(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び解析装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2019085456
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-02-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 優子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正毅
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022279(JP,A)
【文献】特開2019-063483(JP,A)
【文献】特開2018-020109(JP,A)
【文献】特開2009-034225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブによる超音波走査により得られた時系列に沿った複数の医用画像データのそれぞれにより示される複数の医用画像のそれぞれに検索範囲を設定し、当該複数の医用画像のそれぞれに設定された前記検索範囲内の特徴部位を検索する検索部と、
前記複数の医用画像データの中から所定数の医用画像データに基づいて、前記超音波プローブの移動速度を示す移動速度情報として、前記検索範囲を示す枠であって前記移動速度に応じて表示態様が異なる枠を示す情報を生成する生成部と、
前記移動速度情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記生成部は、前記所定数の医用画像データとして2つの医用画像データから、医用画像データの画像空間において複数の同一の位置の複数の領域を切り出し、前記複数の同一の位置において他方の領域と一方の領域との複数の相関係数を算出し、算出された複数の相関係数の統計値に基づいて、前記移動速度情報を生成する、超音波診断装置。
【請求項2】
超音波プローブによる超音波走査により得られた時系列に沿った複数の医用画像データのそれぞれにより示される複数の医用画像のそれぞれに検索範囲を設定し、当該複数の医用画像のそれぞれに設定された前記検索範囲内の特徴部位を検索する検索部と、
前記複数の医用画像データの中から所定数の医用画像データに基づいて、前記超音波プローブの移動速度を示す移動速度情報として、前記検索範囲を示す枠であって前記移動速度に応じて表示態様が異なる枠を示す情報を生成する生成部と、
前記移動速度情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記生成部は、前記
所定数の医用画像データとして2つの医用画像データのうち、一方の医用画像データから複数の第1の領域を切り出し、他方の医用画像データから複数の第2の領域を切り出し、前記第1の領域と前記第2の領域の複数の組について、前記第1の領域と前記第2の領域との相関係数を算出し、前記複数の組について算出された相関係数と所定の閾値との比較結果に基づいて、前記移動速度情報を生成する、超音波診断装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記複数の医用画像データのフレームレートに応じて、前記移動速度情報を生成する際に用いられる前記所定数の医用画像データを選択し、選択された前記所定数の医用画像データに基づいて、前記移動速度情報を生成する、請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
超音波プローブによる超音波走査により得られた時系列に沿った複数の医用画像データのそれぞれにより示される複数の医用画像のそれぞれに検索範囲を設定し、当該複数の医用画像のそれぞれに設定された前記検索範囲内の特徴部位を検索する検索部と、
前記複数の医用画像データの中から所定数の医用画像データを取得する取得部と、
前記所定数の医用画像データに基づいて、前記超音波プローブの移動速度に関する移動速度情報として、前記検索範囲を示す枠であって前記移動速度に応じて表示態様が異なる枠を示す情報を生成する生成部と、
前記移動速度情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備え、
前記生成部は、前記所定数の医用画像データとして2つの医用画像データから、医用画像データの画像空間において複数の同一の位置の複数の領域を切り出し、前記複数の同一の位置において他方の領域と一方の領域との複数の相関係数を算出し、算出された複数の相関係数の統計値に基づいて、前記移動速度情報を生成する、解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置及び解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波走査に対してリアルタイムで生成した超音波画像データにより示される超音波画像をリアルタイムで表示したり、過去の超音波走査により得られた超音波画像データにより示される超音波画像を表示したりする。また、医用画像診断装置により生成された医用画像中の特徴的な部位(特徴部位)を自動的に検出するCAD(Computer Aided Detection)機能が知られている。また、磁気センサ等の検出器を用いて、超音波プローブのスキャン速度を検出する超音波診断装置が知られている。ここで、スキャン速度とは、例えば、超音波プローブが移動する際の超音波プローブの速度(移動速度)である。スキャン速度には、超音波プローブが停止している状態の超音波プローブの速度が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-512776号公報
【文献】特表2016-508409号公報
【文献】特開平7-248558号公報
【文献】特開2017-60587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、超音波プローブの移動速度を検出するための磁気センサ等の検出器を用いずに、操作者に、超音波プローブの移動速度を把握させることができる超音波診断装置及び解析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の超音波診断装置は、生成部と、表示制御部とを備える。生成部は、超音波プローブによる超音波走査により得られた時系列に沿った複数の医用画像データの中から所定数の医用画像データに基づいて、超音波プローブの移動速度を示す移動速度情報を生成する。表示制御部は、移動速度情報を表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る検索機能により実行されるCAD処理の一例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る検索機能により実行されるCAD処理の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る検索機能及びマーカ情報生成機能により実行される処理の一例について説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る検索機能及びマーカ情報生成機能により実行される処理の一例について説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る検索機能及びマーカ情報生成機能により実行される処理の一例について説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る表示例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る移動速度情報生成機能が実行する処理の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る相関係数の算出方法の一例について説明するための図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る相関係数の算出方法の一例について説明するための図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係る相関係数の算出方法の一例について説明するための図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態に係る超音波診断装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態に係る超音波診断装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
【
図14】
図14は、第1の実施形態に係る超音波診断装置が実行する処理の一例を説明するための図である。
【
図15】
図15は、第1の実施形態に係る超音波診断装置が実行する処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。
【
図16】
図16は、第1の実施形態の変形例2に係る相関係数の算出方法の一例について説明するための図である。
【
図17】
図17は、第1の実施形態の変形例2に係る相関係数の算出方法の一例について説明するための図である。
【
図18】
図18は、第2の実施形態に係る移動速度情報生成機能が実行する処理の一例を説明するための図である。
【
図19】
図19は、第2の実施形態に係る移動速度情報生成機能が実行する処理の一例を説明するための図である。
【
図20】
図20は、第2の実施形態において算出された25個の相関係数の一例を示す図である。
【
図21】
図21は、第2の実施形態において算出された25個の相関係数の他の例を示す図である。
【
図22】
図22は、第2の実施形態において算出された25個の相関係数の他の例を示す図である。
【
図23】
図23は、第2の実施形態において算出された25個の相関係数の他の例を示す図である。
【
図24】
図24は、第2の実施形態に係る移動速度情報生成機能が実行する処理の一例を説明するための図である。
【
図25】
図25は、第2の実施形態において算出された25個の相関係数の他の例を示す図である。
【
図26】
図26は、第3の実施形態に係る医用画像処理装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る超音波診断装置及び医用画像処理装置を説明する。なお、一つの実施形態又は変形例に記載した内容は、他の実施形態又は他の変形例にも同様に適用されてもよい。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成例について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示す図である。
図1に例示するように、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、装置本体100と、超音波プローブ101と、入力装置102と、ディスプレイ103とを有する。
【0009】
超音波プローブ101は、例えば、圧電振動子等の複数の素子を有する。これら複数の素子は、後述する装置本体100が有する送信回路110から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ101は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ101は、例えば、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ101は、装置本体100と着脱自在に接続される。
【0010】
超音波プローブ101から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波として超音波プローブ101が有する複数の素子にて受信される。受信される反射波の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0011】
超音波プローブ101は、装置本体100と着脱可能に設けられる。被検体P内の2次元領域の走査(2次元走査)を行なう場合、操作者は、例えば、複数の圧電振動子が一列で配置された1Dアレイプローブを超音波プローブ101として装置本体100に接続する。1Dアレイプローブは、リニア型超音波プローブ、コンベックス型超音波プローブ、セクタ型超音波プローブ等である。また、被検体P内の3次元領域の走査(3次元走査)を行なう場合、操作者は、例えば、メカニカル4Dプローブや2Dアレイプローブを超音波プローブ101として装置本体100と接続する。メカニカル4Dプローブは、1Dアレイプローブのように一列で配列された複数の圧電振動子を用いて2次元走査が可能であるとともに、複数の圧電振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで3次元走査が可能である。また、2Dアレイプローブは、マトリックス状に配置された複数の圧電振動子により3次元走査が可能であるとともに、超音波を集束して送信することで2次元走査が可能である。
【0012】
入力装置102は、例えば、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等の入力手段により実現される。入力装置102は、超音波診断装置1の操作者からの各種設定要求を受け付け、受け付けた各種設定要求を装置本体100に転送する。例えば、入力装置102は、超音波診断装置1の操作者からCAD処理を実行するための指示(実行指示)を受け付け、受け付けた実行指示を装置本体100の処理回路180に送信する。また、操作者は、入力装置102を介して、超音波画像中の特徴的な部位(特徴部位)を自動的に検出するCAD処理において、特徴部位の検索範囲であるROI(Region Of Interest)を超音波画像に設定することもできる。
【0013】
ディスプレイ103は、例えば、超音波診断装置1の操作者が入力装置102を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体100において生成された超音波画像データにより示される超音波画像等を表示したりする。ディスプレイ103は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ等によって実現される。ディスプレイ103は、表示部の一例である。
【0014】
装置本体100は、超音波プローブ101から送信される反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する。装置本体100は、超音波プローブ101が送信した被検体Pの2次元領域に対応する反射波信号に基づいて2次元の超音波画像データを生成可能である。また、装置本体100は、超音波プローブ101が送信した被検体Pの3次元領域に対応する反射波信号に基づいて3次元の超音波画像データを生成可能である。
【0015】
図1に示すように、装置本体100は、送信回路110と、受信回路120と、Bモード処理回路130と、ドプラ処理回路140と、画像生成回路150と、画像メモリ160と、記憶回路170と、処理回路180とを有する。送信回路110、受信回路120、Bモード処理回路130、ドプラ処理回路140、画像生成回路150、画像メモリ160、記憶回路170及び処理回路180は、互いに通信可能に接続されている。
【0016】
送信回路110は、処理回路180による制御を受けて、超音波プローブ101から超音波を送信させる。送信回路110は、レートパルサ発生回路と、送信遅延回路と、送信パルサとを有し、超音波プローブ101に駆動信号を供給する。送信回路110は、被検体P内の2次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から2次元領域を走査するための超音波ビームを送信させる。また、送信回路110は、被検体P内の3次元領域を走査する場合、超音波プローブ101から3次元領域を走査するための超音波ビームを送信させる。
【0017】
レートパルサ発生回路は、所定のレート周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)で、送信超音波(送信ビーム)を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。レートパルスが送信遅延回路を経由することで、異なる送信遅延時間を有した状態で送信パルサに電圧が印加される。例えば、送信遅延回路は、超音波プローブ101から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの送信遅延時間を、レートパルサ発生回路により発生される各レートパルスに対して与える。送信パルサは、かかるレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ101に駆動信号(駆動パルス)を印加する。なお、送信遅延回路は、各レートパルスに与える送信遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの超音波の送信方向を任意に調整する。
【0018】
駆動パルスは、送信パルサからケーブルを介して超音波プローブ101内の圧電振動子まで伝達した後に、圧電振動子において電気信号から機械的振動に変換される。この機械的振動によって発生した超音波は、生体内部に送信される。ここで、圧電振動子ごとに異なる送信遅延時間を持った超音波は、集束されて、所定方向に伝搬していく。
【0019】
なお、送信回路110は、処理回路180による制御を受けて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有する。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0020】
超音波プローブ101により送信された超音波の反射波は、超音波プローブ101内部の圧電振動子まで到達した後、圧電振動子において、機械的振動から電気的信号(反射波信号)に変換され、受信回路120に入力される。受信回路120は、処理回路180による制御を受けて、超音波プローブ101から送信された反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成し、生成した反射波データをBモード処理回路130及びドプラ処理回路140に出力する。例えば、受信回路120は、反射波信号を受信する度に、受信した反射波信号から反射波データを生成する。受信回路120は、超音波プローブ101から送信された2次元の反射波信号から2次元の反射波データを生成する。また、受信回路120は、超音波プローブ101から送信された3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成する。
【0021】
受信回路120は、プリアンプと、A/D(Analog to Digital)変換器と、直交検波回路等を有する。プリアンプは、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン調整(ゲイン補正)を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換することでゲイン補正された反射波信号をデジタル信号に変換する。直交検波回路は、デジタル信号をベースバンド帯域の同相信号(I信号、I:In-phase)と直交信号(Q信号、Q:Quadrature-phase)とに変換する。そして、直交検波回路は、I信号及びQ信号(IQ信号)を反射波データとしてBモード処理回路130及びドプラ処理回路140に出力する。
【0022】
Bモード処理回路130は、処理回路180による制御を受けて、受信回路120から出力された反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理及び対数圧縮等を行なって、サンプル点ごとの信号強度(振幅強度)が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。例えば、Bモード処理回路130は、反射波データを受信する度に、受信した反射波データからBモードデータを生成する。Bモード処理回路130は、生成したBモードデータを画像生成回路150に出力する。Bモード処理回路130は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0023】
ドプラ処理回路140は、処理回路180による制御を受けて、受信回路120から出力された反射波データを周波数解析することで、ドプラ効果に基づく移動体(血流や組織、造影剤エコー成分等)の運動情報を抽出し、抽出した運動情報を示すデータ(ドプラデータ)を生成する。例えば、ドプラ処理回路140は、移動体の運動情報として、平均速度、分散及びパワー等を多点に渡り抽出し、抽出した移動体の運動情報を示すドプラデータを生成する。例えば、ドプラ処理回路140は、反射波データを受信する度に、受信した反射波データからドプラデータを生成する。ドプラ処理回路140は、生成したドプラデータを画像生成回路150に出力する。ドプラ処理回路140は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0024】
Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。
【0025】
画像生成回路150は、処理回路180による制御を受けて、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140が出力した各種のデータ(Bモードデータ及びドプラデータ)から超音波画像データを生成する。例えば、画像生成回路150は、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140から出力された各種のデータを受信する度に、受信した各種のデータから超音波画像データを生成する。すなわち、画像生成回路150は、超音波走査に対してリアルタイムで時系列に沿った複数の超音波画像データを生成する。このようにして、本実施形態では、受信回路120、Bモード処理回路130、ドプラ処理回路140及び画像生成回路150が、リアルタイムで、時系列に沿った複数の超音波画像データを収集する。受信回路120、Bモード処理回路130、ドプラ処理回路140及び画像生成回路150は、収集部の一例である。また、超音波画像データは、医用画像データの一例である。
【0026】
そして、画像生成回路150は、リアルタイムで生成された時系列に沿った複数の超音波画像データを、画像メモリ160に記憶させる。具体例を挙げて説明すると、画像生成回路150は、超音波画像データを生成する度に、生成した超音波画像データを画像メモリ160に記憶させる。例えば、超音波走査により得られた時系列に沿った複数の超音波画像データのうち、1番目に生成された超音波画像データは、1フレーム目の超音波画像データと称される。同様に、N(Nは、1以上の整数)番目に生成された超音波画像データは、Nフレーム目の超音波画像データと称される。
【0027】
画像生成回路150は、プロセッサにより実現される。ここで、画像生成回路150は、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。例えば、画像生成回路150は、超音波プローブ101による超音波の走査形態に応じて座標変換を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成回路150は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行なう。また、画像生成回路150は、超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0028】
また、画像生成回路150は、Bモード処理回路130により生成された3次元のBモードデータに対して座標変換を行なうことで、3次元Bモード画像データを生成する。また、画像生成回路150は、ドプラ処理回路140により生成された3次元のドプラデータに対して座標変換を行なうことで、3次元ドプラ画像データを生成する。すなわち、画像生成回路150は、「3次元のBモード画像データ及び3次元ドプラ画像データ」を「3次元超音波画像データ(ボリュームデータ)」として生成する。そして、画像生成回路150は、ボリュームデータをディスプレイ103にて表示するための各種の2次元画像データを生成するために、ボリュームデータに対して様々なレンダリング処理を行なう。
【0029】
Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成回路150が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0030】
画像メモリ160は、画像生成回路150により生成された各種の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ160は、Bモード処理回路130及びドプラ処理回路140により生成されたデータも記憶する。画像メモリ160が記憶するBモードデータやドプラデータは、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成回路150を経由して表示用の超音波画像データとなる。例えば、画像メモリ160は、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク又は光ディスクによって実現される。
【0031】
記憶回路170は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、記憶回路170は、必要に応じて、画像メモリ160が記憶するデータの保管等にも使用される。例えば、記憶回路170は、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク又は光ディスクによって実現される。
【0032】
処理回路180は、超音波診断装置1の処理全体を制御する。処理回路180は、例えば、プロセッサにより実現される。処理回路180は、制御機能181、取得機能182、検索機能183、マーカ情報生成機能184、表示制御機能185及び移動速度情報生成機能186の各処理機能を有する。
【0033】
ここで、例えば、処理回路180が有する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路170に記憶される。
図1に示す処理回路180の構成要素である制御機能181、取得機能182、検索機能183、マーカ情報生成機能184、表示制御機能185及び移動速度情報生成機能186の各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路170に記憶されている。処理回路180は、各プログラムを記憶回路170から読み出し、読み出された各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路180は、
図1の処理回路180内に示された各機能を有することとなる。
【0034】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、若しくは、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、又は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路170に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路170にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。更に、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。以下の説明で用いられる「プロセッサ」という文言についても同様である。
【0035】
制御機能181は、入力装置102を介して操作者から入力された各種設定要求や、記憶回路170から読込んだ各種データに基づき、送信回路110、受信回路120、Bモード処理回路130、ドプラ処理回路140及び画像生成回路150の処理を制御する。
【0036】
取得機能182は、入力装置102を介して操作者から入力されたCAD処理を実行するための指示(実行指示)を受信した場合に、時系列に沿った複数の超音波画像データを取得する。例えば、取得機能182は、実行指示を受信した後に、新たに生成された超音波画像データが画像メモリ160に記憶される度に、画像メモリ160から、新たに生成された超音波画像データを取得する。例えば、時系列に沿った複数の超音波画像データは、超音波プローブ101による超音波走査により得られたデータ群である。このような超音波走査は、例えば、操作者により被検体Pの体表に沿って移動された超音波プローブ101の移動により被検体Pの内部の走査領域が移動されながら行われたり、超音波プローブ101が停止している状態で行われたりする。また、以下の説明において、時系列に沿った複数の超音波画像データのそれぞれは、例えば、Bモード画像データである。
【0037】
検索機能183は、超音波画像データにより示される超音波画像中の特徴部位を自動的に検出するCAD処理を実行する。例えば、検索機能183は、新たに生成された超音波画像データが取得機能182により取得される度に、新たに生成された超音波画像データに対してCAD処理を実行する。特徴部位としては、例えば、乳腺の腫瘤等が挙げられるが、特徴部位は、これに限られない。検索機能183は、CAD処理において、検索窓と教師データと検索アルゴリズムを用いて、操作者により超音波画像に設定された検索範囲(ROI)における特徴部位を検索する。例えば、検索機能183は、検索範囲内で検索窓を複数の位置に移動させながら、各位置において、検索窓の画像情報を、教師データと検索アルゴリズムを用いて解析することで、各検索窓の画像情報が特徴部位に相当する情報である確率を計算する。
【0038】
検索窓とは、例えば、教師データと比較される検索範囲内の領域の単位である。教師データとは、例えば、特徴部位の標本となる画像情報である。検索アルゴリズムとは、上述した確率を算出するためのアルゴリズムである。
【0039】
教師データは、例えば、過去に得られた超音波画像データにおける特徴部位の画像情報である。なお、教師データは、過去に得られた複数の超音波画像データのそれぞれにおける特徴部位の画像情報に基づいて行われた機械学習により得られた情報であってもよい。また、検索アルゴリズムは、例えば、機械学習による学習済みネットワークを用いて、処理対象の超音波画像において特徴部位に相当する画像情報を検索し、検索結果を出力するアルゴリズムであってもよい。
【0040】
そして、検索機能183は、計算された確率が所定の閾値以上である場合に、検索窓で囲まれた範囲を、特徴部位(特徴部位の範囲)として検出する。そして、検索機能183は、1フレーム分の超音波画像データ毎に、超音波画像に対する検索結果を記憶回路170に記憶させる。例えば、検索機能183は、1フレームの超音波画像に対して特徴部位を検索した結果、特徴部位を得た場合には、特徴部位の位置を示す位置情報を検索結果として記憶回路170に記憶させる。なお、ここでいう特徴部位の位置は、超音波画像データの画像空間における位置である。
【0041】
ここで、
図2及び
図3を参照して、検索機能183により検出される特徴部位には、正しく検出された特徴部位と、実際は特徴部位ではないのに誤って検出された特徴部位との2種類の特徴部位があることについて説明する。
図2及び
図3は、第1の実施形態に係る検索機能183により実行されるCAD処理の一例を説明するための図である。以下の説明では、画像生成回路150により新たに生成された超音波画像データを、Nフレーム目の超音波画像データとする。
【0042】
図2には、検索機能183により正しく特徴部位が検出された場合が示されている。
図2に例示するように、例えば、検索機能183は、Nフレーム目の超音波画像に対してCAD処理を行って、検索窓10で囲まれた、実際の特徴部位11を含む範囲を特徴部位として検出する。そして、検索機能183は、Nフレーム目の超音波画像において検出された特徴部位の位置を示す位置情報を記憶回路170に記憶させる。
【0043】
一方、
図3には、検索機能183により誤って特徴部位が検出された場合が示されている。
図3に例示するように、例えば、検索機能183は、Nフレーム目の超音波画像に対してCAD処理を行って、検索窓10で囲まれた、特徴部位11を含まない範囲を誤って特徴部位として検出する場合がある。このように、誤って特徴部位が検出されることは、過検出(偽陽性)と呼ばれる。
【0044】
また、検索機能183は、1フレームの超音波画像に対して特徴部位を検索した結果、特徴部位を検出できなかった場合には、特徴部位を検出できなかったことを示す情報を検索結果として記憶回路170に記憶させる。
【0045】
上述したように、検索機能183は、超音波走査により得られた複数の超音波画像データのそれぞれにより示される複数の超音波画像のそれぞれに検索範囲を設定し、複数の超音波画像のそれぞれに設定された検索範囲内の特徴部位を検索する。検索機能183は、検索部の一例である。なお、検索機能183は、確率の代わりに、各検索窓の画像情報と教師データとの類似の度合いを示す類似度等の他の指標を計算してもよい。
【0046】
マーカ情報生成機能184は、複数フレームの超音波画像の複数の検索結果に基づいて、1フレームの超音波画像の検出結果を示すマーカ情報を生成する。
【0047】
マーカ情報生成機能184による処理において用いられる複数フレームの複数の検索結果の一例について説明する。このような複数の検索結果は、例えば、最新の超音波画像データをNフレーム目の超音波画像データとすると、(N-K(KはNよりも小さい自然数))フレーム目の超音波画像の検索結果から、Nフレーム目の超音波画像の検索結果までの(K+1)つの検索結果が用いられる。以下、K=2である場合を例に挙げて説明する。
【0048】
マーカ情報生成機能184は、(N-2)フレーム目の超音波画像の検索結果、(N-1)フレーム目の超音波画像の検索結果、及び、Nフレーム目の超音波画像の検索結果(3つの検索結果)を記憶回路170から取得する。
【0049】
そして、マーカ情報生成機能184は、3つの検索結果に基づいて、3つの超音波画像データにおいて特徴部位が検出されたか否かを判定する。ここでいう3つの超音波画像データとは、例えば、(N-2)フレーム目の超音波画像データ、(N-1)フレーム目の超音波画像データ及びNフレーム目の超音波画像データである。そして、マーカ情報生成機能184は、3つの超音波画像データにおいて特徴部位が検出されたと判定した場合には、3つの超音波画像データにおいて検出された3つの特徴部位の位置が、超音波画像データの画像空間において、充分近い位置であるか否かを判定する。ここで、3つの特徴部位の位置が充分近い位置であるとは、例えば、3つの特徴部位が同一の特徴部位である場合に、3つの特徴部位が3つの超音波画像データにおいて存在し得る所定の範囲内に存在することを指す。そして、マーカ情報生成機能184は、3つの特徴部位の位置が、超音波画像データの画像空間において、充分近い位置であると判定した場合には、特徴部位として検出された範囲を表す矩形のマーカを示すマーカ情報を生成する。
【0050】
一方、マーカ情報生成機能184は、3つの超音波画像データにおいて特徴部位が検出されていないと判定した場合には、マーカ情報を生成しない。また、マーカ情報生成機能184は、3つの超音波画像データにおいて検出された3つの特徴部位の位置が、超音波画像データの画像空間において、充分近い位置でないと判定した場合にも、マーカ情報を生成しない。
【0051】
図4~6を参照して、検索機能183及びマーカ情報生成機能184により実行される処理の具体例について説明する。
図4~6は、第1の実施形態に係る検索機能183及びマーカ情報生成機能184により実行される処理の一例について説明するための図である。
【0052】
まず、検索機能183が、
図4に例示するように、3つの超音波画像データのそれぞれから、検索窓10で囲まれた、実際の特徴部位11を含む範囲を特徴部位として検出した場合について説明する。この場合には、例えば、マーカ情報生成機能184は、3つの超音波画像データにおいて特徴部位が検出されたと判定する。そして、マーカ情報生成機能184は、3つの超音波画像データにおいて検出された3つの特徴部位の位置が、画像空間において、充分近い位置であるか否かを判定する。そして、マーカ情報生成機能184は、3つの特徴部位の位置が、画像空間において、充分近い位置であると判定した場合には、
図5に例示するように、特徴部位として検出された範囲を表す矩形のマーカ15を示すマーカ情報を生成する。このマーカ情報は、Nフレーム目の超音波画像データに対応する情報である。
【0053】
ここで、
図4に示す場合において、検索機能183が、Nフレーム目の超音波画像データにおいて、正しく特徴部位を検出したのではなく、先の
図3に例示するように、特徴部位を過検出した場合について説明する。この場合には、例えば、マーカ情報生成機能184は、3つの超音波画像データにおいて特徴部位が検出されたと判定する。ただし、マーカ情報生成機能184は、3つの超音波画像データにおいて検出された3つの特徴部位の位置が、画像空間において、充分近い位置でないと判定する。このため、マーカ情報生成機能184は、マーカ情報を生成しない。
【0054】
次に、検索機能183が、
図6に例示するように、3つの超音波画像データのうち2つの超音波画像データ((N-2)フレーム目の超音波画像データ及び(N-1)フレーム目の超音波画像データ)のそれぞれから、検索窓10で囲まれた、実際の特徴部位11を含む範囲を特徴部位として検出したものの、Nフレーム目の超音波画像データから特徴部位を検出できなかった場合について説明する。この場合には、マーカ情報生成機能184は、3つの超音波画像データにおいて特徴部位が検出されていないと判定する。このため、マーカ情報生成機能184は、マーカ情報を生成しない。
【0055】
このように、マーカ情報生成機能184は、複数のフレーム(上述の例では、3フレーム)にわたって、充分近い位置に特徴部位が検出されている場合に、マーカ情報を生成する。例えば、特徴部位11が乳腺の腫瘤である場合、このような腫瘤は、一定の大きさを有するため、複数のフレームにわたって超音波画像に描出される。一方、過検出は、例えば、特徴部位11とは異なる部位が誤って検出されたものであり、突発的に生じることが多い。したがって、複数のフレームにわたって、過検出される可能性は低い。そこで、本実施形態では、マーカ情報生成機能184が、複数のフレームにわたって、充分近い位置に特徴部位が検出されている場合に、特徴部位が検出できたことを示すマーカ情報を生成する。このため、本実施形態によれば、過検出を抑制することができる。
【0056】
そして、マーカ情報生成機能184は、Nフレーム目の超音波画像データに対応するマーカ情報を生成した場合には、
図5に示すように、Nフレーム目の超音波画像データにより示される超音波画像に、マーカ情報により示されるマーカ15を重畳させる。そして、マーカ情報生成機能184は、マーカ15が重畳された超音波画像を示す超音波画像データを画像メモリ160に記憶させる。
【0057】
表示制御機能185は、画像メモリ160に記憶された表示用の超音波画像データにより示される超音波画像をディスプレイ103に表示させる。超音波画像は、医用画像の一例である。表示制御機能185は、表示制御部の一例である。
【0058】
例えば、表示制御機能185は、リアルタイムで、マーカ15が重畳された超音波画像をディスプレイ103に表示させる。例えば、表示制御機能185は、マーカ15が重畳された超音波画像を示す超音波画像データが、マーカ情報生成機能184により画像メモリ160に記憶される度に、マーカ15が重畳された超音波画像を示す超音波画像データを画像メモリ160から取得する。そして、表示制御機能185は、マーカ15が重畳された超音波画像を示す超音波画像データを取得する度に、マーカ15が重畳された超音波画像をディスプレイ103に表示させる。
【0059】
また、表示制御機能185は、マーカ15が重畳されていない超音波画像についても、リアルタイムでディスプレイ103に表示させる。例えば、表示制御機能185は、上述した3つの超音波画像データにおいて特徴部位が検出されていないとマーカ情報生成機能184により判定される度に、
図7に例示するように、Nフレーム目の超音波画像データにより示される超音波画像をディスプレイ103に表示させる。また、表示制御機能185は、3つの超音波画像データにおいて検出された3つの特徴部位の位置が、画像空間において充分近い位置でないとマーカ情報生成機能184により判定される度に、
図7に例示するNフレーム目の超音波画像データにより示される超音波画像をディスプレイ103に表示させる。なお、
図7は、第1の実施形態に係る表示例を示す図である。
【0060】
ここで、上述したように、マーカ情報生成機能184は、複数のフレーム(上述の例では、3フレーム)にわたって、充分近い位置に特徴部位が検出されているか否かを判定する。そして、マーカ情報生成機能184は、複数のフレームにわたって、充分近い位置に特徴部位が検出されている場合に、特徴部位が検出できたことを示すマーカ情報を生成する。そして、表示制御機能185は、マーカ情報により示されるマーカ15が重畳された超音波画像をディスプレイ103に表示させる。これにより、過検出を抑制するとともに、精度良く、特徴部位を検出することができる。
【0061】
しかしながら、特徴部位の検出精度は、超音波プローブ101のスキャン速度に依存する。ここで、スキャン速度とは、例えば、操作者の操作により被検体Pの体表に沿って超音波プローブ101が移動する際の超音波プローブ101の速度(移動速度)である。なお、スキャン速度には、超音波プローブ101が停止している状態の超音波プローブ101の速度が含まれる。例えば、超音波プローブ101の移動速度が比較的速いと、複数のフレーム(上述の例では、3フレーム)における超音波プローブ101の移動量(移動距離)が大きくなる。この場合、複数のフレームのうち一部のフレームしか実際の特徴部位11が検出されずに、残りのフレームでは実際の特徴部位11が検出されないこともある。この場合には、腫瘤などの特徴部位11を検出したことを示すマーカ15がディスプレイ103に表示されない。このため、超音波プローブ101の移動速度が比較的速いと、特徴部位11の検出感度が低下する場合がある。
【0062】
また、例えば、超音波プローブ101の移動速度が比較的遅いと、複数のフレームにおける超音波プローブ101の移動量が小さくなる。この場合、例えば、複数のフレームにわたって、特徴部位11とは異なる部位が、誤って過検出されてしまうことがある。よって、このような過検出が複数のフレームにわたって発生することで、特徴部位11ではない部位を特徴部位として検出したことを示すマーカ15がディスプレイ103に表示されてしまう。したがって、超音波プローブ101の移動速度が比較的遅いと、過検出が増加する。
【0063】
そこで、超音波プローブ101の移動速度が適切であるか否かを操作者に把握させることが望まれる。
【0064】
ここで、超音波プローブ101の移動速度を、磁気センサ等の検出器を用いて検出することが考えられる。しかしながら、検出器を用いる場合には、検出器を購入するための費用等のコストがかかる。また、超音波プローブ101に検出器を取り付けるため、超音波プローブ101の取り回しが悪くなる。また、磁気センサは、ペースメーカを装着している被検体Pに対しては、使用することができない。
【0065】
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、検出器を用いることなく、超音波プローブ101の移動速度が適切であるか否かを操作者に把握させることできるように、以下に説明する各種の処理を実行する。
【0066】
第1の実施形態に係る移動速度情報生成機能186は、超音波走査により得られた複数の超音波画像データの中から、所定数の超音波画像データに基づいて、超音波プローブ101の移動速度を示す移動速度情報を生成する。例えば、移動速度情報生成機能186は、2つの超音波画像データに基づいて、検索範囲を示す枠であって、超音波プローブ101の移動速度に応じて表示態様が異なる枠を示す情報を移動速度情報として生成する。移動速度情報生成機能186は、生成部の一例である。
【0067】
図8は、第1の実施形態に係る移動速度情報生成機能186が実行する処理の一例を説明するための図である。
【0068】
例えば、移動速度情報生成機能186は、新たに生成された超音波画像データ(Nフレーム目の超音波画像データ)が取得機能182により取得される度に、
図8に例示するように、(N-3)フレーム目の超音波画像データ及びNフレーム目の超音波画像データを用いて、後述する処理に用いられる相関係数rを算出する。
【0069】
図9~11を参照して、相関係数rの算出方法の具体例について説明する。
図9~11は、第1の実施形態に係る相関係数rの算出方法の一例について説明するための図である。
【0070】
図9には、Nフレーム目の超音波画像データにより示される超音波画像の一例が示されている。
図10には、(N-3)フレーム目の超音波画像データにより示される超音波画像の一例が示されている。
図9及び
図10において、超音波画像の上部側の部分が、被検体Pの皮膚等の深さ方向(上下方向;両矢印41により示される方向)における浅い部分に対応する。また、
図9及び
図10において超音波画像の下部側の部分が、被検体Pの肋骨よりも深さ方向において深い部分に対応する。
【0071】
例えば、超音波画像に描出される皮膚等の浅い部分の画像情報は、一様であり、ほとんど変化がないと考えられる。また、例えば、肋骨によって超音波が強反射されるため、肋骨よりも深い部分からの超音波の反射波が弱まる。超音波画像上では、肋骨よりも深い部分が暗くなる音響陰影(シャドー)が発生する。このため、肋骨よりも深い部分の画像情報は、一様であり、ほとんど変化がないと考えられる。
【0072】
また、超音波プローブ101が有する複数の圧電振動子のうち、いずれかの圧電振動子が、被検体Pの体表と接触しない場合があり得る。すなわち、いわゆる体表から浮いた圧電振動子が存在する場合がある。この場合、超音波画像の全領域のうち、被検体Pの体表と接触していない圧電振動子からの反射波信号に基づく部分は、深さ方向に一様に暗くなる。
【0073】
そのため、移動速度情報生成機能186は、超音波プローブ101の移動速度に関して精度の高い移動速度情報を生成するために、1つの領域ではなく、
図9に例示するように、3つの領域20a,20b,20cを切り出す。具体的には、移動速度情報生成機能186は、Nフレーム目の超音波画像の浅い部分及び深い部分を除いた部分から、左右方向(両矢印42により示される方向)に沿って3つの領域20a,20b,20cを切り出す。同様の理由で、移動速度情報生成機能186は、
図10に例示するように、(N-3)フレーム目の超音波画像の浅い部分及び深い部分を除いた部分から、左右方向に沿って3つの領域21a,21b,21cを切り出す。
図9及び
図10に例示するように、3つの領域20a,20b,20cの形状及び3つの領域21a,21b,21cの形状は、矩形状である。なお、各フレームの超音波画像から切り出される領域の数は、3つに限られず、3つ以外の数であってもよい。また、各フレームの超音波画像から切り出される領域の形状は、矩形状に限られず、矩形以外の形状であってもよい。また、各フレームの超音波画像から切り出される領域の位置は、
図9及び
図10に示す位置に限られず、
図9及び
図10に示す位置以外の位置であってもよい。
【0074】
ここで、第1の実施形態では、
図9及び
図10において、超音波画像の上下方向及び左右方向に対応する方向ではなく、上下方向及び左右方向に直交する前後方向(両矢印43により示される方向:超音波画像を貫く方向)に対応する方向に、超音波プローブ101が移動する場合の移動速度が適切であるか否かを操作者に把握させることを目的とする。そのため、移動速度情報生成機能186は、2つの超音波画像データから、超音波画像データの画像空間において、同一の位置の領域20a及び領域21aを切り出す。ここでいう2つの超音波画像データは、(N-3)フレーム目の超音波画像データ及びNフレーム目の超音波画像データである。また、移動速度情報生成機能186は、2つの超音波画像データから、超音波画像データの画像空間において、同一の位置の領域20b及び領域21bを切り出す。また、移動速度情報生成機能186は、2つの超音波画像データから、超音波画像データの画像空間において、同一の位置の領域20c及び領域21cを切り出す。
【0075】
そして、
図11に例示するように、移動速度情報生成機能186は、領域20aと領域21aとの相関係数r
1を算出する。また、移動速度情報生成機能186は、領域20bと領域21bとの相関係数r
2を算出する。また、移動速度情報生成機能186は、領域20cと領域21cとの相関係数r
3を算出する。
【0076】
そして、
図11に例示するように、移動速度情報生成機能186は、相関係数r
1、相関係数r
2及び相関係数r
3の中央値を算出し、算出した中央値を、超音波プローブ101の移動速度を判定する際に用いる相関係数rとする。
【0077】
なお、移動速度情報生成機能186は、相関係数r1、相関係数r2及び相関係数r3の平均値を算出し、算出した平均値を、相関係数rとしてもよい。
【0078】
相関係数r1、相関係数r2及び相関係数r3の中央値及び平均値は、相関係数r1、相関係数r2及び相関係数r3の統計値の一例である。
【0079】
ここで、超音波プローブ101の移動速度が遅くなるほど、相関係数rが高くなり、超音波プローブ101の移動速度が速くなるほど、相関係数rが低くなると考えられる。この理由の一例について説明する。例えば、超音波プローブ101の移動速度が速くなるほど、(N-3)フレーム目の超音波走査の走査領域と、Nフレーム目の超音波走査の走査領域との実空間における距離が大きくなる。このような実空間における距離が大きくなるほど、(N-3)フレーム目の超音波画像に描出される被検体Pの構造物の形態と、Nフレーム目の超音波画像に描出される被検体Pの構造物の形態との差違が大きくなる。このため、超音波プローブ101の移動速度が速くなるほど、相関係数rが低くなると考えられる。
【0080】
一方、超音波プローブ101の移動速度が遅くなるほど、(N-3)フレーム目の超音波走査の走査領域と、Nフレーム目の超音波走査の走査領域との実空間における距離が小さくなる。このような実空間における距離が小さくなるほど、(N-3)フレーム目の超音波画像に描出される被検体Pの構造物の形態と、Nフレーム目の超音波画像に描出される被検体Pの構造物の形態との差違が小さくなる。このため、超音波プローブ101の移動速度が遅くなるほど、相関係数rが高くなると考えられる。
【0081】
このように、相関係数rは、超音波プローブ101の移動速度に応じた値となる。
【0082】
そして、移動速度情報生成機能186は、検索範囲を示す枠であって、相関係数rに応じて表示態様が異なる枠を示す情報を移動速度情報として生成する。移動速度情報生成機能186は、相関係数rを算出する度に、このような枠を示す情報を生成する。
図12~14は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1が実行する処理の一例を説明するための図である。
【0083】
移動速度情報生成機能186は、超音波プローブ101の移動速度が比較的速い場合には、
図12に例示するように、赤色の枠25aを示す情報を移動速度情報として生成する。赤色の枠25aは、超音波プローブ101の移動速度が比較的速いことを示す。例えば、移動速度情報生成機能186は、相関係数rが0.0以上で閾値T1未満である場合には、超音波プローブ101の移動速度が比較的速いため、赤色の枠25aを示す情報を生成する。なお、
図12の例では、枠25aの色が赤色であることを示すために、枠25aを破線で示しているが、枠25aは、実線により形成される。
【0084】
また、移動速度情報生成機能186は、相関係数rが0以上で閾値T1未満である場合には、超音波プローブ101の移動速度が比較的速いことを示す文字列「fast」26aを移動速度情報として生成する。
【0085】
また、移動速度情報生成機能186は、超音波プローブ101の移動速度が比較的遅い場合には、
図13に例示するように、黄色の枠25bを示す情報を移動速度情報として生成する。黄色の枠25bは、超音波プローブ101の移動速度が比較的遅いことを示す。例えば、移動速度情報生成機能186は、相関係数rが、閾値T2よりも大きい場合には、超音波プローブ101の移動速度が比較的遅いため、黄色の枠25bを示す情報を生成する。なお、閾値T2は、閾値T1よりも大きい。また、
図13の例では、枠25bの色が黄色であることを示すために、枠25bを破線で示しているが、枠25bは、実線により形成される。
【0086】
また、移動速度情報生成機能186は、相関係数rが閾値T2よりも大きい場合には、超音波プローブ101の移動速度が比較的遅いことを示す文字列「slow」26bを移動速度情報として生成する。
【0087】
また、移動速度情報生成機能186は、超音波プローブ101の移動速度が遅くとも速くともない適切な速さである場合には、
図14に例示するように、所定のデフォルトの色(例えば、黒色又は緑色)の枠25cを示す情報を移動速度情報として生成する。デフォルトの色の枠25cは、超音波プローブ101の移動速度が適切な速度であることを示す。例えば、移動速度情報生成機能186は、相関係数rが、閾値T1以上で閾値T2以下である場合には、超音波プローブ101の移動速度が適切な速度であるため、デフォルトの色の枠25cを示す情報を生成する。
【0088】
このように、移動速度情報生成機能186は、相関係数rに応じた超音波プローブ101の移動速度に応じて表示態様が異なるように、移動速度情報を生成する。また、移動速度情報生成機能186は、リアルタイムで、移動速度情報を生成する。
【0089】
表示制御機能185は、リアルタイムで移動速度情報をディスプレイ103に表示させる。例えば、表示制御機能185は、移動速度情報生成機能186により移動速度情報が生成される度に、生成された移動速度情報をディスプレイ103に表示させる。
【0090】
例えば、先の
図12に示す枠25aを示す情報が生成された場合には、表示制御機能185は、
図12に示すように、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上に赤色の枠25aを表示させる。また、例えば、先の
図12に示す文字列「fast」26aが生成された場合には、表示制御機能185は、
図12に示すように、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像の左側に、文字列「fast」26aを表示させる。
【0091】
また、先の
図13に示す枠25bを示す情報が生成された場合には、表示制御機能185は、
図13に示すように、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上に黄色の枠25bを表示させる。また、例えば、先の
図13に示す文字列「slow」26bが生成された場合には、表示制御機能185は、
図13に示すように、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像の左側に、文字列「slow」26bを表示させる。
【0092】
また、先の
図14に示す枠25cを示す情報が生成された場合には、表示制御機能185は、
図14に示すように、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上にデフォルトの色の枠25cを表示させる。
【0093】
ここで、超音波プローブの移動を操作者に把握させるために、ディスプレイに、超音波画像が表示された表示領域とは異なる表示領域に、磁気センサ等により検出された超音波プローブの移動速度の値を表示させることが考えられる。また、エラストグラフィーでは、例えば、操作者が超音波プローブを加振して組織に対し圧迫及び開放を行うことにより生体組織表面に応力を加え、かかる応力により生ずる生体内部の組織の歪み(ストレイン:strain)に関する情報が得られる。このため、このような組織の歪みに関する情報を、超音波プローブの動きに関する情報として、ディスプレイに、超音波画像が表示された表示領域とは異なる表示領域に表示させることも考えられる。
【0094】
しかしながら、このような場合には、超音波画像上に、超音波プローブの移動速度の値及び歪みに関する情報が表示されない。このため、操作者は、超音波プローブの移動速度の値、又は、歪みに関する情報を把握するために、超音波画像から視線を外さなければならなくなってしまう。
【0095】
一方、第1の実施形態に係る超音波診断装置1は、超音波画像上に枠25a,25b,25cを表示させる。したがって、第1の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、操作者は、超音波画像を確認しながら、超音波プローブ101の移動速度が適切であるか否かを把握することができる。
【0096】
また、第1の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、超音波プローブ101の移動速度を検出するための磁気センサ等の検出器を用いずに、操作者に、超音波プローブ101の移動速度を把握させることができる。
【0097】
図15は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1が実行する処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。なお、
図15に示す処理は、画像生成回路150により新たに生成された超音波画像データ(Nフレーム目の超音波画像データ)が取得機能182により取得される度に、実行される。
【0098】
図15に示すように、移動速度情報生成機能186は、Nフレーム目の超音波画像データ及び(N-3)フレーム目の超音波画像データから、画像空間における同一の位置の領域を切り出す(ステップS101)。例えば、ステップS101では、移動速度情報生成機能186は、Nフレーム目の超音波画像データ及び(N-3)フレーム目の超音波画像データから、同一の位置の領域20a及び領域21a、同一の位置の領域20b及び領域21b、並びに、同一の位置の領域20c及び領域21cを切り出す。このように、移動速度情報生成機能186は、2つの超音波画像データから、画像空間において複数の同一の位置の複数の領域を切り出す。
【0099】
そして、移動速度情報生成機能186は、領域20aと領域21aとの相関係数r1、領域20bと領域21bとの相関係数r2、及び、領域20cと領域21cとの相関係数r3を算出する(ステップS102)。このように、移動速度情報生成機能186は、複数の同一の位置において、複数の相関係数を算出する。
【0100】
そして、移動速度情報生成機能186は、相関係数r1、相関係数r2及び相関係数r3の中央値を算出し、算出した中央値を、超音波プローブ101の移動速度を判定する際に用いる相関係数rとする(ステップS103)。このように、移動速度情報生成機能186は、複数の同一の位置において、複数の相関係数を算出する。
【0101】
そして、移動速度情報生成機能186は、相関係数rが0.0以上で閾値T1未満であるか否かを判定する(ステップS104)。相関係数rが0.0以上で閾値T1未満であると判定された場合(ステップS104:Yes)には、ステップS105では、次の処理が行われる。例えば、ステップS105では、移動速度情報生成機能186は、赤色の枠25aを示す情報を生成し、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上に赤色の枠25aを表示させる。
【0102】
そして、ステップS106では、移動速度情報生成機能186は、文字列「fast」26aを移動速度情報として生成し、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像の左側に、文字列「fast」26aを表示させる。そして、移動速度情報生成機能186は、
図15に示す処理を終了する。
【0103】
一方、相関係数rが閾値T1よりも大きいと判定された場合(ステップS104:No)には、移動速度情報生成機能186は、相関係数rが閾値T2よりも大きいか否かを判定する(ステップS107)。
【0104】
相関係数rが閾値T2よりも大きいと判定された場合(ステップS107:Yes)には、ステップS108で次の処理が行われる。例えば、ステップS108では、移動速度情報生成機能186は、黄色の枠25bを示す情報を生成し、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上に黄色の枠25bを表示させる。
【0105】
そして、ステップS109では、移動速度情報生成機能186は、文字列「slow」26bを移動速度情報として生成し、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像の左側に、文字列「slow」26bを表示させる。そして、移動速度情報生成機能186は、
図15に示す処理を終了する。
【0106】
また、相関係数rが閾値T2以下であると判定された場合(ステップS107:No)、すなわち、相関係数rが閾値T1以上で閾値T2以下である場合には、ステップS110で次の処理が行われる。例えば、ステップS110では、移動速度情報生成機能186は、デフォルトの色の枠25cを示す情報を生成し、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上にデフォルトの色の枠25cを表示させる。そして、移動速度情報生成機能186は、
図15に示す処理を終了する。
【0107】
すなわち、ステップS104~S110において、移動速度情報生成機能186は、算出された複数の相関係数r1,r2,r3の中央値(相関係数r)に基づいて、移動速度情報を算出する。
【0108】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置1について説明した。第1の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、上述したように、超音波プローブ101の移動速度を検出するための磁気センサ等の検出器を用いずに、操作者に、超音波プローブ101の移動速度を把握させることができる。
【0109】
(第1の実施形態の変形例1)
なお、第1の実施形態では、移動速度情報生成機能186が、(N-3)フレーム目の超音波画像データ及びNフレーム目の超音波画像データを用いて、移動速度情報を生成する場合について例示した。しかしながら、移動速度情報生成機能186は、超音波画像データのフレームレートに応じて、移動速度情報を生成する際に用いられる2つの超音波画像データを選択してもよい。そこで、このような実施形態を、第1の実施形態の変形例1として説明する。
【0110】
第1の実施形態の変形例1では、移動速度情報生成機能186は、フレームレートの値にかかわらず、移動速度情報を生成する際に用いられる2つの超音波画像データ間の時間差(2つのフレーム間の時間差)が一定となるように、この2つの超音波画像データを選択する。ここで、2つの超音波画像データ間の時間差とは、例えば、2つの超音波画像データ間の時間方向における距離である。例えば、第1の実施形態の変形例1では、移動速度情報生成機能186は、超音波画像データのフレームレートが高くなるほど、移動速度情報を生成する際に用いられる2つの超音波画像データのフレーム番号の差が大きくなるように、この2つの超音波画像データを選択する。これは、仮に、2つの超音波画像データのフレーム番号の差が一定である場合には、フレームレートが高くなるほど時間差が小さくなるため、2つの超音波画像データの相関係数rが高くなる傾向があり、相関係数rから生成される移動速度情報の精度が良好でなくなってしまうことがあり得るからである。同様に、第1の実施形態の変形例1では、移動速度情報生成機能186は、超音波画像データのフレームレートが低くなるほど、移動速度情報を生成する際に用いられる2つの超音波画像データのフレーム番号の差が小さくなるように、この2つの超音波画像データを選択する。
【0111】
例えば、第1の実施形態の変形例1では、移動速度情報生成機能186は、フレームレートがf1である場合には、移動速度情報を生成する際に用いられる2つの超音波画像データとして、(N-L(LはNよりも小さい正の整数))フレーム目の超音波画像データ及びNフレーム目の超音波画像データを選択する。そして、移動速度情報生成機能186は、(N-L)フレーム目の超音波画像データ及びNフレーム目の超音波画像データを用いて、移動速度情報を生成する。
【0112】
また、移動速度情報生成機能186は、フレームレートがf1よりも高いf2である場合には、移動速度情報を生成する際に用いられる2つの超音波画像データとして、(N-(L+2))フレーム目の超音波画像データ及びNフレーム目の超音波画像データを選択する。そして、移動速度情報生成機能186は、(N-(L+2))フレーム目の超音波画像データ及びNフレーム目の超音波画像データを用いて、移動速度情報を生成する。
【0113】
以上、第1の実施形態の変形例1について説明した。上述したように、第1の実施形態に係る変形例1では、移動速度情報生成機能186は、超音波画像データのフレームレートに応じて、移動速度情報を生成する際に用いられる2つの超音波画像データを選択する。そして、移動速度情報生成機能186は、選択された2つの超音波画像データに基づいて、移動速度情報を生成する。これにより、第1の実施形態の変形例1によれば、精度良く移動速度情報を生成することができる。また、第1の実施形態に係る変形例1によれば、第1の実施形態と同様に、超音波プローブ101の移動速度を検出するための磁気センサ等の検出器を用いずに、操作者に、超音波プローブ101の移動速度を把握させることができる。
【0114】
(第1の実施形態の変形例2)
なお、第1の実施形態では、上述した前後方向に対応する方向に、超音波プローブ101が移動する場合の移動速度が適切であるか否かを操作者に把握させることを目的とした。そのため、第1の実施形態では、移動速度情報生成機能186が、2つの超音波画像データから、同一の位置の領域を切り出す場合について例示した。しかしながら、上述した上下方向又は左右方向に対応する方向に、超音波プローブ101が移動する場合の移動速度が適切であるか否かを操作者に把握させることを目的としてもよい。そして、このために、移動速度情報生成機能186は、2つの超音波画像データから、異なる位置の領域を切り出してもよい。そこで、このような実施形態を、第1の実施形態の変形例2として説明する。なお、第1の実施形態の変形例2の説明では、第1の実施形態と異なる点を主に説明し、第1の実施形態と同様の構成及び処理については説明を省略する場合がある。
【0115】
以下、左右方向に対応する方向の移動速度が適切であるか否かを操作者に把握させることを目的とする場合を例に挙げて説明する。
図16及び
図17を参照して、第1の実施形態の変形例2に係る相関係数rの算出方法の具体例について説明する。
図16及び
図17は、第1の実施形態の変形例2に係る相関係数rの算出方法の一例について説明するための図である。
【0116】
図16には、Nフレーム目の超音波画像データにより示される超音波画像の一例が示されている。
図17には、(N-3)フレーム目の超音波画像データにより示される超音波画像の一例が示されている。
図16及び
図17に例示するように、Nフレーム目の超音波画像データ及び(N-3)フレーム目の視野幅(左右方向の長さ)は、4cmである。
【0117】
図16に例示するように、移動速度情報生成機能186は、Nフレーム目の超音波画像の左端の位置(0cmの位置)から右方向に1cm離れた位置と、この左端の位置から右方向に2cm離れた位置との間の幅を有する領域20aを切り取る。また、移動速度情報生成機能186は、Nフレーム目の超音波画像の左端の位置から右方向に2cm離れた位置と、この左端の位置から右方向に3cm離れた位置との間の幅を有する領域20bを切り取る。また、移動速度情報生成機能186は、Nフレーム目の超音波画像の左端の位置から右方向に3cm離れた位置と、この左端の位置から右方向に4cm離れた位置との間の幅を有する領域20cを切り取る。
【0118】
また、
図17に例示するように、移動速度情報生成機能186は、(N-3)フレーム目の超音波画像の左端の位置(0cmの位置)と、この左端の位置から右方向に1cm離れた位置との間の幅を有する領域21aを切り取る。また、移動速度情報生成機能186は、(N-3)フレーム目の超音波画像の左端の位置から右方向に1cm離れた位置と、この左端の位置から右方向に2cm離れた位置との間の幅を有する領域21bを切り取る。また、移動速度情報生成機能186は、(N-3)フレーム目の超音波画像の左端の位置から右方向に2cm離れた位置と、この超音波画像の左端の位置から右方向に3cm離れた位置との間の幅を有する領域21cを切り取る。
【0119】
このように、移動速度情報生成機能186は、異なる位置の2つの領域20a及び21aを切り出す。また、移動速度情報生成機能186は、異なる位置の2つの領域20b及び21bを切り出す。また、移動速度情報生成機能186は、異なる位置の2つの領域20c及び21cを切り出す。本変形例では、左右方向に対応する方向の超音波プローブ101の移動速度が適切であるか否かを操作者に把握させるために、領域20aの位置及び21aの位置は、左右方向にずれている。同様の理由で、領域20bの位置及び21bの位置も、左右方向にずれている。また、領域20cの位置及び21cの位置も、左右方向にずれている。
【0120】
すなわち、第1の実施形態の変形例2では、移動速度情報生成機能186は、2つの超音波画像データから、左右方向に位置がずれた複数の領域を切り出す。なお、上下方向に対応する方向の移動速度が適切であるか否かを操作者に把握させることを目的とする場合には、移動速度情報生成機能186は、2つの超音波画像データから、上下方向に位置がずれた複数の領域を切り出せばよい。
【0121】
そして、第1の実施形態と同様に、移動速度情報生成機能186は、領域20aと領域21aとの相関係数r1、領域20bと領域21bとの相関係数r2、及び、領域20cと領域21cとの相関係数r3を算出する。
【0122】
そして、第1の実施形態と同様に、移動速度情報生成機能186は、相関係数r1、相関係数r2及び相関係数r3の最大値を、超音波プローブ101の移動速度を推定する際に用いる相関係数rとする。なお、移動速度情報生成機能186は、相関係数r1、相関係数r2及び相関係数r3の中央値又は平均値を、超音波プローブ101の移動速度を推定する際に用いる相関係数rとしてもよい。そして、第1の実施形態と同様に、移動速度情報生成機能186は、相関係数rを用いて、移動速度情報を生成する。
【0123】
以上、第1の実施形態の変形例2について説明した。上述したように、第1の実施形態に係る変形例2では、移動速度情報生成機能186は、2つの超音波画像データから、左右方向に位置がずれた複数の領域を切り出す。このため、第1の実施形態の変形例2によれば、左右方向に対応する方向に移動する超音波プローブ101に関する移動速度情報を精度良く生成することができる。また、第1の実施形態の変形例2によれば、第1の実施形態と同様に、超音波プローブ101の移動速度を検出するための磁気センサ等の検出器を用いずに、操作者に、超音波プローブ101の移動速度を把握させることができる。
【0124】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る超音波診断装置1について説明する。なお、第2の実施形態の説明では、第1の実施形態と異なる点を主に説明し、第1の実施形態と同様の構成及び処理については説明を省略する場合がある。
【0125】
図18及び
図19は、第2の実施形態に係る移動速度情報生成機能186が実行する処理の一例を説明するための図である。移動速度情報生成機能186は、新たに生成された超音波画像データ(Nフレーム目の超音波画像データ)が取得機能182により取得される度に、
図18に例示するように、Nフレーム目の超音波画像から複数の領域51_1~51_m(mは、自然数)を切り出す。
図18の例では、領域51_k(k=1,2,・・・m-1)の位置に対して51_k+1の位置は、右方向に少しずれている。また、領域51_kの一部と、領域51_k+1の一部とが、重なっている(オーバラップしている)。領域51_1~51_mのそれぞれは、第1の領域の一例である。
【0126】
また、移動速度情報生成機能186は、
図19に例示するように、(N-3)フレーム目の超音波画像から複数の領域52_1~52_mを切り出す。
図19の例では、領域52_kの位置に対して52_k+1の位置は、右方向に少しずれている。また、領域52_kの一部と、領域52_k+1の一部とが、重なっている。領域52_1~52_mのそれぞれは、第2の領域の一例である。
【0127】
なお、超音波画像データの画像空間における複数の領域51_1~51_mのそれぞれの位置が、超音波画像データの画像空間における複数の領域52_1~52_mのそれぞれの位置と、同一であってもよいし、異なってもよい。以下、複数の領域51_1~51_mのそれぞれの位置と、複数の領域52_1~52_mのそれぞれの位置とが同一である場合について説明する。
【0128】
また、領域51_kと領域51_k+1とが重ならずに、隣り合っていてもよい。同様に、領域52_kと領域52_k+1とが重ならずに、隣り合っていてもよい。
【0129】
そして、移動速度情報生成機能186は、複数の領域51_1~51_mのうちの1つの領域と、複数の領域52_1~52_mのうちの1つの領域との全ての組合せを特定する。以下の説明では、複数の領域51_1~51_mのそれぞれを単に領域51と呼び、複数の領域52_1~52_mのそれぞれを単に領域52と呼ぶ場合がある。以下、「m」が5である場合を例に挙げて説明する。この場合、複数の領域51の数が5であり、複数の領域52の数も5となる。この場合、移動速度情報生成機能186は、25(5×5)個の組合せ(組)を特定する。そして、移動速度情報生成機能186は、組合せ毎に、組合せられた1つの領域51と1つの領域52との相関係数を算出する。すなわち、移動速度情報生成機能186は、領域51と領域52との全ての組合せについて、相関係数を算出する。例えば、25個の組合せが特定された場合には、移動速度情報生成機能186は、25個の相関係数を算出する。
【0130】
図20は、第2の実施形態において算出された25個の相関係数の一例を示す図である。
図20において、「rsu」(s=1,2,・・・,5、u=1,2,・・・,5)は、領域52_sと領域51_uとの相関係数を示す。例えば、「r23」は、領域52_2と領域51_3との相関係数を示す。後述する
図21~23,25においても同様である。
【0131】
そして、移動速度情報生成機能186は、25個の相関係数のそれぞれについて、相関係数が0.0以上で閾値T1未満であるか否かを判定する。また、移動速度情報生成機能186は、閾値T1以上であると判定された相関係数が、閾値T2よりも大きいか否かを判定する。
【0132】
図20において、閾値T2よりも大きい相関係数に対しては、斜線のハッチングが行われている。
図20の例に示す場合には、25個の相関係数全てが、閾値T2よりも大きい。したがって、
図20の例に示す場合には、超音波プローブ101が、停止しているか、又は、前後方向(
図18及び
図19に示す両矢印43により示される方向)に対応する方向に比較的ゆっくりと移動していると考えられる。
【0133】
そのため、移動速度情報生成機能186は、黄色の枠25bを示す情報を生成する。また、移動速度情報生成機能186は、文字列「slow」26bを生成する。このように、移動速度情報生成機能186は、算出された25個(複数の)の相関係数に基づいて、移動速度情報を生成する。そして、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上に黄色の枠25bを表示させる。また、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像の左側に、文字列「slow」26bを表示させる。
【0134】
図21は、第2の実施形態において算出された25個の相関係数の他の例を示す図である。
図21において、0.0以上で閾値T1未満である相関係数に対しては、ドット(点)のハッチングが行われている。
図21の例に示す場合には、25個の相関係数全てが、0.0以上で閾値T1未満である。
図21の例に示す場合には、超音波プローブ101が、斜め方向(
図18及び
図19に示す両矢印44により示される方向)に対応する方向に移動しているか、若しくは、前後方向又は左右方向(
図18及び
図19に示す両矢印42により示される方向)に対応する方向に比較的速く移動していると考えられる。
【0135】
このように、
図21の例に示す場合において、超音波プローブ101が斜め方向に対応する方向に移動しているときには、超音波プローブ101の移動速度が比較的速いのか、比較的遅いのか、それとも、遅くとも速くともない適切な速さであるのかが不明となる。したがって、
図21の例に示す場合には、移動速度情報生成機能186は、移動速度情報を算出しない。
【0136】
図22は、第2の実施形態において算出された25個の相関係数の他の例を示す図である。
図22において、閾値T1以上で閾値T2以下である相関係数に対しては、ハッチングが行われていない。
図22の例に示す場合には、25個の相関係数のうち、5つの相関係数r11,r22,r33,r44,r55が、閾値T1以上で閾値T2以下である。すなわち、同一の位置の領域51と領域52の相関係数が、閾値T1以上で閾値T2以下である。また、残りの20個の相関係数が、0.0以上で閾値T1未満である。すなわち、同一の位置でない領域51と領域52の相関係数が、0.0以上で閾値T1未満である。
図22の例に示す場合には、超音波プローブ101が、前後方向に対応する方向に適切な速さで移動していると考えられる。
【0137】
そのため、移動速度情報生成機能186は、デフォルトの色の枠25cを示す情報を生成する。このように、移動速度情報生成機能186は、算出された25個の相関係数に基づいて、移動速度情報を生成する。そして、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上にデフォルトの色の枠25cを表示させる。
【0138】
図23は、第2の実施形態において算出された25個の相関係数の他の例を示す図である。
図23の例に示す場合には、25個の相関係数のうち、4つの相関係数r12,r23,r34,r45が、閾値T2よりも大きい。また、残りの21個の相関係数が、0.0以上で閾値T1未満である。
【0139】
図23の例に示す場合には、(N-3)フレームからNフレームにかけて、超音波プローブ101が、例えば、領域51_2に相当する実空間における位置から領域52_1に相当する実空間における位置に向かう方向に、領域51_2に相当する実空間における位置から領域52_1に相当する実空間における位置までの距離分移動したと考えられる。このため、超音波プローブ101が、左方向に対応する方向に移動していると考えられる。しかしながら、超音波プローブ101の移動速度の程度は不明である。
【0140】
そこで、以下に説明する方法で、移動速度情報生成機能186は、移動速度及び移動速度情報を算出する。
【0141】
図24は、第2の実施形態に係る移動速度情報生成機能186が実行する処理の一例を説明するための図である。例えば、
図24に示すように、移動速度情報生成機能186は、相関係数r12に対応する領域52_1と領域51_2との超音波画像データの画像空間における距離d1を算出する。例えば、移動速度情報生成機能186は、領域52_1の中心52_1aと領域51_2の中心51_2aとの距離d1を算出する。そして、移動速度情報生成機能186は、距離d1を実空間における距離に変換する。
【0142】
同様に、移動速度情報生成機能186は、相関係数r23に対応する領域52_2と領域51_3との超音波画像データの画像空間における距離を算出し、算出した距離を実空間における距離に変換する。また、移動速度情報生成機能186は、相関係数r34に対応する領域52_3と領域51_4との超音波画像データの画像空間における距離を算出し、算出した距離を実空間における距離に変換する。また、移動速度情報生成機能186は、相関係数r45に対応する領域52_4と領域51_5との超音波画像データの画像空間における距離を算出し、算出した距離を実空間における距離に変換する。このように、移動速度情報生成機能186は、4つの相関係数r12,r23,r34,r45に対応する4つの距離(実空間における距離)を算出する。
【0143】
そして、移動速度情報生成機能186は、算出した4つの距離(実空間における距離)の平均値を、(N-3)フレームからNフレームにかけて、実空間において、超音波プローブ101が移動した距離d2として算出する。
【0144】
そして、移動速度情報生成機能186は、距離d2に基づいて、移動速度情報を生成する。
【0145】
以下、移動速度情報の生成方法の具体例について説明する。例えば、移動速度情報生成機能186は、(N-3)フレームからNフレームにかけて、超音波プローブ101の移動に要した時間t1を特定する。具体的には、移動速度情報生成機能186は、(N-3)フレーム目の超音波画像データが生成されたタイミングと、Nフレーム目の超音波画像データが生成されたタイミングとの時間差を時間t1として特定する。
【0146】
そして、移動速度情報生成機能186は、距離d2を時間t1で除することにより、超音波プローブ101の移動速度v1(d2/t1)を算出する。
【0147】
そして、移動速度情報生成機能186は、移動速度v1が閾値T3よりも大きいか否かを判定する。移動速度v1が閾値T3よりも大きいと判定された場合には、移動速度情報生成機能186は、移動速度v1が比較的速いため、赤色の枠25aを示す情報を生成する。そして、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上に赤色の枠25aを表示させる。
【0148】
また、移動速度v1が閾値T3よりも大きいと判定された場合には、移動速度情報生成機能186は、文字列「fast」26aを移動速度情報として生成する。そして、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像の左側に、文字列「fast」26aを表示させる。
【0149】
一方、移動速度v1が閾値T3以下であると判定された場合、移動速度情報生成機能186は、移動速度v1が閾値T4未満であるか否かを判定する。閾値T4は、閾値T3よりも小さい。移動速度v1が閾値T4未満であると判定された場合には、移動速度情報生成機能186は、移動速度v1が比較的遅いため、黄色の枠25bを示す情報を生成する。そして、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上に黄色の枠25bを表示させる。
【0150】
また、移動速度v1が閾値T4未満であると判定された場合には、移動速度情報生成機能186は、文字列「slow」26bを移動速度情報として生成する。そして、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像の左側に、文字列「slow」26bを表示させる。
【0151】
また、移動速度v1が閾値T4以上であると判定された場合、すなわち、移動速度v1が閾値T4以上で閾値T3以下である場合には、移動速度情報生成機能186は、移動速度v1が遅くとも速くともない適切な速さであるため、デフォルトの色の枠25cを示す情報を生成する。そして、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上にデフォルトの色の枠25cを表示させる。
【0152】
図25は、第2の実施形態において算出された25個の相関係数の他の例を示す図である。
図25の例に示す場合には、25個の相関係数のうち、2つの相関係数r41,r52が、閾値T2よりも大きい。また、残りの23個の相関係数が、0.0以上で閾値T1未満である。
【0153】
図25の例に示す場合には、(N-3)フレームからNフレームにかけて、超音波プローブ101が、例えば、領域51_1に相当する実空間における位置から領域52_4に相当する実空間における位置に向かう方向に、領域51_1に相当する実空間における位置から領域52_4に相当する実空間における位置までの距離分移動したと考えられる。このため、超音波プローブ101が、右方向に対応する方向に移動していると考えられる。しかしながら、超音波プローブ101の移動速度の程度は不明である。
【0154】
そこで、移動速度情報生成機能186は、先の
図23及び
図24に示す場合と同様に、移動速度及び移動速度情報を算出する。また、表示制御機能185は、先の
図23及び
図24に示す場合と同様に、移動速度情報をディスプレイ103に表示させる。
【0155】
以上、第2の実施形態に係る超音波診断装置1について説明した。第2の実施形態に係る超音波診断装置1によれば、第1の実施形態と同様に、超音波プローブ101の移動速度を検出するための磁気センサ等の検出器を用いずに、操作者に、超音波プローブ101の移動速度を把握させることができる。
【0156】
(第2の実施形態の変形例1)
上述した第2の実施形態では、移動速度情報生成機能186が、移動速度v1を算出し、算出した移動速度v1に基づいて、移動速度情報を算出する場合について説明した。しかしながら、移動速度情報生成機能186が、移動速度v1を算出せずに、移動速度情報を算出してもよい。そこで、このような変形例を第2の実施形態の変形例1として説明する。
【0157】
例えば、
図23の例に示す場合には、(N-3)フレームからNフレームにかけて、超音波プローブ101が、例えば、領域51_2に相当する実空間における位置から領域52_1に相当する実空間における位置までの距離分移動したと考えられる。すなわち、超音波プローブ101が、領域1つ分移動したと考えられる。また、
図25の例に示す場合には、(N-3)フレームからNフレームにかけて、超音波プローブ101が、例えば、領域51_1に相当する実空間における位置から領域52_4に相当する実空間における位置までの距離分移動したと考えられる。すなわち、超音波プローブ101が、領域3つ分移動したと考えられる。
【0158】
そこで、移動速度情報生成機能186は、(N-3)フレームからNフレームにかけて、超音波プローブ101が移動した領域の個数に応じて、移動速度情報を生成する。例えば、移動速度情報生成機能186は、(N-3)フレームからNフレームにかけて、超音波プローブ101が移動した領域の個数が、閾値T5(例えば、3)以上であるか否かを判定する。
【0159】
超音波プローブ101が移動した領域の個数が、閾値T5以上であると判定された場合には、超音波プローブ101の移動速度が比較的速いと考えられる。このため、この場合には、移動速度情報生成機能186は、赤色の枠25aを示す情報を生成する。また、移動速度情報生成機能186は、文字列「fast」26aを生成する。このように、移動速度情報生成機能186は、算出された25個の相関係数に基づいて、移動速度情報を生成する。そして、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上に赤色の枠25aを表示させる。また、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像の左側に、文字列「fast」26aを表示させる。
【0160】
一方、超音波プローブ101が移動した領域の個数が、閾値T5未満であると判定された場合には、移動速度情報生成機能186は、超音波プローブ101が移動した領域の個数が、閾値T6(例えば、2)未満であるか否かを判定する。閾値T6は、閾値T5よりも小さい。超音波プローブ101が移動した領域の個数が、閾値T6未満であると判定された場合には、超音波プローブ101の移動速度が比較的遅いと考えられる。このため、この場合には、移動速度情報生成機能186は、黄色の枠25bを示す情報を生成する。また、移動速度情報生成機能186は、文字列「slow」26bを生成する。このように、移動速度情報生成機能186は、算出された25個の相関係数に基づいて、移動速度情報を生成する。そして、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上に黄色の枠25bを表示させる。また、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像の左側に、文字列「slow」26bを表示させる。
【0161】
また、超音波プローブ101が移動した領域の個数が、閾値T6以上であると判定された場合、すなわち、超音波プローブ101が移動した領域の個数が閾値T6以上で閾値T5未満である場合には、超音波プローブ101の移動速度が遅くとも速くともない適切な速さであると考えられる。このため、この場合には、移動速度情報生成機能186は、デフォルトの色の枠25cを示す情報を生成する。このように、移動速度情報生成機能186は、算出された25個の相関係数に基づいて、移動速度情報を生成する。そして、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上にデフォルトの色の枠25cを表示させる。
【0162】
以上、第2の実施形態の変形例1について説明した。第2の実施形態の変形例1では、超音波診断装置1は、移動速度v1を算出せずに、移動速度情報を算出する。したがって、第2の実施形態の変形例1によれば、移動速度情報を算出する際の処理負荷を低減することができる。また、第2の実施形態の変形例1によれば、第1の実施形態と同様に、超音波プローブ101の移動速度を検出するための磁気センサ等の検出器を用いずに、操作者に、超音波プローブ101の移動速度を把握させることができる。
【0163】
(第2の実施形態の変形例2)
上述した第2の実施形態では、移動速度情報生成機能186が、複数の領域51_1~51_mのうちの1つの領域と、複数の領域52_1~52_mのうちの1つの領域との全ての組について、相関係数を算出する場合について説明した。しかしながら、移動速度情報生成機能186は、複数の領域51_1~51_mのうちの1つの領域と、複数の領域52_1~52_mのうちの1つの領域との全ての組のうちの少なくとも1つ以上の組について、相関係数を算出すればよい。そして、移動速度情報生成機能186が、算出された相関係数に基づいて、移動速度情報を生成してもよい。そこで、このような変形例を第2の実施形態の変形例2として説明する。
【0164】
ここで、目的に応じて、上述した全ての組のうち、どの組の相関係数を判断材料に用いるかを適宜変更することが考えられる。例えば、第2の実施形態の変形例2では、操作者が、超音波プローブ101が静止している状態であるか否かのみを把握したいという目的がある場合、この目的を示す情報(目的情報)を、入力装置102を介して装置本体100に入力する。そして、装置本体100に目的情報が入力されると、移動速度情報生成機能186は、目的情報に応じて、上述した全ての組のうち、どの組の相関係数を算出するかを選択する。例えば、移動速度情報生成機能186は、目的情報が上述した目的を示す場合、1つの領域51と、この領域51の位置と同一の位置の1つの領域52との1つの組の1つの相関係数を算出することを選択する。そして、移動速度情報生成機能186は、選択結果に応じて、1つの領域51と、この領域51の位置と同一の位置の1つの領域52との1つの組の1つの相関係数を算出する。以下、移動速度情報生成機能186が、1つの組の1つの相関係数を算出する場合について説明する。
【0165】
そして、移動速度情報生成機能186は、算出した1つの相関係数が、閾値T2よりも大きいか否かを判定する。1つの相関係数が閾値T2よりも大きい場合、移動速度情報生成機能186は、黄色の枠25bを示す情報を生成する。また、1つの相関係数が閾値T2よりも大きい場合、移動速度情報生成機能186は、文字列「slow」26bを生成する。このように、移動速度情報生成機能186は、算出された1つの相関係数に基づいて、移動速度情報を生成する。そして、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像上に黄色の枠25bを表示させる。また、表示制御機能185は、ディスプレイ103に表示されたNフレーム目の超音波画像の左側に、文字列「slow」26bを表示させる。
【0166】
以上、第2の実施形態の変形例2について説明した。第2の実施形態の変形例2によれば、移動速度情報生成機能186は、目的情報に応じて、複数の領域51_1~51_mのうちの1つの領域と、複数の領域52_1~52_mのうちの1つの領域との全ての組のうちの少なくとも1つ以上の組について、相関係数を算出する。したがって、第2の実施形態の変形例2によれば、目的情報が示す目的に応じて、不必要に相関係数を算出してしまう事態の発生を抑制することができる。
【0167】
また、第2の実施形態の変形例2では、超音波診断装置1は、移動速度v1を算出せずに、移動速度情報を算出する。したがって、第2の実施形態の変形例2によれば、移動速度情報を算出する際の処理負荷を低減することができる。また、第2の実施形態の変形例1によれば、第1の実施形態と同様に、超音波プローブ101の移動速度を検出するための磁気センサ等の検出器を用いずに、操作者に、超音波プローブ101の移動速度を把握させることができる。
【0168】
(第3の実施形態)
なお、上述した各実施形態では、超音波診断装置1が、超音波走査に対してリアルタイムでCAD処理を行って特徴部位を検出し、検出された特徴部位及び移動速度情報をリアルタイムで表示する場合について説明した。しかしながら、医用画像処理装置が、リアルタイムではなく、超音波走査が行われた後に同様の処理を行ってよい。そこで、このような実施形態を第3の実施形態として説明する。
【0169】
図26は、第3の実施形態に係る医用画像処理装置200の構成例を示す図である。
図26に例示するように、医用画像処理装置200は、入力装置201と、ディスプレイ202と、記憶回路210と、処理回路220とを備える。入力装置201、ディスプレイ202、記憶回路210、処理回路220は、相互に通信可能に接続される。医用画像処理装置200は、解析装置の一例である。
【0170】
入力装置201は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等により実現される。入力装置201は、医用画像処理装置200の操作者からの各種設定要求を受け付ける。入力装置201は、受け付けた各種設定要求を処理回路220へ出力する。例えば、入力装置201は、医用画像処理装置200の操作者からCAD処理を実行するための指示(実行指示)を受け付け、受け付けた実行指示を処理回路220に出力する。また、操作者は、入力装置201を介して、CAD処理において、特徴部位の検索範囲であるROIを超音波画像に設定することもできる。
【0171】
ディスプレイ202は、例えば、医用画像を表示したり、操作者が入力装置201を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0172】
記憶回路210は、GUIを表示するための各種のプログラムや、当該プログラムによって用いられる情報を記憶する。また、記憶回路210は、超音波診断装置1によって生成された時系列に沿った複数の超音波画像データを記憶する。
【0173】
処理回路220は、医用画像処理装置200の処理全体を制御する。処理回路220は、例えば、プロセッサにより実現される。例えば、
図26に示すように、処理回路220は、制御機能221、取得機能222、検索機能223、マーカ情報生成機能224、表示制御機能225及び移動速度情報生成機能226の各処理機能を有する。ここで、例えば、
図26に示す処理回路220の構成要素である制御機能221、取得機能222、検索機能223、マーカ情報生成機能224、表示制御機能225及び移動速度情報生成機能226の各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路210に記録されている。処理回路220は、各プログラムを記憶回路210から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路220は、
図26の処理回路220内に示された各機能を有することとなる。
【0174】
医用画像処理装置200は、例えば、超音波診断装置1により生成された時系列に沿った複数の超音波画像データを取得する。そして、医用画像処理装置200は、超音波画像データに対して、第1の実施形態又は第2の実施形態に係る超音波診断装置1と同様の処理を行って、ディスプレイ202に、超音波画像、検出された特徴部位、及び、移動速度情報を表示させる。
【0175】
制御機能221は、医用画像処理装置200の処理全体を制御する。取得機能222は、上述した取得機能182と同様の機能を有する。検索機能223は、上述した検索機能183と同様の機能を有する。マーカ情報生成機能224は、上述したマーカ情報生成機能184と同様の機能を実行する。表示制御機能225は、上述した表示制御機能185と同様の機能を実行する。
【0176】
以上、第3の実施形態に係る医用画像処理装置200について説明した。第3の実施形態に係る医用画像処理装置200によれば、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様に、超音波プローブ101の移動速度を検出するための磁気センサ等の検出器を用いずに、操作者に、超音波プローブ101の移動速度を把握させることができる。
【0177】
以上述べた少なくとも1つの実施形態又は変形例によれば、超音波プローブ101の移動速度を検出するための磁気センサ等の検出器を用いずに、操作者に、超音波プローブ101の移動速度を把握させることができる。
【0178】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0179】
1 超音波診断装置
185 表示制御機能
186 移動速度情報生成機能