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特許7483274光活性無機リガンドでキャップされた無機ナノ結晶
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】光活性無機リガンドでキャップされた無機ナノ結晶
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G02B5/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022172262
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2019556337の分割
【原出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2023002770
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】62/486,566
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/608,839
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399019892
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・シカゴ
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF CHICAGO
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリ ブイ.タラピン
(72)【発明者】
【氏名】ユアンユアン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ハオ チャン
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/118346(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/102157(WO,A1)
【文献】特表2020-520469(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1655057(CN,A)
【文献】特開2015-157807(JP,A)
【文献】David H. WEBBER et al.,Nanocrystal ligand exchange with 1,2,3,4-thiatriazole-5-thiolate and its facile in situ conversion to thiocyanate,Dalton Transactions,2012年,Vol. 41,No. 26,pp.7835-7838,DOI: 10.1039/c2dt30197k
【文献】Peter E. CHEN et al.,Tight Binding of Carboxylate, Phosphonate, and Carbamate Anions to Stoichiometric CdSe Nanocrystals,Journal of the American Chemical Society,2017年02月26日,Vol. 139,No. 8,pp.3227-3236,DOI: 10.1021/jacs.6b13234
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機結晶、ここで、該無機結晶の各々が表面を有する;並びに
前記無機結晶の表面に結合されたリガンド、ここで、これらのリガンドがカチオン及び感光性アニオンを含み、前記感光性アニオンが、N-アルキルジチオカルバメート、N,N-ジアルキルジチオカルバメート、又は1,1-チオオキサレートを含む
を含むリガンドでキャップされた無機結晶。
【請求項2】
前記カチオンが、NR 基であり、式中、Rは水素原子又はアルキル基を表す、請求項1に記載のリガンドでキャップされた無機結晶。
【請求項3】
前記感光性アニオンが、N-アルキルジチオカルバメート又はN,N-ジアルキルジチオカルバメートを含む、請求項1に記載のリガンドでキャップされた無機結晶。
【請求項4】
前記感光性アニオンが、N-メチルジチオカルバメート、N,N-ジメチルジチオカルバメート、N-エチルジチオカルバメート、又はN,N-ジエチルジチオカルバメートを含む、請求項3に記載のリガンドでキャップされた無機結晶。
【請求項5】
前記無機結晶が、金属結晶、半導体結晶、酸化物結晶、磁性結晶、誘電体結晶、光アップコンバージョンした結晶、又はそれらの2以上の組合せを含む、請求項1に記載のリガンドでキャップされた無機結晶。
【請求項6】
前記無機結晶が、コア-シェル結晶である、請求項1に記載のリガンドでキャップされた無機結晶。
【請求項7】
請求項1に記載のリガンドでキャップされた無機結晶のフィルムを形成する工程と、
該フィルムの第一の部分に放射線を照射する工程(ここで該放射線と感光性アニオンの間の相互作用により溶媒中における前記リガンドでキャップされた結晶の溶解性を変化させる一方、前記フィルムの第二の部分を放射線による照射から防ぐ)と、
前記フィルムを溶媒と接触させることにより、前記フィルムの第一の部分又は前記フィルムの第二の部分を前記溶媒により溶解させる工程と、
を含む無機フィルムのパターニングの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、パリ条約の下、その全体の内容が引用により本明細書中に組み込まれている、2017年4月18日に出願された米国特許仮出願第62/486,566号、及び2017年12月21日に出願された米国特許仮出願第62/608,839号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
溶液プロセスされたコロイド状ナノ結晶(NC)及び量子ドット(QD)は、電子装置及び光電子工学装置を構築するための汎用性のあるプラットフォームを提供する。これらの材料は、発光ダイオード(LED)、電界効果トランジスタ(FET)、近赤外及び中間赤外光検出器、太陽電池などの非エピタキシャル積層(deposit)及び定温プロセスを可能にする。個々の装置から、電子回路、センサーアレイ、及び高精細度QD LEDディスプレイのレベルへの移行は、材料に適合したパターニング法の開発を必要とする。解像度、処理量、及び欠陥許容値に応じて、フォトリソグラフィー及びインプリントリソグラフィー、ミクロ接触プリンティング及びインクジェットプリンティング、並びにレーザーライティング又は電子ビーム(e-ビーム)ライティングを含む、様々なパターニング及び積層技術を考慮することができる。これらの中でも、フォトリソグラフィーは、パターン化された要素を通じての高解像度及び非常に低いコストの組合せにより、電子産業のために選択された方法として発展した。後者は、リソグラフィープロセスの平行する性質からもたらされ-インクジェットプリンティング及びe-ビームライティングのような連続技術とは対照的に、数十億の回路素子を同時に定めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本発明の例証的実施態様は、以後、添付図面を参照し説明し、ここで同様の番号は、同様の要素を意味する。
【0004】
図1A-B】図1A-Dは、感光性無機リガンドを持つナノ粒子の光学パターニングを示す。図1Aは、イオン対表面リガンドを持つナノ結晶の概略的表示である。図1Bは、感光性無機リガンドのデザインに対する、2つの補完的アプローチを示す:イオン対リガンドのカチオン(PAG)又はアニオン(TTT-)のいずれかは、UV光への露光下で反応することができる。
図1C図1A-Dは、感光性無機リガンドを持つナノ粒子の光学パターニングを示す。図1Cは、TTT-基は、UV領域に強力な吸収バンドを有することを示す吸光度のスペクトルを描いている。このUVバンドは、NHTTTリガンドでキャップされたCdSe NCの吸収スペクトルに存在する。254nm光への露光は、挿入図に示されたIR吸収スペクトルの変化により確認されるように、TTT-のSCN-へのクリーン転換(clean transformation)を引き起こす。
図1D図1A-Dは、感光性無機リガンドを持つナノ粒子の光学パターニングを示す。図1Dは、DMF中のCdSe-Sn(下側曲線)及び現像溶媒から回収されたCdSe-Sn NC(上側曲線)の吸収スペクトルを示す。挿入図:回収されたCdSe-Sn NCのTEM画像。
【0005】
図2図2A-Cは、光学的にパターン化された無機材料の例を示す。図2Aは、PAG-ベースのリガンド(CdTe、ZrO、Fe及びIGZO)並びにTTT-リガンド(CdSe、InP、Au、Al)を用いてパターン化された様々なナノ粒子材料を描いている。スケールバーは、左行に関して100μm、及び右行に関して5mmである。図2Bは、(PhI)MoOリガンドを用いて、ガラス基板上にパターン化されたCeOナノ結晶を示す。図2C(上列)は、NHTTTリガンドによりパターン化されたCdSe/ZnS、InP/ZnS及びZnSe/ZnSコア-シェルQDのポジパターンを示す。図2C(下列)は、(p-CHS-C-)(C-)OTf-(OTf=トリフラート)PAGリガンドを用いパターン化されたオレエート-キャップされたInP/ZnS、CdSe/ZnS及びZnSe/ZnSコア-シェルQDのネガパターンを示す。
【0006】
図3A-C】図3A-Gは、典型的パターンの特徴を示す。図3Aは、NHTTTリガンドを用いてパターン化されたCdSe NCの幅10μmのストリップの2つの連続的に規定された層により形成されたパターンを描く。図3Bは、NHTTTリガンドによりキャップされたCdSe NCのフォトパターン化された層の端のSEM画像である。図3Cは、NHTTTリガンドにより光学的にパターン化されたCdSe NCで製造された1ミクロン解像度の1951 USAFターゲットを示す。
図3D-E】図3A-Gは、典型的パターンの特徴を示す。図3Dは、(PhI)CdClリガンドでキャップされたNCを使用し、光学的にパターン化されたCdTe層の高さプロファイルを示す。図3Eは、NHTTTリガンドを持つCdSe NCを用いて作製された多層ストリップパターンの高さプロファイルを描く。
図3F-G】図3A-Gは、典型的パターンの特徴を示す。図3Fは、焼結されたCdTe-CdCl-PAG NCストリップの光学顕微鏡画像を描く(上から下へ:20nm、50nm及び100nm)。図3Gは、異なる幅(50μm、15μm)の、パターン化された厚さ300nmのAlストリップの、表面形状測定(profilometry)データを示す。
【0007】
図4A図4A-Fは、ダイレクトに光学的にパターン化された半導体、金属、及び誘電体の特性を描いている。図4Aは、NHTTTリガンドを用いてパターン化された赤色、緑色及び青色-発光する量子ドットで構成されたピクセルのフォトルミネセンススペクトルを示す。対応するQD溶液の発光スペクトルは、破線で示している。励起波長は360nmであった。
図4B図4A-Fは、ダイレクトに光学的にパターン化された半導体、金属、及び誘電体の特性を描いている。図4Bは、NHTTTリガンドを用いてパターン化されたAl層の誘電率を描いている。測定は、厚さ125nmのAl層及び面積0.64mmの、Al/Al/Alフラットキャパシタについて実行した。挿入図は、Al層の抵抗率を測定するために使用したI-V特徴を示す。
図4C-D】図4A-Fは、ダイレクトに光学的にパターン化された半導体、金属、及び誘電体の特性を描いている。図4C及び4Dは、組成的に-合致したCdSe/CdSe 2-リガンド及びCdCl処理で作製されたチャネルを伴うFETのトランスファー及びアウトプットの特徴を示す。
図4E-F】図4A-Fは、ダイレクトに光学的にパターン化された半導体、金属、及び誘電体の特性を描いている。図4E及び4Fは、IGZOチャネルを伴うFETのトランスファー及びアウトプットの特徴を示す。このチャネル長は、30μmであり、且つチャネル幅は、180μmであった。
【0008】
図5図5は、フォトパターン化されたアルミナ層の抵抗率を測定するために使用した構成を描く。(B)は、底部のアルミニウム電極を示し、(M)は、アルミナの中間層を示し、(T)は、上部のアルミニウム電極を示す。
【0009】
図6図6は、Au-SCN NCパターンの顕微鏡画像であり、各正方形のサイズは、50μm×50μmである。
【0010】
図7A-B】図7Aは、メタノール中のPhS-Cl及び(PhS)-CdClの吸収スペクトルを描く。図7Bは、PhI-Cl及び(PhI)-CdClのFTIRスペクトルを示す。
図7C図7Cは、DMF及びNMF中のCdSe-CdCl-(PhI);並びに、DMF及びNMF中のCdSe-CdCl-(PhS)の吸収スペクトルを示す。図7Dは、(PhI)-CdClの結晶構造を示す。図7Eは、(PhI)-ZnClの結晶構造を示す。
図7D図7Dは、(PhI)-CdClの結晶構造を示す。
図7E図7Eは、(PhI)-ZnClの結晶構造を示す。
【0011】
図8図8は、TTTリガンドを持つ光活性コロイド状NCの透過型電子顕微鏡画像を示し、左から右に:CdSe、コア-シェルCdSe/ZnS、Al NC、NaYF:Yb,Er@CaFアップコンバージョンしたナノ粒子(UCNP)である。
【0012】
図9A-B】図9A-9Dは、機能性無機材料のFTIRスペクトルを示す。図9Aは、UV露光の前後に有機リガンド及びSCN -(TTT)リガンドでキャップされたCdSe NCを示す。図9Bは、TTT-リガンドでキャップされたAu、CdSe-ZnS、CdTe、及びInP NCを示す。
図9C-D】図9A-9Dは、機能性無機材料のFTIRスペクトルを示す。図9Cは、UV露光前後にTTT-でキャップされたAl NCを描く。図9Dは、有機リガンドでキャップされたCdSe NC、(PhI)CdClとリガンド交換後の前記物質、及び350℃で20秒間アニーリングした(PhI)CdClリガンドを持つCdSe NCを描く。
【0013】
図10図10A-10Oは、全て無機材料から得られた様々なパターンを描く。図10A-10Fは、TTT-キャップされたCdSe(図10A)、CdTe(図10B)、InP(図10C)、Al図10D)、Au NC(図10E)、及び赤色発光するCdSe/ZnS QDの緑色発光するInP/ZnS QDとの二重層パターン(図10F)を示す。図10G-10Oは、PAGリガンド(4-メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムトリフラート(p-CHS-C-)(C-)OTf-)を用いパターン化されたNCを示す。図10Gは、CdSe-CdCl 2- NCを示す。図10Hは、CdTe-CdCl 2- NCを示す。図10Iは、InAs-Cu NCを示す。図10Jは、CdSe-AsS 3- NCを描く。図10Kは、CdSe-Sn 4- NCを示す。図10Lは、CdSe-CdSe 2- NCを示す。図10Mは、CdSe-SCN NCを示す。図10Nは、CeO-MoO 2- NCを描く。図10Oは、非晶質IGZOを示す。スケールバー:100μm。
【0014】
図11図11は、MeOH中のNa-ピラニン、PhI-Cl、及びPhI-ピラニンの吸収スペクトル(左側パネル);PhI-ピラニンPAGを使用しパターン化されたInP(上部右)及びCdSe-InSe(底部右)の画像を描く。スケールバーは、100μm(上部)及び5mm(底部)である。
【0015】
図12A-B】図12A-12Hは、機能性無機材料の粉末X線回折パターンを示す。図12Aは、CdSe NCを描く。図12Bは、2つの異なるサイズのPbS NCを示す。
図12C-D】図12A-12Hは、機能性無機材料の粉末X線回折パターンを示す。図12Cは、HgSe NCを示す。図12Dは、HgTe NCを示す。
図12E-F】図12A-12Hは、機能性無機材料の粉末X線回折パターンを示す。図12Eは、CeO NCを示す。図12Fは、ZrO NCを示す。
図12G-H】図12A-12Hは、機能性無機材料の粉末X線回折パターンを示す。図12Gは、Au NCを示し、図12Hは、異なるアニーリング温度の非晶質IGZOを示す。
【0016】
図13図13は、C. A. Mackの文献「Fundamental Principles of Optical Lithography」(Wiley, 2007)から適合された、ポジ・レジストのためのリソグラフィーのプロセス工程;並びに、ポジトーン(positive tone)の無機ナノ材料のためのダイレクト光学リソグラフィー(DOLFIN)のためのプロセス工程の典型的配列の比較を示す。多層化されたパターンのパターニングの場合、基板調製は、最初のパターン化された層にのみ適用する。
【0017】
図14A-B】図14Aは、フォトパターン化され、且つ部分的に焼結されたCdSe/NHCN NCで作製されたFETのトランスファー特徴を描く。図14Bは、フォトパターン化され、且つ部分的に焼結されたCdSe/NHCN NCのFETのアウトプット特徴を示す。挿入図:CdSe/NHTTTからのパターンの例。スケールバー:200μm。
図14C-D】図14Cは、挿入に示されているPAG式でフォトパターン化されたCdSe/NHCdCl NCのFETのトランスファー特徴を描く。図14Dは、挿入に示されているPAG式でフォトパターン化されたCdSe/NHCdCl NCのFETのアウトプット特徴を描く。
図14E-F】図14Eは、InSe 2-表面-結合基及び(4-メチルチオフェニル)(メチル)(フェニル)スルホニウムトリフラートPAGによりフォトパターン化され且つ部分的に焼結されたCdSe NCの、FETのトランスファー特徴を描く。図14Fは、InSe 2-表面-結合基及び(4-メチルチオフェニル)(メチル)(フェニル)スルホニウムトリフラートPAGによりフォトパターン化され且つ部分的に焼結されたCdSe NCの、FETのアウトプット特徴を示す。挿入図:CdSe/(NInSeからのパターン例。スケールバー:200μm。
【0018】
図15A-B】図15Aは、ほぼ最適にドープされたフォトパターン化されたIGZOフィルムで作製されたFETのトランスファー特徴を描き、これは図4E及び4Fに示したものと同じである。図15Bは、スピン-コーティングされたIGZOフィルムの光透過スペクトルを示す。挿入図:フォトパターン化されたIGZOフィルムの例。スケールバー:200μm。
図15C-D】図15Cは、フォトパターン化され、わずかに過剰ドープされたIGZOフィルムで作製されたFETのトランスファー特徴を描く。図15Dは、フォトパターン化され、わずかに過剰ドープされたIGZOフィルムで作製されたFETのアウトプット特徴を示す。IGZOゾル-ゲル前駆物質は、2-Me中に溶解され、PAG(10重量%、EtOH)と混合される。パターニング後、フィルムは、測定前に、350℃でアニーリングされた。チャネル幅及び長さは、各々、180μm及び30μmであった。
【発明の概要】
【0019】
リガンドでキャップされた無機粒子、リガンドでキャップされた無機粒子で構成されたフィルム、及びフィルムのパターニングの方法が提供される。同じくこのフィルムを組み込んだ電子装置、フォトニック装置、及び光電子工学装置も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
無機粒子に結合されるリガンドは、カチオン/アニオン対から構成される。その対のアニオンは、粒子の表面に結合され、並びにアニオン及びカチオンの少なくとも一方は感光性である。この開示の目的のために、好適な波長の光によるイオンの照射が、イオンにおける化学的変化を誘導する場合に、そのイオンは感光性である。有機溶媒中のリガンドでキャップされた無機粒子の分散は、基板上に積層され、且つフォトレジストとして作用することが可能である薄フィルムへ乾燥されることができる。
【0021】
リガンドが結合され得る粒子は、ナノ結晶を含むことができ、ここでナノ結晶は、少なくとも1ナノスケールの寸法-典型的には1000nmを超えない、又は例えば500nmを超えない寸法を有する結晶性粒子である。一部のナノ結晶は、1000nmより大きい寸法は有さない。しかし、より大きい粒子を使用することもできる。これらのナノ結晶は、様々な規則的及び不規則的形状を有し、且つ実質的に丸いナノ結晶、及びナノロッド又はナノワイヤなどの細長いナノ結晶を含むことができる。これらのナノ結晶を含む粒子は、導電性材料、半導体材料、誘電体材料、磁性材料、触媒材料、及び/又は光アップコンバージョンした材料から構成され得る。好適な粒子は、金属粒子、金属合金粒子、金属カルコゲナイド粒子、メタロイド粒子、IV族半導体粒子、II-VI族半導体粒子、III-V族半導体粒子、金属酸化物粒子、及びメタロイド酸化物粒子を含む。好適なナノ結晶は、外側シェル材料により取り囲まれた内側コア材料を有するコア-シェルナノ結晶を含む。無機のナノ結晶は、例えば、コロイド合成、気相合成、又はボールミル粉砕を用いて製造することができる。
【0022】
感光性リガンドが結合され得るII-VI族ナノ結晶の例としては、CdSeナノ結晶、CdTeナノ結晶、ZnSナノ結晶、ZnSeナノ結晶、HgSeナノ結晶、HgTeナノ結晶、HgSナノ結晶、HgCd1-xTeナノ結晶、HgCd1-xSナノ結晶、HgCd1-xSeナノ結晶、CdZn1-xTeナノ結晶、CdZn1-xSeナノ結晶、CdZn1-xSナノ結晶、CdSナノ結晶、及びZnTeナノ結晶が挙げられ、ここで0<x<1である。これらの材料の比較的大きい粒子も、使用することができる。
【0023】
感光性リガンドが結合され得るIII-V族ナノ結晶の例としては、InPナノ結晶、InAsナノ結晶、InSbナノ結晶、GaAsナノ結晶、GaPナノ結晶、GaNナノ結晶、GaSbナノ結晶、InNナノ結晶、InSbナノ結晶、AlPナノ結晶、AlNナノ結晶、及びAlAsナノ結晶が挙げられる。これらの材料の比較的大きい粒子も、使用することができる。
【0024】
感光性リガンドが結合され得るIV族ナノ結晶の例としては、Siナノ結晶、Geナノ結晶、SiGeナノ結晶、及びSiCナノ結晶が挙げられる。これらの材料の比較的大きい粒子も、使用することができる。
【0025】
感光性リガンドが結合され得る金属酸化物ナノ結晶の例としては、Feナノ結晶、Alナノ結晶、ZrOナノ結晶、CeOナノ結晶、ZnOナノ結晶、FeOナノ結晶、Feナノ結晶、HfOナノ結晶、及びインジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)ナノ結晶が挙げられる。これらの材料の比較的大きい粒子も、使用することができる。
【0026】
感光性リガンドが結合され得る金属カルコゲナイドナノ結晶を含む金属ナノ結晶の例としては、Auナノ結晶、Agナノ結晶、Feナノ結晶、Ptナノ結晶、FePtナノ結晶、Biナノ結晶、Biナノ結晶、BiSeナノ結晶、BiTeナノ結晶、Coナノ結晶、CoPtナノ結晶、CoPtナノ結晶、Cuナノ結晶、CuSナノ結晶、CuSeナノ結晶、CuInSeナノ結晶、CuIn(1-x)Ga(S,Se)ナノ結晶(式中、0<x<1)、CuZnSn(S,Se) ナノ結晶、GaSeナノ結晶、Niナノ結晶、PbSナノ結晶、PbSeナノ結晶、PbTeナノ結晶、Pdナノ結晶、Ruナノ結晶、Rhナノ結晶、及びSnナノ結晶が挙げられる。これらの材料の比較的大きい粒子も、使用することができる。
【0027】
感光性カチオンは、リガンドイオン対中の様々な無機アニオンと会合されることができる。リガンドイオン対の一部の実施態様において、アニオンは、金属アニオン、金属ハロゲン化物アニオン、金属カルコゲナイドアニオン、及び/又は金属酸化物アニオンなどの、金属-含有アニオンである。例えば、アニオンの様々な実施態様は、式:MX m-(式中、Mは、金属原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、nはハロゲン原子の化学量を表し(例えば、n=3又はn=4)、及びmはアニオン電荷の程度を表す(例えば、m=1又はm=2))(例は、CdCl 及びCdCl 2-を含む);MCh m-(式中、Mは金属原子を表し、Chはカルコゲン原子を表し、nはカルコゲン原子の化学量を表し(例えば、n=2、3、4、5、又は6)、及びmはアニオン電荷の程度を表す(例えば、m=2、3、又は4))(例は、CdTe 2-、Sn 4-、AsS 3-、及びSnS 4-を含む);並びに、MO y-(式中、Mは金属原子を表し、zは酸素原子の化学量を表し(例えば、z=4)、及びyは、アニオン電荷の程度を表す(例えば、y=2))(例は、MoO 2-を含む)を有する。他の例は、金属リン酸化物(例えば、P1862 6-及びPMo1240 3-)を含む。
【0028】
他の実施態様において、感光性カチオンは、カルコゲナイドアニオン、ハロゲン化物アニオン、酸素アニオン(O2-)、及びアジドアニオン(N )などの、無機の無金属アニオンに会合される。無金属アニオンは、非金属のイオウ、リン、窒素及び炭素の酸化物を含み、スルフィドアニオン(SO 2-)、ホスフェートアニオン(PO 3-)、テトラフルオロボレートアニオン(BF )及びOCNアニオンを含む。例えば、ハロゲン化物アニオンの様々な実施態様は、式X m-(式中、Xはハロゲン原子を表し、nはハロゲン原子の数を表し(例えば、n=1)、及びmはアニオン電荷の程度(例えばm=1)を表す)(例はClを含む)を有する。これらの実施態様において、ナノ粒子の表面は、BF アニオン、トリフラート(OTf-)アニオン又はニトレート(NO )アニオンなどの、無金属アニオンにより電荷-平衡化される。そのようなアニオンは、無金属アニオンの塩を含むストリッピング剤の溶液を用い、無機粒子へ、最初に結合されている任意の有機リガンドを、ストリッピングすることにより導入されることができる。そのようなストリッピング剤の例は、テトラフルオロボレート塩(例えば、NOBF、EtOBF)、金属トリフラート塩(例えば、Zn(OTf)、Cd(OTf))、金属の硝酸塩(例えば、Zn(NO、In(NO)、硫酸塩、及びリン酸塩を含む。
【0029】
感光性カチオンは、光酸発生剤(PAG)であるカチオンを含む。PAGは、好適な波長の光が照射された場合に破壊され、酸プロトンを放出する、カチオン光開始剤(photo initiator)である。好適なPAGカチオンは、スルホニウム-ベースのカチオン及びヨードニウム-ベースのカチオン、例えばジアリールヨードニウム基、トリアリールスルホニウム基、又はジアリールアルキルスルホニウム基を含むカチオンなどである。イミド-ベースのPAGもまた使用することができる。PAGカチオンの例は、ジフェニルスルホニウム基、ジフェニルヨードニウム基、メチルフェニルスルホニウム基、又はトリフェニルスルホニウム基を有するものを含む。PAGの具体例は、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム、boc-メトキシフェニルジフェニルスルホニウム、(tert-ブトキシカルボニルメトキシナフチル)-ジフェニルスルホニウム、(4-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、(4-フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウム、N-ヒドロキシナフタルイミド、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド、(4-ヨードフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4-メチルフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4-メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウム、(4-フェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、(4-フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、及びトリス(4-tert-ブチルフェニル)スルホニウムを含む。
【0030】
単なる例証により、感光性カチオンを有するリガンドの一部の実施態様は、式A-MXを有する(式中、AはPAGカチオンを表し、Mは元素周期表の12族又は13族からの金属原子などの金属原子を表し、並びにXはハロゲン原子を表す)。これらのリガンドにおいて、MXは、例えば、CdCl、ZnCl、又はInClであることができる。そのようなリガンドは、アニーリング時の焼結促進剤として使用してよい。
【0031】
感光性カチオンは、光塩基発生体(PBG)であるカチオンを含む。無機のリガンドでキャップされた粒子におけるPBGの作用機序は、照射時にPBG分子から酸の代わりに塩基が放出されること以外は、PAGの作用機序に類似している。そのような塩基は、リガンドでキャップされた粒子の化学修飾を引き起こすであろう。例証として、表面結合した、PBG-含有リガンドを有するCdSeナノ結晶を含有する組成物は、PBGカチオンを含む無機のリガンド及び本明細書に説明された種類のアニオン(例えば、金属ハロゲン化物、金属カルコゲナイド、金属酸化物、カルコゲナイド、ハロゲン化物、又はO2-、もしくはそれらの2以上の組合せ)を、有機リガンドでキャップされたCdSeナノ結晶と混合することにより調製することができ、ここで有機リガンドは、PBG-含有リガンドと交換される。PBGカチオンとしては、例えば、Co(III)-アミン及びアルキルアミンの塩、O-アシルオキシム、ベンジルオキシカルボニル誘導体、並びに/又はホルムアミドが挙げられる。照射時に、PBGから放出されたアミンは、ナノ結晶の表面を、親水性から疎水性へと変化させる。PBG-キャップされたナノ粒子のフィルムは、本明細書記載の方法に従い、パターン化されることができる。
【0032】
感光性アニオンは、リガンドイオン対中の様々なカチオンと会合されることができる。好適なカチオンとしては、アンモニウムカチオン(NH )、及び式NR で表される(式中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はそれらの組合せを表す)第四級アンモニウムカチオンを含むアルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。
【0033】
感光性アニオンとしては、1,2,3,4-チアトリアゾール-5-チオラート(SCN )、及び(Fe(C2-などのシュウ酸鉄が挙げられる。後者のアニオンが好適な波長の放射線により照射される場合、Fe(III)はFe(II)へ変換し、これは引き続きアニオンと無機粒子表面の間の結合能を変化させ、更にリガンドでキャップされた粒子の有機溶媒中の溶解度を変化させる。他の感光性アニオンとしては、N-アルキルジチオカルバメートアニオン、又はN,N-ジアルキルジチオカルバメートアニオンが挙げられる。これらの具体例としては、N-メチルジチオカルバメート、N,N-ジメチルジチオカルバメート、N-エチルジチオカルバメート、及びN,N-ジエチルジチオカルバメートが挙げられる。更に他の感光性アニオンとしては、1,1-チオオキサレート、脱プロトン化された5-メルカプト-1-メチルテトラゾール、及びキサントゲン酸エチルが挙げられる。
【0034】
リガンドでキャップされた無機粒子は、有機リガンドのリガンドイオン対との交換を促進する温度及び時間で、有機リガンドでキャップされた無機粒子並びにリガンドイオン対のアニオン及びカチオンを含有する溶液を形成することにより、作製することができる。ナノ結晶の表面に最初に結合された有機リガンドは、ナノ結晶合成により存在する生来の(native)リガンドであってよい。そのようなリガンドは、オレエート及びオレイルアミン(OAm)リガンドなどの、親油性リガンドを含むが、これらに限定されるものではない。
【0035】
他の実施態様において、非イオン性PAGが使用される。これらの実施態様において、これらの粒子の表面は、電荷平衡イオンにより電荷が平衡化されており、これは金属-含有アニオン-本明細書記載の種類の金属-含有アニオンを含むもの、無金属アニオン-本明細書記載の無金属アニオンを含むもの、又はそれらの組合せであることができる。しかしこれらの実施態様において、非イオン性PAGは、イオン対の一部として、ナノ粒子表面へは結合されない。代わりに、非イオン性PAGは、ナノ粒子を含有する溶液中に含まれる。注目すべきことに、非イオン性PAGリガンドは、極性有機溶媒中でより大きい粒子(例えば、サイズが1μm又はそれよりも大きい粒子)を安定化することができる。非イオン性PAGの例としては、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドペルフルオロ-1-ブタンスルホネート、N-ヒドロキシナフタルイミドトリフラート、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、4-N,N-ジメチルアミノフェニルp-トルエンスルホネート、メチルトリフルオロメタンスルホネート、フェニルトリフルオロメタンスルホネート、2-ナフチルトリフルオロメタンスルホネート、及び4-ニトロフェニルトリフルオロメタンスルホネートが挙げられる。一部の実施態様において、N-ヒドロキシナフタルイミドトリフラート以外の非イオン性PAGが使用される。
【0036】
リガンドでキャップされた無機粒子を含有するフォトパターン化可能なフィルムは、リガンドでキャップされた無機粒子の分散による基板のコーティング、及びこのコーティングを乾燥させることにより形成することができる。同様に、無機のナノ粒子及び非イオン性PAGの混合物を含有するフィルムは、非イオン性PAG及び分散された無機のナノ粒子を含有する溶液による基板のコーティング、並びにこのコーティングを乾燥させることにより形成することができる。生じるフィルムは、パターン化され、広い範囲の装置において使用するためのパターン化された無機のフィルムを提供することができる。コーティングは、例えば、キャスティング、スピニング、噴霧、及び/又はスロットダイコーティングの技術などを用いて、形成することができる。これらの方法において、無機粒子を含有するフィルムの第一の部分は、リガンドイオン対の感光性アニオン又はカチオン、又は感光性非イオン性PAG中に化学変化を誘導する波長を含む放射線により照射される一方で、フィルムの第二の部分は、放射線から保護される。結果として、フィルムの露光された部分は、化学修飾を受ける。その後、フィルムの第一の部分又はフィルムの第二の部分のいずれかは、選択的に除去される。1μm又はそれよりも良い解像度を含み、且つ更に20nm又はそれよりも良い解像度を含む高解像度を伴うパターンを、厚さ5nm~200nmの範囲のフィルムを含む、薄フィルム中に形成することができる。入射放射線波長は、使用される特定のリガンド又は特定の非イオン性PAGにより決まるであろう。本方法の様々な実施態様において、電磁スペクトルの深紫外線及び極紫外線を含む紫外線波長、可視、及び/又は赤外領域の波長を有する放射線を、使用してよい。例えば、波長365nmの紫外線を使用することができる。入射放射線はまた、電子ビームであってよい。パターニング後、これらの溶媒及び/又はナノ結晶は、リサイクルすることができる。
【0037】
本方法の一部の実施態様において、フィルムの照射された部分は、有機溶媒中に不溶性となるか、又は少なくともフィルムの保護された部分よりも有機溶媒中により少なく溶解される。他の実施態様において、フィルムの照射された部分は、有機溶媒中に可溶性となるか、又は少なくともフィルムの保護された部分よりも有機溶媒中により可溶性とされる。これらの実施態様において、フィルムのより可溶性の部分は、フィルムを、フィルムのより可溶性部分を溶解する有機溶媒と接触させることにより、選択的に除去することができるが、他の部分はできない。一部の実施態様において、この溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)又はN-メチルホルムアミド(NMF)などの極性有機溶媒である。
【0038】
フィルムがリガンドの一部として又はフィルム内の非イオン性成分のいずれかとしてPAGを含む場合、放射線は、PAGにより吸収され且つこれを破壊し、酸を生成するように選択される。その酸は次に、フィルムと反応し、フィルムの照射した部分を有機溶媒中に不溶性とする一方、フィルムの露光されない部分は、その溶媒中に可溶性であり続ける。その後フィルムの可溶性部分は、これを溶媒と接触させることにより、選択的に除去されることができる。あるいは、放射線は、有機溶媒中に可能性である光活性アニオン又はカチオンを、有機溶媒中に不溶性であるアニオン又はカチオンへに変換することができる。例えば、SCNアニオンは、ある種の極性有機溶媒中に可溶性であるが、紫外線への露光時に、SCNアニオンへ変換され、その極性有機溶媒中に不溶性となる。
【0039】
リガンドでキャップされたナノ結晶などの、リガンドでキャップされた粒子で構成されたフィルムの別のパターニング方法は、オレエートリガンド又はオレイルアミンリガンドなどの、親油性有機リガンドでキャップされた無機粒子を含有するフィルムで始まる。このフィルムは、PAGカチオン及びアニオンを含む溶液に曝される。次にフィルムの一部が照射され、これによりPAGから生じた光発生されたプロトンは、親油性リガンドを攻撃し、これはその溶液由来のアニオンにより置き換えられる。しかしこれらのアニオンは、粒子表面と弱い結合のみを形成し、結果として、フィルムの照射された部分は、有機溶媒により選択的に洗浄除去することができる。
【0040】
ゾル-ゲル中の無機粒子で構成されたフィルムのパターニングの別の方法は、無機の分子前駆物質を含有するフィルムで始まる。このフィルムは、PAGカチオン及びアニオンを含む溶液に曝される。このフィルムの一部は照射され、これによりPAGから生じた光発生されたプロトンは、加水分解プロセスを加速させ、且つ前駆物質分子の重合を引き起こす。しかし、この無機の分子前駆物質は、非照射部分中にそれらの当初の状態を維持し、結果的に、本明細書記載のように、有機溶媒により選択的に洗浄除去することができる。無機粒子は、例えば、Al、ZrO、ZnO、SiO、及び/又はInGaZnOナノ結晶などの金属酸化物ナノ結晶であることができ;且つ、これらの各々に関する分子前駆物質は、それぞれ、例えば、アルミニウム-トリ-sec-ブトキシド(Al(OC);ジルコニウムアセチルアセトネート(Zr(acac));酢酸亜鉛(Zn(OAc));テトラエトキシシラン(TOES);又は、硝酸インジウム(In(NO)、硝酸ガリウム(Ga(NO)、及び酢酸亜鉛(Zn(OAc))の混合物である。
【0041】
このパターン化されたフィルムは、トランジスタ、発光ダイオード、光起電型電池、熱電装置、キャパシタ、及び光検出器を含む、様々な装置中に、導電性材料、半導体材料、磁性材料、誘電体材料、触媒材料、及び/又は光アップコンバージョン材料として組み込まれることができる。これらの装置は一般に、例えば、フィルムとの電気通信における陽極及び陰極を含む、そのような装置に共通の追加の部品を含むであろう。
【実施例
【0042】
実施例1
この実施例は、機能性無機ナノ材料のダイレクト光学リソグラフィー(DOLFIN)の方法を例証する。
【0043】
この方法は、従来のフォトリソグラフィーの多数の恩恵を組み合わせており、且つ有機フォトレジスト及び他の副産物によるそれらの希釈又は夾雑を伴うことなく、無機のナノ材料及びゾル-ゲル化学物質の効率的パターニングに合わせて調整される。ほとんど全ての無機の機能性材料は、様々な利用可能な液相及び気相技術を使用し、NCの形で調製されることができるので、この方法は万能である。無機のリガンド分子は、イオン対Cat-として構築され、式中X-は、電子欠損の(ルイス酸)表面部位に結合する電子リッチな求核基であり、典型的には金属イオンである。X-上の陰電荷は、図1Aに示したように、カチオンCatと平衡化される。極性溶媒中で、カチオンは、表面から解離し、且つコロイド安定化に寄与するイオンクラウドを形成する一方で、無極性環境又はフィルムにおいては、イオン対は、密に結合状態にある。DOLFINを実行するために、光化学的に活性のあるX-基及びCat基は、全ての無機のNCのダイレクト光学パターニングができるように、デザインされる。
【0044】
一実験において、ジフェニルヨードニウム(Ph)又はトリフェニルスルホニウム(Ph)カチオンは、光酸発生剤(PAG)としても知られるが、これらはSn 4-、CdCl -、又はMoO 2-などの、表面に結合している無機アニオンと組合せられる(図1B)。そのようなリガンドは、金属、半導体、及び多くの他の型のNCに、コロイド安定性を提供する。光子吸収時に、PAG分子は分解され、図1Bに示したように、酸性プロトンを放出する。これらのプロトンは、本明細書に考察したように、極性及び無極性溶媒中のNC溶解度を変更するいくつかの異なる様式で、X-基と又はNC表面と、反応することができる。別の実験において、X-基それ自身は、アンモニウム1,2,3,4-チアトリアゾール-5-チオラート(NHCN又はNHTTT)を使用することにより、感光性とされる。SCN -基は、図1B及び1Cに示したように、表面に結合したSCN-イオン、N、及びイオウへ光化学的に分解される。PAG又はTTT-フラグメントを伴うリガンドは、互いに巧く補完され;PAG-ベースのリガンドは極めて柔軟性がありかつ万能である一方、TTTリガンドは、pH-感受性材料として使用することができる。
【0045】
光活性アニオン又はカチオンリガンド成分は、TTTリガンドを持つCdSe QDの場合(図1C)又はSnSn 4-リガンドを持つCdSe QDの場合(図1D)のように、対応するNCの吸収スペクトルの頂上に出現することができる、強力なUV吸収バンドを示した。これらのリガンドは、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び他の常用の溶媒中で、優れたコロイド安定性をもたらした。しかしUV光(λ<360nm)の照射は、TTTリガンドの分解を引き起こし、DMF中に不溶性のNCを作製する。TTT-のSCN-への光化学的転換は、図1C挿入図、及び図9A、9B、9C及び9Dに示したように、TTT-基及びSCN-基の特徴的IR吸収特性を用いて追跡することができる。様々なパターンが、マスクを通じてNCフィルムに光を当て、その後露光されないNCをDMFで洗浄除去することにより、作製される。コロイド安定性の明確な喪失は、NCフィルムの、120mJcm-2の照射線量に相当する、254nm、6.3mW/cm光への20秒間の露光後に観察された。参照のために、従来の有機フォトレジスト(例えば、Shipley S1800シリーズ、Dow Chemicals)は、同等の80~150mJcm-2の照射線量を必要とする。(例えば、Y. Sunらの論文「Photolithographic Route to the Fabrication of Micro/Nanowires of III-V Semiconductors」、Adv. Funct. Mater. 15, 30 (2005)参照)。同様にPAG-ベースのリガンドを持つNCは、照射線量40~70mJcm-2を用いて、パターン化された(図10A-10F)。更にPAGは、深紫外から可視までの範囲に及ぶ異なるスペクトル領域において機能するように、操作することができる(図11)。表面リガンドの分解は、変更されない吸収スペクトル(図1C)及びX線回折図形(図12A-12H)により明らかにされたように、NCのサイズ又は形状の変化を引き起こさなかった。第一層がパターン化された後、このプロセスは反復され、多層パターン、例えば赤色-(R)、緑色-(G)、及び青色-発光(B)QDのパターンを作出する。~80万RGBサブピクセルで構成される複合パターンもまた、多くの要素の平行パターニングによる、3つのDOLFIN工程で作製される。
【0046】
PAG及びTTTの両リガンドは、広い範囲の材料及び基板に適用され得る。図2A-2C及び図10A-10Oは、NHTTT及びPAG-光活性リガンドでキャップされたNCの様々なパターンを示す。本明細書別所記載のように、DOLFINは、金属、酸化物、半導体、磁性、及び光アップコンバージョンした(例えば、NaYF:Yb,Er@CaF)材料のNCにとって、良好に働いた。PAG-はまた、本明細書別所記載のように、ゾル-ゲル前駆物質への添加剤としても使用される。例えば5重量%の(4-メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムトリフラート(p-CHS-C-)(C-)OTf-)の、2-メトキシエタノール中のIn(NO、Ga(NO、及びZn(CHCOO)の混合物への添加により、インジウム-ガリウム-亜鉛-酸化物(IGZO)層が、透過型トランジスタのためにパターン化された。
【0047】
前記実験において、ポジパターンは、光に露光された領域を不溶性とし、かつ現像液(例えばDMF)により材料を露光されなかった領域から除去することにより、パターン化された。ネガパターンは、本明細書別所記載のように、(p-CHS-C-)(C-)OTf-(OTf=トリフラート)PAGと混合された、オレエート及びオレイルアミンなどの親油性リガンドでキャップされたNCを使用することにより、作製することができる。UV露光後、光生成されたプロトンは、親油性リガンドを効率的に攻撃し、且つそれらをOTf-基と置き換えた。非常に弱い求核試薬として、トリフラートは、NC表面の金属部位と、共有結合よりもむしろイオン対を形成した。結果として、露光された領域は、極性溶媒中に可溶性となり、N-メチルホルムアミド(NMF)により洗浄除去され、ネガパターンを形成することができた(図2C)。露光されないNCは、それらの親油性の表面コートを保持し、且つNMF中に溶解しなかった。同時に、NMF中のPAGの高い溶解度は、あらゆる未反応のPAGの露光されない領域からの洗浄を可能にした。有機的にコーティングされたNCのパターン化された層は、明るいルミネセンスを示し、且つ電荷輸送及び他の特性を最適化するために、様々なオン-フィルムリガンド交換手順に供することができる。
【0048】
各プロセス条件を最適化しようとする努力をほとんど行わなくとも、これらのパターンの品質は、市販のフォトポリマーレジストにより達成される品質と同等であった。図3Aは、NHTTTリガンドを使用し互いの上部に連続してパターン化された幅10μmのCdSeストリップのパターンに関する良好な忠実性を明らかにしている。このパターン化された領域の端は、図3Bに示したように、鋭利且つ揃っている(clean)。1951 USAFターゲットを用いて推定された解像度は、1-ミクロンマスク解像度により限定された(図3C)。パターン化された層の厚さは、UV光の材料への侵入により決定した。II-VI及びIII-V半導体に関して、UV領域中の線形の吸収係数は、~10cm-1で平らになる(例えば、「Numerical Data and Functional Relationships in Science and Technology」、Landolt-Bornstein (Springer社、ニューヨーク、1982)を参照のこと)。この推定と一致して、CdTe NC層は、厚さ~10nmと100nmの間で効率的にパターン化されることができる(図3D及び図3F)。より厚い層は、Al及び他の酸化物などの、低いUV吸光度を有する材料に関してパターン化されることができる(図3G)。同じ又は異なる材料の多層は、インクコーティング、露光、及び現像の、1層につき3つのプロセス工程により、逐次フォトパターン化されることができる。このような層毎のパターニングは、垂直方向に沿って精度~10nmでの3D無機層のデザインを可能にする(図3E)。比較のために、従来の有機フォトレジストを使用する層毎のパターニングは、各層のパターニングのための多数の-典型的には7つの-プロセス工程のために、3D材料の構築に関する実用度が遙かに低い(図13)。
【0049】
DOLFINの実際の有用性を評価するために、感光性無機リガンドを用いてパターン化されたいくつかの代表的金属、誘電体、及び半導体の特性を、特徴付けた。図4Aは、図1Eに示したように正方形の「ピクセル」のアレイとしてパターン化した赤色-、緑色-、及び青色-発光するコア-シェルQDからの発光スペクトルを示している。このスペクトルは、コアエッチング又はトラップ発光の明らかな徴候を伴わずに、当初のQDからのバンド-エッジ発光の鋭いピークを示している。これは、LCD及びLEDディスプレイのカラーフィルター及びピクセル内のQDエミッターのパターニングのためにDOLFINを使用することは、簡単明瞭であることを指摘している。金NCは、光活性NHTTTリガンドを用いてパターン化され、その後150℃で20分間アニーリングされた。ファン・デル・パウ法で測定した厚さ60nmのフィルムの抵抗率(ρ)は、300Kで5.2×10-8Ωmであった(図5)。この値は、本明細書記載のアプローチは、金属電極及び配線のダイレクトパターニングに適していることを示している。TTT-リガンドのUV-露光後に形成されたSCN-イオンは、電荷輸送を妨げなかった。
【0050】
酸化物NCは、電子回路及び様々なコーティング中の誘電体層に使用した。NHTTTリガンドを用いてパターン化したAl NC層の誘電特性を測定した。フラットなキャパシタ形状において、厚さ125nmのAlフィルムは、10~10Hz周波数範囲にわたり誘電率ε=6.9±0.3を、ρ>1014Ωcmに相当する低い漏れ電流と共に示した(図4B、挿入図)。これらのε値は、ナノスケールAl粒子で構成されたフィルムに関するブルグマン有効媒質理論からの推定と一致し、且つ原子層積層により積層された高密度Alフィルムに関するεよりもわずかに低かった(ALD、ε=7.7±0.4)。(例えば、M. D. Gronerらの論文「Low-Temperature Al2O3 Atomic Layer Deposition」、Chem. Mater. 16, 639-645 (2004)を参照のこと)。632.8nmでの楕円偏光測定器で測定されたパターン化されたAlフィルムの屈折率(n)は、1.40であり、且つALD成長した高密度Alフィルムに関するn=1.5~1.6と同等であることができる。本明細書別所記載のように、より高いn値が、PAGリガンドを用いてパターン化されたZrO、ZnO、及びCeO NC層について認められた(各々、n=1.62、1.67、及び1.82)。非常に類似した屈折率が、光活性リガンドを伴わずに調製したNCフィルムについて測定された。
【0051】
DOLFINによりパターン化した半導体層の品質を評価するために、プロトタイプFETを、以下に説明するように作製した。それらのトランスファー及びアウトプット特性は、図4C-4F、図14A-14F、及び図15A-15Dに示している。TTT及びPAG-ベースの感光性リガンドは両方共、良好なFET性能を示した。例えば、(PhI)CdClリガンドにより光パターン化されたCdSe NCの厚さ30nmの薄フィルムは、電子移動度(μ)20cm/Vsを示した。(p-CHS-C-)(C-)OTf- PAGを用いてパターン化した、CdSe 2-半導体はんだと組成が合致したCdSe NCは、μ>100cm/Vsを伴うFETを可能にした(図4C及び4D)。(例えば、D. S. Dolzhnikovらの論文「Composition-matched molecular “solders” for semiconductors」、Science 347, 425-428 (2015)を参照のこと)。同じPAGを用いてパターン化された透過性IGZOフィルムは、μ=4-10cm/Vs、電流変調>10、及び無視できる履歴現象を伴う頑強なFETを明らかにした(図4E及び4F、並びに図15A-15D)。
【0052】
この実施例は、TTT-及びPAG-ベースのリガンドは、パターン化された材料の電子的及び光学的特徴を損なうことなく、従来のフォトリソグラフィーの解像度と同等の解像度を持つ数多くの無機材料のダイレクト光学パターニングが可能であることを示している。このアプローチは、溶液-プロセスされた金属、誘電体、及び半導体の広範な技術的採用を可能にする。ケイ素、ガラス、及びポリマーを含む広い範囲の基板とのその互換性は、様々なハイブリッド装置の製造のための道を提供する。DOLFINはまた、無機材料の3Dステレオリソグラフィーに適用可能である。
【0053】
材料及び方法
化学物質
酸化カドミウム(CdO、99.5%、Aldrich)、塩化カドミウム(CdCl、99.99%、Aldrich)、オレイン酸(OA、90%、Aldrich)、セレン粉末(Se、100メッシュ、99.99%金属ベース、Aldrich)、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO、90%、Aldrich)、1-オクタデセン(ODE、90%、Aldrich)、オレイルアミン(OAm、70%、Aldrich)、テルルショット(Te、99.999%、Aldrich)、トリブチルホスフィン(TBP、異性体を含み97%、Aldrich)、塩化インジウム(III)(InCl、無水物、99.999%、Aldrich)、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン((TMS)P、98%、Strem)、酢酸鉛三水和物(Pb(OAc)・3HO、99.999%、Aldrich)、ビス(トリメチルシリルメチル)スルフィド((TMS)S、>98%、Aldrich)、トリオクチルホスフィン(TOP、98%、Strem)、塩化金(III)水和物(HAuCl・xHO、微量金属ベースで99.999%、Aldrich)、ジルコニウム(IV)イソプロポキシドプロパノール錯体(Zr[OCH(CH・(CHCHOH、99.9%、Aldrich)、塩化ジルコニウム(IV)(ZrCl、99.9%、Aldrich)、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン(>97%、Aldrich)、ボランtert-ブチルアミン錯体(TBAB、97%、Aldrich)、Te(99.999%、ペレット、Aldrich)、HgCl(ACS試薬等級、>99.5%、Aldrich)、セレノ尿素(98%、Aldrich)、酸化アルミニウムナノ粒子(Al NP、イソプロパノール中20wt%、Aldrich)、硝酸インジウム(III)水和物(In(NO・xHO、99.99%、Aesar)、硝酸ガリウム(III)水和物(Ga(NO・xHO、99.9%、Aesar)、酢酸亜鉛二水和物(Zn(OAc)・2HO、99.999%、Aldrich)、トリフルオロ酢酸ナトリウム(CFCOONa、98%、Aldrich)、炭酸カルシウム(CaCO、BioXtra、≧99.0%、Aldrich)、炭酸イットリウム(III)水和物(Y(CO・xHO、微量金属ベースで99.9%、Aldrich)、炭酸イッテルビウム(III)水和物(Yb(CO・xHO、99.9%、Aesar)、炭酸エルビウム(III)水和物(Er(CO・xHO、99.99%、Aesar)、トリフルオロ酢酸(ReagentPlus(登録商標)、99%、Aldrich)、アジ化ナトリウム(NaN、Aldrich)、二硫化炭素(CS、>99%、Aldrich)、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム((NHSiF、98%、Aldrich)、ジフェニルヨードニウムクロリド(DPI-Cl、>98%、Aldrich)、トリフェニルスルホニウムクロリド(TPS-Cl、94%、Aesar)、(4-メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムトリフラート(Aldrich)、硫化カリウム(KS、95%、Strem)、ジメチルホルムアミド(DMF、99.8%、無水物、Aldrich)、ジメチルスルホキシド(DMSO、99.8%、無水物、Aldrich)、炭酸プロピレン(PC、99.7%、無水物、Aldrich)、テトラクロロエチレン(TCE、HPLC用のクロマト溶媒、99.9%、Aldrich)、ジメトキシメタン(DMM、99%、Aldrich)、2-メトキシエタノール(2-Me、>99.9%、Aldrich)は、入手した状態で使用した。N-メチルホルムアミド(NMF、99%、Aesar)は、使用前にグローブボックス内で乾燥した。
【0054】
コロイド状無機材料の合成
CdSeナノ結晶。オレイン酸カドミウム(Cd(OA))ストック溶液を、25mLの三つ口フラスコ中で、CdO(0.643g、5mmol)を、オレイン酸(OA、10mL)と室温で混合し、且つこの溶液を真空下、150℃で1時間配置することにより得た。これにNを補給した後、赤味を帯びた混合物を、250℃まで加熱し、その間この懸濁液は、無色の溶液へ変化し、これは反応の完了、及びCd(OA)の形成を示した。引き続き、このフラスコを冷却し、真空下、150℃で乾燥させ、この反応時に生成した微量の水を捕捉した。その後得られたCd(OA)を、更なる使用のための、白色ワックス状固形物としてストックした。TOP-Seストック溶液(1M)を、Se粉末(1.97g、25mmol)を、TOPの25mL中に溶解することにより調製し、ブローブボックス内でストックした。ウルツ相CdSe NCを、B. Mahlerらの論文「Ligand-Controlled Polytypism of Thick-Shell CdSe/CdS Nanocrystals」、J. Am. Chem. Soc. 132、953-959 (2009)からの改変された手順に従い合成した。簡単には、Cd(OA)(2.25mL)、TOPO(1.2g)、及びODE(12mL)を、三つ口フラスコに負荷し、真空下、100℃で1時間乾燥させ、その後無色の溶液を、N下で、300℃まで加熱した。この時点で、TOP-Seの4mL及びOAmの3mLの混合物を、この高温の溶液中に迅速に噴射し、且つ反応温度を260℃まで低下させた。8分後反応を停止し、室温まで冷却した。CdSe NCは、エタノールによる沈殿及びトルエン中の再溶解により、5回精製した。生成されたNCを、ヘキサン(40mg/mL)中に溶解し、ブローブボックス内で貯蔵した。
【0055】
CdTeナノ結晶。オレエートでキャップしたCdTe NCを、M. G. Panthaniらの論文「High Efficiency Solution Processed Sintered CdTe Nanocrystal Solar Cells: The Role of Interfaces」、Nano Lett. 14, 670-675 (2014);及び、H. Zhangらの論文「Solution-Processed, Ultrathin Solar Cells from CdCl3 --Capped CdTe Nanocrystals: The Multiple Roles of CdCl3 - Ligands」、J. Am. Chem. Soc. 138, 7464-7467 (2016)において公開された改変された方法に類似の方法を使用し、合成した。典型的調製において、CdO(480mg、3.7mmol)、OA(4.2g、再結晶した、14.8mmol)、及びODE(4g、再結晶した)を、50mLの三つ口フラスコに負荷し、一晩真空乾燥させ、微量の酸素を除去した。次にフラスコを、N下、220℃ で、溶液が透明になるまで加熱した。フラスコを冷却し、真空下、150℃で乾燥させ、この反応により生成した水を除去し、その時点でフラスコを、N下270℃に加熱し、引き続きTBP中Teの10wt%溶液2.4mLを迅速に噴射した。噴射直後、加熱マントルを取り外し、フラスコを室温まで急速冷却した。生じるCdTe NCを、数回の沈殿-再分散サイクルのために無水エタノール及びトルエンを用いて、精製した。精製したNCは、ヘキサン中に、濃度~80mg/mLで貯蔵した。
【0056】
InPナノ結晶。InP NCは、A. A. Guzelianらの論文「Synthesis of Size-Selected, Surface-Passivated InP Nanocrystals」、J. Phys. Chem. 100, 7212-7219 (1996)に説明された手順に従い合成した。InCl(1.03g、4.66mmol)及びTOPO(10.7g)を、三つ口フラスコに負荷し、80℃で1時間脱気した。Nを補給した後、(TMS)P(0.75g、3.00mmol)を、迅速に噴射し、この混合物を270℃まで加熱し、この温度で1日維持した。その後、暗色溶液を、室温まで冷却させた。InP NCを、溶媒及び非-溶媒として、それぞれ、トルエン及びエタノールを使用し、3回の沈殿-再分散サイクルにより精製した後、ブローブボックス内のトルエン溶液として収集した。
【0057】
InAsナノ結晶。InAs NCは、Srivastavaらにより説明された手順に従い、調製した。(例えば、V. Srivastavaらの論文「Facile, Economic and Size-Tunable Synthesis of Metal Arsenide Nanocrystals」、Chem. Mater. 28 6797-6802 (2016)参照)。InCl(44.3mg、0.2mmol)及びOAm(5mL)を、100mLの三つ口フラスコ内に、真空下、130℃で1時間配置した。その後この混合物を、250℃まで加熱した。Asストック溶液(無水OAmの0.5mLと一緒にした0.2mmolのAs(NMe)を、このフラスコへ迅速に噴射し、引き続きトルエン中の1M DIBAL-Hの1.2mLを噴射した。標的NCサイズに到達した後、この反応物を室温まで冷却した。InAs NCを、エタノールにより沈殿させ、トルエン又はTCEにより再分散させた。
【0058】
Auナノ結晶。Au NCは、S. Pengらの論文「A facile synthesis of monodisperse Au nanocrystals and their catalysis of CO oxidation」、Nano Res. 1, 229-234 (2008)に当初記載された改変された方策を用いて得た。典型的手順において、HAuCl・xHOの0.1g(0.25mmol)を、OAmの10mL及び1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン10mLの中に、N下、室温で溶解し、明るい赤色の溶液を形成した。この溶液を撹拌しながら、0.0435gのTBAB(0.13mmol)を、シリンジで添加した。この混合物を、1時間反応させ、その後トルエン/エタノールを添加し、Au NCを沈殿させた。トルエン/エタノール溶解/沈殿手順を、3回繰り返し、最終のAu NCは、トルエン中に、濃度40mg/mLで溶解した。
【0059】
ジルコニア(ZrO )ナノ結晶。ZrO NCは、J. Jooらの論文「Multigram Scale Synthesis and Characterization of Monodisperse Tetragonal Zirconia Nanocrystals」、J. Am. Chem. Soc. 125, 6553-6557 (2003)に記載された非加水分解性のゾル-ゲル反応を通じて、調製した。全般的には、390mg(1mmol)のZr[OCH(CH・(CHCHOH及び292mg(1.25mmol)のZrClを、5gのTOPOと混合し、70℃で30分間脱気した。その後この反応混合物の温度を、N下で、340℃まで上昇させ、その間激しく攪拌しながら、この温度で2時間維持し、その後この反応混合物を、60℃まで冷却し、乾燥させ脱気したアセトン50mLを添加し、ジルコニアナノ粒子を沈殿させた。精製したNCを、濃度30mg/mLで、トルエン中に再分散させた。
【0060】
硫化鉛(PbS)ナノ結晶。PbS NCは、A. H. Ipらの論文「Infrared Colloidal Quantum Dot Photovoltaics via Coupling Enhancement and Agglomeration Suppression」、ACS Nano 9, 8833-8842 (2015)からの改変された方法を用いて得た。Pb(OAc)・3HO(0.75g、2mmol)を、6.0mLのオレイン酸及び27.0mLの1-オクタデセンの混合物中に溶解し且つ脱気した。この混合物を、100℃まで加熱し、オレイン酸鉛を形成し、次にアルゴン下で140℃に加熱した。次にこれに、0.210mLの(TMS)S及び8.0mLのODEを、勢いよく噴射した。合成後、PbSドットを、蒸留アセトン50mLにより、2回精製及び抽出し、トルエン中に再分散させた。
【0061】
セレン化水銀(HgSe)及びテルル化水銀(HgTe)ナノ結晶。Z. Dengらの論文「Colloidal Quantum Dots Intraband Photodetectors」、ACS Nano 8, 11707-11714 (2014)に説明されたように、27.2mgのHgCl(0.1mmol)を、4mLのOAmへ添加し、この混合物を、110℃で約30分間加熱した。次にセレノ尿素/オレイルアミン溶液を、この混合物へ迅速に噴射した。最終の粒子サイズは、反応時間を変動することにより制御した。5%TOP及び85%TCEで作製された「クエンチ溶液」(8mL)を、この反応混合物へ添加し、反応を停止した。クエンチした混合物を、メタノールで沈殿させ、遠心分離し、沈殿を、TCE中に再分散させた。
【0062】
HgTe NCは、S. Keuleyanらの論文「Synthesis of Colloidal HgTe Quantum Dots for Narrow Mid-IR Emission and Detection」、J. Am. Chem. Soc. 133, 16422-16424 (2011)に記載された方法に類似した方法に従い、合成した。水銀前駆物質を、27mg(0.1mmol)のHgClを、4mLのOAmと混合することにより得、この混合物を、真空下に配置し、100℃で1時間加熱し、無色透明又は淡黄色の溶液を形成した。次にこの溶液を、N下に配置し、80℃まで冷却し、0.1mLのTOPTeを迅速に噴射した。1分間攪拌した後、メタノールを添加し、沈殿を遠心分離で収集した。精製したHgTe NCを、更なる使用のために、TCEに再分散させた。
【0063】
NaYF :Yb,Er@CaF アップコンバージョンしたナノ結晶(UCNP)。Ca(CFCOO)前駆物質を、4mmolのCaCOを、10mLトリフルオロ酢酸及び10mLのHOと混合することにより得た。この混合物を、還流を維持し、透明な溶液を形成し、これを次に80℃のオーブン内で24時間乾燥させ、Ca(CFCOO)粉末を得た。(例えば、J. E. Robertsの論文「Lanthanum and Neodymium Salts of Trifluoroacetic Acid」、J. Am. Chem. Soc. 83, 1087-1088 (1961)参照)。Y(CO、Yb(CO及びEr(COをCaCOの代わりに使用したことを除いて、同じ手順を使用し、Ln(CFCOO)を調製した。UCNP合成は、先の論文の報告から改変した。(例えば、A. Punjabiらの論文、「Amplifying the Red-Emission of Upconverting Nanoparticles for Biocompatible Clinically Used Prodrug-Induced Photodynamic Therapy」、ACS Nano 8, 10621-10630 (2014)参照)。簡単に述べると、CFCOONa(68mg、0.5mmol)及びLn(CFCOO)(Ln=Y、Yb、Er、合計0.5mmol)を、OA(5mmol)及びODE(5mmol)と共に、OA(8mmol)及びODE(8mmol)の脱気した混合物へ、310℃で、1mL/分の速度で、噴射した。反応混合物を、N下、310℃で1時間維持し、その後Ca(CFCOO)(532.2mg、2mmol)を含むOA(5mmol)及びODE(5mmol)の脱気した混合物を、同じ速度で噴射した。この反応を、310℃で更に1時間継続した。UCNPを、エタノールの添加により沈殿させ、ヘキサン/エタノールにより精製した。生じたUCNPを、更なる使用のためにトルエンに再分散させた。
【0064】
インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)のゾル-ゲル合成。IGZOゾル-ゲル前駆物質溶液を、Y. S. Rimらの論文「Boost Up Mobility of Solution-Processed Metal Oxide Thin-Film Transistors via Confining Structure on Electron Pathways」、Adv. Mater. 26, 4273-4278 (2014)から改変された方策を用いて調製した。In(NO・xHO(7.5mg、0.025mmol)、Ga(NO・xHO(6.4mg、0.025mmol)、及びZn(OAc)・2HO(11mg、0.05mmol)を、2-メトキシエタノール(1mL)中に溶解し、70℃で1時間撹拌した。その後この溶液を、0.2μmメンブレンフィルターを通して濾過し、更なる使用のために暗所に貯蔵した。
【0065】
コア-シェル量子ドット(CdSe/CdS、CdSe/CdZnS、InP/ZnS、ZnSe/ZnS)をこの試験で使用し、これらは、確立された方策により合成した(例えば、B. O. Dabbousiらの論文「(CdSe) ZnS Core-Shell Quantum Dots: Synthesis and Optical and Structural Characterization of a Size Series of Highly Luminescent Materials」、J. Phys. Chem. B 101, 9463-9475 (1997);X. Pengらの論文「Epitaxial Growth of Highly Luminescent CdSe/CdS Core/Shell Nanocrystals with Photostability and Electronic Accessibility」、J. Am. Chem. Soc. 119, 7019-7029;D. V. Talapinらの論文「CdSe/CdS/ZnS and CdSe/ZnSe/ZnS Core-Shell-Shell Nanocrystals」、J. Phys. Chem. B 108, 18826-18831 (2004);及び、R. Xieらの論文「Colloidal InP Nanocrystals as Efficient Emitters Covering Blue to Near-Infrared」、J. Am. Chem. Soc. 129, 15432-15433 (2007)参照)。
【0066】
酸化アルミニウム(Al )ナノ粒子は、イソプロパノール中の20重量%として、Aldrichから購入した。
【0067】
光化学活性のある無機のリガンドの合成
NaS CN 及びNH CN 。NaSCNは、D. H. Webberらの論文「Nanocrystal ligand exchange with 1,2,3,4-thiatriazole-5-thiolate and its facile in situ conversion to thiocyanate」、Dalton Trans 41, 7835-7838 (2012)に報告された手順に従い合成した。NaN(250mg、mmol)は、DI水(1mL)中に溶解し、CS(0.25mL)は、n-プロパノール(1mL)中に希釈した。その後CS溶液を、NaN溶液へ室温で添加し、暗所で1時間撹拌し、均一な淡緑色溶液を生成した。この溶液を暗所で一晩真空乾燥した後、NaSCN固形物を得た。残渣を、無水DMF(12mL)又はn-プロパノール(12mL)中に溶解し、冷凍庫(0-5℃)内で暗所で貯蔵した。カチオン交換により、NHCNを得た。簡単に述べると、(NHSiF(348mg、1.95mmol)水溶液(0.78M)を、NaSCNの生(raw)溶液へ滴加し、その時白色沈殿(NaSiF)が形成され、遠心分離後廃棄した。透明な上清を収集し、濾過し(0.2μm)、一晩真空下で乾燥した。白色固形物を、無水DMF(12mL)又は1-PrOH(12mL)中に再溶解し、グローブボックス内冷暗所で貯蔵した。
【0068】
[Ph I] [CdCl は、CdCl(18.3mg、0.1mmol)を、1mLのMeOH中PhI-Cl(31.7mg、0.1mmol)と混合することにより得た。この混合物の5秒間の音波処理は、白色非晶質沈殿を生じ、これを遠心分離により収集した。この沈殿を少量のMeOH(0.5mL)で3回すすぎ、未反応の前駆物質を除去した。最終生成物を、遠心分離により得、次に極性溶媒中に再溶解した。[PhI][CdCl]溶液は無色であり、これを更なる使用のために暗所で貯蔵した。この反応生成物を、単結晶X線回折により特徴付けた。結晶は、MeOH中の[PhI][CdCl]の高度に濃縮された溶液から成長させた。同じ構造を、DMFからも得た。飽和溶液が調製された時、Nの遅い流れを、針を介してこの溶液層の上側に導入し、溶媒の蒸発速度を増大した。暫くして(MeOHについて10~20分間、水について1時間、及びDMF又はNMFについて2時間)、無色の結晶が、気液境界面から成長した。
【0069】
図7Aは、メタノール中のPhS-Cl及び(PhS)-CdClの吸収スペクトルを描いている。図7Bは、PhI-Cl及び(PhI)-CdClのFTIRスペクトルを示す。図7Cは、DMF及びNMF中のCdSe-CdCl-(PhI);並びに、DMF及びNMF中のCdSe-CdCl-(PhS)の吸収スペクトルを示す。図7Dは、(PhI)-CdClの結晶構造を示す。図7Eは、(PhI)-ZnClの結晶構造を示す。
【0070】
[Ph I] [ZnCl は、ZnClをCdClの代わりに金属塩化物前駆物質として使用した以外は、[PhI][CdCl]を合成するために先に説明した手順に類似した手順を用いて合成した。[PhI][ZnCl]は、MeOH中で、[PhI][CdCl]よりもより高い溶解度を示した。従って、ZnClをMeOH中のPhI-Clと混合した時点では、沈殿は認められなかった。白色沈殿は、生成物を真空下で濃縮した後に得られ、少量のMeOH又はアセトニトリルですすぎ、未反応の前駆物質を除去した。最終生成物を遠心分離により得、その後極性溶媒中に再溶解した。[PhI][ZnCl]溶液は無色であり、更なる使用のために暗所で貯蔵した。結晶は、MeOH中の[PhI][ZnCl]の高度に濃縮した溶液から成長した。同じ構造を、DMFからも得た。
【0071】
Ph I-ピラニンは、N. Tarumotoらの論文「Diphenyliodonium Salts with Pyranine Conk as an Enviroment-friendly Photo-acid Generator and Their Applications to Chemically Amplified Resists」、Polymer Journal 37, 545-549 (2005)に報告された手順に従い合成した。ピラニン(262mg、0.5mmol)及びPhI-Cl(474.8mg、1.5mmol)を、D.I.水中で混合し、40℃で2時間撹拌し、その間に混合物は濁った。沈殿を収集し、少量のD.I.水を使用し、副産物及び未反応の前駆物質を捕捉した。精製した生成物を、EtOH中に溶解し、暗所で貯蔵した。
【0072】
感光性表面リガンドを持つ無機材料の機能化
全ての表面処理実験は、典型的にはクリーンルーム照明に使用される黄色フィルターを装備した、グローブボックス内で実行した。そのようなフィルターは、様々なクリーンルーム供給業者から購入することができる。Pro Lighting Group社から購入したフィルターを、これらの実験に使用した。無水溶媒及び一相又は二相リガンド-交換戦略のいずれかを使用し交換したNC表面リガンドを典型的には使用した。(例えば、A. Dongらの論文「A Generalized Ligand-Exchange Strategy Enabling Sequential Surface Functionalization of Colloidal Nanocrystals」、J. Am. Chem. Soc. 133, 998-1006 (2011);及び、D. S. Dolzhnikovらの論文「Composition-matched molecular “solders” for semiconductors」、Science 347, 425-428 (2015)参照)。一相アプローチにおいて、トルエン/DMF又はトルエン/NMFのように、NC分散のための溶媒は、無機のリガンドに使用した溶媒の極性と類似した極性を有した。従って、これら2種の溶液は、混合時に互いに混和し、且つその表面処理は、一相で達成される。しかし、トルエン/N、ヘキサン/DMFなど、NC分散及び無機のリガンドの溶媒の極性が異なる場合、リガンド-交換反応は、相関移動プロセスに関与した。別の言い方をすると、NC分散は、無機のリガンド溶液の上部に負荷され、二相混合物を形成し、その表面処理は、NCが上側層から下側層へ移動した場合に達成された。
【0073】
様々な表面リガンドでキャップされたNCを説明するために、GreenのNC表面に化学的に結合した分子種の分類を使用した。(例えば、M. A. Bolesらの論文「The surface science of nanocrystals」、Nat. Mater. 15, 141-153 (2016);及び、P. E. Chenらの論文、「Tight Binding of Carboxylate, Phosphonate, and Carbamate Anions to Stoichiometric CdSe Nanocrystals」、J. Am. Chem. Soc. 139, 3227-3236 (2017)参照)。例としてCdSeを使用すると、そのように合成されたNCは、(CdSe)(CdXと記すことができ、ここでmは、NCコアの式単位の数を反映し、X及びLは、X型リガンド(例えば、X=RCOO、RPO(OH)O)及びL型リガンド(例えば、L=ピリジン、RNHなど)を説明し、並びに2n及びqは、NC表面に結合した対応するX型及びL型リガンドの数を説明する。
【0074】
ポジトーンの光活性無機インク
CN - (TTT)リガンドを持つナノ結晶。TTTは、Cd-表面部位に結合するX型リガンドである。無極性溶媒又は乾燥型において、これは、例えばNa又はNH などのカチオンとのイオン対として存在する。極性溶媒中において、NC表面上の電気的中性の必要要件は、適用されず、且つ負帯電したTTTリガンドはNC表面を過充電し、コロイド安定性に寄与する対イオンのクラウドを生じる。DMF又はNMFのような配位性溶媒は、弱く結合したL型リガンド(L’)として働く:
【化1】
【0075】
一相戦略を、表面処理に使用した。CdSe-SCN NCに関する典型的手順は、ヘキサン中のウルツ相CdSe NC(~4.0nm、40mg/mL)のストック溶液100μLを、トルエン1mL中に希釈した。DMF中の特定量のNaSCN又はNHCN(200μL)の添加は、ボルテックス後にNCの迅速なフロキュレーションを生じ、これは表面修飾により引き起こされたNC溶解度の劇的変化を指摘している。リガンド-交換されたCdSe-SCN NCは、遠心分離により懸濁液から沈殿され、トルエンで3回すすぎ、当初の有機リガンドの最後の微量を捕捉した。精製後、CdSe-SCN NCを、DMF中にコロイド溶液として再溶解させ、数ヶ月間安定して維持する一方で、ブローブボックス内冷暗所で貯蔵した。
【0076】
PAGリガンドを持つナノ結晶。PAGリガンドに関する親油性有機リガンド(X=RCOO及びL=RNH)の、無機結合基による典型的交換は、例としてCdSe NCを使用する下記スキームにより表すことができる:
【化2】
【0077】
[Ph I] [MCl ](M=Cd又はZn)。このリガンド交換は、相間移動法により実行した。CdSe-CdCl-[PhI] NCに関する典型的手順において、オレエート-キャップされたCdSe NCの100μL(ヘキサン中40mg/mL)を、ヘキサン1mL中に希釈し、(PhI)-CdCl NMF溶液と一緒にし、二相混合物を形成した。激しく攪拌した場合、NCはヘキサン層からNMF層へと次第に移動し、無色の上部相を生じた。その後NMF層を、新鮮なヘキサンで5回すすいだ。最小量のアセトニトリルの添加後、処理後のNCを、遠心分離により収集した。その後NCを、DMF中に再分散させ、濃度約30mg/mLの安定したコロイド溶液を形成した。
【0078】
他のPAGリガンド。SCN-、Sn 4-、AsS 4-、InSe 2-、CdCl -、MoO 4-、及びCdSe 2-などの数多くの無機のリガンドに関して、改変された手順を使用し、感光性無機インクを調製した。最初に、前記無機のリガンドによるNCの表面処理を、先に公開された手順を用いて実行した。(例えば、H. Zhangらの論文「Solution-Processed, Ultrathin Solar Cells from CdCl3 --Capped CdTe Nanocrystals: The Multiple Roles of CdCl3 - Ligands」、J. Am. Chem. Soc. 138, 7464-7467 (2016);D. S. Dolzhnikovらの論文「Composition-matched molecular “solders” for semiconductors」、Science 347, 425-428 (2015);A. T. Fafarmanらの論文「Thiocyanate-Capped Nanocrystal Colloids: Vibrational Reporter of Surface Chemistry and Solution-Based Route to Enhanced Coupling in Nanocrystal Solids」、J. Am. Chem. Soc. 133, 15753-15761 (2011);J. Huangらの論文「Surface Functionalization of Semiconductor and Oxide Nanocrystals with Small Inorganic Oxoanions (PO4 3-, MoO4 2-) and Polyoxometalate Ligands」、ACS Nano 8, 9388-9402 (2014);M. V. Kovalenkoらの論文「Expanding the Chemical Versatility of Colloidal Nanocrystals Capped with Molecular Metal Chalcogenide Ligands」、J. Am. Chem. Soc. 132, 10085-10092 (2010);M. V. Kovalenkoらの論文、「Inorganically Functionalized PbS-CdS Colloidal Nanocrystals: Integration into Amorphous Chalcogenide Glass and Luminescent Properties」、J. Am. Chem. Soc. 134, 2457-2460 (2012);並びに、W. Liuらの論文、「III-V Nanocrystals Capped with Molecular Metal Chalcogenide Ligands: High Electron Mobility and Ambipolar Photoresponse」、J. Am. Chem. Soc. 135, 1349-1357 (2013)参照)。典型的手順において、無機のリガンド(表1)を、NMF又はNなどの極性溶媒1mL中に溶解し、その上に、ヘキサン1mLに分散したこのように合成したCdSe NCの100μLを負荷した。撹拌後、ヘキサン層は暗赤色から無色に変化する一方で、NMF層は赤色に変わり、これはNCは、リガンド交換後に、極性相へ完全に移動されたことを示した。次にNCを、ヘキサンで少なくとも5回洗浄し、アセトニトリルなどの非-溶媒によりNMFから沈殿させ、遠心分離し、最後にDMF中に再溶解し、濃度20~30mg/mLの赤色溶液を形成した。リガンド交換に使用した無機のリガンドの量は、NCサイズ及び表面化学によって決まり;これは、各NC-リガンド対について最適化された。完全な交換を確実にするために、典型的には過剰な無機のリガンドをNC相間移動の間に使用し、次に未反応のリガンドを、リガンド-交換したNCの極性溶媒からの沈殿の間に、洗浄した。
【0079】
次に、典型的PAGである(4-メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムトリフラート0.2mgを、エタノールのような無水プロトン性溶媒10μL中に溶解し、DMF中の処理したCdSe NCの100μLと混合し、コロイド状の安定した感光性無機溶液を形成し、且つ更なる使用まで暗所に貯蔵した。
表1. CdSe NCの安定したコロイド溶液を形成するイオン対無機リガンド
【表1】
【0080】
ゾル-ゲル前駆物質。IGZOのための分子感光性前駆物質のストック溶液を、PAG溶液(EtOH中10重量%の(p-CHS-C-)(C-)OTf)10μLと混合した、新鮮なIGZOゾル-ゲル前駆物質(先に説明した2-メトキシエタノール溶液100μL)から調製した。
【0081】
ネガトーン光活性無機インク。親油性有機リガンドでキャップされたそのように合成したNCを、ブローブボックス内の成長溶液から完全に精製し、且つトルエン又はクロロベンゼンなどの、無極性溶媒中に再分散した。これらは、濃度20~30mg/mLのコロイド状の安定した溶液を形成した。(4-メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムトリフラート又はジフェニルヨードニウムトリフラートなどのPAGを、EtOHに溶解し、NC溶液(5~10重量%)と混合した。この光化学活性のある無機インクは、0.2μmフィルターを通過させ、更なる使用のために暗色貯蔵した。
【0082】
無機材料のダイレクト光学パターニング:DOLFINプロセス
露光システム及び遮蔽。光学パターニングは、EVG半自動両面マスクアライナーシステムを持つクリーンルームにおいて実行した。UV光源は、Jelight社から入手した低圧水銀蒸気グリッドランプ(254nm、6.3mW/cm)を備えた自作の露光システムか、又はSpectronics社から購入した二波長UVランプ(254nm、2.0mW/cm;365nm、2.2mW/cm)のいずれかであった。石英基板及びクロムコーティングによる遮蔽は、Benchmark Technologies社から入手した。
【0083】
パターニングプロトコール。この実験は、黄色光下で行い、且つ光活性無機インクは、スピン-コーティング前に、0.2μmフィルターを通過させ、粒子の夾雑物を排除した。
【0084】
CN - (TTT )ベースのインク。感光性無機材料の溶液を、DMF中に濃度約30mg/mLで調製し(先に記載したように)、様々な基板(Si/SiO、Si、石英、ガラス)上にスピン-コーティングした(スプレッド:400rpm、3秒間;スピン:2000rpm、30秒間)。次にNC層を、真空下で15分間乾燥させ、溶媒を蒸発させ、254nmのDUVランプで線量100~250mJ/cmで照射し、これは使用した材料によって左右された。無希釈DMFを、露光されなかったインクのための現像液として使用した。これらの露光されなかったインクは、現像液溶媒(DMF)中によく分散し、収集され且つ再利用された。多層パターニングに関して、第二層は、いかなる追加の表面処理もせずに、第一のパターン化された層の上部に直接スピン-コーティングした。
【0085】
PAGベースのポジトーンインク。様々な材料のNCを、最初にNMF中でリガンド-交換し、次にDMF中に再溶解し、20~30mg/mLの安定したコロイド溶液を形成した。スピン-コーティングしたNCフィルムを、254nmのDUVランプ下で、線量40~70mJ/cmで露光し、NMF中で現像した。IGZOゾル-ゲルシステムに関して、エタノールを、現像液溶媒として導入し、露光されていないインクを溶解した。多層パターニングに関して、第二層は、いかなる追加の表面処理もせずに、第一のパターン化された層の上部に直接スピン-コーティングした。
【0086】
PAGベースのネガトーンインク。ネガトーンインクは、クロロベンゼン又はトルエン溶液から、スピン-コーティングし、254nmのDUVランプ下で、線量180~240mJ/cmで露光した。ネガパターンを形成するために、NMFを現像液として使用し、露光した領域を選択的に除去した。あるいは、同じインクを使用し、トルエンが現像液に適用される場合には、ポジパターンを作製した。
【0087】
現像液溶媒からのナノ結晶の回収。現像液溶液は、当初の光活性インクのための担体溶媒と同じであったので、露光されない領域由来の材料を、収集し且つ再使用し、従って著しいコスト削減が可能であった。例えば、現像液溶媒(DMF又はNMF)中に溶解したNCは、トルエンなどの非-溶媒を添加することにより収集することができた。沈殿を分離し、対応する新鮮な溶媒中に分散した。吸収スペクトル及びTEM画像は、NCは、それらの当初の特性を保持し、且つフォトパターン化可能な無機材料として再使用することができることを指摘した。
【0088】
パターン形成に寄与する化学転換
CN (TTT)リガンド。UV-光への露光時に、TTTイオンは、図1Bに示したように分解し、且つ生じたチオシアネート-キャップしたNCは、DMFなどの極性溶媒中に不溶性となり始めた。理論に結びつけられることを欲するものではないが、極性溶媒中のNCの溶解度の喪失は、NC表面からのSCN基の部分的脱離により引き起こされた表面電荷の減少に起因することができる:
【化3】
【0089】
PAGリガンド。UV露光下で、PAG分子は、以下の化学転換を受けた:
【化4】
【0090】
この反応配列は、PAG塩のアニオン部分がトリフラート(CFSO -)である場合、強酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸(triflic acid)(HOTf)を生じた。この強酸は、NCコアの化学性質、及びその表面-結合リガンドの性質に応じて、数種類の様式で、NC表面と相互作用することができる。理論に結びつけられることを欲するものではないが、数種の典型的反応経路を、以下に説明する。
【0091】
光発生したプロトンは、イオン-対リガンド上のアニオン性部分を攻撃する(図1AのX基)。この反応は、アニオンが強力なブロンステッド塩基であるリガンドにとって典型である。例えば、ほとんどのカルコゲナイドメタレートリガンドは、容易にプロトン化され得る。UV光への露光時に、光発生された酸は、カルコゲナイドメタレートリガンドを攻撃する:
【化5】
ここで簡単にするために、(p-MeS-C-)(C-)は、Arとして記す。
【0092】
NC表面電荷の除去は、極性溶媒中のコロイド安定性の喪失を引き起こす。プロトン化されたリガンドは、CdSe及びHSeに変換し、従ってNCを静電的に安定化することに失敗した。
【0093】
光発生されたプロトンは、NC表面で塩基性表面に結合する。これらの型の表面反応は、弱いブレンステッド塩基(例えばハロメタレートリガンド)として挙動するリガンドを持つNCにとって一般的でなければならない。NCにとって、著しいブレンステッド塩基度を伴う不動態化されない表面部位を露光することは一般的である。クロロカドメイト-キャップされたCdSe NCの例に示したように、これらの部位は、光発生したプロトンとの化学結合において嵌合されるであろう:
【化6】
【0094】
Se2-表面部位とHイオンの間の配位結合の形成が予想される。この相互作用は、NC表面での総電荷を減少し、最終的にNC表面を中性とする。NCは、極性溶媒中に不溶性となる。
【0095】
光発生した酸は、NC表面で親油性有機リガンドをプロトン化する。この化学は、ネガパターンの形成の原因となる。UV-光への露光時に、光発生した酸は、プロトン化し、このように合成されたNCの表面で、親油性L型及びX型リガンドを切断する:
【化7】
【0096】
UV-露光時に、PAGから放出された酸は、リガンド-ストリッピング剤として作用し、疎水性NCを親水性とする。結果的に、NCは、無極性溶媒中の溶解度を喪失するが、極性溶媒中には可溶性となり始める。トルエン又はNMFのいずれかは、現像液溶媒として使用し、それぞれ、ネガ又はポジパターンを作製することができる。具体的には、ネガパターンは、トルエンが適用される場合に得られるのに対し、ポジパターンは、NMFがパターン現像に使用される場合に認められる。
【0097】
特徴決定技術
透過型電子顕微鏡(TEM)。TEM画像は、300kV FEI Tecnai F30顕微鏡を用いて得た。図8は、左側から右側へ、TTTリガンドを持つ光活性コロイド状NCの透過型電子顕微鏡画像を示している:CdSe、コア-シェルCdSe/ZnS、Al NC、NaYF:Yb,Er@CaFアップコンバージョンしたナノ粒子(UCNP)。
【0098】
走査型電子顕微鏡(SEM)。SEM分析は、10kVで操作する、FEI Nova NanoSEM 230上で行った。
【0099】
広角粉末X線回折(XRD)。XRDパターンは、40kV及び40mAで操作する、Cu KαX線源を備えた、Bruker D8回折計を用いて収集した。
【0100】
光学吸収測定。UV-可視吸収スペクトルは、Cary 5000 UV-Vis-NIR分光光度計から収集した。
【0101】
フーリエ変換赤外(FTIR)。FTIRスペクトルは、Nicolet Nexus-670 FTIR分光光度計を用い、伝送モードで獲得した。濃縮したNC分散を、KBr又はCaF結晶基板(International Crystal Laboratories)上にドロップ-キャストさせ、次に100℃(N溶液について)及び200℃(DMF、NMF、及びPC溶液について)で乾燥させた。IR吸光度を、基板の単位面積当たりに積層したNCの重量に対して規準化した。
【0102】
熱重量分析(TGA)。TGA測定は、窒素下で温度範囲30~500℃、加熱速度3℃/分、及び冷却速度10℃で、TA Instruments SDT Q600熱測定装置フローを用いて実行した。
【0103】
動的光散乱(DLS)及びξ-電位測定。DLS及びξ-電位データは、Zetasizer Nano-ZS(Malvern Instruments、英国)を用いて収集した。コロイド溶液を、石英キュベットに充填し、Pd電極を伴うディップ型セル電極集成体を使用し、溶液に電界を印加した。
【0104】
表面形状測定は、Bruker Dektak XT-S表面形状測定装置を用い、クリーンルームにおいて実行した。フィルムは、黄色フィルターを装備したブローブボックス内での、Si/SiO上のNC溶液のスピン-コーティングにより調製した。
【0105】
楕円偏光測定器測定は、Si/SiO又はSi基板の上部のパターン化された酸化物層の厚さ及び屈折率をマッピングするために、Gaertner Waferskan自動楕円偏光測定器を用いて実行した。
【0106】
電気的測定。全ての電気的測定は、窒素を充填したグローブボックス内で行った。FET及びファン・デル・パウ測定は、半導体パラメーター分析装置Keysight B1500Aを用いて行った。キャパシタンス測定は、LCRメーターSR 720で試行した。
【0107】
ファン・デル・パウ(VdP)測定。光活性無機リガンドを持つAu NCフィルムを、1.5cm×1.5cmのガラス基板上に積層させ、照射し、現像し、150℃でアニーリングした。フィルムを4隅に接触させ、標準VdP測定を、B1500Aパラメータ分析計を用いて試行した。シート抵抗率は、以下のファン・デル・パウ定理を用いて計算した:
【数1】
(式中、RはV-I曲線の勾配である)。このフィルムの厚さは、表面形状測定を用いて決定し、h=60nmであった。次にフィルムの抵抗率は、ρ=Rh=5.22×10-8Ωmであった。
【0108】
誘電性測定。TTTリガンドを持つ溶液-プロセスしたアルミナNCの層を、100nmの熱成長したSiOを伴うSiウエハー(強くn-ドープした、ρ<0.005Ωcm)上に、パターン化した。サンドイッチ型装置を、フォトパターン化され及びアニーリングされたNC層の上部に直接、厚さ100nmのAl電極(直径0.50、0.65、0.80、1.0mm、及び2.0mmの様々なサイズのドット)を積層することにより製作した。測定は、周波数範囲100Hz~100kHzでLCRメーターSR 720を用いて実行した。一連のR+Cの等価回路を使用し;異なる周波数のキャパシタンス値を、抽出し;且つ、誘電率を、このシステムを連続する2つのキャパシタとしてモデル化して計算した:シリカのd=100nm(ε=3.7)及びアルミナのd=160nm(楕円偏光測定器による)。アルミナの誘電率は、等価キャパシタンスから得た:
【数2】
(式中、Aは、フラットなキャパシタの電極面積である)。
【0109】
粒状誘電体層のキャパシタンスに関するブルグマン有効媒質モデル。アルミナの誘電率の値は、フィルム多孔性のために、バルク値よりも小さい(~10)。この多孔性の作用は、有効媒質理論を用いて推定することができる。ここで本発明者らは、ブルグマン有効媒質理論を使用し、これは誘電率ε及び体積分率ηを持つ材料を構成する複合システム(composite system)の誘電率(ε)を表し、且つここで考察される二成分ケースについては、誘電率ε及び体積分率η=1-ηであるマトリクスの誘電率を表す。(例えば、D. D. W. Grinoldsらの論文「Quantim-Dot Size and Thin-Film Dielectric Constant: Precision Measurement and Disparity with Simple Models」、Nano Lett. 15, 21-26 (2015)参照)。この理論は、以下の特徴的式を使用する:
【数3】
これは、ε=1(空気)、ε=10(Al)、η=0.2(部分的に焼結された粉末中の空隙に関する推定値)及びη=0.8について、ε=6.7をもたらす。パターン化された層の実験的に測定された誘電率との妥当な一致を認めることができる。
【0110】
電界効果トランジスタ(FET)-半導体特徴決定のためのモデルシステム
FETの製作。100nmのSiO誘電体を伴う、Siウエハー(強くn-ドープした、ρ<0.005Ωcm、QL)を、FET製作のためのボトムゲート及び基板として使用した。この基板はサイズが1cm×1cmであるが、これをピラニハ(piranha)(濃HSO及び30%水性H、容積で5:3)中に含浸し、酸素の泡立ちが停止するまで10分間加熱した。一旦基板を冷却し、これらを水で複数回すすいだ。感光性リガンドを持つ無機材料のコロイド溶液を、新たにクリーンにした基板上に、N、NMF、又はDMFでスピン-コーティングし(スプレッド:600rpm、6秒間;スピン:2000rpm、40秒間)、厚さ30~100nmのNCフィルムを作製した。このNCフィルムを、グローブボックス内でDUV下で照射し、対応する溶媒で現像した。溶媒を蒸発させるために100℃で30分間乾燥した後、次にフィルムを、350℃で30分間アニーリングさせ、リガンドを分解し、且つNC粒子の成長を促進した。厚さ70nmのAlソース電極及びドレイン電極を、サーマルエバポレーターを使用し、シャドウマスクを通じて積層させ、トップ-コンタクト、ボトム-ゲートFET構造(チャネル幅及び長さは、各々、180μm及び30μmであった)を完成した。この実施例において、熱成長したSiOを、ゲート誘電体として使用した。
【0111】
FET特徴決定。ソース電極を接地し、ソース-ゲート電圧VGS、及びソース-ドレイン電圧VDSを制御した。全ての電子移動度の値は、フォワード-ゲート電圧スイープ(-30Vから30VのVGS)から抽出し、これは電子移動度の控えめな推定値を提供する。
【0112】
電界効果移動度の計算。グラジュアルチャネル近似において、FETチャネル内の電流は、2つの異なる操作レジメについて、分析的に説明することができる。VDS<<VGS-Vで、チャネル電流Iは、ゲート電圧と共に直線的に増加する。
【数4】
ここで、Cは、絶縁層の単位面積当たりのキャパシタンス(30nF/cm)であり、Vは、閾値(ターン-オン)電圧であり、並びにμlinは、線形電界効果移動度である。μlinは、相互コンダクタンス(VGS-V>>VDSの領域の増幅特性曲線の勾配)から計算される:
【数5】
DS>>VGS-Vについて、Iは、蓄積層のピンチオフのために飽和する傾向がある(飽和レジメ)。この場合、おおよそ下記式により説明される:
【数6】
【0113】
飽和移動度は、VGSの関数として、
【数7】
の勾配として計算することができる:
【数8】
【0114】
X線構造解決及び改良。空間群は、消滅則及び強度の統計を基に、P 1 21/n 1として決定した。最終の精密化(refinement)は、全ての原子について異方性であった。異常結合長及び温度パラメータは、注記しなかった。

表2. [(CI]・CdClの結晶構造
【表2】

表3. [(CI]・ZnClの結晶構造
【表3】
【0115】
ポジトーン無機インクは、本明細書別所記載の他のPAGシステムの手順に類似した手順で調製した。簡単に述べると、従来の無機リガンドと交換したNCを、DMFに溶解し、濃度20~30mg/mLとした。エタノールのような無水プロトン性溶媒10μL中に溶解したPhI-ピラニンPAGの0.7mgを、DMF中のNCの100μLと混合し、コロイド状で安定した感光性の無機溶液を形成した。スピン-コーティングしたNCフィルムを、356nmのDUVランプ下、132mJ/cmで露光し、NMF中で現像した。PhI-ピラニンPAGは、アニオンから波長領域320~420nmに幅広い吸収を有し、Phカチオンから227nmに強力な吸収ピークを有する。アニオンからカチオンへの分子内の電子移動は、照射時に起こり、PAG反応が引き起こされた。
表4. フォトパターン化された溶液-プロセスした半導体のFET性能のまとめ
【表4】
【0116】
実施例2
この実施例は、電子ビーム(E-ビーム)リソグラフィーを用いる、リガンドでキャップされた無機粒子のフィルムのパターニング方法を例証している。E-ビームリソグラフィーは、典型的には連続パターニング技術として実行される。E-ビームリソグラフィーにおいて使用するためのインクの例は、SCN (TTT)処理したナノ結晶を、DMF溶液中に溶解することにより調製される。好適なナノ結晶としては、II-VI族、III-V族、金属酸化物、金属、及びコア-シェルのナノ結晶が挙げられる。無機フィルムは、以下を含む方法で、パターン化することができる:リガンドでキャップされた無機のナノ結晶のフィルムを形成すること;フィルムの第一の部分にE-ビームを照射すること、ここで放射線と感光性アニオンの間の相互作用は、フィルムの化学修飾を生じながら、フィルムの第二の部分を放射線による照射から防ぐ;並びに、フィルムを、フィルムの第二の部分は溶解するが、フィルムの第一の部分は溶解しない有機溶媒と接触すること。
【0117】
この実施例において、SCN-NHリガンドでキャップされた金ナノ結晶(Au-SCN-NH NC)を、例証のための実施例として使用した。最初に有機リガンドによりキャップされたAuナノ結晶は、最初にリガンド交換のためにNHCN(NHTTT)により処理し、DMF中に再溶解し、安定したコロイド溶液を形成した。この溶液をSiウエハー上にスピン-コーティングした後、Au-TTTフィルムを、E-ビームに露光し(NPGS 8.0ナノパターニングシステムを装備したHitachi S-2700走査型電子顕微鏡を使用)、且つ寸法50μm×50μmの正方形パターンをDMF中での現像時に得た(図6)。エネルギー効果を更に研究した。1~4mC/cmの範囲の線量に対応する、右側から左側へのパターンに従い、より高いE-ビーム線量に露光されたパターンは、比較的より低い線量に露光されたものよりも、より明るいコントラストを有した。
【0118】
FETトランスファー及びアウトプット曲線の例は、図14A-14F及び図15A-15Dに示している。
【0119】
実施例3
これは、CeOナノ結晶及び非イオン性PAGヒドロキシナフタルイミドトリフラートを含有する、光パターン化可能なフィルムの製造、並びに機能性無機ナノ材料のダイレクト光学リソグラフィー及び電子ビームリソグラフィーを使用するフィルムのパターニングの方法を例証している。
【0120】
インク調製:有機リガンドでキャップされたCeOナノ結晶を、トルエンで希釈し、濃度80mg/mLの安定した溶液を形成した。ストリッピング剤として使用するNOBFを、最初にDMF(20mg/mL)中に溶解し、次にCeO溶液へ、重量比2:1(NC:NOBF)で導入した。沈殿を、遠心分離により分離し、トルエンにより少なくとも3回洗浄した。生じたCeOナノ結晶を、数回の沈殿-再分散サイクルのためにトルエン及びDMFを用いて精製した。次に精製したNCを、DMF中に濃度~40mg/mLで溶解した。次に感光性インクを、DMF及びMeOH共溶媒系(v/v:10:1)中で、CeOナノ結晶を、PAG(DOLFINのためには2.5重量%及び電子ビームリソグラフィーのためには15%)と混合することにより、調製した。
【0121】
パターニング法:ナノ結晶-含有フィルムを、ナノ結晶溶液を基板上にスピン-コーティングし、且つコーティングを乾燥させることにより形成した。生じたフィルムを次に、市販のMask Aligner装置を用いて、線量600mJ/cmでUV光(365nm)に露光し、DMF中で現像した。
【0122】
用語「例証的」は、例、実例、又は例示として働くことを意味するように、本明細書において使用する。「例証」として本明細書において説明された任意の態様又はデザインは、必ずしも、他の態様又はデザインに勝る好ましいもしくは有利なものとして構築されるものではない。更に、本開示の目的に関して及び別に特定しない限りは、単数の冠詞(“a”又は“an”)は、「1又は複数」を意味する。
【0123】
本発明の例証的実施態様の上記説明は、例証及び説明を目的として提示されている。本発明を開示された正確な形に、網羅されるか又は限定されることは意図せず、且つ変更及び変動が、先の教示を考慮し可能であるか、又は本発明の実践から獲得されてよい。これらの実施態様は、本発明の原理を説明するために、当業者が様々な実施態様において本発明を利用することを可能にするために、本発明の実践的適用として、並びに企図された特定の用途に適するように様々な変更を伴い、選択され且つ説明された。本発明の範囲は、本明細書に添付された請求項及びそれらの同等物によって限定されることが意図される。
図1A-B】
図1C
図1D
図2
図3A-C】
図3D-E】
図3F-G】
図4A
図4B
図4C-D】
図4E-F】
図5
図6
図7A-B】
図7C
図7D
図7E
図8
図9A-B】
図9C-D】
図10
図11
図12A-B】
図12C-D】
図12E-F】
図12G-H】
図13
図14A-B】
図14C-D】
図14E-F】
図15A-B】
図15C-D】