(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20240508BHJP
B23P 19/04 20060101ALI20240508BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
F02M55/02 330D
F02M55/02 350H
B23P19/04 B
B23P19/04 E
B23P21/00 303C
(21)【出願番号】P 2020012954
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】日野林 和真
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和弘
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-040244(JP,A)
【文献】特開2002-122055(JP,A)
【文献】特開2010-007651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 55/02
B23P 19/04
B23P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジェクターホルダー組み付け用流体圧シリンダーと、
インジェクターホルダー固定治具と、
凹形治具と、
本管レール受け台と、
仮付け用電極と、
を有し、
インジェクターホルダーを
前記インジェクターホルダー組み付け用流体圧シリンダーにより
前記インジェクターホルダー固定治具に押し付けた状態で本管レールのレール本体に仮付けを行う、ガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置であって
、
前記インジェクターホルダー組み付け用流体圧シリンダーと、
前記インジェクターホルダーに対して前記インジェクターホルダー組み付け用流体圧シリンダーと反対側に設置された前記インジェクターホルダー固定治具
と、を組み込んだ
前記凹形治具が前記インジェクターホルダー
の押圧方向前後に微動可能に水平に支持され、さらに前記凹形治具の底部を貫通するごとく垂直に立設した
前記本管レール受け台に
前記仮付け用電極を介して
前記本管レールのレール本体が支持されるとともに、前記凹形治具が前記インジェクターホルダー
の押圧方向前後に微動して
前記本管レールのレール本体の径方向中心に、前記インジェクターホルダーに設けられた接合用円弧面状凹部の中心を合致させるインジェクターホルダー位置調節機構を有することを特徴とするガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子燃料噴射式自動車エンジン等の燃料加圧ポンプから送給された高圧燃料をエンジンのシリンダー内に直接噴射する燃料インジェクターを介して供給するための燃料レールに係り、より詳しくはレールからインジェクターへ直接燃料を供給するタイプのガソリン直噴エンジン用燃料レールの製造工程において、インジェクターホルダー(筒状ソケット)をレール本体に組み付ける装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガソリン直噴エンジン用燃料レールとしては、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1には、例えば
図2に示すように、燃料レール本体である本管レール11に、複数のインジェクターホルダー(筒状ソケット)12及び固定用ブラケット13を備えたガソリン直噴エンジン用燃料レールが記載されている。図中、14は圧力センサー用ボス、15はプラグ、16はインレットコレクターである。
このガソリン直噴エンジン用燃料レールにおいて、インジェクターホルダー12は、
図3にその取り付け構造の断面図を示すように、仕上げ加工孔12-1と横孔12-2が切削加工により設けられ、内部を流通路11-1となした円筒状の本管レール11の軸方向にわたる周壁部に穿設した貫孔11-2の部分に形成した当該インジェクターホルダー接合用円弧面状凹部12-3に本管レール11と相互にろう付け接合されている。11-1aは内周壁面である。
【0003】
このガソリン直噴エンジン用燃料レールの製造工程において、インジェクターホルダー12を本管レール11本体に組み付ける際には、インジェクターホルダー12を専用の組み付け用の流体圧シリンダー(エアシリンダー等)により該流体圧シリンダーと反対側に設置された固定治具に押し付けて当該ホルダーを固定した状態でプロジェクション溶接機により仮付けを行っている。具体的には、インジェクターホルダー12の接合用円弧面状凹部12-3を本管レール11の周壁部に当接させて当該ホルダーを流体圧シリンダーにより固定した状態でプロジェクション溶接機により仮付けを行い、この仮付け固定した後に、炉中ろう付けにより本管レール11と一体的にろう付け固着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インジェクターホルダーを本管レールに仮り付け溶接するための従来の組み付け用流体圧シリンダーによる組み付け方式は、以下に記載する問題を有している。
即ち、インジェクターホルダーを専用の組み付け用の流体圧シリンダーにより当該シリンダーと反対側に設置された固定治具に押し付けた状態でプロジェクション溶接機により仮付けを行う従来の組み付け方式は、インジェクターホルダーをクランプして完全に固定した状態、即ちインジェクターホルダーの基準面(固定治具側)が流体圧シリンダーにより押圧固定されて押圧方向の僅かな調整もできない状態であるため、レール本体に対するインジェクターホルダーの円周方向の加工バラツキが生じている場合、該部品接合における位置ずれ等を吸収することができず、その結果、部品公差が生じたまま仮付けされることとなり、インジェクターホルダー組み付け後の歪みが多くなり組み付け精度を十分に確保することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、前記した従来のガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け後の歪みが多くなり組み付け精度を十分に確保することができないという問題を解決するためになされたものであり、従来の組み付け用流体圧シリンダーによる組み付け方式に、レール本体に対するインジェクターホルダーの加工バラツキを吸収するためのインジェクターホルダー位置調節機構(レール本体中心基準にインジェクターホルダー接合用円弧面状凹部中心を合致させる機構)を付設することにより、インジェクターホルダー組み付け精度を向上させることができるガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置は、インジェクターホルダーの組み付け用流体圧シリンダー及び前記シリンダーと反対側に設置されたインジェクターホルダー固定治具を有する治具をインジェクターホルダー押圧方向前後に微動可能に設けることにより、インジェクターホルダーの加工バラツキを吸収する方式を採用したもので、その要旨は、インジェクターホルダー組み付け用流体圧シリンダーと、インジェクターホルダー固定治具と、凹形治具と、本管レール受け台と、仮付け用電極と、を有し、インジェクターホルダーを前記インジェクターホルダー組み付け用流体圧シリンダーにより前記インジェクターホルダー固定治具に押し付けた状態で本管レールのレール本体に仮付けを行う、ガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置であって、前記インジェクターホルダー組み付け用流体圧シリンダーと、前記インジェクターホルダーに対して前記インジェクターホルダー組み付け用流体圧シリンダーと反対側に設置された前記インジェクターホルダー固定治具と、を組み込んだ前記凹形治具が前記インジェクターホルダーの押圧方向前後に微動可能に水平に支持され、さらに前記凹形治具の底部を貫通するごとく垂直に立設した前記本管レール受け台に前記仮付け用電極を介して前記本管レールのレール本体が支持されるとともに、前記凹形治具が前記インジェクターホルダーの押圧方向前後に微動して前記本管レールのレール本体の径方向中心に、前記インジェクターホルダーに設けられた接合用円弧面状凹部の中心を合致させるインジェクターホルダー位置調節機構を有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明において、レール本体中心基準にインジェクターホルダー接合用円弧面状凹部中心を合致させるインジェクターホルダー位置調節機構を設けたのは、以下に記載する理由による。
即ち、インジェクターホルダーを組み付け用流体圧シリンダーにより当該ホルダー固定治具に押し付けた状態でレール本体に仮付けを行う従来の方式では、インジェクターホルダーの基準面(固定治具側)が流体圧シリンダーにより押圧固定されて押圧方向の僅かな調整もできない状態で仮付けを行うこととなり、レール本体に対するインジェクターホルダーの円周方向の加工バラツキに起因する位置ずれ等を吸収することができず、その結果、所望する寸法からずれが生じたまま仮付けされることとなる。このため、インジェクターホルダー押さえ方向の機構として、レール本体中心基準にインジェクターホルダー接合用円弧面状凹部中心を合致させるインジェクターホルダー位置調節機構を有する構造とすることにより、前記レール本体に対するインジェクターホルダーの加工バラツキにより生じる位置ずれ等を吸収できるようするためである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置は、レール本体中心基準にインジェクターホルダー接合用円弧面状凹部中心を合致させるインジェクターホルダー位置調節機構にてレール本体に対するインジェクターホルダーの部品公差(偏心)を的確に吸収してインジェクターホルダーをレール本体に組み付ける方式としたことにより、インジェクターホルダーをレール本体に組み付ける際に、レール本体に対するインジェクターホルダーの加工バラツキにより生じる位置ずれ等を的確に吸収することが可能となり、当該インジェクターホルダーの位置精度の向上がはかられることによりレール本体とインジェクターホルダーの組み付け精度を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置の一実施例を一部破断して示す概略図である。
【
図2】同上の直噴ガソリンエンジン用燃料レールの一例を示す平面図である。
【0011】
図1に示すガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置において、1は機台、2は支持体、3は凹形治具、4は流体圧シリンダー、5はインジェクターホルダー固定治具、6は本管レール受け台、7は電極、8はインジェクターホルダー位置調節機構、9は凹形治具支持台、10は凹形治具保持体をそれぞれ示す。
【0012】
即ち、本発明に係る
図1に示すガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置は、インジェクターホルダー12を専用の組み付け用の流体圧シリンダー(エアシリンダー等)4により該流体圧シリンダーと反対側に設置されたインジェクターホルダー固定治具5に押し付けて当該ホルダーを固定した状態でプロジェクション溶接機により仮付けを行う従来方式に替えて、流体圧シリンダー4とインジェクターホルダー固定治具5を備え、かつ凹部に本管レール11とインジェクターホルダー12とを支持する構造となした凹形治具3を採用するとともに、前記凹形治具3がインジェクターホルダー押圧方向前後に微動して本管レール11のレール本体の径方向の中心P1にインジェクターホルダー接合用円弧面状凹部12-3の中心P2を合致させるインジェクターホルダー位置調節機構(アジャスト機構)8を付設した構成となした点に特徴を有する。
【0013】
ここで、本発明装置をより具体的に説明すると、
図1に示すガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置は、一方の垂直壁3-1の外面に流体圧シリンダー4を、他方の垂直壁3-2の内面にインジェクターホルダー固定治具5を備え、かつ垂直壁3-1と3-2間の凹部3-3内に本管レール11とインジェクターホルダー12とを支持する構造となした凹形治具3がインジェクターホルダー位置調節機構(アジャスト機構)8を介してインジェクターホルダー押圧方向前後に微動可能に凹形治具支持台9に水平に支持されている。前記インジェクターホルダー固定治具5は、インジェクターホルダー12の基準面側を嵌合支持するごとく垂直壁3-2に着脱可能に装着され、流体圧シリンダー4のロッド4-1の先端に装着された押圧体4-2を介してインジェクターホルダー12が押圧される仕組みとなしている。
【0014】
前記インジェクターホルダー位置調節機構8は、凹形治具3の底面に形成した凹部8-1に凹形治具支持台9上面に形成した凸部9-1がインジェクターホルダー押圧方向前後に移動可能に凹凸嵌合された構造となすとともに、前記インジェクターホルダー位置調節機構8に隣接して凹形治具3の凹部底部を貫通するごとく機台1に固定された支持体2に垂直に立設した本管レール受け台6に仮付け用電極7を介して本管レール11を支持する仕組みとなしている。前記凹形治具3の凹部底部に形成する本管レール受け台6の貫通孔3-4は、本管レールのレール本体の径方向の中心P1にインジェクターホルダー接合用円弧面状凹部中心P2を合致させるため当該凹形治具がインジェクターホルダー押圧方向前後に微動可能となす大きさを有している。又、凹形治具3は、機台1に固定された支持体2に取着された凹形治具保持体10にガイドロッド10-1を介して垂直壁3-2の部分を保持されている。なお、凹形治具支持台9は凹形治具3を所定の高さ位置に設定できるように、流体圧シリンダー等の昇降機構(図面省略)により高さ調整可能に支持されている。
【0015】
上記構成のガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置によりインジェクターホルダー12を本管レール11本体に組み付ける際は、凹形治具3を所定の高さ位置に保持するとともに、本管レール受け台6により電極7を介して本管レール11を所定の高さ位置に載置固定した状態で、凹形治具3の垂直壁3-2の内面に装着されたインジェクターホルダー固定治具5に基準面側を凹凸嵌合されたインジェクターホルダー12を流体圧シリンダー4にて押圧する。この時、インジェクターホルダー12のホルダー接合用円弧面状凹部12-3の中心P2の位置が本管レール11本体の径方向の中心P1よりずれている場合には、インジェクターホルダー位置調節機構8により凹形治具3がその位置ずれ分微動して当該部品公差が吸収される。即ち、本管レール11本体の径方向の中心P1にインジェクターホルダー12のホルダー接合用円弧面状凹部12-3の中心P2が一致した状態で本管レール11とインジェクターホルダー12が仮付けされることになり、本管レール11とインジェクターホルダー12の組み付け精度が高められる。
【0016】
なお、本発明に係るガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダー組み付け装置は、インジェクターホルダー12を本管レール11にろう付けする際に、該インジェクターホルダー12の位置精度を確保するために当該ホルダーの接合用凹部12-3に複数個の仮付け用突起(図面省略)を設けたインジェクターホルダーにも適用できることはいうまでもない。又、その仮付け用突起を有するインジェクターホルダーとしては、ホルダー接合用凹部に4個の仮付け用突起を十字位置に、具体的には2個の突起をレール本体の軸方向と平行な位置のホルダー接合用凹部12-3の底辺部に、残り2個の突起をレール本体の軸方向と直角方向位置のホルダー接合用凹部12-3の縁部分にそれぞれ設けたインジェクターホルダー(図面省略)が組み付け精度の向上に多大な効果を発揮する。
【符号の説明】
【0017】
1 機台
2 支持体
3 凹形治具
3-1、3-2 垂直壁
3-3 凹部
3-4 貫通孔
4 流体圧シリンダー
4-1 ロッド
4-2 押圧体
5 インジェクターホルダー固定治具
6 本管レール受け台
7 電極
8 インジェクターホルダー位置調節機構
8-1 凹部
9 凹形治具支持台
9-1 凸部
10 凹形治具保持体
10-1 ガイドロッド
11 本管レール
12 インジェクターホルダー
12-3 インジェクターホルダー接合用(円弧面状)凹部
P1 本管レールのレール本体の径方向の中心
P2 インジェクターホルダー接合用円弧面状凹部の中心