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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20240508BHJP
   G03G 15/16 20060101ALI20240508BHJP
   B41J 29/393 20060101ALI20240508BHJP
   B41J 2/52 20060101ALI20240508BHJP
   H04N 1/407 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G15/16
B41J29/393 101
B41J2/52
H04N1/407
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020010584
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021117352
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002767
【氏名又は名称】弁理士法人ひのき国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹村 太一
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-203733(JP,A)
【文献】特開2004-125990(JP,A)
【文献】米国特許第05710958(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/01
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
B41J 2/52
B41J 29/00 -29/70
H04N 1/407
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを像形成条件に基づき変換する変換部と、前記画像データに中間調処理を施す中間調処理部と、を有する画像処理部を有し、前記画像処理部からの前記画像データに基づきシートにトナー像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段により複数のパッチ画像で構成される画像パターンが形成される像担持体であって、回転される前記像担持体と、
前記像担持体上の前記画像パターンを測定し、前記画像パターンの測定結果に関する測定値を濃度情報として出力する測定手段と、
前記測定手段により出力された前記濃度情報に基づき、前記像形成条件を補正する補正手段と、を有し、
前記画像パターンは、前記像担持体の回転方向において先頭に形成される第1色のパッチ画像群と、前記回転方向において前記第1色の前記パッチ画像群の上流に隣接して形成される前記第1色と異なる第2色のパッチ画像群とを含み、
前記第1色の前記パッチ画像群は、
前記回転方向において前記第1色の前記パッチ画像群の中で最も下流に形成される第1パッチ画像と、
前記回転方向において前記第1パッチ画像の上流に隣接して形成される前記第1パッチ画像と異なる種類の中間調処理が施された第2パッチ画像であって、前記第1パッチ画像との濃度差が閾値未満となるように形成される前記第2パッチ画像と、
前記回転方向において前記第1色の前記パッチ画像群の中で最も上流に形成される第3パッチ画像であって、前記第1パッチ画像と前記第2パッチ画像とのいずれよりも高濃度となるように形成される前記第3パッチ画像と
を含み、
前記第2色の前記パッチ画像群は、
前記回転方向において前記第2色の前記パッチ画像群の中で最も下流に形成される第4パッチ画像と、
前記回転方向において前記第4パッチ画像の上流に隣接して形成される前記第4パッチ画像と異なる種類の中間調処理が施された第5パッチ画像であって、前記第4パッチ画像との濃度差が前記閾値未満となるように形成される前記第5パッチ画像と、
前記回転方向において前記第2色の前記パッチ画像群の中で最も上流に形成される第6パッチ画像であって、前記第4パッチ画像と前記第5パッチ画像とのいずれよりも高濃度となるように形成される前記第6パッチ画像と
を含み、
前記第1パッチ画像の前記回転方向の長さは、前記像担持体との濃度差が閾値よりも大きく且つ濃度の増加を示すので第1ルールに基づき決定されており、前記第1パッチ画像との濃度差が前記閾値よりも小さい前記第2パッチ画像の前記回転方向の長さよりも長く、
前記第4パッチ画像の前記回転方向の長さは、前記第3パッチ画像との濃度差が前記閾値よりも大きく且つ濃度の減少を示すので前記第1ルールと異なる第2ルールに基づき決定されており、前記第4パッチ画像との濃度差が前記閾値よりも小さい前記第5パッチ画像の前記回転方向の長さよりも長いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第3パッチ画像の前記回転方向の長さは、前記回転方向において前記第3パッチ画像の下流に配置される他のパッチ画像との濃度差が前記閾値よりも大きく且つ濃度の増加を示すので前記第1ルールに基づき決定されており、前記第1パッチ画像との濃度差が前記閾値よりも小さい前記第2パッチ画像の前記回転方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像パターンはさらに、前記像担持体の前記回転方向において前記第2色の前記パッチ画像群の上流に隣接して形成される前記第2色と異なる第3色のパッチ画像群を含み、
前記第3色の前記パッチ画像群は、
前記回転方向において前記第3色の前記パッチ画像群の中で最も下流に形成される第7パッチ画像と、
前記回転方向において前記第7パッチ画像の上流に隣接して形成される前記第7パッチ画像と異なる種類の中間調処理が施された第8パッチ画像であって、前記第7パッチ画像との濃度差が閾値未満となるように形成される前記第8パッチ画像と、
前記回転方向において前記第3色の前記パッチ画像群の中で最も上流に形成される第9パッチ画像であって、前記第7パッチ画像と前記第8パッチ画像とのいずれよりも高濃度となるように形成される前記第9パッチ画像と
を含み、
前記第7パッチ画像の前記回転方向の長さは、前記第6パッチ画像との濃度差が前記閾値よりも大きく且つ濃度の減少を示すので前記第2ルールに基づき決定されており、前記第7パッチ画像との濃度差が前記閾値よりも小さい前記第8パッチ画像の前記回転方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第9パッチ画像の回転方向の長さは、前記回転方向において前記第9パッチ画像の下流に配置される他のパッチ画像との濃度差が前記閾値よりも大きく且つ濃度の増加を示すので前記第1ルールに基づき決定されており、前記第7パッチ画像との濃度差が前記閾値よりも小さい前記第8パッチ画像の前記回転方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記測定手段は、発光部と、前記画像パターンからの正反射光を受光する第1受光部と、前記画像パターンからの正反射光を受光しない位置に設けられ、前記画像パターンからの乱反射光を受光する第2受光部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置により形成される画像の濃度制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、装置が設置される環境の変動や装置内の環境の変動に起因する短期的な変動及び感光体や現像剤の経時変化(経時劣化)に起因する長期的な変動等の影響で、出力画像の濃度特性(階調特性とも呼ばれる)が理想的な濃度特性(理想的な階調特性)とならないことがある。
そこで、画像形成装置では、出力画像の濃度特性を理想的な濃度特性に補正するために画像形成条件を調整している。
【0003】
このように、濃度や色味の変化を適切に補正する処理は、一般にキャリブレーションと称される。キャリブレーションでは、例えば濃度が一様なパターン画像を用紙や感光体或いは中間転写体などに形成し、形成したパターン画像を測定して、画像形成条件を調整する方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、階調パターンを用紙に形成し、画像読取部で読み取った階調パターンの読取データに基づいて、画像データを変換するための変換条件を生成する技術が提案されている。これにより、出力画像の濃度特性を理想的な濃度特性に安定化させ、画像品質の安定性を向上させることが可能となる。
【0005】
また、1つの画像形成ジョブにおいて色再現性を一定のレベルに維持するために、そのジョブの途中にキャリブレーションを行うことが提案されている。特許文献2には、画像形成ジョブ中にパターン画像を形成し、このパターン画像の測定結果に基づいて、変換条件を生成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-238341号公報
【文献】特開平10-224653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パターンを測定するセンサとして、パターンからの反射光を受光する受光部を有し、受光部の受光結果に基づく信号値を出力する光学式センサが一般的に知られている。しかし、近年の画像形成装置は印刷速度が高速になっており、光学センサの測定結果が正しく得られない可能性があった。
【0008】
これは、光学センサの応答性が遅いことが原因である。つまり、センサの信号値が正しい値に収束する前にパターンが光学センサの測定領域を通過してしまっていた。そして、誤った測定結果に基づいて出力画像の濃度が制御されてしまうと、適正な濃度の画像を形成することができなくなってしまう。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものである。本発明は、測定結果が正しく得られないエラーを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、画像データを像形成条件に基づき変換する変換部と、前記画像データに中間調処理を施す中間調処理部と、を有する画像処理部を有し、前記画像処理部からの前記画像データに基づきシートにトナー像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段により複数のパッチ画像で構成される画像パターンが形成される像担持体であって、回転される前記像担持体と、前記像担持体上の前記画像パターンを測定し、前記画像パターンの測定結果に関する測定値を濃度情報として出力する測定手段と、前記測定手段により出力された前記濃度情報に基づき、前記像形成条件を補正する補正手段と、を有し、前記画像パターンは、前記像担持体の回転方向において先頭に形成される第1色のパッチ画像群と、前記回転方向において前記第1色の前記パッチ画像群の上流に隣接して形成される前記第1色と異なる第2色のパッチ画像群とを含み、前記第1色の前記パッチ画像群は、前記回転方向において前記第1色の前記パッチ画像群の中で最も下流に形成される第1パッチ画像と、前記回転方向において前記第1パッチ画像の上流に隣接して形成される前記第1パッチ画像と異なる種類の中間調処理が施された第2パッチ画像であって、前記第1パッチ画像との濃度差が閾値未満となるように形成される前記第2パッチ画像と、前記回転方向において前記第1色の前記パッチ画像群の中で最も上流に形成される第3パッチ画像であって、前記第1パッチ画像と前記第2パッチ画像とのいずれよりも高濃度となるように形成される前記第3パッチ画像とを含み、前記第2色の前記パッチ画像群は、前記回転方向において前記第2色の前記パッチ画像群の中で最も下流に形成される第4パッチ画像と、前記回転方向において前記第4パッチ画像の上流に隣接して形成される前記第4パッチ画像と異なる種類の中間調処理が施された第5パッチ画像であって、前記第4パッチ画像との濃度差が前記閾値未満となるように形成される前記第5パッチ画像と、前記回転方向において前記第2色の前記パッチ画像群の中で最も上流に形成される第6パッチ画像であって、前記第4パッチ画像と前記第5パッチ画像とのいずれよりも高濃度となるように形成される前記第6パッチ画像とを含み、前記第1パッチ画像の前記回転方向の長さは、前記像担持体との濃度差が閾値よりも大きく且つ濃度の増加を示すので第1ルールに基づき決定されており、前記第1パッチ画像との濃度差が前記閾値よりも小さい前記第2パッチ画像の前記回転方向の長さよりも長く、前記第4パッチ画像の前記回転方向の長さは、前記第3パッチ画像との濃度差が前記閾値よりも大きく且つ濃度の減少を示すので前記第1ルールと異なる第2ルールに基づき決定されており、前記第4パッチ画像との濃度差が前記閾値よりも小さい前記第5パッチ画像の前記回転方向の長さよりも長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測定結果が正しく得られないエラーを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の画像形成装置の構成の一例を示すブロック図。
図2】本実施形態の画像形成装置のソフトウェア構成の一例を示す図。
図3】プリンタ画像処理部の内部構成の一例を示す図。
図4】プリンタエンジンの内部構成の一部を示す図。
図5】プリンタエンジン作像部分及び画像濃度センサの構成を説明するための図。
図6】画像濃度センサの濃度変換回路の構成及び画像濃度センサ出力値と濃度の関係を示す図。
図7】自動階調補正処理の一例を示すフローチャート。
図8】階調ターゲットとエンジンγ特性、階調補正テーブルの関係を示す図。
図9】入力信号値と濃度ターゲットの関係を示す図。
図10】画像濃度調整時の補正LUT作成処理の一例を示すフローチャート。
図11】画像濃度調整時の合成補正LUT作成処理の一例を示すフローチャート。
図12】濃度ターゲットと初期階調補正LUTの関係を示す図。
図13】濃度ターゲットに対する実測濃度プロット、及び逐次補正LUTの関係を示す図。
図14】初期補正LUTと逐次補正LUT及び合成補正LUTの関係を示す図。
図15】画像濃度センサのセンサ出力推移を示す図。
図16】第1実施形態における画像濃度補正用の画像パターンを構成するパッチ画像のサイズを説明する図。
図17】第1実施形態の画像濃度補正用パッチのΔ濃度とサイズの関係を示す図。
図18】第2実施形態における画像濃度補正用の画像パターンを構成するパッチ画像のサイズを説明する図。
図19】第2実施形態の画像濃度補正用パッチのΔ濃度とサイズの関係を示す図。
図20】第3実施形態の画像濃度補正用パッチのΔ濃度とサイズの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
〔第1実施形態〕
<画像形成装置>
[ハードウェア構成]
図1は、本発明の一実施形態を示す画像形成装置の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、画像入力デバイスであるスキャナ101や、画像出力デバイスであるプリンタエンジン102を有する。
【0014】
スキャナ101は、スキャナ画像処理部118を介して、デバイスI/F117に接続されている。また、プリンタエンジン102は、プリンタ画像処理部119を介して、デバイスI/F117に接続されている。画像形成装置100は、スキャナ画像処理部118およびプリンタ画像処理部119が画像データの読み取りやプリント出力のための制御を行う。また、画像形成装置100は、LAN10や公衆回線104と接続し、画像情報やデバイス情報をLAN10経由で入出力するための制御を行う。
【0015】
CPU105は、画像形成装置100を制御するための中央処理装置である。RAM106は、CPU105が動作するためのシステムワークメモリであり、入力された画像データを一時記憶するための画像メモリでもある。ROM107はブートROMであり、システムのブートプログラムが格納されている。ROM107は、例えばフラッシュROMで構成される。HDD108はハードディスクドライブであり、各種処理のためのシステムソフトウェア及び入力された画像データ等を格納する。なお、HDDの代わりに又は併用してSSD(ソリッドステートドライブ)等の他の記憶装置を備える構成でもよい。
【0016】
操作部I/F109は、画像データ等を表示可能な表示画面を有する操作部110に対するインタフェースであり、操作部110に対して操作画面データを出力する。また、操作部I/F109は、操作部110から操作者が入力した情報をCPU105に伝える役割を担う。
【0017】
ネットワークI/F111は、例えばLANカード等で実現され、LAN10に接続して外部装置(不図示)との間で情報の入出力を行う。モデム112は公衆回線104に接続し、外部装置(不図示)との間で情報の入出力を行う。以上のユニットがシステムバス113上に配置されている。
【0018】
イメージバスI/F114は、システムバス113と画像データを高速で転送する画像バス115とを接続するためのインタフェースであり、データ構造を変換するバスブリッジである。画像バス115には、ラスタイメージプロセッサ(RIP)部116、デバイスI/F117、スキャナ画像処理部118、画像編集用画像処理部120、画像圧縮部103、画像伸張部121、カラーマネージメントモジュール(CMM)130が接続される。
【0019】
RIP部116は、ページ記述言語(PDL:Page Description Language)コードをイメージデータに展開する。
デバイスI/F117は、スキャナ画像処理部118とプリンタ画像処理部119を介してスキャナ101やプリンタエンジン102とを接続し、画像データの同期系/非同期系の変換を行う。
【0020】
スキャナ画像処理部118は、スキャナ101から入力した画像データに対して、補正、編集等の各種処理を行う。画像編集用画像処理部120は、画像データの回転や、色処理、2値変換、多値変換等の各種画像処理を行う。画像圧縮部103は、RIP部116やスキャナ画像処理部118、画像編集用画像処理部120で処理された画像データをHDD108で一度格納する際に所定の圧縮方式で符号化する。
【0021】
画像伸張部121は、HDD108で圧縮されている画像データを必要に応じて画像編集用画像処理部120での処理やプリンタ画像処理部119で画像処理しプリンタエンジン102で出力する場合に、圧縮され符号化されているデータを、復号化し伸張する。
プリンタ画像処理部119は、プリント出力する画像データに対して、プリンタエンジンに応じたγ補正や中間調処理等の画像処理を行う。
【0022】
CMM130は、画像データに対して、プロファイルやキャリブレーションデータに基づいた、色変換処理(色空間変換処理ともいう)を施す専用ハードウェアモジュールである。ここでプロファイルとは、機器に依存した色空間で表現したカラー画像データを機器に依存しない色空間(例えばLab色空間など)に変換するための関数のような情報である。キャリブレーションデータは、スキャナ101やプリンタエンジン102の色再現特性を修正するためのデータである。
【0023】
[ソフトウェア構成]
図2は、画像形成装置100のソフトウェア構成の一例を示す図である。図2で示される各ソフトウェアモジュールは、記憶部であるHDD108等に格納されるプログラムを、主にCPU105が実行することにより実現される。
【0024】
ジョブコントロール処理201は、図示/不図示の各ソフトウェアモジュールを統括・制御し、コピー、プリント、スキャン、FAX送受信など、画像形成装置100内で発生するあらゆるジョブの制御を行う。さらに、ジョブコントロール処理201は、形成する画像の色味・濃度階調性等の安定化のためのキャリブレーション等の後述する調整(補正)処理などの制御も行う。
【0025】
ネットワーク処理202は、主にネットワークI/F111を介して行われる外部との通信を制御するモジュールであり、LAN10上の各機器との通信制御を行う。UI処理203は、主に操作部110、および操作部I/F109に係る制御を行う。FAX処理204は、FAX機能の制御を行う。FAX処理204は、モデム112を介してFAX受信/送信を行う。
【0026】
プリント処理207は、ジョブコントロール処理201の指示に基づいて、画像編集用画像処理部120、プリンタ画像処理部119、およびプリンタエンジン102を制御し、指定画像の印刷処理を行う。プリント処理207は、ジョブコントロール処理201から、画像データ、画像情報(画像データのサイズ、カラーモード、解像度など)、レイアウト情報(オフセット、拡大縮小、面つけなど)、及び出力用紙情報(サイズ、印字方向など)の情報を受け付ける。そして、プリント処理207は、画像圧縮部103、画像伸張部121、画像編集用画像処理部120、およびプリンタ画像処理部119を制御して、画像データに対して適切な画像処理を施す。そして、プリント処理207は、画像データに対し、プリンタエンジン102を制御して指定用紙への印刷を行わせる。
【0027】
スキャン処理210は、ジョブコントロール処理201の指示に基づいて、スキャナ101、およびスキャナ画像処理部118を制御して、スキャナ101上にある原稿の読み込みを行わせる。スキャン処理210は、スキャナ101の原稿台にある原稿のスキャンを実行し、デジタルデータとして画像の入力を行う。そして、スキャン処理210は、入力した画像のカラー情報を、ジョブコントロール処理201へ通知する。さらに、スキャン処理210は入力画像に対し、スキャナ画像処理部118を制御して画像の圧縮等、適切な画像処理を施した後、ジョブコントロール処理201へ画像処理済みの入力画像を通知する。
【0028】
色変換処理209は、ジョブコントロール処理201の指示に基づいて、指示画像に対して、色変換処理を行い、色変換処理後の画像をジョブコントロール処理201へ通知する。
RIP処理211は、ジョブコントロール処理201の指示に基づいて、PDL解釈(インタプリット)を行い、RIP部116を制御してレンダリングすることで、ビットマップイメージへの展開を行う。
【0029】
機器情報送信処理205は、ジョブコントロール処理201の指示に基づいて、ネットワーク処理202を介して、外部の装置に機器情報を送信する。機器情報には、プリンタエンジン102のタイプ(カラー/モノクロ)、解像度、印刷速度、色変換処理209による処理時間、出力プロファイル等の画像形成装置100の能力や特性を表す情報が含まれる。
機器情報取得処理206は、ジョブコントロール処理201の指示に基づいて、ネットワーク処理202を介して、外部の機器に機器情報を要求して取得する。
【0030】
以上のような構成により、画像形成装置100は、LAN10より印刷ジョブを受けて、プリントするまでの動作を行う。
【0031】
[画像データ処理フロー]
続いて、上記構成に基づき、プリンタ画像処理部119へ入力された画像データの処理フローについて説明する。
まず、上述したように、外部装置からLAN10を介して送信されてきたPDLは、ネットワークI/F111にて受信し、イメージバスI/F114よりRIP部116へ入力される。RIP部116は、受信したPDLの解釈を行い、RIP部116にて処理できるコードデータへ変換する。そして、RIP部116は、変換したコードデータに基づいてレンダリングを実行する。RIP部116でレンダリングされたページデータは、後段の画像圧縮部103にて圧縮され、HDD108に順次格納される。
【0032】
次にHDD108に格納された圧縮データは、ジョブコントロール処理201からの指示によるプリント動作において読み出され、画像伸張部121にて圧縮データの伸長処理が行われる。画像伸張部121で伸長された画像データは、デバイスI/F117を介してプリンタ画像処理部119へ入力される。ここで、プリンタ画像処理部119について説明する。
【0033】
図3は、プリンタ画像処理部119の内部構成の一例を示す図である。
色変換部301は、画像データを輝度値(RGB、YUVなど)から濃度値(CMYKなど)に変換するものであり、入力した画像データを後段のプリンタエンジン102で印字できる色成分に対応した色空間に変換する。
色変換部301で濃度値にされた多値の画像データは、濃度段差補正部302により、同一ページ内の濃度段差の補正をした信号値に変換される。濃度段差補正部302は後述のγ補正回路309と同じ入出力信号を変化させる一次元テーブルを持ち、そのテーブルにページ内の位置に合わせて、段差補正のための段差補正係数を乗じて作用させる。
【0034】
濃度段差補正された画像データは、γ補正回路309(以下「γLUT」)により濃度信号をプリンタエンジンでその濃度を再現するための信号値に変換される。γLUTは、プリンタエンジンのγ特性に合わせて作られた入出力信号を変換するテーブルであり、本実施形態においては予め記憶しているテーブルを設定して処理させるが、既知の階調制御等を用いて作成してそれを設定し用いてもよい。
【0035】
γLUT309で補正された画像データは、中間調処理部304で中間調処理が行われ、1画素の各色成分が2値(1ビット)で表現される画像データへ変換される。中間調処理には、一般にディザ法や誤差拡散法などが挙げられ、本実施形態においてもどちらの方法でも構わない。なお、中間調処理については、上記方法に限定するものではなく、他の方法を用いても構わない。
【0036】
中間調処理部304での変換処理により生成された2値の画像データは、ドラム間遅延メモリ制御部305を介し、画像データ内の各画素の色成分ごとに分離されページバッファメモリ306に一時的に格納される。プリンタエンジン102より送信される各色成分に対応するビデオデータ要求信号(VREQ_*)が入力されたタイミングで、対応する色成分のデータがページバッファメモリ306から読み出される。なお、ビデオデータ要求信号(VREQ_*)は、各色成分に対し、VREQ_Y、VREQ_M、VREQ_C、VREQ_Kとする。また、Yは言えろー、Mはマゼンタ、Cはシアン、Kはブラックの色成分を示す。プリンタエンジン102内の各色成分に対応する感光ドラム1401~1404(図5(a))が配置された上流から下流までの距離に応じて、感光ドラム1401~1404それぞれに露光するタイミングが異なる。このため、各色成分のデータの読み出すタイミングも異なる。そのため、プリンタエンジン102は、色成分ごとのタイミングで、色成分ごとのビデオデータ要求信号(VREQ_Y、VREQ_M、VREQ_C、VREQ_K)を、プリンタ画像処理部119に送信し、タイミングを制御する。
【0037】
[プリンタエンジン動作]
次にプリンタ画像処理部119より出力された色成分データがプリンタエンジン102に入力された場合の動作について説明する。
図4は、プリンタエンジン102の内部構成の一部を示す図である。
プリンタI/F部1201は、プリンタエンジン102において印字動作の準備が可能となった場合に、各色成分のデータを要求するビデオデータ要求信号(VREQ_*)を、プリンタ画像処理部119に発行する。プリンタI/F部1201は、ビデオデータ要求信号(VREQ_*)に応じて、プリンタ画像処理部119から順次送信されてくる色成分データを受信する。
【0038】
プリンタI/F部1201で受信された色成分データは、パルス幅変調回路1203に入力される。そして、パルス幅変調回路1203は、実際の色成分データに基づいて、後段の各色のレーザー駆動部1212~1215を駆動させるためのパルス信号(駆動信号)を生成し、各色のレーザー駆動部1212~1215へ送信する。
各色成分に対応した各レーザー駆動部1212~1215は、パルス幅変調回路1203より受信したパルス信号に基づいて、各色成分に対応するレーザー露光装置を駆動する。その後、以下の図5(a)で説明するように作像が行われる。
【0039】
図5(a)は、プリンタエンジン102の作像部分の構成の一例を断面図である。以下、主にイエロー(Y)の作像部分について説明するが、他の色成分のマゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の作像部分についても同様の構成である。なお、本実施形態においては、プリンタエンジン102として、YMCKの4色からなるタンデム式エンジンを用いた画像形成装置を対象としているが、これに限るものではない。
【0040】
プリンタエンジン102は、像担持体である感光ドラム1401、帯電ローラ1405、Yレーザー露光装置1406、1次転写装置1408、2次転写装置1413、定着装置1414、およびクリーニング装置1415を備える。Yレーザー露光装置1406は、Yレーザー駆動部1212より駆動される。1次転写装置1408は、可視化されたトナー像を転写材(像担持体である中間転写ベルト1412)上に1次転写する。2次転写装置1413は、中間転写ベルト1412上に形成されたトナー像を記録用紙に2次転写する。定着装置1414は、記録用紙上に転写されたトナー像を定着する。クリーニング装置1415は、2次転写後に中間転写ベルト1412に残った転写残トナーを除去する。
【0041】
現像装置1416は現像剤容器を備え、二成分現像剤としてトナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とが混合された現像剤が収容されている。Aスクリュー1420とBスクリュー1421はそれぞれトナー粒子の搬送と磁性キャリア粒子との混合を行う。また現像スリーブ1422は、感光ドラム1401に近接に配置され、感光ドラム1401と従動するように回転して、トナーとキャリアとが混合された現像剤を担持する。現像スリーブ1422に担持された現像剤は感光ドラム1401に接触し、感光ドラム1401上の静電潜像が現像される。このような静電潜像の現像により現像装置1416内の現像剤のトナー濃度が低下する。そのため、Yトナー補給制御部1204は、Yトナー補給モータ1208を駆動し、Yトナー補給機構1407からイエロー(Y)トナーを現像装置1416に補給する制御を行う。
なお、プリンタエンジン102には図5(a)の構成以外にも印字用紙を搬送する搬送部(不図示)等があるが、本実施形態において、説明を省略する。
【0042】
以上のようなプリンタエンジンの構成において、イエローを印字する場合には、Yレーザー駆動部1212より駆動されるYレーザー露光装置1406により感光ドラム1401に露光され、感光ドラム1401上に静電潜像を形成する。形成された静電潜像は、現像装置1416内の現像スリーブ1422上に担持されているイエローの現像剤によりトナー像として可視化され、可視化されたトナー像は中間転写ベルト1412上に1次転写装置1408によって転写される。
【0043】
このようにしてマゼンタ、シアン、ブラックの各色成分も同様に各現像装置1417、1418、1419により現像され、感光ドラム1402、1403、1404にそれぞれトナー像として可視化される。そして、可視化されたトナー像は直前に転写された色成分のトナー像と同期して、それぞれ1次転写装置1409、1410、1411により順次転写され、中間転写ベルト1412上には4色のトナー像により形成された最終的なトナー画像が形成される。
中間転写ベルト1412に形成されたトナー画像は、2次転写装置1413にて同期して搬送されてくる記録用紙に2次転写され、定着装置1414にてトナー像を定着される。
【0044】
<画像濃度センサ>
画像濃度センサ400は、本実施形態中では中間転写ベルトに対向させて配置する構成について説明するが、感光ドラム上等適宜配置することが可能である。
画像濃度センサ400は、図5(a)に示したように中間転写ベルトの対向部に配置されており、中間転写ベルト上に形成されたトナー像の濃度を計測するものである。ここで、画像濃度センサ400の構造の一部について、図5(b)を用いて説明する。
【0045】
図5(b)は、画像濃度センサ400の構成を説明するための図であり、中間転写ベルト1412の搬送方向に対して上流側から見た場合の断面図に対応する。
【0046】
画像濃度センサ400は、LED401、PD402、PD403を有する光学センサである。LED401は、赤外線を入射角度約15°で照射するように配置された発光ダイオードである。PD402は、LED401から中間転写ベルトおよびトナー像409に照射された光の反射光を、正反射角度の位置で受光するフォトダイオードである。PD403は、乱反射角度の位置で散乱光を受光するフォトダイオードである。
【0047】
シャッター410は、画像濃度センサ400と中間転写ベルト1412の間に配置されている。中間転写ベルト1412およびトナー像を検出する場合には、シャッター410が実線で示した位置に移動してシャッターが開かれた状態となる。画像濃度センサ400を使用しないときには、シャッター410が点線で示したように画像濃度センサ400のレンズ404の前に移動して、レンズ404の汚れを防止する構成となる。
【0048】
電気基板407には、PD402、PD403の受光量に応じて流れる電流を電圧変換するIV変換機能を有する受光回路が実装されている。レンズ404は、LED401からの照射光と、PD402、PD403で受光する光の経路を作り出すためにエポキシ樹脂から成形された光学部品である。LED401で発光された光が、直接的にPD402、403に入射されることを防止するために黒い樹脂から成る遮蔽部材405が設けられている。しかし、遮蔽部材405で遮蔽しきれず、PD402,403に漏れる光、漏れ光406が存在する。以上の構成からなる画像濃度センサ400は、正反射光と乱反射光の両方を計測可能である。正反射光を受光するPD402、乱反射光を受光するPD403は、中間転写ベルトの反射光及びトナー像409の反射光を計測する。
【0049】
ここで、パッチ濃度の検知方法について一例を述べる。
例えば、正反射光を受光するPD402で中間転写ベルト1412上のパッチの濃度を算出する場合について説明する。
PD402では正反射光成分と乱反射光成分の両方を検知するので、PD403で検出された乱反射光成分を、PD402で検出された反射光成分から除去し、補正演算することにより正反射光成分を算出する。中間転写ベルト1412からは反射光が大きく、トナーからの反射光はほとんどないため、トナー画像濃度が高くなるとPD402で検出される正反射光成分は低下する。トナー画像濃度と正反射光との関係をあらかじめ記憶しておくことで、検出された正反射光からトナー画像濃度を算出し、濃度補正を行う。
【0050】
また、乱反射を受光するPD403で中間転写ベルト上のパッチ濃度を算出する場合について説明する。
PD403では乱反射成分のみが検出される。また、トナー画像濃度が高くなると、トナーからの散乱光が増加し、乱反射成分は増加する。トナー画像濃度と乱反射光との関係をあらかじめ記憶しておくことで、検出された乱反射光からトナー画像濃度を算出し、濃度補正を行う。
【0051】
図6(a)は、画像濃度センサ400の濃度変換回路の概略構成の一例を示す図である。
画像濃度センサ400に入力される中間転写ベルトからの反射光(近赤外光)は、0~5Vのアナログ電気信号に変換されて出力される。このアナログ電気信号は、プリンタエンジン102に設けられた制御部420内のA/D変換回路421により、8ビットのデジタル信号に変換される。そして、このデジタル信号は、制御部420内の濃度変換回路422によって濃度情報に変換される。
【0052】
図6(b)は、画像濃度センサ400の出力値と濃度の関係の一例を示す図である。
図6(b)に示すように、中間転写ベルト1412上に形成したパターン画像の画像濃度を、面積階調により段階的に変えた時、形成されたパターン画像の濃度に応じて画像濃度センサ400の出力が変化する。ここでは、トナーが中間転写ベルト1412に付着していない状態の画像濃度センサ400の出力を基準に255レベルまで変化する。
【0053】
中間転写ベルト1412に形成される画素におけるトナーによる面積被覆率が大きくなり画像濃度が大きくなるに従い、正反射光の出力は小さく、乱反射光の出力は大きくなる。
このような画像濃度センサ400の特性に基づき、画像濃度センサ400の出力から各色の濃度信号に変換する各色専用のテーブル(図6(a)のテーブル422a)を予め用意してある。テーブル422aは、濃度変換回路422の記憶部に記憶されている。これにより、濃度変換回路422は、各色とも、精度よくパターン画像濃度を読み取ることができる。濃度変換回路422は、濃度情報を制御部420内のCPU423へと出力する。CPU423は、この濃度情報を、プリンタ画像処理部119及びデバイスI/F117を介して、CPU105に通知する。
【0054】
<画像濃度制御>
本実施形態における画像濃度制御の体系について説明する。
[ターゲット濃度取得]
まず、本実施形態で説明する画像濃度制御を行うために必要な濃度ターゲット取得方法について説明する。
本実施形態で用いる濃度ターゲットは、図7に示すような定期的に又はユーザ任意で行われる、用紙に形成された出力画像(定着後のトナー画像)を用いた自動階調補正制御時に取得され、ROM107に保存される。以下、詳細に説明する。
【0055】
図7は、自動階調補正処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、CPU105がROM107やHDD108等に格納されるプログラムを実行することにより実現される。
【0056】
まず、自動階調補正の実行を開始すると、CPU105は、プリンタエンジン102等により、各色64階調の画像パターンを形成して紙上へ出力させるように制御する(S901)。なお、階調数についてはこれに限定されるものではない。
ユーザは、画像パターンが出力された紙を、スキャナ101の原稿台等にセットし、操作部110から読み取り開始を指示する。この指示に応じて、CPU105は、スキャナ101により原稿台等にセットされた紙を読み取り、スキャナ画像処理部118にて、画像パターンの濃度を自動的に検出するように制御する(S902)。
【0057】
そして、CPU105は、画像パターンから得られた濃度から、補間処理とスムージング処理を行い、全濃度領域のエンジンγ特性を得る。次に、CPU105は、得られたエンジンγ特性と予め設定されている階調ターゲットを用いて、入力画像信号に対する補正テーブルである階調補正テーブル(LUT)を作成し、γ補正回路309に設定する。本実施形態では、図8に示すように、階調ターゲットに対して一致するように逆変換処理を行い、階調補正テーブルを作成する。階調補正テーブルは色毎に作成され、γ補正回路309に設定される。
図8は、階調ターゲットとエンジンγ特性、階調補正テーブルの関係を示す図である。
この処理が終了すると、階調ターゲットに対して紙上の濃度が全濃度領域で合うようになる。従って、上記条件で複数トナー画像パターンを形成し、中間転写ベルト1412上で画像濃度センサ400を用いて濃度を検出すれば、その濃度値が中間転写ベルト1412上における入力信号に対するターゲット濃度になる。
【0058】
階調補正テーブルの作成が指示されると、CPU105は、プリンタエンジン102等に対して、パッチ画像を中間転写ベルト1412上に形成し、画像濃度センサ400により濃度情報を読み取ってCPU105に送信するように指示する。なお、ここで形成を指示するパッチ画像は、例えば各色10階調の画像パターン(テストパターン)を構成する複数のパッチ画像である。この指示に応じて、プリンタエンジン102では、各色10階調の画像パターン(パッチ画像)を中間転写ベルト1412上に形成する(S904)。本実施形態では、10階調の画像パターンは、濃度値がそれぞれ1Ah、33h、4Dh、66h、80h、99h、B3h、CCh、E6h、FFhの画像パターンとする(「h」は16進数を示す)。さらに、画像濃度センサ400が、中間転写ベルト1412上に形成された各色10階調の画像パターン(パッチ画像)を読み取り(S905)、該読み取り結果に基づく濃度情報を、制御部420がCPU105に送信する(S906)。
【0059】
CPU105は、プリンタエンジン102の制御部420から受信した濃度情報を、濃度ターゲット(図9)としてROM107に保存し(S907)、本フローチャートの処理を終了する。
図9は、入力信号値と濃度ターゲットの関係を示す図である。
【0060】
なお、作成するパッチ画像の階調パターンや階調数は、上記の例に限定されるものではない。例えば、エンジンのγ特性により濃度変化が大きい中間調領域を重点的に補正するために中間調部分のパターン数を増やしてもよい。また、高濃度側を安定的に出力するために高濃度領域のパターン数を増やしてもよい。また、ハイライト側の階調性を重要視するために低濃度領域のパターン数を増やしてもよい。このように、適宜必要に応じて、パッチ画像の階調パターンや階調数を変更可能である。
【0061】
[画像濃度調整フロー]
次に、本実施形態における濃度補正処理について説明する。
まず、画像形成装置100では、濃度補正が必要であると判断した場合、例えば、長期のジョブ(例えば出力枚数が数百枚のジョブ)が連続した場合、あるいは画像形成環境が変化した場合などでは、濃度調整用のパターンを作成する。濃度調整の種類は、例えば、10階調のパッチからエンジンのγ特性を取得し、濃度調整するパターン(以下「調整パターンA」)と、3階調のパッチからエンジンのγ特性を取得し、濃度調整するパターン(以下「調整パターンB」)を持つ。
【0062】
調整パターンAは、パッチの階調数を増やして、高精度に階調性を合わせるための調整で、比較的大きな環境変化や、数千枚などの大量ジョブ後に実行される。
調整パターンBは、パッチの階調数を減らして、高頻度に微調整していくもので、数十枚から数百枚などのジョブ中やジョブ後に実行される。
濃度調整は、調整パターンAと調整パターンBを組み合わせて実行することで、高精度な階調特性を維持することが可能になる。これら調整パターンA、調整パターンBは一例であり、これに限定されるものではない。
なお、パッチの配列・順番・サイズについては、後述する。
【0063】
図10は、画像濃度調整時の補正LUT作成処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、CPU105がROM107やHDD108等に格納されるプログラムを実行することにより実現される。
【0064】
画像濃度調整がスタートすると、CPU105は、プリンタエンジン102等に対して、濃度調整用階調パッチを中間転写ベルト1412上に形成し、画像濃度センサ400により読み取り、読み取った濃度情報をCPU105に送信するように指示する。ここで形成を指示する濃度調整用階調パッチは、後述する図16及び図17で説明するような、隣接するパッチ画像との濃度差に応じて副走査方向の長さが異なる複数のパッチ画像から構成される画像パターンとする。ここでは、一例として画像濃度調整用の10階調の画像パターンとするが、これらに限定されるものではなく、調整パターンBのような3階調の画像パターンでもよいし、その他のパターンでもよい。上記指示に応じて、プリンタエンジン102では、上述のような濃度調整用階調パッチを中間転写ベルト1412上に形成する(S101)。さらに、画像濃度センサ400が、中間転写ベルト1412上に形成された濃度調整用階調パッチを読み取り(S102)、該読み取り結果に基づく濃度情報を、制御部420がCPU105に送信する。
【0065】
次に、CPU105は、上記検知された濃度情報と、予め決められているターゲット濃度とを比較し、該比較結果に基づいて階調補正テーブル(LUT)を作成し、画像形成時のLUTに反映するようにγ補正回路309に設定する(S103)。以下、階調補正テーブル(LUT)の作成方法について説明する。
【0066】
[LUT作成方法]
以下、本実施形態において、検知濃度をLUTに反映していく方法について説明する。
まずユーザ任意で行った自動階調補正(図7)の際に、予め設定されている階調ターゲット(以下「階調LUT」)になるように、エンジンγ特性に合わせて図8に示したような階調補正テーブル(以下「初期補正LUT」)が形成される。その後、上述した各色10階調の濃度ターゲット値が取得される。上述の自動階調補正後、プリンタ画像処理部119は、入力画像データを初期補正LUTに基づいて変換し、変換後の画像データをプリンタエンジン102に転送する。プリンタエンジン102は入力された画像データに基づいて画像を形成する。また、図10に示したように、画像形成装置100は、画像濃度調整用のパターンを作成して、作成したパターン画像を画像濃度センサにて検知し、その検知結果に基づいて階調補正テーブルを生成する。詳細は後に述べるが、画像濃度調整においてパターンの測定結果から補正テーブル(以下「逐次補正LUT」)が生成され、初期補正LUTと逐次補正LUTとを合成することで階調補正テーブル(合成補正LUT)が新たに生成される。なお、自動階調補正(図7)の直後は、初期補正LUTと逐次補正LUTは同じものになる。
【0067】
以下、図11図12図13及び図14を用いて、初めの合成補正LUT作成方法について説明する。なお、合成補正LUT作成方法については、上述した調整パターンAでの説明を行うが、調整パターンBについても同様の補正方法で合成LUTを作成することが可能である。
【0068】
図11は、画像濃度調整時の合成補正LUT作成処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、CPU105がROM107やHDD108等に格納されるプログラムを実行することにより実現される。なお、図11のS201は図10のS101、S202はS102、S203~S205はS103にそれぞれ対応するステップとなる。
【0069】
CPU105は、プリンタエンジン102等に対して、上述したような画像濃度調整用の画像パターンを中間転写ベルト1412上に形成し、画像濃度センサ400により読み取り、読み取った濃度情報をCPU105に送信するように指示する。自動階調補正後、初めの出力画像、及び画像濃度調整で使用する画像パターンを形成する際は、自動階調補正によりγ補正回路309に設定された図12に示すような初期補正LUT(1500)をかけて形成する(S201)。そして、このように形成された画像パターンの濃度情報を画像濃度センサ400が検知する(S202)。
図12は、濃度ターゲットと初期階調補正LUTの関係を示す図である。
【0070】
そして、CPU105は、画像濃度センサ400による検知結果から濃度カーブ1501(図13)を作成する(S203)。具体的には、図13に示す○印のように、検知結果(画像パターンの実測値)の1Ah、33h、4Dh、66h、80h、99h、B3h、CCh、E6h、FFh部分をプロットし、この10点を用いて図13に示すような濃度カーブ(1501)を作成する。この濃度カーブの作成方法は、10点を結ぶような近似式を用いる等、一般的に使用される近似方法で構わない。
図13は、濃度ターゲットに対する実測濃度プロット、及び逐次補正LUTの関係を示す図である。
【0071】
次に、S203において、CPU105は、上記S203で作成された現時点での濃度カーブ(1501)を初期濃度カーブ(1502)に補正するために逆変換を行い、図13に示すような逐次補正LUT(1503)を作成する(S204)。
【0072】
最後に、CPU105は、逐次補正LUT(1503)と、初期補正LUT(1500)を掛け合わせた図14のような合成補正LUT(1601)を作成してγ補正回路309に設定し(S205)、以後、出力画像に反映させて出力するように制御する。すなわち、CPU105は、上記S202で検知された濃度情報に基づいてプリンタエンジン102の像形成条件を補正する。この合成補正LUT(1601)を反映させた後は、出力画像、及び次の画像濃度補正用階調パターンは、この合成補正LUT(1601)を掛け合わされた状態で画像出力される。
図14は、初期補正LUTと逐次補正LUT及び合成補正LUTの関係を示す図である。
なお、自動階調補正直後でない場合においても、合成補正LUTに、新たな逐次LUTを掛け合わせていくことで、同じ画像調整フローで濃度調整が可能である。
【0073】
[画像濃度センサ応答性]
次に、画像濃度センサ400の応答性について説明する。
ここでいう応答性とは、画像濃度センサ400が中間転写ベルト1412上に形成された画像濃度補正用の画像パターンを検出する際の反応の速さのことである。例えば、中間転写ベルト1412上に形成された画像パターンを検出したときに、安定して測定できるまでにかかる時間が短ければ応答性の早いセンサ、かかる時間が長ければ応答性の遅いセンサということになる。
【0074】
図15(a)は、中間転写ベルト1412上に画像濃度補正用の画像パターンを形成し、画像濃度センサ400で中間転写ベルト1412および画像パターンを測定したときの、乱反射を受光するPD403の測定値推移を示す図である。
【0075】
図15(a)において、区間Aは、画像濃度センサ400で画像パターンが形成されていない中間転写ベルト1412上(以下「下地」)を測定した領域に対応する。
区間Bは、画像パターンを測定した領域に対応する。
区間Cは、区間Aと同じく下地を測定した領域に対応する。
【0076】
区間AおよびCでは、画像濃度センサ400のLEDから中間転写ベルト1412に照射したとき、PD403ではわずかながらに散乱光を受光している。
区間Bでは、画像パターンを測定している領域で、PD403で受光する散乱光が時間的に変化する。区間B1は、画像パターン領域を読み始めて、実際の画像濃度に相当する出力値に到達するまで(以下「センサ立ち上がり時間」)、徐々に変化することを示しており、図15(a)においては約10msかかっている。また、区間B2は、実際の画像濃度に相当する出力値に到達してから、出力値が安定している領域で、この領域のセンサ出力値を用いて画像濃度制御を行う。区間B3は、画像パターン領域を読み終えてから、センサの出力値が安定的に下地領域からの出力値になるまで(以下「センサ立ち下がり時間」)の区間で、図15(a)においては約13msかかっている。
【0077】
このように、転写ベルト1412上に形成された画像パターンを測定する場合、画像パターン内に、センサ立ち上がり時間やセンサ立ち下がり時間に要する領域が必要となる。例えば、図15(a)のグラフにおいて、転写ベルトのプロセススピードを300mm/sとした場合、センサ立ち上がりに必要な領域として「300×0.015=4.5mm」が必要となる。また、センサ立ち下がりに必要な領域は「300×0.019=5.7mm」が必要となる。このように、実際のパッチ(画像パターン)のサイズは、この領域を考慮して作成する必要がある。
【0078】
<効果検証>
[パッチ配列及びパッチサイズ構成]
次に、本実施形態の特徴である画像パターンを構成するパッチ画像の配列およびサイズについて説明する。
まず、本実施形態では、画像濃度補正用の画像パターンにおいて、隣接するパッチの濃度段差が大きくなる場合に、パッチサイズを大きくすることを特徴としているが、この必要性について説明する。
【0079】
図15(b)は、画像濃度センサ400のセンサ出力推移の濃度差を示す図である。
図15(b)の例では、濃度の異なる3つの画像パターンを、画像濃度センサ400で測定したときのセンサの出力値推移を示している。図中、△が下地との濃度差が0.35のパターン、〇が濃度差0.91のパターン、□が濃度差1.51のパターンを測定したときのセンサの出力値推移を示している。
【0080】
図15(b)からわかるように、センサ立ち上がり時間、センサ立ち下がり時間は、画像パターンの濃度差によって異なる。センサ立ち上がり時間、立ち下がり時間の境界を、センサ出力値が安定になった時点の値から95%の時点であるとすると、各濃度差におけるセンサ立ち上がり時間、立ち下がり時間は、以下の表1のようになる。
【0081】
【表1】
【0082】
図15(b)および表1からわかるように、濃度差が大きくなると、センサ立ち上がり時間、立ち下がり時間、すなわちセンサ応答性が長くなってくることがわかる。
センサ応答性が長くなると、測定に必要な領域が増加し、その結果補正用画像パターンが大きくなり、補正時間が長くなる、あるいは補正に必要なトナー量が増加するという課題が発生する。
【0083】
上述したように、濃度調整には、10階調のパッチを使用して高精度に調整する調整パターンAと、パッチの階調数を減らして高頻度に微調整していく調整パターンBがある。調整パターンAのように、パッチの数が多い場合は、パッチの配列を工夫することで、隣接するパッチの濃度段差を大きくならないようにすることができる場合もある。しかし、調整パターンBのように、階調数が少ない場合は、配列を工夫しても濃度段差が大きくなってしまう。
【0084】
そこで、本実施形態では、画像濃度調整用の画像パターンのパッチサイズにおいて、隣接する濃度調整用パッチの濃度段差が大きくなる場合に、濃度段差が大きくない場合よりもパッチサイズが大きくなる配列パターンを用いるものとする。
【0085】
図16を用いて、本実施形態における濃度調整の調整パターンBにおける、3階調(4Dh、99h、FFh)の画像濃度補正用の画像パターンのパッチ配列の説明をする。なお、ここでは、調整パターンBで説明するが、調整パターンAの場合でも同様に、隣接するパッチ画像との濃度差に応じて異なるサイズで形成される複数のパッチ画像から構成される画像パターンを用いてもよい。
【0086】
本実施形態では、一例として、隣接する画像パターンとの濃度差ΔD=0.35を基準とする。そして、ΔD<0.35が想定される場合は、サイズの小さいパッチ(ここでは表1記載のΔD=0.35の場合の立ち上がり時間、立ち下がり時間を想定したパッチサイズ)となるようにパッチサイズを決定する。また、ΔD≧0.35が想定される場合は、サイズの大きいパッチ(ここではΔD=1.51の場合の立ち上がり時間、立ち下がり時間を想定したパッチサイズ)となるようにパッチサイズを決定する。
【0087】
なお、本実施形態における濃度調整に使用した階調パターン、基準となる濃度段差ΔD、パッチサイズは一例であり、これに限定されるものではない。
【0088】
図16(a)は、第1実施形態における画像濃度補正用の画像パターンのうちサイズの小さいパッチ画像(以下「パッチサイズX」)の一例を示す図である。なお、このパッチ画像は、画像濃度センサ400により、図中の左側から右側(中間転写ベルトの移動方向の下流側から上流側)に向かって読み取られるものとする。
【0089】
パッチサイズXは、中間転写ベルト1412の移動方向(X方向)に16mm、中間転写ベルト1412の移動方向に直交する方向(Y方向)に16.3mmとなる画像パターンである。X方向の長さは、センサ立ち上がり時間に必要な長さとして300mm/s×9ms=2.7mm、センサ立ち下がり時間に必要な長さとして300mm/s×12ms=3.6mmセンサ出力が安定して測定できる長さとして10mmが必要である。
【0090】
図16(b)は、第1実施形態における画像濃度補正用の画像パターンのうちサイズの大きいパッチ(以下「パッチサイズZ」)の一例を示す図である。このパッチ画像は、画像濃度センサ400により、図中の左側から右側(中間転写ベルトの移動方向の下流側から上流側)に向かって読み取られるものとする。
【0091】
パッチサイズZは、Y方向に16mm、X方向に20.2mmとなる画像パターンである。X方向の長さは、センサ立ち上がり時間に必要な長さとして300mm/s×14ms=4.2mm、センサ立ち下がり時間に必要な長さとして300mm/s×20ms=6.0mm、センサ出力が安定して測定できる長さとして10mmが必要である。
【0092】
図16(c)は、第1実施形態における各色3階調(4Dh、99h、FFh)の画像濃度補正用の画像パターンのパッチ配列の一例を示す図である。
【0093】
測定開始位置を左端とした場合、左端から順にイエロー(Y)の濃度4Dh、99h、FFh、マゼンタ(M)の濃度4Dh、99h、FFh、シアン(C)の濃度4Dh、99h、FFh、ブラック(K)の濃度4Dh、99h、FFhのパッチが並んでいる。すなわち、画像濃度センサ400は、これら各パッチの濃度情報を、左端のパッチから右端のパッチに向かって(中間転写ベルト1412の移動方向の下流側から上流側に向かって)順次検出することになる。
【0094】
図17は、図16(c)に示した各パッチの画像レベル、想定濃度、前パッチとの濃度差、パッチサイズの関係及びパッチサイズ合計を示す図である。なお、比較例として、全てのパッチサイズを大きいパッチサイズZのパッチを使用した場合についても示している。
なお、想定濃度とは、図9で示した各画像レベルに対するターゲット濃度で、ターゲット濃度と合致している場合の濃度であり、図17記載の濃度に限定されるものではない。
【0095】
図17からわかるように、比較例に示す従来のように、全てのパッチを大きいパッチサイズZで形成する場合には、パッチサイズ合計が「242.4mm」となる。一方、本実施形態のように、隣接するパッチの濃度差に応じて、小さいパッチサイズXと大きいパッチサイズZのパッチを組み合わせる場合には、パッチサイズ合計が「222.9mm」となる。このように、本実施形態では、従来と比較して、約10%弱程度のパッチサイズ削減効果を得ることができる。
なお、画像パターンを構成する複数のパッチ画像のうち、中間転写ベルト1412の移動方向の最も下流側のパッチ画像(パッチ順1のパッチ画像)の行のΔ濃度差は、例えば該パッチ画像と中間転写ベルト1412上(下地)との濃度差とする。
【0096】
以上説明したように、第1実施形態で用いる、像担持体上に形成する画像濃度補正用の画像パターンのパッチ配列は、隣接するパッチの濃度差に応じて選択される、小さいパッチサイズXと大きいパッチサイズZのパッチの組み合わせにより構成される。すなわち、隣接するパッチ画像との濃度差に応じて異なるサイズで形成される複数のパッチ画像で構成される画像パターン(テストパターン)を用いて、キャリブレーション(補正)を行う。このような構成により、色味・濃度階調性安定化制御のためのキャリブレーションを、短時間・高精度に実行し、かつ使用するトナー消費量の増加を抑制することが可能となる。
【0097】
〔第2実施形態〕
第2実施形態では、画像濃度補正用のパターンのパッチ配列に関して、第1実施形態で示した隣接パッチの濃度段差の基準をΔD=0.35だけではなく、さらに基準Bとして、ΔD=1.0を設けた場合について説明する。なお、ここでは濃度段差の基準点(しきい値)を2個も受けた場合についての説明を行うが、さらに増やして3個以上としても同様の効果を得ることができる。例えば、0.1刻みに基準点を設け、各基準点との大小関係に応じて、パッチ画像の副走査方向の長さを変えるようにしてもよい。なお、本実施形態で使用する画像パターンのパッチ配列以外の構成は、第1実施形態と同様とする。
【0098】
図18は、第2実施形態における画像濃度補正用の画像パターンのうち、パッチサイズXよりも大きく、パッチサイズZよりも小さいサイズのパッチ(以下「パッチサイズY」)の一例を示す図である。
パッチサイズYは、主走査方向に16mm、副走査方向に18.4mmとなる画像パターンである。副走査方向には、センサ立ち上がり時間に必要な領域として300mm/s×11ms=3.3mmが必要となる。また、センサ立ち下がり時間に必要な領域として300mm/s×17ms=5.1mmが必要となる。さらに、センサ出力が安定して測定できる領域を10mm必要とした。
【0099】
図19は、第2実施形態におけるパッチサイズX、Y、Zのパッチを隣接するパッチとの濃度段差に応じて設定した場合の各パッチの画像レベル、想定濃度、前パッチとの濃度差、パッチサイズの関係及びパッチサイズの合計を示す図である。
【0100】
図19からわかるように、本実施形態のように、隣接するパッチの濃度差に応じてパッチサイズX、Y、Zのパッチを組み合わせる場合には、パッチサイズ合計が「215.7mm」となる。また、図17の比較例からわかるように、従来のように、全てのパッチを大きいパッチサイズZで形成する場合には、パッチサイズ合計が「242.4mm」となる。このように、本実施形態では、従来と比較して、約10%程度のパッチサイズ削減効果を得ることができる。
以上説明したようなパッチ画像で構成される画像パターンを、上述した図10のS101(図11のS201)等のような画像パターン時に形成して、画像濃度調整を行うものとする。
【0101】
以上説明したように、第2実施形態で用いる、像担持体上に形成する画像濃度補正用の画像パターンのパッチ配列は、隣接するパッチの濃度差に応じて決定される適正なパッチサイズのパッチの組み合わせにより構成される。このような画像パターンを用いることにより、色味・濃度階調性安定化制御のためのキャリブレーションを、短時間・高精度に実行し、かつ使用するトナー消費量の増加を抑制することを、より細やかに行うことができる。
【0102】
〔第3実施形態〕
第3実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態で示した階調パターンとは別のパターンについて説明する。すなわち、複数のディザ処理パターンを形成する場合のパッチサイズについて説明する。なお、それ以外の構成については第1実施形態及び第2実施形態と同様とする。
【0103】
第3実施形態では、画像濃度調整用のパターンとして、各色2階調(99h、FFh)の補正用パッチで、さらに各色、誤差拡散、低線数、高線数の中間調ディザ処理が行われたパターンを用いる。このパターンは、例えば図20に示すようなパッチ順になっている。
【0104】
図20は、第3実施形態における各パッチの画像レベル、想定濃度、前パッチとの濃度差、パッチサイズの関係及びパッチサイズの合計を示す図である。
この例では、第1実施形態と同様、隣接する画像パターンの濃度差ΔD=0.35を基準として、ΔD<0.35が想定される場合は、パッチサイズXのパッチ、ΔD≧0.35が想定される場合は、パッチサイズZのパッチを使用している。
また、比較例として、濃度調整用のパッチすべてをパッチサイズZのパッチで作成した場合についても示している。
【0105】
図20からわかるように、比較例に示す従来のように、全てのパッチを大きいパッチサイズZで形成する場合には、パッチサイズ合計が「323.2mm」となる。一方、本実施形態のように、隣接するパッチの濃度差に応じて、小さいパッチサイズXと大きいパッチサイズZのパッチを組み合わせる場合には、パッチサイズ合計が「292mm」となる。このように、本実施形態では、従来と比較して、約10%程度のパッチサイズ削減効果を得ることができる。
なお、第2実施形態のように、例えば2以上の閾値を設けて、隣接するパッチの濃度差に応じて適正なパッチサイズを決定するようにしてもよい。
【0106】
以上説明したように、第3実施形態では、各色、誤差拡散、低線数、高線数の中間調ディザ処理が行われたパッチ画像から構成される画像パターンを用いる。すなわち、複数の擬似中間調処理パターンにまたがって隣接するパッチ画像から構成される画像パターンを用いる。そして、この画像パターンを構成するパッチ画像の各サイズは、上記第1実施形態や第2実施形態と同様に、隣接するパッチ画像との濃度差に応じて決められたサイズとする。このような画像パターンを用いることにより、色味・濃度階調性安定化制御のためのキャリブレーションを、短時間・高精度に実行し、かつ使用するトナー消費量の増加を抑制することが可能となる。
【0107】
なお、隣接する画像パターンの濃度差が、濃度が上がる場合と、濃度が下がる場合とで、画像パターンの副走査方向の長さを変更するように制御してもよい。すなわち、隣接するパッチ画像との濃度差が濃度の増加による場合には該増加の量に応じて第1ルールに基づきパッチ画像の副走査方向の長さを決定する。また、濃度差が濃度の減少による場合には該減少の量に応じて第2ルール(第1ルールとは異なるルール)に基づきパッチ画像の副走査方向の長さを決定する。そして、このようにして決定されたパッチ画像を組み合わせた画像パターンを用いてキャリブレーションを行うように構成する。これにより、キャリブレーションで使用するトナー消費量の増加をより細やかに制御して、使用するトナー消費量をさらに抑えることが可能となる。
【0108】
以上、各実施形態によれば、濃度調整等の補正に用いるパッチの配列を、濃度差の大きいパッチと隣接するパッチのみ副走査方向のパッチ長を変更した(通常より長くした)パッチで構成し、このパッチを光学式センサにより測定し、測定結果に基づき補正を行う。これにより、各パッチの大きさが必要以上に大きくなることを防止しつつ、測定結果が正しく得られないエラーを抑制することができる。これにより、補正によるトナー消費量の低減、補正時間の短縮が可能になる。したがって、色味・濃度階調性安定化制御のためのキャリブレーションを、短時間・高精度に実行し、かつトナー消費量の増加を抑制することが可能になる。
なお、上述した図8のS904でも、上記各実施形態で示したような、隣接するパッチ画像との濃度差に応じて異なるサイズで形成される複数のパッチ画像で構成される画像パターンを用いてもよい。
【0109】
なお、上述した各種データの構成及びその内容はこれに限定されるものではなく、用途や目的に応じて、様々な構成や内容で構成されることは言うまでもない。
以上、一実施形態について示したが、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
また、上記各実施形態を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【0110】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。即ち、上述した各実施形態及びその変形例を組み合わせた構成も全て本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0111】
100 画像形成装置
102 プリンタエンジン
105 CPU
119 プリンタ画像処理部
309 γ補正回路
400 画像濃度センサ
1412 中間転写ベルト
図1
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