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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】光電変換装置、撮像システム、移動体
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/767 20230101AFI20240508BHJP
   H04N 25/10 20230101ALI20240508BHJP
【FI】
H04N25/767
H04N25/10
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020055714
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158483
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智
(72)【発明者】
【氏名】中澤 啓悟
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-172609(JP,A)
【文献】特開2012-049911(JP,A)
【文献】特開2014-241458(JP,A)
【文献】特開2010-147684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/767
H04N 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数列に配された複数の画素と、
前記複数の画素が配された列に対応して各々が配された回路であって、画素の出力に対応するデジタル信号を保持する複数の保持回路と、
前記複数の保持回路のうちの一部であって、2以上の保持回路を有する第1群の保持回路からデジタル信号を転送する複数の信号転送部を有する第1の信号転送部群と、
前記複数の保持回路の別の一部であって、2以上の保持回路を有する第2群の保持回路からデジタル信号を転送する複数の信号転送部を有する第2の信号転送部群と、
前記第1の信号転送部群からデジタル信号が転送される第1の共通出力線と、前記第2の信号転送部群からデジタル信号が転送される第2の共通出力線とを含む複数の共通出力線と、
を備え、
前記信号転送部は、第1の状態と、前記第1の状態よりも消費電流が小さい第2の状態とに遷移することが可能であり、
所定の期間において、前記第1の信号転送部群では前記第2の状態の前記信号転送部の数が増加し、前記第2の信号転送部群では前記第2の状態の前記信号転送部の数が減少する、
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記第1の信号転送部群と前記第2の信号転送部群とは、互いに反対の方向にデジタル信号を転送する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記所定の期間において、前記第1の信号転送部群および前記第2の信号転送部群の全体における前記第1の状態の信号転送部の数および前記第2の状態の信号転送部の数は一定である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換装置。
【請求項4】
各々が、2以上の前記保持回路を1つのブロックとして、当該ブロックに対応して設けられるとともに、当該ブロックに含まれる2以上の前記保持回路に保持された前記デジタル信号が出力される複数のブロック出力線を有し、
前記第1の信号転送部群に、前記複数のブロック出力線のうちの一部の、2以上のブロック出力線が接続され、
前記第2の信号転送部群に、前記複数のブロック出力線のうちの別の一部の、2以上のブロック出力線が接続される、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項5】
対応する前記ブロック出力線と前記共通出力線との間に設けられ、前記ブロック出力線からのデジタル信号をバッファリングするバッファ回路をさらに備える
ことを特徴とする請求項4に記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記保持回路の出力を制御する水平走査回路をさらに備え、
前記水平走査回路は、
前記第1群の保持回路における前記保持回路の列順に、前記第1の共通出力線にデジタル信号が転送されるように当該第1群の保持回路の出力を制御し、
前記第2群の保持回路における前記保持回路の列順に、前記第2の共通出力線にデジタル信号が転送されるように当該第2群の保持回路の出力を制御する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第2の状態では、信号転送部に対する基準クロックの入力が停止されている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第2の状態では、信号転送部に対してリセット信号が入力されている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第2の状態では、信号転送部の入力が基準電位に固定されている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記信号転送部は、前記保持回路から入力されたデジタル信号をクロックに同期化させる同期化遅延回路である、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記保持回路は、前記デジタル信号として、正転信号と反転信号を含む差動信号を前記信号転送部に出力し、
前記信号転送部は、前記正転信号と前記反転信号とを比較することによって転送するデジタル信号を確定する、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記保持回路は、リセット状態の画素のデジタル信号である基準信号と非リセット状態の画素のデジタル信号である有効信号とを保持し、
1つの前記保持回路が保持する前記基準信号と前記有効信号とは、前記複数の共通出力線のうち同一の共通出力線に転送される、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
画素には、それぞれ1色のカラーフィルタが設けられており、
異なる色のカラーフィルタが設けられた画素のデジタル信号はそれぞれ、前記複数の共通出力線のうち互いに異なる共通出力線に転送される、
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項14】
奇数列の前記保持回路に保持されたデジタル信号と、偶数列の前記保持回路に保持されたデジタル信号とは、前記複数の共通出力線のうち互いに異なる共通出力線に転送される、
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項15】
前記第1の信号転送部群および前記第2の信号転送部群とは異なる、第3の信号転送部群および第4の信号転送部群をさらに備え、
前記第3の信号転送部群および前記第4の信号転送部群のそれぞれは、互いに異なる複数の前記信号転送部を有し、
所定の期間において、前記第3の信号転送部群では前記第1の状態の前記信号転送部の数が増加し、前記第4の信号転送部群では前記第1の状態の前記信号転送部の数が減少する、
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項16】
デジタル信号に対して処理を行う信号処理回路を複数さらに有し、
前記複数の共通出力線は、それぞれ異なる前記信号処理回路に接続されている、
ことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置から出力される信号を処理する処理装置と、
を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項18】
移動体であって、
請求項1から16のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
移動装置と、
前記光電変換装置から出力される信号から情報を取得する処理装置と、
前記情報に基づいて前記移動装置を制御する制御装置と、
を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、撮像システム、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログデジタル変換機能を内蔵したCMOSイメージセンサ等の光電変換装置は、デジタルカメラ等の画像入力機器に利用されている。特許文献1には、デジタル信号(デジタルデータ)を高速に出力する技術として、デジタル信号をブロック毎に読み出すことにより高速な読み出しを実現する水平転送技術が公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-147684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、デジタル信号を高速に出力させることができる一方、電源配線に生じる電源ノイズに関しては考慮されていない。このため、特許文献1において、水平転送時に動作していない信号伝達の手段の数が増減すると、消費電流が時間変化と共に変化してしまう。これにより、電源を共通化している回路ブロック、例えばコンパレーターのラッチパルス生成回路などに対して電源ノイズが回り込み、縦スジとしてセンサ出力に現れてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、電源ノイズを低減可能な光電変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、
複数列に配された複数の画素と、
前記複数の画素が配された列に対応して各々が配された回路であって、画素の出力に対応するデジタル信号を保持する複数の保持回路と、
前記複数の保持回路のうちの一部であって、2以上の保持回路を有する第1群の保持回路からデジタル信号を転送する複数の信号転送部を有する第1の信号転送部群と、
前記複数の保持回路の別の一部であって、2以上の保持回路を有する第2群の保持回路からデジタル信号を転送する複数の信号転送部を有する第2の信号転送部群と、
前記第1の信号転送部群からデジタル信号が転送される第1の共通出力線と、前記第2の信号転送部群からデジタル信号が転送される第2の共通出力線とを含む複数の共通出力線と、
を備え、
前記信号転送部は、第1の状態と、前記第1の状態よりも消費電流が小さい第2の状態とに遷移することが可能であり、
所定の期間において、前記第1の信号転送部群では前記第2の状態の前記信号転送部の数が増加し、前記第2の信号転送部群では前記第2の状態の前記信号転送部の数が減少する、
ことを特徴とする光電変換装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光電変換装置において電源ノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る光電変換装置の回路図である。
図2】実施形態1に係る信号転送部のON/OFFを示す図である。
図3】実施形態1に係る信号転送部の回路図の一例である。
図4】実施形態1に係る信号転送部の回路図の一例である。
図5】実施形態1に係る信号転送部の回路図の一例である。
図6】実施形態1に係る信号転送部の回路図の一例である。
図7図6に示す信号転送部における信号を示す図である。
図8】実施形態1に係る信号転送部群と水平走査回路の関係を示す図である。
図9】実施形態1に係る信号転送部群と水平走査回路の関係を示す図である。
図10】実施形態1に係る信号転送部群と水平走査回路の関係を示す図である。
図11】実施形態1の他の例に係る光電変換装置の回路図である。
図12】実施形態2に係る光電変換装置の回路図である。
図13】実施形態3に係る光電変換装置の回路図である。
図14】実施形態3に係る信号転送部のON/OFFを示す図である。
図15】実施形態4に係る撮像システムの構成図である。
図16】実施形態5に係る撮像システム及び移動体の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明に係る実施形態を説明する。なお、下記の各実施形態は、矛盾が生じない限り任意に組み合わせることができる。また、以下に述べる各実施形態では、光電変換装置の一例として、撮像装置を中心に説明する。ただし、各実施形態は、撮像装置に限られるものではなく、光電変換装置の他の例にも適用可能である。例えば、測距装置(焦点検出やTOF(Time Of Flight)を用いた距離測定等の装置)、測光装置(入射光量の測定等の装置)などがある。
【0010】
<実施形態1>
[光電変換装置の回路構成について]
図1を参照して、実施形態1に係る光電変換装置について説明する。図1は、光電変換装置の回路構成例を示す図である。光電変換装置は、画素部1、保持回路2、デジタル出力線3、信号転送部4、共通出力線5、水平走査回路6、垂直走査回路7、アナログデジタル変換器8、信号処理回路100,101を有する。本実施形態では、光電変換装置は、保持回路2、デジタル出力線3、信号転送部4、共通出力線5、アナログデジタル変換器8のそれぞれを複数有する。
【0011】
画素部1は、光電変換素子を含む複数の画素を有する。画素部1では、複数の画素が行列状(2次元状;複数列)に配列されている。本実施形態では、簡単化のため10行×16列の画素行列として示している。ここで、画素部1の上端1行(1行目)および左端の2列(1列目および2列目)が、OB(オプティカルブラック)画素領域1-1である。OB画素領域1-1が有するOB画素(遮光画素)のそれぞれは、遮光された光電変換素子を有する。また、それ以外の9行×14列の画素のそれぞれは、遮光されていない光電変換素子を有する有効画素である。
【0012】
画素部1の各列に対応して、列毎に、アナログデジタル変換器8と保持回路2が配置される。つまり、本実施形態では、16列のアナログデジタル変換器8と、16列の保持回路2が配置されている。
【0013】
アナログデジタル変換器8は、画素部1が有する画素から読み出された画素信号を、アナログデジタル変換する(アナログ信号をデジタル信号に変換する)。
【0014】
保持回路2は、アナログデジタル変換器8がアナログデジタル変換したデジタル信号(デジタルデータ)を保持する。保持回路2は、画素信号の基準信号N(N信号;リセット信号)と有効信号S(S信号;光電変換信号)の2種類の信号を、画素の出力に対応するデジタル信号として保持することができる。ここで、基準信号Nとは、画素のリセット状態における画素信号である。有効信号Sとは、画素の非リセット状態における画素信号(画像信号)である。この2種類の信号を保持回路2が保持する場合には、後段の信号処理回路100,101が2種類の信号の差分処理(S-Nの差分処理)を行う。基準信号Nと有効信号Sは画素の列ごとに(保持回路2ごとに)同一の共通出力線5(同一方向)に転送される。つまり、1つの保持回路2が保持した基準信号Nと有効信号Sとは、共通出力線5を介して同一の信号処理回路(同一の共通出力線)に出力される。このため、信号処理回路100,101におけるS-Nの差分処理が容易になる。
【0015】
水平走査回路6の制御によって、保持回路2に保持(記憶)されたデジタル信号が、列毎にデジタル出力線3に順次読み出される。
【0016】
デジタル出力線3に読み出されたデジタル信号は、複数の信号転送部4(4-1~4-8)を介して、複数の共通出力線5(5-1,5-2)に転送される。複数の共通出力線5に転送されたデジタル信号は、信号処理回路100,101に出力される。信号処理回路100,101は、デジタル信号に対して、上述したS-Nの差分処理などの各種の補正を行ったり、データの圧縮をしたりする。
【0017】
なお、これらの画素からの画素信号の読み出しに係る一連の動作は、画素部1の画素行を垂直走査回路7が選択しながら行われる。なお、図1において、各回路に必要なパルスとそのタイミングを制御する回路は省略している。
【0018】
また、実施形態1では、画素部1の各列に対応して、列毎にアナログデジタル変換器8を設けているが、画素部1においてアナログデジタル変換が行われる構成であってもよい。
【0019】
[信号転送部の消費電流について]
図2を参照して、本実施形態に係る信号転送部4における電流消費の時間変化について説明する。図2は、複数の信号転送部4の電流消費を時間ごとに示した図である。
【0020】
本実施形態において、光電変換装置には、図1に示すように8個の信号転送部4が設けられている。信号転送部4-1~4-4の4個は、信号転送部群40を形成しており、共通出力線5-1に接続される。信号転送部4-5~4-8の4個は信号転送部群41を形成しており、共通出力線5-2に接続されている。共通出力線5-2は信号転送部群41の右側(水平走査が行われていく方向)に配置されており、共通出力線5-1は信号転送部群40の左側に配置されている。つまり、信号転送部群40と信号転送部群41とは、互いに異なる方向(互いに反対方向)に水平転送を行う(互いに異なる方向に存在する信号処理回路に信号を出力する)。また、信号転送部群40,41には、互い異なる2以上の保持回路2(保持回路群)からデジタル信号が転送される。つまり、8個のうちの一部の保持回路2からデジタル信号が信号転送部群40に転送され、8個のうちの別の一部の保持回路2からデジタル信号が信号転送部群41に転送される。
【0021】
図2では、信号転送部4においてデジタル信号を転送している状態を「ON」と表記する。信号転送部4においてデジタル信号を転送していない状態であり、「ON」の状態よりも電流消費が小さい状態(電流消費を抑制した状態)を「OFF」と表記する。
【0022】
時刻1では、信号転送部群40の信号転送部4-1と、信号転送部群41の信号転送部4-5~4-8とがON状態である。信号転送部群40の信号転送部4-2~4-4がOFF状態である。
【0023】
時刻2では、信号転送部群40の信号転送部4-1,4-2と、信号転送部群41の信号転送部4-6~4-8とがON状態である。信号転送部群40の信号転送部4-3,4-4、信号転送部群41の信号転送部4-5がOFF状態である。
【0024】
時刻3では、信号転送部群40の信号転送部4-1~4-3と、信号転送部群41の信号転送部4-7,4-8とがON状態である。信号転送部群40の信号転送部4-4と、信号転送部群41の信号転送部4-5,4-6とがOFF状態である。
【0025】
時刻4では、信号転送部群40の信号転送部4-1~4-4と、信号転送部群41の信号転送部4-8とがON状態である。信号転送部群41の4-5~4-7がOFF状態である。
【0026】
以上のように、本実施形態に係る光電変換装置は、所定の期間において、時刻経過とともに、OFF状態の信号転送部4の数が減少する信号転送部群40と、OFF状態の信号転送部4の数が増加する信号転送部群41を有する。このため、信号転送部群40と信号転送部群41との全体において、各時刻におけるON状態とOFF状態の信号転送部4の数は「ON:5個、OFF:3個」であり、時刻が変わってもON,OFFの個数は変わることなく一定である。従って、本実施形態によれば、消費電流は平滑化されるので、電源ノイズを低減することができる。
【0027】
[信号転送部の回路構成について]
図3図6を参照して、本実施形態に係る信号転送部4の回路構成例について説明する。図3図6は、信号転送部4の等価回路の複数の例を示す図である。
【0028】
(例1)
図3では、信号転送部4は、CMOSインバータ回路と、電流消費抑制部であるスイッチを有する。図3の例では、信号転送部4は、CMOSインバータ回路300、入力端子301、出力端子302、スイッチ303、スイッチ304、抑制端子305を有する。スイッチ303は、デジタル信号を転送しない場合に、入力端子301を固定電位(基準電位)に固定する。スイッチ304は、デジタル信号を転送しない場合に、このスイッチ304を有する信号転送部4を後段の信号転送部4から電気的に切り離す。つまり、スイッチ303,304がこのような動作を行うことにより、信号転送部4の消費電流が抑制される。抑制端子305は、スイッチ303,304にパルスを出力することにより、スイッチ303,304を制御する。
【0029】
なお、図3では、CMOSインバータ回路1段の回路構成を例にあげたが、図4に示すように、CMOSインバータ回路300を複数直列に接続して、段階的に駆動力を上げていくような構成にしてもよい。また、CMOSインバータ回路300を偶数段直列に接続することで正転のバッファ回路を構成することができ、奇数段直列に接続することで反転バッファ回路を構成できるが、どちらの構成を用いてもよい。
【0030】
(例2)
図5は、信号転送部4の他の構成例の一つである同期化遅延回路(フリップフロップ回路)を示している。図5の例では、信号転送部4は、入力端子501、クロック端子502、リセット入力端子503、出力端子504、抑制端子505、スイッチ506、スイッチ507を有する。
【0031】
このような同期化遅延回路では、デジタル出力線3を入力端子501に接続し、クロック端子502に入力するクロックに保持回路2から入力されたデジタル信号を同期化することにより、デジタル信号の波形を再生成することが可能である。従って、デジタル出力線3からのデジタル信号が遅延していても、当該デジタル信号の波形が再生成できるため、光電変換装置におけるデジタル信号の高速な読み出しが実現できる。
【0032】
スイッチ506は、デジタル信号を転送しない場合に、入力端子501を固定電位に固定する。スイッチ507は、デジタル信号を転送しない場合に、このスイッチ507を有する信号転送部4を後段の信号転送部4から電気的に切り離す。つまり、例1と同様に、本例においてもスイッチ506,507のこのような動作によって、信号転送部4の電流消費が抑制される。
【0033】
このように、図5では、入力端子501を固定電位に固定し、後段の信号転送部4から電気的に切り離すことによって電流消費を抑制している。しかし、リセット入力端子503へのリセット信号の入力や、クロック端子502へのクロック(基準クロック)の入力の停止によって、信号転送部4の電流消費が抑制されてもよい。
【0034】
(例3)
図6は、信号転送部4の他の構成例の一つである比較回路(センスアンプ回路)を示す。図7は、図6に示す比較回路の駆動タイミングを示す図である。
【0035】
図1に示す光電変換装置に対して、図6に示す信号転送部4を適用する場合には、保持回路2は、正転信号と反転信号(正転信号の逆位相の信号)とを含む差動信号を出力する(差動出力をする)。したがって、1つの保持回路2に対して2線のデジタル出力線3が接続される。
【0036】
図6に示す信号転送部4は、リセット電圧が入力されるリセット入力端子600、差動入力端子601,602、差動出力端子606,607、ラッチパルス入力端子603、リセットパルス入力端子604、反転ラッチパルス入力端子605を有する。また、信号転送部4は、PMOSトランジスタ608~611,615~617、NMOSトランジスタ612~614を有する。差動入力端子601には、保持回路2から正転信号が入力される。差動入力端子602には、保持回路2から反転信号が入力される。また、反転ラッチパルス入力端子605には、ラッチパルス入力端子603に与えられるパルスの反転信号が与えられる。
【0037】
図7のタイミング図を用いて、図6に示す信号転送部4の詳細な動作を説明する。図7におけるエネイブルパルス700(Enable Pulse)は、保持回路2の出力を有効にする信号である。エネイブルパルス700と、水平走査回路6で選択された列の信号との論理積が保持回路2の出力タイミングになる。図7では、時刻t0~t2にかけて、エネイブルパルス700がハイレベルであり、保持回路2の出力が有効である。
【0038】
時刻t0~t2において、差動入力端子601に入力される正転信号601’と差動入力端子602に入力される反転信号602’は、保持回路2に一時保持されたデジタル信号に応じて変化する。具体的には、保持回路2に一時保持されたデジタル信号が1(ハイレベル)であれば、正転信号601’はハイレベルに推移し、反転信号602’はローレベルに推移する。しかしながら、出力回路としての保持回路2は、駆動力が小さいため、正転信号601’および反転信号602’は遅延することになり、単位時間当たりの変化量は小さくなる。
【0039】
時刻t1まで、ラッチパルス入力端子603に入力されるラッチ信号603’はローレベル状態であり、PMOSトランジスタ608,609はオン状態であり、NMOSトランジスタ614およびPMOSトランジスタ615はオフ状態である。このため、時刻t0~t1にかけて、差動出力端子606が出力する正転信号606’および差動出力端子606が出力する反転信号607’は、正転信号601’および反転信号602’と同じレベルである。
【0040】
続いて、時刻t1において、ラッチ信号603’がハイレベルとなり、NMOSトランジスタ614と、PMOSトランジスタ615がオン状態になる。このとき、4つのMOSトランジスタ610,611,612,613から成るラッチ回路が有効になる。このため、正転信号606’と反転信号607’のうち、時刻t1において大きな値を有する正転信号606’がハイレベルに変化し、時刻t1において小さな値を有する反転信号607’がローレベルに変化する。
【0041】
時刻t3~t5の期間はリセット期間であり、リセットパルス入力端子604に入力されるリセットパルス604’がローレベルである。この期間では、保持回路2からの読み出しは行われず、正転信号601’、602および正転信号606、反転信号607がリセットレベルに変化する(初期化される)。
【0042】
時刻t6以降の動作は、時刻t0~t5の動作が繰り返される。ただし、時刻t6~t10では、保持回路2は、0(ローレベル)のデータを出力する。したがって、時刻t0~t5の場合と比較して、信号転送部4への入力である正転信号601’と反転信号602’の上下関係が反転して、信号転送部4の出力結果である正転信号606’と反転信号607’の結果も反転している。
【0043】
以上のように、図6のようなセンスアンプ回路によれば、正転信号601および反転信号602の信号レベルが遷移途中の段階でも、ラッチ回路が有効になれば、当該2つの信号を比較して出力するデジタル信号を確定することができる。したがって、差動入力端子601,602を、グランドと電源との間まで遷移させる必要がなく、高速かつ低消費電力で読み出すことが可能である。
【0044】
また、本回路構成によれば、ラッチ信号603がハイレベルに変化するタイミングに応じて、正転信号606’と反転信号607がハイレベルかローレベルかが確定する(転送するデジタル信号を確定する)。このため、図5のフリップフロップ回路と同様に、信号をクロックに同期化させる効果も有る。なお、デジタル信号の転送を行わない場合には、ラッチ信号603をローレベルに固定する(またはリセットパルスをローレベルに固定する)ことなどで電流消費を抑えられる。
【0045】
[水平転送動作について]
図8図9を参照して、信号転送部4と水平走査回路6による水平転送動作について説明する。図8図9は、信号転送部4と水平走査回路6による水平転送動作を示したタイミング図である。
【0046】
(信号転送部群40と水平走査回路6の水平転送動作)
まずは、図8を用いて、信号転送部群40と水平走査回路6の水平転送動作の関係を説明する。ここで、図1に示すように、16列に並んだ保持回路2のそれぞれと水平走査回路6とが信号線を介して接続していることによって、16個の保持回路2に水平走査回路6から出力信号が入力される。以下では、n列目(nは1~16のいずれかの自然数)の保持回路2に入力される信号であって、水平走査回路6から出力される信号を出力信号の「nビット目」と表記する。なお、本実施形態では、1列目の画素から16列目の画素に
向かい水平走査が行われる。
【0047】
時刻t0~t1にかけて水平走査回路6の出力信号の1ビット(bit)目がハイレベルになり、時刻t1~t2にかけて出力信号の3ビット目がハイレベルになる。このとき、ハイレベルである出力信号に対応した奇数列の保持回路2の読み出しがそれぞれ有効になる。つまり、水平走査回路6の出力信号の1ビット目がハイレベルになれば、1行目の保持回路2の読み出しが有効になり、出力信号の3ビット目がハイレベルになれば、3行目の保持回路2の読み出しが有効になる。これは、時刻t2~t3以降も同様である。
【0048】
また、本実施形態では、信号転送部4に入力される電流消費抑制パルスがハイレベルであれば信号転送部4が動作し(転送ON)、ローレベルであれば信号転送部4の電流消費が抑制される(転送OFF)。つまり、電流消費抑制パルスに応じて、信号転送部4は、動作状態と、電流の抑制状態のいずれかに遷移することが可能である。信号転送部4がこのような回路構成である場合には、電流消費抑制パルスと時間変化とは、以下に示す関係である。
【0049】
信号転送部4-1に入力される電流消費抑制パルス401は、時刻t0~t12にかけてハイレベルである。信号転送部4-2に入力される電流消費抑制パルス402は、時刻t2~t12にかけてハイレベルである。信号転送部4-3に入力される電流消費抑制パルス403は、時刻t4~t12にかけてハイレベルである。信号転送部4-4に入力される電流消費抑制パルス404は、時刻t6~t12にかけてハイレベルである。
【0050】
つまり、時刻t0~t12にかけて、信号転送部群40では、動作する信号転送部4の数が増加する。言い換えると、電流消費を抑制した信号転送部4の数が減少する。
【0051】
時刻t0~t1にかけて有効にされた1列目の保持回路2のデジタル信号の読み出し結果は、図1に示すように信号転送部4-1を経由する。これにより、水平走査回路6から供給されるクロックに対して1クロック遅延して、1列目の保持回路2のデジタル信号の読み出し結果は共通出力線5-1に出力される。同様に、3列目の保持回路2のデジタル信号も、1クロック遅延して共通出力線5-1に出力される。
【0052】
これに対し、5列目および7列目の保持回路2のデジタル信号は、2つの信号転送部4-1,4-2を経由して、共通出力線5-1に出力される。このため、時刻t2~t3にかけて有効にされた5列目の保持回路2のデジタル信号は、水平走査回路6から供給されるクロックに対して2クロック遅延した時刻t4~t5に、共通出力線5-1に出力される。
【0053】
このように、時刻t2~t3において3列目の保持回路2のデジタル信号が共通出力線5-1に出力され、時刻t4~t5において5列目の保持回路2のデジタル信号が共通出力線5-1に出力される。従って、時刻t3~t4において共通出力線5-1に出力されるデジタル信号は、いずれの列の保持回路2からのデジタル信号でもない不要データである。なお、各構成による遅延量の差を考慮することによって、信号処理回路100に到達する不要データが発生しないようにすることができる。具体的には、水平走査回路6の出力信号の3ビット目と5ビット目を同時にハイレベルにすることや、デジタル信号が共通出力線5-1に出力された後に不図示の遅延回路を通るようにする。このことによって、列の順番通り切れ目なく、保持回路2のデジタル信号を信号処理回路100に入力することができる。
【0054】
(信号転送部群41と水平走査回路6の水平転送動作)
次に、図9を用いて、信号転送部群41と水平走査回路6の水平転送動作の関係を説明
する。
【0055】
時刻t0~t1にかけて、水平走査回路6の出力信号の2ビット(bit)目がハイレベルになり、時刻t1~t2にかけて4ビット目がハイレベルになる。すると、対応した偶数列の保持回路2の読み出しが有効になる。時刻t2~t3以降も同様に、ハイレベルになった水平走査回路6のビットに応じた列の保持回路2の読み出しが有効になる。
【0056】
ここで、上述と同様に、入力される電流消費抑制パルスがハイレベルであれば信号転送部4が動作し(転送ON)、電流消費抑制パルスがローレベルであれば信号転送部4の電流消費が抑制される(転送OFF)と想定する。信号転送部4がこのような回路構成である場合には、電流消費抑制パルスと時間変化とは、以下に示す関係である。
【0057】
信号転送部4-5に入力される電流消費抑制パルス405は、時刻t0~t3にかけてハイレベルになる。信号転送部4-6に入力される電流消費抑制パルス406は、時刻t0~t6にかけてハイレベルになる。信号転送部4-7に入力される電流消費抑制パルス407は、時刻t0~t9にかけてハイレベルになる。信号転送部4-8に入力される電流消費抑制パルス408は、時刻t0~t12にかけてハイレベルになる。
【0058】
つまり、時刻t0~t12にかけて、信号転送部群41において動作する信号転送部4の数が減少する。言い換えると、電流消費を抑制した信号転送部4の数が増加する。
【0059】
時刻t0~t1にかけて、有効にされた2列目の保持回路2のデジタル信号の読み出し結果は、4つの信号転送部4-5,4-6,4-7,4-8を経由する。これにより、水平走査回路6から供給されるクロックに対して4クロック遅延して、時刻t4~t5に共通出力線5-2に出力される。同様に4列目の保持回路2のデジタル信号も、4クロック遅延して、時刻t5~t6に共通出力線5-2に出力される。
【0060】
これに対し、6列目および8列目の保持回路2のデジタル信号は、3つの信号転送部4-6,4-7,4-8を経由して共通出力線5-2に出力される。ここで、時刻t2~t3にかけて6列目の保持回路2が有効にされると、当該保持回路2のデジタル信号は、水平走査回路6から供給されるクロックに対して3クロック遅延し、時刻t5~t6に共通出力線5-2に出力される。つまり、時刻t5~t6に、4列目と6列目の保持回路2のデジタル信号が、同じタイミングで共通出力線5-2に出力されてしまう。そこで、本実施形態においては、遅延量の差を考慮し、水平走査回路6の出力信号の4ビット目をハイレベルに遷移させてから2クロック後に、6ビット目をハイレベルにする。このことにより、列の順番通り切れ目なく信号処理回路101に、画素から取得したデジタル信号(画素信号)を入力することができる。
【0061】
また、共通出力線5-2に出力された後に不図示の遅延回路をデジタル信号が通ることによっても、信号処理回路100,101にデジタル信号が到達するタイミングを揃えることもできる。
【0062】
以上のように、本実施形態では、光電変換装置は、電流消費を抑制した信号転送部4の数が減少する信号転送部群40と、電流消費を抑制した信号転送部4の数が増加する信号転送部群41を有する。したがって、水平転送動作における消費電流が平滑化され、電源ノイズを低減することができる。
【0063】
なお、信号転送部群40と水平走査回路6の水平転送動作の関係は、図10に示すような関係であってもよい。つまり、水平走査回路6の出力信号の3ビット目がハイレベルになってから2クロック後に、5ビット目がハイレベルになる。同様に、水平走査回路6の
出力信号の7ビット目がハイレベルになってから2クロック後に9ビット目がハイレベルになる。このように、水平走査回路6の出力信号が制御されることによれば、図9が示す信号転送部群40との関係で、光電変換装置の全体において、電力消費を抑制した信号転送部4の数を時間経過によらずに一定数にすることができる。なお、図8に示した場合よりも、不要データの出現割合が多くなるため、切れ目なくデジタル信号を共通出力線5-1に出力するために、共通出力線5-1に出力された後に不図示の遅延回路をデジタル信号が通るようにするとよい。
【0064】
また、画像を生成する上では、本実施形態のように、画素の配列(保持回路2の列)の順番に信号を出力することは、撮像装置において特に重要である。なぜならば、画素の配列順に読み出すことは、OB画素を用いた補正や、それ以外の信号処理を行う上で重要であるからである。本実施形態では、水平走査回路6により、共通出力線5-1に転送する信号を保持する1列目、3列目、5列目、7列目の保持回路2の列順に、共通出力線5-1に信号が転送されるように保持回路2の出力が制御される。同様に、共通出力線5-2に転送する信号を保持する2列目、4列目、6列目、8列目の保持回路2の列順に、共通出力線5-2に信号が転送されるように保持回路2の出力が制御される。従って、消費電流を平滑化し電源ノイズを低減しながら、列毎のデータを配列順通りに切れ目無く読み出すことができる。このため、本実施形態に係る光電変換装置の技術分野において、特に有効な効果を奏する。
【0065】
本実施形態では、信号転送部群40と信号転送部群41とが一組存在するが、図11のように画素部1の上部に、さらに信号転送部群40と信号転送部群41とが一組設けられていても消費電流は平滑化され、電源ノイズを低減することができる。この場合には、垂直走査回路7により2行を同時に選択し、偶数行の画素の画素信号を上方向、奇数行の画素の画素信号を下方向に読み出すことで高速読み出しを可能することができる。なお、図11の例では、信号転送部群40,41の2組によって2行の画素の信号の同時読み出しの例を示しているが、さらに高速化したい場合は3行以上の同時読み出しとしてもよい。
【0066】
また、図11のように複数の共通出力線5-1,5-2,5-3,5-4が、互いに異なる信号処理回路100,101,102,103に接続されていてもよい。
【0067】
さらに、各画素に対して1色のカラーフィルタを設けた場合、色ごとのデジタル信号が互いに異なる信号処理回路100,101,102,103にそれぞれ転送される構成でもよい。つまり、画素には、それぞれ1色のカラーフィルタが設けられており、異なる色のカラーフィルタが設けられた画素のデジタル信号はそれぞれ、複数の共通出力線のうち互いに異なる共通出力線に転送されるように構成されていてもよい。
【0068】
<実施形態2>
図12は、実施形態2に係る光電変換装置の構成図である。図12において、図1と同一の構成には同一符号を付しており、当該構成についての説明は省略する。本実施形態に係る光電変換装置は、実施形態1に係る光電変換装置の各構成に加えて、ブロック出力線30、バッファ回路31を有する。
【0069】
ブロック出力線30は、2列分の保持回路2を1ブロックとしてまとめる出力線である。図12の例では、1列目と3列目の保持回路2が1つのブロックにまとめられ、2列目と4列目の保持回路2が1つのブロックにまとめられている。このように、16列の保持回路2を8ブロックにすることによって、16列分の読み出し回路を形成することができる。
【0070】
バッファ回路31は、保持回路2からブロック出力線30に読み出したデジタル信号を
バッファリングする(バッファに記録する)。バッファ回路31は、ブロック出力線30と、共通出力線5-1,5-2との間に設けられる。
【0071】
ここで、本実施形態でも、実施形態1と同様に、光電変換装置は、電流消費を抑制した信号転送部4の数が減少する信号転送部群40と、電流消費を抑制した信号転送部4の数が増加する信号転送部群41を有する。したがって、水平転送動作における消費電流が平滑化され、電源ノイズを低減することができる。
【0072】
なお、本実施形態において、画素部1内の列数は16列であり、ブロック出力線30を8本設けているので、ブロック出力線30当たりには2個の保持回路2が並列に接続されている。これに対し、実施形態1のようにブロック分割を行わなかった場合、16個の保持回路2が並列に接続されることになり、本実施形態と比較して、並列する保持回路2の数が2倍、デジタル出力線の長さが2倍になる。これに対し、本実施形態ではデジタル出力線を分割することにより、ブロック出力線30の配線抵抗、配線容量、及び接続される保持回路2の総容量が減少する。高速読み出しを行う上で読み出し配線の容量、抵抗は大きな妨げとなることは言うまでもない。つまり、実施形態2によれば、消費電流を平滑化して電源ノイズを低減しながら、さらに高速に読みだすことができる。
【0073】
<実施形態3>
図13は、実施形態3に係る光電変換装置の構成図である。図13において、図1と同一の構成は同一符号を付しており、当該構成についての説明は省略する。
【0074】
本実施形態において、光電変換装置には、4つの信号転送部4が設けられている。信号転送部4-1,4-2の2個は、信号転送部群40を形成しており、共通出力線5-1に接続される。信号転送部4-3,4-4の2個は、信号転送部群41を形成しており、共通出力線5-2に接続されている。本実施形態では、信号転送部群40と信号転送部群41とが直列に配置されている。
【0075】
図14は、4つの信号転送部4の電力の抑制状態を示す図である。デジタル信号を転送している信号転送部4をONと表記し、デジタル信号を転送していない状態で電流消費を抑制した信号転送部4をOFFと表記している。
【0076】
時刻1では、信号転送部群40の4-1と、信号転送部群41の4-3,4-4とがON状態である。一方、信号転送部群40の4-2がOFF状態である。
【0077】
時刻2では、信号転送部群40の4-1,4-2と、信号転送部群41の4-4がON状態である。一方、信号転送部群41の4-3がOFF状態である。
【0078】
以上のように、本実施形態に係る光電変換装置も、電流消費を抑制した信号転送部の数が減っていく信号転送部群40と、電流消費を抑制した信号転送部の数が増えていく信号転送部群41を有する。このため、各時刻におけるON状態とOFF状態の信号転送部の数は「ON:3個、OFF:1個」と、時刻が変わってもON,OFFの個数は変わることなく一定である。
【0079】
したがって、信号転送部群40と信号転送部群41とを直列に配置しても、消費電流は平滑化され、電源ノイズを低減することができる。
【0080】
<実施形態4>
本発明の実施形態4による撮像システムについて、図15を用いて説明する。図15は、本実施形態による撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
【0081】
上記実施形態1~3で述べた光電変換装置(撮像装置)は、種々の撮像システムに適用可能である。適用可能な撮像システムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星、医療用カメラなどの各種の機器が挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置(光電変換装置)とを備えるカメラモジュールも、撮像システムに含まれる。図15にはこれらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0082】
撮像システム2000は、図15に示すように、撮像装置1000、撮像光学系2002、CPU2010、レンズ制御部2012、撮像装置制御部2014、画像処理部2016を備える。また、撮像システム2000は、絞りシャッター制御部2018、表示部2020、操作スイッチ2022、記録媒体2024を備える。
【0083】
撮像光学系2002は、被写体の光学像を形成するための光学系であり、レンズ群、絞り2004等を含む。絞り2004は、その開口径を調節することで撮影時の光量調節を行なう機能を備えるほか、静止画撮影時には露光秒時調節用シャッターとしての機能も備える。レンズ群及び絞り2004は、光軸方向に沿って進退可能に保持されており、これらの連動した動作によって変倍機能(ズーム機能)や焦点調節機能を実現する。撮像光学系2002は、撮像システムに一体化されていてもよいし、撮像システムへの装着が可能な撮像レンズでもよい。
【0084】
撮像光学系2002の像空間には、その撮像面が位置するように撮像装置1000が配置されている。撮像装置1000は、実施形態1~3のいずれかで説明した光電変換装置であり、CMOSセンサ(画素部)とその周辺回路(周辺回路領域)とを含んで構成される。撮像装置1000は、複数の光電変換部を有する画素が2次元配置され、これらの画素に対してカラーフィルタが配置されることで、2次元単板カラーセンサを構成している。撮像装置1000は、撮像光学系2002により結像された被写体像を光電変換し、画像信号や焦点検出信号として出力する。
【0085】
レンズ制御部2012は、撮像光学系2002のレンズ群の進退駆動を制御して変倍操作や焦点調節を行うためのものであり、その機能を実現するように構成された回路や処理装置により構成されている。絞りシャッター制御部2018は、絞り2004の開口径を変化して(絞り値を可変として)撮影光量を調節するためのものであり、その機能を実現するように構成された回路や処理装置により構成される。
【0086】
CPU2010は、カメラ本体の種々の制御を司るカメラ内の制御装置であり、演算部、ROM、RAM、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェイス回路等を含む。CPU2010は、ROM等に記憶されたコンピュータプログラムに従ってカメラ内の各部の動作を制御し、撮像光学系2002の焦点状態の検出(焦点検出)を含むAF、撮像、画像処理、記録等の一連の撮影動作を実行する。CPU2010は、信号処理部でもある。
【0087】
撮像装置制御部2014は、撮像装置1000の動作を制御するとともに、撮像装置1000から出力された信号をA/D変換してCPU2010に送信するためのものであり、それら機能を実現するように構成された回路や制御装置により構成される。A/D変換機能は、撮像装置1000が備えていてもかまわない。画像処理部2016は、A/D変換された信号に対してγ変換やカラー補間等の画像処理を行って画像信号を生成する処理装置であり、その機能を実現するように構成された回路や制御装置により構成される。表示部2020は、液晶表示装置(LCD)等の表示装置であり、カメラの撮影モードに関
する情報、撮影前のプレビュー画像、撮影後の確認用画像、焦点検出時の合焦状態等を表示する。操作スイッチ2022は、電源スイッチ、レリーズ(撮影トリガ)スイッチ、ズーム操作スイッチ、撮影モード選択スイッチ等で構成される。記録媒体2024は、撮影済み画像等を記録するためのものであり、撮像システムに内蔵されたものでもよいし、メモリカード等の着脱可能なものでもよい。
【0088】
このようにして、実施形態1~3による光電変換装置を適用した撮像システム2000を構成することにより、高性能の撮像システムを実現することができる。
【0089】
<実施形態5>
本発明の実施形態5による撮像システム及び移動体について、図16(A)及び図16(B)を用いて説明する。図16(A)及び図16(B)は、本実施形態による撮像システム及び移動体の構成を示す図である。
【0090】
図16(A)は、車載カメラに関する撮像システム2100の一例を示したものである。撮像システム2100は、撮像装置2110を有する。撮像装置2110は、上述の実施形態1~3のいずれかに記載の光電変換装置である。撮像システム2100は、撮像装置2110により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う処理装置である画像処理部2112を有する。撮像システム2100は、撮像装置2110により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う処理装置である視差取得部2114を有する。また、撮像システム2100は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する処理装置である距離取得部2116を有する。撮像システム2100は、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する処理装置である衝突判定部2118を有する。ここで、視差取得部2114や距離取得部2116は、対象物までの距離情報等の情報を取得する情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部2118はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。上述の処理装置は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールに基づいて演算を行う汎用のハードウェアによって実現されてもよい。また、処理装置はFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよい。また、処理装置は、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0091】
撮像システム2100は、車両情報取得装置2120と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム2100は、衝突判定部2118での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU2125が接続されている。すなわち、制御ECU2125は、距離情報に基づいて移動体を制御する移動体制御手段の一例である。また、撮像システム2100は、衝突判定部2118での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置2140とも接続されている。例えば、衝突判定部2118の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU2125はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置2140は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0092】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム2100で撮像する。図16(B)に、車両前方(撮像範囲2150)を撮像する場合の撮像システム2100を示した。車両情報取得装置2120は、撮像システム2100を動作させ撮像を実行させるように指示を送る。上述の実施形態1~3のいずれかの光電変換装置を撮像装置2
110として用いることにより、本実施形態の撮像システム2100は、測距の精度をより向上させることができる。
【0093】
以上の説明では、他の車両と衝突しないように制御する例を述べたが、他の車両に追従して自動運転する制御、車線からはみ出さないように自動運転する制御等にも適用可能である。更に、撮像システムは、自動車等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(輸送機器)に適用することができる。移動体(輸送機器)における移動装置はエンジン、モーター、車輪、プロペラなどの各種の駆動源である。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0094】
2:保持回路、4(4-1~4-8):信号転送部、40,41:信号転送部群、
5(5-1,5-2):共通出力線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16