IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッドの特許一覧

特許7483347異なる心調律に応じた磁気共鳴画像法(MRI)の画像フィルタリング
<>
  • 特許-異なる心調律に応じた磁気共鳴画像法(MRI)の画像フィルタリング 図1
  • 特許-異なる心調律に応じた磁気共鳴画像法(MRI)の画像フィルタリング 図2A
  • 特許-異なる心調律に応じた磁気共鳴画像法(MRI)の画像フィルタリング 図2B
  • 特許-異なる心調律に応じた磁気共鳴画像法(MRI)の画像フィルタリング 図3
  • 特許-異なる心調律に応じた磁気共鳴画像法(MRI)の画像フィルタリング 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】異なる心調律に応じた磁気共鳴画像法(MRI)の画像フィルタリング
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240508BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20240508BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 390
A61B5/055 372
A61B5/33 210
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019197050
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2020069398
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】16/175,958
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0264752(US,A1)
【文献】特開平03-295537(JP,A)
【文献】特開2015-154919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/055
5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
磁気共鳴画像法(MRI)を使用して取得された、心臓内の各位置に対応する複数のボクセル値を記憶するように構成されたメモリと、
プロセッサであって、
(i)前記心臓内の同じ位置に対応し、(ii)前記心臓の心電図(ECG)サイクルの同じ位相にゲーティングされている、2つの連続するMRI取得におけるボクセル値を検査し、
前記2つの連続するMRI取得のうち先行するMRI取得におけるボクセル値より所定の差よりも大きく異なる前記2つの連続するMRI取得のうち後行するMRI取得におけるボクセル値を特定し、
少なくとも特定された前記ボクセル値を除く前記複数のボクセル値から、前記心臓の少なくとも一部分の画像を再構成するように構成されている、プロセッサと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、
第1のMRI取得及び第2のMRI取得のそれぞれにおいて取得されたボクセル値を示す第1の軸及び第2の軸を有する平面内の複数のデータ点を含む散布図を作成することであって、各データ点が、前記第1のMRI取得及び前記第2のMRI取得における前記心臓内の所定の位置での前記ボクセル値を表す、散布図を作成することと、
前記平面内の所定の領域外にある1つ以上のデータ点を特定することと、
によって、前記所定の差よりも大きく異なる前記ボクセル値を特定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、特定された不整脈中に行われた取得を含む任意の画像の再構成を省略することによって前記画像を再構成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記ボクセル値を除外することに応答して、前記再構成された画像の厚さを調整するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記ボクセル値を除外することに応答して、前記画像を再構成するために使用される再構成フィルタを調整するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
方法であって、
磁気共鳴画像法(MRI)を使用して取得された、心臓内の各位置に対応する複数のボクセル値を受信することと、
(i)前記心臓内の同じ位置に対応し、(ii)前記心臓の心電図(ECG)サイクルの同じ位相にゲーティングされている、2つの連続するMRI取得におけるボクセル値を検査することと、
前記2つの連続するMRI取得のうち先行するMRI取得におけるボクセル値より所定の差よりも大きく異なる前記2つの連続するMRI取得のうち後行するMRI取得におけるボクセル値を特定することと、
少なくとも特定された前記ボクセル値を除く前記複数のボクセル値から、前記心臓の少なくとも一部分の画像を再構成することと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記所定の差よりも大きく異なる前記ボクセル値を特定することが、
第1のMRI取得及び第2のMRI取得のそれぞれにおいて取得されたボクセル値を示す第1の軸及び第2の軸を有する平面内の複数のデータ点を含む散布図を作成することであって、各データ点が、前記第1のMRI取得及び前記第2のMRI取得における前記心臓内の所定の位置での前記ボクセル値を表す、散布図を作成することと、
前記平面内の所定の領域外にある1つ以上のデータ点を特定することと、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記画像を再構成することが、特定された不整脈中に行われた取得を含む任意の画像の再構成を省略することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ボクセル値を除外することに応答して、前記再構成された画像の厚さを調整することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ボクセル値を除外することに応答して、前記画像を再構成するために使用される再構成フィルタを調整することを含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医療用磁気共鳴画像法(MRI)に関し、詳細には心臓MRIに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓のMRI研究において、画像アーチファクトによる劣化の影響を軽減するための様々な手法が提案されている。例えば、米国特許出願公開第2009/0275822号は、連続した心位相で被験者の心臓を描写する一連のMR画像フレームを記載している。梗塞心筋の遅延造影は、データ取得の前に造影剤を投与することにより、画像フレームのいくつかに描出される。データ取得は、一度の息止めで行われる。取得されたMR画像フレームは、血液と、生存可能な心筋と、生存不能な心筋とのコントラストを描出すると共に、左心室壁の厚さ及び心周期全体にわたる壁の肥厚を描出する。一実施形態では、すべての画像フレームピクセルの定常状態値に対するT1を有する散布図がファジークラスタリングプロセスに供給され、ピクセルが自動的に3つのクラスタに分離される。ピクセルを、分類された組織のタイプ(梗塞心筋、正常心筋、又は血液)に応じて、表示される画像フレーム上で色分けすることができる。ファジークラスタリングプロセスによって生成された確率値から、梗塞心筋と正常心筋との組み合わせで構成されたピクセルをセグメント化することも可能である。この2つの組織タイプの組み合わせによって示されるこの結果の「グレーゾーン」のピクセル数が、どの被験者が心不整脈に罹患する可能性が高いのかを予測することが示されている。
【0003】
別の一例として、米国特許出願公開第2015/0192653号は、灌流欠損を画像化するために必要な画像コントラストを達成するECG/心臓のゲーティング又は同期なしでの連続した中断のない取得を可能にする心臓MRIのシステム及び方法を説明している。発明はまた、データ取得方法に合わせて調整され、ダークリム画像アーチファクトを最小化又は除去する高速の画像再構成技術を教示する。発明は更に、灌流と心筋壁運動(心臓機能)との同時画像化を可能にし、それにより、心臓機能の個別の評価の必要性を排除し(従って検査時間を短縮し)、及び/又はCAD患者における補完的な診断情報を提供することができる。いくつかの実施形態では、径方向の形状に基づく取得方法及びサンプリング方法が、毎秒8フレームのリアルタイムフレームを生成するために適用される。この方法では、外部ECG信号又はその他の形式の心臓同期は不要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、磁気共鳴画像法(MRI)を使用して取得された、心臓内の各位置に対応する複数のボクセル値を受信することを含む方法を提供する。(i)心臓内の同じ位置に対応し、(ii)心臓の心電図(ECG)サイクルの同じ位相にゲーティングされているにもかかわらず、所定の差よりも大きく異なるボクセル値が特定される。少なくとも特定されたボクセル値を除く複数のボクセル値から、心臓の少なくとも一部分の画像が再構成される。
【0005】
いくつかの実施形態では、所定の差よりも大きく異なるボクセル値を特定することが、第1のMRI取得及び第2のMRI取得のそれぞれにおいて取得されたボクセル値を示す第1の軸及び第2の軸を有する平面内の複数のデータ点を含む散布図を作成することであって、各データ点が、第1のMRI取得及び第2のMRI取得における心臓内の所定の位置でのボクセル値を表す、散布図を作成することと、平面内の所定の領域外にある1つ以上のデータ点を特定することと、を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、画像を再構成することが、特定された不整脈中に行われた取得を含む任意の画像の再構成を省略することを含む。
【0007】
一実施形態では、本方法は、ボクセル値を除外することに応答して、再構成された画像の厚さを調整することを更に含む。
【0008】
別の一実施形態では、本方法は、ボクセル値を除外することに応答して、画像を再構成するために使用される再構成フィルタを調整することを更に含む。
【0009】
また、本発明の実施形態によれば、メモリ及びプロセッサを有するシステムが更に提供される。メモリは、磁気共鳴画像法(MRI)を使用して取得された、心臓内の各位置に対応する複数のボクセル値を記憶するように構成されている。プロセッサは、(i)心臓内の同じ位置に対応し、(ii)心臓の心電図(ECG)サイクルの同じ位相にゲーティングされているにもかかわらず、所定の差よりも大きく異なるボクセル値を特定するように構成されている。プロセッサは、少なくとも特定されたボクセル値を除く複数のボクセル値から、心臓の少なくとも一部分の画像を再構成するように更に構成されている。
【0010】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による、カテーテルに基づく電気解剖学的マッピングシステムの概略描写図である。
図2A】本発明の一実施形態による、異なる心調律に応じたボクセル値パターン及びそれぞれの画像タイプを含む概略的かつ例示的な散布図である。
図2B】本発明の一実施形態による、異なる心調律に応じたボクセル値パターン及びそれぞれの画像タイプを含む概略的かつ例示的な散布図である。
図3】本発明の一実施形態による、異なる心調律に応じた画像フィルタリングを示す概略描写図である。
図4】本発明の一実施形態による、異なる心調律に応じた画像フィルタリングのための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概論
心臓の磁気共鳴画像(MRI)は、MRI画像にモーションアーチファクトを生じさせるおそれのある心臓の動きのために、困難を伴う。モーションアーチファクトを最小限に抑える方法の1つは、心臓の心電図(ECG)信号を使用してMRIの取得をゲーティングすることである。ECG信号は、例えば、一心拍周期にわたる心臓の収縮期及び拡張期を示すものである。従って、ECGゲーティングを使用することにより、例えば心臓が最大拡張状態にあり、短時間の間ほぼ静止している時などの特定の反復的な時間間隔で心臓の一連のMRI取得を行うことが可能である。すべてが心周期の特定の位相で取得されたこのようなECGゲーティング取得から再構成されたMRI画像は、取得が複数の心拍期間にわたって行われているにもかかわらず、モーションアーチファクトが比較的少ない。
【0013】
ただし、ECGゲーティングが有意である(即ち、心臓の位相を示す)ためには、心臓が規則的な洞調律で拍動している必要がある。従って、異所性拍動などの不規則な拍動が発生している場合には、例えば、再構成された画像に拡張した心臓の位相と収縮した心臓の位相とが混在することによって、MRI画像が(ゲーティングが使用されていても)大幅に歪んでしまう可能性がある。
【0014】
以下に説明する本発明の複数の実施形態は、一連のMRI信号取得から(即ち、画像が実際に再構成される前に)、異所性拍動などの不整脈活動により歪んでしまうおそれのある信号取得をフィルタリングにより除外する。フィルタリングは、通常、取得された信号がコンピュータ処理されて画像(即ちスライス)になる前にMRI信号レベルで行われる。
【0015】
いくつかの実施形態では、プロセッサが、MRIを使用して取得された、心臓内の各位置に対応する複数のボクセル値を受信する。プロセッサは、(i)心臓内の同じ位置に対応し、(ii)心臓の心電図(ECG)サイクルの同じ位相にゲーティングされているにもかかわらず、所定の差よりも大きく異なるボクセル値を特定する。例えば、プロセッサが、2つの連続する取得間で、複数の選択されたボクセルのボクセル値を比較してもよい。特定に基づき、プロセッサは、少なくとも特定されたボクセル値を除く複数のボクセル値から、心臓の少なくとも一部分の画像を再構成する。
【0016】
一実施形態では、プロセッサは、心調律のタイプを示すボクセル値パターンを検査することによって、ボクセル値を分析する。正常な洞調律中に行われる連続的な取得では、いかなる所与の選択されたボクセルについても、ボクセル値の実質的な変化はない。不規則な拍動がある場合には、以前のゲーティングされたボクセル値と比較して、心臓内のいくつかのボクセルのボクセル値が変化する。プロセッサは、ボクセル値パターンがもたらす示唆に基づいて、不整脈中に行われた2つの連続する取得のそれぞれの後に取得が行われたかどうかを(即ち、「現在の」ボクセル値を「以前の」ボクセル値と比較することによって)判断する。一実施形態では、プロセッサは、特定された不整脈中に行われた取得を必要とする任意の画像の再構成を省略する。
【0017】
取得がボクセル値に十分な冗長性を持たせる十分なオーバーラップで行われる場合には、特定されたボクセル値の除外は、一連の画像内で視覚的に目立たないか、又はボリュームレンダリングなどの派生的な視覚化で目立たない可能性がある。あるいは、開示された画像フィルタリングに起因する顕著な不連続性を生じさせないために、再構成された画像のスライス厚を調整し、かつ/又はより滑らかな再構成フィルタを選択してもよい。
【0018】
通常、プロセッサは、プロセッサが上記で概説したプロセッサ関連の各ステップ及び機能を実行できるようにする特定のアルゴリズムを含むソフトウェア内にプログラムされている。
【0019】
結果として得られるフィルタリングされた一連のMRI画像により、医師は、不整脈の存在中に取得されたにもかかわらずモーションアーチファクトが比較的少ない、心臓の少なくとも一部分の様々な視覚的表現を導き出すことが可能である。従って、異なる心調律による本開示のMRI画像フィルタリングは、不整脈を伴う患者の心臓の良好な画像化を容易にし、これにより、そのような患者の診断及び治療を支援することが可能である。
【0020】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテルに基づく電気解剖学的マッピングシステム20の概略描写図である。システム20は、医師30によって血管系を介して患者28の心臓26内にナビゲートされる、遠位端部22を有するカテーテル21を備える。図示されている例では、医師30は、カテーテルの近位端部近くの遠隔操縦器32を使用して、遠位端部22を操作しながら、シース23から遠位端部22を挿入する。挿入図25に示すように、遠位端部22は、磁気位置センサ51及びアブレーション電極50を含む。
【0021】
カテーテル21の近位端部は、制御コンソール24に接続されている。コンソール24は、カテーテル21からの信号を受信すると共に、カテーテル21を介してエネルギーを印加して心臓26内の組織をアブレーションし、システム20の他の構成要素を制御するための、好適なフロントエンド及びインターフェース回路38を有する、プロセッサ39、典型的には汎用コンピュータを備える。コンソール24はまた、磁場発生器36を駆動するよう構成されているドライバ回路34を備える。
【0022】
心臓26における遠位端部22のナビゲーション中に、コンソール24は、外部磁場発生器36からの磁場に応答して、センサ51から位置信号及び方向信号を受信する。磁場発生器36は、患者28の既知の外部位置、例えば、患者が横たわっている台29の下方に置かれる。これらの位置信号は、例えば位置追跡システムの座標系におけるアブレーション電極50の位置を示す。
【0023】
外部磁場を使用した位置及び方向の検知方法は、例えば、Biosense-Webster(Irvine,California)が製造するCARTO(商標)システムなどの様々な医療用途で具現化されている。
【0024】
代替的な実施形態では、遠位端部22の位置が、高度電流位置特定(ACL)技法を使用して処置中に追跡される。ACL技法では、複数の外部電極が患者28の身体に結合される。電極50などのカテーテルの電極と外部電極との間に電流が流れる。それぞれ測定されたインピーダンスに基づいて、プロセッサ39は、患者の心臓内における電極50の位置を計算する。
【0025】
電極位置を追跡するACL技法は、例えば、Biosense-Webster(Irvine,California)により製造され、米国特許第8,456,182号、同第7,756,576号、同第7,869,865号、同第7,848,787号及び同第7,848,789号に詳細に記載され、それらの開示がすべて参照により本明細書に組み込まれているCARTO(商標)システムなどの様々な医療的用途において具現化されている。
【0026】
図示するように、患者28はMRIシステム40内に配置される。コンソール24は、心臓26の少なくとも一部分の画像を取得し、再構成し、例えばディスプレイ27上で医師30に提示するように構成されている。MRIシステム40を使用して、例えば、心臓26の一部分をリアルタイムで示し、又は別の一例として、心臓26の一部分の画像を取得及び再構成し、心臓26の一部分の解剖学的マップを作成してもよい。いくつかの実施形態では、MRI画像は別のシステムで取得され(即ち、MRIシステム40が存在しない)、開示された画像フィルタリングプロセスのためにプロセッサ39にアップロードされる。
【0027】
プロセッサ39は、通常、汎用コンピュータを備え、このコンピュータは、本明細書に記載されている機能を実行するソフトウェアにプログラムされている。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、代わりに又は加えて、磁気メモリ、光学メモリ又は電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上で提供及び/又は記憶されてもよい。詳細には、プロセッサ39は、以下で更に説明する本開示の複数のステップをプロセッサ39が実行することを可能にする、図4を含む本明細書に開示の専用アルゴリズムを実行する。
【0028】
異なる心調律に応じたMRI画像のフィルタリング
上述のように、(i)心臓内の同じ位置に対応し、(ii)心臓の心電図(ECG)サイクルの同じ位相にゲーティングされているにもかかわらず、所定の差よりも大きく異なるボクセル値を、散布図を使用して特徴付け、更に分析することが可能である。
【0029】
図2A及び図2Bは、本発明の一実施形態による、異なる心調律に応じたボクセル値パターン及びそれぞれの画像タイプを含む概略的かつ例示的な散布図である。
【0030】
図2Aは、正常な洞調律中に取得された、3つの連続したECGゲーティングされたMRI取得のボクセル値パターンの概略図である。3つの連続した取得は、同じボクセル、即ち心臓内の同じ位置に対応している。3つの取得のうちの、連続する各取得対は、ボクセル値パターン図内にデータ点を生成する。そのため、図には2つのデータ点が示されている。二等分線の周りの境界44は、その内側にあるボクセルパターン値を有するあらゆる2つの連続した取得が使用可能である領域を示している。従って、境界44は、これを超える場合には取得を破棄してもよいという、ボクセル値の間の許容可能な差を事前定義している。
【0031】
図示するように、ボクセル値パターンは、いずれも境界領域内にある2つの値「1」を示し、これは、関連する取得が正常な洞調律中に行われたことを意味している。境界領域内のボクセルパターン値の許容される変動は、通常の心拍変動によるものであることに留意されたい。従って、各画像ラインに表示される「画像」タイプも、「1」として特徴付けられ、これは、正常な洞調律中に行われた取得から画像が再構成されたことを意味している。
【0032】
図2Bは、後者の2つの取得が不整脈中に行われた、5つの連続したECGゲーティングされたMRI取得のボクセル値の概略図である。図示するように、不整脈は、境界44で囲まれた領域の外側で変化する後者の2つのボクセル値によって特徴付けられる。従って、画像ライン上の追加の「画像」タイプは、タイプ「2」及び「3」として示され、不整脈中に行われた取得を使用した再構成として特徴付けられる(従って、画像「2」及び「3」は画質が劣る)。
【0033】
図2A及び図2Bに示される例示的な図は、概念を明確化する目的のために単に選択されているに過ぎない。一実施形態では、プロセッサ39は、事前に計算された境界44によって定められた所与のパーセンテージ(即ち、MRI信号の相対的変化)を超える二等分線からのボクセルパターンの逸脱を識別すると、プロセッサは、以降の取得を使用した画像を不整脈の影響を受けた画像として特徴付ける。代わりに又は加えて、MRI信号の所定の差を超える変化などの他の基準が設定されてもよい。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態による、異なる心調律に応じた画像フィルタリング方法を示す概略描写図である。凡例65によれば、MRI画像の所与のシリーズ60が、洞調律中に行われた取得を使用して再構成された画像62及び不整脈中に行われた取得を必要とする画像64の、2つのタイプの画像を含んでいる。各画像62aは、以降の、即ち後続の画像64が、再構成される前にプロセッサ39によって列60から除外される許容可能な画像である。
【0035】
一実施形態では、例示された場合において、画像64を省略してもシリーズ60の診断品質が妨げられないように、シリーズ60は複数の(例えばミリメートル未満などの)薄いスライス画像を含む。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態による、異なる心調律に応じた画像フィルタリングのための方法及びアルゴリズムを概略的に示すフローチャートである。本発明によるアルゴリズムは、MRI取得アップロードステップ70で始まる手順を実行し、ステップ70では、医師30は、所与の心位相でECGゲーティングされたMRI取得をメモリ33からアップロードする。典型的には、取得を使用した再構成では、少なくとも1つのMRI画像が生成される。次に、プロセッサ28は、ボクセル値比較ステップ72で、連続するMRI取得における複数の対応するボクセルを検査する。分析ステップ74では、プロセッサ28は、専用アルゴリズムを使用して、不正な取得を、これらのボクセル値が(ゲーティングを使用しているにもかかわらず)それぞれの先行する取得の値から大きく異なるように、検査された取得から(例えばタグ付けによって)分離する。次に、プロセッサ28は、フィルタリングステップ76で、分離された取得を破棄する。
【0037】
次のステップ、つまり再構成決定ステップ78で、プロセッサ28は、残りの取得が画像のシリーズを再構成するのに十分かどうか(即ち、残りの必要なすべての取得が行われたかどうか)を検査する。十分な取得がない場合、手順はステップ72に戻り、追加のデータを検索する。そうでない場合には、再構成ステップ80で、プロセッサ28はMRI画像を再構成し、残っている再構成に基づいてボリュームレンダリングを生成する。例えば、プロセッサは、一連のMRI画像のうちで、不整脈中に撮影されたとして分類された取得の使用を必要とする(例えばシリーズ60の画像64などの)任意の画像の再構成を省略している。最後に、プロセッサ28は、フィルタリングされた一連のMRI画像を使用して、表現ステップ78で、ボリュームレンダリングなどの画像化された心臓の表現を生成する。
【0038】
図4に例示するアルゴリズムは、単に概念を明確化する目的のために選ばれたものである。本発明はまた、本明細書の開示ではフローチャートの簡略化のために意図的に省略されている、例えばある画像をシリーズから除外させる不整脈パターンの推定タイプを提示するなどのアルゴリズムの更なるステップも含む。
【0039】
本明細書で説明する実施形態は、主に心臓MRI画像法に関するものであるが、本明細書で説明する方法及びシステムを、コンピュータ断層撮影(CT)又はCアームを使用する心撮像などの他の用途で使用することもできる。
【0040】
従って、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていない、それらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0041】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
磁気共鳴画像法(MRI)を使用して取得された、心臓内の各位置に対応する複数のボクセル値を受信することと、
(i)前記心臓内の同じ位置に対応し、(ii)前記心臓の心電図(ECG)サイクルの同じ位相にゲーティングされているにもかかわらず、所定の差よりも大きく異なるボクセル値を特定することと、
少なくとも特定された前記ボクセル値を除く前記複数のボクセル値から、前記心臓の少なくとも一部分の画像を再構成することと、
を含む、方法。
(2) 前記所定の差よりも大きく異なる前記ボクセル値を特定することが、
第1のMRI取得及び第2のMRI取得のそれぞれにおいて取得されたボクセル値を示す第1の軸及び第2の軸を有する平面内の複数のデータ点を含む散布図を作成することであって、各データ点が、前記第1のMRI取得及び前記第2のMRI取得における前記心臓内の所定の位置での前記ボクセル値を表す、散布図を作成することと、
前記平面内の所定の領域外にある1つ以上のデータ点を特定することと、
を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記画像を再構成することが、特定された不整脈中に行われた取得を含む任意の画像の再構成を省略することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記ボクセル値を除外することに応答して、前記再構成された画像の厚さを調整することを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記ボクセル値を除外することに応答して、前記画像を再構成するために使用される再構成フィルタを調整することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0042】
(6) システムであって、
磁気共鳴画像法(MRI)を使用して取得された、心臓内の各位置に対応する複数のボクセル値を記憶するように構成されたメモリと、
プロセッサであって、
(i)前記心臓内の同じ位置に対応し、(ii)前記心臓の心電図(ECG)サイクルの同じ位相にゲーティングされているにもかかわらず、所定の差よりも大きく異なるボクセル値を特定し、
少なくとも特定された前記ボクセル値を除く前記複数のボクセル値から、前記心臓の少なくとも一部分の画像を再構成するように構成されている、プロセッサと、
を備える、システム。
(7) 前記プロセッサが、
第1のMRI取得及び第2のMRI取得のそれぞれにおいて取得されたボクセル値を示す第1の軸及び第2の軸を有する平面内の複数のデータ点を含む散布図を作成することであって、各データ点が、前記第1のMRI取得及び前記第2のMRI取得における前記心臓内の所定の位置での前記ボクセル値を表す、散布図を作成することと、
前記平面内の所定の領域外にある1つ以上のデータ点を特定することと、
によって、前記所定の差よりも大きく異なる前記ボクセル値を特定するように構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサが、特定された不整脈中に行われた取得を含む任意の画像の再構成を省略することによって前記画像を再構成するように構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサが、前記ボクセル値を除外することに応答して、前記再構成された画像の厚さを調整するように更に構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(10) 前記プロセッサが、前記ボクセル値を除外することに応答して、前記画像を再構成するために使用される再構成フィルタを調整するように更に構成されている、実施態様6に記載のシステム。
図1
図2A
図2B
図3
図4