(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】シート給送装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 3/06 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
B65H3/06 340E
(21)【出願番号】P 2019239939
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 洋人
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-029296(JP,A)
【文献】特開2018-127312(JP,A)
【文献】特開2016-141504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを収納するシート収納部と、
回転軸を中心に回転し、前記シート収納部に収納されたシートの内、最上位置のシートの上面に当接して前記最上位置のシートを給送する給送回転体と、
前記給送回転体を駆動する第1駆動手段と、
揺動軸を中心に揺動自在に構成され、前記最上位置のシートの上面に前記給送回転体が当接して前記最上位置のシートを前記給送回転体が給送する給送位置、前記揺動軸を通る鉛直線に対して前記給送位置側に前記回転軸が位置し、前記最上位置のシートの上面から前記給送回転体が離間した第1退避位置、及び前記給送位置と前記第1退避位置との間で前記給送回転体を支持する支持手段と、
前記給送回転体が前記最上位置のシートを給送するために要する前記第1駆動手段の駆動力を利用して、前記給送回転体を前記第1退避位置から前記給送位置に向けて移動するべく、前記支持手段を揺動させる移動手段と、
前記移動手段が前記支持手段を揺動させる際に、前記給送回転体を前記給送位置と前記第1退避位置との間の第2退避位置に保持する保持位置と、前記給送回転体を前記第2退避位置に保持することを解除する解除位置に移動自在な保持手段と、
前記保持手段を駆動する第2駆動手段と、
を備え、
前記給送回転体が前記第1退避位置にある時の前記最上位置のシートが、その後に前記給送位置において前記支持手段により支持される前記給送回転体と当接する位置にある場合、
前記給送回転体を前記第1退避位置から前記給送位置に向けて移動させるように前記移動手段が前記支持手段を揺動させる際、前記第1駆動手段により駆動されている状態の前記給送回転体を前記第2退避位置に保持し、前記第1駆動手段により駆動が停止された状態の前記給送回転体を前記給送回転体の自重を利用して前記給送位置に移動し、前記最上位置のシートに前記第1駆動手段により駆動が停止された状態の前記給送回転体を当接させるべく、
前記第2駆動手段による前記保持手段の前記解除位置から前記保持位置への移動及び前記保持位置から前記解除位置への移動並びに前記第1駆動手段の駆動停止を実施する、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記第1駆動手段は、正逆回転が可能であり、
前記移動手段は、前記保持手段が前記給送回転体を前記第2退避位置に保持した状態で前記第1駆動手段が正回転することで前記給送回転体の前記給送位置への移動を可能とし、
前記第1駆動手段の駆動を停止した後に、前記第2駆動手段により前記保持手段を前記解除位置に移動する、
ことを特徴とする、請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記支持手段の一部と係合可能な係合部を有し、前記第1駆動手段の逆回転により前記係合部が前記支持手段の一部と係合して前記給送回転体を前記給送位置から前記第1退避位置に移動させ、
前記保持手段が前記給送回転体を前記第2退避位置に保持した状態で前記第1駆動手段が正回転することで前記係合部と前記支持手段の一部との係合が解除されて、前記移動手段が前記給送回転体の前記給送位置への移動を可能とする、
ことを特徴とする、請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記給送回転体を前記第1退避位置にロック可能なロック手段を更に備え、
前記ロック手段は、前記第2駆動手段が前記保持手段を前記保持位置に移動することにより前記給送回転体を前記第1退避位置にロックすることを解除する、
ことを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記給送回転体を前記第1退避位置から前記給送位置に向けて付勢する付勢手段を更に備えた、
ことを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記シート収納部と、前記給送回転体を有するシート収納装置と、
前記シート収納装置を引き出し及び挿入可能な筐体と、
前記筐体に設けられ、正逆回転が可能な前記第1駆動手段と、
前記シート収納装置を前記筐体に挿入した状態で前記第1駆動手段と前記給送回転体との間を駆動伝達可能に接続し、前記シート収納装置が引き出される際に前記第1駆動手段と前記給送回転体との間の駆動接続を解除する接続手段と、を備えた、
ことを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記シート収納装置の引き出し動作を行うための操作部と、
前記第1駆動手段を制御する制御手段と、を更に備え、
前記制御手段は、前記操作部が操作された場合に、前記シート収納装置が引き出される前に前記第1駆動手段を逆回転させて、前記給送回転体を前記給送位置から前記第1退避位置に移動させる、
ことを特徴とする、請求項6に記載のシート給送装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記シート収納装置が引き出された状態から所定の装着位置に装着された場合に、前記第1駆動手段を正回転させると共に前記保持手段により前記給送回転体を前記第2退避位置に保持し、この状態から前記第1駆動手段を所定量正回転させ、前記第1駆動手段の駆動を停止した後に、前記保持手段による保持を解除する、
ことを特徴とする、請求項7に記載のシート給送装置。
【請求項9】
シートを収納するシート収納部と、
前記シート収納部に収納されたシートの内、最上位置のシートの上面に接触してシートを給送する給送ローラと、
前記給送ローラを支持する支持部材と、
前記最上位置のシートを給送する給送方向に前記給送ローラを回転させるように前記給送ローラを駆動する駆動モータと、
前記給送ローラを前記最上位置のシートの上面に対して離間する第1退避位置から前記最上位置のシートの上面に接触する給送位置に移動させる離接手段と、を備え、
前記離接手段は、前記給送ローラを前記第1退避位置から前記給送位置と前記第1退避位置との間の第2退避位置まで前記駆動モータによる駆動を利用して移動させ、前記給送ローラを前記第2退避位置から前記給送位置まで前記給送ローラの自重を利用して移動させる、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項10】
前記離接手段は、前記給送ローラを前記給送位置に向けて付勢する付勢手段を備え、
前記給送ローラの前記第1退避位置から前記第2退避位置までの移動を第1移動、前記給送ローラの前記第2退避位置から前記給送位置までの移動を第2移動とした場合に、
前記第2移動において、前記第1移動により前記第2退避位置に移動した前記給送ローラを前記給送位置に向けて移動させる際に前記給送ローラの自重を利用すると共に、
前記第1移動により前記第2退避位置に移動した前記給送ローラを前記付勢手段により前記給送位置に向けて付勢して、前記駆動モータによる駆動を停止した状態で前記第1移動により前記第2退避位置に移動した前記給送ローラを前記給送位置に到着させる、
ことを特徴とする請求項9に記載のシート給送装置。
【請求項11】
前記第1退避位置は、前記揺動軸を通る鉛直線に対して前記給送位置側に前記回転軸が位置し、前記最上位置のシートの上面から前記給送回転体が離間するとともに、前記給送回転体が前記シート収納部から退避した位置である
ことを特徴とする請求項1乃至
8の何れか1項に記載のシート給送装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載のシート給送装置と、
前記シート給送装置から給送されたシートに画像を形成する画像形成装置を備えた画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを収納するシート収納部を備えたシート給送装置、及び、シート給送装置を備えた画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シートを給送するシート給送装置として、シート給送手段としての繰り出しローラを、シートを給送する給送位置と、給送位置から退避させた退避位置との間で移動させる構成が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の構成の場合、繰り出しローラの駆動と、繰り出しローラを移動させるための駆動とを同一の駆動源で行っており、繰り出しローラを給送位置に移動させる際には、繰り出しローラによりシートを給送する方向に駆動源を駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、繰り出しローラを給送位置に移動させる際に、繰り出しローラによりシートを給送する方向に駆動源を駆動すると、繰り出しローラがシートに当接するのと同時にシートが給送されてしまう。このとき、繰り出しローラがシートに対して当接圧が不安定な状態で当接する場合があり、この場合には、給送されるシートの姿勢が正規の状態からずれ易い。
【0005】
本発明は、給送されるシートの姿勢ずれを抑制できる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、シートを収納するシート収納部と、回転軸を中心に回転し、前記シート収納部に収納されたシートの内、最上位置のシートの上面に当接して前記最上位置のシートを給送する給送回転体と、前記給送回転体を駆動する第1駆動手段と、揺動軸を中心に揺動自在に構成され、前記最上位置のシートの上面に前記給送回転体が当接して前記最上位置のシートを前記給送回転体が給送する給送位置、前記揺動軸を通る鉛直線に対して前記給送位置側に前記回転軸が位置し、前記最上位置のシートの上面から前記給送回転体が離間した第1退避位置、及び前記給送位置と前記第1退避位置との間で前記給送回転体を支持する支持手段と、前記給送回転体が前記最上位置のシートを給送するために要する前記第1駆動手段の駆動力を利用して、前記給送回転体を前記第1退避位置から前記給送位置に向けて移動するべく、前記支持手段を揺動させる移動手段と、前記移動手段が前記支持手段を揺動させる際に、前記給送回転体を前記給送位置と前記第1退避位置との間の第2退避位置に保持する保持位置と、前記給送回転体を前記第2退避位置に保持することを解除する解除位置に移動自在な保持手段と、前記保持手段を駆動する第2駆動手段と、を備え、前記給送回転体が前記第1退避位置にある時の前記最上位置のシートが、その後に前記給送位置において前記支持手段により支持される前記給送回転体と当接する位置にある場合、前記給送回転体を前記第1退避位置から前記給送位置に向けて移動させるように前記移動手段が前記支持手段を揺動させる際、前記第1駆動手段により駆動されている状態の前記給送回転体を前記第2退避位置に保持し、前記第1駆動手段により駆動が停止された状態の前記給送回転体を前記給送回転体の自重を利用して前記給送位置に移動し、前記最上位置のシートに前記第1駆動手段により駆動が停止された状態の前記給送回転体を当接させるべく、前記第2駆動手段による前記保持手段の前記解除位置から前記保持位置への移動及び前記保持位置から前記解除位置への移動並びに前記第1駆動手段の駆動停止を実施する、ことを特徴とするシート給送装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、シートを収納するシート収納部と、
前記シート収納部に収納されたシートの内、最上位置のシートの上面に接触してシートを給送する給送ローラと、前記給送ローラを支持する支持部材と、前記最上位置のシートを給送する給送方向に前記給送ローラを回転させるように前記給送ローラを駆動する駆動モータと、前記給送ローラを前記最上位置のシートの上面に対して離間する第1退避位置から前記最上位置のシートの上面に接触する給送位置に移動させる離接手段と、を備え、前記離接手段は、前記給送ローラを前記第1退避位置から前記給送位置と前記第1退避位置との間の第2退避位置まで前記駆動モータによる駆動を利用して移動させ、前記給送ローラを前記第2退避位置から前記給送位置まで前記給送ローラの自重を利用して移動させる、ことを特徴とするシート給送装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、給送されるシートの姿勢ずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る画像形成システムの概略構成断面図。
【
図3】実施形態に係る多段給送装置の収納庫を引き出した状態で示す側面図。
【
図4】実施形態に係る多段給送装置の収納庫を引き出した状態で示す拡大側面図。
【
図5】実施形態に係る多段給送装置の収納庫を引き出した状態で示す拡大斜視図。
【
図7】実施形態に係るシート給送部の一部を示す正面図。
【
図8】実施形態に係るシート給送部の一部を示す斜視図。
【
図9】実施形態に係るシート給送部を第1退避位置にロックする構成を示す斜視図。
【
図10】実施形態に係るシート給送部の給送位置を示す、(a)側面図、(b)斜視図。
【
図11】実施形態に係るシート給送部の第1退避位置を示す、(a)側面図、(b)斜視図。
【
図12】実施形態に係るピックアップローラの付勢バネを、(a)収納庫に組付けた状態を示す斜視図、(b)収納庫から取り出して示す斜視図。
【
図13】実施形態に係るモータからピックアップローラまでの駆動経路を示す平面図。
【
図14】実施形態に係るモータからピックアップローラまでの駆動経路を示す斜視図。
【
図15】実施形態に係る多段給送装置の制御構成の一部を示すブロック図。
【
図16】実施形態に係るピックアップローラを第1退避位置から給送位置に移動させる際の制御のフローチャート。
【
図17】実施形態に係るシート給送部を第1退避位置にロックした状態を示す斜視図。
【
図18】実施形態に係るシート給送部のロックを解除した状態を示す斜視図。
【
図19】実施形態に係るシート給送部が第1退避位置から第2退避位置に移動した際の状態を示す側面図。
【
図20】実施形態に係るシート給送部を第2退避位置に停止させた状態を示す斜視図。
【
図21】実施形態に係るシート給送部の第2退避位置を示す、(a)側面図、(b)斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態について、
図1ないし
図21を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成システムについて、
図1を用いて説明する。
【0011】
[画像形成システム]
図1は、本実施形態に係る多段給送装置及び画像形成装置を備える画像形成システムの一例を概略的に示す断面図である。以下の説明では、画像形成部を有する画像形成装置として、電子写真方式を用いたレーザプリンタシステム(以下単にプリンタと呼ぶ)を例に挙げて説明する。なお、画像形成システムを構成する画像形成装置は、プリンタ以外に、複写機、ファクシミリ、複合機などであっても良い。また、画像形成装置は、電子写真方式に関らず、インクジェット方式などの他の方式の構成であっても良い。
【0012】
本実施形態の画像形成システム1000は、画像形成装置100と、この画像形成装置100に接続されたシート給送装置としての多段給送装置200とを有している。多段給送装置200は、詳しくは後述するように、それぞれが複数枚のシートを収納可能な複数の収納庫を有しており、各収納庫から画像形成装置100にシートを給送可能である。なお、シートとしては、普通紙、薄紙、厚紙などの紙、プラスチックシートなどが挙げられる。
【0013】
画像形成装置100は、画像形成装置本体に接続された原稿読み取り装置(図示せず)又は画像形成装置本体に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)をシートに形成する。
【0014】
画像形成装置100は、画像形成部110、複数のシート給送装置120、シート搬送装置130等を備える。画像形成装置100は、制御部140により各部が制御される。制御部140は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。
【0015】
複数のシート給送装置120は、それぞれシートSを収納するカセット121と、ピックアップローラ122と、フィードローラ123及びリタードローラ124から構成される分離搬送ローラ対125とを備えている。カセット121内に収納されたシートSは、所定のタイミングで昇降動作して回転するピックアップローラ122と分離搬送ローラ対125とによって1枚ずつ分離されて給送される。
【0016】
シート搬送装置130は、搬送ローラ対131、プレレジストローラ対132、及びレジストローラ対133を備えている。シート給送装置120から給送されたシートSは、搬送ローラ対131及びプレレジストローラ対132により、シート搬送路134を通過させられた後、レジストローラ対133に導かれる。この後、シートSは、レジストローラ対133によって、所定のタイミングで画像形成部110に送り込まれる。
【0017】
なお、後述する多段給送装置200から搬送ローラ対201を介して搬送されるシートは、画像形成装置100との接続経路202を介して画像形成装置100内に搬送される。そして、多段給送装置200から画像形成装置100内に搬送されたシートは、画像形成装置100内のシート給送装置120から搬送されるシートと同様に、プレレジストローラ対132及びレジストローラ対133を介して、所定のタイミングで画像形成部110に送り込まれる。
【0018】
画像形成部110は、感光ドラム111、帯電器112、レーザスキャナ113、現像器114、転写帯電器115、分離帯電器116、クリーナ117等を備えている。画像形成時には、感光ドラム111が図の矢印方向に回転駆動され、まず、帯電器112により感光ドラム111の表面が一様に帯電される。そして、画像信号に応じて発光されるレーザスキャナ113からのレーザ光が、ミラー118で折り返されて帯電された感光ドラム111に照射されることで、感光ドラム111上に静電潜像が形成される。さらに、このようにして感光ドラム111上に形成された静電潜像は、この後、現像器114によってトナー像として顕像化される。
【0019】
この後、感光ドラム111上のトナー像は、転写部115aにおいて転写帯電器115によりシートSに転写される。さらに、このようにトナー像が転写されたシートSは、分離帯電器116により感光ドラム111から静電分離される。転写後に感光ドラム111上に残った転写残トナーは、クリーナ117により除去される。トナー像が転写されたシートSは、搬送ベルト119により定着装置150に搬送されてトナー像の定着が行われ、この後、排出ローラ151によって機外に排出される。
【0020】
[多段給送装置]
次に、本実施形態のシート給送装置としての多段給送装置200について説明する。まず、
図2ないし
図6を用いて多段給送装置200の概略構成について説明する。多段給送装置200は、それぞれが複数枚のシートを収納可能なシート収納装置としての収納庫210を複数有する。複数の収納庫210は、鉛直方向に複数段に並べて配置されている。それぞれの収納庫210は、多段給送装置200の筐体204に対して引き出し及び挿入可能である。また、各収納庫210は、収納可能なシートの枚数が異なるだけで基本的な構成は同じである。なお、収納可能なシートの枚数が同じ場合もある。
【0021】
各収納庫210から給送されるシートは、不図示の搬送路を経由して接続経路202(
図1)に搬送される。また、多段給送装置200は、制御部203(
図1)により各部が制御される。制御部203は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。また、制御部203は、画像形成装置100の制御部140と通信可能であり、制御部140と通信することでシートの給送タイミングなどを制御する。
【0022】
多段給送装置200は、収納庫210の引き出し動作を行うための操作部としてのボタン205を有する。ボタン205は、各収納庫210の前面にそれぞれ設けられている。例えば、操作者がボタン205を押すと、収納庫210を装着位置にロックしていたロック機構が解除され、不図示のバネにより収納庫210が筐体204から押し出される。これにより、操作者が収納庫210を、
図3ないし
図5に示すように、シートを収納可能な位置まで引き出すことができる。なお、ボタン205を押すことで、モータなどにより収納庫が自動でシートを収納可能な位置まで移動する構成であっても良い。
【0023】
収納庫210は、
図4ないし
図6に示すように、シートSを収納可能なシート収納部220と、シート収納部220から画像形成装置100に向けてシートSを給送するシート給送部230とを有する。シート収納部220は、
図5に示すように、シートSが積載される積載トレイ221、突き当て部222、後端規制板223、サイド規制板224等を有する。積載トレイ221は、不図示の昇降機構により上下方向に昇降可能である。積載トレイ221は、シートSを積載する際には所定位置まで下降し、積載されたシートSが給送されると徐々に上昇していく。
【0024】
突き当て部222は、シートが収容される収容空間225において、シート搬送方向下流側に配置され、積載トレイ221に積載されたシートの搬送方向下流端(先端)が突き当てられる。後端規制板223は、収容空間225において、シート搬送方向上流側に配置され、積載トレイ221に積載されたシートの搬送方向上流端(後端)が突き当てられることで、シートの後端位置を規制する。後端規制板223は、シート搬送方向に移動可能で、シートサイズに合わせてシートの後端規制位置を調整可能である。サイド規制板224は、収容空間225のシート搬送方向と直交する幅方向両側にそれぞれ配置され、シートの幅方向両端位置を規制する。サイド規制板224は、幅方向に移動可能で、シートサイズに合わせてシートの幅方向の規制位置を調整可能である。
【0025】
シート給送部230は、
図6に示すように、
給送回転体及び給送ローラとしてのピックアップローラ231、搬送ローラ232とリタードローラ233から構成される分離搬送ローラ対234、搬送ローラ対235等を有する。ピックアップローラ231や分離搬送ローラ対234は、
図5に示すように、収容空間225の上方のシート搬送方向下流端部で、且つ、幅方向略中央に配置されている。
【0026】
ピックアップローラ231は、積載トレイ221の上方に設けられ、上昇した積載トレイ221に積載されたシートSの最上位シートと当接して給送する。このためにピックアップローラ231は、
図6に示すように、シート搬送方向(矢印α方向)に関してシートSの先端部近傍に、積載トレイ221上の最上位シートに適宜の力で圧接可能となるように配置されている。そして、回転することで、最上位シートを矢印α方向に送り出す。
【0027】
分離搬送ローラ対234は、ピックアップローラ231から2枚以上のシートが重なって給送された場合に、分離して1枚のみのシートを搬送する。即ち、分離搬送ローラ対234の搬送ローラ232は、シートを矢印α方向に搬送する方向に回転し、ピックアップローラ231から送られたシートを搬送する。一方、リタードローラ233は、搬送ローラ232とは逆方向に回転して、ピックアップローラ231から送られた2枚以上のシートのうち、最上位シート以外のシートを積載トレイ221側に押し戻す。なお、リタードローラ233には不図示のトルクリミッタが内蔵されており、分離搬送ローラ対234に送られたシートが1枚のみの場合には、搬送ローラ232により搬送されるシートによって連れ回るようになっている。
【0028】
分離搬送ローラ対234に分離搬送されたシートは、搬送ローラ対235により多段給送装置200内の不図示の搬送路に搬送され、上述のように接続経路202(
図1)を介して画像形成装置100に搬送される。
【0029】
本実施形態の場合、上述のようにシート給送部230が収納庫210に設けられている。このため、収納庫210を多段給送装置200の筐体204に対して引き出し及び挿入する際には、収納庫210と共に移動する。このように、シート給送部230を収納庫210と共に引き出せるように構成することで、シート給送部230の各ローラの交換などのメンテナンスを容易にしている。
【0030】
[シート給送部]
次に、シート給送部230の詳しい構成について、
図7ないし
図12を用いて説明する。なお、
図7ないし
図9及び
図12では、シート給送部230の一部を示しており、上述のリタードローラ233や搬送ローラ対235などを省略している。
図10及び
図11では、一部を省略して
図7の右方から見た図を示している。
【0031】
図7ないし
図9に示すように、シート給送部230は、ピックアップローラ231を支持する支持手段及び支持部材としての支持板240、ピックアップローラ231がシートに接触して、シートを給送するための給送位置とピックアップローラ231がシートから離間する第1の退避位置との間で移動させる離接手段としての離接装置255等を備えている。離接装置255は、ピックアップローラ231を給送位置から退避させる退避装置250、ピックアップローラ231を後述する第2退避位置に保持す
る保持装置260等を備える。
【0032】
支持板240は、搬送ローラ回転軸としての搬送ローラ232の回転軸232aに対して回転自在に支持されている。即ち、支持板240は、搬送ローラ232の回転軸232a(揺動軸)を中心に揺動可能である。搬送ローラ232の回転軸232aは、回転体でもあるピックアップローラ231の回転軸線と略平行に配置されている。即ち、搬送ローラ232の回転軸232aとピックアップローラ231の回転軸231aとは、互いに略平行に配置されている。また、搬送ローラ232の回転軸232aは、収納庫210のフレーム211に回転自在に支持されている。
【0033】
ピックアップローラ231の回転軸231aは、
図9に示すように、支持板240の回転支持部241に回転自在に支持されている。したがって、支持板240が搬送ローラ232の回転軸232aを中心に揺動すると、ピックアップローラ231も回転軸232aを中心に揺動する。これにより、ピックアップローラ231が上下方向に移動する。即ち、ピックアップローラ231が、積載トレイ221に積載されたシートに対して昇降動作を行う。具体的には、ピックアップローラ231は、
図10(a)、(b)に示す給送位置と、
図11(a)、(b)に示す第1退避位置との間で昇降可能である。このような昇降動作の詳しい説明については後述する。
【0034】
給送位置は、上述したようにピックアップローラ231が積載トレイ221に積載された最上位シートに当接してシートを給送する位置である。第1退避位置は、シート収納部220にシートを収納する際に、ピックアップローラ231が収容空間225から退避する位置である。即ち、本実施形態では、シート給送部230が収納庫210に設けられており、収納庫210と共に引き出される。この際、ピックアップローラ231が給送位置に位置していた場合、シートを積載トレイ221に積載する際にピックアップローラ231とシートとが干渉し易く、シートの積載がしにくい。このため、本実施形態では、収納庫210が引き出される際に、ピックアップローラ231をシートの積載の邪魔になりにくい位置である第1退避位置まで移動させるようにしている。
【0035】
支持板240には、
図7及び
図8に示すように、ピックアップローラ231が給送位置に位置する場合において、シート収納部220(
図5)に収納されたシートを検知可能なシート検知手段としての検知センサ290が揺動自在に支持されている。検知センサ290は、積載トレイ221(
図5)に積載された最上位シートと接触可能な接触部291を有する。検知センサ290は、接触部291がシートと接触することで該シートを検知可能であり、ピックアップローラ231は、検知センサ290がシートを検知することで、シートを送り出す。
【0036】
このような検知センサ290は、支持板240に支持されたピックアップローラ231が第1退避位置に移動した際に、シートを検知可能な状態の位置から退避できるようにしている。即ち、検知センサ290は、支持板240に支持されたピックアップローラ231が給送位置にある場合には、シート収納部220に収納されたシートがピックアップローラ231に接触していない状態で、接触部291がピックアップローラ231よりもシート側に突出した第1位置に位置する。一方、検知センサ290は、支持板240に支持されたピックアップローラ231が第1退避位置にある場合に、接触部291が第1位置よりもピックアップローラ231から突出していない第2位置に位置する。
【0037】
このために、支持板240には、退避レバー292が揺動自在に支持されている。退避レバー292は、揺動軸に対して長手方向一端側の端部が検知センサ290の下方に位置し、長手方向他端側の端部は、給送位置において上方に突出している。そして、支持板240に支持されたピックアップローラ231が第1退避位置に移動した際に、退避レバー292の他端側の端部がフレーム211と当接することで揺動軸を中心に揺動し、退避レバー292の一端側の端部が検知センサ290を持ち上げる。この結果、検知センサ290は、接触部291が第2位置に位置するように揺動する。
【0038】
また、支持板240の端部には、支持板側係合部242が一体に形成されている。支持板側係合部242は、片側の回転支持部241から回転軸232aの回転軸線方向に突出するように形成され、次述する退避装置250の退避係合部254(
図10(a)など)と係合可能である。
【0039】
退避装置250は、
図9、
図10(a)、(b)及び
図11(a)、(b)に示すように、搬送ローラ232の回転軸232aの周囲で、且つ、支持板240の外側に配置された移動手段及び退避手段としての退避部材251と、退避部材251と回転軸232aとの間に配置されたワンウェイクラッチ252(クラッチ)とを有する。退避部材251は、支持部251a、ロック係合部253、退避係合部254等から構成される。
【0040】
支持部251aは、略円筒状に形成され、ワンウェイクラッチ252を介して、搬送ローラ回転軸としての回転軸232aに対して支持される部分である。ワンウェイクラッチ252は、搬送ローラ232の回転軸232aが、搬送ローラ232がシートを搬送する方向と逆方向(
図10(a)、
図11(a)の時計方向)に回転した場合には回転軸232aの駆動を支持部251aに伝達する。この際、後述する搬送ローラ232を回転駆動するためのモータ301(
図13、14)は逆回転する。
【0041】
一方、ワンウェイクラッチ252は、搬送ローラ232の回転軸232aが、搬送ローラ232がシートを搬送する方向と同方向(
図10(a)、
図11(a)の反時計方向)に回転した場合に空転し、回転軸232aの駆動は支持部251aに伝達されない。この際、後述する搬送ローラ232を回転駆動するためのモータ301(
図13、14)は正回転する。
【0042】
ロック係合部253は、支持部251aの外周面から突出するように形成され、
図9に示すように、支持板240に支持されたピックアップローラ231を第1退避位置にロック可能なロック機構270を構成する。
【0043】
退避係合部254は、
図11(b)に示すように、略扇形に形成され、回転軸232aの回転軸線方向に関し、支持部251aの支持板240側に支持部251aと一体に設けられている。退避係合部254は、上述した支持板240の一部である支持板側係合部242と係合可能な係合部である。
【0044】
支持板240に支持されたピックアップローラ231を給送位置から第1退避位置に移動させる場合には、モータ301を逆回転させることで、回転軸232aを介して退避部材251を、
図10(a)、
図11(a)の時計方向に回転させる。すると、退避部材251の退避係合部254の退避側係合面254aが支持板側係合部242と係合する。そして、更に、退避部材251が回転すると、
図11(a)、(b)に示すように、支持板240とピックアップローラ231が第1退避位置に移動する。ピックアップローラ231が第1退避位置に移動したことは、支持板240に設けられたフラグ243(
図8参照)がフレーム211に形成されたスリットを通過し、フレーム211の裏側に設けられた不図示のセンサがフラグ243を検知することで把握できるようにしている。
【0045】
ロック手段としてのロック機構270は、揺動レバー271と、退避部材251のロック係合部253とを有する。揺動レバー271は、収納庫210のフレーム(
図7ないし
図9では不図示)に支持された揺動軸272を中心に上下方向に揺動可能である。また、揺動レバー271には、ロック係合部253と係合可能なレバー側係合部273が形成されている。そして、上述のように第1退避位置にピックアップローラ231を移動させた退避部材251のロック係合部253が揺動レバー271のレバー側係合部273と係合することで、ピックアップローラ231が第1退避位置にロックされる。
【0046】
退避部材251のロック係合部253の時計方向下流側の外周面は、下流側から上流に向かう程、回転軸232aから離れる方向に傾斜した傾斜面253aとしている。一方、揺動レバー271のレバー側係合部273の下方には、係合面273aを形成している。係合面273aは、退避部材251が支持板240に支持されたピックアップローラ231を給送位置から第1退避位置に移動させるべく回転した際に、傾斜面253aと係合して、揺動レバー271を揺動軸272を中心に上方に揺動させるように形成されている。そして、傾斜面253aが係合面273aを乗り越えると、揺動レバー271が下方に揺動し、レバー側係合部273がロック係合部253と係合するようにしている。
【0047】
保持装置260は、
図7及び
図8に示すように、
第2駆動手段としてのソレノイド261、ソレノイド261に駆動される
保持手段としての保持レバー262を有する。ソレノイド261は、通電によりONされてプランジャー261aが退避し、非通電(OFF)の場合にはプランジャー261aが突出するようになっている。保持レバー262は、プランジャー261aの進退方向と直交する方向の揺動軸262aを中心に上下方向に揺動可能である。また、保持レバー262の先端部上面には、支持板240の支持板側係合部242と係合可能な第1係合部263が設けられ、第1係合部263と揺動軸262aとの間の上面には、揺動レバー271の下面と係合可能な第2係合部264が設けられている。
【0048】
ソレノイド261のプランジャー261aと保持レバー262との間にはリンク機構265が設けられ、ソレノイド261をONするとプランジャー261aが退避して、保持レバー262が揺動軸262aを中心に上方に揺動する。一方、ソレノイド261をOFFするとプランジャー261aが突出して、保持レバー262が揺動軸262aを中心に下方に揺動する。
【0049】
このような保持装置260は、詳しくは後述するように、ソレノイド261をON、OFFすることで、支持板240に支持されたピックアップローラ231を第2退避位置に保持可能な保持位置と、ピックアップローラ231を支持する支持板240の保持を解除可能な保持解除位置との切り替えが可能である。保持位置は、ソレノイド261をONすることで保持レバー262が上方に移動した位置であり、保持解除位置は、ソレノイド261をOFFすることで保持レバー262が下方に移動した位置である。
【0050】
また、
図12(a)、(b)に示すように、シート給送部230は、支持板240に支持されたピックアップローラ231を第1退避位置から給送位置に向けて付勢する付勢手段としての付勢バネ280を有する。付勢バネ280は、コイルバネであり、引っ掛け部281と、コイル部282とを有する。引っ掛け部281は、フレーム211の一部に引っ掛けられており、コイル部282は、搬送ローラ232の回転軸232aの周囲と支持板240と一体に形成されたばね受け部244との間に配置されている。これにより、付勢バネ280は、ばね受け部244を介して支持板240を回転軸232aを中心に下方に、即ち、ピックアップローラ231が給送位置に向かう方向に付勢している。
【0051】
上述したように、支持板240に支持されたピックアップローラ231を第1退避位置に向けて移動させる退避部材251は、ワンウェイクラッチ252により回転軸232aが搬送ローラ232のシート搬送方向と逆方向に回転する場合には回転軸232aから駆動が伝達される。一方、回転軸232aがこれと逆方向に回転した場合には、回転軸232aから退避部材251に駆動が伝達されない。この場合、ワンウェイクラッチ252が空転し、支持板240に支持されたピックアップローラ231が自重と上述の付勢バネ280の付勢力により、第1退避位置から給送位置に向かう方向に揺動する。したがって、退避部材251は、モータ301の逆回転により駆動されて、支持板240に支持されたピックアップローラ231を給送位置から第1退避位置に向けて移動させ、モータ301の正回転によりピックアップローラ231を第1退避位置から給送位置に移動可能とする。
【0052】
[駆動伝達機構]
次に、
図13及び
図14を用いて、搬送ローラ232及びピックアップローラ231の駆動伝達機構300について説明する。なお、
図13及び
図14では、モータ301からピックアップローラ231までの駆動伝達経路のみを抜き出して示している。
【0053】
第1駆動手段及び駆動モータとしてのモータ301は、例えば、パルスモータであり、多段給送装置200の筐体204(
図5など参照)に設けられている。このため、収納庫210を筐体204から引き出した場合、モータ301から搬送ローラ232までの駆動伝達経路が途中で離れるように、駆動伝達機構300は、接続手段としてのカップリング302を有する。即ち、駆動伝達機構300は、モータ301からカップリング302までのモータ側駆動伝達機構310と、カップリング302からピックアップローラ231までのローラ側駆動伝達機構320とを有する。カップリング302は、収納庫210を筐体204に挿入した状態でモータ301とピックアップローラ231との間を駆動伝達可能に接続し、収納庫210が引き出される際にモータ301とピックアップローラ231との間の駆動接続を解除する。
【0054】
モータ側駆動伝達機構310は、モータ301の駆動軸301aと、カップリング302に駆動を伝達する伝達軸302aとの間をベルト311とプーリ312、313とで駆動を伝達する機構としている。即ち、駆動軸301aにプーリ312を、伝達軸302aにプーリ313をそれぞれ設け、これらプーリ312、313に無端状のベルト311を掛け渡している。これにより、モータ301の駆動がプーリ312、ベルト311、プーリ313を介して伝達軸302aに伝達される。なお、モータ側駆動伝達機構310は、このようなプーリとベルトによる機構以外に、ギア列による駆動を伝達する機構などであっても良い。
【0055】
ローラ側駆動伝達機構320は、カップリング302のもう一方の伝達軸302bからピックアップローラ231まで駆動を伝達する機構である。ローラ側駆動伝達機構320は、伝達軸302bに設けられたギア321、搬送ローラ232の回転軸232aの端部に設けられたギア322、回転軸232aの中間部に設けられたギア323、ピックアップローラ231の回転軸231a(給送ローラ回転軸)に設けられたギア324、ギア323とギア324との間に設けられたアイドルギア325を有する。本実施形態では、ピックアップローラ231の回転軸231aには、搬送ローラ232の回転軸232a及びアイドルギア325を介してモータ301の駆動が伝達される。
【0056】
伝達軸302bからピックアップローラ231までの駆動伝達は次のように行われる。まず、モータ側駆動伝達機構310及びカップリング302を介してモータ301の駆動が伝達軸302bに伝達される。次いで、伝達軸302bの回転がギア321と噛合するギア322に伝達されることで回転軸232aが回転する。これにより搬送ローラ232が回転する。次いで、回転軸232aの回転がギア323と噛合するアイドルギア325、アイドルギア325と噛合するギア324に順に伝達されることで回転軸231aが回転する。これにより、ピックアップローラ231が回転する。アイドルギア325は、搬送ローラ232とピックアップローラ231の回転方向を同じにするために設けられている。なお、回転軸231aを非回転に固定し、ピックアップローラ231及びギア324を回転軸231aに回転自在に支持し、ギア324とピックアップローラ231を連結するようにしても良い。この場合、アイドルギア325からギア324への駆動伝達により、ピックアップローラ231がギア324と共に回転軸231aに対して相対回転する。
【0057】
モータ301は、正逆回転が可能なモータであり、正回転した場合には搬送ローラ232及びピックアップローラ231がシートを搬送する方向に回転する。一方、モータ301が逆回転した場合には、搬送ローラ232及びピックアップローラ231がシートを搬送する方向とは逆方向に回転する。また、モータ301が逆回転した場合には、回転軸232aからワンウェイクラッチ252を介して退避部材251(
図10(a)など参照)に回転が伝達され、後述するように、ピックアップローラ231及び支持板240が給送位置から第1退避位置に移動する。
【0058】
モータ301及びモータ側駆動伝達機構310は、筐体204側に設けられ、ピックアップローラ231、搬送ローラ232及びローラ側駆動伝達機構320は、収納庫210側に設けられている。収納庫210を筐体204から引き出す際には、カップリング302が分離して、モータ301の駆動力が搬送ローラ232側には伝達されない。一方、収納庫210を筐体204に挿入し、収納庫210が筐体204の所定の装着位置に装着された場合には、カップリング302が接続され、モータ301の駆動が搬送ローラ232側に伝達可能となる。所定の装着位置とは、収納庫210内に収容されたシートを多段給送装置200内で搬送可能な位置である。
【0059】
[収納庫の引き出し時のシート給送部の動作]
次に、収納庫210を筐体204から引き出す際のシート給送部230の動作について説明する。まず、シートを収納すべく収納庫210を筐体204から引き出す際には、上述したように操作者がボタン205を操作する。すると、モータ301を制御する制御手段としての制御部203は、収納庫210が引き出される前にモータ301を逆回転させて、支持板240に支持されたピックアップローラ231を第1退避位置に位置させる。
【0060】
即ち、収納庫210が所定の装着位置に装着されている状態では、支持板240に支持されたピックアップローラ231は給送位置(
図10(a)、(b)など参照)に位置し、更に、モータ301の駆動を搬送ローラ232側に伝達可能な状態である。したがって、この状態でモータ301を逆回転させて、モータ側駆動伝達機構310及びカップリング302を介してローラ側駆動伝達機構320に駆動を伝達する。
【0061】
すると、搬送ローラ232の回転軸232aが回転し、この回転がワンウェイクラッチ252を介して退避部材251に伝達される(
図11(a)、(b)など参照)。上述したように、ワンウェイクラッチ252は、モータ301の逆回転の駆動を退避部材251に伝達する。このため、モータ301を逆回転させると、回転軸232a及びワンウェイクラッチ252を介して退避部材251が、
図10(a)の時計方向に回転し、退避部材251と共に退避係合部254も同方向に回転する。そして、上述したように、退避係合部254の退避側係合面254aが支持板側係合部242と係合する。更に、退避部材251が回転すると、
図11(a)、(b)に示すように、支持板240とピックアップローラ231が第1退避位置に移動する。
【0062】
また、この際、退避部材251に設けられたロック係合部253も同方向に回転し、上述したように、傾斜面253aが揺動レバー271の係合面273aと係合することで揺動レバー271が持ち上げられる。そして、傾斜面253aが係合面273aを乗り越えると、
図9に示すように、揺動レバー271が下方に揺動し、レバー側係合部273がロック係合部253と係合する。これにより、退避部材251がこの位置でロックされ、モータ301からの駆動伝達が切断されても、退避部材251が不用意に支持板240に支持されたピックアップローラ231を給送位置に向けて移動させる方向に回転することを防止している。また、このように退避部材251がロックされることで、退避係合部254との係合により第1退避位置に位置している支持板240に支持されたピックアップローラ231も、第1退避位置にロックされた状態となる。
【0063】
制御部203は、上述のようにピックアップローラ231が第1退避位置にロックされると、上述したように、収納庫210を所定の装着位置にロックしていたロック装置を解除する。ピックアップローラ231が第1退避位置に移動すると、支持板240に設けられたフラグ243(
図11(a)参照)がフレーム211に形成されたスリットを通過し、フレーム211の裏側に設けられた不図示のセンサがフラグ243を検知する。制御部203は、このようにセンサがフラグ243を検知することで、ピックアップローラ231が第1退避位置にロックされたと判断する。
【0064】
制御部203が上述のロック装置を解除すると、収納庫210が不図示のバネにより筐体204から押し出され、シートを収納可能な位置まで引き出し可能となる。本実施形態では、このように収納庫210を引き出す際に、支持板240及びピックアップローラ231を第1退避位置に退避させ、かつ、この位置でロックしている。このため、操作者がシート収納部220にシートを収納する際に、ピックアップローラ231が邪魔にならず、シートを収納する作業を行い易くできる。
【0065】
[収納庫の挿入時のシート給送部の動作]
次に、収納庫210を筐体204内の所定の装着位置に挿入した際のシート給送部230の動作について、
図10、
図11、
図15ないし
図21を用いて説明する。操作者は、引き出された収納庫210内にシートを収納した後、収納庫210を筐体204内に挿入する(
図5など参照)。この際、例えば、シートの積載量が多い場合に、最上位シートが給送位置に位置したピックアップローラ231と接触する高さにある可能性がある。上述したように、ピックアップローラ231を第1退避位置から給送位置に移動させる際には、モータ301をピックアップローラ231によりシートを給送する方向に回転(正回転)させる。
【0066】
したがって、収納庫210を筐体204の所定の装着位置に装着後、ピックアップローラ231を第1退避位置から給送位置まで停止させることなく移動させてしまうと、この移動時にピックアップローラ231も回転しているため、最上位シートがピックアップローラ231により搬送されてしまう。即ち、ピックアップローラ231が回転した状態でピックアップローラ231が給送位置に移動するため、シートに当接するのと同時にシートが搬送されてしまう。
【0067】
この状態では、ピックアップローラ231が十分な圧力でシートに接触しておらず、例えば、ローラの回転軸線方向の圧力分布が一定ではない。このため、このような不安定な当接圧でシートを搬送すると、シートの姿勢がずれて、シートがジャムしたり、シートが斜行して搬送されてしまうなどの不具合が発生し易くなる。そこで、本実施形態では、シート給送部230を以下のように動作させている。
【0068】
図15に示すように、多段給送装置200の制御部203は、モータ301及びソレノイド261を制御する。装着センサ206は、収納庫210が筐体204の所定の装着位置に装着されたことを検知する。
図15は、多段給送装置200の制御構成の一部のみを示している。
【0069】
まず、収納庫210内にシートを収納した状態では、
図11(a)、(b)に示すように、支持板240及びピックアップローラ231は、第1退避位置に位置している。この際、
図17に示すように、ロック機構270の揺動レバー271のレバー側係合部273が退避部材251のロック係合部253と係合することで、支持板240に支持されたピックアップローラ231が第1退避位置にロックされている。
【0070】
この状態で、収納庫210を筐体204の所定の装着位置に装着すると、制御部203は、以下のようにモータ301及びソレノイド261を制御する。この制御の流れを
図16に示す。なお、上述したように、収納庫210が筐体204の所定の装着位置に装着されると、カップリング302が結合され、モータ301からピックアップローラ231まで駆動伝達が可能となる(
図13、14参照)。
【0071】
まず、制御部203は、装着センサ206により収納庫210が筐体204の所定の装着位置に装着されたことを検知すると(S1)、ソレノイド261をONする(S2)。すると、
図18に示すように、プランジャー261aが退避して、保持レバー262が揺動軸262aを中心に上方に揺動する。この際、揺動レバー271の第2係合部264が揺動レバー271の下面と係合して、揺動レバー271を持ち上げる。即ち、保持装置260を保持位置に位置させる。この結果、揺動レバー271のレバー側係合部273と退避部材251のロック係合部253との係合が外れ、退避部材251のロックが解除される。即ち、ロック機構270は、保持装置260が保持位置に切り替えられる動作により支持板240のロックを解除する。
【0072】
次に、制御部203は、モータ301を正回転させる(S3)。すると、ワンウェイクラッチ252が空転して、退避部材251が
図11(a)の反時計方向に回転することが許容される。即ち、モータ301に通電されている場合、モータ301が回転していないとモータ301に駆動連結された回転軸232aが停止したままとなる。回転軸232aと退避部材251との間にはワンウェイクラッチ252が存在し、退避部材251の回転軸232aに対する
図11(a)の反時計方向への回転がロックされている。即ち、回転軸232aが退避部材251に対して時計方向に相対回転する傾向となった場合、言い換えれば、退避部材251が回転軸232aに対して反時計方向に相対回転する傾向となった場合に、ワンウェイクラッチ252がロックされ、回転軸232aと退避部材251との間で回転伝達が可能となる。したがって、モータ301を逆回転させて回転軸232aを反時計方向に回転させないと、退避部材251を反時計方向に回転させることはできない。
【0073】
このようにモータ301を正回転させて、退避部材251が
図11(a)の反時計方向に回転することを許容すると、支持板240に支持されたピックアップローラ231は、自重と付勢バネ280(
図12(a)、(b))の付勢力により第1退避位置から給送位置に向かう方向に揺動する。このとき、退避部材251は、退避係合部254と支持板側係合部242との係合により、支持板240の揺動に伴い
図11(a)の反時計方向に回転する。
【0074】
そして、支持板240に支持されたピックアップローラ231は、
図19に示すように、第2退避位置まで揺動する(S4)。ここで、第2退避位置とは、第1退避位置と給送位置の間の位置であり、シート収納部220に最大量のシートが積載されていてもピックアップローラ231が最上位シートと接触しない位置である。また、第2退避位置において、ピックアップローラ231の回転軸線は、搬送ローラ232の回転軸線(揺動軸の揺動中心)よりも鉛直方向下方に位置する。
【0075】
この際、ソレノイド261はONされたままであり、保持レバー262は揺動レバー271を持ち上げたままの状態である。上述したように、保持レバー262の先端部には、支持板240の支持板側係合部242と係合可能な第1係合部263が設けられている。第1係合部263は、保持レバー262が上方に持ち上げられた状態で支持板側係合部242と係合する面が略水平となるような傾斜面としている。
【0076】
したがって、上述のように支持板240に支持されたピックアップローラ231が第2退避位置まで揺動すると、
図19及び
図20に示すように、保持レバー262の第1係合部263が支持板240の支持板側係合部242と係合して、ピックアップローラ231が第2退避位置に保持される。即ち、保持レバー262は、ソレノイド261がONされた状態でピックアップローラ231を第2退避位置に保持できるように構成されている。
【0077】
制御部203は、ピックアップローラ231が第2退避位置に保持された状態で、モータ301を更に正回転させる。すると、
図21(a)、(b)に示すように、退避部材251が
図21(a)の反時計方向に回転し、退避係合部254と支持板側係合部242との係合が解除される。即ち、制御部203は、ピックアップローラ231が第2退避位置に保持された状態からモータ301を所定量正回転させる。具体的には、退避係合部254と支持板側係合部242とが十分離れ、支持板240に支持されたピックアップローラ231が給送位置まで移動が可能な所定位置まで退避係合部254が移動するようにモータ301の回転を継続する。本実施形態では、モータ301をパルスモータとしているため、上述の所定量は所定のパルス数である。なお、モータ301をDCモータとしても、モータの回転量を検知可能なエンコーダを設けることで上述の所定量の回転の制御が可能である。
【0078】
このように、退避部材251は、ピックアップローラ231を第2退避位置に保持した状態でモータ301が正回転されることでピックアップローラ231の給送位置への移動を可能とする。なお、このような状態となっても、ピックアップローラ231は、保持レバー262により第2退避位置に保持されている。そして、退避部材251を所定位置まで回転したらモータ301の回転を停止する(S5)。
【0079】
制御部203は、モータ301の駆動を停止した後、ソレノイド261をOFFする(S6)。すると、
図10(a)、(b)に示すように、保持レバー262が揺動軸262aを中心に下方に揺動し、これに伴い支持板240も自重及び付勢バネ280の付勢力により下方に揺動することで、支持板240に支持されたピックアップローラ231が給送位置に移動する。なお、退避部材251の退避係合部254の退避側係合面254aとは反対側をストッパ面254bとし、退避部材251が回転し過ぎないように、筐体204に設けられた不図示のストッパと係合可能としている。
【0080】
上述のように、本実施形態の場合、収納庫210を筐体204の所定の装着位置に装着し、ピックアップローラ231を第1退避位置から給送位置に移動させる際に、一度、第2退避位置に保持している。そして、モータ301の駆動を停止した後、第2退避位置から給送位置に移動させるようにしている。このため、ピックアップローラ231が回転した状態で給送位置に移動することを防止できる。このため、収納庫210から給送されるシートの姿勢ずれを抑制できる。
【0081】
なお、上述の説明では、支持板240に支持されたピックアップローラ231を第1退避位置から給送位置に移動させる際に、支持板240に支持されたピックアップローラ231を、一旦、第2退避位置に保持させ、モータ301の回転を停止した後、この保持を解除した。但し、支持板240に支持されたピックアップローラ231が第2退避位置から給送位置に移動する際に、モータ301を停止してから移動させるか、モータ301を駆動した状態で移動させるかを選択可能としても良い。このために、例えば、多段給送装置200に、このような選択が可能な選択手段としての切換部207(
図15参照)を設ける。
【0082】
制御部203は、切換部207を操作された場合に、例えば、ソレノイド261をONして第1退避位置にロックされたピックアップローラ231のロックを解除し、モータ301を正回転させた後、モータ301を駆動したままソレノイド261をOFFする。これにより、支持板240に支持されたピックアップローラ231は、第2退避位置で止まることなく第1退避位置に移動する。この際、モータ301が正回転したままであるため、ピックアップローラ231は回転したまま給送位置に移動する。このように構成することで、操作者による操作の幅を広げることができる。例えば、シートをそれほど積載することがない場合に、上述のように切換部207を操作することで、ピックアップローラ231を少しでも速く給送位置に移動させることが可能となる。
【0083】
<他の実施形態>
上述の実施形態では、モータ301やソレノイド261を制御する制御部203を多段給送装置200に設けたが、これらの制御を画像形成装置100の制御部140により行うようにしても良い。また、シート給送装置は、上述の多段給送装置に関わらず1段のデッキなど他の構成であっても良い。
【符号の説明】
【0084】
100・・・画像形成装置/200・・・多段給送装置(シート給送装置)/203・・・制御部(制御手段)/204・・・筐体/205・・・ボタン(操作部)/207・・・切換部(選択手段)/210・・・収納庫(シート収納装置)/220・・・シート収納部/230・・・シート給送部/231・・・ピックアップローラ(給送回転体、給送ローラ)/231a・・・回転軸(給送ローラ回転軸)/232・・・搬送ローラ/232a・・・回転軸(揺動軸、搬送ローラ回転軸)/240・・・支持板(支持手段、支持部材)/242・・・支持板側係合部(支持手段の一部)/250・・・退避装置/251・・・退避部材(移動手段)/252・・・ワンウェイクラッチ(クラッチ)/254・・・退避係合部(係合部)/255・・・離接装置(離接手段)/260・・・保持装置/261・・・ソレノイド(第2駆動手段)/262・・・保持レバー(保持手段)/270・・・ロック機構(ロック手段)/280・・・付勢バネ(付勢手段)/301・・・モータ(第1駆動手段、駆動モータ)/302・・・カップリング(接続手段)