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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】積層シートおよび電子部品収容容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20240508BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B32B27/18 D
B65D65/40 D
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019133767
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021016981
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 康宏
(72)【発明者】
【氏名】永富 風花
(72)【発明者】
【氏名】當銘 勇人
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-154277(JP,A)
【文献】特開平03-178435(JP,A)
【文献】特開2018-012263(JP,A)
【文献】特開2004-090609(JP,A)
【文献】特開2005-028771(JP,A)
【文献】特開2003-080642(JP,A)
【文献】特開2012-214252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品収容容器用の積層シートであって、
前記積層シートは、第一の最外層と、第二の最外層と、を有し、
前記第一の最外層は、第一の高分子型帯電防止剤を含み、
前記第一の最外層は、前記第一の高分子型帯電防止剤を混錬した第一の樹脂組成物で形成され、
前記第一の樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂とエチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸との混合樹脂をみ、
前記第一の最外層中の前記第一の高分子型帯電防止剤の含有量が、10質量%以上30質量%以下であり、
前記第一の最外層中の前記ポリプロピレン系樹脂の含有量が、30質量%以上70質量%以下であり、
前記第一の最外層中の前記ポリプロピレン系樹脂と前記エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸との合計含有量が、70質量%以上90質量%以下である、積層シート。
【請求項2】
前記第二の最外層は、第二の高分子型帯電防止剤を含む、
請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記第二の最外層中の前記第二の高分子型帯電防止剤の含有量が、10質量%以上30質量%以下である、
請求項に記載の積層シート。
【請求項4】
前記第一の高分子型帯電防止剤および前記第二の高分子型帯電防止剤の少なくとも一方が、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤である、
請求項2または請求項3に記載の積層シート。
【請求項5】
前記第二の最外層は、前記第二の高分子型帯電防止剤を混錬した第二の樹脂組成物で形成される、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項6】
前記第二の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含む、
請求項5に記載の積層シート。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、およびエチレン-アクリル系樹脂からなる群から選ばれる2種類以上である、
請求項6に記載の積層シート。
【請求項8】
前記第二の樹脂組成物は、前記ポリプロピレン系樹脂を含む、
請求項7に記載の積層シート。
【請求項9】
前記第二の最外層中の前記ポリプロピレン系樹脂の含有量が、30質量%以上70質量%以下である、
請求項8に記載の積層シート。
【請求項10】
前記積層シートは、前記第一の最外層と前記第二の最外層との間に酸素バリア層を有する、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項11】
前記酸素バリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む第三の樹脂組成物で形成される、
請求項10に記載の積層シート。
【請求項12】
前記積層シートは、前記第一の最外層と前記第二の最外層との間に1以上の中間層を有し、前記中間層は、ポリオレフィン系樹脂および無機充填材を含む第四の樹脂組成物で形成される層を含む、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項13】
前記第四の樹脂組成物は、さらに水素添加石油樹脂を含む、
請求項12に記載の積層シート。
【請求項14】
前記第四の樹脂組成物で形成される層中の前記水素添加石油樹脂の含有量が、20質量%以下である、
請求項13に記載の積層シート。
【請求項15】
前記第四の樹脂組成物は、さらに無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を含む、
請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項16】
前記無機充填材は、水酸化マグネシウムまたはタルクである、
請求項12から請求項15のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項17】
前記第四の樹脂組成物で形成される層中の前記無機充填材の含有量が、40質量%以下である、
請求項12から請求項16のいずれか一項に記載の積層シート。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか一項に記載の積層シートを成形してなる、電子部品収容容器。
【請求項19】
前記第一の最外層が、前記電子部品収容容器の内表面を形成する、
請求項18に記載の電子部品収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シートおよび電子部品収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電子部品(例えば、集積回路(IC)、コンデンサ、および半導体等)は、帯電した静電気のスパーク等によって破壊され易いために、キャリヤーテープあるいはキャリヤートレイ等と称される電子部品収容容器に封入されて、電子部品包装用のカバーテープ等によりシーリングされた上で、保管および輸送等が為されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-214252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子部品の小型化および高機能化が進むにつれ、輸送中および工程中でのわずかな静電気に起因する電子部品の破壊が問題となっており、瞬時に発生する帯電に対して、より高い帯電防止性能が発揮される電子部品収容容器の要求が高まっている。
【0005】
本発明の目的は、帯電防止性能に優れた積層シートを提供することである。
本発明の別の目的は、当該積層シートを成形してなる電子部品収容容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、電子部品収容容器用の積層シートであって、前記積層シートは、第一の最外層と、第二の最外層と、を有し、前記第一の最外層は、第一の高分子型帯電防止剤を含む、積層シートが提供される。
【0007】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第一の最外層中の前記第一の高分子型帯電防止剤の含有量を、10質量%以上30質量%以下としてもよい。
【0008】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第一の最外層は、前記第一の高分子型帯電防止剤を混錬した第一の樹脂組成物で形成されてもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第二の最外層は、第二の高分子型帯電防止剤を含んでもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第二の最外層中の前記第二の高分子型帯電防止剤の含有量を、10質量%以上30質量%以下としてもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第二の最外層は、前記第二の高分子型帯電防止剤を混錬した第二の樹脂組成物で形成されてもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第一の高分子型帯電防止剤および前記第二の高分子型帯電防止剤の少なくとも一方が、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤であってもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記積層シートは、前記第一の最外層と前記第二の最外層との間に酸素バリア層を有してもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記酸素バリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を含む第三の樹脂組成物で形成されてもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第一の樹脂組成物および前記第二の樹脂組成物の少なくとも一方は、ポリオレフィン系樹脂を含んでもよい。
【0016】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、およびエチレン-アクリル系樹脂からなる群から選ばれる2種類以上であってもよい。
【0017】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第一の樹脂組成物および前記第二の樹脂組成物の少なくとも一方は、前記ポリプロピレン系樹脂を含んでいてもよい。
【0018】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第一の樹脂組成物が前記ポリプロピレン系樹脂を含む場合の、前記第一の最外層中の前記ポリプロピレン系樹脂の含有量を、30質量%以上70質量%以下としてもよく、前記第二の樹脂組成物が前記ポリプロピレン系樹脂を含む場合の、前記第二の最外層中の前記ポリプロピレン系樹脂の含有量を、30質量%以上70質量%以下としてもよい。
【0019】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記積層シートは、前記第一の最外層と前記第二の最外層との間に1以上の中間層を有し、前記中間層は、ポリオレフィン系樹脂および無機充填材を含む第四の樹脂組成物で形成される層を含んでもよい。
【0020】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第四の樹脂組成物は、さらに水素添加石油樹脂を含んでもよい。
【0021】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第四の樹脂組成物で形成される層中の水素添加石油樹脂の含有量を、20質量%以下としてもよい。
【0022】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第四の樹脂組成物は、さらに無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を含んでもよい。
【0023】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記無機充填材は、水酸化マグネシウムまたはタルクであってもよい。
【0024】
本発明の一態様に係る積層シートにおいて、前記第四の樹脂組成物で形成される層中の無機充填材の含有量を、40質量%以下としてもよい。
【0025】
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る積層シートを成形してなる、電子部品収容容器が提供される。
【0026】
本発明の一態様に係る電子部品収容容器において、前記第一の最外層が、前記電子部品収容容器の内表面を形成してもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、帯電防止性能に優れた積層シートを提供できる。
本発明の別の一態様によれば、当該積層シートを成形してなる電子部品収容容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る積層シートの断面概略図である。
図2】本発明の別の一実施形態に係る積層シートの断面概略図である。
図3】本発明のさらに別の一実施形態に係る積層シートの断面概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係る電子部品収容容器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0030】
〔第1実施形態〕
[積層シート]
第1実施形態においては、本発明の一態様に係る積層シートについて説明する。
図1は、本実施形態に係る積層シート10の断面概略図である。図1に示されるように、積層シート10は、第一の最外層11と、第二の最外層12と、を有する。
電子部品収容容器を構成するのに適した厚さとする観点から、積層シート10の厚さは、具体的には例えば、0.3mm以上1.2mm以下であるが、この例には限定されない。
【0031】
(第一の最外層)
第一の最外層11は、第一の高分子型帯電防止剤を含む。
ここで、本明細書における「高分子型帯電防止剤」とは、当該物質が含まれる層に帯電防止性能を付与し、かつ高分子量のポリマーをさす。
第一の最外層11が、このような帯電防止剤を第一の高分子型帯電防止剤として含むことで、積層シート10は、電子部品収容容器用として好適な帯電防止性能を有する。
【0032】
第一の最外層11中の第一の高分子型帯電防止剤の含有量は、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。第一の最外層11中の第一の高分子型帯電防止剤の含有量が10質量%以上であれば、積層シート10に効果的に帯電防止性能を付与することができる。また、第一の最外層11中の第一の高分子型帯電防止剤の含有量が30質量%以下であれば、コストを抑えながら、積層シート10における良好な帯電防止性能を維持することができる。
第一の最外層11中の第一の高分子型帯電防止剤の含有量は、10質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。第一の最外層11中の第一の高分子型帯電防止剤の含有量が25質量%以下であれば、コストを抑えながら、良好なシート外観を得ることができる。
【0033】
第一の高分子型帯電防止剤としては、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤、あるいは、親水性セグメントを有し、当該親水性セグメントの吸湿性によって制電性が付与された高分子が好ましい。このような高分子型帯電防止剤としては、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体等の親油性ポリマー/親水性ポリマーブロック共重合体、およびポリエーテルエステルアミド等を挙げることができる。帯電防止性能向上の観点から、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤が好ましく、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体がより好ましい。
シートの外観不良、シール面の外観不良、および毛羽立ちを抑えるため、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点が90℃以上150℃以下であるポリエーテル系高分子型帯電防止剤が好ましい。また、電子部品収容容器として用いる際の蓋部材との剥離性に優れるため、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点が90℃以上135℃以下であるポリエーテル系高分子型帯電防止剤がより好ましい。ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点が110℃以上135℃以下であるとより好ましい。
ポリエーテル系高分子型帯電防止剤としては、例えば、ペレクトロン PVH、ペレクトロン PVL、およびペレクトロン LMP-FS(いずれも、三洋化成工業株式会社製)、並びにアデカスタブ AS-301E(株式会社ADEKA製)等を挙げることができる。
【0034】
第一の最外層11は、第一の高分子型帯電防止剤および樹脂を含む第一の樹脂組成物で形成される。第一の樹脂組成物は、第一の高分子型帯電防止剤と樹脂とを混錬した樹脂組成物であることが好ましい。第一の高分子型帯電防止剤と樹脂とを混錬した第一の樹脂組成物により第一の最外層11が形成されることで、第一の最外層11においてブリードが生じることなく、より高い帯電防止性能を積層シート10に付与することができる。
【0035】
第一の樹脂組成物に含まれる樹脂としては、例えば、包材に使われる一般的な樹脂等を挙げることができる。具体的には、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ナイロン樹脂(Ny)、およびポリスチレン樹脂(PS)等を挙げることができる。第一の樹脂組成物に含まれる樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂であれば、高分子型帯電防止剤と併用した場合にも、積層シート10の製膜性に優れる。また、積層シート10を電子部品収容容器に成形した場合にも、好適な易開封性および密封性を維持できる。さらに、ポリオレフィン系樹脂は、比重が低いため、防湿性にも優れる電子部品収容容器を提供できる。
【0036】
第一の樹脂組成物には、第一の高分子型帯電防止剤および上述の樹脂の他にも、添加剤等が配合されていてもよい。
【0037】
第一の最外層11の厚さは、10μm以上であることが好ましい。第一の最外層11の厚さが10μm以上であれば、積層シート10を成形してなる電子部品収容容器において、開封の際に層間剥離を起こす恐れがなく、安定した開封性が得られる。一方、厚みの上限については、特に限定はない。実用的な範囲を考慮すると、200μm以下であることが好ましい。
【0038】
(第二の最外層)
第二の最外層12は、積層シート10における第二の最外層12の用途等に応じた層が採用される。
例えば、第二の最外層12は、基材層であってもよい。
第二の最外層12が基材層である場合、その材質は特に限定されない。本実施形態においては、基材層としての第二の最外層12は、樹脂製であることが好ましい。基材層としての第二の最外層12が樹脂製である場合、当該樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ナイロン系樹脂、およびポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0039】
また、例えば、第二の最外層12は、第一の最外層11と同様に、第二の高分子型帯電防止剤を含んでいてもよい。例えば、積層シート10を電子部品収容容器に成形した際に、当該容器の内側および外側の両方において帯電を防止することが要求される場合等には、第二の最外層12が第二の高分子型帯電防止剤を含んでいることが有効である。
【0040】
第二の最外層12が第二の高分子型帯電防止剤を含む場合、第二の最外層12中の第二の高分子型帯電防止剤の含有量は、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。第二の最外層12中の第二の高分子型帯電防止剤の含有量が10質量%以上であれば、積層シート10に効果的に帯電防止性能を付与することができる。また、第二の最外層12中の第二の高分子型帯電防止剤の含有量が30質量%以下であれば、積層シート10における良好な帯電防止性能を維持しつつ、コストを抑えることができる。
第二の最外層12中の第二の高分子型帯電防止剤の含有量は、10質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。第二の最外層12中の第二の高分子型帯電防止剤の含有量が25質量%以下であれば、コストを抑えながら、良好なシート外観を得ることができる。
【0041】
第二の高分子型帯電防止剤の例としては、例えば、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤、あるいは、親水性セグメントを有し、当該親水性セグメントの吸湿性によって制電性が付与された高分子が好ましい。このような高分子型帯電防止剤としては、ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体等の親油性/親水性ポリマーブロック共重合体、およびポリエーテルエステルアミド等を挙げることができる。帯電防止性能向上の観点から、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤が好ましく、ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体がより好ましい。
シートの外観不良、シール面の外観不良、および毛羽立ちを抑えるため、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点が90℃以上150℃以下であるポリエーテル系高分子型帯電防止剤が好ましい。また、電子部品収容容器として用いる際の蓋部材との剥離性に優れるため、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点が90℃以上135℃以下であるポリエーテル系高分子型帯電防止剤がより好ましい。ポリエーテル/ポリオレフィン共重合体は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点が110℃以上135℃以下であるとより好ましい。
第二の高分子型帯電防止剤におけるポリエーテル系高分子型帯電防止剤の例としては、第一の高分子型帯電防止剤におけるポリエーテル系高分子型帯電防止剤と同様の例を挙げることができる。
【0042】
第二の最外層12が第二の高分子型帯電防止剤を含む場合、第二の最外層12は、第二の高分子型帯電防止剤および樹脂を含む第二の樹脂組成物により形成される。第二の樹脂組成物は、第二の高分子型帯電防止剤と樹脂とを混錬した樹脂組成物であることが好ましい。第二の高分子型帯電防止剤と樹脂とを混錬した第二の樹脂組成物により第二の最外層12が形成されることで、第二の最外層12においてブリードが生じることなく、より高い帯電防止性能を積層シート10に付与することができる。
【0043】
第二の樹脂組成物に含まれる樹脂としては、例えば、包材に使われる一般的な樹脂等を挙げることができる。具体的には、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ナイロン樹脂(Ny)、およびポリスチレン樹脂(PS)等を挙げることができる。第二の樹脂組成物に含まれる樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂であれば、高分子型帯電防止剤と併用した場合にも、積層シート10の製膜性に優れる。また、積層シート10を電子部品収容容器に成形した場合にも、好適な易開封性および密封性を維持できる。さらに、ポリオレフィン系樹脂は、比重が低いため、防湿性にも優れる電子部品収容容器を提供できる。
【0044】
第二の樹脂組成物には、第二の高分子型帯電防止剤および上述の樹脂の他にも、添加剤等が配合されていてもよい。
【0045】
第二の最外層12の厚さは、特に限定されない。第二の最外層12の厚さは、第二の最外層12が担う役割等に応じて適宜設定される。例えば、第二の最外層12は、10μm以上1000μm以下であり、好ましくは、100μm以上300μm以下である。
【0046】
本実施形態において、第二の最外層12が第二の高分子型帯電防止剤を含む場合、第一の高分子型帯電防止剤と第二の高分子型帯電防止剤とは、同じであっても異なっていてもよい。帯電防止性能を向上させる観点から、第一の高分子型帯電防止剤および第二の高分子型帯電防止剤の少なくとも一方が、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤であることが好ましく、第一の高分子型帯電防止剤および第二の高分子型帯電防止剤の両方が、ポリエーテル系高分子型帯電防止剤であることがより好ましい。
【0047】
本実施形態において、第一の最外層11が第一の高分子型帯電防止剤を混錬した第一の樹脂組成物で形成されるか、第二の最外層12が第二の高分子型帯電防止剤を混錬した第二の樹脂組成物で形成されるか、あるいはその両方である場合、第一の樹脂組成物および第二の樹脂組成物の少なくとも一方は、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、第一の樹脂組成物および第二の樹脂組成物の両方が、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂であれば、高分子型帯電防止剤と併用した場合にも、積層シート10の製膜性に優れる。また、積層シート10を電子部品収容容器に成形した場合にも、好適な易開封性および密封性を維持できる。さらに、ポリオレフィン系樹脂は、比重が低いため、防湿性にも優れる電子部品収容容器を提供できる。
【0048】
本実施形態において、第一の樹脂組成物および第二の樹脂組成物の少なくとも一方に含まれるポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、およびエチレン-アクリル系樹脂からなる群から選ばれる2種類以上であることが好ましい。
【0049】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、およびブロックポリプロピレン(BPP)等を挙げることができる。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)等を挙げることができる。
エチレン-アクリル系樹脂としては、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、およびエチレン-メタクリル酸エステル共重合体等を挙げることができる。エチレン-アクリル系樹脂の具体例としては、レクスパールET220X(日本ポリエチレン株式会社製)等を挙げることができる。
【0050】
本実施形態において、第一の樹脂組成物および第二の樹脂組成物の少なくとも一方は、ポリプロピレン系樹脂を含むことが好ましく、第一の樹脂組成物および第二の樹脂組成物の少なくとも一方は、ポリプロピレン系樹脂とエチレン-アクリル系樹脂との混合樹脂、またはポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との混合樹脂を含むことがより好ましい。これらの混合樹脂により、特殊な蓋部材を用いなくとも易開封性および密封性を兼備した電子部品収容容器を提供することができる。
【0051】
第一の樹脂組成物がポリプロピレン系樹脂を含む場合の、第一の最外層11中のポリプロピレン系樹脂の含有量が、30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
また、第二の樹脂組成物がポリプロピレン系樹脂を含む場合の、第二の最外層12中のポリプロピレン系樹脂の含有量が、30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
このように、ポリプロピレン系樹脂の含有量が30質量%以上であれば、積層シート10を電子部品収容容器とした際に、蓋部材との接着が強く、密着性および耐熱性が良好となる。また、ポリプロピレン系樹脂の含有量が70質量%以下であれば、適度な密着性を保つことができ、蓋部材を剥離する際の蓋部材と電子部品収容容器との開封性も良好となる。
【0052】
積層シート10を製造する方法としては、例えば、第一の高分子型帯電防止剤を含む第一の樹脂組成物と第二の高分子型帯電防止剤を含む第二の樹脂組成物とをそれぞれ調製し、当該第一の樹脂組成物および第二の樹脂組成物を共押出する方法、予め製造した第二の最外層12の上に、第一の最外層11の材料(第一の高分子型帯電防止剤を含む第一の樹脂組成物)を押し出す方法、第一の最外層11に対応するフィルムと第二の最外層12に対応するフィルムとを貼り合わせて積層させる方法、並びに予め第一の最外層11の材料を含むコーティング液を調製し、当該コーティング液を予め製造した第二の最外層12の上にコーティングする方法等が挙げられる。
【0053】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る積層シート10は、第一の最外層11と、第二の最外層12と、を有し、第一の最外層11は、第一の高分子型帯電防止剤を含む。そのため、積層シート10は、電子部品収容容器用としての帯電防止性能に優れる。
【0054】
〔第2実施形態〕
[積層シート]
第2実施形態においては、本発明の別の一態様に係る積層シートについて説明する。
図2は、本実施形態に係る積層シート20の断面概略図である。図2に示されるように、積層シート20は、第一の最外層11と、第二の最外層12との間に酸素バリア層13を有する。
電子部品収容容器を構成するのに適した厚さとする観点から、積層シート20の厚さは、具体的には例えば、0.3mm以上1.2mm以下であるが、この例には限定されない。
【0055】
(酸素バリア層)
酸素バリア層13には、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、エチレン-ビニルアルコール系樹脂、およびポリ塩化ビニリデン等の樹脂系の材料を使用することができる。
酸素バリア層13は、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)を含む第三の樹脂組成物で形成されることが好ましい。EVOHを含む酸素バリア層13によって、高い酸素バリア性が実現される。
【0056】
酸素バリア層13の厚さTOBは、酸素バリア性およびコストの両方の観点から、積層シート20全体の厚さTに対する比率[(TOB/T)×100]を2%以上15%以下とすることが好ましい。
【0057】
積層シート20を製造する方法としては、例えば、酸素バリア層13の一方の面に第一の樹脂組成物を押し出して第一の最外層11を積層し、酸素バリア層13の他方の面に第二の樹脂組成物を押し出して第二の最外層12を積層する方法、第二の最外層12上に酸素バリア層13の材料および第一の樹脂組成物を共押出して、第二の最外層12上に酸素バリア層13および第一の最外層11を積層する方法、並びに第一の樹脂組成物、酸素バリア層13の材料、および第二の樹脂組成物を一度に押し出して、第一の最外層11、酸素バリア層13、および第二の最外層12の3層を同時に積層する方法等が挙げられる。
【0058】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る積層シート20は、酸素バリア層13を有する。そのため、積層シート20は、電子部品収容容器用としての優れた帯電防止性能に加え、高い酸素バリア性を有する。
【0059】
〔第3実施形態〕
[積層シート]
第3実施形態においては、本発明のさらに別の一態様に係る積層シートについて説明する。
図3は、本実施形態に係る積層シート30の断面概略図である。積層シート30は、第一の最外層11と、第二の最外層12と、酸素バリア層13とを有する。
さらに、積層シート30は、第一の最外層11と第二の最外層12との間に、1以上の中間層14を有する。
電子部品収容容器を構成するのに適した厚さとする観点から、積層シート30の厚さは、具体的には例えば、0.3mm以上1.2mm以下であるが、この例には限定されない。
【0060】
(中間層)
積層シート30は、第一の最外層11と酸素バリア層13との間に、中間層14として、基材層140、水蒸気バリア層141、および接着層142を含む。また、積層シート30は、第二の最外層12と酸素バリア層13との間に、中間層14として、接着層143および水蒸気バリア層144を含む。積層シート30において、第二の最外層12、水蒸気バリア層144、接着層143、酸素バリア層13、接着層142、水蒸気バリア層141、基材層140、および第一の最外層11はこの順に積層されており、各層は互いに接している。
【0061】
中間層14としての基材層140は、例えば、第二の最外層12と同様の構成とすることができる。
【0062】
中間層14としての水蒸気バリア層141、144は、ポリオレフィン系樹脂および無機充填材を含む第四の樹脂組成物で形成されることが好ましい。水蒸気バリア層141、144を形成する第四の樹脂組成物がポリオレフィン系樹脂および無機充填材を含むことで、水蒸気バリア性が向上する。
【0063】
第四の樹脂組成物に含まれるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、および環状ポリオレフィン等が挙げられる。水蒸気バリア層141、144を形成する第四の樹脂組成物がポリプロピレンを含む場合、例えば、プロピレン連鎖部分のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.92以上のポリプロピレン単独重合体であるホモポリプロピレンとすることで、熱成形性等の特性を維持しつつ、より高い水蒸気バリア性および酸素バリア性を実現することができる。
【0064】
本実施形態における無機充填材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、炭化ケイ素、シリカ、石英粉末、ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウム等)、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、タルク、マイカ、カオリン、クレー、ケイ藻土、およびウォラストナイト等)、金属酸化物(例えば、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、およびアルミナ等)、並びに硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、および硫酸バリウム等)等が挙げられる。
迷路効果により水蒸気バリア性がさらに向上することから、第四の樹脂組成物に含まれる無機充填材は、水酸化マグネシウムまたはタルクが好ましく、アスペクト比が大きいほどより好ましい。
【0065】
無機充填材の流動性および積層シート30の良好な熱成形性を維持するために、第四の樹脂組成物で形成される層中の無機充填材の含有量は、40質量%以下であることが好ましい。また、無機充填材の含有量が40質量%以下であれば、無機充填材の比重が高すぎて質量が問題となる事態を避けられる。
【0066】
本実施形態において、水蒸気バリア層141、144を形成する第四の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂および無機充填材に加え、さらに水素添加石油樹脂を含んでいてもよい。第四の樹脂組成物が水素添加石油樹脂を含むことによって、結晶性樹脂の非晶部から漏れる水蒸気透過を抑制することができ、水蒸気バリア層141、144の水蒸気バリア性がより向上する。
第四の樹脂組成物で形成される層中の水素添加石油樹脂の含有量は、良好な水蒸気バリア性およびブリードによる汚染回避の観点から、20質量%以下であることが好ましい。
【0067】
本実施形態において、第四の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂および無機充填材、必要に応じて水素添加石油樹脂、に加え、さらに無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。第四の樹脂組成物に無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を添加することにより、積層シート30の耐衝撃性が向上する。
無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂は、例えば、酸変性度が2.2質量%以上である樹脂を用いることができる。
耐衝撃性の観点から、第四の樹脂組成物は、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂に代えて、または無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂とともに、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、およびエチレン酢酸ビニル(EVA)等の熱可塑性エラストマーを含んでいてもよい。
【0068】
中間層14としての接着層142、143には、例えば、不飽和カルボン酸もしくは不飽和カルボン酸の誘導体変性ポリオレフィン樹脂、またはポリ塩化ビニリデン系樹脂を使用することができる。
【0069】
中間層14の厚さは、特に限定されない。中間層14の厚さは、中間層として含まれる層の用途に応じて、適宜設定される。
水蒸気バリア層141、144の合計の厚さTWBは、水蒸気バリア性および製膜性、並びにコストの観点から、積層シート30全体の厚さTに対する比率[(TWB/T)×100]を30%以上70%以下とすることが好ましく、40%以上60%以下とすることがより好ましい。
【0070】
積層シート30を製造する方法としては、例えば、Tダイを用いた多層押出成形法等により製造することができる。
【0071】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る積層シート30では、酸素バリア層13によって、高い酸素バリア性が実現される。また、ポリオレフィン系樹脂および無機充填材を含む水蒸気バリア層141、144によって、高い水蒸気バリア性が実現されるとともに、酸素バリア性の湿度依存性が高い樹脂で酸素バリア層を形成した場合にも、酸素バリア層の酸素バリア性の低下を防ぎ、高い酸素バリア性を維持することができる。
このように、積層シート30は、低湿下の環境でも高い帯電防止性能を有し、電子部品収容容器に用いるのに良好な酸素バリア性および水蒸気バリア性を備える。
【0072】
〔第4実施形態〕
[電子部品収容容器]
第1実施形態に係る積層シート10、第2実施形態に係る積層シート20、および第3実施形態に係る積層シート30は、いずれもこれらの積層シートを用いて電子部品収容容器を成形することが可能である。
第4実施形態においては、本発明の一態様に係る積層シートを用いて成形した、電子部品収容容器について説明する。
図4は、本実施形態に係る電子部品収容容器100の概略図である。図4に示された電子部品収容容器100は、第3実施形態に係る積層シート30を成形してなる。
【0073】
積層シート30を用いた、電子部品収容容器100は、例えば、真空圧空成形法、真空成形法、圧空成形法、およびプラグアシスト成形等の種々の成形方法により、成形することができる。
【0074】
電子部品収容容器100においては、第一の最外層11が、電子部品収容容器100の内表面(電子部品収容容器100内の内容物が接触する面)100Aを形成する。第一の最外層11は第一の高分子型帯電防止剤を含んでいるため、電子部品収容容器100に電子部品が収容されて輸送等された際、静電気等の瞬時に発生する帯電に対して、高い帯電防止性能が発揮される。
【0075】
(本実施形態の効果)
上述の通り、積層シート30は、低湿下の環境でも高い帯電防止性能を有し、電子部品収容容器用として良好な酸素バリア性および水蒸気バリア性を備える積層シートである。このような積層シート30を成形して得られる電子部品収容容器100は、帯電防止性、密封可能な易開封性、並びに酸素および水蒸気バリア性に優れる。
そのため、本実施形態の電子部品収容容器100は、精密機械部品、IC、コンデンサ、および半導体等の電子部品等を収容する容器として好適に用いることができる。
また、電子部品収容容器100によれば、電子部品収容容器の開封時、すなわち、電子部品使用時まで、電子部品の酸化劣化を防止することができ、電子部品の破損リスクが低減する。
さらに、電子部品収容容器100は、電子部品の長期保管が可能な容器であるため、生産のタイミング等の自由度が広がり、ひいては生産性向上を図ることができる。
【実施例
【0076】
以下、本発明に係る実施例を説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
【0077】
〔実施例1~11および比較例1~3〕
表1に示す質量比率にて下記成分を混合し、各層を形成する樹脂組成物を調製した。調製した樹脂組成物を用い、ディストリビュータ方式押出多層シート製造装置を用いて、実施例1~11および比較例1~3の積層シートを作製した。なお、積層シートの厚さは1mmとした。
【0078】
(各種成分)
・樹脂a:ホモポリプロピレン E111G(株式会社プライムポリマー製)
・樹脂b:ランダムポリプロピレン F-724NP(株式会社プライムポリマー製)
・樹脂c:低密度ポリエチレン R300(宇部丸善ポリエチレン株式会社製)
・樹脂d:エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸 レクスパールET220X(日本ポリエチレン株式会社製)
・樹脂e:モディック P674V(三菱ケミカル株式会社製)
・樹脂f:エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂 エバ―ルJ(株式会社クラレ製)
・高分子型帯電防止剤a:ペレクトロン PVH(三洋化成工業株式会社製)
・高分子型帯電防止剤b:ペレクトロン PVL(三洋化成工業株式会社製)
・高分子型帯電防止剤c:ペレクトロン LMP-FS(三洋化成工業株式会社製)
・低分子型帯電防止剤d:脂肪酸エステル系帯電防止剤
・タルク:平均粒子径5μm、アスペクト比17
・水酸化マグネシウム:平均粒子径4μm、アスペクト比67
・水素添加石油樹脂:商品名 アイマーブ、グレード名 P-140(出光興産株式会社製)
【0079】
〔積層シートの評価〕
実施例1~11および比較例1~3で作製した積層シートについて、以下の評価を行った。評価結果を表1~3に示す。
【0080】
<帯電防止性能>
帯電防止性能は、電荷減衰測定方法(FEDERAL TEST METHOD 101, METHOD 4046.1)のRCJS5-1に準拠して、温度23±5℃かつ湿度12±3%RHの環境下、各積層シートにおける電荷が5000Vから50Vに減衰するまでの時間を測定し、評価した。評価基準は、以下の2段階とした。
(評価基準)
A:減衰時間が2秒以下
C:減衰時間が2秒を超えるもの
【0081】
<酸素透過度>
酸素透過度は、JIS K7126-2B法(2006年版)に基づいて、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下にて各積層シートを測定し、評価した。評価基準は、以下の2段階とした。
(評価基準)
A:1cm/m・day未満
C:1cm/m・day以上
【0082】
<水蒸気透過度>
水蒸気透過度は、JIS K7129 B法(2019年版)に基づいて、温度40℃かつ相対湿度90%RHの環境下にて各積層シートを測定し、評価した。評価基準は以下の2段階とした。
(評価基準)
AA:0.2g/m・24hr未満
A:0.4g/m・24hr未満
【0083】
<易開封性>
易開封性は、シール機として熱傾斜試験機を用い、各積層シートに被シール材(ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、および無軸延伸ポリプロピレンをこの順に積層した三層のシート)を、シール条件:0.20MPa、1秒、180℃、シール幅15mmにてシールし、その後、引張試験機で剥離角度180°で200mm/分の速度で剥離した際のシール強度を測定した。
評価は以下の2段階とした。
(評価基準)
A:シール強度0.2kgf/15mm以上1.5kgf/15mm未満
C:シール強度1.5kgf/15mm以上
【0084】
<シール面外観>
シール面外観は、上記易開封性評価におけるシール剥離時の毛羽立ちの有無、およびシール剥離後の目視による観察にて、評価した。評価は以下の3段階とした。
(評価基準)
A:シール面の外観が良好で、剥離時に毛羽立ちがない
B:シール面の外観がやや荒れており、剥離時に毛羽立ちがやや見られる
C:シール面の外観が荒れており、剥離時に毛羽立ちが見られる
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
表1~3に示した結果より、第一の最外層において高分子型帯電防止剤を用いた実施例1~11の積層シートは、第一の最外層において高分子型帯電防止剤を用いていない比較例1~3の積層シートと比べ、帯電防止性能に優れる積層シートであることがわかる。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0090】
10…積層シート、11…第一の最外層、12…第二の最外層、13…酸素バリア層、14…中間層、100…電子部品収容容器。
図1
図2
図3
図4