(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】睡眠情報処理方法、睡眠情報処理プログラムおよび睡眠情報処理システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20240508BHJP
G16H 20/00 20180101ALI20240508BHJP
G06Q 50/22 20240101ALI20240508BHJP
【FI】
A61B5/16 130
G16H20/00
G06Q50/22
(21)【出願番号】P 2020027078
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】浜本 圭介
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 建作
(72)【発明者】
【氏名】中川 恭
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-164366(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142565(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/004094(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16- 5/18
G06Q 50/22
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の就業日に睡眠を開始した就寝時刻SOw、および該睡眠を終了した起床時刻SEwに関する第1時刻情報I1、ならびに被験者の休業日に睡眠を開始した就寝時刻SOf、および該睡眠を終了した起床時刻SEfに関する第2時刻情報I2をコンピュータに入力するステップと、
前記コンピュータにより、
前記第1時刻情報I1に基づいて就業日の睡眠中央値MSwを算出し、前記第2時刻情報I2に基づいて休業日の睡眠中央値MSfを算出し、前記睡眠中央値MSfから前記睡眠中央値MSwを減算した値SJLまたはその絶対値|SJL|を、睡眠時間変動を表す睡眠時間変動パラメータPLとするステップと、
被験者の身体状態を表す身体状態パラメータPBを前記コンピュータに入力するステップと、
被験者の睡眠状態を表す睡眠状態パラメータPSを前記コンピュータに入力するステップと、
前記コンピュータにより、前記睡眠時間変動パラメータPL、前記身体状態パラメータPBおよび前記睡眠状態パラメータPSを用いて、睡眠改善情報を出力するステップと、を含む睡眠情報処理方法。
【請求項2】
前記睡眠状態パラメータPSは、睡眠時間、睡眠の質、および日中の眠気の内の少なくとも1つを含むアンケート結果である、請求項1に記載の睡眠情報処理方法。
【請求項3】
前記身体状態パラメータPBは、労働生産性、身体状態、および精神状態の内の少なくとも1つを含むアンケート結果である、請求項1に記載の睡眠情報処理方法。
【請求項4】
コンピュータに、
被験者の就業日に睡眠を開始した就寝時刻SOw、および該睡眠を終了した起床時刻SEwに関する第1時刻情報I1、ならびに被験者の休業日に睡眠を開始した就寝時刻SOf、および該睡眠を終了した起床時刻SEfに関する第2時刻情報I2を入力する機能と、
前記第1時刻情報I1に基づいて就業日の睡眠中央値MSwを算出し、前記第2時刻情報I2に基づいて休業日の睡眠中央値MSfを算出し、前記睡眠中央値MSfから前記睡眠中央値MSwを減算した値SJLまたはその絶対値|SJL|を、睡眠時間変動を表す睡眠時間変動パラメータPLとする機能と、
被験者の身体状態を表す身体状態パラメータPBを入力する機能と、
被験者の睡眠状態を表す睡眠状態パラメータPSを入力する機能と、
前記睡眠時間変動パラメータPL、前記身体状態パラメータPBおよび前記睡眠状態パラメータPSを用いて、睡眠改善情報を出力する機能と、を実現させるための睡眠情報処理プログラム。
【請求項5】
被験者の就業日に睡眠を開始した就寝時刻SOw、および該睡眠を終了した起床時刻SEwに関する第1時刻情報I1、ならびに被験者の休業日に睡眠を開始した就寝時刻SOf、および該睡眠を終了した起床時刻SEfに関する第2時刻情報I2を入力するための第1入力手段と、
前記第1時刻情報I1に基づいて就業日の睡眠中央値MSwを算出し、前記第2時刻情報I2に基づいて休業日の睡眠中央値MSfを算出し、前記睡眠中央値MSfから前記睡眠中央値MSwを減算した値SJLまたはその絶対値|SJL|を、睡眠時間変動を表す睡眠時間変動パラメータPLとする算出手段と、
被験者の身体状態を表す身体状態パラメータPBを入力するための第2入力手段と、
被験者の睡眠状態を表す睡眠状態パラメータPSを入力するための第3入力手段と、
前記睡眠時間変動パラメータPL、前記身体状態パラメータPBおよび前記睡眠状態パラメータPSを用いて、睡眠改善情報を出力するための出力手段と、を備える睡眠情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠改善情報を出力する睡眠情報処理方法、睡眠情報処理プログラムおよび睡眠情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球上で生活する生物、例えば、人間は、約24時間周期の体内リズムを備えており、昼は活動モードに、夜は休息モードになるという性質を有する。人間の体温、血圧、脈拍、各種ホルモンの分泌にも約24時間のリズムがあり、免疫や代謝が体内リズムの影響を受ける。人間に備わる体内リズムは、24時間よりも少し長めであり、例えば、約24時間10分であるという報告がある(Science. 1999 Jun 25; 284(5423): 2177-81)。例えば、夜更かし、昼夜逆転した生活、土日の朝寝坊といった生活の乱れは、体内リズムに影響を及ぼすため、日中に意識が朦朧としたり、疲れが解消しなかったり、体調不良の原因になる。
【0003】
また平日(月曜日~金曜日)は、就業(学業を含む)のために就寝時刻および起床時刻がほぼ一定であるにの対して、休日(土曜日、日曜日、祝日)は、休養のために寝だめや朝寝坊をすることがある。その結果、就業日初日である月曜日の朝に目覚めが悪く、眠気が抜けていない場合がある。このように社会的制約(仕事、学校、家事など)がある平日の睡眠と、生物時計と一致した制約のない休日の睡眠との差によって引き起こされる、「平日と休日の就寝・起床リズムのズレ」は、学術的に「ソーシャル・ジェットラグ」と呼ばれる(Chronobiol Int. 2006; 23(1-2): 497-509)。
【0004】
こうしたソーシャル・ジェットラグは、休日の2日間朝寝坊しただけで、体内時計が30~45分遅れてしまうことが、複数の試験で確認されている(Chronobiol Int. 2010 Aug; 27(7): 1469-92, Sleep. 2001 May 1; 24(3): 272-81)。しかも、1度ずれてしまったリズムをもとに戻すのは容易なことでなく、週明けの前半まで眠気や日中の疲労感を引きずるという報告もある(Sleep and Biological Rhythms 2008; 6: 172-9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-162382号公報
【文献】特許第5879833号公報
【文献】特許第6418671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、睡眠の質の改善を支援する装置及びプログラムに関する。特許文献2は、睡眠中の被験者から検出される生体信号に基づいて睡眠の質を評価する情報処理装置及びプログラムに関する。特許文献3は、従業員の生活習慣や睡眠の状況などをアンケートによって集計し、統計学的手法を用いて組織の人事管理を円滑に支援するための人事管理支援システムに関する。しかしながら、特許文献1~3のいずれも上述したソーシャル・ジェットラグについては何ら言及してない。
【0007】
本発明の目的は、ソーシャル・ジェットラグを考慮した睡眠改善情報を提供できる睡眠情報処理方法、睡眠情報処理プログラムおよび睡眠情報処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、被験者の就業日に睡眠を開始した就寝時刻SOw、および該睡眠を終了した起床時刻SEwに関する第1時刻情報I1、ならびに被験者の休業日に睡眠を開始した就寝時刻SOf、および該睡眠を終了した起床時刻SEfに関する第2時刻情報I2をコンピュータに入力するステップと、
前記コンピュータにより、前記第1時刻情報I1に基づいて就業日の睡眠中央値MSwを算出し、前記第2時刻情報I2に基づいて休業日の睡眠中央値MSfを算出し、前記睡眠中央値MSfから前記睡眠中央値MSwを減算した値SJLまたはその絶対値|SJL|を、睡眠時間変動を表す睡眠時間変動パラメータPLとするステップと、
被験者の身体状態を表す身体状態パラメータPBを前記コンピュータに入力するステップと、
被験者の睡眠状態を表す睡眠状態パラメータPSを前記コンピュータに入力するステップと、
前記コンピュータにより、前記睡眠時間変動パラメータPL、前記身体状態パラメータPBおよび前記睡眠状態パラメータPSを用いて、睡眠改善情報を出力するステップと、を含む睡眠情報処理方法を提供する。
こうした手法により、ソーシャル・ジェットラグを考慮した睡眠改善情報を提供でき、
ソーシャル・ジェットラグを適切に定量化できる。
【0010】
本発明において、前記睡眠状態パラメータPSは、睡眠時間、睡眠の質、および日中の眠気の内の少なくとも1つを含むアンケート結果であることが好ましい。
こうした手法により、被験者の睡眠状態を適切に反映できる。
【0011】
本発明において、前記身体状態パラメータPBは、労働生産性、身体状態、および精神状態の内の少なくとも1つを含むアンケート結果であることが好ましい。
こうした手法により、被験者の身体状態を適切に反映できる。
【0012】
本発明の第2態様は、コンピュータに、
被験者の就業日に睡眠を開始した就寝時刻SOw、および該睡眠を終了した起床時刻SEwに関する第1時刻情報I1、ならびに被験者の休業日に睡眠を開始した就寝時刻SOf、および該睡眠を終了した起床時刻SEfに関する第2時刻情報I2を入力する機能と、
前記第1時刻情報I1に基づいて就業日の睡眠中央値MSwを算出し、前記第2時刻情報I2に基づいて休業日の睡眠中央値MSfを算出し、前記睡眠中央値MSfから前記睡眠中央値MSwを減算した値SJLまたはその絶対値|SJL|を、睡眠時間変動を表す睡眠時間変動パラメータPLとする機能と、
被験者の身体状態を表す身体状態パラメータPBを入力する機能と、
被験者の睡眠状態を表す睡眠状態パラメータPSを入力する機能と、
前記睡眠時間変動パラメータPL、前記身体状態パラメータPBおよび前記睡眠状態パラメータPSを用いて、睡眠改善情報を出力する機能と、を実現させるための睡眠情報処理プログラムを提供する。
こうした手法により、ソーシャル・ジェットラグを考慮した睡眠改善情報を提供でき、
ソーシャル・ジェットラグを適切に定量化できる。
【0013】
本発明の第3態様は、被験者の就業日に睡眠を開始した就寝時刻SOw、および該睡眠を終了した起床時刻SEwに関する第1時刻情報I1、ならびに被験者の休業日に睡眠を開始した就寝時刻SOf、および該睡眠を終了した起床時刻SEfに関する第2時刻情報I2を入力するための第1入力手段と、
前記第1時刻情報I1に基づいて就業日の睡眠中央値MSwを算出し、前記第2時刻情報I2に基づいて休業日の睡眠中央値MSfを算出し、前記睡眠中央値MSfから前記睡眠中央値MSwを減算した値SJLまたはその絶対値|SJL|を、睡眠時間変動を表す睡眠時間変動パラメータPLとする算出手段と、
被験者の身体状態を表す身体状態パラメータPBを入力するための第2入力手段と、
被験者の睡眠状態を表す睡眠状態パラメータPSを入力するための第3入力手段と、
前記睡眠時間変動パラメータPL、前記身体状態パラメータPBおよび前記睡眠状態パラメータPSを用いて、睡眠改善情報を出力するための出力手段と、を備える睡眠情報処理システムを提供する。
こうした手法により、ソーシャル・ジェットラグを考慮した睡眠改善情報を提供でき、
ソーシャル・ジェットラグを適切に定量化できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、ソーシャル・ジェットラグを考慮した睡眠改善情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る睡眠情報処理システムの一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明に係る睡眠情報処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】睡眠改善情報の一例として、絶対的プレゼンティーズム(生産性)(Z軸)をアテネ不眠尺度(X軸)およびソーシャル・ジェットラグ(Y軸)の関数で示すグラフである。
【
図5】
図4の3軸に係る数値を「良」と「悪」の2値で簡略的に表現したグラフである。
【
図6】睡眠改善情報の他の例として、風邪罹患オッズ比(Z軸)をアテネ不眠尺度総合得点(X軸)およびソーシャル・ジェットラグ(Y軸)の関数で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る睡眠情報処理システムの一例を示すブロック図である。睡眠情報処理システム1は、サーバとして動作可能なホストコンピュータ10と、各種データベースを保存するためのストレージ装置11と、クライアントとして動作可能な複数の端末21,22,23とを備える。
【0018】
ホストコンピュータ10は、プロセッサ、メモリ、インタフェースなどを備え、予め設定された各種プログラム(例えば、統計処理プログラミング言語「R」を用いたプログラム)に従って演算処理を実行する。この各種プログラムには、本発明に係る睡眠情報処理プログラムも含まれる。ホストコンピュータ10には、一般に、キーボード、ポインティングデバイスなどのデータ入力装置や、ディスプレイ、プリンタ、プロジェクタなどのデータ出力装置が接続可能である。ホストコンピュータ10は、集中処理のために一台のコンピュータでもよいが、分散処理のために複数のコンピュータに分散していてもよい。
【0019】
ストレージ装置11は、ハードディスクドライブ、光ディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、磁気テープドライブなどで構成され、ホストコンピュータ10と有線または無線を経由して通信可能に接続される。ストレージ装置11も集中処理のために一台でもよいが、分散処理のために複数のストレージ装置に分散していてもよい。
【0020】
端末21,22,23は、パーソナルコンピュータPC、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話などで構成され、データを入力する手段、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、各種スイッチ、マイクロホン、カメラなどを備え、さらにデータを出力する手段、例えば、液晶パネル、有機LEDパネル、LEDランプ、スピーカなどを備える。こうした端末21,22,23は、インターネット、イントラネットなどのネットワーク回線を経由して相互に通信可能に接続可能であり、さらにホストコンピュータ10とも通信可能に接続可能である。
【0021】
本発明では、端末21~23のユーザに向けてアンケートフォームを提示し、ユーザはそのアンケートに回答し、ホストコンピュータ10は、個々のアンケート結果を集計して統計的処理を行って睡眠情報データベースを作成、更新し、そして個々のユーザに対応した個々の睡眠改善情報を端末21~23にそれぞれ出力する。
【0022】
図2は、ソーシャル・ジェットラグの説明図である。横軸は、夜22時から朝10時までの時間経過を示し、縦軸は、月曜日~金曜日(平日)および、土曜日、日曜日(休日)を含む1週間の繰り返しを示す。バーグラフの左端は就寝時刻、バーグラフの右端は起床時刻、バーグラフの長さは睡眠時間を示す。1週間のうち上側5つのバーグラフは月曜日~金曜日の睡眠時間帯、下側2つのバーグラフは土曜日、日曜日の睡眠時間帯を示す。ここでは、一例として睡眠時間の中央に位置する睡眠中央時間に着目しており、平日と休日とで睡眠中央時間は約3時間の差が生じており、この差を「ソーシャル・ジェットラグ時間」と呼ぶ。ここでは、被験者が週休2日の定時勤務者(例えば、9時~17時労働)である場合を例示したが、それ以外に平日のいずれかに休業し、休日のいずれかに就業する場合も同様に適用できる。
【0023】
図3は、本発明に係る睡眠情報処理方法の一例を示すフローチャートである。該方法は、ステップS1~S5を含む。なお、ステップS1,S2と、ステップS3と、ステップ4とを実行する順序は任意であり、必要に応じて変更できる。こうした睡眠情報処理方法は、各種プログラミング言語、例えば、HTML、CSS、JavaScript、PHP、Java、Python、C++、C#、Swift、Ruby、Rなどを用いてホストコンピュータ10および端末21,22,23に実装できる。
【0024】
最初にホストコンピュータ10は、ユーザから端末21,22,23を経由してアンケートの送付要求を受信すると、予め定めたアンケートフォームを端末21,22,23に送信する。アンケートフォームの詳細については後述する。端末21,22,23は、受信したアンケートフォームを画面に表示する。
【0025】
そしてステップS1において、ユーザは、アンケートフォームに従って、被験者の就業日に睡眠を開始した就寝時刻SOw、および該睡眠を終了した起床時刻SEwに関する第1時刻情報I1、ならびに被験者の休業日に睡眠を開始した就寝時刻SOf、および該睡眠を終了した起床時刻SEfに関する第2時刻情報I2を端末21,22,23に入力する。端末21,22,23は、入力データをホストコンピュータ10に送信する。なお、ユーザは、被験者と同じでもよく、あるいは別人でもよい。
【0026】
次にステップS2において、ホストコンピュータ10は、端末21,22,23から受信した第1時刻情報I1および第2時刻情報I2に基づいて、睡眠時間変動を表す睡眠時間変動パラメータPLを算出する。この算出方法の一例として、睡眠中央時刻を計算する方法が知られている(https://mctq.jp/use/index_para.html)。
【0027】
詳細には、就業日の睡眠中央時刻MSwは、MSw=SOw+(SDw)/2で計算できる。但し、MSwの計算値が24を超える場合は、24を引いた値を睡眠中央時刻とする。次に、就業日の睡眠の長さ(睡眠区間)SDwは、(1)24時を跨がない場合、SDw=SEw-SOw、(2)24時を跨ぐ場合、SDw=SEw-(SOw-24)で計算できる。ここで、SEwは、就業日の起床時刻(24時間表記の入力値)、SOwは、就業日の就寝時刻(24時間表記の入力値)である。複数の就業日がある場合、各就業日の数値の平均値としてもよい。
【0028】
続いて、休業日の睡眠中央時刻MSfは、MSf=SOf+(SDf)/2で計算できる。但し、MSfの計算値が24を超える場合は、24を引いた値を睡眠中央時刻とする。次に、休業日の睡眠の長さ(睡眠区間)SDfは、(1)24時を跨がない場合、SDf=SEf-SOf、(2)24時を跨ぐ場合、SDf=SEf-(SOf-24)で計算できる。ここで、SEfは、休業日の起床時刻(24時間表記の入力値)、SOfは、休業日の就寝時刻(24時間表記の入力値)である。複数の休業日がある場合、各休業日の数値の平均値としてもよい。
【0029】
続いて、睡眠時間変動パラメータPLとしてソーシャル・ジェットラグ時間を計算する。ソーシャル・ジェットラグ時間は、下記の2種類を含む。
・相対的ソーシャルジェットラグ時間SJL(=MSf-MSw)
・絶対的ソーシャルジェットラグ時間|SJL|(||は絶対値)
但し、|SJL|の値が12を超える場合は、24から引いた値(下式のSJL’)を
ソーシャル・ジェットラグ時間とする。
SJL’=24-|SJL|
本発明では、相対的ソーシャルジェットラグ時間SJLまたは絶対的ソーシャルジェットラグ時間|SJL|のいずれでも使用できる。
【0030】
以上の説明では、就業日と休業日との間の睡眠中央時刻の差を計算したが、それ以外に、1)就業日と休業日との間の就寝時刻の差、2)就業日と休業日との間の起床時刻の差、3)就業日と休業日との間の、就寝時刻から睡眠区間のx%(0<x<100)だけ経過した時刻の差などを計算することも可能である。
【0031】
次にステップS3において、ユーザは、被験者の身体状態を表す身体状態パラメータPBを端末21,22,23に入力する。端末21,22,23は、入力データをホストコンピュータ10に送信する。身体状態パラメータPBの詳細については後述する。
【0032】
次にステップS4において、ユーザは、被験者の睡眠状態を表す睡眠状態パラメータPSを端末21,22,23に入力する。端末21,22,23は、入力データをホストコンピュータ10に送信する。睡眠状態パラメータPSの詳細については後述する。
【0033】
こうしてユーザから入力された各種データは、ホストコンピュータ10によって集計されて統計的処理が行われ、ストレージ装置11に保存される。
【0034】
次にステップS5において、ホストコンピュータ10は、ステップS2で計算した睡眠時間変動パラメータPLと、端末21,22,23から受信した身体状態パラメータPBおよび睡眠状態パラメータPSとを用いて、ストレージ装置11に保存されたデータベースを参照し、これらのパラメータに対応する睡眠改善情報を生成して、端末21,22,23に送信する。端末21,22,23は、受信した睡眠改善情報を画面表示したり、スピーカから音声出力する。睡眠改善情報の詳細については後述する。
【0035】
次に、各ユーザに提示するアンケートについて説明する。アンケート内容の一例を下記に示す。なお、質問No.1~8は、「アテネ不眠尺度(AIS)」(Soldatos et al.: "Athens Insomnia Scale: validation of an instrument based on ICD-10 criteria", Journal of Psychosomatic Research 48:555-560, 2000)からの引用である。質問No.13~18は、WHO世界精神保健日本調査版「世界保健機関(WHO)健康と仕事のパフォーマンスに関する調査票」短縮版(https://www.hcp.med.harvard.edu/hpq/ftpdir/WMHJ-HPQ-SF_2018.pdf)からの引用である。
【0036】
No.1 質問項目:アテネ不眠尺度 質問形式:1つ選択
質問:寝つきの問題について(布団に入って電気を消してから眠るまでに要した時間)
○過去1ヶ月に少なくとも週3回以上経験したものを選んでください[必須]
(1)問題なかった
(2)少し時間がかかった
(3)かなり時間がかかった
(4)非常に時間がかかったか、もしくは全く眠れなかった
【0037】
No.2 質問項目:アテネ不眠尺度 質問形式:1つ選択
質問:夜間、睡眠途中に目が覚める問題について
○過去1ヶ月に少なくとも週3回以上経験したものを選んでください[必須]
(1)問題になるほどではなかった
(2)少し困ることがあった
(3)かなり困っている
(4)深刻な状態か、または全く眠れなかった
【0038】
No.3 質問項目:アテネ不眠尺度 質問形式:1つ選択
質問:希望する起床時間より早く目覚め、それ以上眠れない問題について
○過去1ヶ月に少なくとも週3回以上経験したものを選んでください[必須]
(1)そのようなことはなかった
(2)少し早かった
(3)かなり早かった
(4)非常に早かったか、全く眠れなかった
【0039】
No.4 質問項目:アテネ不眠尺度 質問形式:1つ選択
質問:総睡眠時間について
○過去1ヶ月に少なくとも週3回以上経験したものを選んでください[必須]
(1)十分だった
(2)少し足りなかった
(3)かなり足りなかった
(4)全く足りないか、全く眠れなかった
【0040】
No.5 質問項目:アテネ不眠尺度 質問形式:1つ選択
質問:全体的な睡眠の質について
○過去1ヶ月に少なくとも週3回以上経験したものを選んでください[必須]
(1)満足している
(2)少し不満
(3)かなり不満
(4)非常に不満か、全く眠れなかった
【0041】
No.6 質問項目:アテネ不眠尺度 質問形式:1つ選択
質問:日中の満足感について
○過去1ヶ月に少なくとも週3回以上経験したものを選んでください[必須]
(1)いつも通り
(2)少し低下
(3)かなり低下
(4)非常に低下
【0042】
No.7 質問項目:アテネ不眠尺度 質問形式:1つ選択
質問:日中の活動について(身体的および精神的)
○過去1ヶ月に少なくとも週3回以上経験したものを選んでください[必須]
(1)いつも通り
(2)少し低下
(3)かなり低下
(4)非常に低下
【0043】
No.8 質問項目:アテネ不眠尺度 質問形式:1つ選択
質問:日中の眠気について
○過去1ヶ月に少なくとも週3回以上経験したものを選んでください[必須]
(1)全くない
(2)少しある
(3)かなりある
(4)激しい
【0044】
No.9 質問項目:時刻情報 質問形式:自由記述
質問:[平日の起床時間]最近の生活状況についてお伺いします。普段お仕事(学校)のある日の起床時間を4桁の数字(24時間表示)で教えてください[必須]
例:午前6時30分の場合→0630
4桁の自由回答
【0045】
No.10 質問項目:時刻情報 質問形式:自由記述
質問:[平日の就寝時間]最近の生活状況についてお伺いします。普段お仕事(学校)のある日の就寝時間を4桁の数字(24時間表示)で教えてください[必須]
例:午後11時30分の場合→2330
例:午前0時30分の場合→0030
例:深夜1時30分の場合→0130
4桁の自由回答
【0046】
No.11 質問項目:時刻情報 質問形式:自由記述
質問:[平日の就寝時間]最近の生活状況についてお伺いします。普段お仕事(学校)のない日の起床時間を4桁の数字(24時間表示)で教えてください[必須]
例:午前6時30分の場合→0630
4桁の自由回答
【0047】
No.12 質問項目:時刻情報 質問形式:自由記述
質問:[休日の就寝時間]最近の生活状況についてお伺いします。普段お仕事(学校)のない日の就寝時間を4桁の数字(24時間表示)で教えてください。
例:午後11時30分の場合→2330
例:午前0時30分の場合→0030
例:深夜1時30分の場合→0130
4桁の自由回答
【0048】
No.13 質問項目:アブセンティーズム(B3) 質問形式:自由記述
質問:過去7日間の間、おおよそ何時間あなたは働きましたか? 数字2ケタでお答えください[必須]
(00~97の範囲でお答えください。もし97時間以上であれば、97と記入してください)
2桁の自由回答
【0049】
No.14 質問項目:アブセンティーズム(B4) 質問形式:自由記述
質問:典型的な一週間に、あなたの雇用者はあなたに何時間働くことを期待していますか? 数字2ケタでお答えください[必須]
(もし変動するようであれば平均値を推定してください)
(00~97の範囲でお答えください。もし97時間以上であれば、97と記入してください)
2桁の自由回答
【0050】
No.15 質問項目:アブセンティーズム(B6) 質問形式:自由記述
質問:4週間(28日間)の間、おおよそ何時間あなたは働きましたか?[必須]
(下の例を見て、過去4週間(28日)の時間数をお答えください)
過去4週間に働いた時間数の計算例
・1週あたり40時間を4週間 =160時間
・1週あたり35時間を4週間 =140時間
・1週あたり40時間を4週間と、8時間の勤務日を2日休み =144時間
・1週あたり40時間を4週間と、4時間の勤務日を3日休み =148時間
・1週あたり35時間を4週間と、8時間の勤務日を2日休みと、4時間の勤務日を3日休み =112時間
3桁の自由回答
【0051】
No.16 質問項目:プレゼンティーズム(B9) 質問形式:1つ選択
質問:0があなたの仕事において誰でも達成できるような仕事のパフォーマンス、10がもっとも優れた勤務者のパフォーマンスとした0から10までの尺度上で、あなたの仕事と似た仕事において多くの勤務者の普段のパフォーマンスをあなたはどのように評価しますか?[必須]
0 最悪のパフォーマンス
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 もっとも優れたパフォーマンス
【0052】
No.17 質問項目:プレゼンティーズム(B10) 質問形式:1つ選択
質問:同じ0から10までの尺度上で、過去1-2年のあなたの普段のパフォーマンスをあなたはどのように評価しますか?[必須]
0 最悪のパフォーマンス
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 もっとも優れたパフォーマンス
【0053】
No.18 質問項目:プレゼンティーズム(B11) 質問形式:1つ選択
質問:同じ0から10までの尺度上で、過去4週間(28日間)の間のあなたの勤務日におけるあなたの総合的なパフォーマンスをあなたはどのように評価しますか?[必須]
0 最悪のパフォーマンス
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 もっとも優れたパフォーマンス
【0054】
No.24 質問項目:感冒 質問形式:1つ選択
質問:2017年9月から2018年2月まででかぜをひきましたか? かぜをひいた回数をお選びください[必須]
(1)かぜをひかなかった
(2)1回かぜをひいた
(3)2回かぜをひいた
(4)3回以上かぜをひいた
【0055】
No.25 質問項目:感冒 質問形式:1つ選択
質問:2017年9月から2018年2月まででインフルエンザにかかりましたか?
インフルエンザにかかった回数をお選びください[必須]
(1)インフルエンザにかからなかった
(2)1回インフルエンザにかかった
(3)2回以上インフルエンザにかかった
【0056】
No.26 質問項目:その他 質問形式:自由記述
質問:睡眠について、気になることや知りたいことがあれば教えてください。[自由回答]
【0057】
次に、睡眠状態パラメータPSについて説明する。睡眠状態パラメータPSの一例を下記に示す。
【0058】
1)評価内容:不眠の重症度、睡眠の質、日中の眠気、睡眠時間等
評価指標/評価方法:アテネ不眠尺度
評価に用いる数値:8つの質問の合計スコア
【0059】
2)評価内容:睡眠の質
評価指標/評価方法:ピッツバーグ睡眠質問票
軸に用いる数値:18の質問項目に対する回答から算出される総合得点
【0060】
3)評価内容:睡眠の質
評価指標/評価方法:セントマリー病院睡眠質問票
評価に用いる数値:質問票を構成する14問のうち、任意の質問のスコア
【0061】
4)評価内容:睡眠の質
評価指標/評価方法:睡眠の質VAS(Visual Analog Scale)
評価に用いる数値:VASスコア
【0062】
5)評価内容:日中の眠気
評価指標/評価方法:エプワース眠気尺度
評価に用いる数値:8つの質問の合計スコア
【0063】
6)評価内容:日中の眠気
評価指標/評価方法:カロリンスカ眠気尺度(9段階で眠気を評価する尺度)
評価に用いる数値:スコア
【0064】
7)評価内容:日中の眠気
評価指標/評価方法:眠気の程度VAS(Visual Analog Scale)
評価に用いる数値:VASスコア
【0065】
8)評価内容:睡眠時間(長さ)
評価指標/評価方法:睡眠時間
評価に用いる数値:実際の時間、または何らかのスコア
概要:実際の長さ(例:6時間30分)、または時間のスコア化(例:6-8時間は3点)。十分だった/足りなかった等の主観評価のスコア化など。
【0066】
次に、アテネ不眠尺度(Athens Insomnia Scale; AIS)について説明する。アテネ不眠尺度の一例を下記に示し、各数値の合計スコアとする。
【0067】
No.1 寝つきの問題について
0.問題なかった
1.少し時間がかかった
2.かなり時間がかかった
3.非常に時間がかかったか、全く眠れなかった
【0068】
No.2 夜間、睡眠途中に目が覚める問題について
0.問題になるほどではなかった
1.少し困ることがあった
2.かなり困っている
3.深刻な状態か、全く眠れなかった
【0069】
No.3 希望する起床時間より早く目覚め、それ以上眠れない問題について
0.そのようなことはなかった
1.少し早かった
2.かなり早かった
3.非常に早かったか、全く眠れなかった
【0070】
No.4 総睡眠時間について
0.十分だった
1.少し足りなかった
2.かなり足りなかった
3.全く足りないか、全く眠れなかった
【0071】
No.5 全体的な睡眠の質について
0.満足している
1.少し不満
2.かなり不満
3.非常に不満か、全く眠れなかった
【0072】
No.6 日中の満足感について
0.いつも通り
1.少し低下
2.かなり低下
3.非常に低下
【0073】
No.7 日中の活動について(身体的および精神的)
0.いつも通り
1.少し低下
2.かなり低下
3.非常に低下
【0074】
No.8 日中の眠気について
0.全くない
1.少しある
2.かなりある
3.激しい
【0075】
ピッツバーグ睡眠質問票については、下記URLを参照(土井由利子, 簑輪眞澄, 大川匡子, 内山真: ピッツバーグ睡眠質問票日本語版の作成. 精神科治療学 1998; 13 (6); 755-769.)。http://www.kanen.ncgm.go.jp/study_download/20111202_02_02.pdf
セントマリー病院睡眠質問票については、下記文献を参照(内山真、太田克也、大川匡子:睡眠および睡眠障害の評価尺度. 臨床精神医学講座13睡眠障害(太田龍朗、大川匡子責任編集), 中山書店, p498, 1999)。
VAS(Visual Analog Scale)とは、0~100の数値を視覚的アナログスケールで入力する手法である。
エップワース眠気尺度については、下記URLを参照(Takegami M, Suzukamo Y, Wakita T, et al: Development of a Japanese version of the Epworth Sleepiness Scale (JESS) based on Item Response Theory. Sleep Med, 10 (5) : 556-565, 2009)。
https://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/044110896j.pdf
カロリンスカ眠気尺度については、下記文献を参照(Kaida K, Takahashi M, Aakerstedt T, et al: Validation of the Karolinska sleepiness scale against performance and EGG variables. Clin Neurophysiol 2006; 117: 1574-81)。
【0076】
次に、身体状態パラメータPBについて説明する。身体状態パラメータPBの一例を下記に示す。
【0077】
1)評価内容:プレゼンティーズム
評価指標/評価方法:(1)WHO-HPQ絶対的プレゼンティーズム(質問項目No.18のプレゼンティーズム(B11)を10倍した数値)、(2)WHO-HPW相対的プレゼンティーズム(質問項目No.18のプレゼンティーズム(B11)を質問項目No.16のプレゼンティーズム(B9)で除算した数値。但し、数値が0.25以下の場合は0.25に変換。数値が2.0以上の場合は2.0に変換。B9=0でB11=1~10の場合は2.0に変換。B9=B11=0の場合は1.0に変換。)、(3)東大1項目版、(4)WLQ (Work Limitations Questionnaire)、(5)SPS (Stanford Presentism Scale)、(6)Wfun (Work Functioning Impairment Scale)、(7)QQmethod
評価に用いる数値:
概要:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkokeiei-guidebook2804.pdfのp.27-31を参照。https://www.hcp.med.harvard.edu/hpq/ftpdir/WMHJ-HPQ-SF_2018.pdfを参照。
【0078】
2)評価内容:感冒
評価指標/評価方法:風邪をひいた/ひいてない
評価に用いる数値:オッズ比
【0079】
3)評価内容:体調
評価指標/評価方法:主観的健康感
評価に用いる数値:言語による選択肢を用いた段階評定の回答のスコア化
【0080】
4)評価内容:疲労感
評価指標/評価方法:(1)チャルダー疲労尺度、(2)VAS(Visual Analog Scale)
評価に用いる数値:(1)15の質問項目に対する回答から算出される総合得点、(2)VASスコア
【0081】
5)評価内容:心の健康
評価指標/評価方法:K6
評価に用いる数値:6つの質問の総合スコア
【0082】
6)評価内容:眼精疲労
評価指標/評価方法:(1)あり/なし、(2)VAS(Visual Analog Scale)
評価に用いる数値:(1)オッズ比、(2)VASスコア
【0083】
7)評価内容:意欲の程度
評価指標/評価方法:(1)VAS(Visual Analog Scale)、(2)ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度(UWES)
評価に用いる数値:(1)VASスコア、(2)質問票を構成する17、9、あるいは3問のうち、任意の質問のスコア
概要:ワークエンゲージメントについては、下記文献を参照(Shimazu, A., Schaufeli, W. B., Kosugi, S. et al. (2008). Work engagement in Japan: Validation of the Japanese version of Utrecht Work Engagement Scale. Applied Psychology: An International Review, 57, 510-523)。
【0084】
8)評価内容:肩こりの程度
評価指標/評価方法:(1)あり/なし、(2)VAS(Visual Analog Scale)
評価に用いる数値:(1)オッズ比、(2)VASスコア
【0085】
9)評価内容:腰痛の程度
評価指標/評価方法:(1)あり/なし、(2)VAS(Visual Analog Scale)
軸に用いる数値:(1)オッズ比、(2)VASスコア
【0086】
10)評価内容:便秘の程度
評価指標/評価方法:(1)あり/なし、(2)VAS(Visual Analog Scale)
評価に用いる数値:(1)オッズ比、(2)VASスコア
【0087】
11)評価内容:鼻水の程度
評価指標/評価方法:(1)あり/なし、(2)VAS(Visual Analog Scale)
評価に用いる数値:(1)オッズ比、(2)VASスコア
【0088】
12)評価内容:鼻詰まりの程度
評価指標/評価方法:(1)あり/なし、(2)VAS(Visual Analog Scale)
評価に用いる数値:(1)オッズ比、(2)VASスコア
【0089】
13)評価内容:頭痛の程度
評価指標/評価方法:(1)あり/なし、(2)VAS(Visual Analog Scale)
評価に用いる数値:(1)オッズ比、(2)VASスコア
【0090】
14)評価内容:アブセンティーズム
評価指標/評価方法:病気による欠勤・休職日数
評価に用いる数値:病気による欠勤・休職日数
【0091】
次に、睡眠改善情報について説明する。
図4は、睡眠改善情報の一例として、絶対的プレゼンティーズム(生産性)(Z軸)をアテネ不眠尺度(X軸)およびソーシャル・ジェットラグ(Y軸)の関数で示すグラフである。このグラフから、アテネ不眠尺度が増加するほど、そしてソーシャル・ジェットラグが増加するほど、絶対的プレゼンティーズムは減少することが判る。
【0092】
図5は、理解容易のために、
図4のXYZ軸に係る数値を「良」と「悪」の2値で簡略的に表現したグラフである。この場合、8通りの組合せが想定され、個々の組合せに対応する睡眠改善メッセージの一例を下記に示す。なお、「良」と「悪」の2値は、(プレゼンティーズム、アテネ不眠尺度、ソーシャルジェットラグ)の順で示している。
【0093】
1 悪 良 悪
労働パフォーマンスが悪い状態にあります。睡眠状態とリズムの両方が、パフォーマンスに影響することが分かってきています。睡眠状態は良いですが平日と休日の睡眠リズムが乱れていますので、なるべく同じ睡眠リズムで生活するように意識しましょう。
【0094】
2 良 良 悪
睡眠状態とリズムの両方が、パフォーマンスに影響することが分かってきています。あなたの労働パフォーマンスは現在良い状態にありますが、平日と休日の睡眠リズムが乱れているようです。睡眠リズムが乱れた生活が続くと、パフォーマンスが低下するかもしれません。なるべく同じ睡眠リズムで生活するよう意識しましょう。
【0095】
3 悪 良 良
労働パフォーマンスが悪い状態にあります。睡眠状態とリズムの両方が、パフォーマンスに影響することが分かってきていますが、あなたは睡眠状態も平日と休日の睡眠のリズムも良い状態にあるようです。睡眠以外何か他の問題があるかもしれません。今の睡眠習慣は維持するようにしましょう。
【0096】
4 良 良 良
労働パフォーマンスが良い状態にあります。睡眠状態とリズムの両方がパフォーマンスに影響することが分かってきていますが、あなたは睡眠状態と睡眠のリズムの両方が良い状態のようです。これからも、今の生活リズムを維持するようにしてください。
【0097】
5 悪 悪 悪
労働パフォーマンスが悪い状態にあります。睡眠状態とリズムの両方がパフォーマンスに影響することが分かってきていますが、あなたは睡眠状態が悪く、平日と休日の睡眠リズムも乱れています。まずは、なるべく同じ睡眠リズムで生活するよう、意識してみてください。
【0098】
6 良 悪 悪
睡眠状態が悪く、平日と休日の睡眠のリズムも乱れています。睡眠状態とリズムは、労働パフォーマンスに影響することが分かってきています。今は労働パフォーマンスが良い状態にありますが、労働パフォーマンスが低下しないよう、これからは、なるべく同じ睡眠リズムで生活するように意識して過ごしましょう。
【0099】
7 悪 悪 良
労働パフォーマンスが悪い状態にあります。睡眠状態とリズムは、労働パフォーマンスに影響することが分かってきています。あなたは、平日と休日の睡眠リズムは整っていますが、睡眠状態が良くありません。ストレスがあると質の良い睡眠が取れません。リラックスを心掛けてみてください。
【0100】
8 良 悪 良
睡眠状態とリズムは、労働パフォーマンスに影響することが分かってきています。あなたは、平日と休日の睡眠リズムは整っていますが、睡眠状態が良くありません。今は労働パフォーマンスが良い状態にありますが、労働パフォーマンスが低下しないよう、睡眠状態の改善を目指しましょう。ストレスがあると質の良い睡眠が取れません。リラックスを心掛けてみてください。
【0101】
図6は、睡眠改善情報の他の例として、風邪罹患オッズ比(Z軸)をアテネ不眠尺度総合得点(X軸)およびソーシャル・ジェットラグ(Y軸)の関数で示すグラフである。アテネ不眠尺度総合得点が3p以下かつソーシャル・ジェットラグが1時間未満を基準とした場合の、各変数カテゴリのオッズ比を便宜的にバーグラフによって視覚化した。このグラフから、アテネ不眠尺度総合得点が増加するほど、そしてソーシャル・ジェットラグが増加するほど、風邪をひくオッズ比は増加することが判る。
【0102】
次に、風邪罹患オッズ比の算出方法について説明する。解析対象集団について、風邪の罹患の有無を目的変数、アテネ不眠尺度総合得点4分類およびソーシャルジェットラグ3分類を説明変数とした、下記式(1)のロジスティック回帰モデルを使用して、アテネ不眠尺度総合得点4分類およびソーシャルジェットラグ3分類の分類水準の変化にともなうオッズを推定できる。
【0103】
【0104】
但し、iはi番目の対象者を示し、pはアンケートによって聴取された風邪罹患確率、ATNはアテネ不眠尺度4分類(~3p,4~5p,6~9p,10p~)、SJLはソーシャルジェットラグ3分類(~1h,1~2h,2h~)を示す。ATNおよびSJLの変化にともなうオッズ比は、それぞれexp(β2)、exp(β3)として推定する。なお実際の計算時には、ATNおよびSJLにダミー変数を用いてATN=~3pt、SJL=~1hをそれぞれの基準カテゴリとしている。
【0105】
推定には、統計処理プログラミング言語R3.6.0を使用した。以下に仮想データを用いて、推定に使用したR言語コードを示す。
【0106】
[仮想データの作成コード]
Y <- c(rep(0, 430), rep(1, 570))
ATN <- c(rep("~3p", 140), rep("4~5p", 50), rep("6~9p", 60), rep("10p~", 20),
rep("~3p", 60), rep("4~5p", 30), rep("6~9p", 20), rep("10p~", 10),
rep("~3p", 10), rep("4~5p", 10), rep("6~9p", 10), rep("10p~", 10),
rep("~3p", 130), rep("4~5p", 90), rep("6~9p", 70), rep("10p~", 40),
rep("~3p", 70), rep("4~5p", 40), rep("6~9p", 60), rep("10p~", 20),
rep("~3p", 10), rep("4~5p", 10), rep("6~9p", 10), rep("10p~", 20))
SJL <- c(rep("~1h", 340), rep("1~2h", 80), rep("2h~", 10),
rep("~1h", 390), rep("1~2h", 150), rep("2h~", 30))
d <- data.frame(Y, ATN, SJL)
【0107】
[オッズ比の推定コード]
RESULT <- glm(Y ~ ATN + SJL, data = d, family = binomial)
exp(RESULT$coefficients)
【0108】
例として、上記の仮想データにおけるオッズ比の推定結果を下記(表1)に示す。推定結果より、
図6に示すように、ATN=~3pに対して、ATN=10p~の場合のオッズ比は1.60となることが分かる。同様に、SJL=~1hに対して、SJL=2h~の場合のオッズ比は2.01となることが分かる。さらに、ATN=~3pかつSJL=~1hに対して、ATN=10p~かつSJL=2h~の場合のオッズ比は、1.60×2.01=3.21となる。
【0109】
【0110】
睡眠改善情報を出力する場合(S5)、端末21,22,23の画面に
図6に示すグラフとともに、上述した睡眠改善メッセージを併せて表示してもよい。さらに、
図6に示すグラフ、上述した睡眠改善メッセージとともに、感冒に関する回答結果(質問No.24とNo.25)、例えば、「あなたは過去6か月間に風邪をひきました。」というメッセージを併せて表示してもよい。さらに、
図6に示すグラフ、上述した睡眠改善メッセージとともに、例えば、「あなたの睡眠習慣は、睡眠状態が良いグループより1.8倍風邪をひきやすいです。」というアドバイスを併せて表示してもよい。
【0111】
また、
図4と
図6に示すグラフを表示する場合、現ユーザが入力したデータを反映したデータベースに基づいて計算したグラフを表示してもよく、あるいは、現ユーザが入力したデータを反映する前のデータベースに基づいて計算したグラフを表示してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、ソーシャル・ジェットラグを考慮した睡眠改善情報を提供できる点で産業上有用である。
【符号の説明】
【0113】
1 睡眠情報処理システム
10 ホストコンピュータ
11 ストレージ装置
21,22,23 端末