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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】光学系および撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/04 20060101AFI20240508BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20240508BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240508BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20240508BHJP
【FI】
G02B13/04
G02B13/18
B60R11/02 Z
H04N23/55
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020054087
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021156923
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆志
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-087938(JP,A)
【文献】特開2009-169082(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109557637(CN,A)
【文献】特開2020-021047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側に順に配置された、正または負の屈折力を有する前レンズ群と、開口絞りと、正の屈折力を有する後レンズ群とからなる光学系であって、
前記前レンズ群は、最も物体側に配置された光軸上において正の屈折力を有する非球面レンズと、該非球面レンズよりも像側に配置された負レンズ及び正レンズとを含み、
前記非球面レンズの物体側の面および像側の面非球面であり
前記物体側の面は、有効径の4割よりも周辺側の位置において、光上よも曲率半径が大きい領域を含み
前記物体側の面から前記開口絞りまでの光軸上での距離をD1s、前記光学系の光学全長をL、前記物体側の面における有効径の4割および8割の位置での参照球面からのサグ量をそれぞれDr4およびDr8、前記物体側の面および前記像側の面の参照球面の曲率半径をそれぞれrefR1およびrefR2とするとき、
0.45≦D1s/L≦0.65
2.6≦Dr8/Dr4≦30.0
-0.24≦(refR1-refR2)/(refR1+refR2)≦0.22
なる条件を満足することを特徴とする光学系。
【請求項2】
前記物体側の面の参照球面は、物体側に凸の球面であることを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
.3≦refR1/D1s≦1.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記非球面レンズの軸上での屈折力をP00、前記非球面レンズの軸上での屈折力と有効径の8割の位置での屈折力との差をΔP08とするとき、
-2.0≦ΔP08/P00≦-0.5
なる条件を満足することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項5】
記像側の面から前記開口絞りまでの距離をD2sとするとき、
0.38≦D2s/L≦0.60
なる条件を満足することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項6】
前記非球面レンズの近軸屈折力が正の屈折力であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項7】
前記物体側の面における有効径の8割の位置での参照球面からのサグ量をDr8とするとき、
0.03≦|Dr8/refR1|≦0.08
なる条件を満足すること を特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項8】
前記光学系の焦点距離をfとするとき、
3.0≦L/f≦6.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の光学系。
【請求項9】
前記後レンズ群は、最も像側に配置された非球面レンズを含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項10】
前記後レンズ群は、最も像側に配置された前記非球面レンズよりも物体側に配置された非球面レンズを含むことを特徴とする請求項9に記載の光学系。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の光学系と、
該光学系を介して物体を撮像する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
最大像高をY、前記光学系の焦点距離をf、最大画角をωとするとき、
0.7≦|Y/ftanω-1|<1.0
なる条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項13】
請求項1または1に記載の撮像装置と、
該撮像装置により取得される物体の距離情報に基づいて車両と前記物体との衝突可能性を判定する判定部とを有することを特徴とする車載システム。
【請求項14】
前記車両と前記物体との衝突可能性が有ると判定された場合に、前記車両の駆動部に制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の車載システム。
【請求項15】
前記車両と前記物体との衝突可能性が有ると判定された場合に、前記車両のユーザに対して警告を行う警告装置を備えることを特徴とする請求項1または1に記載の車載システム。
【請求項16】
前記車両と前記物体との衝突に関する情報を外部に通知する通知装置を備えることを特徴とする請求項1から1のいずれか一項に記載の車載システム。
【請求項17】
請求項1または1に記載の撮像装置を備え、該撮像装置を保持して移動可能であることを特徴とする移動装置。
【請求項18】
前記車載システムによって得られた前記物体の距離情報に基づいて前記物体との衝突可能性を判定する判定部を有することを特徴とする請求項16に記載の移動装置。
【請求項19】
前記物体との衝突可能性が有ると判定された場合に、移動を制御する制御信号を出力する制御部を備えることを特徴とする請求項1に記載の移動装置。
【請求項20】
前記物体との衝突可能性が有ると判定された場合に、前記移動装置のユーザに対して警告を行う警告部を備えることを特徴とする請求項1または1に記載の移動装置。
【請求項21】
前記物体との衝突に関する情報を外部に通知する通知部を備えることを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載カメラ等の撮像装置に好適な光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
車載カメラ等の撮像装置に用いられる光学系としては、広い画角を有することが重要である。特に、車のナンバープレート等を識別するために、画角のうち中心域では結像倍率が大きいことが望ましい。特許文献1には、最も物体側の第1レンズに光軸からレンズ周辺部に向かうにつれて負の屈折力が強くなる非球面を用いた光学系が開示されている。特許文献2には、メリディオナル断面の曲率が正の値から負の値に変化する非球面を有する光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-164287号公報
【文献】特開2018-087938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にて開示された光学系は、広画角の撮像に対応しているが、近軸焦点距離が短いため、中心域の結像倍率が不十分である。また特許文献2に開示された光学系は、近軸焦点距離を長くして中心域の結像倍率は大きいものの、撮像可能な画角が対角50°程度と十分に広画角とは言えない。
【0005】
本発明は、中心域の結像倍率が大きく、広画角の光学系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学系は、物体側から像側に順に配置された、正または負の屈折力を有する前レンズ群と、開口絞りと、正の屈折力を有する後レンズ群とからなる。前レンズ群は、最も物体側に配置された、光軸上において正の屈折力を有する非球面レンズを含み、非球面レンズの物体側の面および像側の面非球面であり物体側の面は、有効径の4割よりも周辺側の位置において、光上よも曲率半径が大きい領域を含む物体側の面から開口絞りまでの光軸上での距離をD1s、光学系の光学全長をL、物体側の面における有効径の4割および8割の位置での参照球面からのサグ量をそれぞれDr4およびDr8、前記物体側の面および前記像側の面の参照球面の曲率半径をそれぞれrefR1およびrefR2とするとき、
0.45≦D1s/L≦0.65
2.6≦Dr8/Dr4≦30.0
-0.24≦(refR1-refR2)/(refR1+refR2)≦0.22
なる条件を満足することを特徴とする。なお、上記光学系を用いた撮像装置や、該撮像装置を備えた車載システムも、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、中心域の結像倍率が大きく、広画角の光学系を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1である光学系の断面図。
図2】実施例1の光学系の被写体距離300mにおける収差図。
図3】本発明の実施例2である光学系の断面図。
図4】実施例2の光学系の被写体距離300mにおける収差図。
図5】本発明の実施例3である光学系の断面図。
図6】実施例3の光学系の被写体距離300mにおける収差図。
図7】本発明の実施例4である光学系の断面図。
図8】実施例4の光学系の被写体距離300mにおける収差図。
図9】本発明の実施例5である光学系の断面図。
図10】実施例5の光学系の被写体距離300mにおける収差図。
図11】本発明の実施例6である光学系の断面図。
図12】実施例1の光学系の被写体距離300mにおける収差図。
図13】各実施例の光学系を用いた撮像装置の概略図。
図14】(a)従来の広角レンズによる撮像画像と(b)実施例の光学系による撮像画像を示す図。
図15】各実施例の光学系を用いた車載システムの構成を示すブロック図。
図16】上記車載システムを備えた車両の概略図。
図17】上記車載システムの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。従来の一般的な等立体角射影方式の広角レンズ(撮像光学系)を使用すると、図14(a)に示すように画角を均等分割したような撮像画像が得られる。この撮像画像では、中心域の結像倍率が小さく、該中心域の被写体が小さく写るために解像が困難である。
【0010】
これに対して、本発明の実施例の光学系(撮像光学系)は、標準レンズを採用することで中心域の被写体の結像倍率を大きくしている。具体的には、35mmフィルム換算の焦点距離で40mm~50mm程度となるように光学系を設定している。さらに通常の標準レンズでは広い画角を撮像することができない。このため実施例の光学系では、樽型の歪曲収差を大きくすることで、周辺域の物体像を画角内に押し込めている。このような実施例の光学系を用いることで、図14(b)に示すように、上述した広角レンズよりも中心域の被写体を大きく写しながらも水平方向に広画角な撮像画像が得られる。
【0011】
図1図3図5図7図9および図11はそれぞれ、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5および実施例6の光学系の断面図である。各実施例の光学系は、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、特に車載カメラや監視カメラ等の撮像装置に好適的な光学系である。各断面図において、左側が被写体側または物体側(前側)であり、右側が像側(後側)である。OAは光学系の光軸である。Biは物体側から数えた順番のレンズ群を示し、B1は前レンズ群、B2は後レンズ群である。GBは光学フィルタ、フェースプレート、水晶ローパスフィルタ、赤外カットフィルタ等に相当する光学ブロックである。IPは像面であり、CCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子の撮像面が配置される。
【0012】
さらに、各実施例の光学系では、開口絞りSPが前レンズ群B1と後レンズ群B2との間に配置されている。言い換えれば、各実施例の光学系では、開口絞りSPよりも物体側のレンズ群を前レンズ群B1とし、開口絞りSPよりも像側のレンズ群を後レンズ群B2と定義している。このように開口絞りSPを前レンズ群B1と後レンズ群B2との間に挟んだ構成とすることで、前レンズ群B1と後レンズ群B2における瞳近軸光線が高い位置で歪曲収差をコントロールすることができる。また、撮像素子から開口絞りSPを遠ざけることで、撮像光線の撮像素子への入射角を小さくすることができるため、シェーディング等による撮像画像の劣化を抑制することが可能となる。
【0013】
各実施例の光学系は、物体側から像側に順に配置された、前レンズ群B1と、開口絞りSPと、後レンズ群B2とにより構成されている。前レンズ群B1は、正または負の屈折力を有し、後レンズ群B2は正の屈折力を有する。標準レンズにおいて大きな樽型の歪曲収差を出すためには、非球面レンズを使用して歪曲収差をコントロールする必要がある。また歪曲収差は瞳近軸光線の高い位置で大きく出やすいため、前レンズ群B1と後レンズ群B2との間に開口絞りSPを挟んだ構成を採っている。このとき前レンズ群B1のうち最も物体側のレンズにおいて瞳近軸光線の高さが高くなるので、このレンズに非球面を使用することが望ましい。また後レンズ群B2においては、最も像側のレンズにおける瞳近軸光線の高さが高くなるため、このレンズに非球面を使用することが望ましい。
【0014】
各実施例の光学系において、前レンズ群B1のうち最も物体側のレンズは光軸上および光軸を含む中心域で正の屈折力を有している。中心域での屈折力は、光軸上(軸上)の点と有効径±4割の点の3点で決まる円の曲率半径から計算される屈折力を意味する。広角レンズでは負の屈折力のレンズが最も物体側に配置されることが多いが、各実施例では近軸焦点距離が標準レンズ域にあることを特徴としており、このため最も物側の非球面レンズが光軸上および中心域で正の屈折力を有する。さらに非球面レンズは、その近軸屈折力が正の屈折力である。
【0015】
このように最も物体側のレンズが正の屈折力を有することで、前レンズ群B1の主点位置を物体側に位置させることができるため、光学系の小型化に有利となる。また正の屈折力によって開口絞りSPの径を小さくすることができるので、機構上も有利となる。
【0016】
各実施例の光学系において、前レンズ群B1は3または4つのレンズにより構成されている。前レンズ群B1のうち最も物体側のレンズは、前述したように非球面レンズである。非球面レンズは、物体側の面を非球面としている。この非球面は、軸上での曲率半径よりも軸外での曲率半径の方が大きい非球面である。このような非球面を用いると、非球面レンズの正の屈折力が中心から周辺に向かって屈折力が弱くなり、樽型の歪曲収差を大きく発生させることができる。
【0017】
なお、上記非球面レンズにおける像側の面も非球面としてもよい。実施例1~4の光学系では、非球面レンズの像側の面を非球面としている。
【0018】
また各実施例では、非球面レンズにおける物体側の非球面は、その参照球面が物体側に凸の球面形状を有する。参照球面は、断面図においては、軸上の点と有効径±10割の点の3点で決まる円である。物体側の面を球面形状とし、歪曲のコントロールを像側の非球面で行うと、周辺部が深い凹形状となってしまい、非球面レンズを成型するための型の製造が困難となるため、好ましくない。
【0019】
実施例1、3および6では、非球面レンズの材料としてガラスを用いている。ガラス製の非球面レンズを用いることにより、熱による形状の変化を小さく抑えられるため、光学系の光学性能の環境変化を抑制することができる。一方、実施例2、4および5では、非球面レンズの材料として樹脂を用いている。樹脂製の非球面レンズを用いることで、光学系を軽量化したり耐衝撃性を向上させたりすることができる。
【0020】
前レンズ群B1のうち最も物体側の非球面レンズよりも像側には、負レンズと、トータルとして正の屈折力を有する1または2つのレンズを配置している。正の屈折力を有するレンズは、撮像光線のうち下線をカットする役割もあるため、開口絞りSPの近傍に配置することが好ましい。
【0021】
各実施例において、後レンズ群B2は、4または5つのレンズにより構成されている。後レンズ群B2のうち最も像側には2つの非球面レンズが配置されている。歪曲補正量が大きくなると、前レンズ群B1のみでは歪曲補正が困難となるため、後レンズ群B2において最も瞳近軸光線が高くなる像面近傍のレンズに非球面を用いている。なお、非球面は、開口絞りSPより像側に配置されているため、正の屈折力が強くなる非球面形状となる。
【0022】
後レンズ群B2の非球面レンズの材料は、前レンズ群B1の非球面レンズと同様の理由により、ガラスや樹脂が用いられる。実施例5および6では、2つの非球面レンズの屈折力が互いに逆の符号となっている。これにより、熱や吸湿による形状や屈折率の変化によるピント変化をキャンセルすることができる。
【0023】
開口絞りSPと後レンズ群B2の非球面レンズとの間には、2または3つの球面レンズが配置されている。これらのレンズのうち正の屈折力を有するレンズには、アッベ数が70を超える低分散なレンズを用いることが好ましい。これにより軸上色収差を良好に補正することができる。また負の屈折力を有するレンズには、高屈折率で高分散なレンズを用いることが好ましい。これにより、像面湾曲と倍率色収差を良好に補正することができる。
【0024】
以上のような標準レンズを用いて大きな樽型の歪曲収差を出して中心域の被写体の結像倍率を大きくしつつ広い画角の撮像を可能とするためには、最も物体側の非球面レンズに対する適切な設定が必要である。具体的には、歪曲収差のコントロールを有効に行えるように、開口絞りSPから離れた位置に非球面を配置する。開口絞りSPから離れた位置では瞳近軸光線の高さが高くなるため、歪曲収差のコントロールが容易になるためである。さらに、樽型の歪曲収差を大きく出すために、開口絞りSPよりも物体側の面に、中心の曲率半径に対して周辺の局所的な曲率半径が大きくなる非球面形状を与える。特に各実施例のように、水平方向で100°を超える広い画角を撮像するためには、水平画角で-60%以下の歪曲収差を発生させる必要がある。このように周辺において物体像を圧縮して取り込むために、非球面に周辺において急峻に変化する形状を与える。
【0025】
これらの設定を適切に行うため、各実施例の光学系は、前レンズ群B1のうち最も物体側の非球面レンズにおける物体側の非球面から開口絞りSPまでの光軸上の距離をD1s、光学系の光学全長をL、上記非球面における有効径の4割および8割の位置での参照球面からのサグ量をそれぞれDr4およびDr8とするとき、
0.45≦D1s/L≦0.65 (1)
2.6≦Dr8/Dr4≦30.0 (2)
なる条件を満足する。
【0026】
条件式(1)は、開口絞りSPに対する非球面レンズの物体側の非球面の位置を光学系の光学全長で規格化したときに満足すべき条件を示す。D1s/Lが条件式(1)の下限を下回ると、開口絞りSPから非球面までの距離が短すぎて、該非球面における瞳近軸光線の高さが低くなり、歪曲収差を有効にコントロールすることが困難となる。一方、D1s/Lが条件式(1)の上限を超えると、開口絞りSPから非球面までの間隔が大きくなりすぎて、非球面レンズの径が増大し、光学系が大型化したり非球面レンズの製造が困難になったりする。
【0027】
条件式(2)は、上記非球面における有効径4割の非球面量と有効径8割の非球面量とが満足すべき関係を示している。Dr8/Dr4が条件式(2)の下限を下回ると、有効径8割の非球面量が有効径4割の非球面量に対して小さくなりすぎ、周辺で歪曲収差を大きく発生させることが困難となり、広い画角の撮像が困難となる。一方、Dr8/Dr4が条件式(2)の上限を超えると、有効径8割の非球面量が4割の非球面量に対して大きくなりすぎ、非球面形状が変曲点を有する形状になり易くなり、非球面レンズの製造が困難になる。これらの条件を満足することにより、画角のうち中心域の被写体の結像倍率を大きくしつつ広い画角を撮像可能な光学系を実現することができる。
【0028】
なお、条件式(1)と条件式(2)の数値範囲を以下のように設定するのがより好ましい。
0.45≦D1s/L≦0.62 (1a)
2.6≦Dr8/Dr4≦15.0 (2a)
また、条件式(1)と条件式(2)の数値範囲を以下のように設定するのがさらに好ましい。
0.45≦D1s/L≦0.59 (1b)
2.6≦Dr8/Dr4≦9.0 (2b)
各実施例の光学系においては、さらに以下の条件式(3)~(9)のうち少なくとも1つを満足することが好ましい。
0.3≦refR1/D1s≦1.0 (3)
-2.0≦ΔP08/P00≦-0.5 (4)
-0.2≦(refR1-refR2)/(refR1+refR2)≦0.2
(5)
0.38≦D2s/L≦0.60 (6)
-0.7≦Y/ftanω-1<-1.0 (7)
0.03≦|Dr8/refR1|≦0.08 (8)
3.0≦L/f≦6.0 (9)
条件式(3)~(9)において、refR1とrefR2はそれぞれ、前レンズ群B1のうち最も物体側の非球面レンズにおける物体側の非球面の参照球面の曲率半径と像側の面の参照球面の曲率半径である。D2sは前レンズ群B1のうち最も物体側に配置された非球面レンズの像側の面から開口絞りSPまでの距離である。fは光学系の全系の焦点距離、Yは像面IPにおける最大像高、ωは撮像可能な最大画角としての実画角(°)である。P00は上記非球面レンズの軸上の屈折力、P08は上記非球面の有効径8割の屈折力である。有効径8割の屈折力とは、物側の面と像側の面の有効径8割の点での局所的な曲率半径と、それらの点の間の距離(間隔)と、ガラスの屈折率とから計算される屈折力である。ΔP08は上記非球面レンズの軸上の屈折力と有効径8割での屈折力との差(P08-P00)である。
【0029】
条件式(3)は、非球面レンズの物体側の非球面の参照球面の曲率半径と開口絞りSPからの位置との関係において、非球面に対してコンセントリックに光線が入射するために満足することが好ましい条件を示す。refR1/D1sは条件式(3)の下限を下回ると、参照球面の曲率半径が小さくなりすぎて、非球面レンズのコバの確保が困難となったり、非球面のサグが大きくなりすぎて型の製造が困難となったりするため、好ましくない。一方、refR1/D1sが条件式(3)の上限を超えると、参照球面の曲率半径が大きくなりすぎて、非球面の面法線に対する撮像光線の入射角度が大きくなる。このため、この非球面で像面湾曲が大きく発生し、その補正が困難となるため、好ましくない。
【0030】
条件式(4)は、非球面レンズの中心の屈折力と周辺(有効径8割)の屈折力が満足することが好ましい条件を示す。各実施例では、周辺において樽型の歪曲を大きく出すために、周辺の負の屈折力を大きくする必要がある。ΔP08/P00が条件式(4)の下限を下回ると、周辺の負の屈折力が強くなりすぎ、この結果、非球面レンズのサグ量を大きくする必要があり、非球面レンズの製造が困難になるので、好ましくない。一方、ΔP08/P00が条件式(4)の上限を超えると、周辺の負の屈折力が弱すぎて、歪曲収差を発生させることができなくなり、広い画角を撮像することが困難となるため、好ましくない。
【0031】
条件式(5)は、非球面レンズのシェイプファクターが満足することが好ましい条件を示す。(refR1-refR2)/(refR1+refR2)が条件式(5)の下限を下回ると、物体側の非球面の参照球面の曲率半径が小さくなりすぎ、非球面レンズのコバの確保が困難となったり、非球面のサグが大きくなりすぎて型の製造が困難となったりするため、好ましくない。(refR1-refR2)/(refR1+refR2)が条件式(5)の上限を超えると、参照球面の曲率半径が大きくなり、非球面の面法線に対する撮像光線の入射角度が大きくなりすぎて、該非球面で像面湾曲が大きく発生し、その補正が困難となるため、好ましくない。
【0032】
条件式(6)は、開口絞りSPに対する非球面レンズの像側の面の位置を光学系の光学全長で規格化したときに満足すべき条件を示す。歪曲収差を補正するためには、物体側の面だけでなく像側の面も瞳近軸光線の高さの高い位置に配置することが好ましい。D2s/Lが条件式(6)の下限を下回ると、開口絞りSPから像側の面までの距離が小さくなりすぎ、瞳近軸光線の高さが低くなって歪曲収差を有効にコントロールすることが困難となるため、好ましくない。一方、D2s/Lが条件式(6)の上限を超えると、開口絞りSPから像側の面までの距離が大きくなりすぎ、この結果、非球面レンズの径が増大して光学系が大型化するので、好ましくない。
【0033】
条件式(7)は、理想像高に対する実像高の比、すなわち歪曲量が満足することが好ましい条件を示す。Y/ftanω-1が条件式(7)の下限を下回ると、歪曲収差量が小さすぎて広い画角を撮像できなくなるので、好ましくない。
条件式(8)は、物体側の非球面における周辺(有効径8割)の非球面量を参照球面の曲率半径で規格化したときに満足することが好ましい条件を示す。Dr8/refR1が条件式(8)の下限を下回ると、周辺での非球面量が小さくなりすぎ、歪曲収差を発生させることが困難となり、広い画角を撮像することが困難となるため、好ましくない。一方、Dr8/refR1が条件式(8)の上限を超えると、周辺での非球面量が大きくなりすぎて非球面が変曲点を持つようになり、非球面レンズの製造が困難となるため、好ましくない。
【0034】
条件式(9)は、光学系の光学全長と焦点距離との比(テレ比)が満足することが好ましい条件を示す。各実施例の光学系は、通常の広角レンズに比べて焦点距離が長いことが特徴であり、テレ比は小さくなる。L/fが条件式(9)の下限を下回ると、光学全長が短くなりすぎて各レンズの屈折力を強くする必要があり、この結果、諸収差の補正が困難となるため、好ましくない。一方、L/fが条件式(9)の上限を超えると、値光学全長が大きくなりすぎて光学系が大型化するため、好ましくない。
【0035】
なお、条件式(3)から(9)の数値範囲を以下のように設定することがより好ましい。
0.45≦refR1/D1s≦0.70 (3a)
-1.9≦ΔP08/P00≦-0.9 (4a)
-0.24≦(refR1-refR2)/(refR1+refR2)≦0.22
(5a)
0.39≦D2s/L≦0.54 (6a)
0.78≦Y/ftanω-1≦0.92 (7a)
0.03≦|Dr8/refR1|≦0.06 (8a)
4.5≦L/f≦5.9 (9a)
各実施例の光学系において、その全体または一部を光軸方向に移動させることでフォーカシングを行ってもよい。また、光学系の全体または一部を光軸に対して直交する方向に移動させる(平行シフトさせたり光軸上の点を中心に回動させたりする)ことで、手持ち撮像時の手振れや車載カメラを搭載した車体の振動に応じた像振れを低減(補正)する防振を行ってもよい。
【0036】
次に、実施例1~6のそれぞれに対応する数値例1~6を示す。各数値例は、無限遠に合焦した状態を基準として記載されている。各数値例において、riは物体側からi番目の面の曲率半径(mm)、diはi番目と(i+1)番目の面間のレンズ厚または空気間隔(mm)、ndiはそれぞれi番目の光学部材の材料のd線における屈折率である。νdiはi番目の光学部材の材料のd線を基準としたアッベ数である。アッベ数νdは、フラウンホーファ線のd線(587.6nm)、F線(486.1nm)、C線(656.3nm)における屈折率をNd、NF、NCとするとき、νd=(Nd-1)/(NF-NC)で表される。
【0037】
近軸画角とは光学系の焦点距離fと最大像高YによりY=f・tanωの関係で計算される画角である。実画角は、光学系を通って最大像高Yへ到達する光線の物体側の入射角度である。歪曲収差が無ければ近軸画角と実画角はほぼ一致するが、歪曲収差が大きい場合は近軸画角と実画角に乖離が生まれる。BFはバックフォーカス(mm)を表す。「バックフォーカス」は、光学系の最終面(最も像側のレンズ面)から近軸像面までの光軸上の距離を空気換算長により表記したものとする。「レンズ全長」は、光学系の最前面(最も物体側のレンズ面)から最終面までの光軸上の距離である。光学全長Lは、レンズ全長とバックフォーカスの和であり、光学系の最前面から近軸像面までの光軸上の距離を空気換算長により表記したものである。
【0038】
面番号に付された「*」は、その面が非球面形状を有する面であることを意味する。非球面形状は、光軸方向での位置をx、光軸に直交する方向での高さをh、光の進行方向を正、Rを近軸曲率半径、kを円錐定数、A4,A6,A8,A10を非球面係数とするとき、以下の式で表される。非球面係数における「E-Z」は「×10-Z」を意味する。
x=(h/R)/[1+[1-(1+k)(h/R)1/2]+A4h
+A6h+A8h+A10h10
数値例において、最後の2つの面は、フィルタやフェースプレート等の光学ブロックの面である。
【0039】
また、実施例(数値例)1~6における前述した条件式(1)~(9)に対応する値を表1にまとめて示す。
【0040】
さらに図2図4図6図8図10および図12はそれぞれ、実施例1~6の光学系の被写体距離300mにおける収差図である。球面収差図において、FnoはFナンバーを示し、実線はd線(波長587.6nm)に対する球面収差を、二点鎖線はg線(波長435.8nm)に対する球面収差をそれぞれ示している。非点収差図において、実線Sはサジタル像面を、破線Mはメリディオナル像面を示している。歪曲収差はd線に対するものを示している。色収差図はg線における倍率色収差を示している。ωは実画角(°)である。
(数値例1)
単位mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1* 14.124 2.30 1.55332 71.7 25.60
2* 20.260 6.75 20.40
3 -143.700 0.80 1.58144 40.8 15.30
4 7.535 11.88 11.30
5 3213.533 1.00 1.77250 49.6 6.40
6 -15.743 4.09 6.50
7(絞り) ∞ 4.11 6.12
8 11.989 1.63 1.53775 74.7 5.80
9 -20.825 5.43 5.60
10 -6.237 0.42 1.92286 18.9 7.50
11 -512.318 0.12 9.00
12 24.845 3.84 1.76802 49.2 11.30
13* -51.714 0.10 12.40
14* 9.398 3.17 1.85135 40.1 13.10
15* 4174.072 2.37 13.20
16 ∞ 1.00 1.51633 64.1 12.00
17 ∞ 1.00 20.00
像面 ∞

非球面データ
第1面
K = 0.00000e+000 A 4= 1.23948e-004 A 6=-1.33403e-006
第2面
K = 0.00000e+000 A 4= 2.82836e-004 A 6=-2.77424e-006 A 8= 1.95302e-008
第13面
K = 0.00000e+000 A 4=-1.03701e-003 A 6= 8.02917e-006
第14面
K = 0.00000e+000 A 4=-5.64284e-004 A 6=-3.65221e-006
第15面
K = 0.00000e+000 A 4=-5.71632e-004 A 6= 5.27690e-006

各種データ
焦点距離 10.20
Fナンバー 2.47
近軸画角(°)27.02
実画角(°) 70.54
像高 5.20
レンズ全長 45.64
BF 4.03

(数値例2)
単位mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1* 15.211 2.50 1.49171 57.4 26.00
2* 22.019 8.09 20.60
3 -184.149 3.00 1.67270 32.1 13.50
4 6.662 9.47 9.00
5 73.659 1.03 1.87070 40.7 5.80
6 -15.158 4.34 5.80
7(絞り) ∞ 3.10 5.25
8 14.557 1.41 1.49700 81.5 4.90
9 -15.016 4.19 4.70
10 -6.284 0.46 1.95906 17.5 6.40
11 -28.261 1.19 7.30
12* 111.969 2.81 1.53160 55.8 8.90
13* -6.079 0.10 9.90
14* 60.016 4.00 1.53160 55.8 12.30
15* 788.576 2.38 12.30
16 ∞ 1.00 1.51633 64.1 20.00
17 ∞ 1.00 20.00
像面 ∞

非球面データ
第1面
K = 0.00000e+000 A 4= 4.94983e-005 A 6=-7.98981e-007
第2面
K = 0.00000e+000 A 4= 1.87777e-004 A 6=-1.69133e-006 A 8= 1.57584e-008
第12面
K = 5.07374e+002 A 4=-1.43699e-003 A 6= 1.18112e-005
第13面
K = 0.00000e+000 A 4=-1.87271e-004 A 6= 2.43586e-005
第14面
K = 0.00000e+000 A 4= 6.77818e-005 A 6= 8.73334e-006
第15面
K = 0.00000e+000 A 4=-2.43181e-003 A 6= 3.81106e-005

各種データ
焦点距離 10.19
Fナンバー 2.88
近軸画角(°)27.03
実画角(°) 73.85
像高 5.20
レンズ全長 45.67
BF 4.04

(数値例3)
単位mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1* 10.941 3.00 1.55332 71.7 20.10
2* 33.254 4.57 18.50
3 48.223 0.80 2.00100 29.1 11.80
4 5.316 9.16 8.40
5 32.237 0.50 1.90366 31.3 4.80
6 8.497 1.74 1.67270 32.1 4.60
7 -9.508 2.91 4.80
8(絞り) ∞ 2.74 4.48
9 35.331 2.05 1.49700 81.5 4.30
10 -9.796 2.42 4.80
11 -15.369 4.60 1.49700 81.5 6.00
12 -4.496 0.91 2.00272 19.3 7.40
13 -15.623 2.34 9.40
14 60.499 4.00 1.69350 53.2 13.80
15* 147.527 0.10 14.80
16* 9.263 3.52 1.76802 49.2 14.00
17* 485.398 2.37 14.10
18 ∞ 1.00 1.51633 64.1 20.00
19 ∞ 1.00 20.00
像面 ∞

非球面データ
第1面
K = 0.00000e+000 A 4= 3.29512e-004 A 6=-1.74347e-006 A 8=-5.39848e-008 A10= 3.85932e-010
第2面
K = 0.00000e+000 A 4= 8.52223e-004 A 6=-1.67993e-005 A 8= 1.70580e-007 A10=-4.79887e-010
第15面
K = 0.00000e+000 A 4=-8.82748e-004 A 6= 3.74824e-006
第16面
K = 0.00000e+000 A 4=-4.75110e-005 A 6=-1.27201e-005
第17面
K = 0.00000e+000 A 4=-5.23871e-004 A 6= 2.35842e-006

各種データ
焦点距離 10.21
Fナンバー 3.50
近軸画角(°)27.00
実画角(°) 69.58
像高 5.20
レンズ全長 45.34
BF 4.03

(数値例4)
単位mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1* 11.053 3.50 1.53160 55.8 20.00
2* 29.092 3.54 16.50
3 75.292 2.90 2.00100 29.1 14.10
4 6.864 8.58 9.20
5 27.784 0.50 1.83481 42.7 5.20
6 8.223 0.10 4.90
7 9.912 2.17 1.59270 35.3 4.90
8 -9.576 2.96 4.50
9(絞り) ∞ 1.73 4.39
10 11.755 2.35 1.49700 81.5 4.40
11 -8.572 3.94 4.20
12 -4.812 1.40 1.95906 17.5 5.50
13 -19.811 0.10 7.20
14 20.630 4.00 1.53160 55.8 8.60
15* -117.854 0.10 10.00
16* 6.463 2.48 1.53160 55.8 10.10
17* 2532.550 2.37 10.40
18 ∞ 1.00 1.51633 64.1 10.50
19 ∞ 1.00 20.00
像面 ∞

非球面データ
第1面
K = 0.00000e+000 A 4=-7.28068e-006 A 6= 1.17264e-006 A 8= 1.26655e-008 A10=-3.07829e-010
第2面
K = 0.00000e+000 A 4= 2.15124e-004 A 6= 5.25881e-006 A 8=-6.21104e-008 A10= 4.63043e-010
第15面
K = 0.00000e+000 A 4=-2.84723e-003 A 6= 2.80342e-005
第16面
K = 0.00000e+000 A 4=-2.24242e-003 A 6=-2.60492e-005
第17面
K = 0.00000e+000 A 4=-2.21403e-003 A 6= 3.30765e-005

各種データ
焦点距離 10.19
Fナンバー 3.20
近軸画角(°)27.03
実画角(°) 72.47
像高 5.20
レンズ全長 40.36
BF 4.03

(数値例5)
単位mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1* 12.908 3.20 1.53160 55.8 22.60
2 29.617 2.56 20.30
3 -96.090 7.00 1.91082 35.3 18.90
4 9.308 5.32 10.70
5 -10.762 2.50 1.95906 17.5 9.40
6 -9.795 9.08 10.00
7(絞り) ∞ 5.20 8.10
8 9.205 3.22 1.49700 81.5 9.20
9 -21.833 1.95 8.80
10 591.493 3.02 1.49700 81.5 8.40
11 -6.666 1.00 2.00100 29.1 8.40
12 -19.583 4.69 9.20
13* 58.150 3.85 1.53160 55.8 10.50
14 -7.163 1.14 12.30
15* -9.145 2.04 1.53160 55.8 12.80
16* 113.380 2.37 12.90
17 ∞ 1.00 1.51633 64.1 11.70
18 ∞ 1.00 20.00
像面 ∞

非球面データ
第1面
K = 0.00000e+000 A 4=-4.99983e-005 A 6= 1.03483e-007 A 8=-1.26594e-008 A10= 3.49551e-011
第13面
K = 0.00000e+000 A 4=-1.33407e-003 A 6=-2.82553e-005
第15面
K = 0.00000e+000 A 4= 1.61637e-003 A 6=-1.05133e-005
第16面
K = 0.00000e+000 A 4=-1.49039e-003 A 6= 1.54620e-005

各種データ
焦点距離 10.26
Fナンバー 2.06
近軸画角(°)26.88
実画角(°) 68.57
像高 5.20
レンズ全長 55.76
BF 4.03

(数値例6)
単位mm
面データ
面番号 r d nd νd 有効径
1* 14.188 3.20 1.76802 49.2 25.00
2 24.199 3.29 22.30
3 -228.889 6.96 2.00100 29.1 21.10
4 10.020 8.81 12.70
5 -18.328 2.50 1.92119 24.0 11.00
6 -11.757 9.91 11.30
7(絞り) ∞ 2.86 5.06
8 8.135 2.42 1.49700 81.5 5.20
9 -24.121 1.42 5.40
10 -38.446 4.00 1.49700 81.5 5.90
11 -7.326 0.23 6.80
12 -6.263 1.00 1.80810 22.8 6.80
13 -46.926 1.95 7.70
14* 111.969 3.81 1.76802 49.2 9.10
15* -7.016 0.76 10.80
16* -13.261 2.00 1.76802 49.2 11.60
17* 544.894 2.37 12.20
18 ∞ 1.00 1.51633 64.1 20.00
19 ∞ 1.00 20.00
像面 ∞

非球面データ
第1面
K = 0.00000e+000 A 4=-3.18124e-005 A 6= 3.93509e-008 A 8=-4.48875e-009 A10= 4.72429e-012
第14面
K = 5.07374e+002 A 4=-1.43699e-003 A 6= 1.18112e-005
第15面
K = 0.00000e+000 A 4= 3.12230e-004 A 6= 1.59987e-005

第16面
K = 0.00000e+000 A 4= 1.04756e-003 A 6=-1.42433e-005
第17面
K = 0.00000e+000 A 4=-1.49533e-003 A 6= 1.20727e-005

各種データ
焦点距離 10.22
Fナンバー 2.88
近軸画角(°)26.96
実画角(°) 74.15
像高 5.20
レンズ全長 55.12
BF 4.03
【0041】
【表1】
【0042】
図13は、各実施例に示した光学系を用いた撮像装置としてのデジタルスチルカメラを示す。図13において、120はカメラ本体、121は実施例1~6のいずれかの光学系である。122はカメラ本体に内蔵され、光学系121により形成された物体像を撮像するCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子である。123は撮像素子122からの撮像信号を用いて生成された画像データを記録するメモリである。124は液晶ディスプレイパネル等によって構成され、物体像を観察するためのファインダである。
【0043】
このように各実施例の光学系を撮像装置に用いることにより、画角のうち中心域の被写体の結像倍率を大きくしつつ広い画角を撮像可能な撮像装置を実現することができる。
【0044】
図15は、各実施例の光学系を使用した車載カメラ10とこれを備える車載システム(運転支援装置)600の構成を示している。車載システム600は、自動車(車両)等の移動可能な移動体(移動装置)により保持され、車載カメラ10により取得した車両の周囲の画像情報に基づいて、車両の運転(操縦)を支援するためのシステムである。図16は、車載システム600を備える移動装置としての車両700の概略図である。図16では車載カメラ10の撮像範囲50を車両700の前方に設定した場合を示しているが、撮像範囲50を車両700の後方や側方などに設定してもよい。
【0045】
図15に示すように、車載システム600は、車載カメラ10と、車両情報取得装置20と、制御装置(制御部、ECU:エレクトロニックコントロールユニット)30と、警告装置(警告部)40とを備える。また、車載カメラ10は、撮像部1と、画像処理部2と、視差算出部3と、距離取得部(取得部)4と、衝突判定部5とを備えている。画像処理部2、視差算出部3、距離取得部4および衝突判定部5により処理部が構成されている。撮像部1は、実施例1~6のいずれかの光学系と撮像素子とを有する。
【0046】
図17は、車載システム600の動作を示すフローチャートである。まずステップS1では、車載システム600は、撮像部1を用いて車両の周囲の障害物や歩行者などの対象物(物体)を撮像し、複数の画像データ(視差画像データ)を取得する。次にステップS2では、車載システム600は、車両情報取得装置20により車両情報を取得する。車両情報とは、車両の車速、ヨーレート、舵角などを含む情報である。
【0047】
次にステップS3では、車載システム600は、撮像部1により取得された複数の画像データに対して画像処理部2により画像処理を行う。具体的には、画像データにおけるエッジの量や方向、濃度値などの特徴量を解析する画像特徴解析を行う。ここで、画像特徴解析は、複数の画像データのそれぞれに対して行ってもよいし、複数の画像データのうち一部の画像データのみに対して行ってもよい。
【0048】
次にステップS4では、車載システム600は、撮像部1により取得された複数の画像データ間の視差(像ずれ)情報を、視差算出部3によって算出する。視差情報の算出方法としては、SSDA法や面積相関法などの既知の方法を用いることができる。なお、ステップS2,S3,S4は上記の順番で行われてもよいし、互いに同時に並列で行われてもよい。
【0049】
次にステップS5では、車載システム600は、撮像部1により撮像した対象物との間隔情報を、距離取得部4によって取得(算出)する。距離情報は、視差算出部3により算出された視差情報と、撮像部1の内部パラメータ及び外部パラメータとに基づいて算出することができる。なお、ここでの距離情報とは、対象物との間隔、デフォーカス量、像ずれ量等の対象物との相対位置に関する情報のことであり、画像内における対象物の距離値を直接的に表すものでも、距離値に対応する情報を間接的に表すものでもよい。
【0050】
そしてステップS6では、車載システム600は、車両情報取得装置20により取得された車両情報や距離取得部4により算出された距離情報を用いて、対象物までの距離が予め設定された設定距離の範囲内に含まれるか否かを衝突判定部5にて判定する。これにより、車両の周囲の設定距離内に対象物が存在するか否かを判定し、車両と対象物との衝突可能性を判定することができる。衝突判定部5は、設定距離内に対象物が存在する場合は「衝突可能性あり」と判定し(ステップS7)、設定距離内に対象物が存在しない場合は「衝突可能性なし」と判定する(ステップS8)。
【0051】
衝突判定部5は、「衝突可能性あり」と判定した場合、その判定結果を制御装置30や警告装置40に対して通知(送信)する。このとき、制御装置30は、衝突判定部5での判定結果に基づいて車両を制御し(ステップS6)、警告装置40は、衝突判定部5での判定結果に基づいて車両のユーザ(運転者、搭乗者)への警告を行う(ステップS7)。なお、判定結果の通知は、制御装置30及び警告装置40の少なくとも一方に対して行えばよい。
【0052】
制御装置30は、車両の駆動部(エンジンやモータ等)に対して制御信号を出力することで、車両の移動を制御することができる。例えば、車両においてブレーキをかける、アクセルを戻す、ハンドルを切る、各輪に制動力を発生させる制御信号を生成してエンジンやモータの出力を抑制する等の制御を行う。また、警告装置40は、ユーザに対して、例えば警告音(警報)を発する、カーナビゲーションシステムなどの画面に警告情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどの警告を行う。
【0053】
以上の車載システム600によれば、効果的に対象物の検知を行うことができ、車両と対象物との衝突を回避することが可能になる。特に、上述した各実施例の光学系を車載システム600に用いることで、車載カメラ10の全体を小型化して配置自由度を高めつつ、広画角にわたって対象物の検知や衝突判定を行うことが可能になる。
【0054】
なお、距離情報の算出については、様々な方法がある。例えば、撮像部1が有する撮像素子として二次元アレイ状に規則的に配列された複数の画素を有する瞳分割型の撮像素子を採用した場合について説明する。瞳分割型の撮像素子において、1つの画素は、マイクロレンズと複数の光電変換部とにより構成され、光学系の瞳における互いに異なる領域を通過する一対の光束を受光して、対をなす画像データを各光電変換部から取得することができる。これら対をなす画像データ間の相関演算によって各領域の像ずれ量が算出され、距離取得部4により像ずれ量の分布を表す像ずれマップデータが算出される。また、距離取得部4は、その像ずれ量をさらにデフォーカス量に換算し、デフォーカス量の分布(撮像画像の2次元平面上の分布)を表すデフォーカスマップデータを生成してもよい。さらに、距離取得部4は、デフォーカス量から変換される対象物との間隔の距離マップデータを取得してもよい。
【0055】
また、車載システム600や移動装置700は、車両700が障害物に衝突した場合には、その旨を車載システムの製造元(メーカー)や移動装置の販売元(ディーラー)等に通知するための通知装置(通知部)を備えていてもよい。例えば、通知装置としては、移動装置700と障害物との衝突に関する情報(衝突情報)を予め設定された外部の通知先に対して電子メール等によって送信するもの採用することができる。
【0056】
このように、通知装置によって衝突情報を自動通知する構成を採ることにより、衝突が生じた後に点検や修理などの対応を速やかに行うことができる。なお、衝突情報の通知先は、保険会社、医療機関、警察などや、ユーザが設定した任意のものであってもよい。また、衝突情報に限らず、各部の故障情報や消耗品の消耗情報を通知先に通知するように通知装置を構成してもよい。衝突の有無の検知については、上述した受光部2からの出力に基づいて取得された距離情報を用いて行ってもよいし、他の検知部(センサ)によって行ってもよい。
【0057】
なお、本実施形態では、車載システム600を運転支援(衝突被害軽減)に適用したが、これに限らず、車載システム600をクルーズコントロール(全車速追従機能付を含む)や自動運転等に適用してもよい。また、車載システム600は、自動車等の車両に限らず、例えば船舶や航空機、産業用ロボットなどの移動体に適用することができる。また、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等の物体認識を利用する種々の機器に適用することができる。
【0058】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
B1 前レンズ群
B2 後レンズ群
SP 開口絞り
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