(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】記録装置及び記録媒体の幅の決定方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20240508BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B41J29/38 202
B41J29/38 204
B65H7/14
(21)【出願番号】P 2020036035
(22)【出願日】2020-03-03
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】森本 泰司
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-009479(JP,A)
【文献】特開2008-142899(JP,A)
【文献】特開2013-170071(JP,A)
【文献】特開2002-268300(JP,A)
【文献】特開2005-169719(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0072139(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B65H 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって記録位置に搬送された前記記録媒体に画像を記録する記録手段と、
定形の記録媒体の、前記搬送手段によって搬送される記録媒体の搬送方向と交差する方向の長さである幅を記憶する第1の記憶
部と
、前記定形の記録媒体の幅と異なり、ユーザによって入力されたユーザ登録の記録媒体の幅を記憶することが可能な第2の記憶
部と、
を有する記憶手段と、
前記記録媒体の幅を測定する測定手段と、
前記測定手段が測定した前記記録媒体の幅と、前記第1の記憶
部及び前記第2の記憶
部に記憶されている記録媒体の幅と、に基づいて、前記測定手段が測定した記録媒体に対して前記記録手段が画像を記録する際の制御に用いられる幅を決定する決定手段と、
を有
し、
前記決定手段は、第1の記憶部に記憶されている幅情報と第2の記憶部に記憶されている幅情報のいずれかの幅情報の所定の範囲内に前記測定手段が測定した前記記録媒体の幅がある場合に、前記第1の記憶部又は前記第2の記憶部に記憶されている記録媒体の幅を、前記画像を記録する際の制御に用いられる幅として決定し、
前記決定手段は、前記測定手段が測定した前記記録媒体の幅が、第1の記憶部に記憶されている幅情報と第2の記憶部に記憶されている幅情報のいずれかに記憶されている記録媒体の幅ではないと判定した場合には、前記測定手段が測定した幅を、前記画像を記録する際の制御に用いられる幅として決定することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第2の記憶
部には複数のユーザ登録の記録媒体の幅を記憶することが可能なことを特徴とする請求項
1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記決定手段は、前記ユーザ登録の記録媒体の幅を、前記定形の記録媒体の幅よりも優先して前記画像を記録する際の制御に用いられる幅として決定することを特徴とする請求項1
または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記所定の範囲は、記録媒体によって異なる大きさに設定することができることを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記第1の記憶
部には、前記所定の範囲が重なる記録媒体について、決定される優先度が記憶されており、
前記決定手段は、前記測定手段が測定した幅が、前記第1の記憶
部に記憶されている複数の記録媒体の幅の前記所定の範囲内に入ると判定された場合には、前記優先度に従って前記画像を記録する際の制御に用いられる幅を決定することを特徴とする請求項
1乃至4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記決定手段が決定した前記画像を記録する際の制御に用いられる幅に基づいて前記記録手段によって画像を記録するための画像データを生成する生成手段を有することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
記録媒体を搬送し、
記録位置に搬送した前記記録媒体に画像を記録し、
定形の記録媒体の、記録媒体が搬送される前記記録媒体の搬送方向と交差する方向の長さである幅を記憶し、
前記定形の記録媒体の幅と異なり、ユーザによって入力されたユーザ登録の記録媒体の幅を記憶し、
前記記録媒体の幅を測定し、
前記測定した前記記録媒体の幅と、記憶されている記録媒体の幅と、に基づいて、前記測定した記録媒体に対して画像を記録する際の制御に用いられる幅を決定
し、
前記決定において、記憶されている記録媒体の幅から所定の範囲内に前記測定した前記記録媒体の幅がある場合には、記憶されている記録媒体の幅を、前記画像を記録する際の制御に用いられる幅として決定し、
前記決定において、測定した前記記録媒体の幅が、記憶されている記録媒体の種類ではないと判定した場合には、測定した幅を、前記画像を記録する際の制御に用いられる幅として決定することを特徴とする記録媒体の幅の決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置及び記録媒体の幅の決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、不定形サイズの紙でも定形サイズと同じ機能を使用するために、不定形サイズの用紙の紙幅をユーザが設定する方法が開示されている。そして、ユーザは給紙段にセットされている紙サイズを、設定した紙サイズの中から選択することで紙サイズが設定されることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法ではセットする用紙のサイズを変更するたびにどのサイズの用紙がセットされているのかを設定し直す必要があり、ユーザの手間となる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、用紙サイズの設定をする際のユーザの手間を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって記録位置に搬送された前記記録媒体に画像を記録する記録手段と、定形の記録媒体の、前記搬送手段によって搬送される記録媒体の搬送方向と交差する方向の長さである幅を記憶する第1の記憶部と、前記定形の記録媒体の幅と異なり、ユーザによって入力されたユーザ登録の記録媒体の幅を記憶することが可能な第2の記憶部と、を有する記憶手段と、前記記録媒体の幅を測定する測定手段と、前記測定手段が測定した前記記録媒体の幅と、前記第1の記憶部及び前記第2の記憶部に記憶されている記録媒体の幅と、に基づいて、前記測定手段が測定した記録媒体に対して前記記録手段が画像を記録する際の制御に用いられる幅を決定する決定手段と、を有し、前記決定手段は、第1の記憶部に記憶されている幅情報と第2の記憶部に記憶されている幅情報のいずれかの幅情報の所定の範囲内に前記測定手段が測定した前記記録媒体の幅がある場合に、前記第1の記憶部又は前記第2の記憶部に記憶されている記録媒体の幅を、前記画像を記録する際の制御に用いられる幅として決定し、前記決定手段は、前記測定手段が測定した前記記録媒体の幅が、第1の記憶部に記憶されている幅情報と第2の記憶部に記憶されている幅情報のいずれかに記憶されている記録媒体の幅ではないと判定した場合には、前記測定手段が測定した幅を、前記画像を記録する際の制御に用いられる幅として決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用する用紙の幅を予め登録し、センサにより測定した幅と比較してサイズを設定することにより、用紙サイズの設定をする際のユーザの手間を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る記録装置の断面模式図である。
【
図3】実施形態における定形外の幅の登録と削除の処理のフローチャートである。
【
図4】実施形態における入出力装置に表示する画面の表示例を示す図である。
【
図5】実施形態における、FlashROMに保存されている用紙幅の情報を表す表である。
【
図6】実施形態における用紙幅の決定処理のフローチャートである。
【
図7】実施形態における入出力装置に表示する画面の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。
【0010】
[装置構成]
図1は、本実施形態に係る画像処理装置を搭載した記録装置100の概略構成を示す図である。なお、本実施形態においては、画像処理装置とともに印刷機能が搭載された記録装置100を例示して以下の説明を行うが、画像処理装置の適用例はこれに限定されるものではない。例えば、画像処理装置は、原稿上の画像を読取る読取装置をさらに備えて複写機として機能するものや他の機能を加えた複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)としてもよい。また、給紙を行う給紙装置に適用してもよい。
【0011】
図1において、記録装置100は、プリンタコントローラ120、プリンタエンジン150、HDD161、入出力装置162を含んで構成される。また、記録装置100は、ネットワーク191を介してホストコンピュータ190に接続可能である。 プリンタコントローラ120は、HDDインターフェース(I/F)121、入出力装置I/F122、ROM I/F125、メモリコントローラ126を有する。また、プリンタコントローラ120は、ホストI/F 127、CPU(Central Processing Unit)128、コントローラエンジンインターフェース129、画像処理部130を有する。これらは、システムバス132を介して接続される。さらに、プリンタコントローラ120は、FlashROM123及びRAM124を有し、それぞれROM I/F125及びメモリコントローラ126を介してシステムバス132に接続される。上述したプリンタコントローラ120は、包含する各ハードウェア構成を用いて画像処理装置の機能を実現する。CPU128は、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)形態の中央演算処理部であり、プログラムの実行やハードウェアの起動により記録装置100全体の動作を制御する。FlashROM123は、CPU128が実行するためのプログラムや記録装置100の各種動作に必要な各種データを格納する。RAM124は、CPU128のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。
【0012】
画像処理部130は、各種画像処理を行い、例えば、記録装置100で扱う印刷データ(例えば、ページ記述言語で表されたデータ)を画像データ(ビットマップ画像データ)へ展開(変換)する処理やその他の画像処理を行う。また、画像処理部130は、入力された印刷データに含まれる画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像処理部130は、画像データに対し、有効な(記録装置100が印刷処理可能な)画素数への解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理を必要に応じて施す。これらの画像処理によって得られた画像データは、RAM124または、HDD161に格納される。
【0013】
プリンタエンジン150は、画像形成を行う印刷部である。プリンタエンジン150は、インクジェットヘッド151、カッタユニット152、搬送モータ153、プリンタコントローラ120とのインターフェース154、光学センサ155を備える。各部位は、システムバス156を介して接続されている。
【0014】
インクジェットヘッド151は、画像の印刷を行う印刷部であり、画像データに基づいてシート上に画像を印刷する。インクジェットヘッド151は、例えば、ノズル列を複数色分有し、
図2中矢印方向である搬送方向(+Y方向)へのシートの搬送に同期させて、印刷ヘッドからインクを吐出させてシート上に画像を形成する。なお、本実施形態に係る記録装置は、記録材としてインクを用いたインクジェット方式のプリンタを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。本発明は、サーマルプリンタ(昇華型、熱転写型など)、ドットインパクトプリンタ、LEDプリンタ、レーザープリンタなどの電子写真方式など、様々な印刷方式の記録装置が利用可能である。
【0015】
カッタユニット152は、本実施形態において印刷用の記録媒体として用いられるロール紙を切断する機構である。以下、記録媒体を「用紙」と称する。ただし、本実施形態では記録媒体として、紙以外にも布、OHP用シート等を用いることが可能である。カッタユニット152は、画像印刷後のロール紙を所定の長さにカットする。なおカッタユニット152で切断すると、紙粉が飛び散る用紙種の場合は、カット時の紙粉飛散防止のために、カット位置にカット屑軽減ラインを引く設定をFlashROM123に記憶させておく。また、カット屑軽減ライン設定とは独立して、用紙種毎にカッタユニット152の動作設定をFlashROM123に記憶させておくことができる。カッタユニット152を使って切断ができない用紙種の場合には、ユーザがハサミで切るためにカッタユニット152を動かさない設定(ユーザカット)をFlashROM123に記憶させておく。ユーザがロール紙を押さえながら切らないとカットする直線が曲がってしまう用紙種の場合には、ユーザの操作でカッタユニット152が動く設定(イジェクトカット)をFlashROM123に記憶させておく。ユーザカット、イジェクトカットの設定を行わない用紙種の場合は、カッタユニット152で自動的にカットする設定(オートカット)がFlashROM123に記憶される。
【0016】
搬送モータ153は、ロール紙を搬送させる搬送ローラを駆動させるためのモータであり、CPU128によって制御される。光学センサ155は、記録媒体の幅(X方向の長さ)を検知するための測定手段であり、発光素子としてのLED(Light Emitting Diode)、正反射光受光素子、拡散光受光素子等を含んで構成される反射型光学センサである。
【0017】
入出力装置162は、ユーザが種々の操作を行って情報を入力するための入力部、またユーザに種々の情報を通知するための表示部を含む。入力部はハードキーやパネル、音声入力が可能なマイクなどを含む。また、出力部は、ユーザへの情報の通知は音声発生器からの音響情報に基づく音響(ブザー、音声等)を出力することによって行ってもよい。給紙時において、ユーザは入出力装置162を使用して、用紙種選択を行い、選択された用紙種を記録装置100に指示することにより、記録装置100は、用紙種毎に設定された搬送を行う。
【0018】
HDD161は、不揮発性の記憶領域であり、CPU128が実行するためのプログラム、印刷データ、記録装置100の各種動作に必要な設定情報を記憶させたり、読み出したりすることが可能である。なお、HDD161に代えて、フラッシュメモリなど、その他の大容量記憶装置を用いてもよい。
【0019】
なお、本実施形態では、入出力装置162は記録装置100が備える構成として説明するが、これに限定されず、例えばネットワーク191を介して外付けの構成として接続されてもよい。また、ホストコンピュータ190とホストコンピュータ190に接続されたディスプレイが入出力装置162を兼ねていてもよい。また、記録装置100は、入出力装置162の他に、ネットワーク191等を介して他の入出力装置を更に接続可能であってもよい。
【0020】
ホストコンピュータ190は、例えば、印刷データの供給源となる外部装置であり、記録装置100を制御するためのプリンタドライバがインストールされている。記録装置100は、ホストコンピュータ190の代わりに、例えば、画像読取用のリーダ、デジタルカメラ、スマートフォンなど、印刷データの供給源となるようなデータ提供装置が設けられてもよい。各機器と記録装置100との接続形態は、ネットワーク191を介したものに限定するものではなく、例えば、無線通信にて直接接続されてもよい。
【0021】
図2は、本実施形態に係る記録装置100の断面模式図である。本実施形態に係る記録装置100は、2つのロール紙管201、202を備え、それぞれ異なる種類、幅のロール紙を設置可能である。
図2では、上段ロール紙管201からロール紙204が搬送ローラ205により、搬送経路に沿って搬送され、プラテン157に対向する位置に設けられた光学センサ155で測定される場所に位置したときの様子を示している。用紙としてロール紙204が
図2に示す位置まで搬送されると、光学センサ155がX方向に走査し、搬送方向と交差する方向のロール紙204の長さである幅、つまりX方向の長さ、を測定する。測定した幅に応じて画像処理部130が印刷データから画像データを生成する。ロール紙204は-Y方向にバック搬送されて、プラテン157上の記録位置に搬送される。画像データに従ってインクジェットヘッド151からロール紙204上にインクを吐出することで画像が印刷される。印刷を終えるとカッタユニット152によってロール紙204が切断される。また、使用するロール段を上段のロール紙管201から下段のロール紙管202に切り替える場合には、まず搬送ローラ205によってロール紙204をロール紙管201に戻す。そして、下段ロール紙管202から搬送ローラ205によってのロール紙を給紙することで切り替えてロール紙を供給することが可能である。
【0022】
なお、
図2に示す構成は一例であり、セットが可能なロール紙の数、ロール紙管と記録ヘッドとの位置関係、光学センサ155の配置位置などは適宜設定可能である。例えば、ロール紙管201、202にセットされている状態のロール紙の幅を測定可能な位置に配置され、ロール紙管にセットされている状態のロール紙の幅を測定するようにしてもよい。また、本実施形態に係る記録装置100はロール紙を用いた構成について説明しているが、カット紙を用いる記録装置に適用されてもよい。
【0023】
[登録/削除処理]
本実施形態において、用紙の幅は、プラテン157上に用紙が給紙された時に光学センサ155によって測定した測定値に基づいて決定する。
【0024】
広く一般に流通している定形サイズの用紙については、FlashROM123に用紙紙の定形サイズ表を格納している。本実施形態においては、流通している定形サイズの中でも主に使用されるサイズのサイズ表が予めFlashROM123に記憶されており、以下では、この予め記憶されている用紙のサイズを定形サイズと呼ぶ。そのため、光学センサ155の測定値に基づいて、測定したロール紙204の幅がFlashROM123に格納されている定形サイズの幅かどうかを判定することができる。
【0025】
一方、FlashROM123に格納されている定形サイズ以外の用紙である用紙は、光学センサ155で幅を測定した時に定形サイズの幅であるとは判定されない。ここで、定形サイズの用紙でないと判定された場合にユーザが用紙の幅を設定するようにすると、ユーザは定形サイズでないサイズの用紙をセットする度に設定を行う必要があり、手間がかかる。
【0026】
また、光学センサ155が測定した幅を用いて印刷を行うようにすると同じ画像を印刷しても画像の大きさが変わる虞がある。このようなことが起こり得るのは、印刷する画像のサイズを、用紙の幅によって決定する印刷方法の場合である。このような印刷方法の1つとして余白がないように用紙幅よりも少し大きい画像を記録するフチなし印刷がある。測定した幅に基づいてフチなし印刷を行うと、同じ幅の用紙であっても測定誤差によって微妙に測定値が異なり、幅を測定し直して印刷すると同一の画像データであっても印刷されたときの画像の大きさが異なってしまう。
【0027】
本実施形態では、FlashROM123に、定形サイズでないサイズの用紙の幅を、ユーザ登録の用紙の幅、として記憶させることができる。ユーザが使用したい定形サイズでない用紙の幅を登録することで、ユーザ登録の幅の用紙を用いる場合の幅の設定の手間が省け、また定形サイズでない幅の用紙でも同じ大きさの画像を得ることができるようになる。
【0028】
図3は、ユーザが記録装置100に定形サイズでないユーザ登録用紙の幅を登録するときと、登録したユーザ登録用紙の幅を削除するときの処理を説明するフローチャートである。
図4は、
図3のフローを実行するときに入出力装置162に表示する画面の表示例を示す図である。
図3の処理は、例えば、
図1で示すCPU128が、FlashROM123に記憶されたプログラムをRAM124に読み出し、読み出したプログラムに従って処理を実行することで実現される。また、ホストコンピュータ190のソフトウェアによって実行されてもよい。
【0029】
図4(a)に示す、入出力装置162の表示画面から「用紙幅登録」の項目をユーザが選択すると
図3のフローチャートの処理が開始される。
【0030】
ステップS301にて、用紙幅を変更あるいは消去できる状態にあるかどうかを判定する。ここでは登録或いは削除できる状態とは、記録装置100内で用紙、つまりロール紙204が動いていない状態(給紙や印刷を行っていない状態)のことである。登録できる状態にあると判定した場合(ステップS301にてYES)、ステップS302に進む。用紙幅を登録できない状態にあると判定した場合(ステップS301にてNO)には、現在登録を行うことができない旨を入出力装置162に表示し、本処理を終了する。
【0031】
ステップS302にて、現在登録されているユーザ登録用紙の幅リストを入出力装置162に表示する(
図4(b))。本実施形態では最大3つの定型外の用紙幅を登録することができる。
図4(b)では登録番号「1」に203.5mm、登録番号「3」に300.0mmが登録されている。登録番号「2」には用紙幅は登録されていない状態である。本実施形態では最大の登録数を3つとしているが、数はこれに限られない。
【0032】
ステップS303にて、
図4(b)のうち、ユーザが選択した登録幅番号を取得する。
【0033】
ステップS304にて、
図4(c)に示すように変更と削除の選択肢を入出力装置162に表示させる。
【0034】
ステップS305にて、
図4(c)のうち、ユーザが選択した選択肢を取得する。
【0035】
ステップS306にて、ユーザが「変更」を選択したと判定した場合(ステップS306にてYES)、ステップS307に進み、「変更」を選択していないと判定した場合(ステップS306にてNO)、ステップS316に進む。
【0036】
ステップS307では、
図4(d)に示すような登録画面を入出力装置162に表示する。登録画面には、現在設定されている紙幅と範囲の設定に進むボタンが表示されている。
図4(b)にて「登録なし」と表示された登録幅番号を選択した場合に
図4(d)で409に表示する値は、光学センサ155によって測定した直近の値とする。また、表示しないようにしてもよい。
図4(d)の画面において、409は登録する紙幅を表示しており、410の「範囲設定」のボタンは今回登録する用紙として判定させる紙幅の範囲を設定するためのボタンである。411の「OK」ボタンは押すと変更が確定するボタンであり、押すと
図4(b)の画面に戻る。ユーザは登録画面にて409、410、411のボタンのいずれかを選択する操作を行う。
【0037】
ユーザが操作を行うと、ステップS308にて、画面408にてユーザが行った操作内容を取得する。
【0038】
ステップS309にて、ステップS308で取得した操作内容から、ユーザが判定範囲を変更するボタンである410を選択したか否かを判定する。変更したと判定した場合には(ステップS309にてYES)ステップS310に進む。また、
図4(d)の409の項目を選択し、値を入力してユーザ登録用紙の幅を設定したと判定した場合(ステップS309にてNO)には、ステップS314に進む。
【0039】
ステップS310に進んだ場合には、入出力装置162に
図4(e)に示す判定範囲の設定画面を表示する。この画面は、登録用紙幅と判定する判定範囲の上限値と下限値を入力する画面である。ユーザはこの画面から上限値と下限値を入力する。415の「OK」ボタンを選択すると設定が完了する。
【0040】
ステップS311にて、
図4(e)の画面でユーザが行った操作内容を取得する。
【0041】
ステップS312にて、ステップS311で取得した操作内容から、ユーザが上限値あるいは下限値を変更したと判定した場合(ステップS312にてYES)、ステップS313に進む。変更していないと判定した場合(ステップS312にてNO)、ステップS314に進む。
【0042】
ステップS313にて、ユーザが
図4(e)の画面で入力した判定範囲の値をFlashROM123に記憶する。記憶するとステップS314に進む。
【0043】
ステップS314にて、ユーザが
図4(d)の画面にて登録する用紙幅を変更したと判定した場合(ステップS314にてYES)、ステップS315に進む。変更していないと判定した場合(ステップS314にてNO)、処理を終了する。
【0044】
ステップS315にて、ユーザが入力した紙幅の値をFlashROM123に記憶し、処理を終了する。
【0045】
一方、
図4(c)の画面にて「削除」を選択した場合には、ステップS306にて「変更」を選択していないと判定され、ステップS316の処理を行う。ステップS316では、
図4(f)の削除確認画面を入出力装置162に表示し、ユーザに選択した登録用紙幅を削除するかどうかの確認をさせる。
図4(f)では登録幅番号「1」の用紙幅の情報を削除してもよいかを確認する画面を示している。ユーザはこの画面から416の「はい」ボタン、または417の「いいえ」ボタンを選択する。
【0046】
ステップS317にて、
図4(f)の画面でユーザが行った操作内容を取得する。
【0047】
ステップS318にて、ステップS317で取得した操作内容が、ユーザが
図4(f)にて416の「はい」を選択したと判定した場合(ステップS318にてYES)、ステップS319に進む。417の「いいえ」を選択した場合には、「はい」を選択しなかったと判定し(ステップS318にてNO)、ステップS302に進む。
【0048】
ステップS319では、FlashROM123に記憶されているステップS303で取得した登録幅番号の用紙紙幅、判定範囲を削除し、処理を終了する。
【0049】
[用紙幅保存形式]
図5は、用紙幅を決定するのに用いる、FlashROM123に保存されている用紙幅の情報を表す表である。
【0050】
図5(a)は、ユーザが登録処理によって保存した、登録用紙の幅のデータである。3つの登録用紙幅それぞれに、登録幅と、その登録幅の判定範囲として設定された範囲の上限値と下限値のデータを持つ。
図5(a)の登録番号と、
図4(b)のユーザ登録用紙の幅リストの番号は対応している。登録処理においてユーザが上限値、下限値を設定しなかった場合には、所定の上限値と下限値として登録幅の±1%の値が記憶される。しかし、ステップS311において、ユーザが上限値と下限値を設定したときには、ユーザが設定した上限値と下限値を記憶する。
【0051】
図5(b)は、定形サイズの用紙幅のデータ保存形式を示す。定形サイズのロール紙の名称と、各名称に対応した幅が保存されている。判定範囲は
図5(b)に示す幅の±1%の範囲とする。光学センサ155による測定値が、この判定範囲の中に入る用紙は、定形サイズの用紙と見なす。次に、
図5(c)に、定形サイズの用紙の優先設定の保存データを示す。
図5(b)の定形サイズの用紙幅に対して±1%誤差内であればその判定範囲をもつ定形サイズの用紙であると判定すると、用紙によっては判定範囲が重なっているものがあり、測定した用紙の幅が複数の用紙の判定範囲に入る場合がある。例えば、「300mmロール」の判定範囲は297~303であり、「12インチロール」の判定範囲301.8~307.8であるので、判定範囲が重なっている。そのような場合に、どの定形サイズを優先して設定するかの優先度を予め設定できる。
図5(c)にはその優先設定が保存してある。用紙サイズAの欄と用紙サイズBの欄にある用紙は互いに判定範囲が重なる用紙であり、優先設定の欄に用紙サイズAと用紙サイズBのどちらを優先するかが設定されている。例えば用紙サイズAの「300mmロール」と、用紙サイズBの「12インチロール」は、優先設定が「B」のため、測定値が両方の範囲が重なる値である場合には「12インチロール」が優先される。
図5(c)の優先設定は予め設定されているが、ユーザによって優先設定を変更することができるようにしてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、定形サイズの用紙幅のデータと、ユーザ登録用紙の幅のデータを同じFlashROM123に記憶しているが、別々のメモリに記憶するようにしてもよい。
【0053】
[用紙幅の決定処理]
図6は、用紙幅の決定処理のフローチャートである。用紙幅の決定処理では、給紙の際に用紙幅を光学センサ155で測定し、その測定結果から用紙幅を決定する。
図6の処理は、例えば、
図1で示すCPU128が、FlashROM123に記憶されたプログラムをRAM124に読み出し、読み出したプログラムに従って処理を実行することで実現される。また、ホストコンピュータ190のソフトウェアによって実行されてもよい。
【0054】
図7は、給紙を開始する際の入出力装置162の表示例を示す図である。用紙幅の決定処理は、ユーザが
図7に示すような画面から、ロール紙管にセットしているロール紙の給紙を指示することによって開始する。例えば
図7において、「上段のロール紙を給紙」が選択された場合には、上段ロール紙管201にセットされているロール紙204が搬送ローラ205によってプラテン157上に搬送される。以下では、「上段のロール紙を給紙」が選択され、上段のロール紙管201からロール紙204が搬送された場合について説明する。
【0055】
ロール紙204がプラテン157上に搬送されると、ステップS601にて、光学センサ155はロール紙が204の幅を測定し、CPU128は測定幅wを取得する。
【0056】
ステップS602にて、登録用紙幅が一つ以上あるかどうかをFlashROM123に記憶されている
図5(a)のデータを参照して判定する。登録用紙幅が登録されていない場合(ステップS602にてNO)は、ステップS607に進む。登録用紙幅が一つでも登録されている場合(ステップS602にてYES)ステップS603に進む。
【0057】
ステップS603にて、登録用紙カウンタnに1を代入する。
【0058】
ステップS604にて、登録用紙カウンタnが登録用紙幅の登録数の最大値Nmax(本実施形態では3)を超えているか否かを判定する。超えている場合(ステップS604にてYES)は、ステップS607に進む。超えていない場合(ステップS604にてNO)は、ステップS605に進む。
【0059】
ステップS605では、ステップS601にて測定した測定幅wが、
図5(a)の登録番号がn番目の判定範囲内にあるか否かを判定する。測定幅wか判定範囲内である場合(ステップS605にてYES)は、ステップS619に進み、範囲内でない場合(ステップS605にてNO)は、ステップS606に進む。
【0060】
ステップS619に進むと、ステップS605で判定した登録番号nの登録幅をロール紙204の幅に決定し、用紙幅の決定処理を終了する。
【0061】
ステップS606に進むと、登録用紙カウンタnの値を1増やし、ステップS604に進む。
【0062】
ステップS607に進むと、定形用紙カウンタmに1を代入する。
【0063】
ステップS608にて、定形用紙カウンタmが定形サイズの用紙幅数の最大値Mmaxを超えているか否かを判定する。定型サイズの用紙幅数の最大値Mmaxは、FlashROM123に記憶されている定形サイズの用紙の数であり、本実施形態では
図5(b)に示すように17個の定型サイズが記憶されているため、定形サイズの用紙幅数の最大値Mmaxは17である。定形用紙カウンタmが定型サイズの用紙幅数の最大値Mmaxを超えている場合(ステップS608にてYES)は、ステップS616に進み、超えていない場合(ステップS608にてNO)は、ステップS609に進む。
【0064】
ステップS616に進むと、ステップS601で測定した測定幅wをロール紙204の幅に決定し、用紙幅の決定処理を終了する。
【0065】
ステップS609に進むと、ステップS601で取得した測定幅wが、
図5(b)のm番目の定形サイズの用紙幅の判定範囲内であるか否かを判定する。定形用紙カウンタmと
図5(b)の番号は対応しており、m=3の場合には番号3の用紙である12インチロールの幅と測定値wを比較する。上述したように、定形サイズの用紙の判定範囲は
図5(b)に示す幅の±1%の範囲である。測定幅wが判定範囲内である場合(ステップS609にてYES)は、ステップS611に進み、範囲内でない場合(ステップS609にてNO)は、ステップS610に進む。
【0066】
ステップS610にて、定形用紙カウンタmの値を1増やし、ステップS608に進む。
【0067】
ステップS611にて、優先設定カウンタkに1を代入する。
【0068】
ステップS612にて、優先設定カウンタkが優先設定登録数Kmaxを超えているかどうかを判定する。超えている場合(ステップS612にてYES)は、ステップS617に進み、超えていない場合(ステップS612にてNO)は、ステップS613に進む。
【0069】
ステップS613にて、ステップS609で判定した定形サイズが、
図5(c)のk番目の用紙サイズA、Bのいずれかと同じか否かを判定する。尚、優先設定カウンタkと
図5(c)の番号の欄の番号は対応している。用紙サイズA、Bのいずれか同じである場合(ステップS613にてYES)は、ステップS615に進み、同じでない場合(ステップS613にてNO)は、ステップS614に進む。
【0070】
ステップS614にて、優先設定カウンタkの値を1増やし、ステップS612に進む。
【0071】
ステップS615に進むと、ステップS601で取得した測定幅wが
図5(c)の優先設定番号kの優先設定に記憶している方の用紙サイズの判定範囲内であるか否かを判定する。判定範囲内である場合(ステップS615にてYES)は、ステップS618に進む。判定範囲内でない場合(ステップS615にてNO)は、ステップS617に進む。
【0072】
ステップS617に進むと、ステップS609で取得した定型用紙カウンタmの定形サイズの用紙幅をロール紙204の幅に決定し、用紙幅の決定処理を終了する。
【0073】
ステップS618に進むと、優先設定番号kの用紙サイズA、Bのうち、
図5(c)の優先設定として記憶している方の用紙サイズをロール紙204の幅に決定し、用紙幅の決定処理を終了する。
【0074】
以上のように、本実施形態では、定形サイズでないサイズの用紙の幅を登録することができ、定形サイズの用紙のように使用することができる。そのため、1回の測定で定形サイズの用紙とユーザ登録用紙の内、どの用紙であるかを判定できるようになる。これにより、使用する用紙のサイズを変更する度に用紙幅の設定を変えたり、定形サイズでないサイズの用紙を給紙する度にユーザがサイズを設定したりするような操作を行わずに済む。また、定形サイズでないサイズの用紙をユーザ登録用紙として登録することで、画像の拡大率を一定にすることができるようになるため、定形サイズでないサイズの用紙でも同じ大きさの画像を得ることができる。
【0075】
本実施形態では、ユーザが登録したユーザ登録用紙の方が、ユーザが使用する可能性が高いと判断し、登録用紙幅を、定形サイズの用紙幅よりも優先して給紙した用紙幅として決定した。しかし、定形サイズの用紙を優先して決定してもよい。
【0076】
また、定形サイズの用紙でも、登録した幅の用紙でもない場合には実測値を用紙幅として設定することにより、給紙動作を止めることなく用紙幅の設定を行うことができる。ただし、ユーザに用紙幅を設定させるようにしてもよい。また、以上ではロール紙のサイズ設定について説明したが、カット紙に適用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
100 記録装置
128 CPU
123 FlashROM
155 光学センサ
201 上段ロール紙管
202 下段ロール紙管
204 ロール紙