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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】建物ユニットの連結構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20240508BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
E04B1/348 T
E04B1/58 509A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020026684
(22)【出願日】2020-02-19
(65)【公開番号】P2021130966
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 翔太
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-214772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0215956(US,A1)
【文献】特開2009-127323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04B 1/00
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に隣り合って配置され、互いに向かい合う側面の柱が対向して配置された一対の建物ユニットと、
対向して配置された一対の前記柱の上端部及び下端部において、前記柱の開放端を水平方向に塞ぐベースプレートと、前記柱の内部を水平方向に区画するダイアフラムとの間に形成されたパネルゾーンにそれぞれ接合された一対の連結部材と、を備える建物の連結構造において、
一対の前記連結部材は、柱の延在方向から見て、一対の前記柱の軸心同士を結ぶ中心線上に形成された連結部を介して連結され、当該連結部の連結中心に対して対称をなすように配置され、各連結部材は、一対の前記柱の一方に接続されたフランジ部と、該フランジ部の水平方向の中央から他方の前記柱へ向かって延びるとともに前記中心線に沿って配置されたウエブ部と、前記延在方向の上端部及び下端部において、前記フランジ部と前記ウエブ部とを水平方向に繋ぐ一対の補強部と、を備えており、
前記連結部は一対の前記連結部材における前記ウエブ部同士を重ね合わせて接合することにより形成され
一対の前記連結部材の一方に設けられた前記補強部と、一対の前記連結部材の他方に設けられた前記補強部は、前記柱の延在方向から見て、前記中心線に対して一方側と他方側に配置されている、
建物ユニットの連結構造。
【請求項2】
一対の前記連結部材の一方に設けられた前記補強部と、一対の前記連結部材の他方に設けられた前記補強部は、前記柱の延在方向から見て、前記中心線に沿って対称をなす矩形状の領域に配置されている、
請求項1に記載の連結構造。
【請求項3】
一方の前記連結部材は、他方の前記連結部材と形状及び大きさが同一とされ、他方の前記連結部材に対して反転した姿勢で配置されており、
この状態において、柱の延在方向から見て、前記中心線に対して一方側に一方の前記連結部材の前記補強部が配置され、前記中心線に対して他方側に前記他方の連結部材の前記補強部が配置されている、
請求項1又は請求項2に記載の建物ユニットの連結構造。
【請求項4】
一対の前記建物ユニットは、互いに向かい合う前記側面の四隅を構成する前記柱の上端部及び下端部同士が前記一対の連結部材を介して連結されており、
柱の延在方向から見て、一方の前記建物ユニットに接合された前記連結部材の前記ウエブ部は前記中心線に対して一方側に配置され、他方の前記建物ユニットに接合された前記連結部材の前記ウエブ部は前記中心線に対して他方側に配置されている、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の建物ユニットの連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物ユニットの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、向かい合って配置された一対の建物ユニットの対向する側面に連結部材を設置し、向かい合って配置された一対の連結部材をボルト結合する構成が開示されている。これにより、向かい合って配置された一対の建物ユニットを連結することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-214772号公報
【0004】
しかしながら、上記先行技術は、連結構造の強度を高める点が考慮されていないため、改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、連結部の強度を高めることができる建物ユニットの連結構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る建物ユニットの連結構造は、水平方向に隣り合って配置され、互いに向かい合う側面の柱が対向して配置された一対の建物ユニットと、対向して配置された一対の前記柱にそれぞれ接合された一対の連結部材を備える建物の連結構造において、一対の前記連結部材は、柱の延在方向から見て、一対の前記柱の軸心同士を結ぶ中心線上に形成された連結部を介して連結され、当該連結部の連結中心に対して対称をなすように配置されている。
【0007】
第1の態様に係る建物ユニットの連結構造では、一対の建物ユニットが水平方向に隣り合って配置されており、互いに向かい合う側面の柱が対向して配置されている。また、対向して配置された一対の柱には、連結部材がそれぞれ接合されており、これら一対の連結部材同士が連結部を介して連結されている。これにより、一対の連結部材を介して一対の建物ユニットが連結される。
【0008】
ここで、一対の連結部材は、柱の延在方向から見て、一対の柱の軸心同士を結ぶ中心線上に形成された連結部を介して連結されている。また、一対の連結部材は、連結部の連結中心に対して対称をなすように配置されている。このため、柱の軸心(柱芯)の位置で建物ユニット同士を連結することができ、建物ユニット間の応力伝達が、連結部を介して効率的に行われる。これにより、連結部の強度を高めることができる。
【0009】
第2の態様に係る建物ユニットの連結構造は、第1の態様に記載の構成において、前記連結部材は、一方の前記柱に接合されたフランジ部と、前記中心線に沿って配置されたウエブ部を備えており、前記連結部は一対の前記連結部材における前記ウエブ部同士を重ね合わせて接合することにより形成されている。
【0010】
第2の態様に係る建物ユニットの連結構造において、連結部材は、柱に接合されたフランジ部と、中心線に沿って配置されたウエブ部を備えている。また、一対の連結部材は、互いのウエブ部を重ね合わせて接合することにより連結されている。これにより、簡単な構成にして、一対の建物ユニット間の連結部を中心線上に形成することができ、施工性に優れる。
【0011】
第3の態様に係る建物ユニットの連結構造は、第2の態様に記載の構成において、一方の前記建物ユニットは、他方の前記建物ユニットに片持ち支持されたキャンチユニットとされており、前記連結部材の前記フランジ部は、柱の延在方向から見て前記中心線の両側でボルト締結されることにより前記柱に接合されており、更に、前記フランジ部と前記ウエブ部の間には、前記フランジ部と前記ウエブ部とを水平方向に繋ぐ補強部が設けられている。
【0012】
第3の態様に係る建物ユニットの連結構造では、連結部材のフランジ部は、柱の延在方向から見て前記中心線の両側でボルト締結されているため、連結部材を介して柱に偏心荷重が入力されることが抑制される。また、連結部材には、フランジ部とウエブ部とを水平方向に繋ぐ補強部が設けられているため、地震時の横揺れや強風によって連結部に入力される水平力に対する耐力が高められている。これにより、一対の建物ユニットの連結部の強度を一層高めることができる。
【0013】
第4の態様に係る建物ユニットの連結構造は、第3の態様に記載の構成において、一方の前記連結部材は、他方の前記連結部材と形状及び大きさが同一とされ、他方の前記連結部材に対して反転した姿勢で配置されており、この状態において、柱の延在方向から見て、前記中心線に対して一方側に一方の前記連結部材の前記補強部が配置され、前記中心線に対して他方側に前記他方の連結部材の前記補強部が配置されている。
【0014】
第4の態様に係る建物ユニットの連結構造では、形状及び大きさが同一に形成された一対の連結部材を互いに反転させた姿勢で配置することにより、一対の建物ユニットの柱にそれぞれ接合させることができる。また、この状態では、一対の連結部材の補強部が、前記中心線に対して両側にそれぞれ配置される構成となっている。このように、部材の共通化を図りつつ、最小限の構成で連結部の強度を効率的に高めることができるため経済性に優れる。
【0015】
第5の態様に係る建物ユニットの連結構造は、第2の態様から第4の態様の何れか1態様に記載の構成において、一対の前記建物ユニットは、互いに向かい合う前記側面の四隅を構成する前記柱の上端部及び下端部同士が前記一対の連結部材を介して連結されており、柱の延在方向から見て、一方の前記建物ユニットに接合された前記連結部材の前記ウエブ部は前記中心線に対して一方側に配置され、他方の前記建物ユニットに接合された前記連結部材の前記ウエブ部は前記中心線に対して他方側に配置されている。
【0016】
第5の態様に係る建物ユニットの連結構造では、一対の建物ユニットの向かい合う側面の四隅が一対の連結部材を介して接合されている、ここで、一方の建物ユニットに接合された連結部材のウエブ部は中心線に対して一方側に配置され、他方の建物ユニットではウエブ部が中心線に対して他方側に配置されている。このため、建物ユニット同士を連結させる際に、予め連結部材を柱に接合し、一方の建物ユニットを中心線に対して一方側から、他方の建物ユニットへ近づけて四隅の連結部材の位置決めを行うことが可能となる。これにより、一対の建物ユニットを容易に連結させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、第1の態様に係る建物ユニットの連結構造によれば、一対の建物ユニットの連結部の強度を高めることができるという優れた効果を有する。
【0018】
第2の態様に係る建物ユニットの連結構造によれば、簡単な構成にして、一対の建物ユニット連結部を中心線上に形成することができ、施工性に優れるという優れた効果を有する。
【0019】
第3の態様に係る建物ユニットの連結構造によれば、一対の建物ユニットの連結部の強度を一層高めることができるという優れた効果を有する。
【0020】
第4の態様に係る建物ユニットの連結構造によれば、部材の共通化を図りつつ、最小限の構成で連結部の強度を効率的に高めることができるため経済性に優れるという優れた効果を有する。
【0021】
第5の態様に係る建物ユニットの連結構造によれば一対の建物ユニットを容易に連結させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る建物ユニットの連結構造が適用された建物の斜視図である。
図2図1に示す建物の部分側面図である。
図3】第1実施形態に係る連結部の拡大側面図である。
図4図3の4F-4F線に沿って切断した状態を示す連結部の拡大断面図である。
図5図2に示す連結部を分解して示す分解斜視図である。
図6】一対の連結部材を連結させる方法を説明するための模式図である。
図7】第2実施形態に係る建物ユニットの連結構造が適用された建物を示す図4に対応する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、図1図8を用いて、第1実施形態に係る建物ユニットの連結構造が適用された建物10について説明する。
【0024】
(全体構成)
図1に示されるように、建物10は、ユニット建物とされており、図示しない基礎の上に複数の建物ユニットで構成された建物本体12を有している。この建物本体12の上階部分(二階部分)は、下階部分(1階部分)の建物ユニット14の上に組付けられた建物ユニット16と、建物ユニット16に連結されたキャンチユニット18によって構成されている。キャンチユニット18は、建物ユニット16に片持ち支持されており、建物ユニット16に対して水平方向に隣り合って配置されている。なお、建物ユニット16とキャンチユニット18が、本発明における「一対の建物ユニット」に相当する。
【0025】
建物ユニット16は、四隅に立設する4本の柱20と、これらの柱20を連結する複数の梁22によって箱状に形成された躯体フレームを構成している。4本の柱20の上端部を連結する梁22は、建物ユニット16の天井梁を構成している。また、4本の柱20の下端部を連結する梁22は、建物ユニット16の床梁を構成している。本実施形態では、柱20は、角鋼管で構成されている。また、梁22は、鉄製のチャンネル鋼で構成されている。
【0026】
図2及び図3に示されるように、梁22の一端が接合された柱20の上端部20A及び下端部20Bは、所謂パネルゾーンと称される領域である。このパネルゾーンは、柱20と梁22の接合部の強度を高めるために柱20の剛性が高められた剛性領域とされている。より具体的に説明すると、パネルゾーンは、柱20の開放端を塞ぐように接合されたベースプレート20Cと、柱20の内部に溶接されたダイアフラム20Dの間に形成された領域とされている(図3参照)。ベースプレート20Cは、柱の延在方向を板厚方向とする金属製の板状部材である。また、ダイアフラム20Dは、柱の延在方向を板厚方向とする金属製の板状部材であり、梁22のフランジ部(符号省略)の高さに合わせて柱20の内部に配置されている。ダイアフラム20Dは、柱20の内部を水平方向に区画するように溶接されており、柱20の側面に外側から溶接された梁22のフランジ部と一体化し、柱20の剛性を高めている。
【0027】
本実施形態では、建物ユニット16の桁面の両側部に2本の柱20が配置されている。また、2本の柱20の上端部20A及び下端部20Bに後述する一対の連結部材30の一方が接合されている。つまり、建物ユニット16は、桁面の四隅に形成されたパネルゾーンでキャンチユニット18を支持し、連結部材30を介して入力される外力による柱20の座屈等を抑制している。
【0028】
一方、キャンチユニット18は、建物ユニット16と同様、4本の柱24と、当該柱24を連結する複数の梁26によって箱状に形成された躯体フレームを構成している。4本の柱24の上端部を連結する梁26は、キャンチユニット18の天井梁を構成している。また、4本の柱24の下端部を連結する梁26は、キャンチユニット18の床梁を構成している。本実施形態では、柱24は、柱20と形状及び大きさが同一の角鋼管で構成されている。また、梁26は、鉄製のチャンネル鋼で構成されている。更に、柱24の上端部24A及び下端部24Bは、柱20と同様にベースプレート24Cとダイアフラム24Dが配置されたパネルゾーンとされている。
【0029】
キャンチユニット18は、建物ユニット16の桁面と向かい合って配置された桁面を備えている。また、当該桁面の両側部には、2本の柱24が配置されている。2本の柱24は、建物ユニット16の桁面に配置された2本の柱20とそれぞれ対向して配置されており、これら柱24の上端部24A及び下端部24Bに、後述する一対の連結部材30の他方が接合されている。つまり、キャンチユニット18は、桁面の四隅に形成されたパネルゾーンで建物ユニット16に連結されている。
【0030】
(一対の連結部材)
以下、図4及び図5を用いて建物ユニット16とキャンチユニット18を連結する一対の連結部材30について詳細に説明する。
【0031】
これらの図に示されるように、一対の連結部材30は、対向して配置された柱20の対向面20Eと、柱24の対向面24Eにそれぞれ接合されている。以下、一対の連結部材30を区別するときは、柱20に接合された連結部材30を連結部材30Aと称し、柱24に接合された連結部材30を連結部材30Bと称する。
【0032】
柱20に接合された連結部材30Aは、柱20に接合されるフランジ部32と、フランジ部32から柱24に向かって延在し、他方の連結部材30Bと連結するウエブ部34を備えている。また、フランジ部32とウエブ部34は、それぞれ別体で構成された第1ブラケット40と第2ブラケット50により構成されている。第1ブラケット40と第2ブラケット50は隣り合わせに配置されることで、一組のブラケットを構成する。これらが組付けられた状態を柱20の延在方向から見ると、略T字形状をなす構成とされており、柱20の対向面20Eに沿って配置される部位がフランジ部32とされ、対向面20Eに対して略垂直な方向に延在する部位がウエブ部34とされている。
【0033】
第1ブラケット40は、金属製の板状部材を直角に折り曲げて形成されたL型のブラケットとされており、第1フランジ部42と第1ウエブ部44によって構成されている。第1フランジ部42は、柱20の対向面20Eに沿って配置され、フランジ部32の一部を構成している。この第1フランジ部42には、第1フランジ部42を板厚方向に貫通する2つの貫通孔46が設けられている。2つの貫通孔46は、柱の延在方向に沿って上下に配置されており、柱20の対向面20Eに形成された貫通孔(符号省略)と同軸的に配置されている。これら2つの貫通孔46には締結用のボルト60が貫通しており、ボルト60の先端は、柱20の内部でナット62と螺合している。これにより、第1ブラケット40が柱20に接合されている。なお、柱20の内部には補強部材64が配置されており、補強部材64は、ボルト60によって第1ブラケット40と共締めされている。補強部材64は、金属製の板状部材で構成され、対向面20Eの裏面に溶接されている。
【0034】
第1ブラケット40の第1ウエブ部44は、柱20の対向面20Eに対し略垂直な方向に延在し、ウエブ部34の一部を構成している。第1ウエブ部44には、第1ウエブ部44を板厚方向に貫通する3つの連結孔48が設けられている。3つの連結孔48は、柱の延在方向に沿って配置されており、後述する第2ブラケット50側の連結孔58と同軸的に配置されている。
【0035】
更に、第1ブラケット40には、柱の延在方向の上端部及び下端部に補強部70が設けられている。補強部70は、第1フランジ部42と第1ウエブ部44を水平方向に繋ぐスチフナによって構成されている。第1ブラケット40に補強部70を設けることで、連結部材30の水平力に対する耐力を高める構成となっている。
【0036】
第2ブラケット50は、第1ブラケット40と同様に、金属製の板状部材を直角に折り曲げて形成されたL型のブラケットとされ、第2フランジ部52と第2ウエブ部54を備えている。第2フランジ部52は、柱20の対向面20Eに沿って配置され、フランジ部32の他の一部を構成している。この第2フランジ部52には、第2フランジ部52を板厚方向に貫通する2つの貫通孔56が設けられている。2つの貫通孔56は、柱の延在方向に沿って上下に配置されており、柱20の対向面20Eに形成された貫通孔(符号省略)と、同軸的に配置されている。これら2つの貫通孔56には第1フランジ部42と同様に締結用のボルト60がそれぞれ貫通しており、ボルト60の先端は、柱20の内部でナット62と螺合している。これにより、第2ブラケット50が柱20に接合されている。また、第2ブラケット50は、ボルト60によって対向面20Eの裏面に溶接された補強部材64と共締めされている。
【0037】
第2ブラケット50の第2ウエブ部54は、柱20の対向面20Eに対し略垂直な方向に延在している。また、第2ウエブ部54は、第1ウエブ部44に沿って配置され、ウエブ部34の他の一部を構成している。この第2ウエブ部54には、第2ウエブ部54を板厚方向に貫通する3つの連結孔58が設けられている。3つの連結孔58は、柱の延在方向に沿って配置されており、第1ウエブ部44の連結孔48と同軸的に配置されている。
【0038】
第2ブラケット50は、基本的には第1ブラケット40と同様の構成をなしているが、補強部70を備えない点において第1ブラケット40と異なる構成とされている。また、第2ブラケット50は、第2フランジ部52の柱幅方向の寸法が、第1ブラケット40における第1フランジ部42の柱幅方向の寸法よりも若干長く設定されている。より具体的には、第2フランジ部52の柱幅方向の寸法は、第2ウエブ部54の板厚の分だけ第1フランジ部42よりも長く設定されている。
【0039】
上記構成により、連結部材30Aは、第1フランジ部42及び第2フランジ部52で構成されたフランジ部32と、第1ウエブ部44及び第2ウエブ部54により構成されたウエブ部34を備えている。また、図4に示されるように、フランジ部32は、柱の延在方向から見て、柱20の軸心(柱芯)O1と柱24の軸心(柱芯)O2とを結ぶ中心線Cの両側でボルト締結により柱20の対向面20Eに接合されている。なお、中心線Cから中心線Cの両側に配置されたボルト60の締結点までの距離は、柱の延在方向から見て何れも等距離の位置に形成されている。更に、連結部材30Aのウエブ部34は、中心線Cに沿って配置されている。
【0040】
次に、柱24の対向面24Eに接合された連結部材30Bについて説明する。この連結部材30Bは、形状及び大きさが連結部材30Aと同一に構成されているため、詳細な構成について説明を割愛する。
【0041】
一方、図4及び図5に示されるように、連結部材30Bは、連結部材30Aに対して上下に反転した姿勢で柱24の対向面24Eに接合されている。この状態では、連結部材30Bのウエブ部34が連結部材30Aのウエブ部34に沿って配置され、柱幅方向に向かい合う面同士が当接している。そして、連結部材30A、30Bのウエブ部34には、連結孔48、58にボルト72が貫通しており、ボルト72の先端にナット74を螺合させることによりウエブ部34同士が締結されている。このようにして、一対のウエブ部34、ボルト72、及びナット74によって連結部材30Aと連結部材30Bとを連結する連結部80が形成されている。
【0042】
一対の連結部材30A、30Bを連結させた状態では、それぞれのウエブ部34が柱の延在方向から見て中心線Cに対して一方側と他方側に配置され、かつ、中心線C沿って配置されている。すなわち、本実施形態では、連結部80が中心線C上に形成されている。このため、構造上、建物ユニット16とキャンチユニット18が、柱20、24の軸心(柱芯)O1,O2の位置で連結されている。
【0043】
更に、一対の連結部材30A、30Bは、互いに反転した向きで配置されており、連結部80の連結中心O3に対して対称をなすように配置されている。このような構造上の対称性により、建物ユニット16とキャンチユニット18間の応力伝達が、連結部80を介して効率的に行われる。なお、連結部80の連結中心O3とは、柱の延在方向から見て中心線Cとボルト72の軸部が重なる位置である。
【0044】
また、一対の連結部材30A、30Bが、連結部80に対して対称をなすように配置されることから、一対の連結部材30A、30Bにそれぞれ設けられた補強部70は、中心線Cに対し一方側と他方側に配置されており、補強部70(スチフナ)の数を最小限に構成し、連結部80を効率的に補強可能とされている。
【0045】
また、一対の連結部材30A、30Bが、連結部80に対して対称をなすように配置されることから、一対の連結部材30のウエブ部34は、柱の延在方向から見て、中心線Cに対し一方側又は他方側に偏った位置にそれぞれ配置される。図4に基づいて説明すると、柱20に接合された連結部材30Aのウエブ部34は、中心線Cよりも屋内側に配置され、柱24に接合された連結部材30Bのウエブ部34は、中心線Cよりも屋外側に配置されている。このような対称構造は、建物ユニット16にキャンチユニット18を連結させる際の施工性の向上にも寄与する。
【0046】
というのも、キャンチユニット18は、クレーン等によって吊り上げられた状態で建物ユニット16に連結される。このため、建物ユニット16とキャンチユニット18との連結構造が複雑化すると、連結作業に高度な施工技術が必要とされ、更に、施工時間が長くなる。
【0047】
この点、本実施形態では、建物ユニット16とキャンチユニット18とを連結させる一対の連結部材30が、接合対象となる柱20、24の軸心O1、O2を基準に接合位置を定めることができるため、工場又は施工現場において、予め連結部材30を接合することが容易である。
【0048】
また、建物ユニット16側で、4つの連結部材30のウエブ部34が中心線Cに対して一方側に配置される場合、キャンチユニット18側では、4つの連結部材30のウエブ部34が、中心線Cに対して他方側に配置される。このため、図6に示されるように、キャンチユニット18をクレーン等で吊り上げて中心線Cに対して他方側から建物ユニット16へ近づけることにより、一対の連結部材30を所定の位置で重ね合わせて接合することができる。これにより、連結作業を簡単かつ短時間で完了させることができる。
【0049】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0050】
本実施形態では、建物ユニット16とキャンチユニット18が水平方向に隣り合って配置されており、互いに向かい合う桁面(側面)の柱20、24が対向して配置されている。また、対向して配置された一対の柱20、24には、連結部材30がそれぞれ接合されており、これら一対の連結部材30同士が連結部を介して連結されている。これにより、一対の連結部材30を介して建物ユニット16とキャンチユニット18が連結される。
【0051】
ここで、一対の連結部材30は、柱の延在方向から見て、柱20の軸心O1と柱24の軸心O2を結ぶ中心線C上に形成された連結部80を介して連結されている。また、一対の連結部材30は、連結部80に対して対称をなすように配置されている。このため、柱20、24の軸心(柱芯)O1、O2の位置で建物ユニット16とキャンチユニット18を連結することができ、建物ユニット16とキャンチユニット18間の応力伝達が、連結部80を介して効率的に行われる。これにより、連結部80の強度を高めることができる。
【0052】
また、本実施形態において、各連結部材30は、柱に接合されたフランジ部32と、中心線Cに沿って配置されたウエブ部34を備えており、一対の連結部材30は、互いのウエブ部34を重ね合わせて接合することにより連結されている。これにより、簡単な構成にして、連結部80を中心線C上に形成することができ、施工性に優れる。
【0053】
また、本実施形態において、連結部材30A、30Bのフランジ部32は、柱20、24の延在方向から見て中心線Cの両側でボルト締結されている。このため、連結部材30A、30Bを介して柱20、24に偏心荷重が入力されることが抑制される。また、連結部材30A、30Bには、フランジ部32とウエブ部34とを水平方向に繋ぐ補強部70が設けられているため、地震時の横揺れや強風によって連結部80に入力される水平力に対する耐力が高められている。これにより、連結部80の強度を一層高めることができる。
【0054】
また、本実施形態では、形状及び大きさが同一に形成された一対の連結部材30A、30Bを互いに反転させた姿勢で配置することにより、一対の柱20、24にそれぞれ接合させることができる。また、この状態では、一対の連結部材30A、30Bの補強部が、中心線Cに対して両側にそれぞれ配置される構成となっている。このように、形状及び大きさが同一とされた一対の連結部材30によって建物ユニット同士を連結させることで部材の共通化を図りつつ、補強部70を中心線Cの両側に配置される構造とすることにより、最小限の構成で連結部の強度を効率的に高めることができる。このため、経済性に優れる。
【0055】
また、本実施形態では、建物ユニット16とキャンチユニット18における桁面の四隅が一対の連結部材30A、30Bを介して接合されている。ここで、建物ユニット16に接合された連結部材30Aのウエブ部34は中心線Cに対して一方側に配置され、キャンチユニット18ではウエブ部34が中心線Cに対して他方側に配置されている。このため、建物ユニット16とキャンチユニット18を連結させる際に、予め連結部材30A、30Bを柱20、24に接合し、キャンチユニット18を中心線Cに対して他方側から、建物ユニット16へ近づけて四隅の連結部材30A、30Bの位置決めを行うことが可能となる。これにより、建物ユニット16とキャンチユニット18を容易に連結させることができ、施工性に優れる。
【0056】
〔第2実施形態〕
以下、図7を用いて、第2実施形態に係る建物ユニットの連結構造が適用された建物90について説明する。なお、上述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0057】
第2実施形態に係る建物90では、一対の連結部材30A、30Bを構成する一対のウエブ部34の間にスペーサ部材92が配置されている点に特徴がある。他の構成は、上記第1実施形態と同一である。
【0058】
このスペーサ部材92は、ウエブ部34と同様に建物90の柱の幅方向を板厚方向とする板状部材で構成されており、連結部材30Aのウエブ部34と連結部材30Bのウエブ部34の間の間隙tを埋めるスペーサとされている。また、スペーサ部材92には、ウエブ部34の連結孔48、58と同軸的に設けられた貫通孔94が形成されており、ボルト72が貫通している。そして、ボルト72とナット74によって、一対の連結部材30のウエブ部34と共締めされている。
【0059】
なお、スペーサ部材92は、複数の板状部材を複数層に重ねて構成してもよい。この場合、施工現場で間隙の大きさに合わせてスペーサ部材92を構成する板状部材の枚数を調整することができるため、間隙の大きさに合わせてスペーサ部材の板厚を容易に変更することができる。
【0060】
(作用・効果)
本実施形態は、基本的には第1実施形態に係る建物ユニットの連結構造の構成を踏襲しているため、同様の作用及び効果を得ることができる。
【0061】
ところで、建物ユニット16やキャンチユニット18は、組付け時のバラツキによって設計上の寸法と若干の誤差が生じる場合がある。このような誤差によって、図7に示されるように、柱20と柱24の対向面20E、24Eの位置が建物90の桁方向にずれた場合、基準の位置で接合された一対の連結部材30A、30Bにもずれが生じるため、一対のウエブ部34の間に間隙tが生じる。
【0062】
ここで、本実施形態では、スペーサ部材92を一対のウエブ部34の間に配置することにより間隙tを埋めることができる。これにより、建物ユニット16及びキャンチユニット18の組付け時のバラツキを吸収しつつ、一対の連結部材30A、30Bで連結させることができる。
【0063】
[補足説明]
上記各実施形態では、建物ユニット16と、建物ユニット16に片持ち支持されたキャンチユニット18との連結部に本発明に係る連結構造を適用したが、これに限らない。例えば、基礎の上に設置された一対の建物ユニットの連結部に本発明に係る連結構造を適用してもよい。
【0064】
また、上記各実施形態では、単一の連結部材30が、第1ブラケット40と第2ブラケット50によって構成されている。しかし、本発明はこれに限らず、第1ブラケット40と第2ブラケット50を一体に形成したT字型のブラケットとしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
16 建物ユニット(建物ユニット)
18 キャンチユニット(建物ユニット)
20 柱(一方の柱)
24 柱(他方の柱)
30 連結部材
32 フランジ部
34 ウエブ部
70 補強部
80 連結部
O1 軸心
O2 軸心
O3 連結中心
C 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7