(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】レンズ装置および撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/08 20210101AFI20240508BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240508BHJP
【FI】
G02B7/08 C
G03B17/02
(21)【出願番号】P 2020014079
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤一
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-131103(JP,A)
【文献】特開2013-242353(JP,A)
【文献】特開平06-289275(JP,A)
【文献】特開平09-090189(JP,A)
【文献】特開2013-130757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジバックを調整するための調整レンズ群と、前記調整レンズ群を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、記憶部とを有するレンズ装置であって、
前記記憶部は、前記レンズ装置に関する第1状態量での前記調整レンズ群の基準位置に対する補正量と、前記レンズ装置に関する各状態量との関係を記憶し、
前記制御部は、前記基準位置と、前記レンズ装置に関する第2状態量と、前記記憶部が記憶している前記関係とに基づいて、前記駆動部を制御するための制御信号を生成
し、
前記制御部は、前記調整レンズ群の位置に関する情報を外部装置に出力する場合、該情報は、前記基準位置に関する情報とし、前記外部装置から前記調整レンズ群の位置に関する指令を入力された場合、該指令を、前記第2状態量と前記関係とに基づいて補正することを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
フランジバックを調整するための調整レンズ群と、前記調整レンズ群を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、記憶部とを有するレンズ装置であって、
前記記憶部は、前記レンズ装置に関する第1状態量での前記調整レンズ群の基準位置に対する補正量と、前記レンズ装置に関する各状態量との関係を記憶し、
前記制御部は、前記基準位置と、前記レンズ装置に関する第2状態量と、前記記憶部が記憶している前記関係とに基づいて、前記駆動部を制御するための制御信号を生成し、
前記制御部は、前記調整レンズ群の位置に関する情報を外部装置に出力する場合、該情報は、前記外部装置によって異なる情報とすることを特徴とするレンズ装置。
【請求項3】
前記調整レンズ群の位置を検出する第1検出部を有し、
前記制御部は、前記第1検出部により検出された前記調整レンズ群の位置の情報と、前記制御信号とに基づいて、前記駆動部に対する駆動信号を生成することを特徴とする請求項1
または2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記レンズ装置に電源が投入された場合に、前記基準位置と前記第2状態量と前記関係とに基づいて、前記制御信号を生成することを特徴とする請求項1
ないし3のうちいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記レンズ装置に関する状態量を検出する第2検出部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記調整レンズ群を駆動させて前記レンズ装置により形成される像のぼかし量を操作する機能を前記外部装置が有する場合、前記ぼかし量による変更により得られた前記調整レンズ群の位置に関する情報を前記外部装置に出力し、
前記ぼかし量を操作する機能を前記外部装置が有しない場合、前記ぼかし量により前記調整レンズ群の位置が変更されていても、該変更がされなかった場合の前記調整レンズ群の位置に関する情報を前記外部装置に出力する、
ことを特徴とする請求項
2に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記各状態量は、ズームレンズ群、フォーカスレンズ群、開口絞り、エクステンダーレンズ群、温度、気圧、高度のうちの少なくとも1つに関することを特徴とする請求項1ないし請求項
6のうちいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記外部装置は、前記レンズ装置が装着されているカメラ装置、前記レンズ装置を操作する操作装置、前記レンズ装置を介して得られた画像データを処理する画像処理装置、前記レンズ装置とは異なるレンズ装置のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項
2に記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記記憶部は、前記基準位置を記憶することを特徴とする請求項1ないし請求項
8のうちいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項
9のうちいずれか1項に記載のレンズ装置と、
前記レンズ装置により形成された像を撮る撮像素子と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置および撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビカメラ等の撮像装置におけるレンズ装置は、フランジバック(バックフォーカス)を調整するための操作部を備えている。レンズ装置のフランジバックは、レンズ装置を装着するカメラ装置や、レンズ装置の置かれた環境(温度等)によって調整を要する。そのため、レンズ装置は、フランジバックが未調整の場合、フォーカスレンズをどれだけ操作しても特定の被写体に合焦できない場合がある。そうならないために、ユーザは、レンズ装置とカメラ装置との組合せにおいて、フランジバックを正確に調整しておく必要がある。
【0003】
特許文献1は、フランジバックの調整のために、映像信号の評価値を表示することを開示している。そのような構成は、フランジバック調整を正確かつ容易に行うことを可能としている。また、特許文献2は、フランジバックの調整のために、フォーカスレンズの位置とフォーカス評価値との関係を表示し、フランジバックの再調整や終了を促すことを開示している。そのような構成は、フランジバック調整を正確かつ容易に行うことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-006398号公報
【文献】特許4810292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レンズ装置によっては、フランジバックを調整するためのレンズ群(調整レンズ群ともいう)に対する駆動部や位置検出部を備え、フランジバックを電動で調整可能なものもある。さらに、レンズ装置とカメラ装置との間の通信等を介することにより、上述の操作部を介することなく、撮像装置から離れた遠隔地からのフランジバック調整が可能なものも構成しうる。また、調整により得られたフランジバックをレンズ装置の電源起動後に迅速に再現するためには、当該フランジバックに対応するレンズ群の位置を記憶しておくのがよい。そうしておくことにより、フランジバックを上述の操作部での操作により変更した場合においても、遠隔地からの操作(リモート操作)により変更した場合においても、フランジバックを容易に復元することができる。
【0006】
ここで、フランジバックは、調整レンズ群以外の光学素子の状態(レンズ群の位置等)や環境要因により、ずれが生じうる。当該ずれの要因には、ズームレンズ群やフォーカスレンズ群の位置や、絞りの位置(開口度)、温度、気圧等がある。当該ずれの補償には、各要因に係る状態量に対してフランジバックの調整に係る補正量を予め記憶しておけばよいと考えられる。ところが、当該補正量に基づいて調整レンズ群を駆動しても、想定したフランジバックを再現できないことがある。このことを、
図11を参照して説明する。ここで、
図11は、課題を説明するための図である。同図は、当該ずれの要因をズームレンズ群の位置とした場合の調整レンズ群の位置1001・1003と、ズームレンズ群の位置1002・1004とを示している。ズームレンズ群の位置1002に対してフランジバックがずれない調整レンズ群の位置は1001であるものとする。また、ズームレンズ群の位置1004に対してフランジバックがずれない調整レンズ群の位置は1003であるものとする。ここで、ズームレンズ群が1004に位置する状態でレンズ装置の電源が起動した場合を考える。この場合において、調整レンズ群を位置1001に駆動しても、フランジバックはずれてしまう。位置1001が補正量に係る基準位置でない場合は、位置1001からの補正量に基づいて調整レンズ群を駆動しても、位置1003には位置せず、フランジバックはずれてしまう。
【0007】
また、調整レンズ群の位置を予め記憶しておき、当該記憶位置をスイッチ操作等により再現(再生)する機能(いわゆるショット機能)を考える。当該機能により、調整レンズ群を位置1001に駆動した場合は、ズームレンズ群の位置が1002ならばフランジバックはずれないが、ズームレンズ群の位置が1004ならば、フランジバックはずれてしまう。
【0008】
また、テレビカメラでの撮影においては、フォーカスレンズ群よりもフォーカス敏感度の高い調整レンズ群を駆動することで、意図的に被写体からピントを外した撮影を行うことがある。当該撮影においては、映像効果(ぼかし効果)のために、ピントが合った被写体から徐々にピントをずらしていく操作や、その逆の操作を行いうる。当該操作は、専用の操作部材を用いて行い得るものであり、ショット機能でも行いうる。この場合も、ズームレンズ群の位置に依ってピントのずれ量(ぼかし量)が変化してしまい、意図した映像を再現できないこととなりうる。
【0009】
以上のようなフランジバックのずれは、ズームレンズ群の位置の変化に限らず、他の光学素子の状態の変化や環境要因の変化によっても起こり得る。よって、調整レンズ群は、特定のフランジバックを再現するためには、種々の要因に依存した補正量に基づいて駆動する必要がある。本発明は、例えば、フランジバックの再現性の点で有利なレンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの側面は、フランジバックを調整するための調整レンズ群と、前記調整レンズ群を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、記憶部とを有するレンズ装置であって、前記記憶部は、前記レンズ装置に関する第1状態量での前記調整レンズ群の基準位置に対する補正量と、前記レンズ装置に関する各状態量との関係を記憶し、前記制御部は、前記基準位置と、前記レンズ装置に関する第2状態量と、前記記憶部が記憶している前記関係とに基づいて、前記駆動部を制御するための制御信号を生成し、前記制御部は、前記調整レンズ群の位置に関する情報を外部装置に出力する場合、該情報は、前記基準位置に関する情報とし、前記外部装置から前記調整レンズ群の位置に関する指令を入力された場合、該指令を、前記第2状態量と前記関係とに基づいて補正することを特徴とするレンズ装置である。また、本発明の一つの側面は、フランジバックを調整するための調整レンズ群と、前記調整レンズ群を駆動する駆動部と、前記駆動部を制御する制御部と、記憶部とを有するレンズ装置であって、前記記憶部は、前記レンズ装置に関する第1状態量での前記調整レンズ群の基準位置に対する補正量と、前記レンズ装置に関する各状態量との関係を記憶し、前記制御部は、前記基準位置と、前記レンズ装置に関する第2状態量と、前記記憶部が記憶している前記関係とに基づいて、前記駆動部を制御するための制御信号を生成し、前記制御部は、前記調整レンズ群の位置に関する情報を外部装置に出力する場合、該情報は、前記外部装置によって異なる情報とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、フランジバックの再現性の点で有利なレンズ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係るレンズ装置の構成例を示す図
【
図4】調整レンズ群とズームレンズ群との間の位置関係を例示する図
【
図7】調整レンズ群とズームレンズ群との間の位置関係を例示する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、実施形態を説明するための全図を通して、原則として(断りのない限り)、同一の部材等には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0014】
〔実施形態1〕
以下、
図1ないし
図4を参照して、実施形態1に係るレンズ装置を説明する。
図1は、実施形態1に係るレンズ装置の構成例を示す図である。なお、同図は、レンズ装置100のみならず、レンズ装置100が装着されたカメラ装置200と、レンズ装置100とを含む撮像装置をも示している。ここで、レンズ装置100について説明する。レンズ装置100は、フランジバック(バックフォーカス)を調整するためのレンズ群101(調整レンズ群ともいう)、駆動部102、検出部103、ズームレンズ群104、記憶部106、制御部107、通信部110を含んで構成されている。
【0015】
調整レンズ群101は、レンズ装置100のフランジバック(バックフォーカス)を調整するために駆動するレンズ群である。調整レンズ群101は、上述したぼかし効果(ぼかし機能)のためにも駆動する。また、調整レンズ群101は、レンズ装置100に接続した後述の操作装置300を操作することによっても駆動することができる。また、レンズ装置100に含まれている操作部を操作することによっても駆動することができる。
【0016】
駆動部102は、調整レンズ群101を駆動するものであり、例えば、DCモータを含んで構成されうる。検出部103は、調整レンズ群101の位置を検出するものであり、例えば、エンコーダを含んで構成されうる。ズームレンズ群104は、焦点距離を変化させるためのレンズ群であり、検出部105は、ズームレンズ群104の位置を検出するものであり、例えば、エンコーダを含んで構成されうる。本実施形態においては、ズームレンズ群104の位置が変化すると、フランジバック(バックフォーカス)が変化するものとする。
【0017】
記憶部106は、調整レンズ群101の移動によりフランジバックを調整するためのデータ(調整量または補正量)を記憶するものであって、例えば、EEPROM等の不揮発性メモリを含んで構成されうる。また、記憶部106は、フランジバックを調整した場合の調整レンズ群の位置を記憶するものでもある。制御部107は、後述の第1情報生成部108および第2情報生成部109の機能を有するものであり、例えば、CPU等のプロセッサを含んで構成されうる。第1情報生成部108は、調整レンズ群101を駆動するための調整レンズ群101の補正量(移動量)の情報を生成する。検出部105からの位置情報と、記憶部106内のデータとに基づいて、補正量を取得しうる。取得した補正量は、第2情報生成部109に出力される。第2情報生成部109は、調整レンズ群の基準位置の情報を生成する。当該基準位置は、上述の補正量によって補正されていない、レンズ装置100の基準状態(第1状態ともいう)での調整レンズ群の位置である。第2情報生成部109は、通信部110や操作装置300から入力された指令や、第1情報生成部108から入力された補正量の情報に基づいて、調整レンズ群の基準位置の情報を生成する。制御部の詳細は後述する。
【0018】
制御部107は、検出部103および検出部105からの位置情報を入力される。これらの位置情報や、第1情報生成部108で生成した補正量の情報に基づいて、調整レンズ群101を駆動するための制御信号を生成し、生成した制御信号に基づく駆動信号を駆動部102に出力する。また、フランジバックを調整した場合には、第2情報生成部109が生成した調整レンズ群の基準位置を記憶部106に記憶させる。通信部110は、カメラ装置200と通信する。カメラ装置200からの指令や要求を受信すると、当該指令や要求を制御部107に出力する。また、通信部110は、当該指令や要求への応答としての制御部107からの情報をカメラ装置200へ送信する。
【0019】
カメラ装置200は、レンズ装置100と通信する通信部201を有し、通信部201によって、レンズ装置100に対して指令や要求等に関する情報を送信し、また、当該指令や要求等への応答等に関する情報をレンズ装置100から受信する。
【0020】
操作装置300は、レンズ装置100に接続され、本実施形態においては、上述のぼかし機能をオンまたはオフに切り替えたり、当該ぼかし機能がオンである場合に、ぼかし機能の操作(ぼかし量の調整)を行ったりするためのものとする。なお、当該操作は、アナログ信号の出力(パラレル通信)によっても可能であり、通信部110を介したシリアル通信によっても可能である。
【0021】
ここで、
図2を参照して、調整レンズ群の基準位置を生成する方法について説明する。
図2は、制御系の構成例を示す図である。同図は、制御部107による、調整レンズ群の駆動に係る制御信号の生成、およびフランジバック調整により得られた調整レンズ群の基準位置の情報の生成に係る構成例を示している。当該制御信号は、例えば、次の(1)式により得られる。
制御信号(BF_Ctl_Fin)
=指令(BF_Ctl+BF_Cam_Ctl)+補正量(α) ・・・(1)
【0022】
なお、BF_Ctlは、操作装置300からの指令であり、BF_Cam_Ctlは、カメラ装置200からの指令である。
【0023】
また、駆動信号は、例えば、制御信号(BF_Ctl_Fin)と、調整レンズ群の位置(Fol)と、制御ゲイン(β)とを用いて、次の(2)式により得られる。
駆動信号(Ctl_Out)
=(制御信号(BF_Ctl_Fin)-調整レンズ群の位置(Fol))
×制御ゲイン(β) ・・・(2)
【0024】
また、フランジバック調整により得られた調整レンズ群の基準位置は、例えば、次の(3)式により得られる。
基準位置(MemPosi)
=制御信号(BF_Ctl_Fin)-補正量(α) ・・・(3)
【0025】
制御部107(第2情報生成部109)は、フランジバック調整によって得られた調整レンズ群の基準位置の情報を記憶部106に記憶させる場合には、(3)式で得られる基準位置の情報を生成する。また、レンズ装置を起動した(レンズ装置に電源を投入した)場合に調整レンズ群を駆動するための制御信号は、例えば、次の(4)式により得られる。
制御信号(BF_Ctl_Fin)
=基準位置(MemPosi)+補正量(α) ・・・(4)
【0026】
ここで、
図3は、本実施形態に係る処理の流れを例示する図である。当該処理は、制御部107によって行われる。同図において、まず、レンズ装置100が電源を投入されて起動すると、ステップS301に処理が進められる。ステップS301では、記憶部106から調整レンズ群の基準位置が読み出され、ステップS302に処理が進められる。ステップS302では、ステップS301で読み出された調整レンズ群の基準位置が正常であるかを判定し、正常であればステップS303に処理が進められ、そうでなければ、処理が終了とされる。なお、処理が終了とされるのに替えて、基準位置の入力または変更を促すような処理が行われてもよい。
【0027】
ステップS303では、検出部105からズームレンズ群の位置の情報を取得し、ステップS304に処理が進められる。ステップS304では、ステップS303で取得されたズームレンズ群の位置が正常かを判定し、正常であればステップS305に処理が進められ、そうでなければ、ステップS306に処理が進められる。ステップS305では、ステップS303で取得されたズームレンズ群の位置に基づいて、記憶部106に記憶された補正量の情報を読み出し、ステップS307に処理が進められる。ステップS306では、エラー処理が行われ、処理が終了とされる。当該エラー処理は、例えば、ズームレンズ群の位置が異常である旨を表示デバイスに出力する処理である。ステップS307では、(4)式で得られる制御信号を生成し、ステップS308に処理が進められる。ステップS308では、(2)式で得られる駆動信号を生成し、処理が終了とされる。
【0028】
つづいて、
図4を参照して、本実施形態により得られる効果を説明する。ここで、
図4は、調整レンズ群とズームレンズ群との間の位置関係を例示する図である。同図において、40は、調整レンズ群の基準位置、41は、フランジバックの調整により得られた調整レンズ群の位置、42は、当該調整のときのズームレンズ群の位置を示している。また、ズームレンズ群が44に位置する場合は、調整レンズ群の基準位置に対する補正量は、ズームレンズ群が42に位置する場合とは異なるため、調整レンズ群が43に位置すると、フランジバックが適正(許容範囲内)となるものとする。ここで、フランジバックが調整された状態でレンズ装置100の電源がオフにされ、その後に当該電源がオンにされたときに、ズームレンズ群が44に位置し、調整レンズ群が41に位置する場合を考える。この場合、
図3に示した処理の流れに従えば、調整レンズ群の基準位置40に対して、電源がオンになったときのズームレンズ群の位置に基づく補正量が適用され、調整レンズ群が43に位置するように駆動されることになる。これにより、レンズ装置の起動後ただちにフランジバックが調整された状態にすることができる。なお、本実施形態を適用しなかった場合は、レンズ装置を起動すると、調整レンズ群は、基準位置40でない位置41に対して補正量が適用されて、フランジバックが適正でなくなる。また、補正量を適用しない場合には、ズームレンズ群の位置の変更により、フランジバックがずれてしまう。
【0029】
以上のように、記憶部は、レンズ装置に関する第1状態量での調整レンズ群の基準位置に対する補正量と、レンズ装置に関する各状態量との関係を記憶している。また、制御部は、当該基準位置と、レンズ装置に関する第2状態量と、記憶部が記憶している当該関係とに基づいて、駆動部を制御するための制御信号を生成する。このような構成により、レンズ装置を起動した場合に、フランジバックを調整された状態の再現が可能となり、もって、本実施形態によれば、例えば、フランジバックの再現性の点で有利なレンズ装置を提供することができる。
【0030】
なお、フランジバックの調整は、特定(許容範囲内)の条件(上記第1状態量に相当)のもとで以下の手順により行いうる。
【0031】
(1)エクステンダーレンズ群を抜去し(または1倍のものとし)、絞りを開放にする。
(2)ズームレンズ群をテレ端に移動する。
(3)フォーカスレンズ群を移動して特定の距離にある物体にピントを合わせる。
(4)ズームレンズ群をワイド端に移動する。
(5)調整レンズ群を移動して上記物体にピントを合わせる。
(6)以上の(2)ないし(5)を2回ないし3回繰り返す。
(7)調整レンズ群の位置を基準位置として記憶部に記憶させる。
【0032】
以上の構成では、フランジバックに関係する状態量(各状態量)は、ズームレンズ群の位置としたが、それには限定されない。当該状態量は、それに替えて又は加えて、例えば、フォーカスレンズ群の位置(物体距離)や開口絞りの開口量、エクステンダーレンズ群の挿抜または倍率、レンズ装置の置かれた環境(温度や気圧、高度等)のうちの少なくとも1つに関するものを含みうる。そのような状態量は、レンズ装置が検出してもよいし、その情報をレンズ装置の外部からレンズ装置が取得してもよい。
【0033】
また、
図2で示したように、以上の構成では、制御部に対する指令は、操作装置からの指令と、カメラ装置からの指令とを加算して得られるものとしたが、それには限定されない。当該指令は、例えば、レンズ装置に入力される複数の指令の中から少なくとも1つを選択して得られるものとしてもよい。
【0034】
また、以上の構成では、調整レンズ群は、フランジバック(バックフォーカス)を調整するためのレンズ群としたが、それには限定されない。当該調整レンズ群は、レンズ装置に係る状態量の変化による当該レンズ装置の特性の変化を、その位置の変化により補償できるようなものであれば、他のレンズ群であってもよい。
【0035】
〔実施形態2〕
図1および
図5ないし
図7を参照して、実施形態2に係るレンズ装置(撮像装置)を説明する。本実施形態のレンズ装置は、ショット機能を実行する点で実施形態1におけるものとは異なる。ショット機能は、レンズ装置における特定のレンズ群(ズームレンズ群やフォーカスレンズ群等)の位置の情報を、操作装置300等における記憶部に予め記憶させておく機能である。そして、特定のスイッチ操作により、当該記憶させておいた位置を再生する(当該位置へレンズ群を駆動する)ように制御部にショット指令を出す機能である。なお、ショット機能を備えるのは操作装置300でなくてもよい。例えば、ショット機能の対象となるのがフランジバックを調整するためのレンズ群である場合、ショット機能を備えるのはカメラ装置としうる。この場合、従来のショット機能では、レンズ装置から出力されるレンズ群の位置の情報を記憶するため、当該情報は、調整レンズ群の基準位置の情報とする必要がある。以下、ショット機能を実行するのがカメラ装置である場合について説明する。
【0036】
図5を参照して、カメラ装置に送信する調整レンズ群の位置の情報を生成する態様について説明する。ここで、
図5は、実施形態2に係る制御系の構成例を示す図である。同図において、制御部における調整レンズ群の駆動に係る制御信号は、次の(5)式により得られる。
制御信号(BF_Ctl_Fin)
=ショット指令(BF_Ctl_Sht)+補正量(α) ・・・(5)
【0037】
駆動部に対する駆動信号は、制御信号(BF_Ctl_Fin)と、調整レンズ群の位置(Fol)と、制御ゲイン(β)とを用いて、実施形態1における(2)式により得られる。
【0038】
また、カメラ装置に出力される調整レンズ群の位置(外部出力位置)は、次の(6)式により得られる。
外部出力位置(OutFol)
=制御信号(BF_Ctl_Fin)-補正量(α) ・・・(6)
【0039】
(6)式の右辺は、(3)式の右辺と同じであるため、外部出力位置は、第2情報生成部109で得られる基準位置として得ることができる。カメラ装置は、ショット機能に係る調整レンズ群の位置を記憶するのに、外部出力位置(OutFol)を記憶することになる。このため、カメラ装置からのショット指令(BF_Ctl_Sht)は、ある時点でレンズ装置が出力した外部出力位置(OutFol)に対応することになる。
【0040】
図6を参照して、駆動部に対する駆動信号を生成する処理について説明する。ここで、
図6は、実施形態2に係る処理の流れを例示する図である。当該処理は、ショット指令が入力された場合に、制御部107により行われる。ステップS303ないしステップS306の処理は、
図3におけるものと同様である。ステップS305の処理につづいて、ステップS601に処理が進められる。ステップS601では、(5)式により制御信号を生成し、ステップS308に処理が進められる。ステップS308の処理は、
図3におけるものと同様であり、当該処理の後、すべての処理が終了とされる。
【0041】
つづいて、
図7を参照して、本実施形態により得られる効果を説明する。ここで、
図7は、調整レンズ群とズームレンズ群との間の位置関係を例示する図である。同図において、70は、調整レンズ群の基準位置、71は、ズームレンズ群が72に位置する場合の補正量での補正により得られる調整レンズ群の位置、73は、ズームレンズ群が74に位置する場合の補正量での補正により得られる調整レンズ群の位置である。
【0042】
図7の(a)において、ショット機能におけるショット指令が位置70に対応し、ズームレンズ群の位置が72で、調整レンズ群の位置が71となっている。ここで、ズームレンズ群の位置を74に変更すると、調整レンズ群の位置は、補正量での補正により得られる位置73となり、フランジバックは適正(許容範囲内)となる。なお、本実施形態を適用しなかった場合は、ショット機能による補正レンズ群の記憶位置および再生位置が71となり、ズームレンズ群の位置に基づく補正量だけ位置71を補正しても、フランジバックはずれたものとなりうる。
【0043】
図7の(b)において、ショット機能におけるショット指令が位置70に対応し、カメラ装置を交換したために、位置70ではフランジバックが合わなくなった場合を考える。ここで、調整レンズ群を位置70’に移動してフランジバックを合わせ、カメラ装置に予め記憶しておくショット機能に係る位置を70’にしたとする。そうした場合、ズームレンズ群が72に位置するなら、調整レンズ群は71’に位置し、ズームレンズ群が74に位置するなら、調整レンズ群が73’に位置するため、フランジバックが適正な状態を維持できる。なお、本実施形態を適用しなかった場合は、ショット機能による補正レンズ群の記憶位置および再生位置は71となり、ズームレンズ群の位置に基づく補正量だけ位置71を補正しても、フランジバックはずれたものとなりうる。
【0044】
以上のように、記憶部は、レンズ装置に関する第1状態量での調整レンズ群の基準位置に対する補正量と、レンズ装置に関する各状態量との関係を記憶している。また、制御部は、当該基準位置と、レンズ装置に関する第2状態量と、記憶部が記憶している当該関係とに基づいて、駆動部を制御するための制御信号を生成する。また、制御部は、調整レンズ群の位置に関する情報を外部装置に出力する場合、当該情報は、当該基準位置に関する情報とし、外部装置から調整レンズ群の位置に関する指令を入力された場合、当該指令は、当該第2状態量と当該関係とに基づいて補正する。このような構成により、ショット機能を実行した場合に、フランジバックを調整された状態の再現が可能となり、もって、本実施形態によれば、例えば、フランジバックの再現性の点で有利なレンズ装置を提供することができる。
【0045】
なお、上述の外部出力位置の出力先(送信先)としての外部装置は、カメラ装置に限られず、操作装置300であってもよいし、調整レンズ群を操作可能な他の装置であってもよい。また、当該外部装置は、レンズ装置100が装着されているカメラ装置、レンズ装置100を操作する操作装置、レンズ装置100を介して得られた画像データを処理する画像処理装置、レンズ装置100とは異なるレンズ装置のうちの少なくとも1つを含みうる。また、本実施形態の構成を適用するのは、ショット機能には限られず、レンズ群の駆動範囲を制限するために当該駆動範囲の端に係るレンズ群の位置を記憶する、外部装置における機能(いわゆるトラッキング機能)であってもよい。
【0046】
〔実施形態3〕
図1および
図8ないし
図9を参照して、実施形態3に係るレンズ装置(撮像装置)を説明する。本実施形態は、操作装置300がレンズ装置100のぼかし効果を操作する機能(ぼかし機能ともいう)を有する点で以上の実施形態とは異なる。ぼかし機能は、調整レンズ群の位置に対してぼかし量を加算して得られる位置を指令とする機能である。ここで、当該指令を、フランジバック調整に係る補正量での補正により得られた指令にしてしまうと、ユーザにとって所望のぼかし効果を得られないことになりうる。
【0047】
図8は、実施形態3に係る制御系の構成例を示す図である。制御部107には、操作装置300からぼかし指令が入力される。同図において、ぼかし機能がオンの場合、制御部107における調整レンズ群の駆動に係る制御信号は、次の(7)式により得られる。
制御信号(M_Ctl_Fin)
=指令(BF_Ctl+BF_Cam_Ctl)
+補正量(α)
+ぼかし量(M_Ctl) ・・・(7)
【0048】
駆動信号は、例えば、制御信号(M_Ctl_Fin)と、調整レンズ群の位置(Fol)と、制御ゲイン(β)とを用いて、次の(8)式により得られる。
駆動信号(Ctl_Out)
=(制御信号(M_Ctl_Fin)
-調整レンズ群の位置(Fol))
×制御ゲイン(β) ・・・(8)
【0049】
また、調整レンズ群によるぼかし量での変更により得られた調整レンズ群に係る外部出力位置2は、次の(9)式により得られる。例えば、ぼかし機能を有する操作装置に対しては、この外部出力位置2が必要である。
外部出力位置2(OutMFol)
=制御信号(M_Ctl_Fin)-補正量(α) ・・・(9)
【0050】
また、調整レンズ群によるぼかし量を考慮する必要のない操作機能のための調整レンズ群に係る外部出力位置1は、次の(10)式により得られる。例えば、フランジバックを調整する操作機能に対しては、この外部出力位置1が必要である。
外部出力位置1(OutBFFol)
=制御信号(M_Ctl_Fin)
-ぼかし量(M_Ctl)
-補正量(α) ・・・(10)
【0051】
つづいて、
図9を参照して、レンズ装置100が外部出力位置を要求された場合における処理について説明する。ここで、
図9は、本実施形態に係る処理の流れを例示する図である。当該処理は、制御部107により行われる。まず、外部装置(操作装置300)から外部出力位置(調整レンズ群の位置)を要求されると、ステップS901に処理が進められる。ステップS901では、第2情報生成部109が生成する調整レンズ群の基準位置の情報を取得し、ステップS902に処理が進められる。ステップS902では、ステップS901で取得した基準位置が正常であるかを判定し、正常であれば、ステップS903に処理が進められ、そうでなければ、処理が終了とされる。ステップS903では、第1情報生成部108が生成した補正量の情報とぼかし量(ぼかし機能オフの場合はゼロ)の情報とを取得し、ステップS904に処理が進められる。
【0052】
ステップS904では、ステップS901で取得した基準位置の情報と、ステップS903で取得した情報とに基づいて、外部出力位置の情報を得、ステップS905に処理が進められる。外部出力位置2は、(9)式により、外部出力位置1は、(10)式により得られる。なお、外部出力位置1および外部出力位置2は、操作装置300(外部装置)の種別や状態(例えば、ぼかし機能のオン状態またはオフ状態)、要求により、選択的に得るようにしてもよい。ステップS905では、ステップS904で取得した外部出力位置の情報を通信部110に出力(送信)させ、処理が終了とされる。なお、外部出力位置1および外部出力位置2は、操作装置300(外部装置)の種別や状態(例えば、ぼかし機能のオン状態またはオフ状態)、要求により、選択的に出力されうる。
【0053】
以上のように、記憶部は、レンズ装置に関する第1状態量での調整レンズ群の基準位置に対する補正量と、レンズ装置に関する各状態量との関係を記憶している。また、制御部は、当該基準位置と、レンズ装置に関する第2状態量と、記憶部が記憶している当該関係とに基づいて、駆動部を制御するための制御信号を生成する。また、制御部は、調整レンズ群の位置に関する情報を外部装置に出力する場合、当該情報は、当該基準位置に関する情報とし、外部装置から調整レンズ群の位置に関する指令を入力された場合、当該指令は、当該第2状態量と当該関係とに基づいて補正する。制御部は、調整レンズ群を駆動させてレンズ装置により形成される像のぼかし量を操作する機能を外部装置が有する場合、ぼかし量による変更により得られた調整レンズ群の位置に関する情報を外部装置に出力する。制御部は、当該ぼかし量を操作する機能を外部装置が有しない場合、当該ぼかし量により調整レンズ群の位置が変更されていても、当該変更がされなかった場合の調整レンズ群の位置に関する情報を外部装置に出力する。また、当該調整レンズ群の位置に関する情報は、いずれの場合も、当該補正量での補正がなされていない調整レンズ群の位置に関する情報とする。このような構成により、ぼかし機能を有する外部装置に対しても、フランジバックが調整された状態を維持するのに有利な外部出力位置の情報を出力(送信)することができる。もって、本実施形態によれば、例えば、フランジバックの再現性の点で有利なレンズ装置を提供することができる。
【0054】
なお、外部出力位置1と外部出力位置2とのうち少なくとも一方の情報に替えて、外部出力位置1と外部出力位置2とのうち一方の情報とぼかし量の情報とを外部装置(操作装置)に送信するようにしてもよい。
【0055】
〔撮像装置に係る実施形態〕
図10は、撮像装置の構成例を示す図である。当該撮像装置は、以上に例示したレンズ装置100と、当該レンズ装置によって形成された像を撮る撮像素子200a(を含むカメラ装置(撮像装置本体)200)とを有する撮像装置としうる。その場合、レンズ装置100は、カメラ装置200に対して交換可能に装着されるものであってもよいし、そうでないものであってもよい。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
100 レンズ装置
101 調整レンズ群
102 駆動部
106 記憶部
107 制御部