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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】シート加工方法、製本方法及び製本物
(51)【国際特許分類】
   B42C 5/00 20060101AFI20240508BHJP
   B42C 19/02 20060101ALI20240508BHJP
   B42C 11/00 20060101ALI20240508BHJP
   B42D 1/08 20060101ALI20240508BHJP
   B65H 37/04 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B42C5/00
B42C19/02
B42C11/00
B42D1/08 M
B42D1/08 A
B65H37/04
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020044257
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2020192803
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2019097663
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】山田 良太
(72)【発明者】
【氏名】三浦 信也
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-127655(JP,A)
【文献】特開2001-010265(JP,A)
【文献】特許第6128923(JP,B2)
【文献】実開昭61-012768(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42C 5/00
B42C 19/02
B42C 11/00
B42D 1/08
B65H 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製本のためにシートを加工するシート加工方法であって、
シートの綴じられる側の側面に対して、前記シートの厚みを分割する切れ込みを形成する切れ込み形成工程と、
前記シートに取り付けられ、製本された状態でヒンジとして機能する接続片の一部を前記切れ込みに挿入する挿入工程と、
前記切れ込みに挿入された前記接続片の挿入された部分を前記シートと接合する接合工程と、
を有し、
前記切れ込み形成工程では、保持台に保持された前記シートの前記側面に、前記シートの厚みを2分割し、所定の奥行きで前記シートの前記側面に沿ったスリット状の切れ込みをカッターによって形成する、シート加工方法。
【請求項2】
前記接続片は、前記挿入された部分の長さが前記切れ込みの奥行きの50%以上、90%以下となるように前記切れ込みに対して挿入される、請求項1に記載のシート加工方法。
【請求項3】
前記接続片は可撓性のフィルムの基材を有する、請求項1または請求項2に記載のシート加工方法。
【請求項4】
前記シートの前記切れ込みに一つの前記接続片が挿入され、前記一つの接続片は両面に接着性を有し、前記切れ込みを閉じることによって、前記一つの接続片が前記シートに接合される、請求項1ないし請求項のいずれか1つに記載のシート加工方法。
【請求項5】
前記接続片は、前記シートに挿入される部分とは反対側であって、前記挿入される部分から所定の間隔の隙間を隔てて、前記接続片の両面にスペーサを備えている、請求項1ないし請求項のいずれか1つに記載のシート加工方法。
【請求項6】
前記接続片の前記間隔が形成された領域の接着力は、他の領域の接着力より小さい、請求項に記載のシート加工方法。
【請求項7】
各スペーサは、その厚さが前記シートの厚さの半分以下であり、前記接続片の両面の前記スペーサの厚さと前記接続片の厚さの合計は前記シートの厚さと同程度となる、請求項に記載のシート加工方法。
【請求項8】
請求項または請求項に記載のシート加工方法によって複数のシートを加工することと、
加工された複数の前記シートを前記スペーサの部分でまとめカバーで綴じることと、を有する製本方法。
【請求項9】
前記切れ込み形成工程は、第1のシートの第1の側面と第2のシートの第2の側面にそれぞれ第1の切れ込みと第2の切れ込みを形成することを含み、
前記挿入工程は、前記第1のシートの前記第1の切れ込みに第1の接続片の一方の部分を挿入し、前記第2のシートの前記第2の切れ込みに、前記第1の接続片の他方の部分を挿入することを含み、
前記接合工程は、前記第1のシートの前記第1の切れ込みを閉じることによって、前記第1の切れ込みに挿入された前記第1の接続片の前記一方の部分を前記第1のシートに接合し、前記第2のシートの前記第2の切れ込みを閉じることによって、前記第2の切れ込みに挿入された前記第1の接続片の前記他方の部分を前記第2のシートに接合することを含む、請求項1に記載のシート加工方法。
【請求項10】
前記第1の接続片は、前記第1のシートと接合した前記一方の部分と、前記第2のシートと接合した前記他方の部分との間に所定の間隔の隙間を有しており、
前記隙間で前記第1のシートと前記第2のシートとを折り返すことで、前記第1のシートと前記第2のシートとを重ねる重ね合わせ工程を有する、請求項に記載のシート加工方法。
【請求項11】
前記挿入工程で、前記第2のシートの前記第2の切れ込みに、前記第1の接続片の前記他方の部分とともに第2の接続片の一方の部分が挿入され、前記接合工程で、前記第2のシートの前記第2の切れ込みに挿入された前記第1の接続片の前記他方の部分と前記第2の接続片の前記一方の部分とが前記第2のシートに接合され、前記重ね合わせ工程は前記挿入工程の後で行われる、請求項10に記載のシート加工方法。
【請求項12】
請求項11に記載のシート加工方法によって、複数のシートに対して前記切れ込み形成工程と前記挿入工程と前記接合工程と前記重ね合わせ工程とを繰り返し行い、互いに隣接するシートが前記接続片で連結された複数のシートの積層体を作成することと、
前記積層体にカバーを取り付けることと、を有する製本方法。
【請求項13】
請求項1に記載のシート加工方法によって加工され、各々が側面に切れ込みを有する複数のシートと、各シートの前記切れ込みに一部が挿入され各シートに接合された接続片と、を有し、前記複数のシートが前記接続片を介して綴じられた製本物。
【請求項14】
前記接続片は可撓性のフィルムの基材を有する、請求項13に記載の製本物。
【請求項15】
前記接続片の前記シートに挿入されていない非挿入部の両面に、前記シートに挿入された挿入部から間隔を空けて設けられた一対のスペーサを有し、複数の前記接続片と複数の前記一対のスペーサとが綴じられて製本され、前記接続片の前記挿入部と前記スペーサとの間の隙間がヒンジを構成する、請求項13ないし請求項14のいずれかに記載の製本物。
【請求項16】
前記隙間は、複数の前記シートの配列ピッチと、前記接続片の厚みと、前記ヒンジの変形量とによって調整されており、両端に位置する前記シートから中央部に位置する前記シートに向けて、前記隙間の寸法が長くなる、請求項15に記載の製本物。
【請求項17】
前記シートの前記切れ込みに2枚の前記接続片が挿入され、それぞれの接続片は前記シートの両側のシートの切れ込みに挿入されており、前記接続片の、前記両側のシートの切れ込みに挿入されていない部分はヒンジを構成する、請求項13ないし請求項14のいずれかに記載の製本物。
【請求項18】
前記部分は、複数の前記シートの配列ピッチによって調整されており、前記シートの位置にかかわらず一定である、請求項17に記載の製本物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,シート加工方法、製本方法及び製本物に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷されたシートを製本して写真アルバムを作成する方法が知られている。特許文献1には、シートを画像が印刷された部分と綴じ代部とに切断し、両者を離隔してテープでつなぎ合わせ、綴じ代部を束ねる製本方法が開示されている。テープの両者を跨ぐ部分は屈曲しやすい柔軟なヒンジとなるため、作成された製本物を開いたときに、見開きページが平面に開く。このため、閲覧者は2ページに跨る写真やイラストを大きな違和感なく閲覧できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6128923号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法では、綴じ側のシート表面の印刷画像に対してテープが重なって視認される。そのため、印刷画像の表面性とテープの表面性との違いを視覚的違和感として閲覧者が感じてしまう可能性がある。例えば1ページの印刷画像でも綴じ代側で視覚的な違和感を覚える可能性がある。また、例えば見開き2ページにわたる印刷画像の場合には、写真やイラストの連続性に関し視覚的な違和感を覚える可能性がある。加えて、見開き画像の場合、製本物を開いたときに、綴じ代部を形成するテープが両ページの境界付近で視認された場合には、写真やイラストが断続的に視認されてしまう可能性があり、画像の一体感が損なわれる可能性がある。
本発明は、印刷画像に対してテープが重なって視認されることがない製本物及びシート加工方法を提供することを目的とする。また、本発明は、見開きの2ページの視覚的な連続性や一体感を改善することが可能な製本物及びシート加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は製本のためにシートを加工するシート加工方法であって、シートの綴じられる側の側面に対して、前記シートの厚みを分割する切れ込みを形成する切れ込み形成工程と、前記シートに取り付けられ、製本された状態でヒンジとして機能する接続片の一部を前記切れ込みに挿入する挿入工程と、前記切れ込みに挿入された前記接続片の挿入された部分を前記シートと接合する接合工程と、を有し、前記切れ込み形成工程では、保持台に保持された前記シートの前記側面に、前記シートの厚みを2分割し、所定の奥行きで前記シートの前記側面に沿ったスリット状の切れ込みをカッターによって形成する。
また、本発明の製本物は、前述したシート加工方法によって加工され、各々が側面に切れ込みを有する複数のシートと、各シートの切れ込みに一部が挿入され各シートに接合された接続片と、を有し、複数のシートが接続片を介して綴じられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シートの綴じられる側の側面の切れ込みに接続片が挿入されるため、シート表面の印刷画像に対してテープが重なって視認されることがないシート加工方法および製本物を提供することができる。また、本発明によれば、見開きの2ページの印刷画像の視覚的な連続性や一体感を改善することが可能なシート加工方法および製本物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施形態に係る製本物の構成概略図である。
図2図1に示す製本物を構成するシートの構成概略図である。
図3図1に示すシートの部分拡大図である。
図4図1に示すシートの製造に用いる切断装置の概略図である。
図5図1に示すシートの製造に用いる両面テープの概略図である。
図6図1に示すシートの製造方法を示す断面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る製本物の構成概略図である。
図8図7に示すシートの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態と実施例によって本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施形態及び実施例によって何ら限定されるものではない。
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る製本物Bの断面図であり、図1(a)は製本物Bのシート部分が閉じられた状態を、図1(b)は、製本物Bのシート部分が開かれた状態を示している。図2は製本物Bを構成する各シートSの構成概略図であり、図2(a)が平面図、図2(b)が図2(a)のA-A線で切った断面図を示している。図3(a)は図2(a)のB部拡大図であり、切れ込み5の設けられたシートSと、切れ込み5に一方の部分が挿入された接続片4と、接続片4の他方の部分に接合されたスペーサ1a,1bと、を模式的に示している。図3(b)は図3(a)のC部について、接続片4が挿入される前のシートSの切れ込み5を拡大図として模式的に示している。以下の説明において、接続片4の短辺方向を幅方向またはX方向といい、接続片4の短辺方向長さを幅という場合がある。また、接続片4の長辺方向をY方向ということがある。
【0009】
製本物Bは複数のシートSと、シートSに接合された接続片4と、接続片4の両面に接合されたスペーサ1a,1bと、見返し紙2a,2bと、カバー3と、を有している。複数の接続片4及び複数のスペーサ1a,1bが、糸綴じ、ステープル綴じ、ボンド固めなどの周知の方法で見返し紙2a,2bとともに束ねられ、カバー3の内側に固定されている。本実施形態の製本物Bは6枚のシートSを有しているが、シートSの枚数は限定されない。シートSは紙の用紙であるが、プラスチック、織布、不織布など、製本に用いられる各種材料を用いることができる。ただし、後述する切れ込み加工を行うため、シートSの厚さは200μm以上であることが好ましい。シートSの両面には写真、イラストなどの画像7が印刷されている。
【0010】
シートSの綴じられる側の側面6はシートSの厚みを分割するように、所定の奥行きDで、側面6のY方向全長に渡ってスリット状の切れ込み5が形成されている。図3(b)に示すように、切れ込み5は側面6から離れるに従い厚み方向の寸法が減少する、概ね三角形ないしテーパ状の形状を有している。各シートSの切れ込み5には一つの接続片4のX方向の一部が挿入されている。複数のシートSは接続片4を介して綴じられている。接続片4は、シートSの切れ込み5が形成された側面6の全長とほぼ同じ長さの長辺とこれより短い短辺とを有する、厚さが均一で概ね長方形の板状片である。接続片4は可撓性のフィルムの基材を有している。接続片4の切れ込み5部に挿入された、幅方向における一方の部分を挿入部4a、切れ込み5部に挿入されていない、幅方向における他方の部分を非挿入部4bという。接続片4はその両面が接着性を有するいわゆる両面テープである。接続片4の挿入部4aはその表面の接着成分によってシートS,より具体的には切れ込み5の切込み面5a,5bに接合されている。
【0011】
シートSの接続片4が挿入された部分は接続片4の挿入後に厚さ方向に圧縮される。これによって、図3(a)に示すように、シートSの接続片4が挿入された部分はシートSの接続片4が挿入されていない部分とほぼ同じ厚さとなる。ただし、接続片4が厚いと接続片4の挿入部4aでシートSが盛り上がり、シートSの印刷面に凸部が発生するため、接続片4の挿入部4aの厚さt3はシートSの厚さt4の半分以下であることが好ましい。薄い接続片4の強度を確保するため、接続片4は紙よりも強度が高いフィルムの基材を有している。シートSの側面6から測った切れ込み5のX方向の奥行きDは、接続片4の挿入長さ、すなわち挿入部4aのX方向の長さdよりも大きい。これは、切れ込み5がテーパ状に形成されているため、D=dとすると切れ込み5の先端部で接続片4による凸部が発生してしまうためである。また、後述する製造方法において、切れ込み5の先端部の手前で接続片4の挿入を止めることにより作業性が向上する。以上の理由により、接続片4の挿入部4aの長さdは、切れ込み5の奥行きDの90%以下であることが好ましい。一方、挿入部4aの長さdが小さいと、接続片4のシートSとの接着強度が低下する。このため、接続片4の挿入部4aの長さdは、切れ込み5の奥行きDの50%以上であることが好ましい。
【0012】
接続片4の非挿入部4bの両面には一対のスペーサ1a,1bが設けられている。スペーサ1a,1bは、紙やフィルムで形成される。スペーサ1a,1bが厚すぎるとページを開いたときに両側のページ間に隙間が発生しやすくなるため、各スペーサ1a,1bの厚さはシートSの厚さの半分以下であることが好ましい。このため、接続片4の両面のスペーサ1a,1bの厚さと接続片4の厚さの合計はシートSの厚さと同程度となる。一対のスペーサ1a,1bは接続片4の挿入部4aからX方向に間隔をあけて形成される。これによって、シートSとスペーサ1a,1bとの間には、側面6と平行で且つ所定の寸法を持った隙間cが設けられる。この部分はシートSもスペーサ1a,1bも設けられない接続片4の露出部であり、接続片4の柔軟なヒンジ4cを形成する。すなわち、接続片4はヒンジ4cとして機能する。ヒンジ4cはシートSよりも屈曲しやすいため、図1(b)に示すように、製本物Bを開いたときに左右のページが平坦となり、いわゆるレイフラットな製本が可能となる。
【0013】
図2(b),図3(a)に示すとおり、接続片4のシートSとスペーサ1a,1bとの間の領域(ヒンジ4c)は接着面が露出しているため、製本時に接続片4同士あるいは接続片4とシートSが貼りつく可能性がある。そのため、接続片4の隙間cの形成された領域(ヒンジ4c)の接着力は、他の領域の接着力よりも小さいことが好ましい。接着力は接着面に微粒子を付着させたり、ヒンジ4cとなる領域にあらかじめ接着剤が塗布されていない接続片4を用いたりすることで調整可能である。
【0014】
シートSとスペーサ1a,1bの隙間cの寸法、すなわちヒンジ4cのX方向長さはシートS毎に異なっている。すなわち、図1に示すように製本物Bの背表紙を下にした状態で、シートSの下端部は中央のシートSがカバー3側のシートSより高いなだらかな山型の形状となっている。換言すると、隙間cの寸法は、両端に位置するシートSから中央部に位置するシートSに向けて長くなっている。スペーサ1a,1bの上端は各シートSともほぼ高さに位置している。ヒンジ4cの長さを外側のシートS1、S2,S3から順にH1、H2、H3(H3>H2>H1)とすると、互いに隣接するシートSのヒンジ長さの差(H3-H2)、(H2-H1)はシートSの厚さ以上であることが好ましい。一方、ヒンジ長さの差(H3-H2)、(H2-H1)が大きいと見開いたときにページ間の隙間cが広がるため、最小限に留める方が好ましい。ヒンジ長さを調整することで、どのページを見開きにしても、見開き部分は略平坦になる。また、見開き2ページの連続性が損なわれることがなくなる。図1(b)では中央のページを見開きにした断面を示しているが、閲覧者がカバー3を手で支えることで、どのページを見開きにしても見開き部分の隙間G1を小さくでき、略平坦になる。ヒンジ長さは、製本するシートSの枚数、シートSを束ねた積層体の厚さ、シートSの厚みの少なくとも1つのパラメータに応じて変えることが好ましい。束ねるシートSの枚数、積層体の厚さ、シートSの厚みが大きいほど、ヒンジ長さも大きくすることが好ましい。ヒンジ長さの差を設けるため、スペーサ1a,1bの長さを変えたり、スペーサ1a,1bの相対位置を変えたりしてもよい。また、隙間cの寸法、すなわちヒンジ4cのX方向長さはシートSの配列ピッチと、接続片4の厚みと、ヒンジ4cの変形量とによって調整することもできる。
以上のような構成とすることで、印刷画像の表面に接続片4が重ならないため、表面性が一律となり視覚的違和感を覚えることがなくなる。また、見開きの2ページの視覚的な連続性や一体感が改善される。
【0015】
<第1の実施形態に係る製本物Bの製造方法>
第1の実施形態に係る製本物Bの製造方法について説明する。シートSはまず製本のために、以下に述べるシート加工方法によって加工され、次に加工されたシートSが製本される。製本方法は従来と同様であるため、ここではシートSの加工方法を中心に説明する。
まず、切断装置10によって、シートSの接続片4が挿入される側面6、すなわちスペーサ1a,1b側の側面6に切れ込み5を形成する。図4(a),4(b)はそれぞれ切断装置10の上面図と側面図を示している。切断装置10は、シートSを位置決めして保持する保持台11と、カッターユニット12とから構成されている。保持台11には位置決め用のL字板13a,13bが設けられ、シートSはL字板13a,13bに突き当てられて位置決めされる。シートSは保持台11に適宜の方法で保持される。シートSを保持する方法は限定されず、保持台11を帯電させて静電気によってシートSを保持する方法、保持台11に複数の微細孔を空けて、負圧によってシートSを吸着保持する方法などを用いることができる。カッターユニット12は、シートSの側面6に切れ込み5を形成するカッター14と、カッター14を保持するカッター保持部15と、から構成されている。カッター14の先端部はテーパ状とされ、その他の部分(一般部)は一定の断面とされている。カッター保持部15は、カッター14をシートSの厚み方向及びシートSの側面6と平行な方向(Y方向)に沿って移動させることができる。カッター保持部15はカッター14をY方向に移動させるスライドユニット16と、カッター14のシートSの厚み方向の位置を調整する昇降台17とから構成されている。昇降台17の高さは、カッター14の先端がシートSの厚み方向の中央に位置するように調整される。カッター14をシートSに当て、スライドユニット16でシートSの側面6に沿ってY方向にスライドさせることで、切れ込み5を形成することができる。切れ込み5は、シートSの側面6をシートSの厚みの方向に2分割する。カッター14が厚いと切れ込み5を形成した際に印刷面に折れが発生しやすいため、カッター14の一般部の厚みはシートSの厚み以下であることが好ましい。
【0016】
図5は接続片4の斜視図を示している。接続片4の両面には個別に剥がすことができる第1~第4の剥離紙7a~7dが貼られている。第1及び第2の剥離紙7a,7bは接続片4の上側面である一方の面4d(図6(b)参照)に、幅方向Xに互いに分離可能に設けられている。第3及び第4の剥離紙7c,7dは接続片4の下側面である他方の面4e(図6(b)参照)に、幅方向Xに互いに分離可能に設けられている。第1~第4の剥離紙7a~7dのX方向の幅W1は接続片4のX方向の幅W0の1/2である。第1及び第2の剥離紙7a,7bの厚みt1は、第3及び第4の剥離紙7c,7dの厚みt2よりも薄い(t1<t2)。
【0017】
図6はシートSを製本のために加工する手順、すなわちシートSの切れ込み5に接続片4を挿入し、スペーサ1a,1bを形成する手順を示している。まず、図6(a)に示すように、カッター14をシートSの側面6に切り入れ、側面6のY方向の全長に渡って切れ込み5を形成する。次に、図6(b),6(c)に示すように、第3の剥離紙7cを剥離し、接続片4の一方の部分(挿入部4a)をシートSの切れ込み5に挿入する。接続片4を切れ込み5に容易に挿入できるように、シートSの上面を吸引し切れ込み5の開口を広げてもよい。第1の剥離紙7aより厚い第3の剥離紙7cが剥離されているため、接続片4の切れ込み5への挿入が容易となる。また、第1の剥離紙7aが残っているため、挿入部4aの剛性の確保が容易である。第2の剥離紙7bと第4の剥離紙7dが残っているため、接続片4を切れ込み5に挿入する際の接続片4の折れや曲がりを防止することも容易である。
【0018】
次に、図6(c)に示すように、第1の剥離紙7aを剥離し、シートSを上から押さえることによって切れ込み5を閉じ、接続片4を切れ込み5の両側の切込み面5a,5bに接合する。次に、第2の剥離紙7bを剥離し、図6(d)に示すように、接続片4の非挿入部4bの一方の面4dにスペーサ1aを貼りつける。さらに、図6(e)に示すように、第4の剥離紙7dを剥がして接続片4の非挿入部4bの他方の面4eにスペーサ1bを貼りつける。つまり、非挿入部4bの第2の剥離紙7bと第4の剥離紙7dは、接続片4を挿入した後、且つスペーサ1a,1bを形成する前に剥離される。スペーサ1a,1bを貼り付ける順序は逆でもよい。これによってシートSの製本のための加工が完了する。以上の工程を対象となる複数枚のシートSについて行い、加工された複数のシートSの非挿入部4bとスペーサ1a,1bと見返し紙2a,2bとを綴じ、カバー3を取り付け、見返し紙2a,2bをカバー3に接着することで製本物Bが完成する。
【0019】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について説明する。ここでは第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。説明を省略した点については第1の実施形態と同様である。図7は、本発明の第2の実施形態に係る製本物Bの断面図であり、製本物Bの背表紙を下にした状態で示している。図7(a)は製本物Bが閉じられた状態を、図7(b)は、製本物Bが開かれた状態を示している。図7(c)は図7(a)のD部拡大図であり、接続片を拡大して示している。図7(c)に示すように、シートSの綴じられる側の側面6には第1の実施形態と同様に切れ込み105が形成されている。しかし、第1の実施形態と異なり、切れ込み105には2枚の接続片104の一方の部分が挿入されている。各接続片104の他方の部分はそれぞれ両側で隣接する別のシートSの切れ込み105に挿入されている。すなわち、互いに隣接する2枚のシートSが一つの接続片104によって橋渡しないし連結されている。本実施形態では、接続片104は一つのシートSを隣接する他のシートSと接合するために用いられる。各接続片104の中央部のシートSの外に露出している部分はシートSの側面6に接合されてもよいし、接合されなくてもよい。シートSの綴じ側の下端の位置は各シートSで揃えられている。図7(a)に示すように、製本時に最初と最後になるページのシートSの切れ込みには1枚の接続片104だけが挿入されている。
【0020】
最初と最後のページとなるシートSには、接着剤や粘着テープなど周知の方法で、見返し紙2a,2bの半部が接着され、見返し紙2a,2bの他の半部は同様の方法でカバー3に接合されている。接続片104はシートSよりも屈曲しやすいため、製本物Bを開くと接続片104が屈曲する。これによって製本物Bを開いたときに左右のページが平坦となり、いわゆるレイフラットな製本が可能となる。第1の実施形態と比較して、第2の実施形態では製本物Bを開いたときの左右のページ間の隙間をより小さくできる。第1の実施形態では、ヒンジ4cが屈曲することで製本物Bを開いたときに左右のページをフラットにすることができるが、このとき2つのヒンジ4cは左右のページ間に位置し、閲覧者からはページ間の隙間の一部として認識される。従って、第1の実施形態でのページ間の隙間G1は、(シートS(ヒンジ4c)の配列ピッチ+接続片4の厚さ+ヒンジ4cの変形量)となる。これに対して、第2の実施形態におけるページ間の隙間G2は、図7(b)に示すように左右のページを橋渡ししている接続片104の長さ、すなわちシートSのピッチとなるので、G1>G2となる。以上のような構成とすることで、印刷画像の表面に接続片104が重ならないため、表面性が一律となり視覚的違和感を覚えることがなくなる。また、見開きの2ページの視覚的な連続性や一体感が改善される。なお、接続片104の、両側のシートSの切れ込み105に挿入されていない部分(隙間G2の部分)はヒンジを構成する。隙間G2の寸法はシートSの配列ピッチによって調整されており、シートSの位置にかかわらず一定である。
【0021】
<第2の実施形態に係る製本物Bの製造方法>
第2の実施形態に係る製本物Bの製造方法について図8を参照して説明する。本実施形態でもシートSはまず製本のために、シート加工方法によって加工され、次に加工されたシートSが製本される。製本方法は従来と同様であるため、ここではシートSの加工方法を中心に説明する。以降の説明では複数のシートに言及するため、製本したときに1~3ページ目となるシートをそれぞれ第1~第3のシートS101~S103、第1~第3のシートS101~S103の切れ込みをそれぞれ第1~第3の切れ込み105a~105cという。第1及び第2の切れ込み105a,105bに挿入される接続片を第1の接続片104a、第2及び第3の切れ込み105b,105cに挿入される接続片を第2の接続片104bという。第3の切れ込み105cに2番目に挿入される接続片を第3の接続片104cという。第1~第3の接続片104a~104cは第1の実施形態の接続片4と同じであり、図5に示すように4枚の剥離紙を備えている。
【0022】
まず、図8(a)に示すように、第1のシートS101の側面6に第1の切れ込み105aを形成する。次に、第1の切れ込み105aに第1の接続片104aの一方の部分を挿入する。次に、第1の切れ込み105aを閉じて、第1の接続片104aを第1のシートS101に接合する。ここまでの工程は第1の実施形態と同様に行われる。これによって、第1のシートS101の加工が終了する。
次に、第1の実施形態と同様の方法によって、第2のシートS102の側面6に第2の切れ込み105bを形成する。そして、第2のシートS102の側面6が第1のシートS101の側面6と対向する状態で、第4の剥離紙7dを剥がした第1の接続片104aと、第3の剥離紙7cのみを剥がした第2の接続片104bを同時に第2の切れ込み105bへ挿入する。すなわち、第2のシートS102の第2の切れ込み105bに、第1の接続片104aの他方の部分と第2の接続片104bの一方の部分を挿入する。また、第1の接続片104aの第2の剥離紙7bと第2の接続片104bの第1の剥離紙7aを残しているため、第1の接続片104aと第2の接続片104bを挿入した際にこれらが接触してシワや折れが発生することを防止することができる。なお、各接続片は製本された状態で第1のシートS101、第2のシートS102の間でヒンジが構成できるように所定間隔の隙間G2を有して接続されている。
【0023】
次に、図8(b)に示すように、第1の接続片104aの第2の剥離紙7bと第2の接続片104bの第1の剥離紙7aを剥離し、第2のシートS102を上から押し付け、第2の切れ込み105bを閉じる。第1の接続片104aは第2の切れ込み105bの一方の面に、第2の接続片104bは他方の面に接合され、さらに第1の接続片104aと第2の接続片104bが互いに接合される。これによって第2のシートS102の加工が終了する。
【0024】
次に、図8(c)に示すように、第2のシートS102を第1のシートS101に対して相対的に回転させて折り返している。図示の例では第1のシートS101を第2のシートS102に対して回転して折り返しているが、第2のシートS102を第1のシートS101に対して回転して折り返してもよい。第1の接続片104aは概ねU字形状に変形し、第1のシートS101の側面6と第2のシートS102の側面6は同一面上に位置する。この際、必要に応じて第1のシートS101または第2のシートS102のX方向の相対位置を調整し、第1の接続片104aの弛みをなくしてもよい。第1の接続片104aを第1のシートS101の側面6と第2のシートS102の側面6に押し付けてもよい。次に、図8(d)に示すように、第1のシートS101が第2のシートS102の上に来るように第1のシートS101と第2のシートS102を180度回転させる。その後、第3のシートS103の側面6に第3の切れ込み105cを形成する。そして、第3のシートS103の側面6が第2のシートS102の側面6と対向した状態で、第2の接続片104bの他方の部分と第3の接続片104cの一方の部分を第3の切れ込み105cに挿入する。その後、図8(c)~図8(e)に示す工程を繰り返すことで、接合片によって互いに接合されたシートの積層体9(図7(a)参照)が形成される。最後に積層体9に見返し紙2a,2bとカバー3を取り付けることで製本が完了する。
【実施例
【0025】
実施例1、実施例2に用いるシートは共通であり、A5サイズ、厚さ240μmの両面写真シートを用いた。図4に示した切断装置10を用いて、シートの長辺に切れ込み5を形成した。切断装置10のカッター14の厚みは0.2mm、切れ込み5の奥行きDは8mmとした。実施例1、実施例2ともに6ページの製本を実施した。
【0026】
<実施例1>
実施例1として、第1の実施形態の具体的な例を説明する。ここでは6枚のシートを製本のために加工し、製本を行った。接続片4は、ポリエステルフィルムの基材上にアクリル系の粘着剤を設けたものである。接続片4の厚さt3は60μm、長さL(図5参照)は210mm、接着力は12N/25mm、せん断接着力は340N/4cmである。接続片4の幅W0はページによって異なる。1ページ目と6ページ目のシートの接続片4の幅W0は10.2mm、2ページ目と5ページ目のシートの接続片4の幅W0は10.45mm、3ページ目と4ページ目のシートの接続片4の幅W0は10.7mmとした。接続片4の剥離紙は、図5に示したように4つに分割されており、第1及び第2の剥離紙7a,7bの厚さt1は20μm、第3及び第4の剥離紙17c,7dの厚さt2は50μmである。スペーサ1a,1bには、厚さ100μm、幅5mmの上質紙を用いた。
【0027】
各シートに長さ8mmの切れ込み5を形成し、接続片4を切れ込み5に5mmの深さまで挿入した。スペーサ1a,1bを、シートと反対側の端面が揃うように貼りつけた。ヒンジ4cの幅はページによって異なり、1ページ目と6ページ目は0.2mm、2ページ目と5ページ目は0.45mm、3ページ目と4ページ目は0.7mmとした。ヒンジ4cの部分で露出している接続片4の接着面の接着力を低減させるために、粒子径10~30μmのベビーパウダーを接着面に付着させた。加工された6ページのシートを厚さ100mの上質紙である見返し紙2a,2bで挟み、これらをステーブル綴じした後に厚さ6mmのハードカバー3を取り付け、見返し紙2a,2bとカバー3を糊付けして製本した。
【0028】
<実施例2>
実施例2として、第2の実施形態の具体的な例を説明する。ここでは6枚のシートを製本のために加工し、製本を行った。接続片104は、ポリエステルフィルムの基材上にアクリル系の粘着剤を設けたものである。接続片104の厚さt3は30μm、幅W0は10.25mm、長さLは210mm、接着力は13N/25mm、せん断接着力は380N/4cmである。接続片104の剥離紙は、図5に示したように4つに分割されており、剥離紙の厚さは実施例1と同様とした。各シートに長さ8mmの切れ込み5を形成し、接続片104を切れ込み5に5mmの深さまで挿入した。6ページからなるシートの積層体の1ページ目に厚さ100μmの上質紙からなる見返し紙2aを、6ページ目に同じ材質と厚さの見返し紙2bを糊付けし、それぞれの見返し紙2a,2bに厚さ6mmのハードカバー3を糊付けして製本した。
【符号の説明】
【0029】
4 接続片
5 切れ込み
6 シートの綴じられる側の側面
S シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8