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特許7483341情報処理方法、情報処理装置、機械設備、物品の製造方法、プログラム、記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置、機械設備、物品の製造方法、プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2019175931
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021051698
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 友徳
(72)【発明者】
【氏名】姚 欣遠
(72)【発明者】
【氏名】樋口 史仁
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-005855(JP,A)
【文献】特開2019-153018(JP,A)
【文献】特開2019-096014(JP,A)
【文献】特開2018-147080(JP,A)
【文献】特開平10-074188(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0332167(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品または第2部品を実装可能な機械設備の状態を判定する情報処理方法であって、
前記機械設備に設けられたセンサの値を取得するセンサ値取得工程と、
前記第1部品が実装された前記機械設備の第1期間における前記センサの値を用いて機械学習によって第1モデルを取得する第1モデル取得工程と、
前記機械設備において前記第1部品を前記第2部品に交換した後の第2期間における前記センサの値を用いて機械学習によって前記第1モデルとは異なる第2モデルを取得する第2モデル取得工程と、
前記機械設備の状態を判定する場合における前記センサの値と、前記第1モデルと、前記第2モデルとを用いて前記機械設備の状態を判定する判定工程と、を備え、
前記第1モデル取得工程で取得した、前記第1部品に対応する前記第1モデルを保持するように記憶手段の記憶状態を制御した後、前記第2モデル取得工程で取得した、前記第2部品に対応する前記第2モデルを追加して保持するように前記記憶手段の記憶状態を制御する
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記センサの時系列の値から特徴量を抽出する抽出工程と、をさらに備え、
前記第1モデル取得工程において、前記第1期間における前記センサの値から抽出された前記特徴量を学習データとして用いて、機械学習により前記第1モデルを取得し、
前記第2モデル取得工程において、前記第2期間における前記センサの値から抽出された前記特徴量を学習データとして用いて、機械学習により前記第2モデルを取得する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項3】
請求項に記載の情報処理方法において、
前記判定工程において、前記機械設備の状態を判定する場合における前記センサの値から抽出された前記特徴量を前記第1モデルおよび前記第2モデルに入力し、前記第1モデルおよび前記第2モデルから出力される出力信号を用いて前記機械設備の状態を判定する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項4】
請求項に記載の情報処理方法において、
前記判定工程において、
前記出力信号と、前記機械設備の状態を判定する場合における前記センサの値との乖離度を取得し、
取得された前記乖離度が所定閾値の範囲外か否かを判定する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理方法において、
前記機械設備は、前記第1部品または前記第2部品としてスクリューを備えた射出成型機であり、
前記センサは、前記スクリューを駆動するアクチュエータにおける電流、位置、振動、音、のうち少なくとも1つを計測するセンサであり、
前記第1モデル取得工程または前記第2モデル取得工程において、
所定関数に、時系列において連続する所定回数のタイミングにおける前記センサの値の特徴量を入力し、
前記所定関数によって予測された、前記タイミングの次のタイミングにおける前記センサの値の予測特徴量を取得し、
当該次のタイミングにおいて、実際に前記センサによって計測された値における実測特徴量を取得し、
前記予測特徴量と前記実測特徴量との誤差が小さくなるように前記所定関数の更新を繰り返すことで、前記第1モデルまたは前記第2モデルを取得する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理方法において、
前記第1期間は、前記機械設備の運用開始後の所定期間に設定される、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理方法において、
前記第2期間は、前記第1部品を前記第2部品に交換した後の前記機械設備の運用開始後の所定期間に設定される、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理方法において、
守作業として、前記第1部品を前記第2部品に交換する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】
請求項に記載の情報処理方法において、
前記判定工程では、取得された前記乖離度が所定の判定閾値以上の場合に、前記機械設備には故障の予兆があると判定する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載の情報処理方法において、
通知工程を更に備え、
前記通知工程では、前記判定工程における判定結果を、ユーザに通知する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項11】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記通知工程では、表示装置による通知、ランプによる通知、音による通知、電子メールによる通知、の少なくとも1つを用いて、前記判定結果を前記ユーザに通知する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項12】
請求項1から1のいずれか1項に記載の情報処理方法において、
情報表示工程を更に備え、
前記情報表示工程では、前記センサ値取得工程、前記第1モデル取得工程、前記第2モデル取得工程、前記判定工程のうち、少なくとも1つの工程において、表示装置に前記少なくとも1つの工程に係る情報を表示する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項13】
請求項1から1のいずれか1項に記載の情報処理方法において、
情報表示工程を更に備え、
前記情報表示工程では、前記第1モデルまたは前記第2モデルにかかる情報、および/またはモデルの新規追加を指示する第1アイコンを、および/またはモデルの削除を指示する第2アイコン、を表示装置に表示する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項14】
請求項に記載の情報処理方法において、
情報表示工程を更に備え、
前記情報表示工程では、前記第1モデルまたは前記第2モデルにおいて使用する前記特徴量に関する情報を表示装置に表示する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項15】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記情報表示工程では、前記第1モデルまたは前記第2モデルにおいて使用されている前記特徴量と、使用されていない前記特徴量と、をユーザにより識別可能なように表示する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項16】
請求項1または1に記載の情報処理方法において、
前記情報表示工程では、前記特徴量に関する情報として、所定期間の前記センサの値の最大値、所定期間の前記センサの値の中央値、所定期間の前記センサの値の2次微分最大値、所定期間の前記センサの値の平均値、の少なくとも1つを前記表示装置に表示する、
こと特徴とする情報処理方法。
【請求項17】
請求項1から1のいずれか1項に記載の情報処理方法において、
情報表示工程を更に備え、
前記情報表示工程では、記第1期間または前記第2期間の指定に係る情報、および/または前記第2モデルを他のモデルと識別する情報を、表示装置に表示する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項18】
請求項に記載の情報処理方法において、
情報表示工程をさらに備え
前記情報表示工程では、前記乖離度を時系列に表示装置に表示する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項19】
請求項1に記載の情報処理方法において、
前記情報表示工程における、前記乖離度を表示する表示期間を指定できる、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項20】
請求項1または19に記載の情報処理方法において、
前記情報表示工程において、前記所定閾値を表示する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項21】
請求項1から2のいずれか1項に記載の情報処理方法において、
前記情報表示工程において、前記第1期間、前記第2期間、の少なくとも1つを表示する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項22】
請求項4に記載の情報処理方法において、
前記判定工程において、前記第1モデルに対する前記乖離度および前記第2モデルに対する前記乖離度、が前記所定閾値の範囲外である場合、前記機械設備に故障の予兆があると判定する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項23】
処理部を備える情報処理装置であって、
前記処理部が、
第1部品または第2部品を実装可能な機械設備に設けられたセンサの値を取得し、
前記第1部品が実装された前記機械設備の第1期間における前記センサの値を用いて機械学習によって第1モデルを取得し、
前記機械設備において前記第1部品を前記第2部品に交換した後の第2期間における前記センサの値を用いて機械学習によって前記第1モデルとは異なる第2モデルを取得し、
前記機械設備の状態を判定する場合における前記センサの値と、前記第1モデルと、前記第2モデルとを用いて前記機械設備の状態を判定し、
取得した前記第1部品に対応する前記第1モデルを保持するように記憶手段の記憶状態を制御した後、取得した前記第2部品に対応する前記第2モデルを追加して保持するように前記記憶手段の記憶状態を制御する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項24】
請求項23に記載の情報処理装置を備えた機械設備。
【請求項25】
請求項24に記載の機械設備を用いて物品の製造を行うことを特徴とする物品の製造方法。
【請求項26】
請求項1から22のいずれか1項に記載の情報処理方法を実行可能なプログラム。
【請求項27】
請求項26に記載のプログラムを格納した、コンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサからのデータに基づき、機械設備の故障の予兆を検出する際に用いる制御方法、制御装置、制御装置を備えた機械設備、制御プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
機械設備は、構成部品の状態変化等により動作状態が時々刻々と変化し得る。その機械設備の使用目的に照らして動作状態が許容範囲内の場合を正常状態、許容範囲外の場合を異常状態と呼ぶとすれば、例えば生産機械であれば、異常状態になると不良品を製造したり生産ラインを停止させるなどの不具合を発生させてしまうことになる。
【0003】
例えば工作機械の分野では、異常状態を検知するために、学習モデルを用いた検知方法が試みられている。ただし、工作機械では加工内容に応じて、加工時のモータの動作パターン、加工に使用する工具の種類、加工するワークの種類、等が変わるため、汎用的に全ての加工内容を学習した学習モデルを作成することは困難である。
【0004】
そこで、特許文献1には、異なる加工内容に対応させた複数の学習モデルを用意しておき、工作機械の運転条件や環境条件に応じてその中から1つの学習モデルを選択して用いることで、加工内容(運転状況)に応じた異常検知を行う方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、機械設備が正常状態にある期間のデータを機械学習させて正常状態をモデル化しておき、運転状態と正常状態モデルの乖離度を評価して、故障の予兆を検知する技術が開示されている。また、誤検知であると推定される場合、すなわち評価した乖離度が大きいにもかかわらず機械設備が正常状態にある場合には、学習済みの正常期間のデータに誤検知に対応する期間のデータを加え、追加学習をしてモデルを更新することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-67136号公報
【文献】特開2019-28565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、生産機械等では、異常状態になると不良品が発生したり生産ラインが停止するなどの不具合が発生するため、異常状態が発生した場合には速やかに検知できることが重要である。その点で、特許文献1の異常検知方法はある程度の有効性が期待できる。しかし、さらに重要なのは異常状態を発生させないことである。
【0008】
生産機械等では、異常状態がなるべく発生しないようにするため、同一の作業を反復継続して行う場合であっても、定期あるいは不定期に保守作業を実施するのが一般的である。予防安全性を高くするには、保守作業の実施インターバルを短くするのが有効だが、保守作業中は生産機械等を停止させるため、保守作業の頻度を過度に高めると生産機械等の稼働率が低下してしまう。そこで、機械等がまだ正常状態ではあるが異常状態の発生が近くなった時にこれを検知できるのが望ましい。異常状態の発生が近づいたことを検知(故障の発生を予測)できれば、その時点で機械等の保守作業を実施すればよいので、稼働率が必要以上に低下するのを抑制することができるからである。
【0009】
この点で、特許文献1に開示された異常の発生を検知する方法は、必ずしも異常状態の発生が近づいたこと(故障の予兆)を有効に検知できる方法ではない。
一方、特許文献2に開示された故障の予兆を検知する方法では、正常状態を予めモデル化し、追加学習によりモデルの更新を行うが、特許文献2の方法を生産機械等における故障の予測に適用して高い検知精度を実現するのは、現実には困難であった。
【0010】
まず、生産機械等において保守作業で生じる状態の変化について説明する。ここでは、例えば生産機械等により同一の加工作業を反復継続して行う場合に、最初に加工作業を始める時の生産機械等の状態を初期状態と呼ぶものとする。つまり、初期状態は、生産機械等の正常状態の中の1つの態様である。
上述したように、生産機械等では、同一内容の作業を反復継続して行う場合であっても、定期あるいは不定期に保守作業を実施するが、保守作業を行えばその機械の状態は変化する。ここで留意すべきは、生産機械等において保守作業を実施した時には、当該機械が初期状態に極めて近い状態に復帰する場合も有り得るが、正常状態の範囲内で初期状態とは異なる状態に変化する場合も有り得ることである。
【0011】
例えば生産機械等が備える部品には、所定の性能を維持するために定期的にクリーニングをする必要のあるものが有り得るが、クリーニング作業には時間がかかるため、同一種の部品を複数用意しておき、交互に使い回すことが行われる場合がある。つまり、一つの部品を機械に装着して使用している間に、機械から取り外した使用後の部品をクリーニングしておき、保守作業時には部品交換だけを行うことにより、保守作業に要する時間、つまり生産機械が停止する時間を短縮するのである。
【0012】
この場合、同一種の部品であっても、許容公差の範囲内で各部品には個性が有り得るため、保守作業で部品を交換した時に、機械が初期状態に極めて近い状態に復帰する場合もあれば、初期状態とは異なる状態になることもあり得る。また、保守作業時に部品交換をしないでその部品をクリーニングして機械に再装着するとしても、部品の状態が完全に元に戻るとは限らないので、保守作業後には機械が初期状態から変化している場合があり得る。また、保守作業の度に未使用の新品部品と交換する場合であっても、各新品部品の個性に応じて保守作業後の状態が初期状態と極めて近い状態にも初期状態とは異なる状態にもなり得るのは同様である。
【0013】
また、生産機械等は非常に多くの構成要素から成るので、たとえ保守作業時に一つの部品を初期状態と同一状態にリフレッシュできたとしても、他の部品の状態は使用履歴に応じて変化している。このため、機械全体のバランスとしてみた場合には、初期状態に戻らない場合が有り得る。
さらに、生産機械等では、保守作業の内容は毎回同一であるとは限らず、多くの構成要素(部品等)の中でA部品のみを交換する場合もあれば、必要に応じてA部品とB部品を同時に交換する場合も有り得る。
【0014】
このように、保守作業を行うと、その度に機械を構成する多数の部品相互の状態のバランスや使用履歴が変化するため、保守作業の直後の機械の状態には、正常状態の範囲内で様々なバリエーションが発生し得る。
したがって、運用開始直後のデータを予め学習機械に学習させることで、正常状態の一態様である初期状態の学習モデルを作成できるとしても、保守作業により生じる正常状態のバリエーションまで全てを網羅した学習モデルを予め作成するのは容易ではない。
【0015】
一方、特許文献2のように、初期状態のデータに基づいて学習モデルを作成した後に、誤検知に対応する期間のデータを初期状態のデータに加えて追加学習をして学習モデルを更新するとしても、異常状態の予兆を判定する精度が大幅に向上するとは限らない。
【0016】
例えば1回目の保守作業により部品の状態が変わり、その部品に係る検知パラメータの値が不連続になり、初期状態を学習した学習モデルによれば、保守作業直後の状態が故障の予兆ありと判定される場合が有り得る。その場合には、誤判定であるため、特許文献2の方法では、誤検知に対応する期間のデータを初期状態のデータに加えて追加学習をして更新するが、更新後の学習済モデルは、誤検知をした期間の乖離度を過度に低下させるようなモデルになる可能性がある。予兆の検出精度を高めるためには、機械学習を行う際に入力するデータの複雑さに応じてパラメータを調整する必要があるが、機械学習のパラメータを調整しないままで追加学習をすれば、むしろ検出精度が低下する場合が有り得るのである。
【0017】
かといって、誤検知が発生する度に機械学習の専門家によるパラメータの確認作業や調整作業を行い、学習モデルを更新するのでは、機械学習を含めた生産機械等の運用に大きな負担がかかってしまい、現実的ではない。
また、追加学習ではなく、誤検知に対応する期間のデータのみを用いて学習モデルを作り直すとすれば、次の保守作業により機械等の状態が初期状態に極めて近く復帰した場合には、作り直した学習済モデルでは誤検知が発生してしまう可能性が生じてしまう。
【0018】
そこで、例えば生産機械等のように、運用上は保守作業が必要で、保守作業により正常状態の範囲内で検知パラメータの状態が様々に変化し得るシステムにおいて、故障発生の予兆を精度よく検知可能な制御方法、制御装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の態様は、第1部品または第2部品を実装可能な機械設備の状態を判定する情報処理方法であって、前記機械設備に設けられたセンサの値を取得するセンサ値取得工程と、前記第1部品が実装された前記機械設備の第1期間における前記センサの値を用いて機械学習によって第1モデルを取得する第1モデル取得工程と、前記機械設備において前記第1部品を前記第2部品に交換した後の第2期間における前記センサの値を用いて機械学習によって前記第1モデルとは異なる第2モデルを取得する第2モデル取得工程と、前記機械設備の状態を判定する場合における前記センサの値と、前記第1モデルと、前記第2モデルとを用いて前記機械設備の状態を判定する判定工程と、を備え、前記第1モデル取得工程で取得した、前記第1部品に対応する前記第1モデルを保持するように記憶手段の記憶状態を制御した後、前記第2モデル取得工程で取得した、前記第2部品に対応する前記第2モデルを追加して保持するように前記記憶手段の記憶状態を制御する、ことを特徴とする情報処理方法である。
【0020】
また、本発明の第2の態様は、処理部を備える情報処理装置であって、前記処理部が、第1部品または第2部品を実装可能な機械設備に設けられたセンサの値を取得し、前記第1部品が実装された前記機械設備の第1期間における前記センサの値を用いて機械学習によって第1モデルを取得し、前記機械設備において前記第1部品を前記第2部品に交換した後の第2期間における前記センサの値を用いて機械学習によって前記第1モデルとは異なる第2モデルを取得し、前記機械設備の状態を判定する場合における前記センサの値と、前記第1モデルと、前記第2モデルとを用いて前記機械設備の状態を判定し、取得した前記第1部品に対応する前記第1モデルを保持するように記憶手段の記憶状態を制御した後、取得した前記第2部品に対応する前記第2モデルを追加して保持するように前記記憶手段の記憶状態を制御する、ことを特徴とする情報処理装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、例えば生産機械等のように、運用上は保守作業が必要で、保守作業により正常状態の範囲内で検知パラメータの状態が様々に変化し得るシステムにおいて、故障発生の予兆を精度よく検知可能な制御方法、制御装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る故障予知装置が備える機能ブロックを示した機能ブロック図。
図2】特徴量の抽出を説明するための図。
図3】(a)実施形態に係る学習データの例を示す図。(b)実施形態に係る機械学習の例を示す図。
図4】(a)実施形態に係る評価データの例を示す図。(b)実施形態に係る乖離度の算出の例を示す図。
図5】乖離度を時間軸に沿ってプロットしたグラフの例を示す図。
図6】学習済モデル1と学習済モデル2を併用して故障の予兆を検知する態様を説明するための図。
図7】実施形態に係る故障予知方法の工程順を示すフローチャート。
図8】実施形態に係る故障予知装置において表示させる画像の例。
図9】(a)実施形態に係る故障予知装置において学習モデルの設定を管理する画面の例。(b)実施形態に係る故障予知装置において学習済モデルを一覧表示して管理する画面の例。
図10】(a)対象機械の一例である射出成形機の構造を簡易的に表した図。(b)対象機械の一例である射出成形機の保守作業における部品交換の例を示す図。
図11】故障の予兆の有無を判定する手順を説明するための図。
図12】実施形態に係る故障予知装置のハードウェア構成の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照して、本発明の実施形態である生産機械等の制御方法、制御装置について説明する。
尚、ここでいう生産機械等とは、必ずしも物品の生産に係る機械、設備、生産システム等のみを指すものではない。その機械、設備、システム等を運用する上で、保守作業が必要で、保守作業により正常状態の範囲内でその機械、設備、システム等の状態を示す各種パラメータが変化し得るものを指す。以下の実施形態の説明では、便宜的に制御方法や制御装置のことを、故障予知方法、故障予知判定、故障予知装置などと記載する場合がある。
尚、以下の説明において参照する図面では、特に但し書きがない限り、同一の参照番号を付して示す要素は、同一の機能を有するものとする。
【0024】
[実施形態1]
[故障予知装置の構成]
図1は、本実施形態に係る故障予知装置が備える機能ブロックを示した概略的な機能ブロック図である。なお、図1では本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素を機能ブロックで表しているが、本発明の課題解決原理とは直接関係のない一般的な構成要素についての記載を省略している。また、図1に図示された各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のごとく構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散、統合の具体的形態は図示の例に限らず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0025】
故障予知装置2は制御部20と記憶部30とを備えるが、各機能ブロックは、コンピュータのソフトウェア、あるいは何らかのハードウェアによって構成される。例えば、制御部20が備える機能ブロックのうち収集部201~学習済モデル追加部208は、補助記憶装置に格納されたコンピュータプログラムが主記憶装置にロードされ、CPU、GPU等のプロセッサがこれを実行することにより実現される。また、記憶部30は、ハードディスクドライブや不揮発性メモリといった記憶デバイスにより実現されるが、収集データ301、特徴量データ302、学習データ303、評価データ304、学習モデル、乖離度306、追加学習データ307等を記憶する。
【0026】
図12に、実施形態の故障予知装置のハードウェア構成の一例を模式的に示す。故障予知装置は、図12に示すように、主制御手段としてのCPU1601、記憶装置としてのROM1602、およびRAM1603を備えたPCハードウェアを含むことができる。ROM1602には、後述する故障予知方法を実現するための学習プログラムや推論アルゴリズムなどの情報を格納しておくことができる。また、RAM1603は、その制御手順を実行する時にCPU1601のワークエリアなどとして使用される。また、制御系には、外部記憶装置1606が接続されている。外部記憶装置1606は、HDDやSSD、ネットワークマウントされた他のシステムの外部記憶装置などから構成される。
【0027】
後述する本実施形態の制御手順を実現するためのCPU1601の処理プログラムは、HDDやSSDなどから成る外部記憶装置1606や、ROM1602の(例えばEEPROM領域)のような記憶部に格納しておくことができる。その場合、後述の制御手順を実現するためのCPU1601の処理プログラムは、ネットワークインターフェース(NIF)1607を介して、上記の各記憶部に供給し、また新しい(別の)プログラムに更新することができる。あるいは、後述の制御手順を実現するためのCPU1601の処理プログラムは、各種の磁気ディスクや光ディスク、フラッシュメモリなどの記憶手段と、そのためのドライブ装置を経由して、上記の各記憶部に供給し、またその内容を更新することができる。上述の制御手順を実現するためのCPU1601の処理プログラムを格納した状態における各種の記憶手段、記憶部、ないし記憶デバイスは、本発明の制御手順を格納したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を構成する。
【0028】
CPU1601には、図1のセンサ群10が接続される。図12では、図示を簡略化するため、センサ群10はCPU1601に直接接続されているように示されているが、例えばIEEE488(いわゆるGPIB)などを介して接続されていてもよい。また、センサ群10は、ネットワークインターフェース1607、ネットワーク1608を介して接続される構成であってもよい。
ネットワークインターフェース1607は、例えばIEEE 802.3のような有線通信、IEEE 802.11、802.15のような無線通信による通信規格を用いて構成することができる。CPU1601は、ネットワークインターフェース1607を介して、他の装置1104、1121と通信することができる。装置1104、1121は、例えば生産ラインに生産制御、管理のために配置されたPLCやシーケンサのような統轄制御装置や、管理サーバなどであってもよい。
【0029】
図12に示す例では、UI装置(ユーザインターフェース装置)として、図1に示す入力装置3および表示装置4に対応する操作部1604および表示装置1605が接続されている。操作部1604は、ハンディターミナルのような端末、あるいはキーボード、ジョグダイアル、マウス、ポインティングデバイスなどのデバイス(あるいはそれらを備える制御端末)によって構成することができる。表示装置1605は、後述する学習モデルや評価データ等に係る情報を表示画面を表示できるものであればよく、例えば液晶ディスプレイ装置を用いることができる。
【0030】
図1に戻り、故障予知装置2には、故障予知判定の対象となる機械設備である機械設備1が、通信可能に接続されている。機械設備1の一例としては、プラスチック素材を加熱して溶融し、金型キャビティ内に射出して成形する射出成形機が挙げられるが、これに限られるわけではない。
【0031】
図10(a)は、機械設備1の一例である射出成形機の構造を簡易的に表したものである。射出成形機は、例えばペレット状のプラスチック素材をヒーターで加熱して溶かし、溶融したプラスチックをスクリューで加圧し、金型により構成されるキャビティ内に射出して成形する機械である。射出成形機は、多数の構成部品からなる複雑な装置であるが、継続して使用していると、例えば溶融した素材が変質等してスクリュー等の部品に固着してしまうことがある。固着が進行すると、やがてキャビティ内に適量の素材を射出できずに不良品を作ってしまう異常状態(故障)になってしまうことがある。射出成形機が異常状態になる原因は、その他にもいろいろ有り得るが、分解清掃や部品交換などの保守作業を行うには長時間を要する。このため、本実施形態の故障予知装置は、射出成形機が異常状態(故障)になる前に事前に予兆を検知して通知し、ユーザが適切なタイミングで保守作業を行えるようにしている。
【0032】
再び図1に戻り、故障予知装置2は、機械設備1に設置されたセンサ群10からのデータや、機械設備1の制御部からの運転情報11を収集できるようになっている。センサ群10から収集されるデータは、例えば射出成形機の各部の温度や溶融したプラスチックの注入圧力、アクチュエータの負荷(電流値)、位置、振動、音など、機械設備1の状態を表す各種パラメータに係る計測データである。
【0033】
[機能ブロックの動作]
次に、故障予知装置2が備える各機能ブロックについて順に説明する。
収集部201は、機械設備1のセンサ群10からのセンサデータを所定の周期で収集して、収集データ301として記憶部30に格納する。機械設備1において異常(故障)の発生が近づいたか否かを検知する際の判断材料として有用なパラメータに係る計測データを収集する。
【0034】
特徴量作成部202(特徴量抽出部)は、収集データ301を処理して機械設備1の運転状態の特徴を示す特徴量を抽出あるいは算出し、特徴量データ302として記憶部30に格納する。例えば、特徴量データとして、機械設備1の1動作サイクルの中で収集されたセンサの計測値の最大値および/または最小値を抽出したり、あるいは平均値を算出しても良い。あるいは、例えば所定の期間分のセンサの値を時系列の周波数領域へ積分変換したものでも良い。また、時系列に並べたセンサ値の時間に対する微分値や二次微分値でも良い。また、センサの計測値(生データ)そのものが、異常の発生が近づいたか否かを検知する際の判断材料として十分である場合は、計測値そのものを特徴量データ302として扱っても良い。本実施形態では、図2に示すように、故障予知の対象となる機械設備1は、機械の状態を検知するための各種パラメータを計測するため、センサ1~センサ3よりなるセンサ群10を備えるものとする。本実施形態に係る故障予知方法では、センサ群からのセンサデータについて周期性や関係性といった特徴量を抽出する。例えば、センサ1~センサ3の計測データに基づき、特徴量作成部202は特徴量を抽出あるいは算出し、センサのサンプリングタイミングに対応した時系列の特徴量1~特徴量3を作成し、記憶部30に特徴量データ302として記憶させる。
【0035】
抽出部203は、記憶部30に記憶された特徴量データ302のうち、任意の期間分のデータを抽出する。本実施形態では、特徴量データ302の中から、「正常期間」のデータセットを抽出し、学習データ303として記憶部30に格納する。ここで、「正常期間」とは、機械設備1の運用開始後の初期段階やメンテナンスした直後など、機械設備1が確実に正常状態である期間を選んで設定された所定期間を指す。つまり、故障の発生にはまだ近づいていない時期における所定期間である。本実施形態では、「正常期間」は正常状態である期間のうちの最初の3日間であるものとする。ここでは、学習データ303は、機械設備1の運用開始後の最初の3日間、つまり初期状態の収集データから作成された特徴量データ302のデータセットである。
また、抽出部203は、異常の発生が近づいたか否かを評価する際に、評価対象となる期間のデータセットを特徴量データ302から抽出し、評価データ304として記憶部30に格納する。
また、抽出部203は、判定部206から追加データ抽出の指示を受け付けた場合に、特徴量データ302から追加期間分のデータセットを抽出し、追加学習データ307として記憶部に格納する。
【0036】
学習済モデル生成部204は、運用開始後において、機械設備1の初期状態における特徴量データ302のデータセットである学習データ303に基づき機械学習を行い、第1の学習済モデルとしての学習済モデル1を生成する。そして、学習済モデル1を、学習済モデル記憶部としての学習済モデル記憶領域305に記憶させる。
【0037】
算出部205は、学習済モデル記憶領域305に記憶された学習済モデルに評価データ304を入力して得られる出力と、評価データ304とに基づいて、機械設備1の正常状態からの乖離度306を算出する。算出部205は、機械学習による推論処理を実行可能なプラットフォームに対して、学習済モデル記憶領域305に記憶された学習済モデルを適用することにより実現される。算出部205の処理アルゴリズムは、例えば多層ニューラルネットワークを用いた推論処理でも良く、またサポートベクターマシン、混合ガウスモデル等の機械学習として公知の学習アルゴリズムを用いても良い。算出部205は、学習済モデル記憶領域305に複数の学習済モデルが記憶されている場合は、それぞれの学習済モデルの全てについて個別に乖離度を算出する。
【0038】
判定部206は、算出部205がそれぞれの学習済モデルを用いて算出した乖離度306を参照して、算出された全ての乖離度が判定閾値以上である場合に、故障の予兆ありと判定し、通知部207に対して通知要求指示を行う。
なお、判定部206は、新たな学習済モデルの追加生成が必要な場合に、抽出部203に追加期間分の特徴量データを追加学習データ307として抽出をするよう指示する。
【0039】
通知部207は、故障予兆ありの判定に基づく通知要求指示を判定部206から受けた場合に、表示部などの外部装置へアラートを通知する。通知の方法としては、機械設備のランプの点灯であったり、警告音の発生であったり、ディスプレイで通知メッセージを表示したり、電子メール等による通知でも良い。また、表示部210を介して、表示装置4に表示してもよい。
【0040】
学習済モデル追加部208は、追加学習データ307が抽出されると、追加学習データ307のみを元に学習済モデル2を生成(機械学習)し、学習済モデル記憶領域305に追加する。つまり、学習済モデル生成部204が学習済モデル1を生成したのと同様に、学習済モデル追加部208は学習済モデル2を生成する。以後、学習済モデル追加部208は、追加学習データ307が抽出される度にその追加学習データのみに基づく新たな学習済モデルを生成(機械学習)し、学習済モデル3、学習済モデル4、のように学習済モデル記憶領域305に学習済モデルを追加してゆく。
【0041】
入力部209は、キーボードやマウス等の入力装置3から入力されたユーザの指示を受け付ける。例えば、学習モデルの作成に使用する特徴量データ302を選択するユーザの指示や、学習データ303を抽出する期間を指定するユーザの指示である。
故障予知装置2が備える表示装置4は、前述のように例えば液晶ディスプレイ等の表示デバイスで構成される。尚、表示装置4は、故障予知装置2に外付けされる装置でもよい。
表示部210は、記憶部30に記録された収集データ301ないし追加学習データ307等のデータを、ユーザが視認してわかりやすいように加工して、液晶ディスプレイ等の表示装置4に表示させる。表示部210は、例えば時間軸にデータをプロットしたチャート形式や表形式にデータを加工して、表示装置4に表示させることができる。
【0042】
[故障予知方法]
次に、図7のフローチャートを参照して、本実施形態に係る故障予知装置の動作および故障予知方法について説明する。
運用が開始されると、まず、ステップS101では、制御部20は、機械設備1から入力される運転情報11に基づいて、機械設備1が開始しようとする作業に関して、故障予知装置2を運用するのが初回であるか否かを判断する。
ここで、運用するのが初回である場合(ステップS101:Yes)には、ステップS102にて制御部20は「正常期間」を設定する。ステップS102では、運用初回の第1の正常期間として、例えば「〇月×日から3日間」のように具体的な期間が設定される。
【0043】
次に、ステップS103では、抽出部203により、特徴量データ302から正常期間分の特徴量データが学習データ303として抽出される。そして、学習済モデル生成部204が学習データ303を用いて機械学習アルゴリズムにより、第1の学習済モデルとして学習済モデル1を生成する。
【0044】
ここで、図7のフローチャートの説明から一旦離れ、学習済モデルの生成方法について説明する。
[学習済モデルの生成]
本実施形態における機械学習について、3層のニューラルネットワークを例に挙げて説明する。本実施形態では、図2に示した特徴量1~特徴量3の連続した3回分の時系列データを入力することにより、次のタイミングにおける特徴量1~特徴量3を予測して出力する学習済モデルを作成する。
【0045】
まず、機械学習に用いる学習データ303のデータ構造について説明する。抽出部203により、正常期間分の特徴量データが学習データ303として抽出されるが、学習データ303は複数の学習データを含んだデータ構造を有している。
まず、正常期間分について、図2右側に示すようなセンササンプリングタイミングに対応した時系列の特徴量データ(特徴量1~特徴量3)を準備する。この時系列データに基づいて、入力信号と教師データを組み合わせた学習データを複数作成する。
【0046】
図3(a)に1つの学習データを例示するが、時系列の特徴量データから連続した3サンプリング分の特徴量データ(特徴量1~特徴量3)を抽出し、ニューラルネットワークの入力信号X1~X9として準備する。また、時系列の特徴量データから、X3、X6、X9の次のサンプリングタイミングに対応した特徴量データであるT1、T2、T3を抽出し、教師データとして準備する。この入力信号X1~X9と教師データT1~T3の組を、一つの学習データとする。
入力信号と教師データを1サンプリングタイミングずつずらしながら学習データを作成してゆき、「正常期間」の全期間分の特徴量データを用いた複数の学習データを準備する。
【0047】
図3(b)に1つの学習データを用いた機械学習を例示する。ニューラルネットワークは、出力データYと教師データTの誤差を最小化するように内部関数の重みづけを学習する。準備した複数の学習データを1つずつ順次ニューラルネットワークに与えることで、ニューラルネットワークは出力データYと教師データTの誤差を最小化するように内部関数の重みづけを更新してゆく。「正常期間」に対応した全ての学習データを用いて重みづけの更新を完了させることで、ニューラルネットワークには学習済モデルが生成される。
【0048】
先に述べたように、「正常期間」とは、機械設備1を運用開始後の初期や保守作業の直後など、正常状態が将来的に長期間継続する期間を指している。したがって、ここで生成した学習済モデルは、正常状態が将来的に長期間継続する期間における時系列に連続する3つの特徴量データを入力すれば、それに続く4つ目の特徴量を予測して出力することが可能な学習済モデルである。
【0049】
図7のフローチャートに戻り、ステップS104では、ステップS103にて生成した学習済モデル1を、学習済モデル記憶領域305に記憶させる。
ステップS104で学習済モデル1の記憶が完了すると、ステップS105に移行する。尚、ステップS101で初回の運用ではないと判断された場合(ステップS101:No)には、すでに学習済モデル1の作成が完了しているため、ステップS102~ステップS104をスキップして、ステップS105に移行する。
【0050】
ステップS105では、機械設備1の状態を評価しようとする時点である評価期間において、機械設備1が故障発生に近づいたか否かを判定するための指標である乖離度306を、算出部205が算出する。乖離度306は、評価期間における機械設備1の状態が、正常状態の初期(つまり正常期間)に対してどの程度異なるのか示す指標であるとも言える。
【0051】
[乖離度の算出]
抽出部203は、特徴量データ302の中から、機械設備1の状態を評価したい時点(評価期間)に対応する特徴量データ(例えば、現在の状態を評価したい場合には、直近の過去分の特徴量データ)を、評価データ304として抽出する。
【0052】
図4(a)に1つの評価データを例示するが、時系列の特徴量データから連続した3サンプリング分の特徴量データ(特徴量1~特徴量3)を抽出し、学習済モデルへの入力信号X1~X9として準備する。また、時系列の特徴量データから、X3、X6、X9の次のサンプリングタイミングに対応した特徴量データであるy1、y2、y3を抽出し、実測値として準備する。この入力信号X1~X9と実測値y1~y3の組を、一つの評価データとする。図4(a)には、1つの評価データ(特徴量1:X1~y1、特徴量2:X4~y2、特徴量3:X7~y3)のみを示すが、サンプリングタイミングをずらした入力信号と実測値を用いて、複数の評価データを準備するのが望ましい。
【0053】
図4(b)に示すように、故障予知装置2は、学習済モデル記憶領域305に記憶された学習済モデルに対して評価データに含まれる入力信号X1~X9を入力し、出力信号Y1、Y2、Y3を学習済モデルから得る。すなわち、特徴量1のX1~X3、特徴量2のX4~X6、特徴量3のX7~X9を学習済モデルに入力し、回帰値(予測値)として特徴量1に関する出力信号Y1、特徴量2に関する出力信号Y2、特徴量3に関する出力信号Y3を出力させる。この工程は、学習済モデル記憶領域305に記録された全ての学習済モデルに対して行われ、各学習済モデルからの出力信号が獲得される。
【0054】
算出部205は、学習済モデルから出力された出力信号Y1、Y2、Y3と、評価データに含まれた実測値y1、y2、y3とを用いて、図4(b)下に記載された数式を用いて乖離度を演算し、乖離度306として記憶部30に記憶させる。乖離度は、各学習済モデルからの出力信号に対して個別に演算されるので、記憶部30に記憶された乖離度306は、学習済モデルの数と等しい数の演算結果(乖離度)を含んでいる。各学習済モデルが出力した出力信号Y1、Y2、Y3と、運転中の機械設備1から求めた実測値y1、y2、y3から演算された乖離度は、機械設備1の状態が正常状態の初期(つまり正常期間)から変化した程度を判断する指標となる。
【0055】
次に、ステップS106では、判定部206が、ステップS105で算出された全ての乖離度が所定の判定閾値以上であるか否かを判定する。
例えば、学習済モデル1は機械設備1が当該作業を開始した直後(つまり運用初回)の特徴量を学習した学習済モデルなので、これの出力信号を用いて算出した乖離度は、機械設備1の状態が運用初回の時点から変化した程度を判断する指標となる。また、学習済モデル2は、後述するように、初回の保守作業の直後の特徴量を学習した学習済モデルなので、これの出力信号を用いて算出した乖離度は、機械設備1の状態が初回の保守作業の直後から変化した程度を判断する指標となる。
【0056】
図11に示すように、記憶された全ての学習済モデルを用いて算出された乖離度の全てが所定の判定閾値以上である場合には、故障の予兆有りと判定する。一方、算出された乖離度の中に1つでも判定閾値未満のものがある場合には、故障の予兆無しと判定する。尚、算出された乖離度それぞれについて異なる判定閾値を定めてもよいが、図11に示すように予め算出された乖離度を正規化しておくことにより、同一の判定閾値により判定することができる。尚、図11では、正規化された乖離度が判定閾値以上の場合を真(=1)、判定閾値未満の場合を偽(=0)とし、論理積が真(=1)の場合に、故障予兆有りと判断する論理を示した。一方、正規化された乖離度が判定閾値以上の場合を偽(=0)、判定閾値未満の場合を真(=1)とし、論理和が偽(=0)の場合に、故障予兆有りと判断する論理でも、同様の結果を得られるのは言うまでもない。
【0057】
ステップS106にて故障の予兆無しと判定した場合には(S106:Nо)、ステップS105に戻り、引き続き故障の予兆を監視する。
一方、ステップS106にて故障の予兆有りと判定した場合には(S106:Yes)、ステップS107に移行して、通知部207は、外部装置へアラートを通知する。通知の方法としては、機械設備のランプの点灯であったり、警告音の発生であったり、ディスプレイなどの表示装置4で通知メッセージを表示したり、電子メールによる通知等の適宜の態様が採用し得る。
【0058】
ステップS107にて故障の予兆有りのアラートを通知されたユーザは、ステップS108にて保守作業を行う。保守作業に関する情報は、故障予知装置2が機械設備1から運転情報11として収集してもよいし、ユーザが入力装置3から故障予知装置2に入力してもよい。
ステップS108にて保守作業を行うと、ステップS109にて制御部20は、今般の保守作業後にセンサ群10で計測されたデータに基づく新たな学習済モデルを追加生成して学習済モデル記憶領域305に記憶させるか否かを判定する。保守作業のように、新たに学習済モデルを追加生成すべき起因となる事象をトリガーイベントと呼ぶこともできる。
【0059】
新たな学習済モデルを追加生成する場合には(S109:Yes)、ステップS102に戻り、今般の保守作業後の所定の期間を新たに正常期間として設定し、S102からS104までの処理を行う。つまり、新たな学習済モデルを追加生成し、学習済モデル記憶領域305に記憶させる。具体的には、抽出部203は特徴量データ302から今般の保守作業後の正常期間のデータを抽出して追加学習データ307として記憶させる。学習済モデル追加部208は、追加学習データ307に基づいて学習済モデルを生成し、学習済モデル記憶領域305に記憶させる。そして、ステップS105に移行し、追加した学習済モデルを含む全ての学習済モデルを用いて故障の予兆を監視する。
新たな学習済モデルを追加生成しない場合には(S109:No)、ステップS101のNoを経由してステップS105に戻り、故障の予兆を監視する。
【0060】
以上説明した一連の処理フローについて、さらに具体的に説明する。
図5は、初回運用時の「正常期間」分のデータを学習して生成した学習済モデル1を用い、学習済モデル1の出力と実測値から乖離度を求め、乖離度を時間軸に沿ってプロットしたグラフである。図5に示す例では、機械設備等の運用開始後の時間d1において乖離度が故障予知の判定閾値を超えるため、この時点で故障予兆ありと判定される。
【0061】
機械設備のメンテナンス担当者は、故障予兆ありの通知を受けると、保守作業可能なタイミングで機械設備に対して保守作業をする。図5では「メンテナンス」と記載された時点で保守作業が行われている。保守作業により機械設備の状態は、より良好な状態になるが、部品交換等により特徴量の実測値が初回運用時の正常期間とは異なる値になるため、保守作業後に算出される乖離度は初回運用時の正常期間と同レベルに戻るとは限らない。図5の例では、時間d2において乖離度の値はメンテナンス前よりも低下したが、判定閾値を超えているため、保守作業直後の良好な状態であるにもかかわらず、故障の予兆ありと誤判定されてしまう。
【0062】
そこで、本実施形態では、保守作業後の正常状態の初期に計測された特徴量を学習データに用いて、機械学習により新たな学習済モデル2を作成し、すでに作成済の学習済モデル1と併用して故障予知に用いる。
図6を参照して、保守作業後に新たに学習済モデル2を作成して追加し、学習済モデル1と学習済モデル2を併用して故障の予兆を検知する態様を説明する。
【0063】
図6中の上部に示すのは、各学習済モデルの出力と実測値とから求めた乖離度についての時間変化を表すグラフである。すなわち、学習済モデル1の出力を用いて算出した乖離度M1と、学習済モデル2の出力を用いて算出した乖離度M2を、時間軸に沿ってプロットしている。ただし、本実施形態のように異なる学習済モデルの出力を用いて乖離度を算出する場合は、各モデルを学習した時に用いた学習データに依存して算出される乖離度が変化するため、異なる学習済モデルに基づく乖離度を単純に比較することができない。そこで、図6においては、学習済モデルに学習データを評価データとして与えた時に、最大値が同じ値になるように乖離度を正規化して示している。
【0064】
図6中の下部に示すのは、運用開始後の初期の正常期間t1と、故障直前の期間t2と、保守作業後の初期の正常期間t3について、特徴量1~特徴量3の多次元データを2次元に次元圧縮して、データの分布状態を概念的に可視化した図である。二次元化する手法としては主成分分析などを用いることが可能で、縦軸は第一主成分、横軸は第二主成分を表している。2次元空間で距離が近いデータは特徴量1~特徴量3のデータの傾向が近いと判断することができる。尚、算出した乖離度に対する判定閾値を2次元圧縮した図の中で円の形で記載し、乖離度の大きさは判定閾値の円中心からの距離で表現しているが、これらは厳密な表現ではなく、説明の便宜のため概念的に表現したものである。
【0065】
正常期間t1のデータは、図6の「学習済モデル1の出力を用いて算出した乖離度に対する判定閾値」が示す領域の内部に分布している。正常期間t3のデータは図6の「学習済モデル2の出力を用いて算出した乖離度に対する判定閾値」が示す領域の内部に分布している。このように保守作業の前後では、装置が正常状態であるが、部品交換などにより運転状態が変化し、データ分布の範囲が変わることがある。
【0066】
運用初期の正常期間t1のセンサ群のデータから抽出した特徴量を機械学習して作成された学習済モデル1は、正常期間t1のデータ分布範囲内を故障の予兆がない正常状態と判定するような学習済モデルである。装置が故障する直前で故障の予兆を通知すべき期間t2では、学習済モデル1の出力を用いて算出した乖離度が判定閾値を超えたところに分布しているため、故障の予兆有りと判定される。
【0067】
ユーザは、図中にメンテナンスと表示された時点で部品交換等の保守作業を行うが、すでに述べたように機械設備の状態は初回運用時のt1と同一状態に復帰するわけではない。このため、保守作業直後の良好な状態であるにもかかわらず、計測される特徴量を入力した学習済モデル1の出力を用いて算出した乖離度M1は、判定閾値を超えてしまう。
しかし、保守作業直後の正常期間であるt3の特徴量を機械学習して作成された学習済モデル2は、正常期間t3のデータ分布範囲内を故障の予兆がない正常状態と判定するような学習済モデルである。したがって、保守作業直後に計測される特徴量を入力した学習済モデル2の出力を用いて算出した乖離度M2は、判定閾値を超えることがない。
【0068】
したがって、本実施形態では、算出される全ての乖離度(この場合は、学習済モデル1の出力を用いて算出した乖離度M1と、学習済モデル2の出力を用いて算出した乖離度M2の両方)が判定閾値以上になるまでは、故障の予兆なしと判定することになる。
本実施形態のように、正常期間t1と正常期間t3それぞれの特徴量を用いて個別に学習済モデルを作成した場合は、図6に示すようにそれぞれの特徴量の分布領域の周囲に判定閾値を設定しやすくなるため、故障の予兆を判定する精度を高めることができる。
【0069】
ここでは、保守作業後に新たな学習済モデルを追加的に生成する場合を説明したが、保守作業に関する情報は、故障予知装置2が機械設備1から運転情報11として収集してもよいし、ユーザが入力装置3から故障予知装置2に入力してもよい。
【0070】
尚、図7のフローチャートにステップS109が設けられていることから判るように、保守作業の度に必ず新たな学習済モデルを追加しなければならないわけではない。例えば、保守作業で交換する部品の数が有限である場合には、有限の数の学習済モデルを追加生成したら、以後は追加生成無しに高精度に故障の予兆判定が可能になる場合がある。
【0071】
例として、図10(b)に、射出成形機の保守作業における部品交換の例を示す。射出成形機の保守作業時には、稼働停止時間を最小限に抑えるため、部品を予備部品と取り換え、取り外した部品の清掃作業をその後行っている。図10(b)の例では、3本のスクリューを準備しておき、保守作業の度に順番に交換している。3本のスクリューは、所定の規格内に収まる範囲で異なる個性を有しているが、各々は清掃作業を行えば自身の当初の状態に戻るものとする。保守作業でスクリューを交換する度に学習済モデルを追加するが、3本のスクリューに対応した3つの学習済モデルを作成すると、以後の保守作業に伴うスクリューのローテーションについては学習済モデルの追加生成が不要になる。すなわち、以後の保守作業におけるスクリューのローテーションは、新たに学習済モデルを追加生成すべきトリガーイベントではない。
【0072】
次に、実施形態の故障予知装置(制御装置)および故障予知方法(制御方法)において、ユーザに情報を提供する好適な方法について説明する。
図8図9(a)~図9(b)に示すのは、表示部210が表示装置4の画面に表示させる画像の例である。故障予知の過程の一部を好適に可視化することにより、ユーザは直感的に制御状態を把握することが可能になる。
【0073】
図8は、ユーザが機械設備1の状態を把握するため乖離度を確認したい時などに、好適に用いられる表示画面の一例である。ユーザが、乖離度を表示させたい期間を入力装置3を用いて指定すると、表示部210は、表示画像情報を表示装置4に出力して図8に示す画像を表示させる。表示画像には、ユーザが指定した期間を示す表示期間欄と、横軸に日時、縦軸に乖離度をプロットしたチャートがレイアウトされている。
【0074】
このようなチャートを表示することで、ユーザは機械設備1の運転状態が正常な状態からどの程度乖離しているのか時間的な変化を容易に把握することができる。また、過去の事例を基に乖離度がどの程度の値になった時に機械設備が故障するかがわかっていれば、このチャートを見れば故障までの期間を予測することができる。また、状態の変化の速さによってどのようなことが故障の原因となっているかを推察することができる。例えば機械的に部品がひび割れるといった現象の場合は急速に乖離度が上昇し、部品の摩耗や汚れなど時間経過と共に変化が起こるものであれば緩やかに乖離度が上昇することが分かっている。乖離度の変化の仕方を評価することによって、次に発生するであろう故障の原因をある程度絞り込むことができる。
【0075】
図9(a)は、学習モデルの設定を管理する画面であり、図7のステップS102~ステップS104、つまり学習済モデルを生成するための各段階において好適に使用される表示画面の一例である。画面上には、生成しようとする学習済モデルを他の学習済モデルと識別する情報としてモデルの名前を入力する欄が設けられている。また、学習モデルで使用する特徴量を選択するための特徴量選択欄を表示することができ、「使用」「未使用」と表示されたボタンをユーザがポインティングデバイス等を用いて選択することにより、使用する特徴量を任意に選択することができる。また、正常期間欄に具体的日時を入力することにより、機械学習に用いる学習データの範囲を設定することができる。
【0076】
このような画面構成とすることで、例えば故障が発生するパターンごとに予兆を検出しやすい特徴量が異なる場合にも、ユーザはそれぞれの故障パターン毎に予兆の検出精度が高い学習済モデルを容易に作成することができる。
【0077】
図9(b)は、学習済モデルを一覧表示して管理する画面であり、ユーザが学習済モデルの新規追加や削除を行うときに好適に使用されるアイコンを含んだ表示画面の一例である。運用初期段階では、ユーザが図9(b)の「新規追加」ボタンを選択すると図9(a)の学習モデル設定画面が表示され、学習済モデルの追加作業を開始できる。また、誤って学習済モデルが追加された場合等には、図9(b)の「削除」ボタンをポインティングデバイス等を用いて選択することで、ユーザは学習済モデルを削除することができる。本実施形態においては、誤って機械学習させて学習済モデルを追加生成したような場合であっても、不要となった学習済モデルを削除しさえすれば再学習をする必要がないので、ユーザにとっては運用上便宜な画面である。
【0078】
以上説明したように、本実施形態では、評価すべき特徴量の変化態様が、全ての学習済モデルが予測する特徴量の変化態様から所定範囲以上に乖離した場合には、機械設備1は正常状態が将来的に長期間継続する状態ではないものと判断する。言い換えれば、実測される特徴量と全ての学習済モデルの出力との乖離度が所定の判定閾値以上となった場合には、機械設備1の故障の発生が近いと予測し、保守作業を行うべきであると判断する。
【0079】
実施形態のように装置の運転状態の変化に応じて学習モデルを追加することにより、あらかじめ全ての正常状態を表すデータが集めることが困難な場合でも、高精度な故障予知が可能になる。また、1つの機械学習のモデルが学習する正常データは装置の1つの運転状態に限定されるため、機械学習のモデルに入力として与えるデータの複雑さが変わらない。そのため機械学習のモデルのパラメータ調整不足によって検出精度が低下するといった現象が発生しにくい。すなわち、システムの運用負荷を過度に増加させることなく精度良く故障の予兆を検出することができる。
【0080】
[他の実施形態]
なお、本発明は、以上説明した実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
故障予知を行う対象となり得る機械設備は、射出成形機に限られるわけではなく、例えば粉体や液体の充填機など、保守作業時に機構部品の交換や清掃を行う多種の機械設備に対して故障予知を実施することができる。
【0081】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現する制御プログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおけるプロセッサが制御プログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0082】
1・・・機械設備/2・・・故障予知装置/3・・・入力装置/4・・・表示装置/10・・・センサ群/20・・・制御部/30・・・記憶部/201・・・収集部/202・・・特徴量作成部/204・・・学習済モデル生成部/205・・・算出部/206・・・判定部/207・・・通知部/208・・・学習済モデル追加部/301・・・収集データ/302・・・特徴量データ/303・・・学習データ/304・・・評価データ/305・・・学習済モデル記憶領域/306・・・乖離度/307・・・追加学習データ
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