(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】レンズ装置および撮像システム
(51)【国際特許分類】
G03B 17/14 20210101AFI20240508BHJP
G03B 7/091 20210101ALI20240508BHJP
H04N 23/66 20230101ALI20240508BHJP
【FI】
G03B17/14
G03B7/091
H04N23/66
(21)【出願番号】P 2019197785
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-10-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩司
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205729(JP,A)
【文献】特開2012-128203(JP,A)
【文献】特開2013-231946(JP,A)
【文献】特開平10-170978(JP,A)
【文献】特開平10-133251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/14
G02B 7/02
H04N 23/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置に対して着脱可能なレンズ装置であって、
撮像光学系と、
前記撮像装置のマウント部と係合可能な第1形状を有し、複数の電気接点を含むマウント部と、
前記撮像装置と通信可能な通信部と、を有し、
前記複数の電気接点のうち所定の電気接点は、前記撮像装置からの電力の供給および前記撮像装置との通信のいずれにも用いられず、かつ抵抗を介してグラウンドに接続され、
前記通信部は、クロック同期通信方式により前記撮像装置と通信可能であり、調歩同期通信方式では前記撮像装置と通信不能であり、
前記レンズ装置の個体情報を前記撮像装置に送信し、
前記個体情報には、調歩同期通信方式に対応していることを示す情報が含まれず、
前記所定の電気接点に接続される抵抗は、前記レンズ装置がクロック同期通信方式により前記撮像装置と通信を行うレンズ装置であることを示す抵抗値を有
し、
前記撮像装置は、クロック同期通信方式と調歩同期通信方式のいずれにも対応しており、前記抵抗値と前記個体情報とに基づいて前記レンズ装置との通信方式をクロック同期通信方式に設定し、
前記撮像光学系のバックフォーカスをd1[mm]とするとき、
10≦d1≦30
なる条件式を満足することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記第1形状のマウント部は、前記撮像光学系に対して着脱不能であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記撮像装置は、レンズ装置が装着されたときの前記撮像装置の第1の電気接点の電圧に基づいて、前記レンズ装置の種類を判定可能であり、前記レンズ装置の種類に応じて前記レンズ装置に供給する電力の電圧を異ならせ、
前記所定の電気接点は、前記レンズ装置が前記撮像装置に装着されたときに前記第1の電気接点に接続されることを特徴とする請求項1
または2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
ユーザにより操作可能な操作部材を更に有し、
前記レンズ装置は、前記撮像装置に装着された状態で前記操作部材が操作されることにより、絞り位置、シャッタースピード、ISO感度、または、露出補正量の少なくとも一つの設定を変更することを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記通信部は、
クロック同期通信方式によって、前記レンズ装置が前記撮像装置に装着されることに応じて前記撮像装置から受信した第1の情報要求に応じて、前記レンズ装置の個体情報を前記撮像装置に送信し、
前記個体情報の送信後に前記撮像装置から受信した第2の情報要求に応じて、前記操作部材の有無を示す情報を前記撮像装置に送信することを特徴とする請求項
4に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記撮像光学系の望遠端における焦点距離が35mm判換算で40mm以下であることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
最至近合焦時の横倍率をβとするとき、
β≧0.5
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記レンズ装置のフランジバックをd2[mm]とするとき、
14≦d2≦22
なる条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
調歩同期通信方式は、クロック同期通信方式よりも通信速度が速いことを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
調歩同期通信方式を行うために用いられる前記撮像装置の電気接点と、クロック同期通信方式を行うために用いられる前記撮像装置の電気接点は同一であることを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項11】
撮像素子を備えた撮像装置と、
請求項1乃至1
0のいずれか一項に記載のレンズ装置と、を有することを特徴とする撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に対して着脱可能なレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ交換式のカメラシステムでは、カメラに対して旧式の交換レンズと新式の交換レンズが着脱可能に装着されうる。このためカメラには、いずれのタイプの交換レンズの仕様にも対応可能であることが要求される。
【0003】
特許文献1には、旧式の交換レンズと新式の交換レンズがそれぞれ異なる通信方式に対応している場合、装着された交換レンズの種類に応じて通信方式を切り替えるカメラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、従来の交換レンズに比べてバックフォーカスの短いミラーレスカメラ用の交換レンズが提案されている。バックフォーカスが短くなるとバックフォーカスの長い光学系に比べてレンズ全長に対して設計自由度が増す結果、諸収差の補正が容易になる。また、バックフォーカスの長い交換レンズには旧式の通信方式を、バックフォーカスの短い交換レンズには新式の通信方式を採用したカメラシステムなども提案されている。
【0006】
しかしながら、ミラーレスカメラ用の交換レンズの全てに新式の通信方式を採用することが好ましいとは限らない。例えば、マクロレンズや超広角レンズに対しては、スポーツ撮影に用いるような望遠レンズほどには、オートフォーカスの速度や動的被写体への追従性が要求されないため、新式の通信方式による通信速度の高速化(高度な通信性能)の必要性は小さい。また、新式の通信方式に対応する高性能なCPUを搭載した半導体チップは、旧式の通信方式に対応するCPUを搭載した半導体チップに比べてフットプリントが増大しやすいため、光学系の設計自由度(光学設計の自由度)を低減させる場合がある。
【0007】
そこで本発明は、光学設計の自由度と通信性能とを両立させたレンズ装置および撮像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としてのレンズ装置は、撮像装置に対して着脱可能なレンズ装置であって、撮像光学系と、前記撮像装置のマウント部と係合可能な第1形状を有し、複数の電気接点を含むマウント部と、前記撮像装置と通信可能な通信部と、を有し、前記複数の電気接点のうち所定の電気接点は、前記撮像装置からの電力の供給および前記撮像装置との通信のいずれにも用いられず、かつ抵抗を介してグラウンドに接続され、前記通信部は、クロック同期通信方式により前記撮像装置と通信可能であり、調歩同期通信方式では前記撮像装置と通信不能であり、前記レンズ装置の個体情報を前記撮像装置に送信し、前記個体情報には、調歩同期通信方式に対応していることを示す情報が含まれず、前記所定の電気接点に接続される抵抗は、前記レンズ装置がクロック同期通信方式により前記撮像装置と通信を行うレンズ装置であることを示す抵抗値を有し、前記撮像装置は、クロック同期通信方式と調歩同期通信方式のいずれにも対応しており、前記抵抗値と前記個体情報とに基づいて前記レンズ装置との通信方式をクロック同期通信方式に設定し、前記撮像光学系のバックフォーカスをd1[mm]とするとき、
10≦d1≦30
なる条件式を満足する。
【0009】
本発明の他の側面としての撮像システムは、撮像素子を備えた撮像装置と、前記レンズ装置とを有する。
【0010】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光学設計の自由度と通信性能とを両立させたレンズ装置および撮像システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態におけるカメラシステムの説明図である。
【
図2】本実施形態におけるマウント部の構成図である。
【
図3】本実施形態におけるカメラと第1のレンズ装置の回路構成図である。
【
図4】本実施形態におけるカメラと中間アダプタと第2のレンズ装置の回路構成図である。
【
図5】本実施形態におけるカメラと第3のレンズ装置の回路構成図である。
【
図6】本実施形態におけるTYPE端子の周辺回路の概略図である。
【
図7】本実施形態における調歩同期通信の説明図である。
【
図8】本実施形態におけるクロック同期通信の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
本発明の実施形態に関する説明に先立ち、本明細書における用語に関して説明する。本明細書において、マウント部とは、カメラ(撮像装置)と、中間アダプタと、交換レンズ(レンズ装置)のそれぞれに設けられる結合部である。各マウント部には、それぞれ複数の電気接点が設けられ、カメラに中間アダプタまたは交換レンズが装着されると、互いのマウント部に設けられた電気接点同士が接触する。すなわちマウント部は、カメラとアダプタや交換レンズとを機械的に結合する機能だけでなく電気的に接続する機能も有する。
【0015】
バックフォーカスとは、撮像光学系の最も像側のレンズ面から像面までの空気換算距離のことをいう。フランジバックとは、カメラのマウント部のマウント基準面から、カメラに内蔵された撮像素子の撮像面までの距離のことをいう。すなわち、フランジバックは、交換レンズのマウント部のマウント基準面から像面までの距離でもある。
【0016】
以下、本実施形態の交換レンズについて、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において同じ構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
[カメラシステムについて]
まず、
図1を参照して、本実施形態におけるカメラシステムについて説明する。
図1は、カメラシステム(撮像システム)10の説明図であり、カメラ(撮像装置)100と、交換レンズ(レンズ装置)200、300、600と、中間アダプタ400、500との相互関係を示している。
図1中の矢印で示された装置同士は、互いのマウント部を結合して装着することができることを表している。交換レンズ200、600はそれぞれ、カメラ100に対して直接着脱可能である。交換レンズ300は、カメラ100に対して中間アダプタ400を介して間接的に着脱可能である。このようにカメラシステム10は、少なくとも、カメラ100と交換レンズ200、300、600の一つとを備えて構成される。カメラシステム10は、中間アダプタ400、500などのアクセサリを含む場合がある。
【0018】
カメラ100は、CMOSセンサなどの撮像素子180を有する。撮像素子180は、カメラ100に装着された交換レンズ(例えば、交換レンズ200、300、600のいずれか)が有する撮像光学系により形成された被写体像(光学像)を光電変換して電気信号(画像データ)を出力する。
【0019】
交換レンズ(第1のレンズ装置)200は、被写体像を形成する撮像光学系280を有し、カメラ100に対して直接装着されること、および中間アダプタ500を介して装着されることが可能である。ここで、交換レンズ200のマウント部250および中間アダプタ500のマウント部550aはそれぞれ、カメラ100のマウント部150と係合可能な第1形状のマウント部である。中間アダプタ500のマウント部550bは、マウント部150と同形状を有する。
【0020】
交換レンズ(第2のレンズ装置)300は、被写体像を形成する撮像光学系380を有し、カメラ100に対して直接装着することができない交換レンズである。交換レンズ300のマウント部350は、カメラ100のマウント部150と係合不能な第2形状のマウント部である。このため交換レンズ300は、マウント部150と係合可能なマウント部450aと、マウント部350と係合可能なマウント部450bとを有する中間アダプタ400を介して、カメラ100に装着される。
【0021】
交換レンズ(第3のレンズ装置)600は、被写体像を形成する撮像光学系680を有し、カメラ100に対して直接装着されること、および、中間アダプタ500を介して装着されることが可能である。交換レンズ600のマウント部650も、カメラ100のマウント部150と係合可能な第1形状のマウント部である。
【0022】
本実施形態のカメラ100は、光路上にクイックリターンミラーやハーフミラーが配置されていない所謂ミラーレスタイプのカメラである。撮像光学系280および撮像光学系680は、カメラ100用に設計された、所謂ショートバック光学系である。撮像光学系380は、光路上にミラーが配置されているカメラ用に設計された光学系であることが好ましい。さらに、撮像光学系680のバックフォーカスd1[mm](撮像光学系280がズームレンズの場合には広角端におけるバックフォーカス)およびフランジバックd2[mm]は、以下の条件式(1)、(2)の少なくとも一方を満足することが好ましい。
【0023】
10≦d1≦30 ・・・(1)
14≦d2≦22 ・・・(2)
条件式(1)、(2)の少なくとも一方を満足することにより、撮像光学系280および撮像光学系680の光学設計の自由度が増し、諸収差を良好に補正した撮像光学系を得ることができる。
【0024】
[マウント部の構成]
次に、
図2を参照して、マウント部150、250、450b、350の構成について説明する。
図2(a)~(d)はそれぞれ、マウント部150、250、450b、350の構成図である。
図2(a)は、被写体側から見たカメラ100のマウント部150を示す。
図2(b)は、像面側から見た交換レンズ200のマウント部250を示す。
図2(c)は、被写体側から見た中間アダプタ400のマウント部450bを示す。
図2(d)は、像面側から見た交換レンズ300のマウント部350を示す。
【0025】
図2(a)に示されるマウント部150は、所定のフランジバックを確保するためのリング状のマウント基準面151を備える。マウント基準面151の内側には、周方向の3箇所にバヨネット爪152a、152b、152cが設けられている。またマウント部150には、対面するマウント部(250、450a、550a、650)をマウント部150にバヨネット結合する際の位置決めのためのロックピン153が、マウント基準面151に対して突出および引込み可能に設けられている。装着が完了する位置までマウント部150と中間アダプタ500または交換レンズ200、600のマウント部が相対回転すると、これらのマウント部に設けられた嵌合穴とロックピン153が係合する。
【0026】
また、バヨネット爪152a、152b、152cよりも内側の領域には、カメラ側接点保持部154が設けられている。カメラ側接点保持部154は、電気接点(カメラ側電気接点)1001~1012を保持している。なおマウント部550bは、
図2(a)に示されるマウント部150と同様の構成である。
【0027】
図2(b)に示されるマウント部250は、フランジバックの基準面であるリング状のマウント基準面251を備える。マウント基準面251の内側には、周方向の3箇所にバヨネット爪252a、252b、252cが設けられている。またマウント部250には、嵌合穴253が設けられている。嵌合穴253は、カメラ100に交換レンズ200の装着が完了した際にロックピン153と係合する。また、バヨネット爪252a、252b、252cよりも内側の領域には、接点保持部254が設けられている。接点保持部254は、電気接点2001~2012を保持している。なおマウント部450a、550a、650はそれぞれ、
図2(b)に示されるマウント部250と同様の構成である。
【0028】
図2(c)に示されるマウント部450bは、マウント部150と同様に、マウント基準面451、バヨネット爪452a、452b、452c、および、接点保持部454を有する。ただし、バヨネット爪452a、452b、452cの長さおよびバヨネット爪同士の間隔は、マウント部150のバヨネット爪152a、152b、152cとは異なる。
【0029】
図2(d)に示されるマウント部350は、マウント部250と同様に、マウント基準面351、バヨネット爪352a、352b、352c、および、接点保持部354を有する。ただし、バヨネット爪352a、352b、352cの長さおよび隣接するバヨネット爪間の間隔は、マウント部250のバヨネット爪252a、252b、252cとは異なる。なお、
図2(a)~(d)に示される各電気接点の形状は、通電可能な形状であればピン形状であっても接片のいずれであってもよい。
【0030】
[回路構成]
次に、
図3を参照して、カメラ100に交換レンズ200を装着した場合について説明する。
図3は、カメラ100と交換レンズ(第1のレンズ装置)200との回路構成図であり、カメラ100に交換レンズ200が接続された状態を示す。交換レンズ200とカメラ100は、マウント部150およびマウント部250に設けられた複数の電気接点の一部により形成される通信路を介して通信可能となっている。交換レンズ200とカメラ100は、後述する第1通信、第2通信、第3通信を行うことができる。第1通信は、クロック同期通信(第2の通信方式)または調歩同期通信(第1の通信方式)で行われる。
【0031】
カメラ制御部(通信部)101は、マウント部150に設けられた電気接点の出力を制御し、および電気接点に入力された信号を処理することで、カメラ100に装着された交換レンズ200、400、600等と行われる通信を制御する。カメラ電源部103は、カメラ100の各部およびカメラ100に装着された交換レンズや中間アダプタの動作に用いられる電源である。カメラ電源部103は、複数の異なる電圧を生成することが可能であり、カメラ100の各部およびカメラ100に装着された交換レンズや中間アダプタに各電圧の電源を供給する。電源切り替え部104は、第1通信用I/F(インターフェース)部102aへ電源を供給する。電源切り替え部104には電源部103から電圧値の異なる2つの電源が供給されており、カメラ制御部101の制御に基づいて第1通信用I/F(インターフェース)部102aへ供給する電源を切り替え可能である。
【0032】
レンズ制御部201は、マウント部250に設けられた電気接点の出力を制御し、および電気接点に入力された信号を処理することで、カメラ100と交換レンズ200との間で行われる通信を制御する。レンズ電源部203は、カメラ100から供給された電源から所定の電圧の電源を生成し、レンズ制御部201およびレンズ側通信用I/F部202に供給する。
【0033】
電気接点1001および電気接点2001は、主にカメラ100と交換レンズ200との間で行われる通信やその他の制御演算等に使用される電力(制御電力)をカメラ100の電源部103から交換レンズ200に供給するために用いられる端子である。以下、電気接点1001および電気接点2001をVDD端子1001およびVDD端子2001とも称する。本実施形態において、VDD端子1001によって交換レンズ200に供給される電力の電圧(VDD電圧)は5.0Vである。
【0034】
電気接点1002および電気接点2002は、主に、モータ等の駆動系の動作に用いられる電力(駆動電力)をカメラ100から交換レンズ200に供給するために用いられる端子である。以下、電気接点1002および電気接点2002をVBAT端子1002およびVBAT端子2002とも称する。本実施形態において、VBAT端子1002によって交換レンズ200に供給される電力の電圧は4.5Vである。また、VDD端子とVBAT端子を総称して電源系端子とも称する。
【0035】
電気接点1012および電気接点2012は、カメラ100と交換レンズ200の通信制御系回路をグラウンドに接続する端子、すなわちVDD端子に対応する接地端子である。以下、電気接点1012および電気接点2012をDGND端子1012およびDGND端子2012とも称する。
【0036】
電気接点1004および電気接点2004は、カメラ100と交換レンズ200に設けられたモータ等を含む駆動系回路をグラウンドに接続するための端子、すなわちVBAT端子に対応した接地端子である。以下、電気接点1004および電気接点2004をPGND端子1004およびPGND端子2004とも称する。また、DGND端子とPGND端子を総称してグラウンド端子とも称する。
【0037】
電気接点1005および電気接点2005は、カメラ100に交換レンズ200が装着されたことを検出するための端子である。カメラ制御部101は、電気接点1005の電圧レベルに基づいて、カメラ100に対する交換レンズ200の着脱を検出する。カメラ制御部101が交換レンズの装着を検出すると、VDD端子1001およびVBAT端子1002を介して交換レンズ200への電源供給を開始する。以下、電気接点1005および電気接点2005を、MIF端子1005およびMIF端子2005とも称する。
【0038】
電気接点(第1の電気接点)1003および電気接点2003は、カメラ100に直接または中間アダプタを介して間接的に装着された交換レンズの種類を判定可能にするための端子である。以下、電気接点1003および電気接点2003をそれぞれTYPE端子とも称する。種類判定の方法については後述する。
【0039】
電気接点1006~1008および電気接点2006~2008は、第1通信に用いられる端子である。第1通信は、カメラ100と交換レンズ200との間で行われる通信であり、交換レンズ200のID情報(個体情報)や、撮影に必要な情報、制御指示等の送受信を行う。電気接点2006、2008は、交換レンズ200内で3.0Vにプルアップされている。また、電気接点1007、1008は、カメラ100内で3.0Vにプルアップされている。これにより、第1通信の通信電圧は3.0Vとなる(第1の電圧)。
【0040】
電気接点1009および電気接点2009は、第2通信に用いられる端子である。第2通信は、交換レンズ200からカメラ100に対して一方向にデータ送信をするための通信である。第2通信の通信電圧はレンズ側通信用I/F部202の駆動電圧と同様の3.0Vである。
【0041】
電気接点1010、1011および電気接点2010、2011は、第3通信に用いられる端子である。第3通信は、カメラ100と交換レンズ200との間で行われる通信、中間アダプタ500が接続されている場合は、カメラ100、交換レンズ200、中間アダプタ500との間で相互に行われる通信である。電気接点1010、1011はカメラ100においてプルアップされている。これにより、第3通信の通信電圧は3.0Vである。
【0042】
次に、
図4を参照して、カメラ100に中間アダプタ400を介して交換レンズ300を装着した場合について説明する。
図4は、カメラ100と中間アダプタ400と交換レンズ(第2のレンズ装置)300との回路構成図であり、カメラ100に、中間アダプタ400を介して交換レンズ300が装着されている状態を示す。
【0043】
交換レンズ300は、カメラ100と第2通信および第3通信を行うことができないが、第1通信を行うことができる。第1通信は、クロック同期通信で行われる。中間アダプタ400は、カメラ100と通信し、および、不図示の操作部材の操作に応じた処理を行うアダプタ制御部401を有する。操作部材の操作は、操作入力部402を介してアダプタ制御部401に伝えられる。
【0044】
マウント部450aは、前述した交換レンズ200のマウント部250と同様である。ただし、中間アダプタ400の内部回路と交換レンズ200の内部回路は異なる。具体的には、第1通信に用いられるDCL端子2006、DLC端子2007、LCLK端子2008は、中間アダプタ400内でアダプタ制御部401に接続されておらず、マウント部450bの対応する電気接点までスルー配線されている。一方、第3通信に用いられるDCA端子2010およびCS端子2011は、中間アダプタ400内でアダプタ制御部401に接続されている。
【0045】
第2通信に用いられるDLC2端子2009は、中間アダプタ400内で抵抗を介してDGND端子2012と同レベルにプルダウンされている。これは、交換レンズ300とカメラ100は第2通信を行わないためである。
【0046】
TYPE端子2003は、中間アダプタ400内で抵抗422を介してDGND端子2012と同レベルにプルダウンされている。抵抗422は交換レンズ200の抵抗222とは異なる抵抗値を有する。これによって、カメラ100に中間アダプタ400を介して交換レンズ300が装着された場合と交換レンズ200が装着された場合とで、電気接点(TYPE端子)1003の電圧を互いに異ならせることができる。
【0047】
次に、マウント部450bおよびマウント部350に設けられた電気接点について説明する。電気接点3001および電気接点4001は、駆動電力をカメラ100のVBAT端子1002から交換レンズ300に供給するために用いられる端子である。中間アダプタ400においてVBAT端子2002は電気接点4001までスルー配線されている。以下、電気接点3001および電気接点4001をVBAT端子3001およびVBAT端子4001とも称する。なお、本実施形態において、VBAT端子1002によって交換レンズ300に供給される電力の電圧は4.5Vである。
【0048】
電気接点3004および電気接点4004は、カメラ100のVDD端子1001から交換レンズ300に制御電力を供給するために用いられる端子である。中間アダプタ400において、VDD端子2001は電気接点4004までスルー配線されると共に、中間アダプタ400内のアダプタ電源部403にも接続されている。アダプタ電源部403は、アダプタ制御部401および操作入力部402に供給する電源として3.0Vの電源を生成する。以下、電気接点3004および電気接点4004をVDD端子3004およびVDD端子4004とも称する。なお本実施形態において、VDD端子1001によって交換レンズ300に供給される電力の電圧は5.0Vである。
【0049】
電気接点3003および電気接点4003は、カメラ100と交換レンズ300の駆動系をグラウンドに接続するための端子、すなわちVBAT端子に対応する接地端子である。中間アダプタ400において、PGND端子2004は、電気接点4003までスルー配線されている。以下、電気接点3003および電気接点4003を、PGND端子3003およびPGND端子4003とも称する。
【0050】
電気接点3008および電気接点4008は、カメラ100と交換レンズ300の通信制御系をグラウンドに接続するための端子、すなわちVDD端子に対応した接地端子である。中間アダプタ400において、DNG端子2012は、電気接点4008までスルー配線されている。以下、電気接点3008および電気接点4008をDGND端子3008およびDGND端子4008とも称する。
【0051】
電気接点3002および電気接点4002は、カメラ100に中間アダプタ400を介して交換レンズ300が装着されたことを検出するために用いられる端子である。カメラ制御部101は交換レンズ300の装着を検出すると、交換レンズ300への電源供給を開始する。中間アダプタ400においてMIF端子2005は、電気接点4002までスルー配線されている。以下、電気接点3002および電気接点4002をMIF端子3002およびMIF端子4002とも称する。
【0052】
電気接点3005~3007および電気接点4005~4007は、後述する第1通信に用いられる端子である。電気接点3005~3007の入出力は、レンズ側通信用I/F部302を介してレンズ制御部301によって制御される。以下、電気接点3005、3006、3007のそれぞれをDCL端子3005、DLC端子3006、LCLK端子3007とも称する。また、電気接点4005、4006、4007のそれぞれをDCL端子4005、DLC端子4006、LCLK端子4007とも称する。
【0053】
中間アダプタ400を介して交換レンズ300が装着されている場合、第1通信用I/F部102aおよびレンズ側通信用I/F部302のインターフェース電圧はVDD端子から供給される電圧と同じ電圧である5.0V(第2の電圧)に設定される。第2の電圧は第1の電圧とは異なる電圧である。
【0054】
一方、第2・第3通信用I/F部102bのインターフェース電圧は3.0Vに設定される。すなわち、カメラ100に中間アダプタ400を介して交換レンズ300が装着されている場合、第1通信の通信電圧と第3通信の通信電圧は互いに異なる。なお、後述のように、カメラ100に中間アダプタ400を介して交換レンズ300が装着されている場合、第2通信は行われない。
【0055】
次に、
図5を参照して、カメラ100に交換レンズ600を直接装着した場合について説明する。
図5は、カメラ100と交換レンズ(第3のレンズ装置)600との回路構成図であり、カメラ100に交換レンズ600が接続された状態を示す。交換レンズ600は、カメラ100と第2通信および第3通信を行うことができないが、第1通信を行うことはできる。第1通信は、クロック同期通信で行われる。
【0056】
マウント部650の形状はマウント部250の形状と同じであり、マウント部650に設けられた電気接点6001~6012の配置は、交換レンズ200の電気接点2001~2012と同じである。通信部としてのレンズ制御部601は、マウント部650に設けられた電気接点の出力を制御し、および、電気接点に入力された信号を処理することで、カメラ100と交換レンズ600との間で行われる通信を制御する。
【0057】
レンズ電源部603は、カメラ100から供給された電源から所定の電圧の電源を生成し、レンズ制御部601およびレンズ側通信用I/F部602に供給する。電気接点6001は、カメラ100と交換レンズ600との間で行われる通信やその他の制御演算等に使用される電力(制御電力)をカメラ100の電源部103から交換レンズ600に供給するために用いられる端子である。以下、電気接点6001をVDD端子6001とも称する。なお、本実施形態において、VDD端子6001によって交換レンズ600に供給される電力の電圧(VDD電圧)は5.0Vである。
【0058】
電気接点6002を介して、モータ等の駆動系の動作に用いられる電力(駆動電力)の供給をカメラ100から受ける。以下、電気接点6002をVBAT端子6002とも称する。本実施形態において、VBAT端子6002によって交換レンズ600に供給される電力の電圧は4.5Vである。また、VDD端子とVBAT端子を総称して電源系端子とも称する。
【0059】
電気接点6012は、交換レンズ600の通信制御系回路をグラウンドに接続する端子、すなわちVDD端子に対応する接地端子である。以下、電気接点6012をDGND端子6012とも称する。
【0060】
電気接点6004は、交換レンズ600に設けられたモータ等を含む駆動系回路をグラウンドに接続するための端子、すなわちVBAT端子に対応する接地端子である。以下、電気接点6004をPGND端子6004とも称する。また、DGND端子とPGND端子を総称してグラウンド端子とも称する。
【0061】
電気接点6005は、カメラ100に交換レンズ200が装着されたことを検出させるための端子である。カメラ制御部101は、電気接点1005の電圧レベルに応じてカメラ100に対する交換レンズ600の着脱を検出する。以下、電気接点6005をMIF端子6005とも称する。
【0062】
電気接点(所定の電気接点)6003は、カメラ100に直接装着された交換レンズの種類または中間アダプタを介して装着された交換レンズの種類を判定させるための端子(TYPE端子)である。電気接点6003は、交換レンズ600内で抵抗622を介して、DGND端子6012と同レベルにプルダウンされている。すなわち電気接点6003は、カメラ100からの電力の供給およびカメラ100との通信のいずれにも用いられず、かつ抵抗622を介してグラウンドに接続される。
【0063】
抵抗622の抵抗値は、交換レンズ200の抵抗222とは異なる。抵抗622の抵抗値は、抵抗222の抵抗値よりも抵抗422の抵抗値に近い抵抗値であることが好ましい。本実施形態において、抵抗622の抵抗値は抵抗422の抵抗値と同じである。これにより、カメラ100に交換レンズ600が装着された場合と交換レンズ200が装着された場合とで、電気接点(TYPE端子)1003の電圧を互いに異ならせることができる。そして、カメラ100に交換レンズ600が装着された場合と交換レンズ300が装着された場合とで電気接点1003の電圧を近しく(等しく)することができる。
【0064】
カメラ100は、交換レンズが装着されたときのカメラ100の電気接点(第1の電気接点)1003の電圧に基づいて、交換レンズの種類を判定可能であり、交換レンズの種類に応じて交換レンズに供給する電力の電圧を異ならせる。交換レンズ600の電気接点(所定の電気接点)6003は、交換レンズ600がカメラ100に装着されたときに電気接点1003に接続される。
【0065】
電気接点6006~6008は、第1通信に用いられる端子である。電気接点6009は、抵抗を介してDGND端子6012と同レベルにプルダウンされている。カメラ100は、交換レンズ200とのデータ通信に用いて、交換レンズ300とのデータ通信には用いない電気接点(第2の電気接点)1009を有する。交換レンズ600がカメラ100に装着されたとき、電気接点1009と接続される電気接点6009は、抵抗を介してグラウンドに接続される。交換レンズ600は第2通信を行わないため、電気接点6009は本来設けられていなくてもよい不要な電気接点である。しかし、このように回路を構成することにより、カメラ制御部101のDLC2_INに不定値が入力されてしまうことを防ぐことができる。また、カメラ100側で、第2通信の有無に応じてDLC2_INを出力に切り替えるなどの処理をしていれば、電気接点6009は設けられていなくても良い。
【0066】
電気接点6010、6011は、交換レンズ600内のどの部位とも接続されていない。これは、交換レンズ600は第3通信を行うことができないためである。このため電気接点6010、6011は、電気接点が設けられていなくても良い。また、電気接点6010、6011は電気接点6009のように抵抗を介してグラウンドに接続されても良い。
【0067】
交換レンズ600は、ユーザが操作可能な操作部材を有し、ズーム位置やフォーカス位置の調整用の操作部材とは異なる操作部材を有していてもよい。このような操作部材は、カメラ100で調整可能な、絞り位置、シャッタースピード、ISO感度、露出量補正等のうちいずれかの設定を変更可能なものである。ユーザがファインダを覗きながらでも、これらの設定を変更できる。
【0068】
[TYPE端子の機能]
次に、
図6を参照して、TYPE端子1003の機能について詳述する。
図6は、TYPE端子1003の周辺回路の概略図である。以下、TYPE端子1003がカメラ本体内でプルアップされる電源電圧は3.3Vであるとする。また、抵抗125の抵抗値は100kΩ、抵抗126の抵抗値は1kΩ、抵抗222の抵抗値は33kΩ、抵抗622の抵抗値は300kΩであるとする。また、TYPE_IN端子に入力される電圧値は、不図示のAD変換器により10bitの分解能でデジタル信号に変換されるものとする。
【0069】
図6(A)は、カメラ100に交換レンズ200が装着された状態におけるTYPE端子1003の周辺回路を示す。この場合、カメラ制御部101のTYPE_IN端子に入力される値は、電源電圧(3.3V)を抵抗125と抵抗222で分圧した電圧値をAD変換した値であり、おおよそ「0x0103」となる。
【0070】
図6(B)は、カメラ100に交換レンズ600が装着された状態におけるTYPE端子1003の周辺回路を示す。この場合、カメラ制御部101のTYPE_IN端子に入力される値は、電源電圧(3.3V)を抵抗125と抵抗622で分圧した電圧値をAD変換した値であり、おおよそ「0x0300」となる。
【0071】
このように、抵抗222の抵抗値と抵抗622の抵抗値を異ならせることで、カメラ100に装着された交換レンズの種類に応じてTYPE_IN端子に入力される値を異ならせることができる。このため、カメラ制御部101はTYPE_IN端子の入力値を用いてカメラ100に装着された交換レンズの種類を判定する。交換レンズ300が中間アダプタ400を介してカメラ100に装着された場合、中間アダプタ400の抵抗422の抵抗値に応じた値がTYPE_IN端子に入力される。すなわち、抵抗422と抵抗622の抵抗値を等しくした場合、カメラ制御部101のTYPE_IN端子に入力される値は、電源電圧(3.3V)を抵抗125と抵抗422で分圧した電圧値をAD変換した値であり、おおよそ「0x0300」となる。
【0072】
しかしながら、TYPE端子1003とTYPE端子2003の接続状態に何らかの異常が生じた場合、TYPE_IN端子に本来想定されない値が入力される場合がある。何らかの異常があるにも関わらず、カメラ制御部101がカメラ100に何らかの交換レンズが装着されていると判定してしまうと、装着された交換レンズに対して定格外の電圧を印加してしまうおそれがあるため好ましくない。そこで、
図6(C)、(D)、(E)を用いて、TYPE端子1003とTYPE端子2003の接続状態に何らかの異常が生じた場合について考える。
【0073】
図6(C)は、カメラ100に交換レンズまたは中間アダプタの装着が完了しているにも関わらず、接触不良などによりTYPE端子1003とTYPE端子2003が接触しなかった場合のTYPE端子1003の周辺回路を示す。この場合、TYPE_IN端子に入力される電圧値はカメラ100内の抵抗125(100kΩ)のみで決まり、AD変換後の値はおおよそ「0x03FF」となる。
【0074】
図6(D)は、TYPE端子1003とVBAT端子1002がショートした場合のTYPE端子1003の周辺回路を示す。ここで、カメラ100に装着された交換レンズの種類の判定をVBAT端子1002およびVBAT端子2002への電源供給より前に行う場合について考える。電源供給を行っていないときのVBAT端子1002およびVBAT端子2002の電圧がPGND端子と同じである場合、TYPE端子1003とVBAT端子1002がショートするとTYPE端子1003の電圧はPGND端子の電圧と略等しくなる。このとき、TYPE_IN端子に入力される値は、カメラ100内の抵抗125(100kΩ)と抵抗126(1kΩ)の分圧比で決まり、おおよそ「0x000A」となる。
【0075】
次に、カメラ100に装着された交換レンズの種類の判定をVBAT端子1002およびVBAT端子2002への電源供給より後に行う場合について考える。この場合、TYPE端子1003とVBAT端子1002とがショートすると、VBAT電圧(本実施形態では4.5V)がTYPE端子1003に印加される。このとき、TYPE_IN端子に入力される値はおおよそ「0x03FF」となる。
【0076】
図6(E)は、TYPE端子1003とPGND端子1004がショートした場合のTYPE端子1003の周辺回路を示す。TYPE端子1003とPGND端子1004とがショートした場合、TYPE端子1003の電圧はPGND端子1004の電圧(VBAT電圧の基準電位(グラウンドレベル)の電圧)と略等しくなる。このとき、TYPE_IN端子に入力される値はカメラ100内の抵抗125(100kΩ)と抵抗126(1kΩ)との分圧比で決まり、おおよそ「0x000A」となる。
【0077】
以上のように、TYPE端子1003とTYPE端子2003の接続状態に何らかの異常が生じた場合、TYPE端子1003の電圧は、VBAT電圧またはPGND端子1004の電圧と略等しくなる。そこで本実施形態では、カメラ100に適切に交換レンズが装着されたと判定されるTYPE端子1003の電圧の範囲として、VBAT電圧およびPGND端子1004の電圧を含まない電圧範囲を設定している。表1は、本実施形態におけるTYPE_IN端子の入力値とカメラ制御部101による装着状況の判定結果の対応表を示す。
【0078】
【0079】
表1に示されるように、TYPE_IN端子の入力値が「0x0080~0x017F」の範囲内であれば、カメラ制御部101はカメラ100に交換レンズ200が装着されていると判定する。「0x0080~0x017F」は、TYPE端子1003の電圧がVBAT電圧およびPGND端子1004の電圧を含まない第1の電圧範囲内の電圧に対応したTYPE_IN端子の入力値である。したがって、カメラ100に交換レンズ200が適切に装着された場合にのみ、カメラ制御部101はカメラ100に交換レンズ200(第1種別の交換レンズ)が装着されたと判定する。交換レンズ200が装着されたと判定された場合、カメラ制御部101は通信電圧3.0Vで交換レンズ200と第1通信を行う。
【0080】
同様に、TYPE_IN端子の入力値が「0x0280~0x037F」の範囲内であれば、カメラ制御部101はカメラ100に交換レンズ300、600が装着されていると判定する。「0x0280~0x037F」は、TYPE端子1003の電圧が第1の電圧範囲、VBAT電圧、PGND端子1004の電圧を含まない第2の電圧範囲内の電圧である場合に対応したTYPE_IN端子の入力値である。したがって、カメラ100に交換レンズ300、600が適切に装着された場合にのみ、カメラ制御部101はカメラ100に交換レンズ300、600のいずれか(第1種別とは異なる種別の交換レンズ)が装着されたと判定する。交換レンズ300、600のいずれかが装着されたと判定した場合、カメラ制御部101は通信電圧5.0Vで装着された交換レンズと第1通信を行う。
【0081】
TYPE_IN端子の入力値が「0x0000~0x007F」の範囲内である場合、カメラ制御部101はカメラ100と交換レンズまたは中間アダプタとの装着状態に何らかの異常が生じていると判定する。「0x0000~0x007F」は、TYPE端子1003の電圧がPGND端子1004の電圧を含み第1の電圧範囲および第2の電圧範囲を含まない第4の電圧範囲である場合に対応したTYPE_IN端子の入力値である。この場合、カメラ制御部101はカメラ本体に装着された交換レンズと通信を行わない。これによって、TYPE端子の接続状態に異常が生じた場合に、交換レンズまたは中間アダプタに定格外の電圧を印加してしまうことを防ぐことができる。
【0082】
また、TYPE_IN端子の入力値が「0x0380~0x03FF」の範囲内である場合、カメラ制御部101はカメラ100と交換レンズまたは中間アダプタとの装着状態に何らかの異常が生じていると判定する。「0x0380~0x03FF」は、TYPE端子1003の電圧がVBAT電圧を含み第1の電圧範囲および第2の電圧範囲を含まない第3の電圧範囲である場合に対応したTYPE_IN端子の入力値である。この場合、カメラ制御部101はカメラ本体に装着された交換レンズと通信を行わない。これによって、TYPE端子の接続状態に異常が生じた場合に、交換レンズまたは中間アダプタに定格外の電圧を印加してしまうことを防ぐことができる。
【0083】
以上のように本実施形態において、交換レンズ200がカメラ100に装着された場合、第1の電気接点の電圧は第1の電圧範囲内である。交換レンズ300がカメラ100に装着された場合、第1の電気接点の電圧は第2の電圧範囲内である。交換レンズ600がカメラ100に装着された場合、第1の電気接点の電圧は第2の電圧範囲内である。また第3のレンズ装置がカメラ100に装着された場合、交換レンズ600には、カメラ100から、交換レンズ300がカメラ100に装着された場合と同じ電圧の電力が供給される。
【0084】
なお、カメラ100から交換レンズ300と交換レンズ600のそれぞれの第1通信の通信電圧が等しくなるのであれば、交換レンズ300と交換レンズ600を区別できるように抵抗422の抵抗値と抵抗622の抵抗値とを異ならせてもよい。抵抗値を異ならせ、TYPE_IN端子の入力値を異ならせ、判定基準の入力値の範囲を異ならせれば、装着された交換レンズが交換レンズ300なのか交換レンズ600なのか区別可能となる。
【0085】
[通信方式の種類]
次に、第1通信、第2通信、第3通信のうち、特に第1通信の通信方式について説明する。交換レンズ200がカメラ100に装着されたとき、交換レンズ200およびカメラ100間の第1通信では、第1の通信方式としての調歩同期通信または第2の通信方式としてのクロック同期通信で通信を行う。具体的には、交換レンズ200の装着直後はクロック同期通信でのみカメラ100と通信し、その後に調歩同期通信での通信に移行する。
【0086】
一方、交換レンズ300が中間アダプタ400を介してカメラ100に装着されたとき、および交換レンズ600がカメラ100に装着されたとき、交換レンズ300、600とカメラ100との間の第1通信は、クロック同期通信で行われる。しかし、交換レンズ30および交換レンズ600は調歩同期通信に対応していないため、調歩同期通信ではカメラ100とは通信不能である。
【0087】
まず、カメラ100は、装着された交換レンズに関わらずクロック同期通信で通信を行う。ここで、装着された交換レンズのID情報(個体情報)を通信し、交換レンズ200のように調歩同期通信に対応していることを認識すると、調歩同期通信に移行する。また、交換レンズ300、600のように第1の通信方式では通信不能な交換レンズの場合はクロック同期通信での通信を継続する。これは、前述のTYPE端子による判定のみでも良いし、TYPE端子に加えて上記のID情報による判定でも良い。交換レンズ300、600に対しては、前述のTYPE端子を用いて判定した結果に基づいて、第2の電圧(5.0V)が設定されている。
【0088】
ID情報の通信後、交換レンズ600は、カメラ100からの情報要求に応じて、絞り位置、シャッタースピード、ISO感度、露出補正量のいずれかの設定変更が可能な操作部材の有無を示す情報をカメラ100に送信する。すなわちレンズ制御部(通信部)601は、第2の通信方式によって、交換レンズ600がカメラ100に装着されることに応じてカメラ100から受信した第1の情報要求に応じて、交換レンズ600の個体情報をカメラ100に送信する。そしてレンズ制御部601は、個体情報の送信後にカメラ100から受信した第2の情報要求に応じて、操作部材の有無を示す情報をカメラ100に送信する。
【0089】
図7を参照して、第1の通信方式について説明する。第1の通信方式は、調歩同期通信である。ただし本実施形態では、一般的な調歩同期通信ではなく、カメラとレンズとの間の通信に最適化した例を示す。電圧のHighとLowが切り替え可能な信号線LCLKと、カメラ100から交換レンズへデータを送信するDCLチャネルと、交換レンズからカメラにデータを送信するDLCチャネルとを用いて通信が行われる。信号線LCLKは、電気接点1008を介して形成される通信線であり、DCLチャネルは電気接点1008を介して形成される通信線であり、DLCチャネルは電気接点1007を介して形成される通信線である。
【0090】
図7(A)~(C)は、調歩同期通信の説明図である。
図7(A)に示されるように、カメラ100が信号線LCLKの電圧レベルをHighからLowに変更することが、交換レンズ200からカメラ100に対して複数のデータが連なったデータフレーム(DataFrame)を送信可能である合図となる。レンズ制御部201が信号線LCLKの電圧レベルがHighからLowに切り替わったことを検知することに応じてデータフレームを送信し始める。1つのデータフレームは、スタートビットSTからストップビットSPまでのデータからなる。一方、カメラ制御部101にとっては、DLCチャネルからスタートビットを検出することに応じて、DCLチャネルを介してスタートビットからストップビットまでのデータフレームを送信する。
【0091】
図7(B)は、
図7(A)に対して、DLCのデータ送信後にビジー信号を重畳させた場合を示している。ビジー信号が出力されている間は、カメラ制御部101は信号線LCLKをLowレベルにして次のデータフレームを要求することができない。ビジーを重畳させない場合と比べると通信速度は落ちてしまうが、レンズが通信内容に応じて必要な処理を実行してから次の通信を行いたい場合に有効である。
【0092】
図7(C)は、DCLチャネルのデータ送信方向を反転させ、DLCチャネルと同様に交換レンンズ側からカメラ100にデータを送信する場合を示している。交換レンズから大量のデータを送信したい場合に有効である。
【0093】
このように第1の通信方式では、複数の通信モードを切り替えて、交換レンズ内での演算などの処理を優先する場合には通信速度を落とし、大量のデータを送信したい場合には帯域を最大限に利用することができる。
【0094】
次に、
図8を参照して、第2の通信方式について説明する。第2の通信方式は、クロック信号に同期してデータの送受信を行うクロック同期通信である。
図8は、クロック同期通信の説明図である。信号線LCLKとDCLチャネルとDLCチャネルを用いて通信を行う点は第1の通信方式と同様である。信号線LCLKにはカメラ制御部101が生成したクロック信号が重畳され、これに同期して所定のデータ量のデータフレーム(B7~B0)を送信し、1つのデータフレームの送信に伴い信号線LCLKにBusy信号が重畳される。
【0095】
図7(A)と同様にビジー信号を廃した通信を行うことも可能であるが、クロック同期の場合、交換レンズは、カメラ100から送信されたクロックに同期してデータを送受信する必要がある。このため、ビジーを廃止できるのは、交換レンズ内での処理時間が次のクロック受信までに終了することを保証できる時に限られる。
【0096】
また、クロック信号がカメラから出力され、それに同期させてDLCを出力させなければならないため、通信の伝搬遅延を考慮してビットレートを設定する必要がある。ビットレートに対して遅延量が大きいと、DLCをクロックに同期させて出力することができず通信が破綻してしまう。特に、接点を複数介して接続されるようなシステムにおいては、接触抵抗等により伝搬遅延が大きくなる場合があるため、余裕を持ったビットレート設定をしておく必要がある。
【0097】
このように、調歩同期通信のほうがクロック同期通信に比べて、通信タイミングの自由度が高く、頻繁にデータを送受信し、または大容量のデータを送信するのに適している。また、調歩同期通信のほうがクロック同期通信に比べて通信速度が速い。このため、交換レンズ200に搭載されるレンズ制御部201を構成するCPUや周辺回路も、交換レンズ300、600に搭載されるレンズ制御部301やレンズ制御部601に比べ大きくなりやすい。このため交換レンズ300、600は、交換レンズ200に比べて、CPUや周辺回路のフットプリント確保に起因する撮像光学系の設計制約が生じにくい。また、交換レンズ200のCPUや周辺回路に比べてコストを低減することができる。
【0098】
以上、交換レンズ600のマウント構成、回路構成、および通信方式について説明した。交換レンズ600は、バックフォーカスが比較的短い撮像光学系680を有する。このため、光学設計の自由度を確保しつつ、調歩同期通信には非対応であるがクロック同期通信に対応するCPUや周辺回路を備えることで、フットプリントやコストの増大を抑制することができる。
【0099】
交換レンズ600は、交換レンズ200とは異なり、交換レンズ600内で電気接点(TYPE端子、所定の電気接点)6003を抵抗622を介してDGND端子6012と同レベルにプルダウンしている。これにより、第1通信の通信電圧は交換レンズ300と同様に第2の電圧(5.0V)になる。すなわち交換レンズ600がカメラ100に装着された場合、交換レンズ600には、カメラ100から、交換レンズ300がカメラ100に装着された場合と同じ電圧の電力が供給される。
【0100】
交換レンズ600は、特に、望遠端における焦点距離が35mm判換算で40mm以下である光学系(広角レンズ)や、最至近合焦時(ズームレンズの場合は広角端における最至近合焦時)の横倍率βがβ≧0.5となる光学系(マクロレンズ)などに適している。これらのレンズでは、高速なAFや動的被写体に対する追従性等のように調歩同期通信を採用することが好ましい場面が少なく、クロック同期通信にしか対応していなくても撮影上の問題が生じにくいためである。また、交換レンズ600は、データ容量の大きな画像補正用の補正データをカメラ100に送信しない交換レンズに適している。調歩同期通信に非対応であるにも関わらず当該補正データを送信しようとすると送信時間がかかりすぎてしまうが、そもそも補正データの送信を行わないレンズであればそのような課題は発生しないからである。交換レンズ600は、それ以外にも、クロック同期通信のみで十分な性能を期待できる交換レンズに対して有効である。
【0101】
以上のとおり、本実施形態のレンズ装置は、撮像装置(カメラ100)に対して着脱可能なレンズ装置(第3のレンズ装置としての交換レンズ600)である。またレンズ装置は、撮像光学系680、撮像装置のマウント部150と係合可能な第1形状のマウント部650、および、撮像装置と通信可能な通信部(レンズ制御部601)を有する。撮像装置は、第1のレンズ装置(交換レンズ200)および第2のレンズ装置(交換レンズ300)を含む複数のレンズ装置のいずれかが直接または中間アダプタ400、500を介して着脱可能である。第1のレンズ装置は、撮像装置のマウント部と係合可能なマウント部250を有し、第1の通信方式で撮像装置と通信可能である。第2のレンズ装置は、撮像装置のマウント部と係合不能な第2形状のマウント部350を有し、中間アダプタ400を介して撮像装置に装着可能であり、第1の通信方式とは異なる第2の通信方式で撮像装置と通信可能である。通信部は、第2の通信方式で撮像装置と通信可能であり、第1の通信方式では撮像装置と通信不能である。
【0102】
本実施形態によれば、光学設計の自由度と通信性能とを両立させたレンズ装置および撮像システムを提供することができる。
【0103】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0104】
100 カメラ(撮像装置)
200、300、600 交換レンズ(レンズ装置)
601 レンズ制御部(通信部)
650 マウント部
680 撮像光学系