(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】画像形成装置およびプロセスカートリッジ
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20240508BHJP
G03G 21/18 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G03G15/08 235
G03G15/08 229
G03G15/08 226
G03G21/18 114
(21)【出願番号】P 2020054720
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2019079338
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】向井 崇
(72)【発明者】
【氏名】並木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 太一
(72)【発明者】
【氏名】山本 友紀
(72)【発明者】
【氏名】萩原 一成
(72)【発明者】
【氏名】中村 実
(72)【発明者】
【氏名】川本 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖数
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-152438(JP,A)
【文献】特開2012-042574(JP,A)
【文献】特開2008-180890(JP,A)
【文献】特開2005-140975(JP,A)
【文献】特開平04-301663(JP,A)
【文献】特開2004-004653(JP,A)
【文献】特開2017-156745(JP,A)
【文献】特開2017-173714(JP,A)
【文献】特開2012-198409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回転軸と、該
第1の回転軸の外周面に形成される弾性層とを備え、前記弾性層の表面に現像剤が担持され
、回転可能に構成された現像剤担持体
と、
第2の回転軸を備え、前記現像剤担持体から供給された現像剤により現像された像を担持し回転可能に構成された像担持体と、
前記第1の回転軸の回転軸線方向において前記弾性層より外側に設けられ、前記回転軸線と直交する方向において前記弾性層から前記像担持体に向かって突出するように設けられ、前記像担持体と当接することで前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との間の距離を規制する一対の軸間規制部材と、
を備えた画像形成装置において、
前記弾性層は、前記像担持体と当接させずに荷重がかかっていない状態としたならば、前記弾性層から前記像担持体に向かって前記軸間規制部材よりも突出するように構成され、
画像形成装置の使用状態において前記像担持体が前記現像剤担持体に対して当接する位置に相当する位置であって、前記一対の軸間規制部材に対して突き当たる位置にガラス平板を置いた状態としたならば、前記ガラス平板
の表面と前記弾性層の表面との接触部にかかる単位面積当たりの荷重が5.8N/mm
2以上
となるように構成され、
前記弾性層の表面における十点平均粗さRzjisは、前記現像剤の粒子における体積平均粒径よりも大きい、ことを特徴とする
画像形成装置。
【請求項2】
前記接触部は、孤立した複数の部分領域から構成されており、
前記部分領域の輪郭線上の任意の2点を結ぶ直線のうち、前記2点の間の最長なる距離が40μm以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の
画像形成装置。
【請求項3】
前記弾性層の表面には、複数の凸部を備えており、
前記接触部は、前記凸部と前記ガラス平板との当接によって形成される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の
画像形成装置。
【請求項4】
前記弾性層は、該弾性層の表面を形成する表層と、前記表層を支持する基層と、を備え、
前記表層は、
結着樹脂と、
前記結着樹脂内に分散している粗し部材と、を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の
画像形成装置。
【請求項5】
前記接触部において、前記現像剤担持体の軸方向に直交する方向における、前記結着樹脂の厚みに対する前記粗し部材の厚みの比をeとし、前記結着樹脂の圧縮弾性率をAとし、前記粗し部材の圧縮弾性率をBとしたとき、
下記式1で示す前記表層の圧縮弾性率Rは、50MPa以上である、ことを特徴とする請求項4に記載の
画像形成装置。
式1:R=(1+e)/(1/A+e/B)
【請求項6】
前記粗し部材は、
第1の体積平均粒径を有する第1の粗し粒子と、
前記第1の体積平均粒径よりも小さい第2の体積平均粒径を有する第2の粗し粒子と、を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の
画像形成装置。
【請求項7】
前記粗し粒子は、少なくとも、ウレタン粒子、ポリスチレン粒子、アクリル粒子のいずれかを含む、ことを特徴とする請求項6に記載の
画像形成装置。
【請求項8】
前記ウレタン粒子の表面には、シリカ粒子が付着されている、ことを特徴とする請求項7に記載の
画像形成装置。
【請求項9】
前記現像剤担持体に担持された前記現像剤の厚みを規制する規制部材と、を
更に備えることを特徴とする
請求項1~8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記現像剤担持体の前記像担持体に対する侵入量は、0.03mm以上0.06mm以下であることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記現像剤担持体から前記像担持体に供給された現像剤のうち、画像形成後に前記像担持体に残留した現像剤を前記現像剤担持体により回収するように構成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
第1の回転軸と、該第1の回転軸の外周面に形成される弾性層とを備え、前記弾性層の表面に現像剤が担持され、回転可能に構成された現像剤担持体と、
第2の回転軸を備え、前記現像剤担持体から供給された現像剤により現像された像を担持し回転可能に構成された像担持体と、
前記第1の回転軸の回転軸線方向において前記弾性層の外側に設けられ、前記回転軸線と直交する方向において前記像担持体に向かって突出するように設けられ、前記像担持体と当接することで前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との間の距離を規制する一対の軸間規制部材と、
を備えたプロセスカートリッジにおいて、
前記弾性層は、前記像担持体と当接させずに荷重がかかっていない状態としたならば、前記弾性層から前記像担持体に向かって前記軸間規制部材よりも突出するように構成され、
画像形成装置の使用状態において前記像担持体が前記現像剤担持体に対して当接する位置に相当する位置であって、前記一対の軸間規制部材に対して突き当たる位置にガラス平板を置いた状態としたならば、前記ガラス平板の表面と前記弾性層の表面との接触部にかかる単位面積当たりの荷重が5.8N/mm
2
以上となるように構成され、
前記弾性層の表面における十点平均粗さRzjisは、前記現像剤の粒子における体積
平均粒径よりも大きい、ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項13】
前記接触部は、孤立した複数の部分領域から構成されており、
前記部分領域の輪郭線上の任意の2点を結ぶ直線のうち、前記2点の間の最長なる距離が40μm以下である、ことを特徴とする請求項12に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項14】
前記弾性層の表面には、複数の凸部を備えており、
前記接触部は、前記凸部と前記ガラス平板との当接によって形成される、ことを特徴とする請求項12または13に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項15】
前記弾性層は、該弾性層の表面を形成する表層と、前記表層を支持する基層と、を備え、
前記表層は、
結着樹脂と、
前記結着樹脂内に分散している粗し部材と、を含むことを特徴とする請求項12~14のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項16】
前記接触部において、前記現像剤担持体の軸方向に直交する方向における、前記結着樹脂の厚みに対する前記粗し部材の厚みの比をeとし、前記結着樹脂の圧縮弾性率をAとし、前記粗し部材の圧縮弾性率をBとしたとき、
下記式1で示す前記表層の圧縮弾性率Rは、50MPa以上である、ことを特徴とする請求項15に記載のプロセスカートリッジ。
式1:R=(1+e)/(1/A+e/B)
【請求項17】
前記粗し部材は、
第1の体積平均粒径を有する第1の粗し粒子と、
前記第1の体積平均粒径よりも小さい第2の体積平均粒径を有する第2の粗し粒子と、を含むことを特徴とする請求項15または16に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項18】
前記粗し粒子は、少なくとも、ウレタン粒子、ポリスチレン粒子、アクリル粒子のいずれかを含む、ことを特徴とする請求項17に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項19】
前記ウレタン粒子の表面には、シリカ粒子が付着されている、ことを特徴とする請求項18に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項20】
前記現像剤担持体に担持された前記現像剤の厚みを規制する規制部材と、を更に備えることを特徴とする請求項12~19のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項21】
前記現像剤担持体の前記像担持体に対する侵入量は、0.03mm以上0.06mm以下であることを特徴とする請求項12~20のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項22】
前記現像剤担持体から前記像担持体に供給された現像剤のうち、画像形成後に前記像担持体に残留した現像剤を前記現像剤担持体により回収可能に構成されていることを特徴とする請求項13~21のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材に画像を形成する電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、像担持体の表面に形成された静電潜像を現像剤担持体上の現像剤で現像することで画像形成する。その際、現像剤担持体が像担持体に接触した状態で現像する、接触現像方式の構成が知られている。このような構成における現像剤担持体としては、一般的に、回転駆動される軸心体の外周面に弾性層を備えた現像ローラが用いられる。
また、現像ローラにおいて、現像剤の搬送性や帯電付与性等の理由から適当な表面凹凸(粗度)とすることがあり、その一手段として、適当な大きさを有する粒子が添加されている。例えば、特許文献1のように、表面の弾性層中に、弾性を有する有機高分子化合物粒子を含有させ、表面に微小な凹凸を形成した現像ローラが知られている。
また、画像形成装置では、像担持体を帯電手段で帯電する際、放電が起こるため、オゾンやNOx等の放電生成物が像担持体の表面に付着する。像担持体の表面は、表面摩擦係数μが低く、硬いので削れにくく、表面に付着した放電生成物が除去されにくい。このような像担持体の表面に付着した放電生成物が吸湿すると、像担持体の表面の電気抵抗が低下し、静電潜像を形成する電荷が保持されなくなることで、画像がぼやける現象の画像流れが生じやすい。
一方で、画像形成装置の小型化、および省部材による低コスト化を図るために、像担持体上に残留したトナーを除去・回収するクリーニング手段を設けない、所謂像担持体クリーナレス方式の画像形成装置が提案されている。このような像担持体クリーナレス方式においては、クリーニング手段によって像担持体表面を削らないため、特に画像流れが発生しやすい。この課題に対し、特許文献2では、非画像形成時に、像担持体に接触している帯電手段の回転速度を変更し、像担持体との周速差により像担持体の表面を掻き取ることで、画像流れを抑制する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3112489号公報
【文献】特開2003-162132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来例において、以下に述べる課題があった。ここでは、現像ローラの表面が像担持体に押圧されて当接する際の当接圧をドラム当接圧と称して、以下説明する。ドラム当接圧を低くした構成として、例えば、現像ローラの両端に現像ローラと像担持体との軸間距離を規制する軸間規制部材を設けることで、現像ローラの像担持体への侵入量を規制した構成が知られている。しかし、このような構成では、像担持体上の放電生成物を現像ローラによって掻き取る力が弱くなり、画像流れが発生しやすくなってしまう。特に、像担持体クリーナレス方式において、高湿環境下に放置された時に顕著となってしまう。このため、上述した従来例のような、放電生成物を除去する手段が必要となって装置サイズやコストが大きくなったり、除去する場合にも頻繁な除去動作が必要となったりして、ユーザーの利便性が低下してしまうことがあった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものである。つまり、簡易な構成で、ユーザーの利便性を低下させずに、画像流れの発生を抑制し安定して良好な画質を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の画像形成装置は、
第1の回転軸と、該第1の回転軸の外周面に形成される弾性層とを備え、前記弾性層の表面に現像剤が担持され、回転可能に構成された現像剤担持体と、
第2の回転軸を備え、前記現像剤担持体から供給された現像剤により現像された像を担持し回転可能に構成された像担持体と、
前記回転軸の回転軸線方向において前記弾性層より外側に設けられ、前記回転軸線と直交する方向において前記弾性層から前記像担持体に向かって突出するように設けられ、前記像担持体と当接することで前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との間の距離を規制する一対の軸間規制部材と、
を備えた画像形成装置において、
前記弾性層は、前記像担持体と当接させずに荷重がかかっていない状態としたならば、前記弾性層から前記像担持体に向かって前記軸間規制部材よりも突出するように構成され、
画像形成装置の使用状態において前記像担持体が前記現像剤担持体に対して当接する位置に相当する位置であって、前記一対の軸間規制部材に対して突き当たる位置にガラス平板を置いた状態としたならば、の前記ガラス平板の表面と前記弾性層の表面との接触部にかかる単位面積当たりの荷重が5.8N/mm2以上となるように構成され、
前記弾性層の表面における十点平均粗さRzjisは、前記現像剤の粒子における体積平均粒径よりも大きい、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、上記目的を達成するために、本発明のプロセスカートリッジは、
第1の回転軸と、該第1の回転軸の外周面に形成される弾性層とを備え、前記弾性層の表面に現像剤が担持され、回転可能に構成された現像剤担持体と、
第2の回転軸を備え、前記現像剤担持体から供給された現像剤により現像された像を担持し回転可能に構成された像担持体と、
前記第1の回転軸の回転軸線方向において前記弾性層より外側に設けられ、前記回転軸線と直交する方向において前記弾性層から前記像担持体に向かって突出するように設けられ、前記像担持体と当接することで前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との間の距離を規制する一対の軸間規制部材と、
を備えたプロセスカートリッジにおいて、
前記弾性層は、前記像担持体と当接させずに荷重がかかっていない状態としたならば、
前記弾性層から前記像担持体に向かって前記軸間規制部材よりも突出するように構成され、
画像形成装置の使用状態において前記像担持体が前記現像剤担持体に対して当接する位置に相当する位置であって、前記一対の軸間規制部材に対して突き当たる位置にガラス平板を置いた状態としたならば、前記ガラス平板の表面と前記弾性層の表面との接触部にかかる単位面積当たりの荷重が5.8N/mm
2
以上となるように構成され、
前記弾性層の表面における十点平均粗さRzjisは、前記現像剤の粒子における体積平均粒径よりも大きい、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡易な構成で、ユーザーの利便性を低下させずに、画像流れの発生を抑制し安定して良好な画質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の画像形成装置の一例を示す概略構成図
【
図2】実施例1に係る現像ローラの概略断面図および拡大断面図
【
図3】現像ローラと感光ドラムとの間の侵入量を示す断面図
【
図4】現像ローラとガラス平板との接触部における測定の図
【
図10】現像ローラとガラス平板との接触部を拡大した図
【
図11】実施例6に係る現像ローラ表面の掻き取り部個数の算出方法を説明する図
【
図12】現像ローラ表面の掻き取り部による感光ドラム表面の掻き取り作用を説明する図
【
図13】実施例7に係る現像ローラと規制ブレードの当接状態の概略図
【
図15】表面高さのコア部レベル差Skの定義を表す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0013】
<実施例1>
<画像形成装置の概略>
図1を参照して、本発明の実施例1に係る電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置)の全体構成および画像形成動作について説明する。
図1は、本発明の実施例に係る画像形成装置100の概略構成を示す模式的断面図である。
本実施例では、図面上、左側から右側にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の作像ステーションが併設されている。各作像ステーションはそれぞれの現像装置に収容させた現像剤(以下、トナーと記す)90の色が異なるだけで互いに同様の構成の電子写真画像形成機構である。なお、以下の説明において、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを示すために符号に与えた添え字Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)は省略して総括的に説明する。
【0014】
各作像ステーションは、主な構成として、像担持体としての感光ドラム1、帯電手段としての帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4、一次転写装置51等を有する。本実施例では、感光ドラム1、帯電ローラ2、現像装置4は、プロセスカートリッジ8として一体化されており、画像形成装置本体(画像形成装置100のうち、プロセスカートリッジ8を除いた部分)に対して着脱可能に構成されている。ただし、本発明におけるプロセスカートリッジとしては、少なくとも感光ドラム1と現像装置4を備え、一括して装置本体に対して着脱可能に構成されたものであってもよい。また、現像装置4を単独で、装置本体あるいはプロセスカートリッジ8に対して着脱可能に構成してもよい。また、感光ドラム1や現像装置4を画像形成装置本体に括り付け、ユーザーによる交換を不要としたものであってもよい。
【0015】
感光ドラム1は、円筒状の感光体であり、その軸を中心に矢印の反時計方向に回転する。本実施例では外周面が100mm/secの速度で回転駆動される。感光ドラム1は、帯電ローラ2によりその表面が一様に帯電される。本実施例では、帯電ローラ2は、芯金上に導電性ゴム層を設けた導電性ローラであり、感光ドラム1に並行にして所定の圧力で接触させて配設されており、感光ドラム1の回転に従動して回転する。本実施例では、帯電ローラ2に対して-1100Vの直流電圧を印加することで感光ドラム1を帯電させ、その時の感光ラム1の表面電位はおよそ-550Vとなる。帯電された感光ドラム1には、露光装置3により画像信号に応じた静電潜像が形成される。
【0016】
現像装置4は、感光ドラム1上の静電潜像にトナー90を供給してトナー像として可視化する。本実施例では、現像装置4は負の正規帯電極性(静電潜像を現像するための帯電極性)を持つ一成分現像剤としてのトナー90を内包する、接触現像方式の反転現像装置である。
現像装置4には、現像剤担持体としての現像ローラ42と、トナー供給ローラ43と、現像剤規制部材としての規制ブレード44が備えられている。トナー供給ローラ43は、導電性の芯金の外周に発泡体を形成した弾性スポンジローラである。トナー供給ローラ43は、現像ローラ42に対して所定の侵入量を持って接触するように配設されている。ト
ナー供給ローラ43によって供給されて現像ローラ42に保持されたトナー90は規制ブレード44によって薄層化され、現像に供される。ここで規制ブレード44は、現像ローラ42上のトナー90の層厚を規制する機能を有すると同時に、現像ローラ42上のトナー90に所定の電荷を付与する現像剤帯電手段としての機能を有している。
現像ローラ42は、感光ドラム1と表面の移動方向が同じとなる、
図1内の矢印方向に回転駆動される。本実施例では、適切な画像濃度を得るために現像ローラ42は表面の移動速度が感光ドラム1の表面の移動速度に対して140%となる速度で回転駆動される。また、不図示の付勢手段により、現像装置4は感光ドラム1側へ押し付けられ、その結果、現像ローラ42が感光ドラム1に押し付けられる。それにより、現像ローラ42の表面が変形し、現像ニップを形成することで、安定した当接状態で安定した現像を行うことができる。
【0017】
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、転写部材の一つである一次転写装置51により中間転写ベルト53に静電的に転写される。中間転写ベルト53上には各色のトナー像が順次重ね合わせて転写され、フルカラーのトナー像が形成される。そしてフルカラーのトナー像は一次転写装置51とは異なる転写部材である二次転写装置52により記録材に転写される。その後、定着装置6により記録材上のトナー像が加圧及び加熱されて記録材に定着され、画像形成物として排紙される。
また、中間転写ベルト53の移動方向において、二次転写装置52の下流側にベルトクリーニング装置7が配設されており、中間転写ベルト53上の残留したトナー90を除去・回収する。
【0018】
本実施例では、感光ドラム1に専用のクリーナ装置を設けない、像担持体クリーナレス方式を採用している。一次転写装置51の対向位置(一次転写位置)を通過した感光ドラム1表面が帯電ローラ2との接触位置(帯電位置)に到達するまでの間において、その感光ドラム1表面に当接する部材はない。それにより、感光ドラム1に現像装置4の現像ローラ42を当接させた時に、画像形成後に感光ドラム1上に残留したトナー90を現像装置4に回収することを可能にしている。ただし、本発明の効果を得るにあたっては、上記構成に限定されない。
【0019】
<現像ローラと感光ドラムの当接構成>
次に、本発明に係る現像ローラ42、およびその表層423について説明する。
図2(a)は、本実施例に係る現像ローラ42の概略構成を示す模式的断面図であり、現像ローラ42の回転軸方向から見た断面図となっている。
図2(b)は、本実施例に係る現像ローラ42の表層423を拡大し示した模式的断面図である。
【0020】
現像ローラ42は、
図2(a)に示すように、金属など導電性の部材を用いた軸芯体421の外周に、基層422と表層423とで構成された、弾性を有する弾性層を形成し、表層423の表面にて感光ドラム1と当接するよう形成されたゴムローラである。表層423は、
図2(b)に示すように、内部に表層結着樹脂423aと、表層結着樹脂内に分散している粗し部材としての粗し粒子423bとを含む。それにより、表層423の表面に複数の凸部を形成している。本発明においては、表層結着樹脂423aと粗し粒子423bは、後述する圧縮弾性率の範囲を満たすものが選択される。
また、現像ローラ42の表層423の、回転軸に平行な長手方向の長さは、本実施例では235mmであり、感光ドラム1の回転軸に平行な長手方向の長さよりも短く設定している。
【0021】
現像ローラ42は、軸心体421が露出した部分を介して現像装置4に回転可能に支持されている。そして、現像ローラ42の両端部の軸心体421が露出した部分には、不図示の軸間規制部材45が設けられている。この軸間規制部材45は、軸心体421と感光
ドラム1との間の距離を規制する厚みを持つ部材である。
【0022】
ここで、現像ローラ42の感光ドラム1への侵入量dについて、
図3を用いて説明する。
図3は現像ローラ42の回転軸方向から見た感光ドラム1と現像ローラ42の画像形成中の当接した状態における模式的断面図となっている。感光ドラム1の外周形状は半径r1の円であり、現像ローラ42の外周形状は半径r2の円である。画像形成のため現像ローラ42が感光ドラム1に当接した状態において、感光ドラム1の回転中心10と、現像ローラ42の回転中心420との距離を軸間d0とする。そして、各回転中心10,420を結ぶ直線上において、感光ドラム1と現像ローラ42とが当接により変形していないと仮定した時の外周面である、それぞれ半径r1,r2の円との接点を、それぞれ接点D1,接点D2とする。そして、その接点D1と接点D2との間の距離を、侵入量dと定義する。すると、侵入量dは、感光ドラム1の半径r1と現像ローラ42の半径r2、および軸間d0を用いて、下記式1で表され、算出することができる。
d=r1+r2-d0 … 式1
半径r1,半径r2の測定には、例えば、全自動ローラ測定装置RVS-860-3C/S4(東京光電子工業製)などを使用することができる。本実施例において、r1は10.00mmであり、r2は5.00mmであった。
侵入量dの調整は、軸間規制部材45の、軸心体421側から感光ドラム1側への厚みを調整することで可能である。例えば、侵入量dを0.04mmに設定する場合、式1より、軸間d0から半径r1を引いた、回転中心420と接点D1間の距離を4.96mmにすればよいため、軸間規制部材45の厚みを4.96mmから軸心体421の半径を引いた値にする。
【0023】
ここで、現像ローラ42は感光ドラム1と当接することで変形するため、その反発力により押圧力が生じる。以下では、この現像ローラ42と感光ドラム1間に働く、長手方向の単位長さあたりの荷重を、ドラム当接圧Pと呼ぶ。ドラム当接圧Pは、現像ローラ42の各構成部分の圧縮弾性率などを含む構成と侵入量dによって決まる値である。現像ローラ42の構成が同じであれば、侵入量dが大きいほど、反発力が大きくなり、ドラム当接圧Pは大きくなる。よって、ある現像ローラ42についてドラム当接圧Pを所定の値に調整するためには、上述のような方法で侵入量dの調整を行う。
なお、本実施例では、軸間規制部材45により侵入量dを規制しているため、ドラム当接圧Pは必要以上に大きくならない。
【0024】
本実施例では、ドラム当接圧Pが7.7N/m以上になるように、侵入量dを設定している。これにより、適切な幅の現像ニップを形成し、安定した画像形成を行う。また、後述する、現像ローラ42の表面によって感光ドラム1上の放電生成物を掻き取るための力である接触部圧Uを形成し、画像流れの抑制効果を得ている。
【0025】
<現像ローラの表面形状>
現像ローラ42の表面にはトナー90の層が形成されるが、その表面の高低の高い部分(感光ドラム1に向かった凸部分)においては、規制ブレード44や感光ドラム1との当接部を通過する時に、トナーが掻き落とされやすい。そしてこのような突き出た凸部が、トナー90の高さを超えていることによって、トナー90を介さずに感光ドラム1に当接できるようになる。その結果、現像ローラ42により感光ドラム1上の放電生成物を掻き取りやすくなる。
よって、本発明においては、現像ローラ42の表面の十点平均粗さRzjisをトナー90の体積平均粒径よりも大きくすることで、放電生成物を掻き取りやすくし、画像流れを抑制できるようにしている。
【0026】
本発明における現像ローラ42の十点平均粗さRzjisの測定には、例えば接触式表
面粗さ計サーフコーダーSE3500(小坂研究所製)を用いることができる。測定条件として、カットオフ値を0.8mm、測定長さを2.5mm、送りスピードを0.1mm/secとした。現像ローラ1本あたり長手方向の位置が異なる任意の3ヶ所を測定し、得られた測定値の平均値を現像ローラ42のRzjisとした。
トナー90の体積平均粒径は、以下の測定方法により測定した測定値を採用することができる。測定装置としては、コールターマルチサイザーIV(べックマン・コールター製)を用いる。電解液としては、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、ISOTON II(ベックマン・コールター製
)が使用できる。測定方法としては、電解水溶液100ml中に分散剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩を0.5ml加え、更に測定試料を10mg加える。測定試料を懸濁した電解液は、超音波分散器で1分間分散処理を行い、測定装置により30μmアパーチャーを用いて体積粒度分布を測定し、測定されたメディアン径(D50)を体積平均粒径とする。本実施例では、トナー90の体積平均粒径7μmに対し、現像ローラ42の表面の十点平均粗さRzjisを10μmとしている。
【0027】
また、本実施例では、粗し粒子423bの体積平均粒径が、トナー90の体積平均粒径よりも大きいものを用いた。例えば、トナー90の体積平均粒径7μmに対し、粗し粒子423bの体積平均粒径を10μmとしている。そうすることで、容易に表層423の表面のRzjisをトナー90よりも大きくすることができる。ただし、本発明の効果を得るにあたっては、現像ローラ42の表面の十点平均粗さRzjisがトナー90の体積平均粒径よりも大きければよく、粗し粒子423bの体積平均粒径はトナー90の体積平均粒径よりも小さいものを用いてもよい。例えば、粗し粒子423bの粒径に依らず、表層結着樹脂423aに対する粗し粒子423bの入れ目量を増やすことなどにより、表層423の表面のRzjisをトナー90より大きくしてもよい。
【0028】
<接触面積Sと接触部圧U>
次に、本発明の特徴である現像ローラ42とガラス平板Iとの接触面積Sおよび接触部圧Uの測定方法について、
図4(a),(b)を用いて説明する。ここで、接触面積Sおよび接触部圧Uは、現像ローラ42が感光ドラム1に接触する微小部分の面積および圧力を、感光ドラム1の代わりに透明色の剛性の平板であるガラス平板Iを用いることで、測定したものである。なお、接触面積S(mm
2)の値は、単位面積1mm
2の現像ニップの領域に対する、接触する微小部分の面積であるため、接触する微小部分の面積比率としての意味もある。
【0029】
図4(a)は接触面積Sおよび接触部圧Uの測定構成を示した図である。
まず、接触面積Sの測定方法について述べる。現像ローラ42の軸心体421を、顕微鏡Eのステージ上の高さが均等な固定部Jに置くことで、現像ローラ42を、表層423の下面が顕微鏡Eのステージに接しない状態で支持する。また、現像ローラ42は、重力方向に対し現像ローラ42の回転軸が垂直になるよう支持される。そして、現像ローラ42の回転軸に並行な、透明色の剛性のガラス平板Iを、現像ローラ42の表層423に向かって押し当てる構成としている。ガラス平板Iの厚みとしては、加圧時に割れ等が発生せず、かつ顕微鏡Eのレンズと干渉しない範囲で、例えば1mm~5mmの厚みのものを使用できる。本実施例では、厚み1mmのガラス平板Iを使用した。また、ガラス平板Iは、後述する観察画像を適切に取得するため、表面が平滑で十分に清掃されたものを用いる。
本実施例では、ガラス平板Iを当接する現像ローラ42の領域を長手一部に限定して測定した。より詳しくは、現像ローラ42の基層422および表層423を、ガラス平板Iを当接し接触面積Sを測定する長手方向の一部のみ残し、軸心体421から剥した。なお、このような基層422および表層423の除去は行わず、現像ローラ42の全域にガラス平板Iを当接させて測定してもよい。ここで、ガラス平板Iを当接させる、現像ローラ
42の基層422および表層423がある部分の長手方向の長さを長さlとする。本実施例においては、長さlを50mmとして、接触面積S、および後述のドラム当接圧P、接触部圧Uの測定を行った。
この時、現像ローラ42の基層422および表層423がある部分の両側に露出した軸心体421の両端には、軸間規制部材45を設けた状態にしている。そしてガラス平板Iは現像ローラ42の長手方向の長さlの基層422および表層423がある部分と、両端の軸間規制部材45に当接できる大きさを持つ。この構成により、現像ローラ42が、感光ドラム1に対する侵入量dと同じ侵入量dで、ガラス平板Iに対しても当接できるようにしている。また、現像ローラ42の回転軸に向かって垂直に、両端の軸間規制部材45付近それぞれに同じ荷重Fをかけることで、ガラス平板Iを現像ローラ42に均等に押し付ける。なおこの時、現像ローラ42および両端の軸間規制部材45の全体には、ガラス平板Iの上から加圧している荷重2Fに加え、ガラス平板Iの重さによる荷重F0もかかる。
【0030】
接触面積Sを測定する時の荷重Fは、侵入量dで当接するための大きさが必要である。本実施例において接触面積Sを測定する時は、軸間規制部材45がガラス平板Iに接することで、侵入量dとなるように、荷重Fを両側それぞれ、後述する最少荷重F1より大きい5Nに設定した。なお、接触面積Sの測定時は、現像ローラ42とガラス平板Iとの侵入量が、現像ローラ42が感光ドラム1に当接する時の侵入量dと同じであればよい。よって、ここでの荷重Fは、現像ローラ42および軸間規制部材45と感光ドラム1との間に働く押圧力の荷重値と、必ずしも一致させる必要はない。
そして、ガラス平板Iに垂直な方向から観察可能な顕微鏡Eによって、現像ローラ42とガラス平板Iとの接触状態を観察する。顕微鏡Eとしては、レーザマイクロスコープVK-X200(キーエンス製)などを用いることができる。なお、観察においては、ガラス平板Iの現像ローラ42と接している面にピントを合わせる。本実施例では、倍率200倍の条件で観察した。また、観察時の明るさの条件は、全面黒画像となる0から全面白画像となる255の間の中心値である128に設定した。
【0031】
図4(b)は上記方法により接触部を観察した時の、部分的な接触状態を示す図である。図面内のX方向は現像ローラ42の回転軸に平行な方向で、Y方向はX方向に垂直な方向である。顕微鏡Eで観察可能な観察領域L1内に、部分的に接触している接触部Qが見られる。観察領域L1内において、接触部Q以外の部分は、現像ローラ42はガラス平板Iと非接触の状態にある部分である。接触部Qは、観察領域L1内において、複数の孤立した部分領域から構成されており、接触部Qでは、光の反射率が下がり、観察画像上暗く映る。観察領域L1は、ガラス平板Iと現像ローラ42が接触している接触部Qを、Y方向に対して全て、入るように観察する。ただし、X方向に対しては全ての接触部Qを入れる必要はない。ここでの観察領域L1は、現像ローラ42と顕微鏡Eのレンズとの位置関係を動かして観察し、複数回の観察画像を結合することで観察可能であっても良い。
ここで接触面積Sを測定する領域を決めるため、現像ニップが形成されている領域としての当接領域L2を次のように定義する。当接領域L2は、接触部Qが4辺に含まれる面積1mm
2以上の直方形の領域とし、かつ当接領域L2のY方向の幅が最大となるようにする。つまり、当接領域L2は、観察領域L1中の全ての接触部Qにおける、Y方向の最上端が含まれる上辺と、Y方向の最下端が含まれる下辺を持つ長方形の領域とする。この当接領域L2のY方向の幅をニップ幅nとする。
【0032】
そして、当接領域L2から選択した面積1mm2の測定領域L3内における、全ての接触部Qの面積の総和である、接触面積Sを測定する。ここでの測定領域L3は、現像ローラ42の回転軸に向かった位置をY方向の中心位置とした、Y方向に対称な形状の領域範囲を設定する。測定領域L3は、なるべく、光量検出が安定する観察画像の中央付近を選択することが好ましい。測定領域L3は、例えば、当接領域L2内に入るよう、現像ロー
ラ42の回転軸に向かった位置と同等とみなせる当接領域L2のY方向の中心位置を、Y方向の中心位置として、Y方向の幅0.5mm、X方向の幅2.0mmの直方形の領域とする。なお、測定領域L3の形状は、面積が1mm2の領域となればよく、このような選択の仕方に限るものではない。観察画像から接触面積Sを算出する方法としては、例えば二値化解析がある。
二値化解析においては、接触部Qが黒部に、接触部Q以外の接触しない部分が白部になるよう、画像処理(二値化)を行う。以下に、本実施例で用いている、画像処理ソフトImageJ(開発元:Wayne Rasband(NIH)、Ver.1.52d)を用いた二値化解析の方法について述べる。なお、二値化解析が可能な、その他の画像解析ソフトを用いることによっても、接触面積Sの算出が可能である。まず、観察画像を、画像内に測定領域L3が含まれ当接領域L2以外の領域が含まれないように切り抜き、32ビットグレースケール画像に変換する。そして、自動閾値設定方法としてYenアルゴリズムを選択し、自動的に二値化の閾値レベルを設定することにより、接触部Qと二値化後の黒部の範囲を合わせる。そして、黒部に変換された測定領域L3の中の全ての接触部Qについて面積をピクセル数で求め、それを測定領域L3の全ピクセル数で割った値が、単位面積当たりの接触面積S(mm2)となる。
【0033】
次に、接触部圧Uの算出に必要なドラム当接圧Pの測定方法について説明する。ドラム当接圧Pは、現像ローラ42が感光ドラム1に当接する時の、長手方向の単位長さあたりの荷重であるが、感光ドラム1の代わりにガラス平板Iを用いることで測定できる。ドラム当接圧Pの測定は、接触面積Sの測定と同じ
図4(a)の測定構成を用いて以下のように測定することができる。まず、荷重Fがゼロの状態で、ガラス平板Iが軸間規制部材45には接していない状態から、荷重Fを徐々に大きくしていく。そして、両端の軸間規制部材45の両方にガラス平板Iが接触した時の荷重をF1として測定する。これにより、侵入量dで当接するための最小荷重F1が分かる。ここで、この時の両端にかかる荷重2F1とガラス平板Iの自重F0とを加えた合計荷重(2F1+F0)は、ガラス平板Iが両端の軸間規制部材45と当接している時に現像ローラ42のみにかかる荷重と等しい。よって、ドラム当接圧P(N/m)は、最小荷重F1(N)と、ガラス平板Iの自重F0(N)と、長手方向の長さl(mm)により、下記式2で表され、測定することができる。
P=(2F1+F0)/(l・10
-3) … 式2
なお、ドラム当接圧Pと侵入量dの相関関係は、現像ローラ42の硬度や形状などの構成によって決まり、侵入量dが大きいほどドラム当接圧Pが大きい関係性がある。また、上述の接触面積Sの測定時のように最少荷重F1以上の荷重Fを加えている時においては、軸間規制部材45により侵入量dが決まり、その侵入量dと対応したドラム当接圧Pで、ガラス平板Iは現像ローラ42に当接している。
【0034】
接触部圧U(N/mm2)は、接触部Qのみにかかる、単位面積当たりの荷重(圧力)であり、ドラム当接圧P(N/m)と接触面積S(mm2)とニップ幅n(mm)により、下記式3で表わされる。
U=P/(103・S・n) … 式3
式3より、接触部圧Uは、接触面積Sと、ニップ幅nと、ドラム当接圧Pの測定値から、算出することができる。なお、本実施例では、画像流れの発生を抑制できるよう、接触部圧Uを5.8N/mm2以上にしている。
【0035】
ここで、接触部圧Uを大きくすることで画像流れを抑制できる理由について説明する。画像流れが発生するのは、帯電ローラ2からの放電などによって感光ドラム1上に付着し蓄積される放電生成物が、適切に除去されないからである。そのため、現像ローラ42のトナー90より突出する部分が感光ドラム1に接触する面積としての、接触面積Sを減らすことなどにより、接触部の圧力である接触部圧Uをより強く、つまり部分的により強く
接触させる。それにより、感光ドラム1上の放電生成物が掻き取られて減るため、画像流れを抑制できる。
【0036】
<現像ローラの表層の圧縮弾性率R>
次に、本発明の接触部圧Uを得るための現像ローラ42の表層423の圧縮弾性率Rについて説明する。圧縮弾性率の定義は、つぶす時に加えられる圧力を、そのつぶす時に圧縮される高さの圧縮比率で割ったものである。なお以下の説明において、弾性率と称する場合は、このような圧縮方向の弾性率を示すものとする。
【0037】
表層423の感光ドラム1に接触する微小部分となる接触部Qにおける弾性率R(以下、表層423の弾性率Rと略す)は、以下のように測定することができる。まず、表層423の弾性率Rを算出するための、表層423の表層結着樹脂423aの圧縮弾性率Aと、表層423の粗し粒子423bの圧縮弾性率Bの測定方法を述べる。本実施例の説明において使用する値として、現像ローラ42のゴム片を切り出し、SPM(商品名:MFP-3D-Origin、オックスフォード・インストゥルメンツ社製)を用いて、表層結着樹脂423aと粗し粒子423bの弾性率を測定した。測定方法の詳細について以下に説明する。
まず、現像ローラ42について、クライオミクロトーム(UC-6(製品名)、ライカマイクロシステムズ社製)を用いて、-150℃で、表層423の断面を含む、厚さ200nm、大きさ100μm×100μmのゴム薄片を切り出す。そして、ゴム薄片を平滑なシリコンウエハ上に載せ、室温25℃湿度50%の環境下に24時間放置した。次にゴム薄片を載せたシリコンウエハをSPMステージにセットし、表層423の断面をSPM観察した。なお探針(商品名:AC160、オリンパス社製)のバネ定数とインボルス定数は、あらかじめ本SPM装置搭載のサーマルノイズ法において以下であることを確認した(バネ定数:28.23nN/nm, インボルス定数:82.59nm/V)。また、あらかじめ探針のチューニングを実施し、探針の共振周波数を求めた(282KHz(1次)および1.59MHz(高次))。SPMの測定モードはAM-FMモード、探針の自由振幅は3V、セットポイント振幅は2V(1次)および25mV(高次)としている。そして、視野5μm×5μmのサイズにおいて、スキャン速度は1Hz(探針が1往復する速さ)、スキャン点数は縦256および横256の条件でスキャンを行い、高さ像および位相像を同時取得した。
【0038】
その後、得られた像において、フォースカーブ測定により弾性率測定を行う箇所を指定した。すなわち、表層結着樹脂423aの部分と粗し粒子423bの部分をそれぞれ20点ずつ指定した。その後、すべての点においてコンタクトモードでのフォースカーブ測定を1回ずつ行った。なお、フォースカーブの取得は、以下の条件で行った。フォースカーブ測定においては、Zピエゾが試料表面に近づき、探針のたわみが一定値になったところで折り返すよう制御して測定を行う。この際の折り返しポイントをトリガー値と呼び、フォースカーブ開始時のディフレクション電圧から、何V電圧が増加したところで折り返すかを示している。今回の測定においては、トリガー値は0.2~0.5Vの範囲で測定を行った。なお、低硬度の試料においてはバネを少したわませるだけで押し込み深さが十分確保されるため、トリガー値は0.2Vを採用し、高硬度の試料においては押し込み深さを確保するためにはバネを大きくたわませる必要があるのでトリガー値は0.5Vを採用した。その他のフォースカーブ測定条件としては、トリガー値で引き返した後の測定距離は500nm、スキャン速度は1Hz(探針が1往復する速さ)とした。
その後、得られたフォースカーブについて、1本ずつHertz理論に基づくフィッティングを行い、弾性率を算出した。ここで、表層結着樹脂423aの部分において測定した20点のフォースカーブから算出した弾性率の平均値を表層結着樹脂423aの圧縮弾性率Aとした。さらに、粗し粒子423bの部分において測定した20点のフォースカーブから算出した弾性率の平均値を粗し粒子423bの圧縮弾性率Bとした。
【0039】
ここで、本発明における表層423の弾性率Rの算出のための厚み比率eを以下のように定義する。現像ローラ42が感光ドラム1に接触する微小部分となる接触部Qにおいて、現像ローラ42の軸方向に直交する方向における、表層結着樹脂423aの層厚みg(μm)に対する粗し粒子423bの層厚みh(μm)の比を、厚み比率eとする。厚み比率eは、下記式4で表される。
e=h/g … 式4
厚み比率eを算出するには、表層423を切り取って、その断面を観察することで可能である。例えば、観察した結果が
図2(b)のような断面形状であった時について説明する。現像ローラ42が感光ドラム1に接触する微小部分は、表面形状高さの頂点部分となっているため、その頂点部分の厚みg1,g2,h1を測定する。表層結着樹脂423aの層厚みgは粗し粒子の上部の厚みg1と粗し粒子の下部の厚みg2の和となり、粗し粒子423bの層厚みhは粗し粒子のみの厚み(粒子径)h1となる。なお、頂点部分において粗し粒子423bが複数ある場合、層厚みhは、それぞれの粗し粒子423bの厚み(粒子径)の和となる。本実施例においては、厚み比率eの値はおよそ7であった。なお、本発明の効果は、後述する表層423の弾性率Rの値が調整されることにより得られるが、この厚み比率eの値には限定されない。
【0040】
表層423の弾性率Rを算出する式の導出について以下に述べる。ここでは、表層423の感光ドラム1に接触する微小部分が、その当接によってつぶれる量を考える。
表層423の感光ドラム1に接触する微小部分は、粗し粒子423bが含まれた凸部となっているため、表層結着樹脂423aの部分と粗し粒子423bの部分が重なった、層構造だと考えられる。そして、その微小部分には上述の接触部圧Uがかかる。重なった複数の層に圧力がかかる場合、全ての層に同等の圧力がかかる。つまり、重なっている表層結着樹脂423aの部分と粗し粒子423bの部分の、それぞれに接触部圧Uがかかる。よって、上述の弾性率の定義から、表層結着樹脂423aと粗し粒子423bのそれぞれが圧縮される圧縮比率をΔg、Δhとすると、それぞれ下記式5,式6で表されることになる。
Δg=U/A … 式5
Δh=U/B … 式6
【0041】
この圧縮比率Δg,Δhを用いると、表層結着樹脂423aが圧縮される高さは(g・Δg)となり、粗し粒子423bが圧縮される高さは(h・Δh)となる。そして、表層423が圧縮される圧縮比率をΔkとすると、上述のように表層423が表層結着樹脂423aと粗し粒子423bの層構造と考えることで、下記式7のように表される。
Δk=(g・Δg+h・Δh)/(g+h) … 式7
また、表層423の弾性率Rは、上述の弾性率の定義から下記式8で表される。
R=U/Δk … 式8
【0042】
従って、式8に式4~7を反映すると、表層423の弾性率Rは、表層結着樹脂423aの弾性率Aと、粗し粒子423bの弾性率Bと、厚み比率eにより、下記式9のように表される。
R=(1+e)/(1/A+e/B) … 式9
この式9に、上述した測定方法によって得た、表層結着樹脂423aの弾性率Aと、粗し粒子423bの弾性率Bと、厚み比率eの測定値を代入することで、表層423の弾性率Rが算出可能である。
なお、式9より、表層結着樹脂423aの弾性率Aおよび粗し粒子423bの弾性率Bが大きくなる方向は、表層423の弾性率Rが大きくなる方向である。また、表層423の弾性率Rは、表層結着樹脂423aの弾性率Aおよび粗し粒子423bの弾性率Bのうちの小さい方より、大きい値となる。また、表層423の弾性率Rは、表層結着樹脂42
3aの弾性率Aと粗し粒子423bの弾性率Bのうちの大きい方より、小さい値となる。
【0043】
ここで、表層423の弾性率Rが大きいということは、表層423に所定の圧力がかかった時につぶれにくいことを示している。そして、表層423の弾性率Rが大きいと、粗し粒子423bにより凸部となっている粒子部423eが、沈み込みにくくなることや扁平形状に変形しにくいことで、接触面積Sは小さくなりやすい。それにより、表層423の弾性率Rが大きいと、式3の関係から、接触部圧Uは大きくなりやすい。
本実施例では、画像流れの発生を抑制できるよう、表層423の弾性率Rを50MPa以上にすることで、接触部圧Uを5.8N/mm2以上にしている。また、表層423の弾性率Rが大きく、接触部圧Uが大きすぎると、感光ドラム1の表面を局所的に深く削って縦スジを発生させたり、感光ドラム1が削れやすいために、その膜厚を適切に維持できずに長寿命化が難しくなったりしてしまう。そのため、接触部圧Uを873N/mm2以下にするのが好ましい。また、表層423の弾性率Rは6000MPa以下のものを用いるのが好ましい。
【0044】
<実施例1と比較例1の詳細>
本実施例である実施例1(1-1~5)、および比較例1(1-1~4)の、ドラム当接圧Pと、接触面積Sと、接触部圧Uと、表層結着樹脂423aの弾性率Aと、粗し粒子423bの弾性率Bと、表層423の弾性率Rの値を表1に示す。また、各実施例1と各比較例1のプロセスカートリッジ8を用いて、実際に画像形成を行った評価結果も合わせて表1に示す。
(表1)
【0045】
[実施例1-1,1-2,1-3,1-4,1-5]
実施例1-1~5はいずれも、現像ローラ42の表面の十点平均粗さRzjisをトナー90の体積平均粒径よりも大きくしている。それにより、現像ローラ42の表面の凸部がトナー層を介さずに感光ドラム1上の放電生成物を掻き取りやすくしている。また、実施例1-1~5のそれぞれにおいて、ドラム当接圧Pが7.7N/mとなるよう、各実施例の現像ローラ42に合わせて所定の侵入量dを調整している。より詳しくは、上述のドラム当接圧Pの測定方法により、複数の異なる侵入量dとなる、複数の軸間規制部材45を用いて、各侵入量dに対するドラム当接圧Pを測定する。それによって、ドラム当接圧Pと侵入量dの相関から、ドラム当接圧Pが狙いの値となる時の侵入量dが求められる。例えば、実施例1-3においては、ドラム当接圧Pが7.7N/mとなる侵入量dとして
、所定の侵入量dを0.03mmとした。そして、実施例1-5において、ニップ幅nの値は0.51mmであった。
さらに、表1に示すように、本実施例では、表層423の弾性率Rを大きくすることで、接触面積Sが小さく、また接触部圧Uが大きくなるように構成されている。実施例1-1~5では、表層423の弾性率Rを50MPaより大きくした。さらに、実施例1-1~3では、表層423の弾性率Rを94MPaより大きくしている。このような表層423の弾性率Rを得るため、表1に示すように表層結着樹脂423aの弾性率Aを大きくする方向か、または粗し粒子423bの弾性率Bを大きくする方向に、それらの材料等を調整している。
【0046】
[比較例1-1,1-2,1-3,1-4]
比較例1-1~4の現像ローラ42の表層423について説明する。現像ローラ42の表層423以外の構成に関しては、実施例1とほぼ変わらないため、ここでは説明を省略する。
表1に示すように、比較例1-1~4は、実施例1-1~5よりも、弾性率が小さい表層結着樹脂423aまたは弾性率が小さい粗し粒子423bを採用した。そのため、表層423の弾性率Rは50MPaよりも小さい。またそれにより、接触部圧Uは5.8N/mm2よりも小さい。
【0047】
[評価方法]
ここで、本実施例の効果確認として行う、画像流れの評価方法について説明する。画像流れについては、文字画像印字時の、出力画像における文字ボケを以下の基準で目視にて判定し評価した。文字ボケが顕著に発生し実使用上問題がある時を×、文字ボケの軽微な発生があるが実使用上は問題ない時を△、発生しなかった時を○とした。
なお、画像流れの評価は、温度30℃相対湿度80%の環境で、それぞれの実施例、比較例において、4000枚の通紙試験を行った後、12時間以上通紙せず放置した状態において検証した。
【0048】
[実施例1および比較例1の比較]
表1のうち、ドラム当接圧Pがほぼ同じ値に設定されている実施例1-1~5,および比較例1-1~4の各評価結果を比較すると、接触部圧Uが大きいほど、画像流れが発生しにくい傾向がある。これは、現像ローラ42の表層423が感光ドラム1に対して部分的により強い圧力で接触し、感光ドラム1に付着した放電生成物を掻き取りやすくなるためである。
したがって、表1に示すように、画像流れの抑制効果を高めるため、接触部圧Uは実施例1-1~5のように5.8N/mm
2以上であることが好ましい。
また、このような接触部圧Uとなるように、現像ローラ42の表層423の弾性率Rは実施例1-1~5のように50MPa以上とすることが好ましい。この理由は以下のように考えることができる。現像ローラ42の表層423の弾性率Rが大きいと、
図4(b)に示すような現像ローラ42の粗し粒子423bが含まれることにより突出した粒子部423eがつぶれにくい。そのため、個々の接触部Qが小さく、またはその数が少なくなることで、接触面積Sが小さくなりやすい。その結果、接触部圧Uを大きくすることができていると考えられる。
【0049】
また、実施例1(実施例1-1~5)は現像ローラ42による放電生成物の掻き取りによって画像流れの発生を抑制する構成としている。そのため、現像ローラ42とは別の放電生成物を除去する手段を設けることにより装置サイズやコストが大きくなってしまうことを、防ぐことができる。また、非画像形成時に頻繁な放電生成物の除去動作が入ることによってユーザーの利便性が低下してしまうことを、防ぐことができる。
【0050】
特に、従来の感光ドラム1上にクリーニング手段を設けない像担持体クリーナレス方式の画像形成装置においては、クリーニング手段によって感光ドラム1表面を削らないため、画像流れが発生しやすかった。しかし、本実施例の構成によって、簡易な構成で、ユーザーの利便性を低下させずに、画像流れの発生を抑制することが可能となった。
【0051】
<実施例2>
以下、実施例2について説明する。画像形成装置100の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置100のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0052】
上述の実施例1では、現像ローラ42と感光ドラム1との間に軸間規制部材45が設けられており、現像ローラ42の感光ドラム1に対する侵入量dが規制されているため、ドラム当接圧Pが必要以上に大きくならない構成となっている。
しかしながら、軸間規制部材45が設けられていない構成などにより、侵入量dが大きくなる場合は、侵入量dが大きくなることに伴い反発力が大きくなり、ドラム当接圧Pが大きくなる。このようなドラム当接圧Pが大きい構成においては、長期にわたる使用などによって、現像装置4の劣化による画像不良が発生しやすくなり、現像装置4の長寿命化が難しくなることがあった。この理由について、以下に説明する。すなわち、ドラム当接圧Pが大きいことによって、トナー90に働く圧力や摩擦力が大きくなる。その結果、トナー90の割れや、トナー90に外添された外添剤の効果低減や、現像ローラ42や規制ブレード44などへの外添剤による汚染などが生じやすくなってしまうからである。このような現像装置4の劣化が起こると、現像ローラ42上に安定した層厚のトナー90の層を形成することができなくなったり、トナー90の帯電が不適切になったりする。またトナー90の感光ドラム1への付着力が大きくなって非印字部にトナー90が付着することもある。そのため、印字部での画像濃度低下や、非印字部でのカブリなどの画像不良が発生してしまう。
【0053】
そこで、本実施例では、実施例1と同様に、軸間規制部材45を設けて、現像ローラ42を感光ドラム1に所定の侵入量dとなるように当接している。そして、その際のドラム当接圧Pを20N/m以下となるように設定している。このように、ドラム当接圧Pを必要以上に大きくせず、小さくしたため、現像装置4の劣化を抑制することができる。その結果、画像濃度低下などの画像不良の発生が抑制され、現像装置4を長寿命化させることができる。
【0054】
<実施例2と比較例2の詳細>
本実施例である実施例2(2-1、2-2)、および比較例2(2-1、2-2)の、ドラム当接圧Pと、接触面積Sと、接触部圧Uと、表層結着樹脂423aの弾性率Aと、粗し粒子423bの弾性率Bと、表層423の弾性率Rの値を表2に示す。また、各実施例2と各比較例2のプロセスカートリッジ8を用いて、実際に画像形成を行った評価結果も合わせて表2に示す。
(表2)
【0055】
[実施例2-1,2-2]
実施例2-1,実施例2-2の現像ローラ42の表層423は、それぞれ上述の実施例1-3,実施例1-5と同じものを採用している。ただし、実施例2-1,実施例2-2は、軸間規制部材45の軸心体421側から感光ドラム1側への厚みを小さくして、侵入量dを大きくした。そのため、表2に示すように、実施例1-3,実施例1-5より大きいドラム当接圧Pとなる構成である。軸間規制部材45以外の構成に関しては、実施例1とほぼ変わらないため、ここでは説明を省略する。なお、実施例2-1においては、ドラム当接圧Pを20.0N/m、にするため、所定の侵入量dを0.06mmに設定した。また、比較例2-1においては、ドラム当接圧Pを42.6N/mにするため、所定の侵入量dを0.10mmに設定した。そして、実施例2-1、比較例2-1において、ニップ幅nはそれぞれ、0.71mm、0.86mmであった。
表2に示すように、実施例2-1,実施例2-2は、それぞれ実施例1-3,実施例1-5に比べ、ガラス平板Iとの接触面積Sを測定する時のドラム当接圧Pが大きいため、より表層423が潰れることで接触面積Sは少し大きくなっている。ただ、ドラム当接圧Pが大きいことで、接触部圧Uは大きくなっている。
【0056】
[比較例2-1,2-2]
比較例2-1,比較例2-2の現像ローラ42の表層423も、それぞれ実施例1-3,実施例1-5と同じものを採用している。ただし、比較例2-1,比較例2-2は軸間規制部材45を省いた構成とした。そのため、表2に示すように、ドラム当接圧Pが実施例1-3,実施例1-5より大きい構成である。さらに、ドラム当接圧Pが実施例1-3,実施例1-5より大きい、実施例2-1,実施例2-2よりも、ドラム当接圧Pが大きい構成である。またそれに伴い、感光ドラム1への侵入量dが軸間規制部材45により規制されないこともあり、侵入量dも大きくなっている。軸間規制部材45の有無以外の構成に関しては、実施例1とほぼ変わらないため、ここでは説明を省略する。
表2に示すように、比較例2-1,比較例2-2は、それぞれ実施例2-1,実施例2-2に比べ、ガラス平板Iとの接触面積Sを測定する時のドラム当接圧Pが大きいため、
より表層423が潰れることで接触面積Sは少し大きくなっている。ただ、ドラム当接圧Pが大きいことで、接触部圧Uは大きくなっている。
【0057】
[評価方法]
ここで、本実施例の効果確認として行う、画像濃度の評価方法について説明する。
画像濃度については、白地の記録用紙に10mm角のベタ黒を印字するパッチを複数含む画像を印刷し、ベタ黒印字部を、カラー反射濃度計X-Rite504(X-Rite製)を用いて1つの紙内で5点測定し、その平均値を画像濃度とした。そして、画像濃度が1.2未満に低下した時を×、1.2以上である時を○とした。
なお、画像濃度の評価は、実施例1と同様に、温度30℃相対湿度80%の環境で、それぞれの実施例、比較例において、4000枚の通紙試験を行った後、12時間以上通紙せず放置した状態において検証した。
また、本実施例では、現像ローラ42の表層423に実施例1-3、1-5と同じ構成のものを採用しており画像流れについての評価も合わせて行ったため、評価結果を、画像濃度の評価結果と共に表2に示している。
【0058】
[実施例2と比較例2の比較]
ここで、実施例2と比較例2との結果の比較について説明する。なお、現像ローラ42の表層423に実施例1―3、1-5と同じ構成のものを採用しているため、実施例1との比較についても合わせて説明する。
比較例2-1、2-2では、接触部圧Uが5.8N/mm2以上となっているため、画像流れに対しては良好な結果が得られている。しかし、同じ表層423の弾性率Rである実施例1-3および1-5と比較し、画像濃度の低下がみられている。これは、ドラム当接圧Pが20N/mよりも大きいことで、現像装置4の劣化が促進されたためである。上述したように、現像装置4の劣化が起こると、現像ローラ42上に安定した層厚のトナー90の層を形成することができなくなったり、トナー90の帯電が不適切になったりする。そのため、印字部での濃度低下などの画像不良が発生してしまう。
【0059】
実施例2-1、2-2では、ドラム当接圧Pを20N/m以下にした構成であるため、現像装置4の劣化が抑えられ、画像濃度の低下は発生しない。表2に示すように、比較例2-1と、同じ表層423の弾性率Rである実施例2-1は、ドラム当接圧Pが20N/m以下であることで、画像濃度の低下が発生しない。また、比較例2-2と、同じ表層423の弾性率Rである実施例2-2においても、ドラム当接圧Pが20N/m以下であることで、画像濃度の低下が発生しない。その結果、現像装置4を長寿命化することができる。それに加え、ドラム当接圧Pが低くても、実施例1における接触部圧Uが5.8N/mm2以上であることを満たしており、現像ローラ42の表面が感光ドラム1に部分的に強く接触し、放電生成物を除去しやすいため、画像流れも抑制できている。
【0060】
よって、比較例2(比較例2-1、2-2)の構成においては、現像装置4の長寿命化と画像流れの発生の抑制を両立できないが、実施例2(実施例2-1、2-2)の構成においては、現像装置4の長寿命化と画像流れの発生の抑制の両立が可能となった。なお、実施例1における実施例1-1~1-5においても、接触部圧Uが5.8N/mm2以上で、かつ、ドラム当接圧Pが20N/m以下であるため、現像装置4の長寿命化と画像流れの発生の抑制は両立することが可能な構成となっている。
以上説明したとおり、本実施例の構成によって、簡易な構成で、ユーザーの利便性を低下させずに、現像装置4を長寿命化しつつ、画像流れの発生を抑制することが可能となった。
【0061】
<実施例3>
以下に、本実施例3及び比較例3(比較例3-1,比較例3-2)の構成を示す。画像
形成装置100の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。したがって、本実施例3及び比較例3の画像形成装置100において、実施例1の画像形成装置100のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
本実施例のような接触現像方式を採用し、表面に微小な凹凸を形成した現像ローラ42を用いた画像形成装置の場合、長期にわたって画像形成を行うと、現像ローラ42の表面の凸部と感光ドラム1の表面との間にトナー90が挟まる場合がある。このとき、現像ローラ42の表面の凸部と感光ドラム1の表面との間に挟まったトナー90が押しつぶされると感光ドラム1への点状のトナー融着が発生する。すると、このトナー90が融着した部分は、露光装置3による潜像形成が不十分になりトナー90が現像せず、出力画像としては白点となり画像不良となってしまうことがあった。
本実施例は、このようなトナー融着を抑制するためのものである。本実施例の特徴としては、現像ローラ42上のトナー90を所望量に規制するための現像剤規制部材としての規制ブレード44に導電性材料を使用し、電圧を印加可能な構成としているところにある。そして、画像形成装置100の電圧印加手段110から規制ブレード44にバイアスを印加するところにある。さらには、現像ローラ42の表層423に含有される粗し粒子423bに絶縁体を使用し、規制ブレード44に印加するバイアスはトナー90の帯電極性と同極性とするところにある。
【0062】
<現像装置の構成>
本実施例の現像ローラ42、規制ブレード44、印加バイアスおよびトナー90について、以下に示すように設定する。
【0063】
[実施例3]
粗し粒子423b:絶縁体(ウレタン粒子、平均粒径50μm)
規制ブレード44:SUS
ドラム当接圧P(N/m):20.0
接触部圧U(N/mm2):37.7
規制ブレード44への印加電圧:DC-500V
現像ローラ42への印加電圧:DC-300V
現像ローラ42への印加電圧に対する規制ブレード44への印加電圧の電位差(規制ブレードの電位から現像ローラの電位を差し引いた電位差):-200V
トナー90の帯電極性:負
本実施例では、長期にわたる耐久テストにおいても画像濃度を満足するためにドラム当接圧Pは20N/m以下とし、また画像流れ抑制のために接触部圧Uを十分に大きくして長期にわたる耐久テストにおいても良好に放電生成物の掻き取りが行えるようにした。
また、トナー90の現像に作用する現像バイアスとして電圧印加手段(不図示)から現像ローラ42にDC-300V、規制ブレード44に電圧印加手段110からDC-500Vの電圧を印加する。現像ローラ42に印加された電圧に対する規制ブレード44に印加された電圧の電位差を、トナー90の帯電極性と同極性側である負極性側(本実施例では-200V)にしておく。このようにすることで、負帯電性を有するトナー90への帯電付与性が向上し、帯電量の低いトナー90が減る。
【0064】
比較例については、現像ローラ42、規制ブレード44、印加バイアスおよびトナー90について、以下に示すように設定する。
[比較例3-1]
粗し粒子423b:導電体(球状炭素粒子、平均粒径50μm)
規制ブレード44:SUS
ドラム当接圧P(N/m):20.0
接触部圧U(N/mm2):37.7
規制ブレード44への印加電圧:DC-500V
現像ローラ42への印加電圧:DC-300V
現像ローラ42への印加電圧に対する規制ブレード44への印加電圧の電位差:-200V
トナー90の帯電極性:負
本実施例3との違いは、粗し粒子423bに導電体を使用しているところにある。すなわち、粗し粒子423bの後述する露出部423cが帯電しない構成である。
【0065】
[比較例3-2]
粗し粒子423b:絶縁体(ウレタン粒子、平均粒径50μm)
規制ブレード44:SUS
ドラム当接圧P(N/m):20.0
接触部圧U(N/mm2):37.7
規制ブレード44への印加電圧:DC-300V
現像ローラ42への印加電圧:DC-300V
現像ローラ42への印加電圧に対する規制ブレード44への印加電圧の電位差:0V
トナー90の帯電極性:負
本実施例3との違いは、規制ブレード44への印加電圧がDC-300V、現像ローラ42への印加電圧に対する規制ブレード44への印加電圧の電位差が0Vであるところにある。すなわち、粗し粒子423bの後述する露出部423cはトナー90と同極性の負極性に帯電するがトナー90の帯電量は安定しない構成である。
【0066】
<耐久テスト>
高温高湿環境において8000枚のプリント耐久テストを行った。本実施例の優位な効果を検証するため、実施例3,比較例3-1,比較例3-2の構成を評価した。具体的な条件と画像評価基準を以下に示す。
【0067】
(プリント耐久テスト条件)
環境 :温度30℃、湿度80%
印字モード :1枚間欠
評価用画像出力間隔:通紙1000枚ごと
【0068】
(画像流れの評価基準)
画像流れは、文字画像を出力し、目視によって以下の基準に基づき判定した。
○:文字ボケなし
△:文字ボケがあるが実使用上問題なし
×:文字ボケがあり、実使用上問題あり
【0069】
(画像濃度の評価基準)
画像濃度については、白地の記録用紙に10mm角のベタ黒を印字するパッチを複数含む画像を印刷し、ベタ黒印字部を、カラー反射濃度計X-Rite504(X-Rite製)を用いて1つの紙内で5点測定し、その平均値を画像濃度とした。
○:1.2以上
×:1.2未満
【0070】
(白点の評価基準)
白点(ドラム融着)は、ベタ黒画像を出力し目視によって以下の基準に基づき判定した。
○:出力画像に細かい白点なし
△:出力画像に細かい白点があるが実使用上問題なし
×:出力画像に大きめの白点が多数あり
【0071】
[結果]
本実施例3および比較例3-1,比較例3-2の評価結果を表3に示す。
(表3)
【0072】
<白点の抑制>
比較例3-1,比較例3-2では白点が発生した。
ここで、白点発生について説明する。耐久テストで白点が発生した比較例3では、感光ドラム1へのトナー90の融着が見られた。
詳細に説明する。画像形成装置100で長期にわたって画像形成を繰り返し行うと
図5(a)のように現像ローラ42の表層423の粗し粒子423bを覆っていた表層結着樹脂423aが現像ローラ42と規制ブレード44との摺擦によって摩耗する。そして、
図5(b)のように粗し粒子423bが露出する。粗し粒子423bが露出した状態になると、
図6のように、粗し粒子423bの露出部423cと感光ドラム1の表面との間にトナー90が挟まる場合がある。このとき、現像ローラ42の粗し粒子423bと感光ドラム1との接触部分でトナー90が押しつぶされることにより感光ドラム1への点状の融着が発生すると考えられる。
【0073】
感光ドラム1上のトナー90が融着した部分は露光装置3による潜像形成が不十分となり、融着部分にはトナー90が現像しないために出力画像上で白点となる。特に粗し粒子423bと感光ドラム1との接触部圧Uが高い場合はトナー90が押しつぶされやすくなり、表3に示したように融着が発生したと考えられる。
【0074】
比較例3-1では、粗し粒子423bが導電体であるため規制ブレード44に印加された電圧によって粗し粒子423bの露出部423cが帯電されない。このため、粗し粒子423bの露出部423cとトナー90との間に後述する反発力Hが働かない。比較例3-2では、粗し粒子423bの露出部423cはトナー90と同極性に帯電されるが、トナー90の帯電量は安定していない。このため、粗し粒子423bの露出部423cと帯電量の低いトナー90との間に後述する反発力Hが十分に働かない。
その結果、比較例3-1及び比較例3-2では、粗し粒子423bの露出部423cにトナー90が付着し、感光ドラム1との間でトナー90が押しつぶされて融着が発生したため、白点のある出力画像となった。
【0075】
一方、本実施例3の構成では、耐久テストにおいて画像濃度、画像流れの発生、白点の発生において問題ない良好な出力画像が得られた。
本実施例では、長期にわたって画像形成装置100を使用したときに現像ローラ42の表層423の粗し粒子423bが露出した部分へのトナー90の付着が抑制される。これにより、粗し粒子423bと感光ドラム1との間にトナー90が挟まらないようにして感光ドラム1へのトナー融着を防ぐことで出力画像上の白点発生を抑制することができる。
【0076】
これについて、
図7を用いて詳細に説明する。本実施例では導電性の規制ブレード44と、絶縁体の粗し粒子423bを備え、電圧印加手段110によって現像ローラ42から
規制ブレード44に向かってトナー90の帯電極性と同極性の電圧を印加し、粗し粒子423bの露出部423cを帯電する。具体的には
図7(a)のようにトナー90は負帯電極性のため、現像ローラ42から規制ブレード44に向かって印加する電圧は負電圧を印加する。
これにより、規制ブレード44が、現像ローラ42上のトナー90の層厚を規制すべく、現像ローラ42の表面を摺擦した際に、露出した粗し粒子423bの表面はトナー90と同極性の負帯電極性になる。このとき、
図7(b)のように粗し粒子423bの露出部423cとトナー90との間に反発力Hが働くため、粗し粒子423bの露出部423cへトナー90が付着しにくくなる。従って、粗し粒子423bと感光ドラム1表面との間にトナー90が挟まりにくくなるため、トナー90が押しつぶされて感光ドラム1表面に融着することを抑制できる。
【0077】
更に詳細に規制ブレード44に印加する電圧について説明する。本実施例では、トナー90の現像に作用する現像バイアスとして電圧印加手段(不図示)から現像ローラ42にDC-300V、規制ブレード44に電圧印加手段110からDC-500Vの電圧を印加する。現像ローラ42に印加された電圧に対する規制ブレード44に印加された電圧の電位差をトナー90の帯電極性と同極性側である負極性側(本実施例では-200V)にしておく。こうすることで、負帯電性を有するトナー90への帯電付与性が向上し、帯電量の低いトナー90が減る。それによって粗し粒子423bの露出部423cとトナー90との間に働く反発力Hが安定する。その結果、粗し粒子423bと感光ドラム1表面との間にトナー90が挟まりにくくなり、トナー90が押しつぶされて感光ドラム1表面に融着することを抑制したため、白点のない良好な出力画像が得られた。
【0078】
以上説明したように、現像ローラ42の表層423に含有される粗し粒子423bに絶縁体を使用する。そして、導電性の規制ブレード44に印加する電圧と、現像ローラ42への印加電圧に対する規制ブレード44への印加電圧との間の電位差を、規制ブレード44側の極性が、トナー90の帯電極性と同極性となるように形成する。このようにすることで、現像ローラ42の表層423に含有される粗し粒子423bの露出部423cが、トナー90の帯電極性と同極性に帯電する。その結果、規制ブレード44によって電荷を付与されたトナー90と、現像ローラ42の表層423に含有される粗し粒子423bの露出部423cとの間に反発力Hが発生し、粗し粒子423bの露出部423cへトナー90が付着しにくくなる。そして、粗し粒子423bと感光ドラム1の表面との間にトナー90が挟まりにくくなるため、トナー90が感光ドラム1表面に融着することを抑制できるようになる。結果、画像濃度を満足しつつ、画像流れおよび白点の発生がない良好な出力画像が長期にわたって得られる。
なお本実施例では、画像形成装置100で画像形成を繰り返すことで現像ローラ42の表層423が摩耗し粗し粒子423bが露出される例を示した。しかしながら、初めから粗し粒子423bが露出部423cを有する現像ローラ42を備えた場合も同様の作用効果が得られ、良好な出力画像が得られる。
【0079】
<実施例4>
本実施例は、実施例3と同様に感光ドラム1へのトナー融着を抑制するためのものである。
本実施例では、現像ローラ42の表層423に含有される粗し粒子423bが、規制ブレード44によって摺擦されたときに、摺擦により帯電したときの粗し粒子423bの摺擦部分がトナー90と同極性の帯電極性を有することを特徴とする。実施例3とは、粗し粒子423bの表面が露出した場合だけでなく、さらに摺擦が進んで、粗し粒子423bが磨耗した場合においても、トナー90の帯電極性と同極性に帯電する点が異なる。本実施例4(実施例4-1,実施例4ー2)及び比較例4-1の構成を以下に示す。トナー90と規制ブレード44は実施例3と同様であり、負帯電性のトナー90とSUSの規制ブ
レード44を備えた。また、現像ローラ42の弾性層422、表層結着樹脂423aは実施例3と同様である。本実施例では、表層423に含有する粗し粒子423bを変えた。その他に実施例3の条件と同様にドラム当接圧P=20.0(N/m)、接触部圧U=37.7(N/mm2)とした。印加バイアスは、比較例3-2と同様に、規制ブレード44への印加電圧をDC-300V、現像ローラ42への印加電圧をDC-300Vとした。そのため、現像ローラ42への印加電圧に対する規制ブレード44への印加電圧の電位差は0Vとなっている。ただし、本実施例における感光ドラム1へのトナー融着を抑制する効果を得るためには、この値に限定されない。
【0080】
<現像装置の構成>
ここで、本実施例の現像ローラ42に用いられる粗し粒子423bについて、以下に示す。
[実施例4-1]
粗し粒子423b:ウレタン粒子、平均粒径50μm
負帯電性球形シリカ粒子423dを粗し粒子423bに対して2.0wt%被覆した。本実施例で備えた規制ブレード44であるSUSと露出した粗し粒子423bが摺擦したときに、粗し粒子423b表面に被覆したシリカの作用により粗し粒子423b表面の帯電極性が負極性となる構成である。
【0081】
[実施例4-2]
粗し粒子423b:ポリスチレン粒子、平均粒径50μm
本実施例で備えた規制ブレード44であるSUSと粗し粒子423bとしてのポリスチレンが摺擦したときに、材料の帯電列の関係によりポリスチレンが負極性となる構成である。従って、粗し粒子423bの表面が露出した場合だけでなく、さらに粗し粒子423bが摩耗した場合においても粗し粒子423bが負極性に帯電する。
【0082】
比較例として現像ローラ42に用いられる粗し粒子423bは、以下に示すものを採用している。
[比較例4-1]
粗し粒子423b:アクリル粒子、平均粒径50μm
規制ブレード44であるSUSと粗し粒子423bとしてのアクリルが摺擦したときに材料の帯電列の関係によりアクリルが正極性となる構成である。
【0083】
<耐久テスト>
検証のために、実施例3における評価と同じ条件・評価基準を用いて、高温高湿環境における8000枚のプリント耐久テストを行い、画像流れ、画像濃度、白点(ドラム融着)を評価した。比較のために比較例4-1でも実施した。
[結果]
実施例4-1,実施例4-2,および比較例4-1の評価結果を表4に示す。
(表4)
【0084】
<作用効果>
画像形成時に現像ローラ42が回転して現像ローラ42上に保持されたトナー90が規
制ブレード44で所望量に規制・帯電される際に現像ローラ42の表層423に含有された粗し粒子423bが規制ブレード44と摺擦する。このとき、トナー90は負極性に帯電する。
比較例4-1のアクリル粒子は、規制ブレード44であるSUSとの摺擦により正極性に帯電する。このため、粗し粒子423bの露出部423cにトナー90を引き付ける力が働き、粗し粒子423bの露出部423cにトナー90が耐久テストの中盤から後半にかけて付着し、感光ドラム1表面に融着が顕著に発生し始めた。その結果、耐久テストの中盤から後半にかけてはっきり大きな白点のある出力画像となった。故に、表4中の白点評価結果を××と表記した。
【0085】
一方、実施例4-1は
図8(a)のように規制ブレード44のSUSとの摺擦によって現像ローラ42の表層423の粗し粒子423bを被覆しているシリカ423dが負極性に帯電する。また、実施例4-2は
図8(b)のように現像ローラ42の表層423の粗し粒子423bが規制ブレード44のSUSとの摺擦によって粗し粒子423bであるポリスチレンは負極性に帯電する。
従って、粗し粒子423bとトナー90が同極性の帯電をしているため前述した反発力Hが働き、粗し粒子423bへのトナー90の付着が抑制された。その結果、実施例3と同様に感光ドラム1と粗し粒子423bとの間にトナー90が挟まることがなくなるので感光ドラム1へのトナー融着がなく、白点のない良好な出力画像が得られたと考えられる。
【0086】
以上説明したように、現像ローラ42の表層423に含有される粗し粒子423bの材料と規制ブレード44の材料が摺擦により帯電したときの粗し粒子423bの帯電極性が、トナー90と同極性の帯電極性を有する粗し粒子423bを使用する。このようにすることで、粗し粒子423bとトナー90との間に反発力Hが発生し、粗し粒子423bにトナー90が付着しにくくなる。そして、粗し粒子423bと感光ドラム1の表面との間にトナー90が挟まりにくくなるため、実施例3と同様に、トナー90が感光ドラム1の表面に融着することを抑制できるようになる。結果、画像濃度を満足しつつ、画像流れおよび白点の発生がない良好な出力画像が長期にわたって得られる。
【0087】
<実施例5>
本実施例について、以下説明する。本実施例は、実施例3、4と同様に感光ドラム1へのトナー融着に対するものである。ただし、実施例3、4ではどのようにして感光ドラム1へのトナー融着を抑制するかに着目したのに対し、本実施例では、感光ドラム1にトナー90が融着しても、どのようにして良好な画像を得られるようにするかという点に着目している点が異なる。
本実施例の構成を以下に示す。前記実施例3及び実施例4の条件と同様に、ドラム当接圧P=20.0(N/m)、接触部圧U=37.7(N/mm2)とした。比較には、前記比較例4-1と同じ構成を用い、その表層423の弾性率Rは296MPaとなる。トナー90と規制ブレード44は実施例3及び実施例4と同様であり、負帯電性のトナー90とSUSの規制ブレード44を備えた。印加バイアスは、比較例4-1と同様に、規制ブレード44への印加電圧をDC-300V、現像ローラ42への印加電圧をDC-300Vとした。そのため、現像ローラ42への印加電圧に対する規制ブレード44への印加電圧の電位差は0Vとなっている。ただし、本実施例における白点を抑制する効果を得るためには、この値に限定されない。
【0088】
[実施例5-1]
本実施例は比較例4-1に対し、現像ローラ42の表層423を構成する粗し粒子423bの粒径が異なる。具体的には、粗し粒子423bとしてアクリル粒子(平均粒径30μm)を用いた。表層423の弾性率Rは296MPaとなる。
【0089】
[実施例5-2]
本実施例は比較例4-1に対し、現像ローラ42の表層423を構成する粗し粒子423bの粒径が異なる。具体的には、粗し粒子423bとしてアクリル粒子(平均粒径40μm)を用いた。表層423の弾性率Rは296MPaとなる。
【0090】
<耐久テスト>
実施例5-1,実施例5-2,及び比較例4-1に対し、前記実施例3における評価と同じ条件・評価基準を用いて、高温高湿環境における8000枚のプリント耐久テストを行い、画像流れ、画像濃度、白点(ドラム融着)を評価した。
[結果]
実施例5-1,実施例5-2,及び比較例4-1の評価結果を表5に示す。
(表5)
【0091】
<作用効果>
はじめに、比較例4-1において発生したベタ黒画像上での白点について、融着物の大きさの観点から、発生メカニズムについて説明する。
耐久テストにおいて目視にて確認できる大きい白点が発生した比較例4-1では、感光ドラム1上にトナー90の大きい融着物が見られた。また、耐久テストにおいて実使用上問題ない程度の、目視では確認困難な細かい白点が発生した実施例5-2では、感光ドラム1上にトナー90の細かい融着物が見られた。また、耐久テストにおいて出力画像に白点が発生しなかった実施例5-1では、感光ドラム1上にトナー90の、実施例5-2よりも細かい融着物が見られた。
【0092】
以下、詳細に説明する。本実施例における現像ローラ42では、
図2(b)に示すような表層423に粗し粒子423bが含まれることにより突出した粒子部423eが表面に形成される。現像ローラ42の表層423と感光ドラム1とが当接する現像ニップでは、この粒子部423eが、現像ローラ42の表層結着樹脂423aおよび粗し粒子423bの弾性率に応じて押しつぶされて接触する。このような当接状態で長期にわたって画像形成を行うと、現像ローラ42の粒子部423eと感光ドラム1の間に挟まれたトナー90が接触部で押しつぶされ、感光ドラム1上に融着する。融着物の大きさは、最大で現像ローラ42の粒子部423eと感光ドラム1との接触部と同程度の大きさになると考えられる。そのため、粒子部423eとトナーとの個々の接触部が大きくなると、融着物も大きくなる。
【0093】
個々の接触部の大きさについて言及すると、実施例5-1,実施例5-2,比較例4-1においては、長期の耐久テストを通じて、現像ローラ42の粒子部423eと感光ドラム1との接触部の大きさは変化する。具体的には実施例3において説明したように、耐久テストの初期では
図5(a)に示すように、現像ローラ42の表層結着樹脂423aが粗し粒子423bを覆っており、接触部の大きさが小さい状態で接している。しかし、長期にわたって耐久テストを通じて画像形成を行うと、
図5(b)に示すように表層結着樹脂423aが摩耗し粗し粒子423bが露出する。さらにその後、
図9に示すように規制ブレード44との摺擦によって粗し粒子423bの露出部423cが摩耗して、粒子部42
3eが平らな面を持つようになる。そのため、表層423の粒子部423eが摩耗する前に比べて、接触部の大きさは大きくなる。よって、耐久テストを通して、現像ローラ42の粒子部423eと感光ドラム1との接触部は大きくなる。
【0094】
感光ドラム1にトナー90が融着した部分は、露光装置3による潜像形成が不十分となり、融着部分にはトナー90が現像しないためにベタ黒画像上で白点となる。融着物起因の白点の大きさは、融着物の大きさに応じ変化すると考えられるため、出力画像上で人間の目で視認できる大きさ以下に白点の大きさを抑制することが必要となる。たとえば、感光ドラム1上の融着物の最大幅が画像形成時の最小画素(1ドット)の幅より大きい場合に出力画像上で白点として視認できるようになると考えられる。本実施例においては、上記1ドットは解像度600dpiの画像形成装置を用いて形成したものであり、直径約42μmに相当する。
【0095】
実施例5-1,5-2の構成では上記の耐久テストにおいては、画像流れの発生、画像濃度の低下、白点の発生において問題ない良好な出力画像が得られた。これは、以下のように考えられる。実施例5-1,5-2ともに、現像ローラ42の粒子部423eが露出して平らな面をもつようになった場合にも、露出部423cの感光ドラム1と接触する面の径は、粗し粒子423bの平均粒径であるそれぞれ30μm、40μmより小さくなっている。そのため、粒子部423eと感光ドラム1が1ドットより小さな幅をもつ面で接するため、粒子部423eと感光ドラム1の間でトナー90が押しつぶされた際に、1ドットの幅以上に広がることがなかった。
その結果、粒子部423eと感光ドラム1との接触部の幅が、耐久テストを通じて変化した場合においても、1ドットの幅以上に広がることがない。そのため、粒子部423eと感光ドラム1表面との間にトナー90が挟まり、トナー90が押しつぶされて感光ドラム1表面に融着した際でも、白点による画像不良のない良好な出力画像が得られた。
【0096】
発明者らが、鋭意検討を行った結果、本実施例のように下記条件を満たすことで、耐久を通して融着物起因の白点を抑制できることが分かった。
(白点抑制条件)
本発明においては、前述の接触面積Sの測定方法と同様の方法でガラス平板Iを現像ローラ42に侵入量dで当接させた時の、ガラス平板Iと現像ローラ42の粒子部423eとの接触部Qの幅が、以下の条件を満たすようにする。すなわち、
図10に示すように、現像ローラ42の粒子部423eが、ガラス平板Iに接触し、孤立した複数の部分領域からなる複数の接触部Qjを形成している。この複数の各接触部Qjにおいて、各接触部Qjの輪郭線である外周Lj上(輪郭線上)の互いに対向する任意の2点を結ぶ直線のうち、最長の距離Wjは、40μm以下となる。なお、jは視野中の各接触部における、1から接触部の総数までの個別の番号を示すものである。この条件を満たすことで、融着物起因の白点を抑制することができる。
【0097】
<実施例6>
以下、実施例6について説明する。本実施例の画像形成装置100の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置100のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0098】
本実施例では、上述のように、現像ローラ42表面の高低の高い部分(感光ドラム1に向かった凸部分で、トナー90層から突き出た凸部分。以下、掻き取り部と呼ぶ)が、トナー90を介さずに所定の当接圧以上で感光ドラム1と当接することで、感光ドラム1上の放電生成物の掻き取り効果を高めている。
【0099】
本実施例では、さらに、現像ローラ42と感光ドラム1との当接部(ニップ部)における掻き取り効率を良好な状態にすることで、より安定した放電生成物の除去が可能となる。具体的には、現像ローラ42表面の掻き取り部の個数(掻き取り部個数)と、現像ローラ42と感光ドラム1との当接部において、現像ローラ42表面の掻き取り部により掻き取り作用を受ける感光ドラム1表面領域の周方向の幅と、から算出される現像ローラ42の掻き取り指数(掻き取り係数)を所定の値以上としている。
【0100】
<掻き取り部個数の平均値T>
以下では、図を用いて、本発明の実施例6における現像ローラ42表面の掻き取り部個数の算出方法について説明する。
図11は、本実施例の現像ローラ42表面の掻き取り部個数の算出方法を説明するイメージ図である。
【0101】
まず、画像形成装置100を画像形成動作中に強制停止させ、画像形成動作中のトナー90層が形成された状態の現像ローラ42を準備する。
【0102】
次に、レーザマイクロスコープVK-X200(キーエンス製)に拡大倍率50倍の対物レンズを設置して、285μm×210μmの所定領域Sの現像ローラ42表面をレーザー共焦点光学系で二次元走査し、現像ローラ42表面の高コントラスト画像を得る。この得られた画像領域を評価対象とする。そして、この画像領域内(第2評価領域内)において、現像ローラ42表面の高低の高い部分M1(感光ドラム1に向かった凸部分で、トナー90層から突き出た凸部分)、すなわち掻き取り部個数を計測する。本実施例では、評価画像の目視によるカウントで、現像ローラ42表面の掻き取り部個数を計測した。ただし、これに限定されるものではなく、評価対象とする現像ローラ42表面の領域が同じであれば、他の測定装置による画像取得や画像処理を用いたカウント等でもよい。
【0103】
現像ローラ42表面における所定の第2評価領域として、上述の処理を行う箇所は、現像ローラ42の長手方向の異なる位置に複数設けられると好適である。本実施例では、上述の処理を現像ローラ42の長手方向に10点(回転軸方向を10等分割して得られる10領域の各1箇所ずつ)について行い、その相加平均値を現像ローラ42表面の掻き取り部個数の平均値(平均個数)Tとした。現像ローラ42表面の掻き取り部個数が多い方が、感光ドラム1上の放電生成物を掻き取る頻度が多くなって掻き取り効率が高くなる。
【0104】
<当接部での表面移動距離差N>
以下では、図を用いて、現像ローラ42表面の掻き取り部による感光ドラム1表面の掻き取り作用について説明する。
図12は、現像ローラ42表面の掻き取り部による感光ドラム1表面の掻き取り作用を説明するイメージ図である。
【0105】
図12(a)に示すように、現像ローラ42表面の一つの掻き取り部Kiが現像ローラ42と感光ドラム1との当接部に入った瞬間に対向する(当接する)感光ドラム1表面を被掻き取り部Kpiとする。本発明では、現像ローラ42と感光ドラム1とは所定の表面移動速度比(以下、現像周速比と呼ぶ)を設けて回転駆動される。具体的には、本実施例では、現像ローラ42の表面移動速度(周速度)V2が感光ドラム1の表面移動速度V1に対して早くなるように回転駆動される。そのため、
図12(b)に示すように、掻き取り部Kiが現像ローラ42と感光ドラム1との当接部を出る瞬間には、各々の表面移動速度の差により、掻き取り部Kiと被掻き取り部Kpiとの間に当接部での表面移動距離差Nが発生する。
【0106】
感光ドラム1表面において、この当接部での表面移動距離差Nに相当する領域が、現像ローラ42表面の掻き取り部による掻き取り作用を受ける領域となる。この当接部での表面移動距離差Nは、下記式10のように表される。
N=(Vr-100)/100×Dn … 式10
ここで、Vrは現像周速比%(Vr=V2/V1×100)、Dnは現像ローラ42と感光ドラム1との当接部における感光ドラム1表面の周方向(回転方向)の幅である。当接部での表面移動距離差Nが大きい方が、一つの掻き取り部による感光ドラム1表面の掻き取り範囲が広くなり、掻き取り効率が高くなる。
【0107】
<掻き取り指数Kh>
本実施例では、上述した現像ローラ42表面の掻き取り部の個数の平均値Tと、現像ローラ42と感光ドラム1との当接部での表面移動距離差Nとから、掻き取り指数Kh(第1係数Kh)を算出する。この掻き取り指数Khは、下記式11のように表される。
Kh=T×N=T×(Vr-100)/100×Dn … 式11
掻き取り指数Khは、掻き取り部個数と掻き取り部一つあたりの掻き取り範囲で表される指数である。掻き取り指数Khが大きい方が、現像ローラ42と感光ドラム1との当接部において、掻き取り作用を受ける感光ドラム1表面の面積が広く、掻き取り効率が高いことを示している。
【0108】
発明者らの検討結果によると、現像ローラ42の掻き取り指数Khは0.12以上であることが好ましい。これは、上述のように、現像ローラ42と感光ドラム1との当接部において、掻き取り作用を受ける感光ドラム1表面の面積が広い方が、放電生成物の掻き取り効率が高くなるためである。よって、本実施例では、現像ローラ42の掻き取り指数Khを0.12以上とした。
【0109】
さらに、発明者らの検討結果によると、現像ローラ42表面の掻き取り部個数の平均値Tは、1.8個/□(□は評価画像サイズ)以上であることがより好ましい。これは、現像ローラ42表面の掻き取り部が多い方が、感光ドラム1上の放電生成物を掻き取る頻度が多くなって掻き取り効率が高くなるためと考えられる。
【0110】
また、現像周速比は135%以上であることがより好ましい。これは、現像周速比が小さい場合には、適切な画像濃度を得るために現像ローラ42上に形成されるトナー90層の量を多くする必要があり、現像ローラ42表面の掻き取り部がトナー90層から突き出にくくなるためである。
【0111】
<実施例6と比較例6の詳細>
本実施例である実施例6(6-1~7)、および比較例6(6-1~4)の掻き取り部個数の平均値Tと、現像周速比Vrと、当接部での表面移動速度差Nと、掻き取り指数Khと、ドラム当接圧Pと、接触面積Sと、接触部圧Uと、表層結着樹脂423aの弾性率Aと、粗し粒子423bの弾性率Bと、表層423の弾性率Rの値を表6に示す。また、各実施例6と各比較例6のプロセスカートリッジ8を用いて、実際に画像形成を行った評価結果も合わせて表6に示す。
【0112】
【0113】
[実施例6-1,6-2,6-3,6-4,6-5,6-6,6-7]
実施例6-1~7はいずれも、表層423の弾性率Rが94MPaである現像ローラ42を用いた。また、接触部圧Uが8.9N/mm2となるよう、各実施例のドラム当接圧Pを調整している。具体的には、各実施例の軸間規制部材45の厚みを変えることで、所定の侵入量dとなるように調整している。そして、実施例6-1~6-7はいずれも、現像ローラ42の掻き取り指数Khが0.12以上となるように、掻き取り部個数の平均値Tや現像周速比Vrなどの各条件を設けた。
【0114】
具体的には、実施例6-1~6-3では、現像ローラ42の掻き取り指数Khが0.12となるように、掻き取り部個数の平均値Tや現像周速比Vrなどの各条件を設けた。実施例6-4~6-7では、現像ローラ42表面の掻き取り部個数の平均値Tが1.8個/□以上である現像ローラ42を用いた。さらに、実施例6-4~6-7では、現像周速比Vrを135%以上とした。本実施例で用いた現像ローラ42は、それぞれ表層結着樹脂423aに対する粗し粒子423bの入れ目量を調整して作製した。なお、粗し粒子423bは、実施例3~5において例示したウレタン粒子、ポリスチレン粒子、アクリル粒子などの粒子を用いてよい。
【0115】
[比較例6-1,6-2,6-3,6-4]
比較例6-1~6-3はいずれも、実施例6(6-1~6-7)と同様に、表層423の弾性率Rが94MPaである現像ローラ42を用いた。また、接触部圧Uが8.9N/mm2となるようドラム当接圧Pを調整している。具体的には、各比較例の軸間規制部材45の厚みを変えることで、所定の侵入量dとなるように調整している。
そして、比較例6-1~6-3はいずれも、現像ローラ42の掻き取り指数Khが0.12未満となるように、掻き取り部個数の平均値Tや現像周速比Vrなどの各条件を設けた。
【0116】
一方で、比較例6-4では、表層423の弾性率Rが50MPaよりも小さい現像ローラ42を用いた。また、接触部圧Uが5.8N/mm2よりも小さくなるようにした。ただし、比較例6-4は、現像ローラ42の掻き取り指数Khが0.12以上となるように、掻き取り部個数の平均値Tや現像周速比Vrなどの各条件を設けた。
【0117】
[評価方法]
本実施例の効果確認としては、実施例1と同様の画像流れの評価を行った。ただし、本実施例の評価では、文字画像印字時の出力画像における文字ボケと、2ドット3スペース画像(具体的には、2ドットライン印字後に3ドットライン非印字を繰り返す画像)印字時の出力画像におけるライン欠けを以下の基準で目視にて判定し評価した。文字ボケが顕著に発生し実使用上問題がある時を×、文字ボケの軽微な発生があるが実使用上は問題ない時を△、ライン欠けはあるが文字ボケの発生はなく実使用上は問題ない時を〇△、ライン欠けも文字ボケも発生しなかった時を○とした。なお、画像流れの評価は、温度30℃相対湿度80%の環境で、それぞれの実施例、比較例において、4000枚の通紙試験を行った後、12時間以上通紙せず放置した状態において検証した。
【0118】
[実施例6と比較例6の比較]
表6の実施例6-1~6-7、および比較例6-1~6-3の各評価結果から、接触部圧Uが5.8N/mm2以上の場合には、接触部圧Uをほぼ揃えた状態で比較すると、現像ローラ42の掻き取り指数Khが大きいほど画像流れが発生しにくい傾向がある。これは、現像ローラ42と感光ドラム1との当接部において、掻き取り作用を受ける感光ドラム1表面の面積が広い方が、放電生成物の掻き取り効率が高くなるためである。
【0119】
したがって、表6に示すように、画像流れの抑制効果をより高めるためには、現像ローラ42の掻き取り指数Khが実施例6-1~6-7のように0.12以上であることが好ましい。さらに、実施例6-1、6-4の各評価結果から、現像周速比Vrがほぼ同じ条件で比較すると、現像ローラ42表面の掻き取り部個数の平均値Tが大きい方が、画像流れの発生がより抑制されていることがわかる。これは、現像ローラ42表面の掻き取り部が多い方が、感光ドラム1上の放電生成物を掻き取る頻度が多くなって掻き取り効率が高くなるためと考えられる。したがって、表6に示すように、画像流れの抑制効果をより高めるためには、現像ローラ42表面の掻き取り部個数の平均値Tが1.8個/□以上(第2評価領域における平均個数Tが1.8以上)であることが好ましい。
【0120】
また、実施例6-2、6-4の各評価結果から、現像ローラ42表面の掻き取り部個数の平均値Tがほぼ同じ条件で比較すると、現像周速比Vrが大きい方が、画像流れの発生がより抑制されていることがわかる。これは、現像周速比Vrが大きいと、当接部での表面移動距離差Nが大きくなり、一つの掻き取り部による感光ドラム1表面の掻き取り範囲が広くなって掻き取り効果が高くなるためである。したがって、表6に示すように、画像流れの抑制効果をより高めるためには、現像周速比Vrが135%以上であることが好ましい。
【0121】
一方で、比較例6-4は、画像流れによる文字ボケが顕著に発生し実使用上問題があった。これは、接触部圧Uが5.8N/mm2未満であるためと考えられる。具体的には、接触部圧Uが小さく、掻き取り部による感光ドラム1表面の掻き取り効果が小さいと、掻き取り範囲を広げても影響が小さい。以上説明したとおり、本実施例の構成によって、簡易な構成で画像流れの発生をより抑制することが可能となった。
【0122】
<実施例7>
以下、実施例7について説明する。画像形成装置100の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置100のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0123】
上述の実施例1では、現像ローラ42の粒子部423eで感光ドラム1表面の放電生成物を掻き取り画像流れの発生を抑制する構成としている。しかし、粒子部423eでの放
電生成物掻き取り性能を上げるために現像ローラ表層の粒子部423eの間隔を広げた場合、規制ブレード44による規制力が複数の粒子部423eの間の領域に形成されるトナー90の層に作用して、トナーの疎密が発生(上記領域毎にトナー担持量に差が発生)しやすくなる。さらに、規制ブレード44の配置によっては、
図13(a)に示すように、現像ローラ42の表層粒子部423eの間に規制ブレード44が侵入し、トナー90が規制され、局所的に現像ローラ42上にトナーの疎密が発生することがあった。現像ローラ上にトナーの疎密があるとベタ画像にがさつきがみられることがある。このようなトナーの疎密は現像ローラ42を断面方向から見たときに、隣り合う粒子部423eの頂点を結んだ仮想線46よりも、現像ローラ42の基層側に規制ブレード44の先端が現像ローラの基層側に侵入する場合により顕著に発生しやすくなる。
【0124】
そこで、本実施例では、
図13(b)に示すように、現像ローラ表層の複数の粒子部423eの間(以下海部423oと呼ぶ)に凹凸を設け、この部分の粗さをトナー保持のために十分な大きさとする。このようにすることで、規制ブレード44が粒子部423eの間に侵入する場合にも、現像ローラ42上のトナー疎密に起因するがさつきの発生を抑制している。現像ローラ表層粒子部423eよりも海部423oの粗さの最大高さを小さくし、粒子部423bによる放電生成物の掻き取り性を維持するため、粒子部423eに用いる粗し粒子423b(第1の粗し粒子)の体積平均粒径(第1の体積平均粒径)は、海部423oに用いる小径の粗し粒子423f(第2の粗し粒子)の体積平均粒径(第2の体積平均粒径)よりも大きくした。本実施例では粗し粒子423bとして体積平均粒径20μmのものを、小粗し粒子423fとして体積平均粒径7μmのものを用いた。なお、粗し粒子423b、小粗し粒子423fの材質としては、実施例3~5において例示したウレタン粒子、ポリスチレン粒子、アクリル粒子などの粒子を用いてよい。
【0125】
なお、粗し粒子の体積平均粒径の水準としては3種類以上であっても、または1種類の体積平均粒径がブロードなものであってもよいが、画像流れ性能とがさつき悪化を抑制する特性を両立させるには2種類のものを用いるのが好適である。
【0126】
さらに、規制部材である規制ブレード44の先端(エッジ)が隣接する二つの粗し粒子423bの間の領域に侵入可能に配置される構成が望ましい。特に、規制ブレード44の先端が、二つの粗し粒子423bの頂点を接線で結んだとき、該接線より現像ローラ42側に侵入するように配置される構成がより望ましい(
図13参照)。これは、粒子部423eの頂点をドラムに当接させ、放電生成物の掻き取り性を高めることができるためである。
【0127】
<現像ローラの表面形状>
本実施例では、画像流れ抑制性能とがさつき抑制性能を両立した現像ローラ42を、現像ローラ表層の粒子部423eの間隔を表す要素平均長さパラメータRSmと、現像ローラ表層の海部423oの粗さを表す、コア部粗さSkで規定した。以下、詳細に説明する。
【0128】
画像流れを抑制するためには、現像ローラ42表層の接触部圧Uを高める必要がある。接触部圧Uを高める一つの方法は粒子部423eの点数を少なくすることである。このため、画像流れ抑制性能は粒子部423eの間隔RSmが大きいときに高まる。一方、粒子部423eの間に規制ブレード44が侵入すると、トナー層の規制力が発生する。このとき、海部423oでのトナー保持力が不足していると、トナーの疎密を発生させる。規制力は
図13において水平方向の力として作用するので、トナー保持力を高めるためには、海部423oに凹凸を設けることが一つの方法である。これにより、図中水平方向の規制力が作用した時にもトナーを海部423oの凹凸に保持してトナーの疎密発生を抑制できる。
【0129】
粒子部423eの間隔RSmが大きいときは、複数の粒子部423eの間で規制ブレード44がより現像ローラの基層側に近づきやすくなり、より強い規制力が発生するため、表層の粒子部423eの間隔RSmが大きいほど、海部423oの粗さ、コア部粗さSkを大きくするとよい。ただし、小径の粗し粒子423fの量が多くなると海部423oの粗さ、コア部レベルSkが大きくなるが、Skが大きすぎると、トナー供給ローラ43でのトナーの入れ替えがしにくくなる。本実施例では、Skがトナーの体積平均粒径以上7μm以上の場合に問題になる。また同様に小径の粗し粒子423fが多くなりすぎると海部423oの高さが大きくなり、放電生成物の除去を担う粒子部423eと同じように感光ドラム1に接触してしまうため、接触部圧Uが低下し、画像流れ抑制性能が低下する。
【0130】
<表面形状の測定方法>
現像ローラ42の表面形状、粒子部423eの間隔RSmの測定方法を示す。現像ローラの表面形状測定には、キーエンス製顕微鏡VK-X200に光学倍率20倍の対物レンズを取り付け、視野角707×530(μm2)とした。該視野角で観察することができる現像ローラ42表面の所定領域が本発明の第1評価領域に相当する。長辺707μmが現像ローラ42の長手方向、短辺530μmが周方向となるように配置した。現像ローラ42の表面を明るさ50に設定し、形状測定モードで測定した。
【0131】
取得データを同じくキーエンス製のマルチファイル解析アプリケーションを用い、以下の手順で処理した。
【0132】
第一に、現像ローラ42の平坦化処理を行った。略円筒形状の現像ローラ42を平面状に変換して解析するためである。次に以下の操作で現像ローラ42の粒子部423eの間隔RSmを得た。RSmの測定は前述のアプリケーションに内蔵の機能を用いた。カットオフ距離0.8mmとし、長波長のうねり成分を除去したうえで、複数線粗さ機能を用い、測定直線が現像ローラの長手方向に沿うように、20本のラインでRSmを算出した。20本の測定値の平均を本実施例、比較例の粒子部423eの間隔RSmとした。
【0133】
ここで、測定値RSmの意味について説明する。RSmの測定方法は、線粗さJIS B 0601に規定されている。以下概略を示す。
図14に示すように、要素の平均長さ(RSm)は、粗さ曲線の粗さの周期の平均を表したものである。粗さ曲線の基準線に対して粗さを構成する山と谷一周期の平均値を示したものである。ただし、高さが最大高さの10%以下、もしくは長さが計算区間の1%以下のものは微小凹凸として、前後の山と谷の一部であると認識される。本実施例で用いる現像ローラ42の表層423は粒子部423eの高さが海部423oの高さよりも大きくなっているため、海部423oの凹凸は最大高さの10%以下となることが多い。したがって、RSmは粒子部423eの高さ測定値を中心に計算される。このため、RSmの測定値が粒子部423eの間隔を表すと考えられる。
【0134】
次に、現像ローラ42の表面形状、海部423oの粗さ、コア部のレベル差Skの測定方法を示す。顕微鏡による測定方法は粒子部423eの間隔RSmと同一であるので省略する。
【0135】
取得データを同じくキーエンス製のマルチファイル解析アプリケーションを用い、以下の手順で処理した。
【0136】
第一に、現像ローラ42の平坦化処理を行った。略円筒形状の現像ローラ42を平面状に行うためである。次に以下の操作で現像ローラ42の海部423oの粗さ、コア部レベル差Skを得た。Skの測定は前述のアプリケーションに内蔵機能を用いた。現像ローラ
42の表面形状から海部423oの高さを抽出するため、カットオフ距離25μmのハイパスフィルター(以降必要に応じてHPFと記載する)を適用した。次に表面粗さ測定機能を用い、測定視野の全領域を対象領域(第1評価領域)としてコア部レベル差Skを測定した。ハイパスフィルターによるデータ演算処理により抽出した海部423oの高さから測定したコア部レベル差Skであるので、測定値Skを海部423oの粗さとした。
【0137】
ここで、測定値Skの意味について説明する。表面のコア部レベル差Skの測定方法は、ISO25178表面性状に規定されている。以下概略を示す。
図15に示すように、測定した表面の高さ毎の測定値を高いもの(再表面)から低いもの(表面形状の底)まで順に累積したものを負荷曲線(BAC)という。負荷曲線の横軸は0~100%、縦軸は高さであり、0%位置が最大高さ、100%位置が最小高さとなっている。コア部のレベル差Skの測定方法は、負荷曲線に対して、横軸のレベル差を40%とし(表面の高さ頻度の40%が含まれるようにし)、該レベル差40%における負荷曲線に対する最小二乗直線を求める。勾配が最小になる最小二乗直線を外挿し、負荷率0%、100%における直線の値の差をコア部のレベル差Skという。
【0138】
なお、負荷曲線において最大高さ付近の部分を突出部、最小高さ付近の部分を谷部という。突出部と谷部の間にあるのが粗さのコア部である。コア部のレベル差Skは表面の傷や付着物の影響を受けにくいため、トナーの保持性を表す指標として好適である。
【0139】
<実施例7と比較例7の詳細>
本実施例である実施例7(7-1~10)、および比較例7(7-1~3)の、接触面積Sと、接触部圧Uと、粒子部423eの間隔RSmと、海部423oの粗さである、ハイパスフィルター後の表面粗さのコア部レベル差Skを表7に示す。また、各実施例と各比較例のプロセスカートリッジ8を用いて、実際に画像形成を行った評価結果も合わせて表7に示す。なお、各実施例7、各比較例7で共通して、ドラム当接圧Pは7.7N/m、表層結着樹脂423aの弾性率Aは50MPa、粗し粒子423bの弾性率は200MPa、表層423の弾性率は167MPaとした。
【0140】
【0141】
[実施例7-1,7-2,7-3,…,7-10]
実施例7-1~10はいずれも、接触部圧5.8N/mm2以上とし、感光ドラム1上の放電生成物を掻き取りやすくしている。表層結着樹脂423aと粗し粒子423bの弾性率は実施例1-2のものを用い、表層の弾性率を167MPa以上と大きくしている。さらに、海部423oにおけるトナー保持性を付与するため、表層423に粗し粒子423bと小径粗し粒子423fを合わせて用いている。粒子部423eの間隔は40μmからRSm100μmの範囲にし、海部粗さを表すHPF後Skは0.95μm~2.42μmのものを得た。このような表層423の特性を得るため、粗し粒子423bと小径粗し粒子423fの混合量を調整している。
【0142】
[比較例7-1,7-2,7-3]
比較例7-1~3の現像ローラ42の表層423について説明する。現像ローラ42の表層423以外の構成に関しては、実施例7とほぼ変わらないため、ここでは説明を省略する。表7に示すように、比較例7-1~3は、粒子部423eの間隔は実施例7-1~10と同様に約40~100μmであるが、小径粗し粒子423fを用いないもの、または小径粗し粒子423fの混合量を実施例7-1~10に対して減らし、HPF後のSkを小さくしている。このような表層423の特性を得るため、粗し粒子423bと小径粗し粒子423fの混合量を調整している。
【0143】
[評価方法]
本実施例の効果である画像がさつきの評価方法について述べる。規制ブレード44通過後の現像ローラ42上のトナー量が0.3~0.33mg/cm2となるように現像ローラ42に対する規制ブレード44の位置を調整し、それぞれの実施例、比較例において、4000枚の通紙試験を行った後、12時間以上通紙せず放置した状態において、ベタ黒画像を出力した。出力したベタ黒画像のがさつきを目視で評価し、問題なしの場合〇、わずかにがさつきがみられるものを△、顕著にがさつきが視認できるものを×とした。
【0144】
[実施例7および比較例7の比較]
表7のうち、RSmが約100μmのほぼ同じ値であった実施例7-1と実施例7-7、比較例7-1において、HPF後Skが1.82μmの実施例7-1はがさつきが見られず、HPF後Skが1.39μmの実施例7-7では実用上問題ない程度のがさつきがみられたが、HPF後Skが0.62μmの比較例7-1ではがさつきが見られた。
【0145】
また、RSm約50μmでは、HPF後Sk1.01μmの実施例7-6ではがさつきが見られず、HPF後Sk0.62μmの比較例7-2ではがさつきが見られた。さらに、RSm約60μmから80μmの実施例7-2~5、実施例7-8~10にも合わせて示すように、粒子部423eの間隔RSmが大きいほど、がさつきが見られなくなる小粒子部粗さHPF後Skの値が大きくなっている。
【0146】
画像流れとがさつきを両立させるためには、粒子部423eの間隔RSmと海部423oの粗さHPF後Skはどちらも大きいほうがよく、粒子部423eの間隔RSm50μm以上、海部423oの粗さHPF後Sk0.95μm以上の範囲で画像流れとがさつきが実用上問題なく両立できる。特に、画像流れとがさつきを良好なレベルで両立させるには、RSm60μm以上、HPF後Sk1.4μm以上が好ましい。なお、比較例7-3に示すRSmが40μm以下の時は接触部の間隔が狭く、接触面積Sが大きくなるので画像流れが発生した。
【0147】
<作用効果>
現像ローラ表層の粒子部423eの間隔RSmを広くする方向は、接触部圧Uを高めて画像流れをより抑制する方向である。ただし、粒子部423eの間隔RSmが大きくなると、規制ブレード44に近接するトナーを介して現像ローラ表層側のトナーに規制力が作用しやすくなるためと考えられる。さらに粒子部423eの間隔RSmが広くなるほど規制ブレード44が粒子部423eの間に侵入しやすくなり、現像ローラ表面からトナーの層をはぎ取る力が強くなり、トナーの疎密が発生しやすい。
【0148】
現像ローラ表層の海部423oにトナーを保持できる凹凸があると、規制力が作用しても凹凸でトナーを保持しやすくなりトナーの疎密に起因するがさつきが発生しにくくなる。海部423oのトナー保持力は、体積平均粒径7μmのトナーに対しては、海部423oの粗さHPF後Skで0.95μm以上の範囲で保持力が発揮される。RSmが大きい
場合には、HPF後Skをより大きくし、トナーの保持力を増すことでトナーを保持でき、がさつきの発生を抑制できる。
【0149】
画像流れの発生を抑制する機能を有する現像ローラを用いる際に、がさつきが発生することがあった。本実施例の構成によって、簡易な構成で、ユーザーの利便性を低下させずに、画像流れの発生を抑制しつつ、がさつきの発生を抑制することが可能となった。
【符号の説明】
【0150】
42…現像ローラ、1…感光ドラム、I…ガラス平板