(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20240508BHJP
【FI】
H01L31/04 570
(21)【出願番号】P 2020004167
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】吉河 訓太
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-077103(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140552(WO,A1)
【文献】特開2008-288278(JP,A)
【文献】特開2017-073552(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152020(WO,A1)
【文献】特開2017-055117(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146366(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109786492(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-1816164(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0380571(US,A1)
【文献】特開平08-139347(JP,A)
【文献】特開2005-136076(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111223950(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-99/00
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数の接続電極を有し、第1方向に並べて配置される複数の太陽電池セルと、
前記第1方向に隣接する前記太陽電池セルの前記接続電極間を接続する複数の配線材と、
を備え、
前記太陽電池セルは、
その前記第1方向一方側の端部が隣接する前記太陽電池セルの前記第1方向他方側の端部の裏側に重なるよう配置され、
前記第1方向一方側の端部の裏面のみに配設され、前記配線材を支持する緩衝材を有
し、
前記緩衝材は、裏面に前記第1方向に延びる1以上の凹部を有する、太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記凹部の深さが7μm以上30μm以下であり、前記凹部の幅が50μm以上200μm以下である、請求項
1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
それぞれ複数の接続電極を有し、第1方向に並べて配置される複数の太陽電池セルと、
前記第1方向に隣接する前記太陽電池セルの前記接続電極間を接続する複数の配線材と、
を備え、
前記太陽電池セルは、
その前記第1方向一方側の端部が隣接する前記太陽電池セルの前記第1方向他方側の端部の裏側に重なるよう配置され、
前記第1方向一方側の端部の裏面のみに配設され、前記配線材を支持する緩衝材を有
し、
前記太陽電池セルは、前記接続電極の間に、前記接続電極以外の部分と前記配線材との電気的接触を防止する配線絶縁材をさらに有し、
前記緩衝材は、前記配線絶縁材と同じ材料から形成されている、太陽電池モジュール。
【請求項4】
それぞれ複数の接続電極を有し、第1方向に並べて配置される複数の太陽電池セルと、
前記第1方向に隣接する前記太陽電池セルの前記接続電極間を接続する複数の配線材と、
を備え、
前記太陽電池セルは、
その前記第1方向一方側の端部が隣接する前記太陽電池セルの前記第1方向他方側の端部の裏側に重なるよう配置され、
前記第1方向一方側の端部の裏面のみに配設され、前記配線材を支持する緩衝材を有
し、
前記太陽電池セルは、前記第1方向他方側の端部の裏面に隣接する前記太陽電池セルを支持するセル絶縁材をさらに有し、
前記緩衝材の前記第1方向に垂直な方向の長さは、前記セル絶縁材の前記第1方向に垂直な方向の長さより大きい、太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記緩衝材は、前記第1方向に垂直な方向に間欠的に配設されている、請求項1
から4のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記緩衝材の前記第1方向に垂直な方向の長さは、前記第1方向の長さよりも大きい、請求項1から
5のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セルの中には、裏面側にのみ電極を有するバックコンタクト型のものがある。バックコンタクト型の太陽電池セルでは、表面側に光を遮光する電極が配設されないので、略全面が光電変換に寄与し得る。バックコンタクト型の太陽電池セルの一形態として、集電抵抗を低減するために、第1の極性を有する複数の第1電極と第2の極性を有する複数の第2電極とが基板全体に分散して配設され、複数の第1電極間を接続する複数の配線材(線状の導体)と、複数の第2電極間を接続する複数の配線材とを備えるものがある。このように複数の配線材を有する太陽電池セルを接続してモジュール化する場合、隣接する太陽電池セル間で配線材を一体化すること、つまり、隣接する太陽電池セルに跨って延びる配線材を用いることで、太陽電池セル間を接続する構成が知られている。
【0003】
また、複数の太陽電池セルをモジュール化する態様として、複数の太陽電池セルを互いの端部を順番に重ねるように並べて接続するシングリング構造が知られている。太陽電池セルの端部を重ねることで、モジュール全体の面積に対する実際に光電変換に寄与する有効領域の面積の割合を大きくすることができる。バックコンタクト型の太陽電池セルを用いる太陽電池モジュールにおいても、太陽電池セル間に隙間ができないよう、太陽電池セルの端部を重ね合わせるシングリング構造とすることで、モジュールの面積当たりの出力を向上することができる。
【0004】
特許文献1には、太陽電池セルの端部を重ね合わせ、隣接する太陽電池セル間に跨って延びる第1集電部材および第2集電部材を用いて太陽電池セル間を接続したモジュールが記載されている。特許文献1には、表面側に配置される太陽電池セルの裏面の隣接する太陽電池セルが重ねられる領域に絶縁材を配置することによって、太陽電池セルの重ね合わせられた領域に応力が集中して太陽電池セルが破損したり接続のための半田が剥離したりすることを防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の構成では、太陽電池セルの互いに対向する面に作用しあう応力を軽減することができる。しかしながら、特許文献1の構成でも、太陽電池セル間に跨って延びる第1集電部材および第2集電部材が裏面側の太陽電池セルの端部のエッジに圧接されることにより裏面側の太陽電池セルの端部が破損する場合があり、信頼性を低下させる原因となっている。
【0007】
本発明は、信頼性が高い太陽電池モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る太陽電池モジュールは、それぞれ複数の接続電極を有し、第1方向に並べて配置される複数の太陽電池セルと、前記第1方向に隣接する前記太陽電池セルの前記接続電極間を接続する複数の配線材と、を備え、前記太陽電池セルは、その前記第1方向一方側の端部が隣接する前記太陽電池セルの前記第1方向他方側の端部の裏側に重なるよう配置され、前記第1方向一方側の端部の裏面に前記配線材を支持する緩衝材を有する。
【0009】
本発明に係る太陽電池モジュールにおいて、前記緩衝材は、前記第1方向に垂直な方向に間欠的に配設されていてもよい。
【0010】
本発明に係る太陽電池モジュールにおいて、前記緩衝材は、裏面に前記第1方向に延びる1以上の凹部を有してもよい。
【0011】
本発明に係る太陽電池モジュールにおいて、前記凹部の深さが7μm以上30μm以下であり、前記凹部の幅が50μm以上200μm以下であってもよい。
【0012】
本発明に係る太陽電池モジュールにおいて、前記緩衝材の前記第1方向に垂直な方向の長さは、前記第1方向の長さよりも大きくてもよい。
【0013】
本発明に係る太陽電池モジュールにおいて、前記太陽電池セルは、前記接続電極の間に、前記接続電極以外の部分と前記配線材との電気的接触を防止する配線絶縁材をさらに備え、前記緩衝材は、前記配線絶縁材と同じ材料から形成されていてもよい。
【0014】
本発明に係る太陽電池モジュールにおいて、前記太陽電池セルは、前記第1方向他方側の端部の裏面に隣接する前記太陽電池セルを支持するセル絶縁材をさらに有し、前記緩衝材の前記第1方向に垂直な方向の長さは、前記セル絶縁材の前記第1方向に垂直な方向の長さより長くてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、信頼性が高い太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の太陽電池モジュールの模式裏面図である。
【
図2】
図1の太陽電池モジュールの模式断面図である。
【
図3】
図1の太陽電池モジュールのA-A線断面図である。
【
図4】
図3の太陽電池モジュールのB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュール1の模式裏面図である。
図2は、
図1の太陽電池モジュールの模式断面図である。
図3は、太陽電池モジュール1のA-A線断面図である。
図4は、太陽電池モジュール1のB-B線断面図である。
【0019】
太陽電池モジュール1は、それぞれ第1方向に延びる複数の太陽電池ストリング2と、太陽電池ストリング2の表面(受光面)側に配置される表側保護部材3と、太陽電池ストリング2の裏面(受光面と反対側の面)側に配置される裏側保護部材4と、表側保護部材3および裏側保護部材4間の隙間に充填される封止材5と、太陽電池ストリング2間を接続する一対の接続部材6と、を備える。
【0020】
太陽電池ストリング2は、第1方向に並べられた複数の太陽電池セル10と、太陽電池セル10間を電気的に接続する複数の配線材20と、複数の太陽電池セル10および複数の配線材20の裏面側を覆う樹脂フィルム30と、を備える。太陽電池ストリング2において、各太陽電池セル10は、第1方向一方側の端部が隣接する太陽電池セル10の他方側の端部の裏面に重なるよう配置される。つまり、太陽電池ストリング2は、複数の太陽電池セル10の第1方向の端部を順番に重ねたシングリング構造を有する。
【0021】
それぞれの太陽電池セル10は、半導体基板11を有する。半導体基板11の裏面側の少なくとも他の太陽電池セル10が表面側に配置されない領域には、第1の導電型を有し、第1方向に垂直な第2方向に延びる帯状の複数の第1半導体層12と、第2の導電型を有し、第2方向に延びる帯状の複数の第2半導体層13とが第1方向に交互に配設されている。第1半導体層12および第2半導体層13の裏面側には、それぞれ第2方向に延びる収集電極14が配設されている。それぞれの収集電極14の裏面側には、配線材20が接続される複数の接続電極15が一定の間隔を空けて配設されている。第1半導体層12の裏面側の接続電極15と第2半導体層13の裏面側の接続電極15とは、互い違いに配置されている。収集電極14の裏面側の接続電極15の間の部分には、それぞれ配線絶縁材16が配設されている。半導体基板11の裏面の第一方向一方側の端部、つまり他の太陽電池セル10の裏側に配置される領域には、配線材20を支持する緩衝材17が配設され、半導体基板11の裏面の第一方向他方側の端部、つまり他の太陽電池セル10の表側に配置される領域には、隣接する太陽電池セル10を支持するセル絶縁材18が配設されている。太陽電池セル10は、これらの構成以外に、例えば反射防止層、パッシベーション層等の各種の構成要素を有してもよい。
【0022】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコンから形成することができる。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体基板である。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。このような半導体基板11は、表面からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0023】
第1半導体層12および第2半導体層13は、所望の導電型を付与するドーパントをドープしたアモルファスシリコンによって形成することができる。p型のドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられ、n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。
【0024】
収集電極14は、例えば銀ペースト等の導電性ペーストの印刷および焼成により形成することができる。
【0025】
接続電極15は、例えば銀ペースト等の導電性ペーストの印刷および焼成により形成することができる。つまり、接続電極15は、収集電極14に同様の材料を局所的に積層することによって形成できる。
【0026】
配線絶縁材16は、少なくとも、収集電極14の平面視で配線材20と重複し、接続電極15が存在しない領域を被覆するよう配設される。配線絶縁材16は、ペースト状の絶縁材料の印刷および焼成により形成することができる。
【0027】
配線絶縁材16は、接続電極15以外の部分と配線材20との電気的接触を、より詳しくは、第1半導体層12の裏面側に配設される接続電極15に接続される配線材20と第2半導体層13の裏面側に配設される収集電極14との短絡、および第2半導体層13の裏面側に配設される接続電極15に接続される配線材20と第1半導体層12の裏面側に配設される収集電極14との短絡を防止する。
【0028】
緩衝材17は、配線材20を半導体基板11と直接接触しないように支持する。これにより、太陽電池モジュール1の製造工程において配線材20が半導体基板11のエッジに圧接されて半導体基板11に割れや欠けを生じさせることを防止できる。
【0029】
緩衝材17は、ペースト状の絶縁材料の印刷および焼成により形成することができる。緩衝材17は、配線絶縁材16と同じ材料から形成することができ、配線絶縁材16と同時に形成してもよい。
【0030】
半導体基板11に割れや欠けを防止する観点から、緩衝材17の材質としては、半導体基板11と比して弾性率が小さいことが望ましい。具体的な材料としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を主成分とする印刷可能な材料を用いることが好ましい。このような材料は、配線絶縁材16および後述するセル絶縁材18としても好ましい材料である。
【0031】
緩衝材17は、半導体基板11の第1方向一方側の端部の裏面側に第2方向に間欠的に、より詳しくは配線材20が配設される位置に選択的に配設されることが好ましい。また、各緩衝材17は、配線材20の位置ずれを考慮して、第2方向に十分な長さを有すること、つまり第1方向の長さよりも第2方向の長さが大きいことが好ましい。具体的には、衝材109の第2方向の長さとしては、2mm以上5mm以下が好ましく、3mm以上4mm以下がより好ましい。緩衝材17の第1方向の長さは、第2方向の長さよりも小さいことが好ましい。これにより、配線材20を確実に支持しつつ、緩衝材17を形成する材料の使用量を低減することができる。また、緩衝材17は、第1方向に複数列に分けて形成されてもよい。
【0032】
各緩衝材17は、裏面に第1方向に延びる1以上の凹部171を有することが好ましい。各緩衝材17が1以上の凹部171を有することによって、太陽電池ストリング2を形成する際に配線材20が緩衝材17上で第2方向に滑り難いため、配線材20を接続電極15に確実に接続することができる。
【0033】
凹部171の深さ(緩衝材17の凹部171の両側の直近の高さのピークを結ぶ直線と凹部171の最深部との半導体基板11に垂直な方向の距離)としては、7μm以上30μm以下が好ましく、10μm以上25μm以下がより好ましい。凹部171の深さが小さくすぎると配線材20が緩衝材17上で第2方向に滑りやすくなるため、配線材20を適切な位置に固定することが容易でなくなるおそれがある。逆に、凹部171の深さが大きすぎると、配線材20を支持する凹部171の最深部における緩衝材17の厚みが小さくなることで緩衝材としての機能が不十分となるおそれがある。凹部171の幅(緩衝材17の凹部171の両側の直近の高さのピーク間の半導体基板11と平行な方向の距離)は、断面形状が円形または楕円形である配線材20を用いることを想定すると、凹部171の深さの7倍以上15倍、具体的には50μm以上200μm以下であることが好ましい。また、凹部171を複数設けられる場合、凹部171のピッチとしては、100μm以上500μm以下が好ましい。凹部171をこのような配置とすることによって、配線材20の位置決め誤差を許容しつつ、配置された配線材20位置ずれを効果的に防止することができる。
【0034】
凹部171は、緩衝材17を第2方向に複数のブロックに分割してペースト状の絶縁材料を印刷することで形成することができる。ペースト状の絶縁材料は、一定の厚みを有する印刷マスクを用いて印刷されるが、断面視において特に半導体基板11側の部分がマスクの開口形状よりも広がるよう絶縁材料が流動する滲みが生じる。このため、緩衝材17を小さい隙間を有する複数のブロックに分割して印刷することで、滲みによってブロック同士が接続され、ブロック間の隙間に相当する位置の高さが相対的に小さい凹部171となった緩衝材17を形成することができる。
【0035】
セル絶縁材18は、収集電極14の少なくとも一部分を被覆するよう配設される。セル絶縁材18は、重ね合わされる太陽電池セル10が半導体基板11または収集電極14に直接接触して短絡を生じさせることや半導体基板11に割れや欠けを生じさせることを防止する。
【0036】
セル絶縁材18は、半導体基板11の第1方向他方側の端部の裏面側に第2方向に間欠的に配設されることが好ましい。これにより、緩衝材17の間から太陽電池セル10間の隙間に封止材5を充填することができる。また、緩衝材17は、第1方向に複数列に分けて配設されてもよい。これにより、比較的少量の絶縁材料を用いてより確実に接続電極15を保護することができる。セル絶縁材18の第2方向の長さは、第1方向の長さと同程度であってもよい。例として、セル絶縁材18は、第1方向の長さと第2方向の長さとが同程度の点状に形成することができる。また、セル絶縁材18の第2方向の長さは、緩衝材17の第2方向の長さよりも小さくてよい。
【0037】
配線材20は、太陽電池セル10内で第1方向に並ぶ複数の接続電極15を接続する共に、隣接する太陽電池セル10間を接続するインターコネクタとして機能する。隣接する太陽電池セル10の向きが逆向きとなるよう配置し、各太陽電池セル10において第1半導体層12の裏面側に配設された接続電極15に接続される配線材20と第2半導体層13の裏面側に配設された接続電極15に接続される配線材20とが第1方向に異なる側の太陽電池セル10に延びるよう、各配線材20を2つの太陽電池に跨って配置することで、複数の太陽電池セル10を直列に接続することができる。
【0038】
配線材20は、例えば銅線等の電気抵抗が小さい材料から形成される。また、配線材20は、収集電極14と接続するための半田によって被覆されていてもよい。
【0039】
樹脂フィルム30は、端部を重ねた配置した複数の太陽電池セル10に複数の配線材20を接続する際に、予め複数の配線材20を適切な間隔で保持し、複数の配線材20を一体的に複数の太陽電池セル10に対して位置決めすることを可能にする。また、樹脂フィルム30は、太陽電池セル10に接着され、太陽電池モジュール1を組み立てる前の太陽電池ストリング2の裏面を保護する。
【0040】
樹脂フィルム30は、太陽電池セル10同士の隙間への封止材5の充填を可能にするよう、複数の開口を有することが好ましい。この開口は、上述するように、各配線材20を2つの太陽電池に跨って配置する場合に、1本の長尺の導体を分割して各配線材20を形成するための加工によって同時に形成してもよい。
【0041】
表側保護部材3は、封止材5を介して、太陽電池ストリング2、すなわち太陽電池セル10の表面を覆うことにより、太陽電池セル10を保護する。表側保護部材3は、板状またはシート状の材料から形成することができ、透光性および対候性に優れることが好ましい。具体的には、表側保護部材3の材質としては、例えばアクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂、ガラスなどを挙げることができる。また、表側保護部材3の表面は、光の反射を抑制するために、凹凸状に加工されたり、反射防止コーティング層で被覆されてもよい。
【0042】
裏側保護部材4は、封止材5を介して、太陽電池ストリング2の裏面を覆って、太陽電池セル10を保護する。裏側保護部材4は、表側保護部材3と同様に、板状またはシート状の材料から形成することができ、遮水性に優れることが好ましい。具体的には、裏側保護部材4としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂フィルムと、アルミニウム箔等の金属箔との積層体が好適に用いられる。
【0043】
封止材5は、太陽電池ストリング2、すなわち太陽電池セル10を封止して保護するもので、太陽電池セル10の受光側の面と表側保護部材3との間、および、太陽電池セル10の裏側の面と裏側保護部材4との間に介在する。
【0044】
封止材5は、太陽電池ストリング2と表側保護部材3および裏側保護部材4とを接着すると共に、太陽電池ストリング2の周囲の隙間をなくすことで、太陽電池セル10を保護する。このため、封止材5としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、または、シリコーン樹脂等の透光性を有する熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
【0045】
一方の接続部材6は、太陽電池ストリング2の一端の太陽電池セル10の第1半導体層12の裏面側に配設された接続電極15に接続された配線材20に接続され、他方の接続部材6太陽電池ストリング2の他端の太陽電池セル10の第2半導体層13の裏面側に配設された接続電極15に接続された配線材20に接続されている。接続部材6は、太陽電池モジュール1の外部の回路に接続可能に、表側保護部材3および裏側保護部材4の間から外側に延出している。
【0046】
以上のように、半導体基板11の第1方向一方側の端部の裏面側に配線材20を支持する緩衝材17を有する太陽電池セル10を用いた太陽電池モジュール1は、配線材20が半導体基板11のエッジに圧接されて半導体基板11に割れや欠けが生じることが防止されるため、信頼性に優れると共に、製造時の歩留まり向上により比較的安価に提供することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例として、本発明に係る太陽電池モジュールにおいて、半導体層は半導体基板へのドーパントの拡散によって形成してもよい。また、本発明に係る太陽電池モジュールにおいて、収集電極および接続電極は、蒸着等により金属材料を積層することで形成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 太陽電池モジュール
2 太陽電池ストリング
3 表側保護部材
4 裏側保護部材
5 封止材
6 接続部材
10 太陽電池セル
11 半導体基板
12 第1半導体層
13 第2半導体層
14 収集電極
15 接続電極
16 配線絶縁材
17 緩衝材
18 セル絶縁材
20 配線材
30 樹脂フィルム
171 凹部