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特許7483385払拭装置、記録装置及び吐出口面の払拭方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】払拭装置、記録装置及び吐出口面の払拭方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
B41J2/165 201
B41J2/165 307
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020007823
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021112903
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】現田 心
(72)【発明者】
【氏名】弾塚 俊光
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大岳
(72)【発明者】
【氏名】成實 一樹
(72)【発明者】
【氏名】山室 友生
(72)【発明者】
【氏名】寒河 裕人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-155119(JP,A)
【文献】特開2014-213538(JP,A)
【文献】特開2013-199081(JP,A)
【文献】特開2017-160404(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0046724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材の粒子を含むインクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する記録ヘッドの前記吐出口面を払拭するためのクリーニング部材を有し、
前記クリーニング部材は、色材の粒子とは種類が異なり前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子を表面に付与されている状態で前記記録ヘッドの前記吐出口面を払拭し、
前記色材よりも大きな粒子径を持つ粒子は前記色材の10/3倍から10倍の大きさであり、
前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子は、前記インクに含まれる色材の硬度よりも、硬度が低いことを特徴とする払拭装置。
【請求項2】
前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子は樹脂微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の払拭装置。
【請求項3】
前記樹脂微粒子は、直径100nm~200nmの粒子径を有する、アクリル樹脂微粒子、アクリルースチレン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、ポリプロピレン樹脂微粒子、ポリウレタン樹脂微粒子、スチレンーブタジエン樹脂微粒子のうちのいずれかを含むことを特徴とする請求項2に記載の払拭装置。
【請求項4】
前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子は、前記吐出口面の硬度よりも、硬度が低いことを特徴とする請求項1乃至3に記載の払拭装置。
【請求項5】
前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子の硬度は、R20~60(ロックウェル硬度)の硬度を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の払拭装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドは、前記吐出口面が撥水性あるいは親水性をもつように処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の払拭装置。
【請求項7】
前記クリーニング部材は、繊維間を融着や機械的、化学的作用により結合、あるいは絡み合わせたシート・ウェブまたはパット状の不織布で構成されていることを特徴とする請求項1乃至に記載の払拭装置。
【請求項8】
前記クリーニング部材を前記吐出口面に押圧するための押圧部材を有し、
前記押圧部材で前記クリーニング部材を前記吐出口面に押圧しながら払拭を行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の払拭装置。
【請求項9】
前記クリーニング部材は、前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子が予め含まれた状態であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の払拭装置。
【請求項10】
前記押圧部材は多孔質体であり、
前記押圧部材に前記色材よりも大きな粒子径を持つ粒子を含む溶液を供給する供給手段を有し、
前記吐出口面の払拭を行う前に前記押圧部材は前記クリーニング部材と接触することにより前記クリーニング部材は前記色材よりも大きな粒子径を持つ粒子を含んだ状態となり、
前記クリーニング部材は前記色材よりも大きな粒子径を持つ粒子を含んだ状態で前記吐出口面の払拭を行うことを特徴とする請求項に記載の払拭装置。
【請求項11】
前記記録ヘッドは所定の方向に配列された複数の前記吐出口を有し、
前記吐出口面の払拭は、前記記録ヘッドと前記クリーニング部材とが前記所定の方向に相対的に移動することにより行われることを特徴とする請求項1乃至1のいずれか1項に記載の払拭装置。
【請求項12】
色材を含むインクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する記録ヘッドの前記吐出口面を払拭するためのクリーニング部材を有し、
前記クリーニング部材は、記録ヘッドの前記吐出口面に色材の粒子とは種類が異なり前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子を付与されている状態で前記記録ヘッドの前記吐出口面を払拭し、
前記色材よりも大きな粒子径を持つ粒子は前記色材の10/3倍から10倍の大きさであり、
前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子は、前記インクに含まれる色材の硬度よりも、硬度が低いことを特徴とする払拭装置。
【請求項13】
請求項1乃至1のいずれか1項に記載の払拭装置と、
前記記録ヘッドと、記録媒体を搬送するための搬送手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項14】
色材を含むインクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する記録ヘッドの前記吐出口面を払拭するためのクリーニング部材の表面に色材の粒子とは種類が異なり前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子が付与されている状態で前記記録ヘッドの前記吐出口面を払拭し、
前記色材よりも大きな粒子径を持つ粒子は前記色材の10/3倍から10倍の大きさであり、
前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子は、前記インクに含まれる色材の硬度よりも、硬度が低いことを特徴とする吐出口面の払拭方法。
【請求項15】
色材を含むインクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する記録ヘッドの前記吐出口面を払拭するためのクリーニング部材によって、前記吐出口面に色材の粒子とは種類が異なり前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子を付与されている状態で前記記録ヘッドの前記吐出口面を払拭し、
前記色材よりも大きな粒子径を持つ粒子は前記色材の10/3倍から10倍の大きさであり、
前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子は、前記インクに含まれる色材の硬度よりも、硬度が低いことを特徴とする吐出口面の払拭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、払拭装置、記録装置及び吐出口面の払拭方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、良好な記録画像を得るために、所望の位置に吐出インク滴を着弾させることが求められるが、記録ヘッドの吐出口面にインクやほこりが付着すると、正常な吐出が妨げられる虞がある。特許文献1にはウェブを吐出口面に押圧させて払拭動作を行うことで吐出口面を清掃することが開示されている。また、クリーニング性を向上させるためにウェブにPEG(ポリエチレングリコール)を含浸させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】US8342638号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にはウェブにPEGを60g/m~90g/m含浸させている。PEGは比較的低分子量のPEG400以下で液体状態であり、比較的高分子量のPEG600以上において常温で固体状態となる。特許文献1では、ウェブに含浸させるPEGはPEG300やPEG400を用いることができると開示されており、液体状態である低分子量のものが用いられている。
【0005】
ここで、インクジェット記録装置に用いられる顔料インク等のインクの中には、顔料等の色材である微細な粒子が溶けずに分散して含まれている。顔料の色材の粒子径は約20nm~30nm程度である。払拭動作を行う際に、インク中の色材がクリーニング部材の表面に付着し、その状態で吐出口面を払拭すると、色材が吐出口面と接触した状態で払拭が行われる。このとき、クリーニング部材に含浸されているPEGは液体の状態であるため色材よりも小さい。そのため、吐出口面の材料によっては色材が砥粒となって吐出口面が削られる可能性が考えられ、そのような場合には低下する虞がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、クリーニング部材を用いた吐出口面の払拭動作による吐出口面の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、色材の粒子を含むインクを吐出する吐出口が形成された吐出口面を有する記録ヘッドの前記吐出口面を払拭するためのクリーニング部材を有し、前記クリーニング部材は、色材の粒子とは種類が異なり前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子を表面に付与されている状態で前記記録ヘッドの前記吐出口面を払拭し、前記色材よりも大きな粒子径を持つ粒子は前記色材の10/3倍から10倍の大きさであり、前記色材よりも大きな粒子径をもつ粒子は、前記インクに含まれる色材の硬度よりも、硬度が低いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、色材よりも大きな粒子径を持つ粒子が吐出口面とクリーニング部材との間にある状態で吐出口面を払拭することによって、払拭動作による吐出口面の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る記録装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る記録装置の内部構造を示す斜視図である。
図3】第1の実施形態に係る記録ヘッドの構造を示す斜視図である。
図4】第1の実施形態における、記録ヘッド、払拭ユニット、回復ユニットの位置関係を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る払拭ユニットの断面図である。
図6】第1の実施形態に係る払拭ユニットの断面図である。
図7】第1の実施形態における払拭動作を説明する図である。
図8】払拭動作におけるクリーニング部材と記録ヘッドの表面の状態を示す図である。
図9】第1の実施形態における払拭動作でのクリーニング部材と記録ヘッドの表面の状態を示す図である。
図10】第2の実施形態に係る払拭ユニットの断面図である。
図11】第2の実施形態における払拭動作を説明する図である。
図12】第3の実施形態に係る払拭ユニットの断面図である。
図13】第3の実施形態における払拭動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の実施形態について説明する。
【0011】
<本体構成>
図1は本実施形態のインクジェット記録装置1(以下、記録装置1とも称する。)の全体構成を示す斜視図である。406は操作パネルであり、ディスプレイにインク残量や記録媒体の種類の候補を表示し、ユーザーはパネルを操作することにより記録媒体を選択したり記録の設定を行ったりすることができる。
【0012】
図2は、図1に示す記録装置1の内部構造を模式的に示す斜視図である。図2において記録装置1はキャリッジガイド13と、キャリッジ2と、プラテン10と、LF(Line Feed)ローラ4と、ピンチローラ6と、払拭ユニット100と、回復ユニット16とを有する。
【0013】
キャリッジガイド13は、キャリッジ2を支持する。具体的には、キャリッジガイド13は、キャリッジ2を主走査方向(X方向)に移動可能に支持する。
【0014】
キャリッジ2は、不図示のキャリッジモータの回転によって、キャリッジレール12に案内されながらX方向に往復走査する。キャリッジ2は記録ヘッド11を搭載している。記録ヘッド11インクを吐出する吐出口が配列された吐出口面11a(図3参照)を有している。記録ヘッド11の構成については後で図3を用いて説明する。
【0015】
プラテン10は、記録ヘッド11によって記録媒体5にインクを吐出して画像を形成可能な領域の記録媒体5を支持する。プラテン10の搬送方向(Y方向)上流側には記録媒体5を搬送するためのLFローラ4及びピンチローラ6が設けられている。
【0016】
記録媒体5に画像を記録する記録動作では、LFローラ4及びピンチローラ6が不図示の搬送モーターの間欠的な回転に伴って駆動することで、記録媒体5がプラテン10上をY方向に間欠搬送される。この間欠的な搬送における記録媒体5の停止時に、キャリッジ2がX方向に往復走査される。そして、この往復走査中に、キャリッジ2上の記録ヘッド11に設けられた吐出口から、各色のインクが記録媒体5上に吐出されることで、画像等が記録媒体5に記録される。このような記録媒体5の間欠的な搬送およびキャリッジ2の往復走査中のインクの吐出が所定の回数繰り返されることにより、画像の記録が完了し、記録媒体5への記録動作が終了する。
【0017】
本実施形態では、プラテン10内に不図示のヒーターが内蔵されており、記録動作中は、このヒーターが駆動しており、記録媒体5はプラテン10を介して裏面(画像等が記録される面とは反対側の面)から加熱される。このため、インクとして熱硬化性を有するものが使用されれば、記録媒体5上に吐出されたインクを、記録媒体5に着弾した直後に加熱して硬化させることが可能になる。したがって、本実施形態では、記録媒体5として塩化ビニールのような非吸収性を有する材料で形成された記録媒体が用いられても、画像等を記録媒体5に定着させることが可能である。
【0018】
キャリッジ2が走査する走査領域におけるX方向の一方の端部には記録ヘッド11の吐出口面11aを払拭するためのクリーニング部材を具備する払拭機構である払拭ユニット100が設けられる。また、他方の端部には回復ユニット16が備えられている。回復ユニット16には、記録ヘッド11の吐出口面11aを覆い、吐出口付近のインクの乾燥を防ぐためのキャップ31が備えられている。
【0019】
<ヘッド構成>
図3は、記録ヘッド11を-Z側から見たときの模式斜視図である。吐出口面11aには吐出口110が配列された吐出口列21~26が形成されている。本実施形態の吐出口面11aの材質は樹脂の硬化物である。他の材質として、吐出口面は金属やセラミックなどによって形成されていてもよい。また、撥水性や親水性を持つような吐出口面を用いてもよい。撥水性や親水性の詳細については後述する。
【0020】
本実施形態において記録ヘッド11はイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインクを吐出可能であり、吐出口列21~26は1列ごとに1色のインクを吐出する吐出口列である。各吐出口列には、複数の吐出口110が形成され、Y方向に配列されている。本実施形態では、吐出口の中心が1/1200inchの間隔で、1280個の吐出口110がYに沿って配列されている。本実施形態では、記録ヘッド11が6個の吐出口列21~26を有する構成であるが、この構成に限定されない。
【0021】
各吐出口110には、不図示の液路が個別に連通している。各液路には、インクを吐出口110から吐出させるための吐出エネルギーを発生させるエネルギー発生素子が配置されている。本実施形態では、このエネルギー発生素子として電気熱変換体が用いられており、インクを局所的に加熱して膜沸騰を起こさせ、その圧力によってインクを吐出させる。以下の説明においては、吐出口110と液路とを含めてノズルと称す。記録ヘッド11の吐出口110には不図示のインクタンクからチューブを通じてインクが供給される。
【0022】
<撥水構造>
上述したように、吐出口面11aの表面に撥水性を持たせるようにしてもよい。撥水性を持たせるための一例として、吐出口面を撥水性ネガ型エポキシ樹脂(カチオン重合)で構成する方法がある。撥水性ネガ型エポキシ樹脂(カチオン重合)は、一般的には、パーフルオロポリエーテル基含有シラン系撥水剤、有機酸、フッ素系溶剤、及び水を予め混合することによって得る。また、パーフルオロポリエーテル基含有シラン系撥水剤を部分的に加水分解させた部分加水分解物溶液を撥水膜の原料として用いてもよい。パーフルオロポリエーテル基含有シラン系撥水剤は塗布時に部分的に加水分解されているため、感光性樹脂層との反応性が高く、得られる撥水膜は高い撥水性を示す。
【0023】
<親水構造>
また、上述したように吐出口面11aの表面に親水性持たせるようにしてもよい。吐出口面を親水性にする方法の一例として、紫外線照射による方法を説明する。紫外線波長(185nm)が大気中の酸素(O)に照射されると、オゾン(O)を生成する。このオゾンに紫外線波長(254nm)が吸収されると、オゾンは分解されて励起状態の活性酸素(O)を作り出す。活性酸素は、紫外線によって表面層の分子差を切断された分子と反応して、表面に新たな官能基(OH、CHO、COOHなど)を形成する。これらの官能基は親水性を発現する。そのほかの手段として、プラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理等の放電処理のほか、薬品による表面酸化等が用いられることもある。
【0024】
<インク組成>
次に、本実施形態で用いるインクについて説明する。以下、「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り、質量基準である。
【0025】
本実施形態で使用する顔料を含むカラーインク及び、顔料を含まない又は微量にしか含まないクリアインクは、いずれも水溶性有機溶剤を含有している。水溶性有機溶剤はヘッドフェイス面の湿潤性、保湿性の理由から、沸点が150℃以上300℃以下のものが好ましい。また、樹脂微粒子に対する造膜助剤の機能と樹脂の層が形成された記録媒体への膨潤溶解性の観点から、ケトン系化合物、プロピレングリコール誘導体、N-メチル-ピロリドン、2-ピロリドンに代表されるラクタム構造を有する複素環化合物などが特に好ましい。吐出性能の観点から、水溶性有機溶剤の含有量は3wt%以上、30wt%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤とは、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、などの炭素数1乃至4のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類。エチレングリコール又は、アルキレン基が2乃至6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの低級アルキルエーテルアセテート。グリセリン。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテル類。トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール。N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンなどが挙げられる。上記の如き水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。また、水としては脱イオン水を使用することが望ましい。本発明で使用する反応液中に含有される水溶性有機溶剤の含有量は、特に限定されない。しかしながら、本発明で使用するカラーインク及びクリアインクは、必要に応じて所望の物性値を持たせるために、上記の成分のほかに、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤などを適宜に添加することができる。
【0026】
<払拭ユニットおよび回復ユニット>
図4は記録装置1の内部構造をY方向から見たときの模式図である。以下では払拭ユニット100と回復ユニット16について説明する。まず、回復ユニット16について説明する。図4に示す記録領域Aは、記録媒体5がプラテン10に支持され、記録ヘッド11によって記録が行われる領域である。回復ユニット16は、記録領域AのX方向の一端に隣接するメンテナンス領域Cに配置されている。回復ユニット16は、吸引回復機構と、吸引回復機構を昇降させる昇降機構とを備える。吸引回復機構は記録ヘッド11の吐出口面11aを覆うキャップ31とキャップ31に連通するポンプとを有し、吸引回復処理を行う。ここでいう吸引回復処理とは、記録ヘッド11に形成された複数のノズルからインクを吸引することによって、ノズル内のインクを吐出に適した状態にメンテナンスする処理をいう。ポンプは、キャップ内に負圧を発生させ、その負圧によって吐出口面11aからインクを強制的に吸引する。吸引回復機構は不図示の昇降機構によって昇降され、吸引回復処理を行う際には吐出口面11aを覆う位置まで上昇される。
【0027】
次に、記録ヘッド11の吐出口面11aを払拭する払拭装置として動作する払拭ユニット100について説明する。払拭ユニット100は、記録領域AのX方向に隣接し、メンテナンス領域Cではない側にあるメンテナンス領域Bに配置されている。図5に払拭ユニット100のY-Z断面図を示す。払拭ユニット100は記録ヘッドの吐出口面11aに付着したインクを拭き取り可能なシート状のクリーニング部材104を有する。未使用(インクを拭き取る前)のクリーニング部材104は、第1の回転部材101aに巻きつけられている。第1の回転部材101aよりも搬送方向(Y方向)の下流側には第2の回転部材101bが配置されている。第2の回転部材101bにはクリーニング部材104の先端が取り付けられている。第1の回転部材101aと第2の回転部材101bを図5において反時計回りに回転させることで、使用済みのクリーニング部材104は回転部材101bに巻き取られる。第1の回転部材101aと第2の回転部材101bとの間には、押圧部材103が配置されている。押圧部材103は、圧縮バネ102によってクリーニング部材104を上方(+Z方向)に一定の荷重で押し上げている。押し上げた位置は、押圧部材103がクリーニング部材104の一部を吐出口面11aに接触可能なように押し上げた位置である。
【0028】
図6は、払拭ユニット100のX-Z断面図である。それぞれの部材は透過状態で示している。回転部材101a、101bの両端側には、一対の円形部材117、118が設けられている。円形部材117、118の外径は、回転部材101a、101bにクリーニング部材104を巻き付けた最大の外径よりも大きい。
【0029】
<払拭動作>
以下、払拭ユニット100の払拭動作について説明する。図7は、払拭ユニット100の払拭動作の流れを示す図である。
【0030】
図7(a)は、払拭ユニット100が払拭動作を行わないときの待機位置を示す図である。このとき記録ヘッド11はメンテナンス領域B以外の領域にある。
【0031】
図7(b)は吐出口面11aを払拭するためにキャリッジ2が記録領域Aからメンテナンス領域Bに移動し、払拭ユニット100が払拭動作のために待機位置から退避位置に移動した状態を示す図である。払拭ユニット100が退避位置に位置する場合にはクリーニング部材104は記録ヘッド11の吐出口面11aに当接しない。払拭ユニット100が退避位置にある状態においては、回転部材101a、101bは回転していない。
【0032】
図7(c)は、払拭ユニット100がクリーニング部材104が記録ヘッド11の吐出口面11aに付着したインクを拭き取る払拭動作を行っている状態を示す図である。払拭ユニット100は図7(b)の状態から+Y方向に移動することで吐出口面11aに当接し、さらに+Y方向に移動しながら吐出口面11aを払拭する。
【0033】
図7(d)は、クリーニング部材104が記録ヘッドの払拭を終了した状態を示す図である。図7(c)に示す状態からさらに払拭ユニット100は+Y方向に進み、クリーニング部材104が記録ヘッド11の吐出口面11aから離間した状態である。この時、不図示のモーターによって、第2の回転部材101bが回転する。第2の回転部材101bが回転すると、クリーニング部材104が第1の回転部材101aから第2の回転部材101bに巻き取られる。これにより、クリーニング部材104の押圧部材103によって押し上げられる部分は、払拭動作を行っていない部分となり、この部分は次の払拭動作に使用する。以上のように払拭動作が行われる。
【0034】
<クリーニング部材の構成>
図8は、クリーニング部材の表面に付着した色材が、払拭動作とともに吐出口面で引きずられて課題が発生する様子を示す図である。
【0035】
本実施形態において、インクジェット記録装置1に用いられる顔料インクの中に含まれる顔料等の色材の粒子径は20nm~30nm程度である。一方、本実施形態のクリーニング部材104は、不織布である。ここでの不織布は繊維間を融着や機械的、化学的作用により結合、あるいは絡み合わせたシート・ウェブまたはパット状のものとする。吐出口面11aに付着したインクは、クリーニング部材104の微細な細孔による毛管圧により、払拭動作とともに瞬間的にクリーニング部材104に吸収される。このときの状態を図8に示す。図8に示すように、色材の一部がクリーニング部材104上に残る。クリーニング部材104の繊維径は数μmであり、色材の粒径よりも十分大きな径を持つためある程度の色材は溶剤と共にクリーニング部材104に吸収される。しかし、クリーニング部材104の繊維上に色材が乗るようにして、クリーニング部材の表面に一部の色材が残る。クリーニング部材104上に色材がある状態で払拭動作を継続すると、クリーニング部材104の表面に付着した色材が、クリーニング部材104と吐出口面11aとの間で引きずられることになる。引きずられると、色材が砥粒となって吐出口面11aが色材の粒子径20nm~30nmと同程度の幅で払拭方向に平行に削られて傷つく。このように吐出口面に傷がつくことは吐出性能の低下につながる。例えば吐出口面に撥水性を持つように処理がしてある場合には撥水膜がはがれてしまい、撥水性が低下する。撥水性が低下すると吐出口面上で拭き残されたインクが、撥水膜がはがれた領域で濡れ広がる。ノズルから吐出されたインクが濡れ広がったインクに引き寄せられて吐出方向や吐出量が変化する、或いは吐出しなくなってしまう虞がある。
【0036】
そこで本実施形態では、色材よりも大きな粒子径をもつ粒子をクリーニング部材104上に付与した状態で払拭動作を行う。ここでは色材よりも大きな粒子径を持つ粒子として樹脂微粒子を用いる。本実施形態では、予めクリーニング部材104に樹脂微粒子を含浸させておく。
【0037】
本実施形態における「樹脂微粒子」とは、樹脂からなり、水性媒体中に分散させることが可能な粒径の微粒子を意味する。樹脂微粒子を構成する樹脂として具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸アルキルアミドなどのモノマーを乳化重合するなどして合成したアクリル樹脂微粒子;(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸アルキルアミドなどとスチレンのモノマーを乳化重合するなどして合成したスチレン-アクリル樹脂微粒子;ポリエチレン樹脂微粒子、ポリプロピレン樹脂微粒子、ポリウレタン樹脂微粒子、スチレン-ブタジエン樹脂微粒子などが挙げられる。また、樹脂微粒子を構成するコア部とシェル部でポリマーの組成が異なるコアシェル型樹脂微粒子や、粒径を制御するために予め合成したアクリル系微粒子をシード粒子とし、その周辺で乳化重合することにより得られる樹脂微粒子などでもよい。更には、アクリル樹脂微粒子とウレタン樹脂微粒子など異なる樹脂微粒子を化学的に結合させたハイブリッド型樹脂微粒子などでも良い。含浸させる樹脂微粒子は1種類でも複数種類でもよい。
【0038】
図9(a)は、本実施形態における、樹脂微粒子をクリーニング部材104に含ませた場合の払拭動作の様子を示す図である。本実施形態では、インク中の色材の直径20nm~30nmよりも粒子径が大きく、直径100nm~200nmの粒子径を有し、エチレングリコールや水等の溶液に分散した樹脂微粒子を、予めクリーニング部材104に含浸させておく。樹脂微粒子の一例として、前述したアクリル樹脂微粒子、アクリルースチレン樹脂微粒子、ポリエチレン樹脂微粒子、ポリプロピレン樹脂微粒子、ポリウレタン樹脂微粒子、スチレンーブタジエン樹脂微粒子が用いられるが、これに限定されるものではない。
【0039】
図9(a)に示すように、吐出口面11aを払拭した場合には、図8を用いて説明したように、吐出口面11aに付着したインクは払拭動作とともに瞬間的にクリーニング部材104に吸収され、一部の色材はクリーニング部材104の表面上に残る。しかし、樹脂微粒子が色材よりも相対的に粒子径が大きいため、払拭動作の際に吐出口面11aと接触するのは樹脂微粒子である。このように樹脂微粒子がスペーサーやクッション材の働きを果たすことで、色材が吐出口面11aに接触した状態で引きずられにくくなる。これにより、払拭動作によって吐出口面11aが削られ難くなり、吐出性能の低下を抑制することができる。
【0040】
さらに、前述の通り、樹脂微粒子はスペーサーやクッション材としての働きを有するため、図9(a)に示すように樹脂微粒子が吐出口面11aと接触した状態で払拭動作が行われる。そのため、図9(b)に示すように、樹脂微粒子は記録ヘッド11の吐出口面11aの材料(エポキシ樹脂等)及び、インク中に含まれる色材(顔料粒子)の硬度より、硬度が低いことが望ましい。粒子の硬度が低いほど、荷重がかかった時の粒子のつぶれによる、吐出口面11aとの接触面積が大きくなる。これにより、単位面積当たりの荷重がより小さくなるため、削れに対してより有利になる。一例として、本実施形態において使用する樹脂微粒子はロックウェル硬度でR20~60程度の硬度を有するものとするが、これに限定されるものではない。ロックウェル硬度はロックウェル硬さ試験機を使用して押し込み硬さ測定を行い、以下の式(1)を用いて取得する。
硬さの計算式:HR=130-500h・・・(式1)
HR:ロックウェル硬さ
H:基準荷重時をゼロ点としたときの実際のへこみ深さ(mm)
【0041】
一般に、吐出口面の材料であるプラスチック材料の硬度はR70~120程度ものが多い。樹脂微粒子の硬度がR60以上になると、吐出口面11aの硬度とほぼ同等となり、同じ硬度どうしが摺擦することで、削れに対して不利になるためである。また、硬度がR20より小さいと、つぶれ量が大きくなり、樹脂微粒子が潰れて色材が吐出口面11aと接触する虞があるためである。
【0042】
樹脂微粒子の粒子径は、色材の直径よりも大きれば上述したものに限られない。ただし、払拭動作時に、より色材が吐出口面11aに接触しないためには、樹脂粒子の粒子径は色材の5倍以上の方が好ましい。また、例えば樹脂微粒子の硬度がR20より小さくとも、樹脂微粒子が払拭動作によって潰れたときに色材が吐出口面11aと接触しないような大きさであればよい。
【0043】
以上説明したような構成により、クリーニング部材104によって吐出口面11aを払拭した場合においても、図9に示すように、樹脂微粒子がスペーサーやクッション材の働きを果たすことで、色材が吐出口面11a面で引きずられにくくなる。これにより、吐出口面11aの表面が削れることを抑制することが可能になる。特に、吐出口面に撥水性や親水性を持つような表面処理が施されている場合には撥水性や親水性をもつ膜が削れにくくなるためインクの吐出性能の低下を抑制することができ、画像の品質の低下を抑制することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について説明する。尚、払拭ユニット以外の構成は第1の実施形態と同様の構成のため、詳細のみ説明する。
【0045】
<払拭ユニット>
図10は、第2の実施形態における払拭ユニット200のY-Z断面図である。図10に示す払拭ユニット200は、第1実施形態の払拭ユニット100と同様にメンテナンス領域Bに配置されている。また、第1の実施形態のクリーニング部材104、第1の回転部材101a、第2の回転部材101bと同様、クリーニング部材204、第3の回転部材201a、第4の回転部材201bが配置されている。そして、使用済みのクリーニング部材204が回転部材201bに巻き取られる構成となっている。
【0046】
ここで、本実施形態の払拭ユニット200は、その外部に、払拭ユニット200よりも高い位置に配置され、第1の実施形態で説明した樹脂微粒子を、水性媒体中に所定量分散させた溶液221を収容する樹脂微粒子供給タンク220を有する。また、第3の回転部材201aと第4の回転部材201bとの間には、多孔質体で構成される押圧部材203と、203を昇降させるカム202が配置され、カム202の中心軸上には、カムを回転させるための不図示のモーターが配置されている。押圧部材203は、自重によって上下に移動可能に構成されている。クリーニング部材204は図10に示す2つの位置を取ることができる。図10(a)に示すように、カム202が反時計回りに回転することによって、押圧部材203がクリーニング部材204に接触し、クリーニング部材204が記録ヘッド11の吐出口面11aと当接する。また、図10(b)に示すように、図10(a)の状態からカム202を時計回りに回転することによって、押圧部材203が下がって記録ヘッド11の吐出口面11aからクリーニング部材204が離間し、押圧部材203もクリーニング部材204から離間する。
【0047】
前述の樹脂微粒子供給タンク220は、水性媒体に樹脂微粒子を分散させた溶液221を、多孔質体の押圧部材203に供給するための供給流路230を有する。樹脂微粒子供給タンク220から、供給流路230を介して、押圧部材203に溶液221が供給される構成になっている。ここで、樹脂微粒子供給タンク220は、払拭ユニット200より高い位置に配置されているため、水頭差によって溶液221が押圧部材203に逐次供給可能に構成される。押圧部材203は、多孔質体で構成されているため、溶液221を保持できる許容範囲まで吸収する。押圧部材203から溶液221が漏れ出ることは無い。よって、溶液221が完全になくならない限り、常に溶液221を保持した状態になっており、溶液221で保湿された状態に構成される。
【0048】
<払拭動作>
第2の実施形態における、払拭ユニット200の払拭動作について説明する。
【0049】
図11は、第2の実施形態における、払拭ユニット200の払拭動作の流れを示す図である。図11(a)は、払拭ユニット200が払拭動作を行わないときの待機位置を示す図である。このとき記録ヘッド11はメンテナンス領域B以外の領域にある。
【0050】
図11(b)は吐出口面11aを払拭するためにキャリッジ2が記録領域Aからメンテナンス領域Bに移動し、払拭ユニット200が払拭動作のために待機位置から退避位置に移動している状態を示す図である。払拭ユニット200が退避位置に位置する場合にはクリーニング部材204は記録ヘッド11の吐出口面11aに当接しない。また、回転部材201a、201bは回転していない。また、図10(b)に示すように押圧部材203が下がった状態で、クリーニング部材204が記録ヘッドに当接できない位置にある。また、押圧部材203とクリーニング部材204は、離間した状態になっている。
【0051】
図11(c)は、払拭ユニット200が払拭動作を行っている状態を示す図である。図10(a)に示すように、カム202を反時計周りに回転させ、押圧部材203を押し上げることにより、クリーニング部材204が記録ヘッド11の吐出口面11aに付着したインクを拭き取る状態である。このとき、押圧部材203に保持された水性媒体に樹脂微粒子を分散させた溶液221が、クリーニング部材204の毛管圧により吸収されており、溶液221がクリーニング部材204に含浸した状態で吐出口面11aを払拭する。払拭動作は、払拭ユニット200が図11(b)の状態から+Y方向に進むことで行われる。
【0052】
図11(d)は、払拭ユニット200が図11(c)の状態からさらに+Y方向に移動したときの、払拭動作の途中の状態を示した図である。
【0053】
図11(e)は、クリーニング部材204が記録ヘッド11の払拭を終了した状態を示す図である。
【0054】
図11(f)は、払拭が終了し、クリーニング部材204が記録ヘッド11から離間した状態を示している。このとき、不図示のモーターによって、カム202が時計回りに回転することで、押圧部材203が下がり、吐出口面11aおよび、クリーニング部材204と離間する。つまり、押圧部材203とクリーニング部材204が離間することで、クリーニング部材204に溶液221の供給が行われなくなる。これにより、クリーニング部材204に溶液221が必要以上に供給されることを防ぐことができ、溶液221の消費を抑えることが可能になる。図11(f)の状態で第4の回転部材201bを回転し、クリーニング部材204が第3の回転部材201aから第4の回転部材201bに巻き取られる。
【0055】
以上により、払拭動作のタイミングで、クリーニング部材204の吐出口面11aと当接する領域に対して、溶液221を供給することが可能になる。
【0056】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について説明する。払拭ユニット以外の構成は第1の実施形態と同様の構成のため、払拭ユニットの詳細のみ説明する。
【0057】
<払拭ユニット>
図12は、第3の実施形態における払拭ユニット300のY-Z断面図である。図12に示す払拭ユニット300は、第1実施形態の払拭ユニット100と同様にメンテナンス領域Bに配置されている。また、第1の実施形態のクリーニング部材104、第1の回転部材101a、第2の回転部材101bと同様の部材として、クリーニング部材304、第5の回転部材301a、第6の回転部材301bが配置されている。また、第1の実施形態の押圧部材103、圧縮バネ102と同様の部材として押圧部材303、圧縮バネ302が配置されている。そして、使用済みのクリーニング部材304が回転部材301aから、回転部材301bに巻き取られる構成となっている。
【0058】
ここで、本実施形態の払拭ユニット300は、その外部に、払拭ユニット300よりも高い位置に配置され、第1の実施形態で説明した樹脂微粒子を、水性媒体中に所定量分散させた溶液321を収容する樹脂微粒子タンク320を有する。更に、樹脂微粒子タンク320より低い位置に配置され、多孔質体で構成される溶液吸収部材350を有する。樹脂微粒子タンク320には、溶液321を溶液吸収部材350に供給するための供給流路330を有する。ここで、樹脂微粒子タンク320には、溶液吸収部材350より高い位置に配置されているため、水頭差によって溶液321が溶液吸収部材350に逐次供給される。溶液吸収部材350は多孔質体で構成されているため、溶液321を保持できる許容範囲まで吸収する。溶液吸収部材350から溶液321が漏れ出ることは無い。よって、溶液321が完全になくならない限り多孔質体の内および表面に、溶液321を保持した状態になっている。
【0059】
また、払拭ユニット300の払拭方向下流側の上端部には、記録ヘッド11の吐出口面11aに溶液321を転写するためのゴム部材等の弾性材料で構成された転写部材340が設けられている。転写部材340は、払拭ユニット300の払拭動作に伴い、記録ヘッド11と当接しながら摺擦し、弾性変形しながらその一部を吐出口面11aに接触する位置に配置されている。また、溶液吸収部材350より払拭方向上流側には、転写部材340の一部に接触し、転写部材340表面の異物を掻きとる樹脂部材等で構成されたスクレーパ360を有する。スクレーパ360は払拭動作によって転写部材340に付着した異物を掻きとるために備えられている。
【0060】
<払拭動作>
第3の実施形態における、払拭ユニット300の払拭動作について説明する。
【0061】
図13は、第3の実施形態における、払拭ユニット300の払拭動作の流れを示す図である。
【0062】
図13(a)は、払拭ユニット300が払拭動作を行わないときの待機位置を示す図である。このとき記録ヘッド11はメンテナンス領域B以外の領域にある。
【0063】
図13(b)は吐出口面11aを払拭するためにキャリッジ2が記録領域Aからメンテナンス領域Bに移動し、払拭ユニット300が払拭動作のために待機位置から退避位置に移動している状態を示す図である。払拭ユニット300が退避位置に位置する場合にはクリーニング部材304は記録ヘッド11の吐出口面11aに当接しない。また、回転部材301a、301bは静止している。さらに、前述の通り、払拭ユニット300の払拭方向下流側の上端部には、記録ヘッド11の吐出口面11aに溶液321を転写するための転写部材340が設けられており、退避状態においては、転写部材340は吐出口面11aに当接しない位置にある。
【0064】
図13(c)は、払拭ユニット300が払拭動作を行っている状態を示す図である。転写部材340はクリーニング部材304より払拭方向下流側に配置されているため、クリーニング部材304によって払拭するより先に、転写部材340が吐出口面11aに当接する。そして、後述する樹脂微粒子タンク320からの溶液321の転写動作により、記録ヘッド11の吐出口面11aに対して溶液321を転写する。クリーニング部材304は溶液321が転写された吐出口面11aに当接して払拭することによって吐出口面11aを清掃する。
【0065】
図13(d)は、クリーニング部材304が記録ヘッドの払拭動作を終了した状態を示す図である。この状態において、転写部材340、および、クリーニング部材304は記録ヘッド11から離間している。転写部材340が記録ヘッド11と離間すると、スクレーパ360により転写部材340表面の異物を掻きとられ、転写部材340表面を清掃する。その後、転写部材340は溶液吸収部材350に当接する。ここで、溶液吸収部材350の多孔質表面に保持された溶液321の一部が転写部材340に付与される。尚、転写部材340表面の異物とは、吐出口面11aに付着した増粘インク、クリーニング部材の繊維や、その他紙粉等である。転写部材340にこれらの異物が付着した状態で溶液吸収部材350に当接した場合、溶液321が転写部材340に十分供給されず、徐々に溶液の転写量が減少する虞がある。これを防止するために、払拭動作の後に転写部材340の表面をスクレーパ360で掻きとる。図13(d)の状態で不図示のモーターによって、第6の回転部材301bが回転し、クリーニング部材304が第5の回転部材301aから第6の回転部材301bに巻き取られる。
【0066】
以上のように、本実施形態では吐出口面11aに対して水性媒体中に所定量分散させた樹脂微粒子を予め転写してから、クリーニング部材304でインクを払拭する。そうすることで、吐出口面11aとクリーニング部材304との間に樹脂微粒子が所定量存在した状態で払拭することが可能になる。このときの吐出口面の状態は図9(a)に示すような状態になり、吐出口面11aが削れることを抑制することができる。
【0067】
(その他の実施形態)
上述の実施形態の記録装置1では払拭ユニットがY方向に移動することで払拭動作を行ったが、払拭の方法はこれに限られない。相対的にY方向に移動しながら払拭できればよいため、記録ヘッドがY方向に動くような構成としてもよい。
【0068】
また、上述の実施形態の押圧部材はX方向に吐出口面を払拭できる幅を持った部材であったが、Y方向に吐出口面を払拭できる幅を持った押圧部材とし、相対的にX方向に移動しながら払拭動作を行ってもよい。また、クリーニング部材を巻き取る方向をX方向となるように払拭ユニットを配置し、相対的にX方向に移動しながら払拭動作を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
2 キャリッジ
11 記録ヘッド
11a 吐出口面
101a 回転部材
101b 回転部材
103 押圧部材
104 クリーニング部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13