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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】検体検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240508BHJP
   G01N 33/553 20060101ALI20240508BHJP
   G01N 21/552 20140101ALN20240508BHJP
【FI】
G01N33/543 595
G01N33/553
G01N21/552
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020032843
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021135226
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】田伏 千緒
(72)【発明者】
【氏名】金山 省一
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-215553(JP,A)
【文献】特開2006-098370(JP,A)
【文献】特開2002-310903(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物質と特異的に結合する第1物質が固定化されたセンシングエリアを有する光導波路と、
前記被検物質と特異的に結合する第2物質が結合された磁性粒子を移動させる磁場を発生する磁場発生器と、
前記光導波路に光を入射させる光源と、
前記光導波路から出射または反射される光を検出する光検出器と、
前記光検出器が検出した光信号から前記被検物質の量又は有無に関する測定結果を導出する測定部と、
前記光信号に基づいて、前記磁場発生器を制御することで、前記測定結果の導出に用いる前記光信号のタイミングを調整する制御部と、
を備え
前記磁場発生器は、
前記第1物質と結合した前記被検物質と未反応の前記磁性粒子を前記光導波路から遠ざける方向に移動させる前記磁場を生成し、
前記制御部は、前記磁場の印加時における前記光信号の時間的な変化量に基づいて、前記磁場の印加が継続されるように、または、印加される前記磁場が強化されるように、前記磁場発生器を制御する、
検体検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、
記磁場の印加時における前記光信号の時間的な変化量に基づいて、前記磁性粒子が前記被検物質以外の物質と非特異的に結合しているか否かを判断し、
前記磁性粒子が前記被検物質以外の物質と非特異的に結合していると判断した場合、前記磁場の印加が継続されるように、または、印加される前記磁場が強化されるように、前記磁場発生器を制御する、
請求項に記載の検体検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記磁場の印加時における前記光信号の時間的な変化量が閾値以上である場合に、前記磁場の印加が継続されるように、または、印加される前記磁場が強化されるように、前記磁場発生器を制御する、
請求項又はに記載の検体検査装置。
【請求項4】
前記磁場発生器は、
前記磁性粒子を前記光導波路に近づける方向に移動させる第1磁場を生成し、前記磁性粒子に印加する第1の磁場発生器と、
未反応の前記磁性粒子を前記光導波路から遠ざける方向に移動させる前記磁場としての第2磁場を生成し、前記磁性粒子に印加する第2の磁場発生器と、
を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の検体検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、検体検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検物質を測定する技術が知られている。例えば、上記技術では、被検物質と特異的に結合する抗体等を固定化した磁性粒子と光導波路とを用いて、磁場を印加することにより非特異的に光導波路表面に吸着した粒子を除去する。これにより、被検物質の量として、例えば、抗原濃度等を測定することができる。しかし、上記技術をウイルス検査等に応用する際、例えば、検体に由来する成分(例えば、体液成分等)の影響が出てしまう場合がある。この影響により、被検物質以外の物質と非特異的に結合した粒子を磁場印加によって充分に除去できない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-215553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、測定精度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る検体検査装置は、光導波路と、磁場発生器と、光源と、光検出器と、測定部と、制御部とを備える。前記光導波路は、測定対象物質と特異的に結合する第1物質が固定化されたセンシングエリアを有する。前記磁場発生器は、前記測定対象物質と特異的に結合する第2物質が結合された磁性微粒子を移動させる磁場を発生する。前記光源は、前記光導波路に光を入射させる。前記光検出器は、前記光導波路から出射または反射される光を検出する。前記測定部は、前記光検出器が検出した光信号から前記測定対象物質の量又は有無に関する測定結果を導出する。前記制御部は、前記光信号に基づいて、前記測定結果の導出に用いる前記光信号のタイミングを調整する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る検体検査装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示す反応ユニットの構成の一例を示す図である。
図3図3は、出射光の光強度の時系列変化の一例を示すグラフである。
図4図4は、本実施形態に係る検体検査装置における出射光の光強度の時系列変化の一例を示すグラフである。
図5図5は、本実施形態に係る検体検査装置による処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して、検体検査装置の実施形態を詳細に説明する。なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。
【0008】
図1は、本実施形態に係る検体検査装置1の構成の一例を示すブロック図である。図2は、図1に示す反応ユニット2の構成の一例を示す図である。図1に示すように、検体検査装置1は、反応ユニット2及び測定システム3を備える。反応ユニット2は、検体検査装置1に対して着脱可能である。
【0009】
まず、図2を用いて、反応ユニット2について説明する。
【0010】
反応ユニット2は、図2に示すように、筐体21、透明基板22、光導波路23及び保護部材24を有する。筐体21の下面の一部は開口しており、その開口部内には、透明基板22上に、光導波路23及び保護部材24を薄膜技術で形成したチップが嵌め込まれる。保護部材24の一部は開口されている(開口端24a)。また、筐体21、光導波路23及び保護部材24等によって反応容器201が形成される。なお、反応ユニット2は、その内部、すなわち反応容器201に、被検対象(被検物質)を含む試料溶液を収容可能に構成される。
【0011】
筐体21は、例えば樹脂等で形成される。筐体21の下面には第1の凹部が形成されている。第1の凹部の上面の一部には反応容器201の上面及び側面を構成する第2の凹部が形成されている。そして、第1の凹部には上から順に保護部材24、光導波路23及び透明基板22が配置されている。また、第2の凹部の上面の一端部近傍に筐体21を上方に貫通してその内部の反応容器201に試料溶液及び試薬等を導入するための孔21aが形成され、他端部近傍に筐体21を上方に貫通して反応容器201から空気を逃がすための孔21bが形成されている。なお、孔21a及び孔21bは、それぞれ複数形成されてもよい。
【0012】
透明基板22は、例えば樹脂又は光学ガラス等で形成される。透明基板22は、測定システム3に設けられる光源311から入射された光を光導波路23へ通過させる。また、透明基板22は、光導波路23から入射された光を測定システム3に設けられる光検出器312へ通過させる。
【0013】
光導波路23は、光が透過する材料、例えば樹脂又は光学ガラス等により形成される。樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂等を用いることができる。光導波路23は、透明基板22から入射して透明基板22へと出射する光の光路となる。すなわち、光導波路23は、光ファイバーにおけるコア(心材)同様の役割機能を果たす。そして、保護部材24及び透明基板22は、光導波路23の素材とは異なった屈折率の素材で形成され、光導波路23との境界面で光を全反射させ、光を光導波路23内に閉じ込めるクラッドとしての機能役割を果たす。また、保護部材24及び透明基板22は、光導波路23を物理的に保護する。
【0014】
光導波路23は、測定システム3から透明基板22を介して入射された光を伝播させる。光導波路23では、反応容器201に収容された被検物質の濃度、すなわち反応状態により影響を受けた光が伝播される。
【0015】
また、光導波路23に光が入射する付近の保護部材24側にはグレーティング23aが配置される。グレーティング23aは、光導波路23に入射される入射光L1を所定の角度で回折させる。グレーティング23aにおいて回折された光は、光導波路23と、透明基板22、保護部材24、又は混合液202により構成される面との界面に対し、臨界角の補角以下の角度で入射する。これにより、入射光L1は、光導波路23の界面において光導波路23内で繰り返し反射しながら伝播(導波)する。
【0016】
光導波路23から光が出射する付近の保護部材24側にはグレーティング23bが配置される。グレーティング23bは、光導波路23により光導波された光を所定の角度で回折させる。グレーティング23bにおいて回折された光は、光導波路23から外部へ所定角度を有して出射される。
【0017】
保護部材24は、筐体21の第2の凹部の位置に開口を有する。保護部材24は、光導波路23の上面に密着して配置されている。保護部材24は、光導波路23の上面に密着して配置されることで、平面保護層を構成する。また、保護部材24は、図2に示すように、光導波路23の主面(例えば上面)を露出させるための開口端24aを有する。開口端24aは、保護部材24の内側の開口を形成する鉛直面である。この開口端24aにより、光導波路23の上面が露出される。
【0018】
反応容器201は、上面が筐体21の第2の凹部の上面により構成され、側面が筐体21の第2の凹部の側面及び保護部材24の開口端24aにより構成され、下面が光導波路23の上面により構成される。
【0019】
反応容器201は、試料溶液及び試薬を収容し、試料溶液に含まれる被検物質と試薬とを反応させる。反応容器201を形成する面のうちの下面、すなわち光導波路23の上面には、複数の第1抗体211が固定される。第1抗体211は、被検物質に含まれる抗原212と抗原抗体反応により特異的に反応する物質である。第1抗体211は、例えば光導波路23の上面との間に生じる疎水性相互作用又は化学結合等により、光導波路23の上面に固定される。第1抗体211は、「第1物質」の一例である。
【0020】
反応容器201は、例えば、予め空の状態となっている。被検物質の測定時においては、例えば孔21aを介して、外部から反応容器201へ、試料溶液と試薬との混合液202が注入される。試料溶液には、抗原212を含む被検物質が含まれる。試薬には、試薬成分213が含まれる。試薬成分213には、例えば抗原212と抗原抗体反応により特異的に反応する第2抗体214と、第2抗体214が結合された磁性粒子215とが含まれる。磁性粒子215は、少なくとも一部がマグネタイト等の磁性体材料で形成されている。磁性粒子215は、例えば、磁性体材料から形成された粒子の表面が高分子材料で被覆されている。なお、磁性粒子215は、高分子材料で構成された粒子の表面を磁性体材料で被覆するように構成されてもよい。また、磁性粒子215は、混合液202において分散可能に構成されたものであればどのようなもので代替してもよい。第2抗体214は、「第2物質」の一例である。
【0021】
混合液202を注入することで、反応容器201には、光導波路23の上面に固定された第1抗体211に加えて、試料溶液中の被検物質に含まれる抗原212及び試薬に含まれる試薬成分213が収容される。反応容器201に混合液202が注入されると、反応容器201内の空気は、孔21bから外部へ排出される。
【0022】
試薬成分213は、反応容器201に満たされた混合液202中を分散可能に移動する。このとき、磁性粒子215は、磁性粒子215に掛かる重力が、この重力と逆向きに掛かる混合液202中における浮力よりも大きくなるように選ばれる。第2抗体214が結合された磁性粒子215は、第2抗体214が、抗原212を介して第1抗体211と結合することで、光導波路23の上面近傍に固定される。なお、第2抗体214は、第1抗体211と同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0023】
反応ユニット2では、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と被検物質に含まれる抗原212が反応することにより、第2抗体214が結合された磁性粒子215が光導波路23の上面近傍に固定される。光導波路23を導波する光は、光導波路23の上面近傍に固定される磁性粒子215により散乱及び吸収等される。この結果、光導波路23を導波する光は、減衰されて光導波路23から出射されることになる。すなわち、入射光L1は、第1抗体211と、磁性粒子215に固定化される第2抗体214とを結びつける抗原212の量に応じて減衰される。換言すると、入射光L1は、反応容器201内に収容された抗原212の量に応じて減衰される。
【0024】
以下、反応容器201において、光導波路23の表面から鉛直上方向に距離Lだけ離れた領域、すなわち光導波路23の表面近傍に至る領域をセンシングエリア205と定義する。
【0025】
光が光導波路23内を伝播する場合、光導波路23の上面において近接場光(以下、エバネッセント光と記載する)が発生する。センシングエリア205は、エバネッセント光が発生し得る領域である。センシングエリア205において、光導波路23の上面に固定された第1抗体211は、試料溶液中の被検物質に含まれる抗原212を介し、試薬成分213に含まれる磁性粒子215に固定化された第2抗体214と結合する。これにより、光導波路23の上面の近傍に第2抗体214が結合された磁性粒子215が保持される。
【0026】
次に、反応容器201内において起こる抗原抗体反応等によって光導波路23を伝播する光が受ける影響ついて説明する。なお、第1抗体211、第2抗体214及び抗原212は、磁性粒子215と比較して、ごく小さい。図2では、結合反応を模式的に示すため、第1抗体211、抗原212、第2抗体214及び磁性粒子215を同様な大きさとして図示する。
【0027】
磁性粒子215がセンシングエリア205内に進入すると、磁性粒子215に固定化される第2抗体214は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合する。これにより、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、センシングエリア205に留まる。磁性粒子215がセンシングエリア205に留まった状態で光導波路23の上面においてエバネッセント光が発生すると、センシングエリア205に留まっている磁性粒子215がこのエバネッセント光を散乱及び吸収等し、エバネッセント光を減衰させる。このセンシングエリア205におけるエバネッセント光の散乱及び吸収等は、光導波路23内を伝播する光に対して影響を及ぼす。すなわち、センシングエリア205においてエバネッセント光が減衰されることにより、光導波路23内を光導波する光も減衰される。したがって、センシングエリア205においてエバネッセント光が強く散乱及び吸収等されると、光導波路23内を伝播する光の強度が低下する。換言すると、センシングエリア205内に留まる磁性粒子215の量が多いほど、光導波路23から出力される光の強度が低下する。
【0028】
ただし、センシングエリア205内に留まる磁性粒子215は、測定対象である抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と、磁性粒子215に固定化される第2抗体214とが結合したものに限られない。このため、被検物質に含まれる抗原212の正確な濃度を測定するためには、測定に関与しない、すなわち抗原212と結合していない第2抗体214が結合された磁性粒子215をセンシングエリア205から遠ざける必要がある。具体的な方法としては、例えば磁場による近接作用により、第2抗体214が抗原212と結合していない磁性粒子215を移動させる方法がある。
【0029】
これにより、最終的にセンシングエリア205に留まる磁性粒子215は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と、第2抗体214とが結合されているものとなる。このため、反応ユニット2から出射される光の強度の値及び強度の時系列変化は、センシングエリア205に留まる磁性粒子215の量及び濃度等に対応する。
【0030】
なお、反応ユニット2は、同一の測定項目について、同一の被検物質を複数チャンネルで同時に並行測定可能な構成であってもよい。このとき、反応ユニット2は、例えばチャンネル毎に独立した光導波路を有する。
【0031】
次に、図1を用いて、測定システム3について説明する。
【0032】
測定システム3は、図1に示すように、検知ユニット31、磁場発生器32、出力ユニット33、入力インタフェース回路34、記憶回路35及び処理回路36を有する。
【0033】
検知ユニット31は、光源311及び光検出器312を有する。
【0034】
光源311は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等のダイオードやキセノンランプ等のランプである。光源311は、グレーティング23aに向けて光導波路23内に光を入射可能な位置に配置される。光源311は、入射光L1を、反応ユニット2の透明基板22を介して光導波路23内に入射する。入射光L1は、光導波路23内に進入し、グレーティング23aにより回折される。グレーティング23aにより回折された入射光L1は、光導波路23内を全反射しながら伝播し、グレーティング23bに到達する。グレーティング23bに到達した光は、グレーティング23bにより回折され、光導波路23から外部へ所定角度を有して出射光L2として出射される。なお、光源311の代わりに、光以外の電磁波等を発生するものを用いてもよい。
【0035】
光検出器312は、混合液202が収容されている反応容器201内の反応状態に基づいた電気信号を出力する。具体的には、光検出器312は、光導波路23の外へ出射される出射光L2を検出し、検出された出射光L2の強度を示す電気信号、すなわち光検出強度に関するデジタルデータを生成する。光検出器312により生成された光検出強度に関するデジタルデータは処理回路36に供給される。
【0036】
なお、検知ユニット31は、同一の測定項目について、同一の被検物質を複数チャンネルで同時に並行測定可能な構成であってもよい。このとき、検知ユニット31は、例えばチャンネル毎に光源及び光検出器を有するとしてもよいし、光源及び光検出器を共有することもできる。
【0037】
磁場発生器32は、反応容器201内の反応、すなわち磁性粒子215に固定された第2抗体214と光導波路23の上面に固定された第1抗体211との抗原212を介した結合を促進させるエネルギーを発生する。具体的には、磁場発生器32は、図2に示すように、上磁場発生器32a及び下磁場発生器32bを有する。また、磁場発生器32は、図示しない駆動回路を有する。磁場発生器32は、処理回路36の制御の下、反応容器201に対して磁場を印加する。
【0038】
下磁場発生器32bは、例えば永久磁石及び電磁石等で構成される。下磁場発生器32bは、反応ユニット2の下方に設けられる。下磁場発生器32bは、反応容器201内の反応を促進させるエネルギーである鉛直下向きの磁場を水平方向に一様に発生させる。発生された鉛直下向きの磁場により、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、鉛直下方向の力を受けて下降する。このとき、下磁場発生器32bは、所定の強さの磁場を発生させることで、第2抗体214が結合された磁性粒子215を光導波路23に近づける。下磁場発生器32bは、「第1の磁場発生器」の一例である。
【0039】
上磁場発生器32aは、例えば永久磁石及び電磁石等で構成される。上磁場発生器32aは、図2に示すように、反応ユニット2の上方に設けられる。上磁場発生器32aは、反応容器201において鉛直上向きの磁場を水平方向に一様に発生させる。発生された鉛直上向きの磁場により、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、鉛直上方向の力を受けて上昇する。このとき、上磁場発生器32aは、所定の強さの磁場を発生させることで、第2抗体214が結合された磁性粒子215を選択的にセンシングエリア205から遠ざける。すなわち、上磁場発生器32aは、発生させる磁場の強さを調整することで、光導波路23の上面に固定される、第1抗体211と抗原212を介して結合する第2抗体214が結合された磁性粒子215のみをセンシングエリア205に留めることが可能となる。上磁場発生器32aは、「第2の磁場発生器」の一例である。
【0040】
出力ユニット33は、ディスプレイ331、スピーカ332、及びプリンタ333を有する。
【0041】
ディスプレイ331は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ331は、処理回路36によって生成された各種の画像を表示したり、操作者から各種の操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。例えば、ディスプレイ331は、液晶ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等である。ディスプレイ331は、処理回路36の制御に従い、各種操作画面、光検出器312から供給された出射光L2の光強度を示す情報、光強度を示す情報の時系列データ、及び被検物質の測定結果等を表示する。測定結果は、例えば抗原212の濃度、重量又は個数等である。
【0042】
スピーカ332は、処理回路36の制御の下、被検物質の測定結果等を操作者に報知する。
【0043】
プリンタ333は、処理回路36の制御の下、例えばディスプレイ331に表示される各種操作画面、光検出器312から供給された出射光L2の光強度を示す情報、光強度を示す情報の時系列データ、及び被検物質の測定結果等を印刷する。
【0044】
入力インタフェース回路34は、例えばトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、及び表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチパネルディスプレイ等によって実現される。入力インタフェース回路34は、操作者の操作に対応した操作入力信号を処理回路36に出力する。なお、本実施形態において入力インタフェース回路はマウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路36へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース回路の例に含まれる。
【0045】
記憶回路35は、磁気的若しくは光学的記録媒体又は半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体等を有する。記憶回路35は、本実施形態に係る検体検査装置1の回路で実行されるプログラムを記憶する。なお、記憶回路35の記憶媒体内のプログラム及びデータの一部又は全部は電子ネットワークを介してダウンロードされるように構成してもよい。
【0046】
記憶回路35は、光検出器312から供給された出射光L2の光強度を示す情報、光強度を示す情報の時系列データ、及び測定対象となる被検物質の測定結果等を記憶する。
【0047】
記憶回路35は、対象となる被検物質の測定を行うための設定情報を記憶する。設定情報は、例えば測定に必要な所定の処理を実行するタイミングを規定する情報を含む。測定に必要な所定の処理を実行するタイミングとは、例えば下磁場発生器32bにより発生される下磁場の印加が開始されるタイミング、検出区間が開始されるタイミング、算出タイミング(下磁場の印加が停止されるタイミング)、検出区間が終了されるタイミング、上磁場の印加が開始されるタイミング及び最終判定が実施されるタイミングである。これらのタイミングは、予め経験的、実験的に取得される。
【0048】
記憶回路35は、予め設定された設定期間Tを記憶する。設定期間Tは、例えば光信号を収集する収集期間として、予め設定されている。設定期間Tの具体例については後述する。
【0049】
処理回路36は、例えば検体検査装置1の各構成回路を制御するプロセッサである。処理回路36は、検体検査装置1の中枢として機能する。処理回路36は、記憶回路35から各動作プログラムを呼び出し、呼び出したプログラムを実行することで光源制御機能361、磁場制御機能362、収集機能363、測定機能364及び出力制御機能365を実現する。
【0050】
光源制御機能361は、光源311を制御し、所定の条件で光を発生させる機能である。光源制御機能361では、処理回路36は、少なくとも測定開始から測定終了までの間、連続的又は間欠的に光源311から入射光L1を発生させる。
【0051】
磁場制御機能362は、記憶回路35に記憶されているタイムスケジュールに従って磁場発生器32を制御し、反応容器201内の反応を促進させるエネルギーの印加状態を切り替える。具体的には、磁場制御機能362は、記憶回路35から設定情報を読出し、読み出した設定情報に基づいて磁場発生器32を制御し、磁場発生器32に磁場を発生させる。磁場制御機能362の具体的な処理については後述する。磁場制御機能362は、「制御部」の一例である。
【0052】
収集機能363は、光検出器312により検出された光信号を収集する。収集機能363の具体的な処理については後述する。
【0053】
測定機能364は、収集機能363により収集された光信号から被検物質の量(例えば、抗原濃度等)又は有無に関する測定結果を導出する。測定機能364の具体的な処理については後述する。測定機能364は、「測定部」の一例である。
【0054】
出力制御機能365は、出力ユニット33を制御し、操作者に対して被検物質の量(抗原濃度)又は有無に関する測定結果を出力する。具体的には、出力制御機能365は、ディスプレイ331又はプリンタ333を制御し、測定結果を操作者に提示する。例えば、測定結果をディスプレイ331に表示したり、プリンタで印刷したりすることにより、操作者に提示する。出力制御機能365は、スピーカ332を制御し、測定結果を操作者に報知する。例えば、測定結果をスピーカ332から音等で知らせることにより、操作者に報知する。
【0055】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路60に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路60にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0056】
次に、図3を用いて、磁場が印加されるタイミングや、測定のタイミングについて説明する。
【0057】
図3は、出射光L2の光強度の時系列変化の一例を示すグラフである。図3において、横軸は時間tを示し、縦軸は出射光L2の光信号の強度を示す。
【0058】
まず、時間t0において、反応容器201への試料溶液及び試薬から成る混合液202の注入が開始される。反応容器201への混合液202の注入は、自動で行われてもよいし、手動で行われてもよい。
【0059】
また、時間t0において、収集機能363は、光検出器312により検出された光信号として、光強度のデータの収集を開始する。具体的には、光源311は、例えば反応容器201に対する混合液202の注入が開始されると、光導波路23に対し、継続的に一定の強度の光を入射する。光導波路23には、光源311から出射された光が透明基板22を介して入射される。光導波路23に入射された光は、光導波路23内を全反射しながら伝播し、透明基板22を介して光検出器312へ出射される。光検出器312は、光導波路23から出射された光を受光し、処理回路36に対して、光強度のデータを所定の時間間隔で供給する。処理回路36の収集機能363は、光検出器312から供給される光強度のデータを収集する。
【0060】
時間t1において、下磁場発生器32bにより、下磁場の印加が開始される。
【0061】
下磁場の印加が開始された場合、試料溶液で満たされた反応容器201中の第2抗体214が結合された複数の磁性粒子215は、下磁場による鉛直下向きの磁力を受けて、その一部が磁力線に引き寄せられることで磁力線に沿って整列され始める。磁力線に沿って整列された第2抗体214が結合された磁性粒子215は、重力及び磁力に従って徐々に沈降し、センシングエリア205に進入する。センシングエリア205に進入した磁性粒子215に固定された第2抗体214は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合する。
【0062】
一方、磁力線に沿って整列されなかった第2抗体214が結合された磁性粒子215については、重力に従って徐々に沈降し、センシングエリア205に進入する。センシングエリア205に進入した磁性粒子215に固定された第2抗体214は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合する。
【0063】
時間t2において、センシングエリア205には、第2抗体214が結合された磁性粒子215が次々に進入するので光強度は減少する。光強度は、時間t1の直後から大きな減少率(傾き)で減少し始める。光強度の減少率は、時間の経過とともに小さくなる。その後、光強度の減少は、時間t2において、ほとんどなく、光強度は、時間t2において、ある強度に収束する。
【0064】
このように、センシングエリア205への第2抗体214が結合された磁性粒子215の進入が停止し、光強度は、時間t2において、ある強度に収束する。なお、時間t2から時間t3においても、反応容器201に収容された抗原212の一部は、第2抗体214に順次結合される。
【0065】
時間t3において、下磁場発生器32bにより、下磁場の印加が停止される。ここで、下磁場の印加が停止されると、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、下磁場による束縛から解放されることで自然沈降を開始する。
【0066】
そして、磁力線に沿って整列された第2抗体214が結合された磁性粒子215は、下磁場による束縛から解放されることで、整列された状態が崩され、光導波路23の上面に向けて無秩序に沈降する。光強度Aは、時間t3から時間t4においてセンシングエリア205に第2抗体214が結合された磁性粒子215が次々に進入するため、大きな減少率で減少する。光強度Aの減少率は、時間の経過とともに小さくなる。その後、光強度Aの減少は、時間t4において、ほとんどなく、光強度は、時間t4において、ある強度に収束する。
【0067】
このように、センシングエリア205への第2抗体214が結合された磁性粒子215の進入が停止し、光強度は、時間t4において、ある強度に収束する。このとき、光導波路23の上面に接する第2抗体214が結合された複数の磁性粒子215の一部は、抗原212を介して光導波路23の上面に固定された第1抗体211と特異的に結合する。このような第2抗体214が結合された磁性粒子215は、光導波路23の上面に整列して堆積される。すなわち、センシングエリア205内は、第2抗体214が結合された磁性粒子215によりほぼ隙間なく占められた状態となる。なお、時間t4の段階で光導波路23の上面に固定された第1抗体211と抗原212を介して結合していなかった第2抗体214が結合された複数の磁性粒子215のうちの一部は、時間t4から時間t5において、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と抗原212を介して結合する。
【0068】
時間t5において、上磁場発生器32aにより、上磁場の印加が開始される。
【0069】
ここで、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、光導波路23の上面に整列して堆積されている。このとき、光導波路23の上面と接する第2抗体214が結合された磁性粒子215の多くが光導波路23の上面に固定された第1抗体211と特異的に結合している。また、試料溶液で満たされた反応容器201中の第2抗体214が結合された磁性粒子215は、上磁場による鉛直上向きの磁力を受けて、センシングエリア205への進入が停止し、時間t5から時間t6にかけて、光強度Aが、ある強度に収束する。
【0070】
すなわち、光強度Aが、ある強度に収束されると、センシングエリア205には、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と特異的に結合した第2抗体214が結合された磁性粒子215のみが存在する状態となる。ここで、上磁場の磁場強度を適切な値とすることで、抗原抗体反応により抗原212を介してセンシングエリア205に結合された磁性粒子215は引き剥がさず、抗原212を介さずにセンシングエリア205に吸着した磁性粒子215を除去することができる。
【0071】
時間t6において、上磁場発生器32aにより、上磁場の印加が停止される。時間t0から時間t6までの時間は、記憶回路35に記憶された設定期間Tに相当する。
【0072】
また、時間t6において、収集機能363は、光検出器312により検出された光信号の収集を終了する。すなわち、収集機能363は、光検出器312から供給される光強度のデータの収集を終了する。
【0073】
また、時間t6に達したときに、測定機能364は、収集機能363により収集された光信号から被検物質の量又は有無に関する測定結果を導出する。例えば、測定機能364は、時間t0において収集機能363により収集された光信号の強度比と、時間t6において収集機能363により収集された光信号の強度比との差分を計測することで、試料溶液中の抗原濃度を測定する。
【0074】
上述したように、光導波路23の上面には、被検物質に含まれる抗原212と抗原抗体反応により特異的に反応する物質である第1抗体211が固定される。そこで、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、時間t0~t5において、重力及び下磁場の磁力に従って徐々に沈降してセンシングエリア205に進入し、被検物質に含まれる抗原212を介して、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と結合する。また、抗原212を介さずにセンシングエリア205に吸着した磁性粒子215は、時間t5~t6において、上磁場の磁力に従って除去される。これにより、測定機能364は、時間t0において収集機能363により収集された光信号の強度比と、時間t6において収集機能363により収集された光信号の強度比との差分を計測することで、試料溶液中の抗原濃度を測定する。
【0075】
ここで、測定では、例えば非特異的な吸着等による影響を受ける場合がある。このため、設定期間Tに設定された時間t6を、測定機能364が測定結果の導出に用いる光信号のタイミングとする場合、次のような問題がある。例えば、下磁場が印加されたときに、第2抗体214が結合された磁性粒子215は、検体に由来する成分(例えば、体液成分等)を介して、光導波路23の上面に固定された第1抗体211と、吸着等によって結合する場合がある。例えば、上磁場の印加が停止される時間t6において、センシングエリア205には非特異的に吸着した磁性粒子215が存在する場合がある。この場合、時間t0において収集機能363により収集された光信号の強度比と、時間t6において収集機能363により収集された光信号の強度比との差分を計測しても、試料溶液中の抗原濃度を正確に測定することができない。
【0076】
そこで、本実施形態に係る検体検査装置1は、測定精度を向上させることができるように、以下の処理を行う。本実施形態に係る検体検査装置1は、光導波路23と、磁場発生器32と、光源311と、光検出器312と、測定機能364と、磁場制御機能362とを備える。光導波路23は、被検物質(抗原212)と特異的に結合する第1物質(第1抗体211)が固定化されたセンシングエリア205を有する。磁場発生器32は、被検物質(抗原212)と特異的に結合する第2物質(第2抗体214)が結合された磁性粒子215を移動させる磁場を発生する。光源311は、光導波路23に光を入射させる。光検出器312は、光導波路23から出射または反射される光を検出する。測定機能364は、光検出器312が検出した光信号から被検物質の量又は有無に関する測定結果を導出する。磁場制御機能362は、光信号に基づいて、測定結果の導出に用いる光信号のタイミングを調整する。
【0077】
図4は、本実施形態に係る検体検査装置1における出射光L2の光強度の時系列変化の一例を示すグラフである。図4において、横軸は時間tを示し、縦軸は出射光L2の光信号の強度を示す。
【0078】
図4に示すように、本実施形態では、磁場制御機能362は、時間t6の時点で上磁場発生器32aによる上磁場の印加を停止させないで、設定期間Tが経過しても上磁場の印加を継続させる。また、磁場制御機能362は、時間t6の時点で収集機能363による光信号の収集を終了させずに、設定期間Tが経過しても光信号の収集を継続させる。すなわち、磁場制御機能362は、光信号を収集する収集期間を調整することにより、測定機能364が測定結果を導出するタイミングを調整する。例えば、磁場制御機能362は、光信号の応答に応じて、上磁場発生器32aを制御することで、収集期間を調整する。
【0079】
具体的には、磁場制御機能362は、光信号の応答として、収集機能363により収集された光信号の時間的な変化量に基づいて、収集期間を調整する。この場合、磁場制御機能362は、以下のように、設定期間Tが経過しても、一定間隔でモニタリングして、上磁場の印加が継続されるように上磁場発生器32aを制御する。
【0080】
例えば、磁場制御機能362は、時間t5~t6において、収集機能363により収集された光信号の時間的な変化量が閾値以上であるか否かを判定する。例えば、光信号の時間的な変化量は、時間t5から時間t6までの時間に対する光信号の強度の増加量の比率である。すなわち、光信号の時間的な変化量は、単位時間当たりの光信号の強度の傾きである。例えば、磁場制御機能362は、時間t5~t6において、光信号の時間的な変化量が閾値以上であると判定したものとする。この場合、磁場制御機能362は、磁性粒子215が被検物質以外の物質と非特異的に結合していると判断し、時間t6以降においても、上磁場の印加が継続されるように上磁場発生器32aを制御する。
【0081】
例えば、磁場制御機能362は、時間t6~t7において、収集機能363により収集された光信号の時間的な変化量が閾値以上であるか否かを判定する。磁場制御機能362は、時間t6~t7において、光信号の時間的な変化量が閾値以上であると判定したものとする。この場合、磁場制御機能362は、磁性粒子215が被検物質以外の物質と非特異的に結合していると判断し、時間t7以降においても、上磁場の印加が継続されるように上磁場発生器32aを制御する。
【0082】
例えば、磁場制御機能362は、時間t7~t8において、収集機能363により収集された光信号の時間的な変化量が閾値以上であるか否かを判定する。磁場制御機能362は、時間t7~t8において、光信号の時間的な変化量が閾値より小さいと判定したものとする。この場合、磁場制御機能362は、光信号の収集が終了するように収集機能363を制御すると共に、上磁場の印加が停止するように上磁場発生器32aを制御する。すなわち、磁場制御機能362は、収集機能363による光強度のデータの収集を終了させ、上磁場発生器32aによる上磁場の印加を停止させる。ここで、時間t6から時間t8までの時間は、設定期間Tの経過後の継続期間Txに相当する。すなわち、収集期間は、設定期間Tに継続期間Txを加えた期間に調整される。また、時間t8は、測定機能364が測定結果の導出に用いる光信号のタイミングとなる。
【0083】
光強度のデータの収集が終了し、上磁場の印加が停止したときに、測定機能364は、収集機能363により収集された光信号から被検物質の量又は有無に関する測定結果を導出する。例えば、測定機能364は、時間t0において収集機能363により収集された光信号の強度比と、時間t6において収集機能363により収集された光信号の強度比との差分を計測することで、試料溶液中の抗原濃度を測定する。
【0084】
図5は、本実施形態に係る検体検査装置1による処理の手順を示すフローチャートである。
【0085】
図5のステップS101では、収集機能363は、光検出器312により検出された光信号として、光強度のデータの収集を開始する。
【0086】
図5のステップS102では、磁場制御機能362は、下磁場発生器32bを制御して下磁場の印加を開始する。
【0087】
図5のステップS103では、磁場制御機能362は、下磁場発生器32bを制御して下磁場の印加を停止する。
【0088】
図5のステップS104では、磁場制御機能362は、上磁場発生器32aを制御して上磁場の印加を開始する。
【0089】
図5のステップS105では、磁場制御機能362は、設定期間Tが経過したか否かを判定する。
【0090】
ここで、設定期間Tが経過していないと磁場制御機能362が判定した場合(ステップS105;No)、再度、ステップS105の判定処理が行われる。
【0091】
一方、設定期間Tが経過したと磁場制御機能362が判定した場合(ステップS105;Yes)、ステップS106が実行される。
【0092】
図5のステップS106では、磁場制御機能362は、収集機能363により収集された光信号の時間的な変化量が閾値以上であるか否かを判定する。
【0093】
ここで、光信号の時間的な変化量が閾値以上であると磁場制御機能362が判定した場合(ステップS106;Yes)、再度、ステップS106の判定処理が行われる。この場合、磁場制御機能362は、収集期間として設定された設定期間Tが経過しても、上磁場発生器32aを制御して上磁場の印加を継続する。
【0094】
一方、光信号の時間的な変化量が閾値より小さいと磁場制御機能362が判定した場合(ステップS106;No)、ステップS107が実行される。
【0095】
図5のステップS107では、収集機能363は、光検出器312により検出された光信号の収集を終了する。すなわち、収集機能363は、光検出器312から供給される光強度のデータの収集を終了する。
【0096】
図5のステップS108では、磁場制御機能362は、上磁場発生器32aを制御して上磁場の印加を停止する。
【0097】
これにより、測定機能364は、ステップS101の時点で収集機能363により収集された光信号の強度比と、ステップS107の時点で収集機能363により収集された光信号の強度比との差分を計測することで、試料溶液中の抗原濃度を測定する。
【0098】
以上の説明により、本実施形態に係る検体検査装置1では、光導波路23は、被検物質(抗原212)と特異的に結合する第1物質(第1抗体211)が固定化されたセンシングエリア205を有する。磁場発生器32は、被検物質(抗原212)と特異的に結合する第2物質(第2抗体214)が結合された磁性粒子215を移動させる磁場を発生する。光源311は、光導波路23に光を入射させる。光検出器312は、光導波路23から出射または反射される光を検出する。測定機能364は、光検出器312が検出した光信号から被検物質の量又は有無に関する測定結果を導出する。磁場制御機能362は、光信号に基づいて、測定結果の導出に用いる光信号のタイミングを調整する。例えば、磁場制御機能362は、光信号の応答に応じて、磁場発生器32を制御することで、測定結果の導出に用いる光信号のタイミングを調整する。
【0099】
具体的には、磁場発生器32は、第1の磁場発生器(下磁場発生器32b)と、第2の磁場発生器(上磁場発生器32a)とを有する。下磁場発生器32bは、磁性粒子215を光導波路23に近づける方向に移動させる第1磁場(下磁場)を生成し、磁性粒子215に印加する。上磁場発生器32aは、未反応の磁性粒子215を光導波路23から遠ざける方向に移動させる第2磁場(上磁場)を生成し、磁性粒子215に印加する。磁場制御機能362は、上磁場の印加時における光信号の時間的な変化量に基づいて、上磁場の印加が継続されるように上磁場発生器32aを制御する。例えば、磁場制御機能362は、上磁場の印加時における光信号の時間的な変化量が閾値以上である場合に、磁場制御機能362は、磁性粒子215が被検物質以外の物質と非特異的に結合していると判断する。この場合、磁場制御機能362は、収集期間として設定された設定期間Tが経過しても上磁場の印加が継続されるように上磁場発生器32aを制御する。
【0100】
このように、本実施形態に係る検体検査装置1は、上記構成により、非特異的な吸着等による影響を受けずに、測定を行うことができる。
【0101】
(その他の実施形態)
これまで実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0102】
上述した実施形態では、設定期間Tが経過しても、上磁場の印加時における光信号の時間的な変化量が閾値以上であるときには、磁場制御機能362は、上磁場の印加が継続されるように上磁場発生器32aを制御しているが、実施形態は、これに限定されるものではない。例えば、設定期間Tが経過しても、上磁場の印加時における光信号の時間的な変化量が閾値以上である場合、磁場制御機能362は、印加される上磁場が強化されるように上磁場発生器32aを制御してもよい。すなわち、上磁場発生器32aにより印加される上磁場の磁力を強くしてもよい。または、上磁場発生器32aによる上磁場の印加を継続させながら、印加される上磁場を強化してもよい。
【0103】
上述した実施形態では、上磁場発生器32aにより上磁場が印加された際、磁場制御機能362は、収集機能363により収集された光信号の時間的な変化量に基づいて、上磁場の印加が継続されるように、または、印加される上磁場が強化されるように、上磁場発生器32aを制御している。すなわち、磁場制御機能362は、単位時間当たりの光信号の強度(光強度)の傾きに基づいて、上磁場発生器32aを制御している。しかし、実施形態は、これに限定されるものではない。変形例として、単位時間当たりの光強度の傾きに基づいて、被検物質の測定結果として陰性であるか否かの判定が行われてもよい。
【0104】
例えば、陽性においては、上磁場が印加された際、光強度が徐々に増加しながら収束し、陰性においては、上磁場が印加されたときに光強度が急激に増加し、その直後に収束する場合がある。そこで、磁場制御機能362は、上磁場が印加されたときにモニタリングして、光強度が急激に増加した後の傾きが閾値以上であるか否かを判断する。そして、光強度が急激に増加した後の傾きが閾値より小さいと磁場制御機能362が判断した場合、光強度が既に収束しているため、測定機能364は、被検物質の測定結果として陰性の可能性が高いと判定する。
【0105】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、測定精度を向上させることができる。
【0106】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0107】
1 検体検査装置
23 光導波路
32 磁場発生器
311 光源
312 光検出器
362 磁場制御機能
363 収集機能
364 測定機能
図1
図2
図3
図4
図5