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特許7483335補助ブレーキ制御装置、補助ブレーキ制御方法、及び補助ブレーキ制御プログラム
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  • 特許-補助ブレーキ制御装置、補助ブレーキ制御方法、及び補助ブレーキ制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】補助ブレーキ制御装置、補助ブレーキ制御方法、及び補助ブレーキ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/184 20120101AFI20240508BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240508BHJP
   B60W 30/182 20200101ALI20240508BHJP
   F02D 9/06 20060101ALI20240508BHJP
   B60T 10/00 20060101ALN20240508BHJP
   B60T 7/12 20060101ALN20240508BHJP
【FI】
B60W30/184
B60W50/14
B60W30/182
F02D9/06 B
B60T10/00
B60T7/12 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019145276
(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公開番号】P2021024468
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】小関 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 圭一
(72)【発明者】
【氏名】田村 聡
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134156(JP,A)
【文献】特開2003-187283(JP,A)
【文献】特開2012-013021(JP,A)
【文献】特開平08-053059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
30/00 - 60/00
F02D 9/00 - 11/10
B60T 10/00
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速するためのアクセルペダルと補助ブレーキを操作するためのスイッチとが設けられた車両の補助ブレーキ制御装置であって、
前記アクセルペダルの操作頻度が所定頻度以上であることを含む禁止条件の成否を判定する判定部と、
前記判定部で前記禁止条件が成立したと判定された場合に、前記スイッチが前記補助ブレーキを作動させる作動位置にあっても、前記補助ブレーキの作動を禁止するとともにドライバに警告する禁止制御を実施する制御部と、を備えている
ことを特徴とする、補助ブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記禁止条件には、前記スイッチが第一所定時間以上操作されていないことが含まれる
ことを特徴とする、請求項1に記載の補助ブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記禁止条件には、前記車両に搭載された変速機のギア段が第二所定時間以上変更されていないことが含まれる
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の補助ブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記車両は、オフロード走行用の特殊モードを含む複数の走行モードから一つを選択可能であり、
前記禁止条件には、前記特殊モード以外の前記走行モードが選択されていることが含まれる
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の補助ブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記車両に搭載された変速機のギア段には、通常段と、前記通常段と比べて前記補助ブレーキの作動による影響の大きい特定段とが含まれ、
前記禁止条件には、前記特定段が選択されていることが含まれる
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の補助ブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記スイッチが前記作動位置から前記補助ブレーキを作動させない非作動位置に操作されたことを含む解除条件の成否を判定し、
前記制御部は、前記判定部で前記解除条件が成立したと判定された場合に、実施中の前記禁止制御を終了する
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の補助ブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記操作頻度が前記所定頻度以上であると判定した場合、前記車両の走行が終了するまで、前記操作頻度が前記所定頻度以上であると見做す
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の補助ブレーキ制御装置。
【請求項8】
加速するためのアクセルペダルと補助ブレーキを操作するためのスイッチとが設けられた車両の補助ブレーキ制御方法であって、
前記アクセルペダルの操作頻度が所定頻度以上であることを含む禁止条件の成否を判定する判定工程と、
前記判定工程で前記禁止条件が成立したと判定された場合に、前記スイッチが前記補助ブレーキを作動させる作動位置にあっても、前記補助ブレーキの作動を禁止するとともにドライバに警告する禁止制御を実施する制御工程と、をコンピュータが実行す
ことを特徴とする、補助ブレーキ制御方法。
【請求項9】
加速するためのアクセルペダルと補助ブレーキを操作するためのスイッチとが設けられた車両の補助ブレーキ制御プログラムであって、
前記アクセルペダルの操作頻度が所定頻度以上であることを含む禁止条件の成否を判定する判定工程と、
前記判定工程で前記禁止条件が成立したと判定された場合に、前記スイッチが前記補助ブレーキを作動させる作動位置にあっても、前記補助ブレーキの作動を禁止するとともにドライバに警告する禁止制御を実施する制御工程と、をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする、補助ブレーキ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に設けられた補助ブレーキを制御する装置、方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、補助ブレーキを操作するための補助ブレーキスイッチを作動位置に設定した状態で、急加速を繰り返すようにアクセルペダルを頻繁に操作する行為(以下「ラフアクセル操作」という)が問題視されている。このように、補助ブレーキが作動しうる状態でラフアクセル操作が行われた場合、補助ブレーキによって車両が無用に減速することで燃費の悪化を招くとともに、駆動系に正のトルクと負のトルクとが交互に繰り返し印加されることで駆動系の劣化を促進させてしまう虞がある。
【0003】
これに対し、上記のようなラフアクセル操作が検知された場合に、アクセルペダルの踏み込み量に対してエンジンの燃料噴射量の反応を遅らせることが提案されている(例えば特許文献1参照)。このような燃料噴射量の制御によれば、燃費の向上が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-195078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように燃料噴射量を制御する場合、車両の走行状況によっては燃料噴射量がドライバの意図に反したものとなるため、車両を適切に運転することが困難になる虞がある。
また、ドライバによっては、補助ブレーキスイッチを作動位置に設定した状態でのラフアクセル操作が好ましくないことを十分に認識していない場合がある。よって、ラフアクセル操作に対しては、燃費の悪化及び駆動系の劣化を抑制しながら、ドライバに適切な運転(具体的には、アクセルペダル及び補助ブレーキスイッチの適切な操作)をするよう、促すことが望ましい。
【0006】
本開示は、前述したような課題に鑑み創案されたものであり、燃費の悪化及び駆動系の劣化を抑制しながら、適切な運転をドライバに促すことを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は前述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
(1)本適用例に係る補助ブレーキ制御装置は、加速するためのアクセルペダルと補助ブレーキを操作するためのスイッチとが設けられた車両の補助ブレーキ制御装置であって、前記アクセルペダルの操作頻度が所定頻度以上であることを含む禁止条件の成否を判定する判定部と、前記判定部で前記禁止条件が成立したと判定された場合に、前記スイッチが前記補助ブレーキを作動させる作動位置にあっても、前記補助ブレーキの作動を禁止するとともにドライバに警告する禁止制御を実施する制御部と、を備えている。
禁止制御により補助ブレーキの作動が禁止されることで、燃費の悪化及び駆動系の劣化が抑制される。また、禁止制御によりドライバに警告が出されることで、ドライバが不適切な運転をしていることに気づきやすくなる。
【0008】
(2)本適用例に係る補助ブレーキ制御装置において、前記禁止条件には、前記スイッチが第一所定時間以上操作されていないことが含まれてもよい。
このような構成によれば、ドライバがスイッチを操作し忘れている可能性が高い場合に限って、禁止制御が実施される。このため、ドライバへの警告がより的確な状況で実施される。
【0009】
(3)本適用例に係る補助ブレーキ制御装置において、前記禁止条件には、前記車両に搭載された変速機のギア段が第二所定時間以上変更されていないことが含まれてもよい。
このような構成によれば、ドライバに加速又は減速の意図がない可能性が高い場合に限って、禁止制御が実施される。このため、ドライバへの警告がより的確な状況で実施される。
【0010】
(4)本適用例に係る補助ブレーキ制御装置において、前記車両は、オフロード走行用の特殊モードを含む複数の走行モードから一つを選択可能であってもよく、前記禁止条件には、前記特殊モード以外の前記走行モードが選択されていることが含まれてもよい。
このような構成によれば、アクセルペダルの操作頻度が増加しやすい特殊モードを除く走行モードの選択中に限って、禁止制御が実施される。このため、ドライバに不便や無用な違和感を与えにくくなる。
【0011】
(5)本適用例に係る補助ブレーキ制御装置において、前記車両に搭載された変速機のギア段には、通常段と、前記通常段と比べて前記補助ブレーキの作動による影響の大きい特定段とが含まれてもよく、前記禁止条件には、前記特定段が選択されていることが含まれてもよい。
このような構成によれば、通常段と比べて補助ブレーキの作動による影響が大きい特定段の選択中に限って、禁止制御が実施される。このため、駆動系の劣化が抑制されつつも、ドライバに不便を与えにくくなる。
【0012】
(6)本適用例に係る補助ブレーキ制御装置において、前記判定部は、前記スイッチが前記作動位置から前記補助ブレーキを作動させない非作動位置に操作されたことを含む解除条件の成否を判定してもよく、前記制御部は、前記判定部で前記解除条件が成立したと判定された場合に、実施中の前記禁止制御を終了してもよい。
このような構成によれば、ドライバがスイッチを作動位置から非作動位置に操作したことを条件として、禁止制御が終了する。このため、ドライバが不適切な運転に気づいてスイッチを非作動位置に戻した後は、ドライバに不便を与えにくくなる。
【0013】
(7)本適用例に係る補助ブレーキ制御装置において、前記判定部は、前記操作頻度が前記所定頻度以上であると判定した場合、前記車両の走行が終了するまで、前記操作頻度が前記所定頻度以上であると見做してもよい。
アクセルペダルの操作傾向は、ドライバが替わらない限り同様である可能性が高いため、このような構成によれば、禁止条件の成否が精度よく判定される。また、アクセルペダルの操作頻度が所定頻度以上であると判定した以降は、車両の走行が終了するまでこの判定処理を省略可能となるため、制御負荷の低減に寄与する。
【0014】
(8)本適用例に係る補助ブレーキ制御方法は、加速するためのアクセルペダルと補助ブレーキを操作するためのスイッチとが設けられた車両の補助ブレーキ制御方法であって、前記アクセルペダルの操作頻度が所定頻度以上であることを含む禁止条件の成否を判定する判定工程と、前記判定工程で前記禁止条件が成立したと判定された場合に、前記スイッチが前記補助ブレーキを作動させる作動位置にあっても、前記補助ブレーキの作動を禁止するとともにドライバに警告する禁止制御を実施する制御工程と、を備えている。
【0015】
(9)本適用例に係る補助ブレーキ制御プログラムは、加速するためのアクセルペダルと補助ブレーキを操作するためのスイッチとが設けられた車両の補助ブレーキ制御プログラムであって、前記アクセルペダルの操作頻度が所定頻度以上であることを含む禁止条件の成否を判定する判定工程と、前記判定工程で前記禁止条件が成立したと判定された場合に、前記スイッチが前記補助ブレーキを作動させる作動位置にあっても、前記補助ブレーキの作動を禁止するとともにドライバに警告する禁止制御を実施する制御工程と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、燃費の悪化及び駆動系の劣化を抑制しながら、適切な運転をドライバに促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第一実施形態としての補助ブレーキ制御装置が適用された車両のブロック図である。
図2図1の補助ブレーキ制御装置で実施される禁止制御の手順を例示したフローチャートである。
図3】第二実施形態としての補助ブレーキ制御装置が適用された車両のブロック図である。
図4図3の補助ブレーキ制御装置で実施される禁止制御の手順を例示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、実施形態としての補助ブレーキ制御装置、補助ブレーキ制御方法、及び補助ブレーキ制御プログラム(以下それぞれ「制御装置」、「制御方法」、及び「制御プログラム」と略称する)について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0019】
[1.第一実施形態]
[1-1.装置構成]
第一実施形態の制御装置1は、図1に示す車両2に設けられた補助ブレーキ3を制御する。車両2は、例えば、エンジン(図示略)を駆動源とするトラックである。
補助ブレーキ3は、車両2に設けられた主ブレーキ(図示略)とは別の機構で車両2を制動させる制動装置である。補助ブレーキ3は、具体的には、排気ブレーキや圧縮開放ブレーキ(パワータードブレーキ)やリターダなどである。補助ブレーキ3の作動状態は、制御装置1で制御される。
【0020】
車両2の運転席には、補助ブレーキ3を操作するための補助ブレーキスイッチ(スイッチ)4と、車両2を加速するためのアクセルペダル5とが設けられる。これらの補助ブレーキスイッチ4及びアクセルペダル5はいずれも、車両2のドライバによって操作される。
また、本実施形態の車両2には、エンジンから出力された回転を所定の変速比に応じた回転に変更する変速機7と、ドライバへの警告を行うランプ8とが設けられている。
【0021】
補助ブレーキスイッチ4は、例えばステアリングホイールの脇に設けられる。補助ブレーキスイッチ4には複数の操作位置が用意され、これらの操作位置の中からドライバにより一つが選択される。以下、ドライバが選択した補助ブレーキスイッチ4の操作位置を「スイッチ位置」ともいう。スイッチ位置の情報は、制御装置1に伝達される。
【0022】
なお、補助ブレーキスイッチ4の操作位置には、少なくとも、補助ブレーキ3を作動させる作動位置と、補助ブレーキ3を作動させない非作動位置との二種類が含まれる。また、上記の作動位置としては、補助ブレーキ3の強さ(補助ブレーキ3による制動力の大きさ)を多段階に設定するために、複数の位置が用意されてもよい。本実施形態では、作動位置として複数の位置が用意されており、これらの位置から一つが選択されることで、補助ブレーキ3の強さが多段階に設定可能である例を示す。
【0023】
アクセルペダル5は、運転席の足元に設けられ、ドライバによって踏み込み操作される。アクセルペダル5の踏み込み量(アクセル開度)の情報は、制御装置1に伝達される。
変速機7は、例えば、車両2の走行状態や負荷要求等に応じて変速比(ギア段)を自動で変更する機能をもつ自動変速機である。ここでは、前進12段の変速機7を例示する。変速機7のギア段の情報は、制御装置1に伝達される。
【0024】
ランプ8は、ドライバに適切な運転を促すための警告を出す警告装置の一例である。ランプ8は、ドライバが運転中に目視可能な位置(例えばメータクラスタ)に設けられる。本実施形態のランプ8は、上記の警告を出す機能に加えて、補助ブレーキ3の作動状態を表示する機能を併せもつ。ランプ8の点灯状態は、制御装置1で制御される。
【0025】
制御装置1は、車両2に搭載された電子制御装置(コンピュータ)であって、例えばマイクロプロセッサやROM、RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成され、車載ネットワーク網の通信ラインに接続される。本実施形態では、制御装置1によって実施される禁止制御について詳述する。
【0026】
[1-2.制御構成]
禁止制御は、ドライバが補助ブレーキスイッチ4を作動位置に設定した状態で、急加速を繰り返すようにアクセルペダル5を頻繁に操作する行為(以下、「ラフアクセル操作」という)に対して実施される。
このように、補助ブレーキ3が作動しうる状態でラフアクセル操作が行われた場合、車両2が補助ブレーキ3の作動によって無用に減速することで、燃費の悪化を招く虞がある。また、この場合、車両2の駆動系(例えば出力軸)は、アクセルペダル5の踏み込みに応じた正のトルクと、補助ブレーキ3の作動に応じた負のトルクとを交互に印加されることで、劣化が促進される虞がある。
【0027】
これに対し、禁止制御では、ラフアクセル操作が行われたことを含む所定の禁止条件が成立した場合に、補助ブレーキスイッチ4が作動位置にあっても、補助ブレーキ3の作動を禁止、すなわち補助ブレーキ3の作動を無効化するとともに、ドライバに警告する。
したがって、禁止制御の実施中は、補助ブレーキスイッチ4が作動位置にあるにも関わらず補助ブレーキ3が作動しなくなる。これにより、補助ブレーキ3の作動に起因した燃費の悪化及び駆動系の劣化を抑制できる。また、ドライバがスイッチ位置を認識している(補助ブレーキスイッチ4を意図的に作動位置に設定している)場合には、ドライバにあえて違和感を与えられる。
【0028】
さらに、禁止制御では、上記のようにドライバに違和感を与えられることと、ドライバに警告することとによって、不適切な運転が行われていることをドライバに認識させられる。これにより、アクセルペダル5及び補助ブレーキスイッチ4を適切に操作する(車両2を適切に運転する)よう、ドライバに促すことができる。
【0029】
ここで、上記の禁止制御に対し、通常どおり補助ブレーキ3を作動させる制御を「通常制御」という。通常制御では、補助ブレーキ3の作動状態がスイッチ位置に応じて制御される。具体的には、スイッチ位置が非作動位置である場合には補助ブレーキ3が作動しないように制御され、スイッチ位置が作動位置である場合には、アクセルペダル5が踏み込まれていないことを条件として、補助ブレーキ3がスイッチ位置の段階に応じた強さで作動するように制御される。
【0030】
なお、禁止制御及び通常制御のいずれにおいても、スイッチ位置が作動位置であってアクセルペダル5が踏み込まれている場合には、補助ブレーキ3が作動しないように制御される。
禁止制御及び通常制御は、車両2が走行中である場合に択一的に実施される。一方、車両2が停止中である(走行中でない)場合は、補助ブレーキ3を作動させる必要がないため、禁止制御及び通常制御がいずれも実施されない。
【0031】
制御装置1は、上記の禁止制御及び通常制御を実施するための要素として、判定部11及び制御部12を備えている。ここでは、判定部11及び制御部12がいずれもソフトウェアで実現されるものとする。ただし、判定部11及び制御部12は、ハードウェア(電子回路)で実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアとが併用されて実現されてもよい。
【0032】
本実施形態では、判定部11及び制御部12がコンピュータプログラムである制御プログラム10の機能として設けられている例を示す。制御装置1は、この制御プログラム10を実行することによって禁止制御及び通常制御を実施する。なお、制御プログラム10は、制御装置1で実行可能となるように設けられる。
【0033】
判定部11は、禁止条件の成否を判定する。本実施形態の禁止条件には、下記の条件A1~A4が含まれている。判定部11は、下記の条件A1~A4の全てが成立する場合に禁止条件が成立したと判定し、それ以外の場合(下記の条件A1~A4の少なくとも一つが成立しない場合)に禁止条件が成立しないと判定する。
【0034】
=禁止条件=
条件A1:スイッチ位置が作動位置である。
条件A2:ラフアクセル操作が行われた。
条件A3:スイッチ位置に変更がない。
条件A4:変速機7のギア段に変更がない。
【0035】
条件A1は、禁止制御を実施するための前提条件である。判定部11は、補助ブレーキスイッチ4から伝達される情報に基づいて条件A1の成否を判定する。本実施形態の判定部11は、条件A1が成立したと判定した場合に、条件A2以降の成否を判定する。
条件A2は、具体的には、アクセルペダル5の操作頻度が所定頻度以上であることに対応する。判定部11は、アクセルペダル5から伝達される情報に基づいて、条件A2の成否を判定する。
【0036】
本実施形態の判定部11は、アクセルペダル5の踏み込み(オン)から開放(オフ)までの一連の操作(以下「オンオフ操作」という)の回数をカウントし、この回数が予め設定された時間to(例えば20秒間)内に所定回数(例えば3回)まで達した場合に、条件A2が成立したと判定し、これ以外の場合に条件A2が成立しないと判定する。別の言い方をすれば、判定部11は、オンオフ操作が所定回数行われるのに要した時間tをカウントし、この時間tが予め設定された時間to以内(t≦to)であった場合に、条件A2が成立したと判定する。
【0037】
なお、オンオフ操作は、アクセル開度が所定の上側閾値(例えば85%)以上となった後、所定の下側閾値(例えば15%)以下となった場合に一回とカウントされてもよい。このようなカウント手法が適用されれば、アクセルペダル5に対する僅かな操作がカウントされなくなるため、条件A2の成否の判定精度を高められる。
【0038】
本実施形態の判定部11は、条件A2が成立したと判定した場合に、車両2の走行が終了するまで、条件A2が成立したと見做す。したがって、判定部11は、車両2の一回の走行サイクル(キーオン〔エンジンオン〕からキーオフ〔エンジンオフ〕までの間)において、最初に条件A2の成立を判定した以降は、アクセルペダル5から伝達される情報を参照することなく、この判定結果(条件A2の成立判定)を維持する。
【0039】
条件A3は、補助ブレーキ3への要求がドライバにないことを確認するために設けられている。補助ブレーキスイッチ4が操作されたことは、ドライバに補助ブレーキ3への要求があることを意味する。
したがって、スイッチ位置に変更がない(条件A3が成立する)場合は、補助ブレーキ3への要求がドライバにない可能性が高い。また、この場合は、ドライバが補助ブレーキスイッチ4を操作し忘れている(怠っている)可能性もある。よって、条件A3が成立する場合は、禁止制御を実施してもドライバに不便を与えにくい。
一方で、スイッチ位置に変更がある(条件A3が成立しない)場合は、補助ブレーキ3への要求がドライバにある可能性が高いため、ドライバの要求に応じて補助ブレーキ3の作動状態を制御することが望ましい。
【0040】
判定部11は、具体的には、補助ブレーキスイッチ4が第一所定時間以上操作されていない場合に条件A3が成立したと判定し、これ以外の場合に条件A3が成立しないと判定する。本実施形態では、上記の第一所定時間が制御装置1の演算周期として設定されている。したがって、判定部11は、補助ブレーキスイッチ4から伝達される情報に基づき、現在の演算周期と前回の演算周期とでスイッチ位置が同一である場合に条件A3が成立したと判定し、現在の演算周期と前回の演算周期とでスイッチ位置が異なる場合に条件A3が成立しないと判定する。
【0041】
条件A4は、加速又は減速の意図がドライバにないことを確認するために設けられている。変速機7のギア段は、車両2の加速や減速に伴って変更される。このため、変速機7のギア段に変更がない(条件A4が成立する)場合は、加速や減速の意図がドライバにない(車両2が惰性で走行している)可能性が高い。よって、条件A4が成立する場合は、禁止制御を実施してもドライバに不便を与えにくい。
一方で、変速機7のギア段に変更がある(条件A4が成立しない)場合は、加速や減速の意図がドライバにある可能性が高いため、ドライバの要求に応じて補助ブレーキ3の作動状態を制御することが望ましい。
【0042】
判定部11は、具体的には、変速機7のギア段が第二所定時間以上変更されていない場合に条件A4が成立したと判定し、これ以外の場合に条件A4が成立しないと判定する。本実施形態では、上記の第二所定時間も、制御装置1の演算周期として設定されている。したがって、判定部11は、変速機7から伝達される情報に基づき、現在の演算周期と前回の演算周期とでギア段が同一である場合に条件A4が成立したと判定し、現在の演算周期と前回の演算周期とでギア段が異なる場合に条件A4が成立しないと判定する。
【0043】
本実施形態の判定部11は、実施中の禁止制御を終了するための条件(以下「解除条件」という)の成否も判定する。解除条件には、下記の条件B1が含まれる。
=解除条件=
条件B1:スイッチ位置が作動位置から非作動位置に切り替わった。
【0044】
条件B1は、補助ブレーキスイッチ4が作動位置から非作動位置に操作されたことに対応する。本実施形態の判定部11は、禁止条件が成立した場合に、補助ブレーキスイッチ4から伝達される情報に基づいて、条件B1の成否を判定する。具体的には、判定部11は、禁止条件の成立後、条件A1が不成立となった場合に条件B1が成立したと判定し、これ以外(条件A1が成立中)の場合に条件B1が成立しないと判定する。
【0045】
制御部12は、判定部11による判定結果に応じて禁止制御及び通常制御のいずれか一方を実施する。具体的には、制御部12は、判定部11で禁止条件が成立したと判定された場合に禁止制御を実施し、判定部11で禁止条件が成立しないと判定された場合に通常制御を実施する。また、制御部12は、判定部11で解除条件が成立したと判定された場合には、実施中の禁止制御を終了して通常制御を実施する。
【0046】
本実施形態の制御部12は、禁止制御において、スイッチ位置が作動位置であっても補助ブレーキ3を作動させないとともに、ランプ8を点滅させることでドライバに警告する。このように、制御部12は、禁止制御を実施する場合に、補助ブレーキ3の作動が自動的に解除(キャンセル)されるように、スイッチ位置による補助ブレーキの作動を無効化する。
一方、制御部12は、通常制御では、スイッチ位置に応じて補助ブレーキ3の作動状態を制御するとともに、補助ブレーキ3の作動中はランプ8を点灯させ、補助ブレーキ3の非作動中はランプ8を消灯させる。
【0047】
[1-3.フローチャート]
図2は、制御装置1で実施される制御の手順(制御方法)を示すフローチャートである。このフローは、車両2が走行中である場合に所定の演算周期で繰り返し実施される。
なお、フロー中で使用されるフラグFは、現在の走行サイクルにおいて、ラフアクセル操作が行われたと判定されたか否か表す変数である。フラグFは、現在の走行サイクルでラフアクセル操作が行われたと判定されるまで0にセットされ、ラフアクセル操作が行われたと判定された後は1にセットされる。フラグFは、現在の走行サイクルの終了に伴って(車両2の走行が終了した場合に)、0にリセットされる。フローの開始時点では、フラグFが0であるものとする。
【0048】
まず、補助ブレーキスイッチ4、アクセルペダル5、及び変速機7のそれぞれから情報が取得され(ステップS10)、次いでスイッチ位置が作動位置であるか否か(条件A1の成否)が判定される(ステップS20)。スイッチ位置が作動位置であれば、フラグFが1であるか否かが判定される(ステップS21)。フローの開始時点ではF=0であるため、初回はステップS22に進み、ラフアクセル操作が行われたか否か(条件A2の成否)が判定される。ここでラフアクセル操作が行われたと判定された場合は、フラグFが1にセットされる(ステップS23)。
【0049】
続いて、スイッチ位置に変更がないか(条件A3の成否)が判定される(ステップS24)。具体的には、前回の演算周期で取得されたスイッチ位置の情報と、今回の演算周期で取得されたスイッチ位置の情報とが同一であるかが判定される。初回は比較対象となる情報(前回の演算周期の情報)が存在しないため、ステップS24からNOルートに進む。
【0050】
一方、スイッチ位置に変更がなければ、変速機7のギア段に変更がないか(条件A4の成否)が判定される(ステップS25)。具体的には、前回の演算周期で取得されたギア段の情報と、今回の演算周期で取得されたギア段の情報とが同一であるかが判定される。初回は比較対象となる情報(前回の演算周期の情報)が存在しないため、ステップS25からNOルートに進む。
【0051】
ステップS20,S22,S24,S25のいずれかからNOルートに進んだ場合は、禁止制御が成立しないため、通常制御が実施され(ステップS30)、このフローをリターンする。一方、ステップS25からYESルートに進んだ場合は、禁止条件が成立するため、禁止制御が実施され(ステップS40)、このフローをリターンする。
【0052】
次の演算周期において、フラグFが1にセットされた状態でステップS21に進んだ場合は、ステップS21からステップS22,S23をスキップしてステップS24に進む。このように、現在の走行サイクルで条件A2が一旦成立したと判定された(フラグFが1にセットされた)以降は、ステップS22の判定(条件A2の成否判定)が省略される。
【0053】
また、ステップS40で禁止制御が実施された後、次の演算周期でステップS20からNOルートに進んだ(条件A1が成立後に不成立となった)場合は、解除条件が成立するため、禁止制御が終了し、通常制御が実施される(ステップS30)。
図2のフローにおいて、ステップS20~S25は判定部11で実施される処理(判定工程)であり、ステップS30,S40は制御部12で実施される処理(制御工程)である。
【0054】
[1-4.効果]
上記の制御装置1、制御方法、及び制御プログラム10によれば、ラフアクセル操作が行われたこと(条件A2の成立)を含む禁止条件が成立した場合に、補助ブレーキスイッチ4が作動位置にあっても補助ブレーキ3の作動を禁止してドライバに警告する禁止制御が実施される。このように、アクセルペダル5の操作と補助ブレーキ3の作動とで、車両2の駆動系に正のトルクと負のトルクとが交互に繰り返し印加されうる状況では、補助ブレーキ3の作動を禁止する(補助ブレーキ3を作動させない)ことにより、燃費の悪化及び駆動系の劣化を抑制できる。
【0055】
また、禁止制御では、補助ブレーキスイッチ4が作動位置にあるにも関わらず補助ブレーキ3の作動が禁止されることで、スイッチ位置を認識しているドライバに違和感を与えることができる。具体的には、ドライバは、スイッチ位置に対して車両2が減速しにくいことを体感できる。
さらに、禁止制御ではドライバに警告が出されるため、アクセルペダル5及び補助ブレーキスイッチ4が不適切に操作されていることをドライバに知らせる(教える)ことができる。このように、禁止制御では、ドライバにあえて違和感を与えることや警告することにより、適切な運転(具体的には、アクセルペダル5及び補助ブレーキスイッチ4の適切な操作)をするよう、ドライバに促すことができる。
【0056】
上記の禁止条件には、補助ブレーキスイッチ4が第一所定時間以上操作されていないことが含まれるため、ドライバが補助ブレーキスイッチ4を操作し忘れている可能性が高い場合に限って、禁止制御を実施できる。したがって、より的確な状況で、燃費の悪化及び駆動系の劣化を抑制しながら、ドライバに適切な運転を促すことができる。
【0057】
一方、補助ブレーキスイッチ4が操作されてから第一所定時間が経過するまでは、禁止条件が成立しないため、上記の禁止制御が実施されない。このように、ドライバが補助ブレーキスイッチ4を通じて補助ブレーキ3を操作しようとした場合には、補助ブレーキ3の作動を禁止しないことで、ドライバの要求に応えられるとともに、上記の警告を出さないことで、ドライバに無用な煩わしさを与えずに済む。よって、ドライバに不便を与えにくくできる。
【0058】
上記の禁止条件には、変速機7のギア段が第二所定時間以上操作されていないことが含まれるため、ドライバに加速又は減速の意図がない可能性が高い場合に限って、禁止制御を実施できる。したがって、より的確な状況で、燃費の悪化及び駆動系の劣化を抑制しながらドライバに適切な運転を促すことができる。
【0059】
一方、変速機7のギア段が変更されてから第二所定時間が経過するまでは、禁止条件が成立しないため、上記の禁止制御が実施されない。このように、車両2の加速又は減速に伴って変速機7のギア段が変更された場合には、補助ブレーキ3の作動を禁止しないことで、ドライバの要求に応えられるとともに、上記の警告を出さないことで、ドライバに無用な煩わしさを与えずに済む。よって、ドライバに不便を与えにくくできる。
【0060】
補助ブレーキスイッチ4が作動位置から非作動位置に操作されたこと(条件B1の成立)を含む解除条件が成立した場合に、実施中の禁止制御を終了させるため、ドライバが補助ブレーキスイッチ4を適切に操作した後は、ドライバの要求に応じて補助ブレーキ3を作動させられるとともに、上記の警告を解除できる。よって、ドライバに不便を与えにくくできる。
【0061】
アクセルペダル5の操作傾向は、ドライバが替わらない限り同様である可能性が高いため、車両2でラフアクセル操作が一度でも行われた場合は、車両2の走行が終了する(ドライバが替わる)まで、何度もラフアクセル操作が繰り返される可能性が高い。したがって、ラフアクセル操作が行われたこと(条件A2の成立)を判定した場合に、車両2の走行が終了するまでこの判定結果を維持する(ラフアクセル操作が行われたと見做す)ことで、禁止条件の成否をより精度よく判定できる。よって、禁止制御をより適切な状況で実施できる。
また、上記のようにラフアクセル操作の判定結果を維持する場合、ラフアクセル操作が行われたか否かの判定処理を省略できる。このため、制御負荷の低減を図ることができる。
【0062】
[2.第二実施形態]
[2-1.装置構成]
図3に示すように、第二実施形態の制御装置1′は、第一実施形態の制御装置1に対して、モードスイッチ6が設けられた車両2′に適用されている点と、判定部11′で成否が判定される禁止条件の内容とが異なる。以下、第一実施形態で説明した要素と同一又は対応する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0063】
本実施形態の車両2′は、第一実施形態の車両2にモードスイッチ6が追加されたものである。モードスイッチ6は、車両2′の走行モードを選択するための選択装置であって、車両2′のドライバによって操作される。モードスイッチ6は、例えば、押圧操作によりオンとオフとが切り替わるボタンで構成され、車両2′の運転席に設けられる。モードスイッチ6のオンオフ情報は、制御装置1′に伝達される。
【0064】
ここでは、車両2′の走行モードとして、通常の道路(整備された道路)を走行する場合に選択される通常モードと、不整地や泥濘地などのオフロードを走行する場合に選択される特殊モードとの二つが用意されている例を示す。通常モード及び特殊モードは、モードスイッチ6のオンオフ状態に応じて択一的に選択される。具体的には、モードスイッチ6がオン状態である場合に特殊モードが選択され、モードスイッチ6がオフ状態である場合に通常モードが選択される。
【0065】
このように、本実施形態の車両2′は、モードスイッチ6のオンオフ状態に応じて、オフロード走行用の特殊モードを含む複数の走行モードから一つを選択可能となっている。なお、車両2′の走行モードは上記の通常モード及び特殊モードの二つに限定されず、例えばこれらの二つのモードに加えて他のモードが用意されてもよい。
【0066】
車両2′では、補助ブレーキ3の作動により駆動系に及ぼされる影響が、変速機7のギア段に応じて異なる。すなわち、変速機7のギア段には、補助ブレーキ3の作動による影響が比較的小さい通常段と、この影響が比較的大きい特定段とが含まれている。本実施形態の変速機7では、二速段及び三速段が、他のギア段(一速段や四速段以上のギア段など)に比べて、補助ブレーキ3による影響が大きいものとする。
なお、ここでいう影響とは、作動ブレーキ3が作動した場合に、駆動系の劣化を促進させる度合いに対応する。したがって、上記の特定段は、通常段と比べて、作動ブレーキ3が作動した場合に駆動系の劣化をより促進させるギア段であるといえる。
【0067】
[2-2.制御構成]
本実施形態の判定部11′及び制御部12も、コンピュータプログラムである制御プログラム10′の機能として設けられている。制御装置1′は、この制御プログラム10′を実行することによって禁止制御及び通常制御を実施する。
【0068】
本実施形態の禁止条件には、第一実施形態で挙げた条件A1~A4に加えて、下記の条件A5,A6が含まれている。判定部11′は、これらの条件A1~A6の全てが成立する場合に禁止条件が成立したと判定し、それ以外の場合(条件A1~A6の少なくとも一つが成立しない場合)に禁止条件が成立しないと判定する。
=禁止条件=
条件A5:特殊モード以外の走行モードが選択されている。
条件A6:特定段が選択されている。
【0069】
条件A5は、特殊モードの選択中に禁止制御の実施を回避するために設けられている。特殊モードが選択されている場合は、車両2′が悪路を走行する可能性が高いため、例えば泥濘地の脱出のために、アクセルペダル5の操作頻度が高くなる可能性がある。このような状況下で禁止制御を実施すると、ドライバに不便や無用な違和感を与えかねないため、特殊モードが選択されている場合は、禁止制御を実施する有用性が低い。よって、条件A5を禁止条件に含ませることで、禁止制御がより的確な状況で実施されやすくなり、ドライバに不便や無用な違和感を与えにくくなる。
【0070】
なお、本実施形態では、車両2′の走行モードとして通常モードと特殊モードとの二つが用意されていることから、条件A5が成立することは、通常モードが選択されていることに対応する。
判定部11′は、モードスイッチ6から伝達される情報に基づいて、条件A5の成否を判定する。具体的には、判定部11′は、モードスイッチ6がオフ状態である場合に条件A5が成立したと判定し、モードスイッチ6がオン状態である場合に条件A5が成立しないと判定する。
【0071】
条件A6は、通常段の選択中に禁止制御の実施を回避するために設けられている。通常段が選択されている場合は、特定段が選択されている場合と比べて、補助ブレーキ3の作動による影響が小さいため、禁止制御を実施する必要性が低い。よって、条件A6を禁止条件に含ませることで、禁止制御がより的確な状況で実施されやすくなり、ドライバに不便を与えにくくなる。
【0072】
判定部11′は、変速機7から伝達される情報に基づいて、条件A6の成否を判定する。具体的には、判定部11′は、変速機7のギア段として二速段又は三速段が選択されている場合に条件A6が成立したと判定し、二速段又は三速段以外が選択されている場合に条件A6が成立しないと判定する。
【0073】
[2-3.フローチャート]
図4は、本実施形態の制御装置1′で実施される制御の手順(制御方法)を示すフローチャートである。このフローは、車両2′が走行中である場合に所定の演算周期で繰り返し実施される。なお、図4では、第一実施形態で図2を用いて説明した手順と同一又は対応する手順(ステップ)に同一の符号を付している。
【0074】
図4のフローは、具体的には、図2のフローに対してステップS26、S27が追加されたものである。ステップS26は、上記の条件A5の成否を判定する処理に対応しており、ステップS27は、上記の条件A6の成否を判定する処理に対応している。以下、図4のフローについて、図2のフローと異なる点を説明し、重複する説明を省略する。
【0075】
本実施形態では、ステップS25からYESルートに進んだ場合に、車両2′の走行モードとして通常モード(特殊モード以外の走行モード)が選択されているか否か(条件A5の成否)が判定される(ステップS26)。ここで通常モードが選択されていると判定された場合は、変速段7のギア段として特定段が選択されているか否か(条件A6の成否)が判定される(ステップS27)。
【0076】
ステップS20,S22,S24~S27のいずれかからNOルートに進んだ場合は、禁止制御が成立しないため、通常制御が実施され(ステップS30)、このフローをリターンする。一方、ステップS27からYESルートに進んだ場合は、禁止条件が成立するため、禁止制御が実施され(ステップS40)、このフローをリターンする。
なお、図4のフローでは、ステップS20~S27が、判定部11′で実施される処理(判定工程)である。
【0077】
[2-4.効果]
オフロード走行用の特殊モードが選択されている場合、悪路を走行することが想定されるため、ドライバが適切な運転をしていても、ラフアクセル操作が行われやすくなる。この点、本実施形態の禁止条件には、特殊モード以外の走行モードが選択されていることが含まれるため、ドライバが適切な運転をしていればラフアクセル操作が行われない場合に限って、禁止制御を実施できる。したがって、より的確な状況で、燃費の悪化及び駆動系の劣化を抑制しながらドライバに適切な運転を促すことができる。
【0078】
一方、特殊モードが選択されている場合には、禁止条件が成立しないため、上記の禁止制御が実施されない。このように、ラフアクセル操作が行われやすい特殊モードが選択されている場合には、補助ブレーキ3の作動を禁止しないことで、ドライバの要求に応えられるとともに、ドライバへの警告を出さないことで、ドライバに無用な煩わしさを与えずに済む。よって、ドライバに不便を与えにくくできる。
【0079】
また、本実施形態の禁止条件には、変速機7のギア段として特定段が選択されていることが含まれるため、通常段が選択される場合と比べて補助ブレーキ3の作動による影響が大きくなる場合に限って、禁止制御を実施できる。したがって、より的確な状況で、燃費の悪化及び駆動系の劣化を抑制しながらドライバに適切な運転を促すことができる。
【0080】
一方、変速機7のギア段として通常段が選択されている場合には、禁止条件が成立しないため、上記の禁止制御が実施されない。このように、特定段が選択される場合と比べて補助ブレーキ3の作動による影響が小さくなる場合には、補助ブレーキ3の作動を禁止しないことで、ドライバの要求に応えられるとともに、上記の警告を出さないことで、ドライバに無用な煩わしさを与えずに済む。よって、ドライバに不便を与えにくくできる。
なお、本実施形態の制御装置1′、制御方法、及び制御プログラム10′によれば、第一実施形態のものと同様の構成からは同様の作用及び効果を得ることができる。
【0081】
[3.変形例]
上記の禁止条件及び解除条件はいずれも一例である。禁止条件には、少なくとも条件A2が含まれていればよい。また、解除条件には、上記の条件B1に加えて他の条件が含まれてもよい。例えば、車両2,2′の走行が終了したことを解除条件に含ませてもよい。この場合、禁止制御が車両2,2′の走行終了時点まで継続して実施されることから、燃費の悪化及び駆動系の劣化をより抑制できる。
【0082】
上記の第一所定時間及び第二所定時間も一例である。第一所定時間及び第二所定時間は、互いに異なる長さに設定されてもよい。なお、第一所定時間及び第二所定時間が長いほど、禁止条件が成立しにくくなるため、ドライバに不便を与えにくくできる。反対に、第一所定時間及び第二所定時間が短いほど、禁止条件が成立しやすくなるため、燃費の悪化及び駆動系の劣化をより確実に抑制できる。
【0083】
判定部11,11′は、上記のように条件A2の成立判定以降、車両2,2′の走行が終了するまでこの判定結果を維持する構成に代えて、条件A1が成立したと判定するたびに条件A2の成否を判定してもよい。このような構成とすれば、仮にドライバが不適切な運転をしていることに気づき、ラフアクセル操作を止めた(運転を改めた)場合に、条件A2が成立しなくなることから、無用な禁止制御の実施を回避できる。
【0084】
第二実施形態で挙げた変速機7の通常段及び特定段はいずれも一例である。通常段及び特定段は、変速機7や車両2′の特性に応じて適宜設定されればよい。
禁止制御におけるドライバへの警告は、上記のランプ8を用いたものに限定されない。例えば、ランプ8に代えて(あるいは加えて)、音声を出力するスピーカが適用されてもよい。この場合、スピーカからの音声によってドライバに警告することで、適切な運転をドライバに促すことができる。
【0085】
制御部12は、少なくとも禁止制御を実施すればよく、上記の通常制御は、制御部12以外の要素で実施されてもよい。
制御装置1,1′は、上記の判定部11,11′及び制御部12に加えて、エンジンを制御するエンジンECUとしての機能を兼ね備えていてもよいし、エンジンECUに指令を出す他のECU(例えばPowertrain Controller)としての機能を兼ね備えていてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1,1′ 制御装置(補助ブレーキ制御装置)
2,2′ 車両
3 補助ブレーキ
4 補助ブレーキスイッチ(スイッチ)
5 アクセルペダル
7 変速機
10,10′ 制御プログラム(補助ブレーキ制御プログラム)
11,11′ 判定部
12 制御部
図1
図2
図3
図4