(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】資材運搬システム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
E04G21/16
(21)【出願番号】P 2020142278
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000167233
【氏名又は名称】光洋機械産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 義宣
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-050376(JP,U)
【文献】特開2002-180670(JP,A)
【文献】特開2013-060778(JP,A)
【文献】特開平04-191252(JP,A)
【文献】特開2015-078041(JP,A)
【文献】特開平07-119312(JP,A)
【文献】特開平07-139178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/28-3/34
21/14-21/22
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築工事中の建築物の近傍に立設される昇降装置と、
工事に使用される資材を積載可能なキャリア装置とを備え、
前記昇降装置は、
ベース部と、
前記ベース部に立設されるマスト部と、
前記マスト部に沿って上下動可能に設けられた移動部と、
前記移動部に取り付けられ前記キャリア装置を連結するための連結部とを有し、
前記キャリア装置は、
前記資材を積載するための積載部と、
前記積載部の上面に取付けられ前記資材を支持するためのガイド部と、
前記ガイド部に設けられ、前記昇降装置の連結部に連結される被連結部と、
前記積載部の下部に取り付けられこのキャリア装置を移動させるためのクローラ部とを有することを特徴とする、資材運搬システム。
【請求項2】
前記昇降装置の連結部は、
一対のコ字状部材を含み、
前記キャリア装置の被連結部は、
前記一対のコ字状部材に案内支持される回転自在な複数のローラからなる、請求項1に記載の資材運搬システム。
【請求項3】
前記昇降装置には、
前記移動部と前記連結部との間に介在され、
前記キャリア装置を水平方向に回動させるための支持回動部が設けられている、請求項1または2に記載の資材運搬システム。
【請求項4】
前記ガイド部は、
前記積載部に取付られ前記資材の出し入れ移動が容易なように平行配置された一対の枠状部材からなる、請求項1ないし3のいずれかに記載の資材運搬システム。
【請求項5】
建築工事中の建築物の近傍に立設される昇降装置と、
工事に使用される資材を積載可能なキャリア装置とを備え、
前記昇降装置は、
ベース部と、
前記ベース部に立設されるマスト部と、
前記マスト部に沿って上下動可能に設けられた移動部と、
前記移動部に取り付けられ前記キャリア装置を搭載するための搬器部とを有し、
前記キャリア装置は、
前記資材を積載するための積載部と、
前記積載部の上面に取付けられ前記資材を支持するためのガイド部と、
前記積載部の下部に取り付けられこのキャリア装置を移動させるためのクローラ部とを有することを特徴とする、資材運搬システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築用資材等を建築物の上層階に運搬するための資材運搬システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばマンション等の建築工事においては、スレート材、石膏ボードまたはサッシ等の建築用資材(住宅用資材)が屋根、壁または窓等として用いられる。これらの住宅用資材は、通常、平板状に形成されているものが多く、例えば長さが2mを超える長尺状のものであったり、重さが100kgを超えたりするものがある。
【0003】
建築工事においては、住宅用資材を建築物内に搬入するときには、一人または複数の作業員が人の力で運搬しており、住宅用資材の数量が多いほど作業員にとっては重労働となっていた。特に、建築物がマンション等の中高層住宅の場合、下の階から上層階へ運搬する必要があり、より重労働となっていた。
【0004】
一方、支柱や足場板等の仮設機材を工事中の建築物の上層階に運搬する装置としては、例えば特許文献1に記載のような搬送用容器が提案されている。この搬送用容器によれば、仮設機材を収容するための容器の周囲が網状に形成され、仮設機材の比較的小物のものであれば、支障なく積載することができる。
【0005】
しかしながら、上述したように石膏ボード等の平板状でかつ長尺状の住宅用資材を積載しようとした場合、特許文献1に記載の搬送用容器では大きさや形状の点で石膏ボード等を良好に収納することは困難である。その一方で、住宅用資材を搬送用容器からはみ出した状態で無理に積載することは、安全上好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、建築用資材を多大な労力を要せずに容易に建築物の上層階に運搬することのできる資材運搬システムを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面によって提供される資材運搬システムは、建築工事中の建築物の近傍に立設される昇降装置と、工事に使用される資材を積載可能なキャリア装置とを備え、前記昇降装置は、ベース部と、前記ベース部に立設されるマスト部と、前記マスト部に沿って上下動可能に設けられた移動部と、前記移動部に取り付けられ前記キャリア装置を連結するための連結部とを有し、前記キャリア装置は、前記資材を積載するための積載部と、前記積載部の上面に取付けられ前記資材を支持するためのガイド部と、前記ガイド部に設けられ、前記昇降装置の連結部に連結される被連結部と、前記積載部の下部に取り付けられこのキャリア装置を移動させるためのクローラ部とを有することを特徴としている。
【0009】
本発明の資材運搬システムにおいて、前記昇降装置の連結部は、一対のコ字状部材を含み、前記キャリア装置の被連結部は、前記一対のコ字状部材に案内支持される回転自在な複数のローラからなるとよい。
【0010】
本発明の資材運搬システムにおいて、前記昇降装置には、前記移動部と前記連結部との間に介在され、前記キャリア装置を水平方向に回動させるための支持回動部が設けられているとよい。
【0011】
本発明の資材運搬システムにおいて、前記ガイド部は、前記積載部に取付られ前記資材の出し入れ移動が容易なように平行配置された一対の枠状部材からなるとよい。
【0012】
本発明の第2の側面によって提供される資材運搬システムは、建築工事中の建築物の近傍に立設される昇降装置と、工事に使用される資材を積載可能なキャリア装置とを備え、前記昇降装置は、ベース部と、前記ベース部に立設されるマスト部と、前記マスト部に沿って上下動可能に設けられた移動部と、前記移動部に取り付けられ前記キャリア装置を搭載するための搬器部とを有し、前記キャリア装置は、前記資材を積載するための積載部と、前記積載部の上面に取付けられ前記資材を支持するためのガイド部と、前記積載部の下部に取り付けられこのキャリア装置を移動させるためのクローラ部とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の資材運搬システムによれば、資材を積載するキャリア装置は、被連結部によって昇降装置の連結部に連結され、昇降装置の移動部が上昇することにより、キャリア装置も上昇することができるので、建築物の上層階に多大な労力を要せずに容易に資材を運搬することができ、作業者の負担を軽減することができる。また、キャリア装置にはクローラ部が備えられているので、走行される地面に凹凸があっても、キャリア装置はスムーズに走行でき、資材を支障なく運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る資材運搬システムの斜視図である。
【
図7】昇降装置にキャリア装置を連結したときの側面図である。
【
図8】キャリア装置が仮設足場上に移動されるときの状態を示す平面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る資材運搬システムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態に係る資材運搬システム1の斜視図である。この資材運搬システム1は、例えばマンション等の建築工事において用いられる建築用資材(住宅用資材)を建築物の上層階に運搬するためのものである。住宅用資材としては、屋根、壁または窓等に適用される例えばスレート材、石膏ボードまたはサッシ等が挙げられる。
図1は、複数の住宅用資材Bを運搬している状態を示している。なお、資材運搬システム1で運搬されるものとしては、上記した住宅用資材に限るものではなく、例えば足場板等の仮設部材や建設工具等であってもよい。
【0017】
この資材運搬システム1は、建築工事中のマンション等の近傍に立設される昇降装置2と、住宅用資材Bを積載し昇降装置2に連結されて建築物の上層階に運搬されるキャリア装置3とからなる。
図2は昇降装置2の斜視図であり、
図3はキャリア装置3の斜視図である。また、
図4は昇降装置2の概略分解図である。
【0018】
昇降装置2は、ベース部4と、ベース部4に立設されたマスト部5と、マスト部5に沿って上下動可能に設けられた移動部6と、移動部6に取り付けられ上記キャリア装置3を連結するための連結部7とを備えている。
【0019】
ベース部4は、マスト部5を地面上に立設支持するためのものであり、
図1に示すように、所定の厚みを有する平板状の部材8と、支柱10(後述)の支持受けとなる受け部材9とからなる。
【0020】
マスト部5は、1または複数の支柱10によって構成され、各支柱10は、所定長さを有する略角柱状に形成されている。各支柱10は、それぞれ上方向に順次繋ぎ合わされて連結され、これにより、作業者は、マスト部5の高さを所望の高さに調整することができる。なお、
図1は支柱10が3本連結された場合、
図2は2本連結された場合、
図4は支柱10が1本の場合を示す。
【0021】
各支柱10は、
図5に示すように、その4つの側面に上下方向に延びる凹部11がそれぞれ形成されており、4つの側面のうちの前方側の一側面には、長板状のトラック12が嵌め込まれている。トラック12には、長手方向に沿って複数の係合孔13が形成されている。なお、
図1、
図2及び
図4等に示す支柱5には、凹部11、トラック12及び係合孔13が省略されている。
【0022】
各支柱10の左右側面の上端部には、他の支柱10を連結するための連結レバー14が備えられている。連結レバー14は、支柱10の上端と他の支柱10の下端とが合わさったとき、他の支柱10の下端に設けられた図示しないレバーロックと接続され、これにより、支柱10と他の支柱10とが連結される。
【0023】
なお、昇降装置2が例えば建築物の近傍に立設される場合、マスト部5は、昇降装置2の転倒を防止するための1または複数の壁つなぎによって建築物に固定される。また、昇降装置2が例えば仮設足場の近傍に立設される場合、マスト部5は、1または複数のクランプ等によって仮設足場に固定される。
【0024】
移動部6は、連結部7を介して連結されるキャリア装置3を支持しつつそれを昇降移動させるためのものである。移動部6は、
図4に示すように、上下方向に延びかつ平面視で略コの字状に形成されている。移動部6は、その裏面側に支柱10の側面に沿って回転自在な複数のローラ(図略)を有しているとともに、その正面中央部にギアボックス15が取付けられている。
【0025】
ギアボックス15は、モータ16(後述)による回転動作を移動部6の移動方向への進行動作に変換することにより、マスト部5に沿って移動部6が昇降するための駆動力を付与するものである。ギアボックス15は、側面視で略台形状とされ、内部に複数のギア(図略)が備えられており、いずれかのギアが上記したトラック12の係合孔13に係合される。
【0026】
ギアボックス15の上面には、モータ16が接続されている。モータ16は、ギアボックス15に対して所定の回転力を付与するものであり、図示しない制御部に接続されている。制御部は、モータ16をオン、オフ制御するとともに、モータ16を正転または逆転させるものであり、無線または有線用の通信機能が備えられ、外部からの遠隔操作により動作される。制御部によってモータ16が回転駆動され、正転または逆転されることにより、移動部6は、マスト部5に沿って上下動される。この移動部6の上下動にともない、それに連結部7を介して連結されるキャリア装置3も昇降移動される(
図1の矢印A参照)。
【0027】
移動部6には、
図4に示すように、ギアボックス15の取付位置より下部に、連結部7を支持するとともにそれを回動させるための支持回動部17が設けられている。支持回動部17は、移動部6に固着された上下一対の固定部材18と、両固定部材18の間に回動自在に支持され上下方向に延びた略円柱状の回動部材19とからなる。回動部材19は、連結部7を水平方向に約0~90度の角度で回動させるためのものである。
【0028】
回動部材19には、連結部7に対向する曲面に上下一対の接続片21が形成されている。一対の接続片21のそれぞれは、連結部7側に形成された上下一対の被接続片22に挟持されて連結される。
【0029】
連結部7は、
図2及び
図4に示すように、水平方向に延びた上下一対のコ字状部材23と、上下方向に延び一対のコ字状部材23同士を接続する3本のフレーム24とによって構成されている。一対のコ字状部材23は、正面側が開放するように配され、このコ字状の内側空間には、キャリア装置3の後述するローラ34が案内支持される。3本のフレーム24のうち中央のフレーム24は、両側のフレーム24よりやや長く形成され、上述した回動部材19の接続片21に連結される被接続片22が形成されている。連結部7は、回動部材19が回動することによりそれ自体も回動され、キャリア装置3を連結支持した場合にはキャリア装置3をも回動させる。
【0030】
キャリア装置3は、主に長尺状の住宅用資材B等を運搬するためのものであり、作業者が手押しすることにより地面上を走行可能とされている。キャリア装置3は、
図3に示すように、住宅用資材B等を積載するための積載部26と、積載部26に積載された住宅用資材Bを支持するためのガイド部27と、このキャリア装置3を走行方向に移動させるためのクローラ部28とを備えている。
【0031】
積載部26は、所定の面積及び厚みを有する平板状の部材からなり、フラットな面に形成された上面にガイド部27が取付けられている。ガイド部27は、一対の枠状部材29からなり、各枠状部材29は、それぞれ積載部26の両側面近傍の位置に走行方向に沿って平行に立設されている。なお、
図1では省略しているが、ガイド部27には、住宅用資材Bの落下を防止するための例えばチェーン等の落下防止機構が設けられている。
【0032】
各枠状部材29は、縦方向に延びた2本の縦部材31と、2本の縦部材31同士の上端及び中央部を接続する上さん部材32及び中さん部材33とによって構成される。これら一対の枠状部材29は、対向するように配され、それらの間の領域に石膏ボード等の住宅用資材Bが積載される。
【0033】
なお、枠状部材29は、長尺状の住宅用資材Bが積載されることを考慮して、積載部26のやや中央寄りの位置に立設されている。これにより、キャリア装置3は、住宅用資材Bによって傾いたり転倒したりすることを防止するようにしている。
【0034】
上さん部材32及び中さん部材33には、回転自在な複数のローラ34(特許請求の範囲に記載の被連結部として機能する)が取り付けられている。各ローラ34は、上さん部材32及び中さん部材33の外側に向けて水平方向にかつ等間隔に配されている。これらローラ34は、キャリア装置3が昇降装置2に連結される際、連結部7のコ字状部材23の内側において案内支持される。
【0035】
クローラ部28は、無端状のベルト35と、このベルト35を所定の軌道で回転させるための複数のローラ部材36とを有する。クローラ部28は、積載部26の両側側面に沿って平行して設けられている。キャリア装置3には、このクローラ部28が備えられているため、走行される地面に凹凸があったり段差があったり(いわゆる不陸)、あるいは多少の障害物があっても、キャリア装置3はスムーズに走行でき、住宅用資材Bを支障なく運搬することができる。
【0036】
なお、キャリア装置3は、
図3で示す奥行き側あるいは手前側のいずれの側の枠状部材29が連結部7に連結されてもよいし、連結部7に対して左右いずれの方向から連結部7に連結されてもよい。これらの場合を考慮して、キャリア装置3は、走行方向から見てあるいは側面方向から見て左右対称になる構造とされている。
【0037】
図6は昇降装置2の側面図、
図7は昇降装置2にキャリア装置3を連結したときの側面図である。なお、
図7では住宅用資材Bが省略されている。
図6に示すように、昇降装置2では、移動部6に支持回動部17が設けられ、支持回動部17に連結部7が取り付けられている。より詳細には、上述したように支持回動部17の回動部材19に形成された上下一対の接続片21は、連結部7のフレーム24に形成された上下一対の被接続片22にそれぞれ挟持され、ボルト止めされることにより、支持回動部17に連結部7が取り付けられる。
【0038】
昇降装置2にキャリア装置3が連結されるときには、
図7に示すように、キャリア装置3の上さん部材32及び中さん部材33に設けられた複数のローラ34が、連結部7のコ字状部材23の内側にそれぞれ案内支持される。すなわち、連結部7の上部のコ字状部材23には、上さん部材32に設けられたローラ34が案内支持され、連結部7の下部のコ字状部材23には、中さん部材33に設けられたローラ34が案内支持される。なお、図には示していないが、連結部7には、キャリア装置3が昇降装置2によって昇降されるときに、ローラ34がコ字状部材23から脱落しないような脱落防止機構が設けられている。
【0039】
なお、
図6では、昇降装置2の移動部6が最下位位置にある場合を示しており、この状態で上さん部材32及び中さん部材33の各ローラ34が、一対のコ字状部材23の内側にスムーズに案内されるように、コ字状部材23及びローラ34のそれぞれの地面Gからの高さ位置が予め設定されている。
【0040】
次に、本実施形態における資材運搬システム1の作用について説明する。
【0041】
本資材運搬システム1では、キャリア装置3は、昇降装置2と分離した状態で住宅用資材Bを積載しそのまま水平方向に移動することができるので、例えば以下のように、住宅用資材Bをその製作工場から建設現場まで運搬することが可能となる。
【0042】
例えば石膏ボード、ドア、サッシ等の住宅用資材Bは、主にそれらの製作工場で作製されるが、作業者は、キャリア装置3をその製作工場に一旦搬入する。次いで、作業者は、製作工場内の所定位置で、クローラ部28の回転移動を抑制した上で、キャリア装置3の積載部26にその上方または側方から住宅用資材Bを積み込む。この場合、積載部26の枠状部材29は、積載部26の中央寄りに立設されているので、住宅用資材Bを積載したときの重心を中央に寄せることができ、キャリア装置3が傾いたり転倒したりすることを防止できる。
【0043】
そして、作業者は、住宅用資材Bを積載したキャリア装置3をそのまま手押しで移動させる。この場合、キャリア装置3には、クローラ部28が備えられているので、地面が不陸であったり多少の障害物があったりしても、キャリア装置3をスムーズに移動させることができ、住宅用資材Bを支障なく運搬することができる。
【0044】
次に、作業者は、例えばフォークリフト等を用いて建築現場まで移動する運送用トラックの荷台にキャリア装置3ごと積み込む。この場合、フォークリフトの爪はクローラ部28のローラ部材36同士の隙間から容易に挿入することができ、パレット等を用いずにキャリア装置3をそのままフォークリフトで持ち上げることができる。
【0045】
キャリア装置3を積み込んだ運送用トラックは、所望の建設現場まで移動されることにより、キャリア装置3も建設現場まで運搬される。建設現場に運搬されたキャリア装置3は、運送用トラックから降ろされる。この場合、キャリア装置3は、クローラ部28が備えられているので、運送用トラックの荷台から地面までの間にスロープを設ければよい。
【0046】
建設現場においては、昇降装置2は、建設現場の例えば仮設足場の近傍に、連結部7が正面側を向くように設置される。そして、
図7に示したように、地面Gに降ろされたキャリア装置3は、その上さん部材32及び中さん部材33に設けられた複数のローラ34が、連結部7のコ字状部材23の内側に案内支持されることにより、昇降装置2の連結部7に連結される。
【0047】
なお、この場合、昇降装置2の連結部7は、移動部6によって上下方向に昇降可能であるので、運送用トラックの荷台に積み込まれたキャリア装置3の高さ位置に、連結部7を上昇させ、キャリア装置3を運送用トラックの荷台から降ろさずに、そのまま連結部7と連結させるようにしてもよい。
【0048】
次に、作業者は、昇降装置2のモータ16を回転させて移動部6を上昇させる。この場合、マスト部5では、必要に応じて複数の支柱10が逐次連結されてもよいし、予め所定高さになるよう複数の支柱10が連結されていてもよい。これにより、連結部7に連結されたキャリア装置3は、
図1に示すように、上方に移動され、建築物の所望の上層階の高さ位置まで到達する。
【0049】
次に、キャリア装置3は、
図8に示すように、仮設足場Sを介して建築物の上層階のフロアに移動される。まず、昇降装置2によって建築物の上層階に到達したキャリア装置3は、その長手方向が仮設足場Sに沿って平行に配置されている(
図8(a)参照)。
【0050】
次いで、例えば仮設足場S上にいる作業者によって、約45°の角度になるまでキャリア装置3が回動される(
図8(b)の矢印C参照)。この場合、昇降装置2の支持回動部17の回動部材19は、固定部材18に回動自在に支持されているため、連結部7を介して連結されたキャリア装置3を容易に回動することができる。
【0051】
そして、キャリア装置3は、作業者によって仮設足場S側に水平移動され(
図8(c)の矢印D参照)、連結部7から離脱し仮設足場S上に移動される。この場合、キャリア装置3のローラ34は、連結部7のコ字状部材23の内側を案内され、作業者は、容易にキャリア装置3を連結部7から水平移動することができる。
【0052】
連結部7から離脱し仮設足場S上に移動されたキャリア装置3は、そのまま作業者によって建築物(図略)の所望の工事施工位置まで移動される。この場合も、キャリア装置3は、仮設足場S上や建築物のフロア上が多少の凹凸を有していても、クローラ部28によって、スムーズに移動させることができる。
【0053】
このように、本実施形態の資材運搬システム1によれば、キャリア装置3に積載された住宅用資材Bを、所望の上層階の工事施工位置まで多大な労力を要せずに容易に運搬することができる。そのため、作業者の負担を大幅に軽減することができるとともに作業時間を短縮でき、作業性の向上を図ることができる。
【0054】
特に、住宅用資材Bは、上述したように、キャリア装置3に製作工場から積み込まれ、そのままの状態で運搬され、建設現場に搬入することができるので、運搬の途中で例えば台車やパレット等に積み込んだり、積み下ろしたりする手間や労力を省くことができる。また、積み下ろし等の回数が軽減されるので、積み下ろし時に住宅用資材Bを損傷したり破損したりすることを抑制することができる。
【0055】
図9は、キャリア装置の変形例を示す斜視図である。このキャリア装置3Aは、上さん部材32及び中さん部材33に備えられた複数のローラ34に代えて、棒状に延びた複数の支持部材40が備えられている。各支持部材40は、各上さん部材32及び各中さん部材33の外側にそれぞれ設けられ、上さん部材32及び中さん部材33とほぼ同等の長さとされている。各支持部材40の両端は、外側に向かうほど窄まるように形成された狭窄部41とされている。
【0056】
キャリア装置3Aが連結部7に連結される際、各支持部材40が対応するコ字状部材23にそれぞれ案内支持される。支持部材40の両端は、狭窄部41とされているので、支持部材40は、スムーズにコ字状部材23に挿入、案内される。
【0057】
図10は、本発明の第2実施形態に係る資材運搬システム1Aの斜視図である。
図11は、昇降装置2Aの斜視図である。この資材運搬システム1Aは、キャリア装置3Aが昇降装置2Aに設けられた搬器部42に搭載されて昇降装置2Aによって昇降される点で、第1実施形態に係る資材運搬システム1と異なる。なお、
図10では、住宅用資材Bは省略されている。
【0058】
資材運搬システム1Aでは、昇降装置2Aの支持回動部17に搬器部42が取り付けられている。搬器部42は、所定の厚みを有する平板状の床部43と、床部43の両側面からそれぞれ立設された一対の枠状部材44とによって構成される。一対の枠状部材44のうち一方の枠状部材44には、昇降装置2Aと連結するための上下一対の被接続片45が形成されている。これら一対の被接続片45が、支持回動部17の上下一対の接続片21に接続されることにより、搬器部42は昇降装置2Aに取り付けられる。
【0059】
搬器部42の床部43には、
図10に示すように、住宅用資材Bが積載されたキャリア装置3Aが搭載される。キャリア装置3Aは、クローラ部28によって容易に搬器部42の床部43に移動できる。なお、キャリア装置3Aは、支持部材40が形成されていないタイプのものが用いられてもよいし、第1実施形態で示したキャリア装置3が用いられてよい。
【0060】
このように、第2実施形態に係る資材運搬システム1Aにおいても、住宅用資材Bが積載されたキャリア装置3Aが昇降装置2Aによって昇降されるので、住宅用資材Bを建築物の上層階の工事施工位置まで多大な労力を要せずに容易にかつスムーズに運搬することができる。
【0061】
なお、本発明の範囲は上述した実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、上記実施形態における昇降装置2、キャリア装置3、マスト部5、移動部6及び連結部7等の構成、形状、大きさ及び数量等は、上記実施形態に限るものではなく、適宜設計変更可能である。
【0062】
また、上記実施形態における昇降装置2,2Aは、連結部7あるいは搬器部42を昇降させるために、上記マスト部5及び移動部6の構成に代えて、他の昇降装置が用いられてもよい。他の昇降装置2Bは、
図12に示すように、例えば仮設足場Sの支柱50に取付けられたマスト51と、チェーンブロック52を吊り下げるブラケット部材53と、連結部7を支持する支持機構54等からなる。この他の昇降装置2Bによっても、チェーンブロック52により、支持機構54に連結される連結部7(キャリア装置3,3A)あるいは搬器部42を容易に上下動させることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 資材運搬システム
2,2A,2B 昇降装置
3,3A キャリア装置
5 マスト部
6 移動部
7 連結部
10 支柱
17 支持回動部
26 積載部
27 ガイド部
28 クローラ部
34 ローラ
42 搬器部