ピンホールマスク3と第2の楕円凹面鏡22の間に凸レンズ8bを配置する。これにより、第1の楕円凹面鏡21において反射した光は、凸レンズ8aによって集光され、ピンホールマスク3を通過した後、光は拡がるが、凸レンズ8bによって集束され、第2の楕円凹面鏡22において反射し、ユーザの眼9に到達する。
【実施例6】
【0038】
図14は、実施例6のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図を示している。シースルー型ディスプレイ装置104は、第1の楕円凹面鏡21、第2の楕円凹面鏡220、ピンホールマスク3、遮光パネル4、カラー液晶ディスプレイ5c、ハーフミラー6c、反射鏡(16a,16b)、平凹レンズ70及び平凸レンズ80から構成される。
シースルー型ディスプレイ装置104は、実施例1のシースルー型ディスプレイ装置1とは異なり、反射鏡(16a,16b)、平凹レンズ70及び平凸レンズ80を備える。すなわち、第1の楕円凹面鏡21において反射した光は、平凹レンズ70において集光され、平凸レンズ80において集束し、反射鏡16aにより反射した後、ピンホールマスク3のピンホール3aへと誘導される。更に、ピンホール3aを通過した光は、反射鏡16b及び第2の楕円凹面鏡220により反射し、ユーザの眼9に到達する。本実施例の構成によれば、第1の楕円凹面鏡21と第2の楕円凹面鏡220が、2焦点の1つを共焦点とし該共焦点を対称点として互いに対向配置された構成ではない場合においても、反射鏡(16a,16b)を用いて、第1の楕円凹面鏡21と第2の楕円凹面鏡220の間隔を狭めつつ、画角を広く維持することができる。
【0039】
すなわち、反射鏡(16a,16b)を用いて共焦点の位置を制御することにより、装置のコンパクト化を図ることが可能である。また、第2の楕円凹面鏡220は、実施例1に用いられる第2の楕円凹面鏡22よりも小型のものを採用するため、かかる点においても装置のコンパクト化を図ることができる。また、実施例1においては、遮光パネル4、カラー液晶ディスプレイ(5a,5b)及びハーフミラー(6a,6b)は、現実世界の物体11と第1の楕円凹面鏡21の間に配置されていたが、実施例6のシースルー型ディスプレイ装置104では、遮光パネル4、カラー液晶ディスプレイ5c及びハーフミラー6cは、第1の楕円凹面鏡21と平凹レンズ70の間に配置されている。これにより、第1の楕円凹面鏡21と平凹レンズ70の間のスペースを有効利用でき、装置のコンパクト化を図れる構成となっている。
【実施例7】
【0040】
図15は、実施例7のシースルー型ディスプレイ装置の構成イメージ図を示している。シースルー型ディスプレイ装置105は、第1の楕円凹面鏡210、第2の楕円凹面鏡221、ピンホールマスク3、遮光パネル4、カラー液晶ディスプレイ5d、ハーフミラー6d、反射鏡(16c~16e)、平凹レンズ(70a,70b)及び平凸レンズ(80a~80c)から構成される。遮光パネル4として、空間光変調器(spatial light modulator; SLM)を用い、物体光の空間分布を変調して、2次元画素単位の遮光パターンで遮光を行っている。
シースルー型ディスプレイ装置105は、実施例1~6のシースルー型ディスプレイ装置とは異なり、ユーザが装置105を装着した際に、第1の楕円凹面鏡210の共焦点以外の焦点Fと、第2の楕円凹面鏡221の共焦点以外の焦点F´とが、共に、正面を向いたユーザの眼9の眼球の光軸上(或いは視線上)にそれぞれ位置するように、第1及び第2の楕円凹面鏡(210,221)が配置されている。これにより、物体11から発せられる物体光10eが第1の楕円凹面鏡210に入射した高さとユーザの眼9に届いた際の高さが略同一となり、装置105の装着時と非装着時の視野の同一性をより向上させている。
図15に示すように、物体光10eは、遮光パネル4を通り、第1の楕円凹面鏡210において反射する。遮光パネル4の機能や構造については、実施例1と同様である。第1の楕円凹面鏡210において反射した物体光10eは、平凹レンズ70aにおいて集光され、平凸レンズ80aにおいて集束し、反射鏡16c、反射鏡16dの順に反射した後、ピンホールマスク3のピンホール3aへと誘導される。ピンホール3aを通過した物体光20dは、平凸レンズ80bにおいて集光され、ハーフミラー6d、反射鏡16eの順に反射した後、平凹レンズ70bにおいて集束し、第2の楕円凹面鏡221において反射して、ユーザの眼9に到達する。
このように、図15に示す光学系では、第1の楕円凹面鏡210と第2の楕円凹面鏡221がピンホール3aに対して対称となっており、ピンホール3aの位置に共焦点が位置するように構成されている。
また、カラー液晶ディスプレイ5dから発せられたディスプレイ光30は、平凸レンズ80cにおいて集光され、ハーフミラー6dを透過した後、反射鏡16eにおいて反射し、平凹レンズ70bにおいて集束し、第2の楕円凹面鏡221において反射して、ユーザの眼9に到達する。
このような構成とすることにより、ユーザが、シースルー型ディスプレイ装置105を使用せずに物体11を見た場合と同じ高さの目線で、物体11を視認できるため、違和感なく使用することができる。
【0041】
(その他の実施例)
1)ハーフミラーは、図2に示すハーフミラー(6a,6b)のように、上下2面の配置が好ましいが、1面でもよく、また3面以上でもよい。1面のみ設けられる場合には、下側に設けられることが好ましい。3面以上の場合は、上下以外に左右に分割して配置することでもよい。
2)上述の実施例では、ユーザの眼の固定位置に、第2の楕円凹面鏡22又は第2の楕円凹面鏡220の反射光が結像するように構成されているが、ユーザの眼の上下左右の動きに追従し、装置本体の位置が微調整される構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、光学シースルー型のディスプレイ装置に有用であり、特にヘッドマウントディスプレイ装置に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1,100~105 シースルー型ディスプレイ装置
2 楕円凹面鏡
3 ピンホールマスク
3a ピンホール
4 遮光パネル
5,5a~5d カラー液晶ディスプレイ
6,6a~6d ハーフミラー
7 凹レンズ
8,8a,8b 凸レンズ
9 ユーザの眼
10a~10e,20a~20d 物体光
11 物体
12 視認映像
13 背景
14 表示映像
14a,14b 部位
15 集光レンズ系
16a~16e 反射鏡
21,210 第1の楕円凹面鏡
22,220,221 第2の楕円凹面鏡
30 ディスプレイ光
50 虚像
70,70a,70b 平凹レンズ
80,80a~80c 平凸レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15