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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】インクジェット方式の印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 213
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020069039
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021165008
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 陽平
(72)【発明者】
【氏名】水崎 晃彦
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-026056(JP,A)
【文献】特開2016-000487(JP,A)
【文献】特開2014-184595(JP,A)
【文献】特開2006-168097(JP,A)
【文献】特開平09-226127(JP,A)
【文献】特開2013-180489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向にメディアに対して相対的に移動しつつ放射線の照射により硬化する放射線硬化型インクジェットインクのインク滴を前記メディアに向けて吐出する主走査動作と、前記主走査方向と直交する副走査方向に前記メディアに対して相対的に移動する副走査動作とを行うインクジェットヘッドと、
前記メディア上に着弾した前記インク滴に前記放射線を照射して硬化させる放射線照射部であって、前記副走査方向に並んでおり且つ独立して制御可能な複数の放射線照射装置を備える放射線照射部と、
を備え、
前記インクジェットヘッドは、前記副走査動作を行いながら、前記メディア上の被印刷領域内の各位置に対してパス数回の前記主走査動作を行うことで、前記メディアに画像をマルチパス方式で印刷し、この過程で、前記副走査方向において前記画像の終端が印刷される前記被印刷領域の終端に前記インクジェットヘッドが印刷可能な位置に前記インクジェットヘッドが達すると、前記副走査動作での前記副走査方向への移動を停止し、前記被印刷領域のうち前記画像の対応する部分が完成していない領域内の各位置に対して前記パス数に達するまで前記主走査動作を行い、
前記放射線照射部は、前記被印刷領域のうち前記画像の対応する部分が完成していない領域内の各位置に対して前記パス数に達するまで前記主走査動作を行う際に、当該領域の各位置に照射される前記放射線の積算量間の差が、前記主走査動作中に前記放射線照射装置のすべてを所定の光量で点灯させていた場合の当該領域内の各位置での前記放射線の積算量間の差より小さくなるように、各前記放射線照射装置を独立して制御して、当該放射線照射装置から前記放射線を前記メディアに照射する、
インクジェット方式の印刷装置。
【請求項2】
メディア上に画像を印刷するインクジェット方式の印刷装置であって、
主走査方向及び前記主走査方向に直交する副走査方向に前記メディアに対して相対的に移動可能であり、放射線の照射により硬化する放射線硬化型インクジェットインクを前記メディアに塗布するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに追従して移動可能であり、前記メディア上に塗布された前記放射線硬化型インクジェットインクに前記放射線を照射して硬化させる放射線照射部と、
前記インクジェットヘッド及び前記放射線照射部を制御して、前記メディア上の複数の領域のそれぞれに前記画像の対応する部分を複数回印刷するマルチパス方式により前記メディア上に前記画像を印刷する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記インクジェットヘッド及び前記放射線照射部を制御して、
(i)前記複数の領域のうち前記副走査方向において最上流にある領域及び最下流にある領域の一方又は両方を除く領域に前記画像を印刷する場合は、前記インクジェットヘッドを前記副走査方向に前記メディアに対して相対的に所定距離ずつ移動させ、前記副走査方向への前記所定距離の移動毎に、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に前記メディアに対して相対的に移動させながら、前記インクジェットヘッドに前記メディアへ前記放射線硬化型インクジェットインクを塗布させ、これを繰り返すことにより、前記メディア上に前記画像の一部を前記マルチパス方式により印刷し、
(ii)前記複数の領域のうち前記最上流にある領域及び前記副走査方向においてその下流にある1つ以上の領域、又は、前記複数の領域のうち前記最下流にある領域及び前記副走査方向においてその上流にある1つ以上の領域に前記画像を印刷する場合は、前記副走査方向における前記メディアに対する前記インクジェットヘッドの位置を維持しつつ、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に前記メディアに対して相対的に複数回移動させながら、前記インクジェットヘッドに前記メディアへ前記放射線硬化型インクジェットインクを塗布させ、これにより、前記メディア上に前記画像の残部を前記マルチパス方式により印刷し、
(iii)前記インクジェットヘッドが前記画像の前記一部及び前記残部を前記メディア上に印刷する過程で、前記放射線照射部を前記インクジェットヘッドに追従して移動させ、前記放射線照射部の移動中に前記放射線照射部から前記放射線を照射可能な前記複数の領域のそれぞれに、当該領域に前記画像の対応する部分が最初に印刷されてから前記メディアへの前記画像全体の印刷が完了するまでの間に前記放射線照射部から当該領域へ照射された前記放射線の積算量が前記複数の領域のうち他の領域での積算量の100%以上175%未満となるように、前記放射線照射部から前記放射線を照射させる、
印刷装置。
【請求項3】
前記放射線照射部は複数の放射線照射装置を備え、
前記放射線照射装置は独立して前記放射線を照射するかしないかを制御可能であり、
前記制御部は、前記放射線照射装置のそれぞれについて、前記放射線照射部の移動中に当該放射線照射装置から前記放射線を照射可能な前記複数の領域の全てに前記画像の対応する部分が所定のパス数に等しい回数だけ前記マルチパス方式で印刷されているわけではないなら、当該領域全てに前記放射線照射装置から前記放射線を照射させる、
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記画像は前記副走査方向に沿って前記所定距離に応じた所定幅毎に第1から第N(Nは2以上の整数)の分割画像に分割され、
第1から第Nの前記分割画像はそれぞれ前記メディア上の第1から第Nの前記領域にP(Pは2以上且つN以下の整数)回のパス数で印刷され、
前記制御部は、
(i)前記インクジェットヘッドが第1から第Pの前記領域に印刷可能な前記副走査方向の位置で、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に沿って前記メディアに対して相対的に複数回にわたり移動させ、この過程で、第1から第Pの前記分割画像をそれぞれP回から1回だけ対応する第1から第Pの前記領域上にパスマスクを適用して印刷する第1印刷工程、又は(ii)前記インクジェットヘッドが第N-P+1から第Nの前記領域に印刷可能な前記副走査方向の位置で、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に沿って前記メディアに対して相対的に複数回にわたり移動させ、この過程で、第N-P+1から第Nの前記分割画像をそれぞれ1回からP回だけ対応する第N-P+1から第Nの前記領域上にパスマスクを適用して印刷する第2印刷工程と、
前記インクジェットヘッドを前記副走査方向に前記所定距離だけ前記メディアに対して相対的に移動させて、前記インクジェットヘッドが1つ以上の前記領域に印刷可能な前記副走査方向の位置とし、その後、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に沿って前記メディアに対して相対的に移動させ、この過程で、前記1つ以上の前記領域にそれぞれ対応する前記分割画像を1回だけパスマスクを適用して印刷する第3印刷工程であって、第N-1の前記分割画像を第N-1の前記領域上に最初に印刷するまで繰り返される第3印刷工程と、
前記第1印刷工程、前記第2印刷工程、及び前記第3印刷工程と並行して、前記放射線照射部がP個の前記領域に放射線を照射可能な状態で、前記放射線照射部を前記インクジェットヘッドに追従して移動させ、この過程で、前記インクジェットヘッドにより印刷中の前記領域には前記放射線照射部から前記放射線を照射し、その他の前記領域には前記放射線照射部から前記放射線を照射しない放射線放射工程と、
を備える方法を実行するように前記印刷装置を制御する、
請求項2又は3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記メディアは原反状の連続シートであり、
前記メディア上に前記画像を印刷した後に、前記副走査方向において前記メディア上の前記画像の下流にさらなる画像が印刷される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
メディア上に第1の画像及び第2の画像を印刷するインクジェット方式の印刷装置であって、
前記印刷装置は、
主走査方向及び前記主走査方向に直交する副走査方向に前記メディアに対して相対的に移動可能であり、放射線の照射により硬化する放射線硬化型インクジェットインクを前記メディアに塗布するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを制御して、前記メディア上の複数の領域のそれぞれに前記第1の画像及び前記第2の画像の対応する部分を複数回印刷するマルチパス方式により前記メディア上に前記第1の画像及び前記第2の画像を印刷する制御部と、
を備え、
前記第2の画像は前記副走査方向において前記第1の画像の下流に配置され、
前記第1の画像は前記副走査方向に沿って所定幅毎に第1から第N1(N1は2以上の整数)の分割画像に分割され、
前記第1の画像の第1から第N1の前記分割画像はそれぞれ前記メディア上の第1から第N1の第1画像印刷領域にP(Pは2以上)回のパス数で印刷され、
前記第2の画像は前記副走査方向に沿って前記所定幅毎に第1から第N2(N2は2以上の整数)の分割画像に分割され、
前記第2の画像の第1から第N2の前記分割画像はそれぞれ前記メディア上の第1から第N2の第2画像印刷領域にP回のパス数で印刷され、
前記制御部は、
(i)前記インクジェットヘッドを前記副走査方向に前記所定幅に応じた所定距離だけ前記メディアに対して相対的に移動させて、前記インクジェットヘッドが第N1の前記第1画像印刷領域を含む1つ以上の前記第1画像印刷領域に印刷可能であり且つ第1の前記第2画像印刷領域に印刷可能ではない位置とし、その後、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に沿って前記メディアに対して相対的に移動させ、この過程で、前記1つ以上の前記第1画像印刷領域にそれぞれ対応する前記第1の画像の前記分割画像を1回だけパスマスクを適用して印刷する第1印刷工程であって、前記副走査方向への移動後に前記インクジェットヘッドが第1の前記第2画像印刷領域に印刷可能な位置となるまで繰り返される第1印刷工程と、
(ii)前記インクジェットヘッドを前記副走査方向に前記所定距離だけ前記メディアに対して相対的に移動させて、前記インクジェットヘッドが第N1の前記第1画像印刷領域を含む1つ以上の前記第1画像印刷領域及び第1の前記第2画像印刷領域を含む1つ以上の前記第2画像印刷領域に印刷可能な位置とし、その後、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に沿って前記メディアに対して相対的に移動させ、この過程で、前記1つ以上の前記第1画像印刷領域にそれぞれ対応する前記第1の画像の前記分割画像を1回だけパスマスクを適用して印刷し且つ前記1つ以上の前記第2画像印刷領域にそれぞれ対応する前記第2の画像の前記分割画像を1回だけパスマスクを適用して印刷する第2印刷工程であって、前記副走査方向への移動後に前記インクジェットヘッドが第N1の前記第1画像印刷領域に印刷可能ではない位置となるまで繰り返される第2印刷工程と、
(iii)前記インクジェットヘッドを前記副走査方向に前記所定距離だけ前記メディアに対して相対的に移動させて、前記インクジェットヘッドが第1の前記第2画像印刷領域を含む1つ以上の前記第2画像印刷領域に印刷可能であり且つ第N1の前記第1画像印刷領域に印刷可能ではない位置とし、その後、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に沿って前記メディアに対して相対的に移動させ、この過程で、前記1つ以上の前記第2画像印刷領域にそれぞれ対応する前記第2の画像の前記分割画像を1回だけパスマスクを適用して印刷する第3印刷工程と、
を備える方法を実行するように前記印刷装置を制御する、
印刷装置。
【請求項7】
第N1の前記第1画像印刷領域と第1の前記第2画像印刷領域との間の距離は、前記所定距離の正整数倍である、
請求項6に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式の印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタはマルチパス印刷を行える。例えば、こうしたマルチパス印刷では、図8に示すように、メディアを副走査方向に所定幅ずつ送りながら、インクジェットヘッドを主走査方向に移動させて、この移動毎に、メディア上にあるパス数に等しい数の帯状領域(バンド)に画像の対応する部分を適切なパスマスクを適用して印刷する。図8(j)に示すように、最終的に、メディア上の各領域には画像の対応する部分がパス数回にわたり適切なパスマスクを適用して印刷され、完全な画像が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、こうしたマルチパス印刷では、図8(a)~(d)に示すように、画像の上部を印刷する場合に、副走査方向においてインクジェットヘッドの一部が画像を印刷する領域の上端からはみ出る。また、同様に、図8(h)~(j)に示すように、画像の下部を印刷する場合に、副走査方向においてインクジェットヘッドの一部が画像を印刷する領域の下端からはみ出る。このため、従来のマルチパス印刷では、メディア上の画像が印刷される領域の上下の部分には印刷を行うことができない空白領域が生じる。特に、同じメディア上で複数の画像を連続してマルチパス方式で印刷する場合は、各画像の間にこの空白領域が生じてしまい、メディアの無駄が多い。
【0004】
以上を鑑み、本発明は、メディアの無駄が少ないインクジェット方式の印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の観点に係るインクジェット方式の印刷装置は、
主走査方向にメディアに対して相対的に移動しつつ放射線の照射により硬化する放射線硬化型インクジェットインクのインク滴を前記メディアに向けて吐出する主走査動作と、前記主走査方向と直交する副走査方向に前記メディアに対して相対的に移動する副走査動作とを行うインクジェットヘッドと、
前記メディア上に着弾した前記インク滴に前記放射線を照射して硬化させる放射線照射部であって、前記副走査方向に並んでおり且つ独立して制御可能な複数の放射線照射装置を備える放射線照射部と、
を備え、
前記インクジェットヘッドは、前記副走査動作を行いながら、前記メディア上の被印刷領域内の各位置に対してパス数回の前記主走査動作を行うことで、前記メディアに画像をマルチパス方式で印刷し、この過程で、前記副走査方向において前記画像の終端が印刷される前記被印刷領域の終端に前記インクジェットヘッドが印刷可能な位置に前記インクジェットヘッドが達すると、前記副走査動作での前記副走査方向への移動を停止し、前記被印刷領域のうち前記画像の対応する部分が完成していない領域内の各位置に対して前記パス数に達するまで前記主走査動作を行い、
前記放射線照射部は、前記被印刷領域のうち前記画像の対応する部分が完成していない領域内の各位置に対して前記パス数に達するまで前記主走査動作を行う際に、当該領域の各位置に照射される前記放射線の積算量間の差が、前記主走査動作中に前記放射線照射装置のすべてを所定の光量で点灯させていた場合の当該領域内の各位置での前記放射線の積算量間の差より小さくなるように、各前記放射線照射装置を独立して制御して、当該放射線照射装置から前記放射線を前記メディアに照射する、
ことを特徴とする。
【0006】
以上の構成によれば、メディア上の画像が印刷された領域の下の部分に印刷を行うことのできない空白領域は生じない。このため、メディアを無駄なく有効利用できる。
【0007】
本発明の第2の観点に係るインクジェット方式の印刷装置は、
メディア上に画像を印刷するインクジェット方式の印刷装置であって、
主走査方向及び前記主走査方向に直交する副走査方向に前記メディアに対して相対的に移動可能であり、放射線の照射により硬化する放射線硬化型インクジェットインクを前記メディアに塗布するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに追従して移動可能であり、前記メディア上に塗布された前記放射線硬化型インクジェットインクに前記放射線を照射して硬化させる放射線照射部と、
前記インクジェットヘッド及び前記放射線照射部を制御して、前記メディア上の複数の領域のそれぞれに前記画像の対応する部分を複数回印刷するマルチパス方式により前記メディア上に前記画像を印刷する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記インクジェットヘッド及び前記放射線照射部を制御して、
(i)前記複数の領域のうち前記副走査方向において最上流にある領域及び最下流にある領域の一方又は両方を除く領域に前記画像を印刷する場合は、前記インクジェットヘッドを前記副走査方向に前記メディアに対して相対的に所定距離ずつ移動させ、前記副走査方向への前記所定距離の移動毎に、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に前記メディアに対して相対的に移動させながら、前記インクジェットヘッドに前記メディアへ前記放射線硬化型インクジェットインクを塗布させ、これを繰り返すことにより、前記メディア上に前記画像の一部を前記マルチパス方式により印刷し、
(ii)前記複数の領域のうち前記最上流にある領域及び前記副走査方向においてその下流にある1つ以上の領域、又は、前記複数の領域のうち前記最下流にある領域及び前記副走査方向においてその上流にある1つ以上の領域に前記画像を印刷する場合は、前記副走査方向における前記メディアに対する前記インクジェットヘッドの位置を維持しつつ、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に前記メディアに対して相対的に複数回移動させながら、前記インクジェットヘッドに前記メディアへ前記放射線硬化型インクジェットインクを塗布させ、これにより、前記メディア上に前記画像の残部を前記マルチパス方式により印刷し、
(iii)前記インクジェットヘッドが前記画像の前記一部及び前記残部を前記メディア上に印刷する過程で、前記放射線照射部を前記インクジェットヘッドに追従して移動させ、前記放射線照射部の移動中に前記放射線照射部から前記放射線を照射可能な前記複数の領域のそれぞれに、当該領域に前記画像の対応する部分が最初に印刷されてから前記メディアへの前記画像全体の印刷が完了するまでの間に前記放射線照射部から当該領域へ照射された前記放射線の積算量が前記複数の領域のうち他の領域での積算量の100%以上175%未満となるように、前記放射線照射部から前記放射線を照射させる、
ことを特徴とする。
【0008】
以上の構成によれば、メディア上の画像が印刷された領域の上及び/又は下の部分に印刷を行うことのできない空白領域は生じない。このため、メディアを無駄なく有効利用できる。
【0009】
前記放射線照射部は複数の放射線照射装置を備え、
前記放射線照射装置は独立して前記放射線を照射するかしないかを制御可能であり、
前記制御部は、前記放射線照射装置のそれぞれについて、前記放射線照射部の移動中に当該放射線照射装置から前記放射線を照射可能な前記複数の領域の全てに前記画像の対応する部分が所定のパス数に等しい回数だけ前記マルチパス方式で印刷されているわけではないなら、当該領域全てに前記放射線照射装置から前記放射線を照射させる、
こととしてもよい。
【0010】
以上の構成によれば、メディア上の画像が印刷された領域の上及び/又は下の部分に印刷を行うことのできない空白領域は生じない。このため、メディアを無駄なく有効利用できる。
【0011】
前記画像は前記副走査方向に沿って前記所定距離に応じた所定幅毎に第1から第N(Nは2以上の整数)の分割画像に分割され、
第1から第Nの前記分割画像はそれぞれ前記メディア上の第1から第Nの前記領域にP(Pは2以上且つN以下の整数)回のパス数で印刷され、
前記制御部は、
(i)前記インクジェットヘッドが第1から第Pの前記領域に印刷可能な前記副走査方向の位置で、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に沿って前記メディアに対して相対的に複数回にわたり移動させ、この過程で、第1から第Pの前記分割画像をそれぞれP回から1回だけ対応する第1から第Pの前記領域上にパスマスクを適用して印刷する第1印刷工程、又は(ii)前記インクジェットヘッドが第N-P+1から第Nの前記領域に印刷可能な前記副走査方向の位置で、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に沿って前記メディアに対して相対的に複数回にわたり移動させ、この過程で、第N-P+1から第Nの前記分割画像をそれぞれ1回からP回だけ対応する第N-P+1から第Nの前記領域上にパスマスクを適用して印刷する第2印刷工程と、
前記インクジェットヘッドを前記副走査方向に前記所定距離だけ前記メディアに対して相対的に移動させて、前記インクジェットヘッドが1つ以上の前記領域に印刷可能な前記副走査方向の位置とし、その後、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に沿って前記メディアに対して相対的に移動させ、この過程で、前記1つ以上の前記領域にそれぞれ対応する前記分割画像を1回だけパスマスクを適用して印刷する第3印刷工程であって、第N-1の前記分割画像を第N-1の前記領域上に最初に印刷するまで繰り返される第3印刷工程と、
前記第1印刷工程、前記第2印刷工程、及び前記第3印刷工程と並行して、前記放射線照射部がP個の前記領域に放射線を照射可能な状態で、前記放射線照射部を前記インクジェットヘッドに追従して移動させ、この過程で、前記インクジェットヘッドにより印刷中の前記領域には前記放射線照射部から前記放射線を照射し、その他の前記領域には前記放射線照射部から前記放射線を照射しない放射線放射工程と、
を備える方法を実行するように前記印刷装置を制御する、
こととしてもよい。
【0012】
以上の構成によれば、メディア上の画像が印刷された領域の上及び/又は下の部分に印刷を行うことのできない空白領域は生じない。このため、メディアを無駄なく有効利用できる。
【0013】
前記メディアは原反状の連続シートであり、
前記メディア上に前記画像を印刷した後に、前記副走査方向において前記メディア上の前記画像の下流にさらなる画像が印刷される、
こととしてもよい。
【0014】
以上の構成によれば、メディア上に印刷された2つの画像の間の隙間を狭くしつつ、メディアを画像毎に切断する場合など作業領域を確保できる。このため、メディアを無駄なく有効利用できる。
【0015】
本発明の第3の観点に係るインクジェット方式の印刷装置は、
メディア上に第1の画像及び第2の画像を印刷するインクジェット方式の印刷装置であって、
前記印刷装置は、
主走査方向及び前記主走査方向に直交する副走査方向に前記メディアに対して相対的に移動可能であり、放射線の照射により硬化する放射線硬化型インクジェットインクを前記メディアに塗布するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドを制御して、前記メディア上の複数の領域のそれぞれに前記第1の画像及び前記第2の画像の対応する部分を複数回印刷するマルチパス方式により前記メディア上に前記第1の画像及び前記第2の画像を印刷する制御部と、
を備え、
前記第2の画像は前記副走査方向において前記第1の画像の下流に配置され、
前記第1の画像は前記副走査方向に沿って所定幅毎に第1から第N1(N1は2以上の整数)の分割画像に分割され、
前記第1の画像の第1から第N1の前記分割画像はそれぞれ前記メディア上の第1から第N1の第1画像印刷領域にP(Pは2以上)回のパス数で印刷され、
前記第2の画像は前記副走査方向に沿って前記所定幅毎に第1から第N2(N2は2以上の整数)の分割画像に分割され、
前記第2の画像の第1から第N2の前記分割画像はそれぞれ前記メディア上の第1から第N2の第2画像印刷領域にP回のパス数で印刷され、
前記制御部は、
(i)前記インクジェットヘッドを前記副走査方向に前記所定幅に応じた所定距離だけ前記メディアに対して相対的に移動させて、前記インクジェットヘッドが第N1の前記第1画像印刷領域を含む1つ以上の前記第1画像印刷領域に印刷可能であり且つ第1の前記第2画像印刷領域に印刷可能ではない位置とし、その後、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に沿って前記メディアに対して相対的に移動させ、この過程で、前記1つ以上の前記第1画像印刷領域にそれぞれ対応する前記第1の画像の前記分割画像を1回だけパスマスクを適用して印刷する第1印刷工程であって、前記副走査方向への移動後に前記インクジェットヘッドが第1の前記第2画像印刷領域に印刷可能な位置となるまで繰り返される第1印刷工程と、
(ii)前記インクジェットヘッドを前記副走査方向に前記所定距離だけ前記メディアに対して相対的に移動させて、前記インクジェットヘッドが第N1の前記第1画像印刷領域を含む1つ以上の前記第1画像印刷領域及び第1の前記第2画像印刷領域を含む1つ以上の前記第2画像印刷領域に印刷可能な位置とし、その後、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に沿って前記メディアに対して相対的に移動させ、この過程で、前記1つ以上の前記第1画像印刷領域にそれぞれ対応する前記第1の画像の前記分割画像を1回だけパスマスクを適用して印刷し且つ前記1つ以上の前記第2画像印刷領域にそれぞれ対応する前記第2の画像の前記分割画像を1回だけパスマスクを適用して印刷する第2印刷工程であって、前記副走査方向への移動後に前記インクジェットヘッドが第N1の前記第1画像印刷領域に印刷可能ではない位置となるまで繰り返される第2印刷工程と、
(iii)前記インクジェットヘッドを前記副走査方向に前記所定距離だけ前記メディアに対して相対的に移動させて、前記インクジェットヘッドが第1の前記第2画像印刷領域を含む1つ以上の前記第2画像印刷領域に印刷可能であり且つ第N1の前記第1画像印刷領域に印刷可能ではない位置とし、その後、前記インクジェットヘッドを前記主走査方向に沿って前記メディアに対して相対的に移動させ、この過程で、前記1つ以上の前記第2画像印刷領域にそれぞれ対応する前記第2の画像の前記分割画像を1回だけパスマスクを適用して印刷する第3印刷工程と、
を備える方法を実行するように前記印刷装置を制御する、
ことを特徴とする。
【0016】
以上の構成によれば、メディア上に印刷された2つの画像の間の隙間を狭くする又は隙間をなくすことができる。このため、メディアを無駄なく有効利用できる。
【0017】
第N1の前記第1画像印刷領域と第1の前記第2画像印刷領域との間の距離は、前記所定距離の正整数倍である、
こととしてもよい。
【0018】
以上の構成によれば、メディア上に印刷された2つの画像の間の隙間を狭くしつつ、メディアを画像毎に切断する場合など作業領域を確保できる。このため、メディアを無駄なく有効利用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、メディアを無駄なく有効活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態のインクジェットプリンタの全体図である。
図2図1の装置本体内の構成を示すブロック図である。
図3】(a)及び(b)は本発明の一実施形態のインクジェットヘッド及び紫外線照射装置の模式図である。
図4】(a)~(e)は本発明の一実施形態のマルチパス印刷で画像の上部を印刷する場合のメディアの模式図である。
図5】(a)~(c)は本発明の一実施形態のマルチパス印刷で画像の上部から下部を印刷する場合のメディアの模式図である。
図6】(a)~(e)は本発明の一実施形態のマルチパス印刷で画像の下部を印刷する場合のメディアの模式図である。
図7】(a)~(g)は本発明の一実施形態のマルチパス印刷で画像を連続して印刷する場合のメディアの模式図である。
図8】(a)~(j)は従来のマルチパス印刷で画像を印刷する場合のメディアの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るインクジェットプリンタ10について説明する。インクジェットプリンタ10は、紫外線硬化型インクジェットインクでメディアMに画像を所定のパス数Pのマルチパス方式で印刷する。以下では、パス数Pを4とした場合について説明する。
【0022】
(インクジェットプリンタ10の構成)
インクジェットプリンタ10は、図1に示す外観を有し、インクジェット方式によりメディアMに画像を印刷する。メディアMは、例えば、紙、又は、布帛などのシート材、例えば、原反状の連続シート、又は、アクリル板などの板状メディアである。インクジェットプリンタ10は、装置本体11及び架台12を備える。装置本体11は、メディアMに画像を印刷する部分であり、架台12により支持されている。
【0023】
装置本体11は、メディアMを支持するプラテン110を備える。さらに、装置本体11は、その内部に、インクジェットヘッド120と、インク供給機構130と、移動機構140と、送り機構150と、紫外線照射部160と、入出力部180と、コントローラ190と、を備える(図2も参照)。
【0024】
インクジェットヘッド120は、画像を印刷するときに、印刷用のインクのインク滴をメディアMにインクジェット方式(ピエゾ方式とサーマルヘッド方式とのいずれでもよい)で吐出する。印刷用のインクは、例えば、YMCKそれぞれのインクである。インクジェットヘッド120は、図3に示すように、後述のインク供給機構130を介してインク貯蔵部から送られてきたインクを吐出する複数のノズルからなるノズル配列121を備える。ノズル配列121では、副走査方向に沿って所定個数のノズルが等間隔で整列したノズル列の複数が主走査方向に沿って等間隔に整列している。ノズル配列121は、後述するように、副走査方向に沿って幅W毎にノズル副配列121N~121Nに分けて制御される。
【0025】
インク供給機構130は、インク供給路を有し、インク供給路により、インク貯蔵部、例えばインクボトル又はインクカートリッジ内のインクをインクジェットヘッド120に供給する。
【0026】
移動機構140は、インクジェットヘッド120及び後述の紫外線照射部160を、右左方向である主走査方向に沿って移動させる。移動機構140は、インクジェットヘッド120及び紫外線照射部160が搭載されているキャリッジ141と、キャリッジ141の左右方向への移動を案内するガイドレールと、を備える。さらに、移動機構140は、キャリッジ141が固定された駆動ベルトと、駆動ベルトが掛けまわされた駆動プーリ及び従動プーリと、駆動プーリを回転される駆動モータと、を備える。駆動モータの回転により、駆動ベルトが回転し、キャリッジ141が左右方向に移動する。
【0027】
送り機構150は、メディアMを手前奥方向である副走査方向に送るための機構である。送り機構150は、駆動モータと、駆動モータにより回転する駆動ローラと、複数のピンチローラと、を備える。駆動ローラと複数のピンチローラとによりメディアMは挟まれ、駆動ローラの回転により、メディアMは副走査方向に送られる。
【0028】
紫外線照射部160は、キャリッジ上で、主走査方向においてインクジェットヘッド120の下流に配置されており、図3に示すように、メディアM上に塗布された紫外線硬化型インクジェットインクのインク滴Jにより形成された画像Iに紫外線を照射する。紫外線照射部160は、P個の紫外線照射装置161L~Lを備える。キャリッジ141上で、紫外線照射装置161L~Lはそれぞれ主走査方向の一方向(図では右から左の方向)におけるノズル副配列121N~121Nの下流に配置されている。紫外線照射装置161L~Lは、独立して紫外線を照射するかしないかを制御可能であり、それぞれが副走査方向に幅Wにわたって所定光量の紫外線を照射する。紫外線照射装置161L~Lは、例えば、紫外線発光ダイオードである。
【0029】
入出力部180は、コントローラ190による制御のもとで、各種画像を表示するとともに、ユーザ(オペレータ等を含む)からの操作入力を受け付ける。入出力部180は、例えば、タッチパネルからなる。入出力部180により表示される各種画像には、ユーザからの操作入力を受け付けるための操作部(操作ボタン等)を表す画像が含まれる。入出力部180は、液晶モニタ等の表示部と、操作スイッチなどの操作部と、から構成されてもよい。
【0030】
コントローラ190は、インクジェットプリンタ10全体を制御する。コントローラ190は、例えば、プログラムにより動作するマイクロコンピュータ等の各種コンピュータにより構成される。また、コントローラ190は、外部のホストコンピュータ等と通信可能となっており、当該コントローラ190には画像データが供給される。
【0031】
コントローラ190は、図2に示すように、記憶部191と、印刷実行部192と、紫外線照射実行部193と、を備える。
【0032】
記憶部191は、HDD(Hard Disk Drive)、又は、SSD(Solid State Drive)などの各種の記憶装置により構成されている。記憶部191は、制御部190により実行されるプログラムや当該プログラムの実行時に使用される各種の設定値を記憶している。記憶部191は、後述のプロセッサのメインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)を有してもよい。
【0033】
印刷実行部192、紫外線照射実行部193は、それぞれ、例えば、記憶部191が記憶しているプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の各種プロセッサからなる。
【0034】
(第1の実施形態に係るマルチパス印刷)
印刷実行部192は、インクジェットプリンタ10の外部(ホストコンピュータなど)から供給される画像データDを受け取ると、当該画像データが表す画像Iの印刷を開始する。後述するように、最終的に、画像Iは副走査方向に幅W毎に分割画像I~Iとして分割され、分割画像I~Iがそれぞれ副走査方向に連続するメディアM上の帯状領域B~Bに4パスで印刷される。各領域B~Bは副走査方向において幅Wを有する。以下では、画像Iにおいて、分割画像Iがある側を上部、分割画像Iがある側を下部として説明を行う。
【0035】
(画像データの処理)
印刷実行部192は、領域B~Bにそれぞれが印刷されるように、画像データDを幅Wに応じてN個の分割画像データD~Dに分割する。さらに、印刷実行部192は、以下で説明する第1~第3印刷工程において、ある領域Bに分割画像Iを最初に印刷するときには、第1のパスマスクを分割画像データDに適用し、領域Bに分割画像Iを2回目に印刷するときには、第2のパスマスクを分割画像データDに適用し、領域Bに分割画像Iを3回目に印刷するときには、第3のパスマスクを分割画像データDに適用し、領域Bに分割画像Iを4回目に印刷するときには、第4のパスマスクを分割画像データDに適用する。第1~第4のパスマスクは、それぞれ、同じ画素領域のうち重複なく異なる25%の画素の印刷を許容する。従って、ある領域Bに分割画像Iを第1~第4のパスマスクを適用して合計で4回印刷すると(すなわち、4パスで印刷すると)、完全な分割画像Iが得られる。以降の説明で、印刷実行部192がある領域Bに分割画像Iをパスマスクを適用して印刷するとは、印刷実行部192が、その印刷により領域Bに分割画像Iが印刷されるのが何回目であるかに応じて第1~第4のパスマスクから上述のようにパスマスクを選択し、そのパスマスクを分割画像データDに適用し、そして、パスマスクが適用された後の分割画像データDに基づいて所定のノズルを制御して印刷を行うことを意味する。
【0036】
(第1印刷工程:画像の上部の印刷)
まず、印刷実行部192は、図4(a)に示すように、移動機構140と送り機構150とを制御し、走査開始位置である領域B~Bの右端にインクジェットヘッド120の左端のノズル列が位置するようにキャリッジ141をメディアMに対して相対的に移動させる。その後、印刷実行部192は、図4(b)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に(図では右から左に)紫外線照射部160の右端が領域B~Bの左端に位置する走査終了位置まで一定の所定速度で移動させながら、分割画像データD~Dに基づいてノズル副配列121N~Nを制御してこれらのノズルからメディアM上にインクを吐出することで分割画像I~Iをそれぞれ領域B~Bにパスマスクを適用して印刷する。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向に(図では左から右に)メディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0037】
次に、印刷実行部192は、図4(c)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向走査終了位置まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データD~Dにそれぞれ基づいてノズル副配列121N~Nを制御して分割画像I~Iをそれぞれ領域B~Bにパスマスクを適用して印刷する。一方、この間、印刷実行部192は、ノズル副配列121Nを制御してこれらのノズルからはインクを吐出させない。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0038】
次に、印刷実行部192は、図4(d)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に走査終了位置まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データD及びDにそれぞれ基づいてノズル副配列121N及びNを制御して分割画像I及びIをそれぞれ領域B及びBにパスマスクを適用して印刷する。一方、この間、印刷実行部192は、ノズル副配列121N及びNを制御してこれらのノズルからはインクを吐出させない。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0039】
次に、印刷実行部192は、図4(e)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に走査終了位置まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データDに基づいてノズル副配列121Nを制御して分割画像Iを領域Bにパスマスクを適用して印刷する。一方、この間、印刷実行部192は、ノズル副配列121N~Nを制御してこれらのノズルからはインクを吐出させない。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0040】
以上の第1印刷工程により、図4(e)に示すように、領域Bには分割画像Iが4回、領域Bには分割画像Iが3回、領域Bには分割画像Iが2回、領域Bには分割画像Iが1回、パスマスクを適用して印刷されることになる。
【0041】
(第2印刷工程:画像の上部から下部にかけての印刷)
次に、印刷実行部192は、送り機構150を駆動してメディアMを副走査方向に幅Wだけ送る。これにより、図5(a)に示すように、インクジェットヘッド120は新たな走査開始位置である領域B~Bの右端に位置することとなる。その後、印刷実行部192は、図5(b)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に新たな走査終了位置である領域B~Bの左端まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データD~Dにそれぞれ基づいてノズル副配列121N~Nを制御して分割画像I~Iをそれぞれ領域B~Bにパスマスクを適用して印刷する。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0042】
以降、印刷実行部192は、上述の動作を、印刷対象である副走査方向に連続する4つの分割画像データとこれらに対応する連続する4つの領域とを1つずつ画像Iの下部に向けてずらしながら、領域BN-1に画像IN-1を最初にパスマスクを適用して印刷するまで繰り返す。
【0043】
以上の第2印刷工程により、図5(c)に示すように、領域B~BN-4にはそれぞれ分割画像I~IN-4が4回、領域BN-3には分割画像IN-3が3回、領域BN-2には分割画像IN-2が2回、領域BN-1には分割画像IN-1が1回、パスマスクを適用して印刷されることになる。
【0044】
(第3印刷工程:画像の下部の印刷)
印刷実行部192は、図6(a)に示すように、移動機構140と送り機構150とを制御し、新たな走査開始位置である領域BN-3~Bの右端にインクジェットヘッド120の左端のノズル列が位置するようにキャリッジ141をメディアMに対して相対的に移動させる。その後、印刷実行部192は、図6(b)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に新たな走査終了位置である領域BN-3~Bの左端まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データDN-3~Dにそれぞれ基づいてノズル副配列121N~Nを制御してこれらのノズルからメディアM上にインクを吐出することで分割画像IN-3~Iをそれぞれ領域BN-3~Bにパスマスクを適用して印刷する。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0045】
次に、印刷実行部192は、図6(c)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に走査終了位置まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データDN-2~Dにそれぞれ基づいてノズル副配列121N~Nを制御してこれらのノズルからメディアM上にインクを吐出することで分割画像IN-2~Iをそれぞれ領域BN-2~Bにパスマスクを適用して印刷する。一方、この間、印刷実行部192は、ノズル副配列121Nを制御してこれらのノズルからはインクを吐出させない。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0046】
次に、印刷実行部192は、図6(d)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に走査終了位置まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データDN-1及びDにそれぞれ基づいてノズル副配列121N及びNを制御してこれらのノズルからメディアM上にインクを吐出することで分割画像IN-1及びIをそれぞれ領域BN-1及びBにパスマスクを適用して印刷する。一方、この間、印刷実行部192は、ノズル副配列121N及びNを制御してこれらのノズルからはインクを吐出させない。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0047】
次に、印刷実行部192は、図6(e)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に走査終了位置まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データDに基づいてノズル副配列121Nを制御してこれらのノズルからメディアM上にインクを吐出することで分割画像Iを領域Bにパスマスクを適用して印刷する。一方、この間、印刷実行部192は、ノズル副配列121N~Nを制御してこれらのノズルからはインクを吐出させない。
【0048】
以上の第3印刷工程により、図6(e)に示すように、領域B~Bにはそれぞれ分割画像I~Iが4回パスマスクを適用して印刷されることになる。すなわち、完全な画像IがメディアM上に印刷される。
【0049】
(紫外線照射工程)
第1~第3印刷工程において、紫外線照射部160の紫外線照射装置161L~Lはそれぞれ主走査方向の一方向におけるノズル副配列121N~121Nの下流に配置されているため、紫外線照射装置161L~Lはそれぞれノズル副配列121N~121Nに追従して移動する。紫外線照射実行部193は、第1~第3印刷工程においてキャリッジ141が走査開始位置から走査終了位置まで主走査方向の一方向に移動されている間に、紫外線照射装置161Lを制御して、ノズル副配列121Nがある領域Bへの分割画像Iの印刷に使用される場合は、紫外線照射装置161Lをオンにして(すなわち、点灯させて)紫外線照射装置161Lから当該領域B上に印刷された分割画像Iに所定光量の紫外線を照射し、ノズル副配列121Nが当該領域Bへの分割画像Iの印刷に使用されていない場合は、紫外線照射装置161Lをオフにして(すなわち、消灯させて)紫外線照射装置161Lから当該領域B上に印刷された分割画像Iに紫外線を照射しない。また、紫外線照射実行部193は、第1~第3印刷工程において紫外線照射装置161L~Lも同様に制御する。
【0050】
以上の紫外線照射工程により、印刷物の製造中に領域B~Bに印刷された分割画像I~Iにはそれぞれ4回の走査に対応する時間だけ所定光量の紫外線が照射されることとなり、印刷物の製造中に領域B~Bに印刷された分割画像I~Iに紫外線照射部160から照射された紫外線の積算量は互いに実質的に等しくなる。例えば、キャリッジ141を移動させる際の前述の所定速度をX、主走査方向における紫外線照射装置161Lの幅をY、紫外線照射装置161Lの単位時間・単位面積当たりの照射光量をZとすれば、印刷物の製造中に、ある領域Bに印刷された分割画像Iに紫外線照射部160から照射された紫外線の単位面積当たり積算光量は4×(Y/X)×Zとなる。
【0051】
(第1の実施形態の効果)
従来のマルチパス印刷では、メディア上の画像が印刷された領域の上下の部分には印刷を行うことができない空白領域が生じる。例えば、第1の実施形態のインクジェットプリンタ10を用いて4パスで従来のマルチパス印刷を行う場合、領域Bに画像Iの上部の分割画像I~Iを4パスで印刷するためには、図8(a)~(e)に示すように、副走査方向においてインクジェットヘッド120のノズル副配列N~Nが領域Bの上端からはみ出した状態で1回(図8(a)、(b))、副走査方向においてインクジェットヘッド120のノズル副配列N及びNが領域Bの上端からはみ出した状態で1回(図8(c))、副走査方向においてインクジェットヘッド120のノズル副配列Nが領域Bの上端からはみ出した状態で1回(図8(d))、こうしたインクジェットヘッド120のはみ出しがない状態で1回(図8(e))の、合計4回の走査が必要となる。このとき、はみ出したノズル副配列N~Nは印刷に使用されない。従って、図8(a)に示すように、副走査方向において領域Bの上にある幅3Wの領域には印刷を行うことができない空白領域が生じる。同様に、図8(j)に示すように、領域Bに画像Iの下部である分割画像IN-2~Iを4パスで印刷する場合、副走査方向において領域Bの下にある幅3Wの領域には空白領域が生じる。
【0052】
一方、第1の実施形態の第1印刷工程では、領域Bに画像Iの上部である分割画像I~Iを4パスで印刷する場合、図4(a)~(e)に示すように、副走査方向においてインクジェットヘッド120のノズル副配列N~Nは領域Bの上端からはみ出ないので、副走査方向において領域Bの上に空白領域は生じない。同様に、第1の実施形態の第3印刷工程では、領域Bに画像Iの下部である分割画像IN-2~Iを4パスで印刷する場合、図6(a)~(d)に示すように、副走査方向においてインクジェットヘッド120のノズル副配列N~Nは領域Bの下端からはみ出ないので、副走査方向において領域Bの下に空白領域は生じない。このため、メディアを無駄なく有効利用できる。特に、高価なメディア、例えば、アクリル板などの板状メディアを無駄なく利用できるため、こうしたメディアを用いた印刷を安価に行える。
【0053】
また、紫外線硬化型インクジェットプリンタを用いて従来のマルチパス印刷を行う場合、印刷中の紫外線照射装置は、常にオンであり、紫外線をメディアに照射し続けている。これと同様に、発明者等が予備実験で、第1の実施形態の第1印刷工程及び第3印刷工程で、印刷中の紫外線照射装置を常にオンとしたところ、領域B~B、BN-3~Bに印刷された画像においてこれらの領域のうち隣接する領域の境界上にすじが観察されたり、全ての領域に同じ画像が印刷されても(例えば、全領域が単色で印刷されても)、領域B~Bに印刷された分割画像I~Iの間、領域BN-3~Bに印刷された分割画像IN-3~Iの間、及び領域B~B、BN-3~Bに印刷された分割画像I~I、IN-3~Iとその他の領域に印刷された分割画像との間で、色合いや光沢が異なってしまうことがあった。この理論に本発明が拘束されることを必ずしも望むわけではないが、こうした問題は、領域B~B毎の積算紫外線照射量、特に、領域B~B、BN-3~Bのそれぞれの積算紫外線照射量が、互いに異なり、そのため、領域ごとに塗布されたインクの硬化の程度が異なるためであると考えられた。そこで、第1の実施形態の紫外線照射工程のように各領域での紫外線照射強度を揃えてやると、前述の問題は解消した。
【0054】
(変形例1)
第1の実施形態では、インクジェットプリンタ10を採用しているが、この代わりに、マルチパス印刷を実行可能な任意のインクジェット方式の印刷装置を採用できる。
【0055】
例えば、インクジェットプリンタ10の、インクジェットヘッド120と、インク供給機構130と、移動機構140と、送り機構150と、の各機構は、上述の実施形態以外の構成でもよい。これら各機構は、公知の構成でよい。例えば、メディアMが板状メディアである場合、フラットベッド型インクジェットプリンタを用いてもよい。
【0056】
移動機構140は、主走査方向に沿ってインクジェットヘッド120をメディアMに対して相対的に移動させるのであれば任意の移動機構を採用できる。例えば、移動機構140の代わりに、インクジェットヘッド120の位置を固定した状態でメディアMを主走査方向に沿って移動させる移動機構を採用してもよい。
【0057】
送り機構150は、副走査方向に沿ってインクジェットヘッド120をメディアMに対して相対的に移動させるのであれば任意の送り機構を採用できる。例えば、送り機構150の代わりに、メディアMの位置を固定した状態でインクジェットヘッド120を副走査方向の一方向に幅Wずつ移動させる送り機構を採用してもよい。
【0058】
紫外線照射部160には、第1印刷工程、第2印刷工程、及び第3印刷工程と並行して、紫外線照射部160がP個の領域B~Bに紫外線を照射可能な状態で、インクジェットヘッド120に追従して移動し、領域B~B毎に紫外線の照射の有無を制御できるのであれば、任意の紫外線照射装置を採用できる。例えば、紫外線照射部160は、複数の紫外線発光ダイオードを含み、紫外線照射工程では、ノズル副配列N~Nが印刷に使用されている場合に、副走査方向における使用中のノズル副配列の下流にある紫外線発光ダイオードをオンにし、その他の紫外線発光ダイオードをオフにすることとしてもよい。
【0059】
第1の実施形態では、紫外線照射部160を移動させる機構は、インクジェットヘッド120と同じく移動機構140であるが、紫外線照射部160をインクジェットヘッド120に追従して移動させるのであれば任意の移動機構を採用できる。また、紫外線照射部160を移動させる機構は、インクジェットヘッド120を移動させる移動機構140と独立していてもよい。例えば、紫外線照射部160は、キャリッジ141とは異なるキャリッジ上に配置され、このキャリッジが移動機構140とは独立した別の移動機構により駆動されてもよい。
【0060】
また、紫外線硬化型インクジェットインクの代わりに、任意の放射線の照射により硬化するインクジェットインクを採用してもよい。この場合、紫外線照射部160の代わりに、インクの硬化に必要な放射線を照射する放射線照射部を用いる。こうした放射線としては、紫外線の他に、電子線、可視光、赤外線などが挙げられる。
【0061】
また、第1の実施形態では、キャリッジ141上に1つのインクジェットヘッド120のみを搭載するが、この代わりに、複数のインクジェットヘッド120を搭載してもよい。この場合、1つのインクジェットヘッド120が1つの帯状領域を形成するように、1つ以上のインクジェットヘッド120のノズルを制御してもよい。この場合、キャリッジ141上で主走査方向の一方向における各インクジェットヘッド120の下流に紫外線照射装置を設けてもよい。
【0062】
(変形例2)
第1の実施形態では、主走査方向の一方向にインクジェットヘッド120を移動させる間に所定の1つ以上の分割画像をパスマスクを適用して印刷し、その後、次の分割画像の印刷のために主走査方向の他方向に向けてインクジェットヘッド120を移動させるが、この代わりに、主走査方向の一方向にインクジェットヘッド120を移動させる間に所定の分割画像をパスマスクを適用して印刷し、その後、主走査方向の他方向に向けてインクジェットヘッド120を移動させる間に次の分割画像をパスマスクを適用して印刷し、以降、これを繰り返すこととしてもよい。
【0063】
この場合、キャリッジ141上で主走査方向の一方向におけるノズル副配列121Nの上流及び下流にそれぞれ紫外線照射装置161Lが配置されてもよい。同様に、キャリッジ141上で主走査方向の一方向におけるノズル副配列121N、N、及びNのそれぞれの上流及び下流に一組の紫外線照射装置161L、一組の紫外線照射装置161L、及び一組の紫外線照射装置161Lが配置されてもよい。そして、紫外線照射工程では、紫外線照射実行部193は、第1~第3印刷工程においてキャリッジ141が走査開始位置から走査終了位置まで主走査方向に移動されている間に、紫外線照射装置161Lを制御して、ノズル副配列121Nが画像Iの印刷に使用されている場合は、移動方向においてノズル副配列121Nの下流にある方の紫外線照射装置161Lをオンに、上流にある方の紫外線照射装置161Lをオフにして、オンにした紫外線照射装置161LからメディアM上に印刷された画像Iに所定光量の紫外線を照射し、ノズル副配列121Nが画像Iの印刷に使用されていない場合は、両方の紫外線照射装置161Lをオフにして紫外線照射装置161LからメディアM上に印刷された画像Iに紫外線を照射しない。また、紫外線照射実行部193は、第1~第3印刷工程において紫外線照射装置161L~Lも同様に制御する。
【0064】
(変形例3)
第1の実施形態では、パス数Pが4である場合について説明したが、パス数Pは2以上の整数であれば任意である。パスマスクの準備及び適用はパス数Pに応じて任意の周知の方法で行われればよい。
【0065】
本変形例では、第1印刷工程は、P個の副印刷工程S1~S1を含む。副印刷工程S1では、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向に向けて走査開始位置から走査終了位置まで一定の所定速度で移動させながら、分割画像データD~Dに基づいてノズル副配列121N~Nを制御してこれらのノズルからメディアM上にインクを吐出することで分割画像I~Iをそれぞれ領域B~Bにパスマスクを適用して印刷する。以降、副印刷工程S1(Kは2以上P未満の整数)では、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向に向けて走査開始位置から走査終了位置まで一定の所定速度で移動させながら、分割画像データD~Dに基づいてノズル副配列121N~Nを制御してこれらのノズルからメディアM上にインクを吐出することで分割画像I~Iをそれぞれ領域B~Bにパスマスクを適用して印刷する。最後に、副印刷工程S1では、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向に向けて走査開始位置から走査終了位置まで一定の所定速度で移動させながら、分割画像データDに基づいてノズル副配列121Nを制御してこれらのノズルからメディアM上にインクを吐出することで分割画像Iを領域Bにパスマスクを適用して印刷する。
【0066】
本変形例では、第2印刷工程は、一度にP個の連続した領域にP個の分割画像を印刷する点を除いては、第1の実施形態と同様である。
【0067】
本変形例では、第3印刷工程は、P個の副印刷工程S2~S2を含む。副印刷工程S2では、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向に向けて走査開始位置から走査終了位置まで一定の所定速度で移動させながら、分割画像データDN-P+1~Dに基づいてノズル副配列121N~Nを制御してこれらのノズルからメディアM上にインクを吐出することで分割画像IN-P+1~Iをそれぞれ領域BN-P+1~Bにパスマスクを適用して印刷する。以降、副印刷工程S2(Kは2以上P未満の整数)では、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向に向けて走査開始位置から走査終了位置まで一定の所定速度で移動させながら、分割画像データDN-K+1~Dに基づいてノズル副配列121N~Nを制御してこれらのノズルからメディアM上にインクを吐出することで分割画像IN-K+1~Iをそれぞれ領域BN-K+1~Bにパスマスクを適用して印刷する。最後に、副印刷工程S2では、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向に向けて走査開始位置から走査終了位置まで一定の所定速度で移動させながら、分割画像データDに基づいてノズル副配列121Nを制御してこれらのノズルからメディアM上にインクを吐出することで分割画像Iを領域Bにパスマスクを適用して印刷する。
【0068】
(変形例4)
変形例3では、第1印刷工程において、副印刷工程S1~S1をこの順番で、すなわち、一度に印刷する分割画像の数が少なくなる順番で行うが、副印刷工程S1~S1を行う順番は任意であり、例えば、副印刷工程S1~S1を一度に印刷する分割画像の数が多くなる順番で行ってもよい。これは、第3印刷工程についても当てはまる。
【0069】
また、第1印刷工程において、副印刷工程S1(Kは1以上P以下の整数)では、副走査方向に連続したK個の分割画像I~Iを対応する領域B~Bにパスマスクを適用して印刷するが、最終的に、分割画像I~IがそれぞれP回~1回だけ対応する領域B~Bにパスマスクを適用して印刷されるのであれば、副印刷工程S1で、必ずしも副走査方向において連続しないK個の分割画像を対応する領域にパスマスクを適用して印刷することとしてもよい。これは、第3印刷工程についても当てはまる。
【0070】
また、第1印刷工程において、副印刷工程S1(Kは1以上P以下の整数)では、副走査方向に連続したK個の分割画像I~Iを対応する領域B~Bにパスマスクを適用して印刷するが、最終的に、分割画像I~IがそれぞれP回~1回だけ対応する領域B~Bにパスマスクを適用して印刷されるのであれば、副印刷工程S1で、L個(Lは1以上K未満の整数)の分割画像を印刷し、追加の副印刷工程で、K-L個の分割画像を印刷することとしてもよい。これは、第3印刷工程についても当てはまる。
【0071】
従って、第1印刷工程は、インクジェットヘッド120が領域B~Bに印刷可能な副走査方向の位置で、インクジェットヘッド120を主走査方向にメディアMに対して相対的に複数回にわたり移動させ、この過程で、分割画像I~IをそれぞれP回~1回だけ対応する領域B~Bにパスマスクを適用して印刷するのであれば、任意である。
【0072】
同様に、第3印刷工程は、インクジェットヘッド120が領域BN-P+1~Bに印刷可能な副走査方向の位置で、インクジェットヘッド120を主走査方向にメディアMに対して相対的に複数回にわたり移動させ、この過程で、分割画像IN-P+1~Iをそれぞれ1回~P回だけ対応する領域BN-P+1~Bにパスマスクを適用して印刷するのであれば、任意である。
【0073】
(変形例5)
第2印刷工程は、任意の周知のマルチパス印刷法に基づいて行うことができる。例えば、上述のインクジェットプリンタ10を用いて、主走査方向の走査の往路と復路の両方で画像の印刷を行うことで、8パスのマルチパス印刷を行うこともできる。従って、第2の印刷工程は、メディアM上の複数の領域B~Bのそれぞれに画像Iの対応する部分(例えば、領域Bには分割画像I)を複数回印刷するマルチパス方式によりメディアM上に画像Iを印刷するとしたとき、複数の領域のうち副走査方向において最上流にある領域B及び最下流にある領域Bの一方又は両方を除く領域に画像Iを印刷する場合に、インクジェットヘッド120を副走査方向にメディアMに対して相対的に所定距離Wずつ移動させ、副走査方向への所定距離Wの移動毎に、インクジェットヘッド120を主走査方向にメディアMに対して相対的に移動させながら、インクジェットヘッド120にメディアMへ放射線硬化型インクを塗布させ、これにより、メディアM上に画像Iの一部(例えば、図6(a)で印刷されている部分)をマルチパス方式により印刷するのであれば任意である。
【0074】
この場合、第1印刷工程又は第3印刷工程は、副走査方向へのインクジェットヘッド120の移動を停止しつつ、メディアM上に画像Iの残部(例えば、図6(e)で印刷されている部分から図6(a)で印刷されている部分を除いた部分)を印刷する点を除いては、任意の周知のマルチパス印刷法に基づいて行うことができる。従って、第1印刷工程及び第3印刷工程は、複数の領域B~Bのうち最上流にある領域B及び副走査方向においてその下流にある1つ以上の領域、又は、複数の領域B~Bのうち最下流にある領域B及び副走査方向においてその上流にある1つ以上の領域に画像Iを印刷する場合に、副走査方向におけるメディアMに対するインクジェットヘッド120の位置を維持しつつ、インクジェットヘッド120を主走査方向にメディアMに対して相対的に複数回移動させながら、インクジェットヘッド120にメディアMへ放射線硬化型インクを塗布させ、これにより、メディアM上に画像Iの残部をマルチパス方式により印刷するのであれば任意である。
【0075】
(変形例6)
紫外線照射部160には、印刷物の製造中に領域B~Bに印刷された分割画像I~Iに紫外線照射部160から照射された紫外線の積算量が大幅に異ならないように、例えば、領域B~Bでの紫外線の積算照射量が互いに実質的に等しくなるように、又は、少なくとも、領域B~Bでの紫外線の積算照射量の間の差が紫外線照射部160から常に紫外線を照射する場合の領域B~Bでの紫外線の積算照射量の間の差よりも小さくなるように、第1印刷工程、第2印刷工程、及び第3印刷工程と並行して、インクジェットヘッド120に追従して移動し、領域B~Bに照射される紫外線の照射量を調節できるのであれば、任意の紫外線照射装置を採用できる。
【0076】
例えば、従来のマルチパス印刷により、パス数Pで画像IをメディアM上に印刷する場合、最上流の領域Bから下からP+1番目の領域BN-Pまでには主走査方向の走査のP回分だけ紫外線が照射され、下からP番目の領域BN-P+1には主走査方向の走査の2P-1回分だけ紫外線が照射される。このため、パス数Pが大きくなるほど、下からP+1番目の領域BN-Pと下からP番目の領域BN-P+1との間の紫外線照射積算量の差が大きくなり、これらの領域の境界にすじが生じたり、これらの領域の間で色合いや光沢の差が生じたりする程度及び可能性が増す。従って、領域に最初に対応する分割画像が印刷されてからメディアMへの画像I全体の印刷が完了するまでに下からP番目の領域BN-P+1から最下流の領域Bまでの単位面積あたりの紫外線の積算量を、主走査方向の走査のP回分以上2P-2回以下とすれば、すじの発生又は色合い若しくは光沢の差といった問題を低減又は解消できる。特に、これらの領域での単位面積あたりの紫外線の積算量を主走査方向の走査のP回分とするのが望ましい。
【0077】
また、例えば、紫外線照射部160は、第1の実施形態では、紫外線の照射の有無を領域B~B毎に調節するが、隣り合う2つ以上の領域をまとめて調節してもよい。例えば、第1の実施形態において、紫外線照射部160が2つの紫外線照射装置を備え、紫外線照射装置のそれぞれが副走査方向において幅2Wの紫外線を照射することとする場合、紫外線照射部160がインクジェットヘッド120に追従して移動する間に、紫外線照射装置から紫外線が照射可能な2つの領域B、Bk+1の全てで対応する分割画像I、Ik+1が所定のパス数である4回分だけマルチパス方式で印刷されているわけではないなら、両方の領域B、Bk+1に紫外線照射装置から紫外線を照射するように、また、印刷されているなら、紫外線を照射しないように、それぞれの紫外線照射装置を制御すればよい。この場合、領域に最初に対応する分割画像が印刷されてからメディアMへの画像I全体の印刷が完了するまでに領域B~Bのそれぞれに照射された紫外線の積算量は、たかだか主走査方向の走査の5回分である。同様に、任意のパス数について、紫外線照射部160が複数の紫外線照射装置を備え、この紫外線照射装置が独立して紫外線を照射するかしないかを制御可能であり、且つ、同じ又は異なる個数の隣り合う1つ以上の領域に紫外線を照射可能であるとする場合、紫外線照射部160がインクジェットヘッド120に追従して移動する間に、ある紫外線照射装置から紫外線が照射可能な領域の全てに対応する分割画像が所定のパス数に等しい回数だけマルチパス方式で印刷されているわけではないなら、これらの領域にその紫外線照射装置から紫外線を照射し、また、印刷されているなら、紫外線を照射しないこととすればよい。この場合、領域に最初に対応する分割画像が印刷されてからメディアMへの画像I全体の印刷が完了するまでに領域B~Bのそれぞれに照射された紫外線の積算量を、主走査方向の走査のP回分以上2P-2回以下にできる。
【0078】
また、前述の例で、下からP+1番目の領域BN-Pに対する下からP番目の領域BN-P+1での紫外線照射積算量の割合は、(2P-1)/Pとなる。例えば、パス数Pが、4、8、16、32の場合、この割合の百分率は、175%、188%、194%、197%となる。従って、紫外線照射部160は、印刷物の製造中に領域B~Bに印刷された分割画像I~Iに紫外線照射部160から照射された紫外線の積算量がこれらの領域での最小積算量の100%以上175%未満となるように、第1印刷工程、第2印刷工程、及び第3印刷工程と並行して、インクジェットヘッド120に追従して移動し、領域B~Bに照射される紫外線の照射量を調節できるのであれば、パス数Pが4以上の場合に、すじの発生又は色合い若しくは光沢の差といった問題を低減又は解消できる。
【0079】
また、紫外線照射部160が、領域に最初に対応する分割画像が印刷されてからメディアMへの画像I全体の印刷が完了するまでに領域B~Bに紫外線照射部160から照射された紫外線の積算量がこれらの領域での最小積算量の100%以上であり、且つ、160%未満、150%未満、140%未満、130%未満、120%未満、110%未満、105%未満となるように、領域B~Bに照射される紫外線の照射量を調節することとしてもよい。この場合、すじの発生又は色合い若しくは光沢の差といった問題をより一層低減又は解消できる。
【0080】
また、副走査方向において、紫外線照射装置161L~Lのそれぞれから照射される紫外線の幅は領域B~Bの幅と一致していなくてもよく、また、副走査方向において、紫外線照射装置161L~Lのそれぞれから照射される紫外線の光量が一様でなくともよく、例えば、釣鐘型の分布をしていてもよい。この場合、紫外線照射部160は、最終的に、領域に最初に対応する分割画像が印刷されてからメディアMへの画像I全体の印刷が完了するまでに領域B~Bに紫外線照射部160から照射された紫外線の積算量が、大幅に異ならないような上述の範囲に、例えば、これらの領域での最小積算量の100%以上175%未満となるように、紫外線照射装置161L~Lのオン・オフ、光量、及び/又は副走査方向での光量分布を制御して、領域B~Bに照射される紫外線の照射量を調節する。
【0081】
また、ある領域に分割画像が印刷された直後に紫外線を照射せず、例えば、マットな仕上がりを得るためなどの理由で、時間をおいてから紫外線を照射するため、紫外線照射装置161L~Lがオンにされる時期を遅らせることとしてもよい。例えば、図3において、副走査方向における紫外線照射装置161Lの上流に追加の紫外線照射装置161Lを設け、(i)第2の印刷工程では、ノズル副配列121Nが領域Bk+1上を主走査方向に移動している間に、紫外線照射装置161Lが領域B上に紫外線を照射し、ノズル副配列121Nが領域Bk+1上を主走査方向に移動している間に、紫外線照射装置161Lが領域B上に紫外線を照射し、ノズル副配列121Nが領域Bk+1上を主走査方向に移動している間に、紫外線照射装置161Lが領域B上に紫外線を照射し、ノズル副配列121Nが領域Bk+1上を主走査方向に移動している間に、紫外線照射装置161Lが領域B上に紫外線を照射し、(ii)第1及び第3の印刷工程では、今回の主走査方向の走査で紫外線照射装置161Lが通過する領域Bに直前の主走査方向の走査で分割画像Iが印刷されている場合に、今回の主走査方向の走査で紫外線照射装置161Lから当該領域Bに紫外線を照射し、紫外線照射装置161L~Lをそれぞれ同様に制御することとしてもよい。なお、この場合、第1及び第3の印刷工程では、画像I全体への紫外線照射が完了するまえに、メディアMへの画像I全体の印刷が完了するため、紫外線照射のための追加の主走査方向の走査を行う。
【0082】
また、各領域B~Bでの紫外線照射積算量が過大にならない範囲で、例えば、紫外線照射部160の移動経路や移動時期を変えずに紫外線照射装置161L~Lを常にオンにしていた場合の各領域B~Bでの紫外線照射積算量の最大値を超えない範囲で、紫外線照射装置161L~Lがオフにされる時期を遅らせることとしてもよい。例えば、上述のように、任意のパス数について、紫外線照射部160が複数の紫外線照射装置を備え、この紫外線照射装置が独立して紫外線を照射するかしないかを制御可能であり、且つ、同じ又は異なる個数の隣り合う1つ以上の領域に紫外線を照射可能であるとする場合、紫外線照射部160がインクジェットヘッド120に追従して移動する間に、ある紫外線照射装置から紫外線が照射可能な領域の全てに対応する分割画像が所定のパス数に等しい回数だけマルチパス方式で印刷されているわけではないなら、これらの領域にその紫外線照射装置から紫外線を照射し、また、紫外線を照射すると前述の紫外線照射積算量の最大値を超えるなら紫外線を照射しないこととしてもよい。
【0083】
また、各領域Bに分割画像Iをパスマスクを適用して印刷する毎に、その直後に、メディアM上に着弾したインク滴の濡れ広がりを防ぐために弱めの紫外線を照射する仮硬化を行い、本硬化を上述の紫外線照射工程により行うこととしてもよい。
【0084】
以上から明らかなように、主走査方向にメディアに対して相対的に移動しつつ紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクジェットインクのインク滴をメディアに向けて吐出する主走査動作と、主走査方向と直交する副走査方向にメディアに対して相対的に移動する副走査動作とを行うインクジェットヘッドと、メディア上に着弾したインク滴に紫外線を照射して硬化させる紫外線照射部であって、副走査方向に並んでおり且つ独立して制御可能な複数の紫外線照射装置を備える紫外線照射部と、を備えるインクジェット方式の印刷装置を用いて、インクジェットヘッドは、副走査動作を行いながら、メディア上の被印刷領域内の各位置に対してパス数回の主走査動作を行うことで、メディアに画像をマルチパス方式で印刷し、この過程で、副走査方向において画像の終端が印刷される被印刷領域の終端にインクジェットヘッドが印刷可能な位置にインクジェットヘッドが達すると、副走査動作での副走査方向への移動を停止し、被印刷領域のうち画像の対応する部分が完成していない領域内の各位置に対してパス数に達するまで主走査動作を行い、紫外線照射部は、被印刷領域のうち画像の対応する部分が完成していない領域内の各位置に対してパス数に達するまで主走査動作を行う際に、当該領域の各位置に照射される紫外線の積算量間の差が、主走査動作中に紫外線照射装置のすべてを所定の光量で点灯させていた場合の当該領域内の各位置での紫外線の積算量間の差よりも低くなるように、各紫外線照射装置を独立して制御して、当該紫外線照射装置から紫外線をメディアに照射するように、インクジェットヘッド及び紫外線照射装置を制御することで、メディアに画像を印刷する際に、メディアを無駄なく利用し、且つ、すじの発生又は色合い若しくは光沢の差といった問題を低減又は解消できる。
【0085】
(変形例7)
複数の画像を副走査方向に連続してメディアM上で印刷する場合、ある画像の下部を第3印刷工程に従い印刷すれば、次の画像の上部は前の画像の下部の直下から従来のマルチパス印刷により印刷することができる。また、ある画像の下部を従来のマルチパス印刷により印刷した後に、その画像の直下から次の画像の上部を第1印刷工程に従い印刷することもできる。従って、複数の画像の連続印刷において、第1印刷工程又は第3印刷工程のいずれかを行いさえすれば、画像間の空白領域をなくすことができる。
【0086】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るインクジェットプリンタ20について説明する。インクジェットプリンタ20は、その印刷方法を除いては、第1の実施形態に記載のインクジェットプリンタ10と同様であり、紫外線硬化型インクジェットインクでメディアMに2つの画像を連続して所定のパス数Pのマルチパス方式で印刷する。以下では、パス数Pを4とした場合について説明する。
【0087】
(第2の実施形態に係るマルチパス印刷)
印刷実行部192は、インクジェットプリンタ20の外部(ホストコンピュータなど)から供給される画像データD1を受け取ると、当該画像データが表す画像I1の印刷を開始する。第1の実施形態と同様に、最終的に、画像I1は、副走査方向に幅W毎にN1個の分割画像I1~I1N1として分割され、分割画像I1~I1N1がそれぞれ副走査方向に連続するメディアM上の帯状領域B1~B1N1に4パスで印刷される。各領域B1~B1N1は副走査方向において幅Wを有する。
【0088】
(第4印刷工程:画像D1の印刷)
印刷実行部192は、領域BN1に分割画像I1N1を最初にパスマスクを適用して印刷し終えるまで、従来のマルチパス印刷又は上述の第1の実施形態に従って、画像I1をメディアM上に印刷する。
【0089】
その後、この時点までに、インクジェットプリンタ20の外部から次に印刷する画像I2の画像データD2を受け取っていない場合、印刷実行部192は、従来のマルチパス印刷又は上述の第1の実施形態に従って、画像I1の印刷を完了させる。
【0090】
一方、前述の時点までに、インクジェットプリンタ20の外部から次に印刷する画像I2の画像データD2を受け取った場合、印刷実行部192は、領域BN1に分割画像I1N1を最初にパスマスク適用して印刷するまで、従来のマルチパス印刷又は上述の第1の実施形態に従って、画像I1をメディアM上に印刷した後に、以下の第5印刷工程を行う。
【0091】
なお、第1の実施形態と同様に、最終的に、画像I2は、副走査方向に幅W毎にN2個分割画像I2~I2N2として分割され、分割画像I2~I2N2がそれぞれ副走査方向に連続するメディアM上の帯状領域B2~B2N2に4パスで印刷される。各領域B2~B2N2は副走査方向において幅Wを有する。
【0092】
また、メディアM上で画像I1と画像I2とは副走査方向に幅Wの隙間である領域Sをおいて印刷される。
【0093】
(第5印刷工程:画像D1と画像D2との間の印刷)
第5印刷工程が開始されるまでに、図7(a)に示すように、領域B1~B1N1-3にはそれぞれ分割画像I1~I1N1-3が4回、領域B1N1-2には分割画像I1N1-2が3回、領域B1N1-1には分割画像I1N1-1が2回、領域B1N1には分割画像I1N1が1回、パスマスクを適用して印刷されている。
【0094】
印刷実行部192は、図7(a)に示すように、移動機構140と送り機構150とを制御し、新たな走査開始位置である領域B1N-2~B1及び領域Sの右端にインクジェットヘッド120の左端のノズル列が位置するようにキャリッジ141をメディアMに対して相対的に移動させる。その後、印刷実行部192は、図7(b)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に新たな走査終了位置である領域B1N-2~B1及び領域Sの左端まで所定速度で移動させながら、分割画像データD1N-2~D1にそれぞれ基づいてノズル副配列121N~Nを制御してこれらのノズルからメディアM上にインクを吐出することで分割画像I1N-2~I1をそれぞれ領域B1N-2~B1にパスマスクを適用して印刷する。一方、この間、印刷実行部192は、ノズル副配列121Nを制御してこれらのノズルからはインクを吐出させない。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0095】
次に、印刷実行部192は、送り機構150を駆動してメディアMを副走査方向に幅Wだけ送る。これにより、インクジェットヘッド120は新たな走査開始位置である領域B1N-1、B1、領域S、及び領域B2の右端に位置することとなる。その後、印刷実行部192は、図7(c)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に新たな走査終了位置である領域B1N-1、B1、領域S、及び領域B2の左端まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データD1N-1及びD1にそれぞれ基づいてノズル副配列121N及びNを制御して分割画像I1N-1及びI1をそれぞれ領域B1N-1及びB1にパスマスクを適用して印刷し、分割画像データD2に基づいてノズル副配列121Nを制御して分割画像I2を領域B2にパスマスクを適用して印刷する。一方、この間、印刷実行部192は、ノズル副配列121Nを制御してこれらのノズルからはインクを吐出させない。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0096】
次に、印刷実行部192は、送り機構150を駆動してメディアMを副走査方向に幅Wだけ送る。これにより、インクジェットヘッド120は新たな走査開始位置である領域B1N-1、B1、領域S、及び領域B2の右端に位置することとなる。その後、印刷実行部192は、図7(c)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に新たな走査終了位置である領域B1N-1、B1、領域S、及び領域B2の左端まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データD1N-1及びD1にそれぞれ基づいてノズル副配列121N及びNを制御して分割画像I1N-1及びI1をそれぞれ領域B1N-1及びB1にパスマスクを適用して印刷し、分割画像データD2に基づいてノズル副配列121Nを制御して分割画像I2を領域B2にパスマスクを適用して印刷する。一方、この間、印刷実行部192は、ノズル副配列121Nを制御してこれらのノズルからはインクを吐出させない。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0097】
次に、印刷実行部192は、送り機構150を駆動してメディアMを副走査方向に幅Wだけ送る。これにより、インクジェットヘッド120は新たな走査開始位置である領域B1、領域S、及び領域B2、B2の右端に位置することとなる。その後、印刷実行部192は、図7(d)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に新たな走査終了位置である領域B1、領域S、及び領域B2、B2の左端まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データD1に基づいてノズル副配列121Nを制御して分割画像I1を領域B1にパスマスクを適用して印刷し、分割画像データD2及びD2にそれぞれ基づいてノズル副配列121N及びNを制御して分割画像I2及びI2をそれぞれ領域B2及びB2にパスマスクを適用して印刷する。一方、この間、印刷実行部192は、ノズル副配列121Nを制御してこれらのノズルからはインクを吐出させない。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0098】
(第6印刷工程:画像D2の印刷)
次に、印刷実行部192は、送り機構150を駆動してメディアMを副走査方向に幅Wだけ送る。これにより、インクジェットヘッド120は新たな走査開始位置である領域S及び領域B2~B2の右端に位置することとなる。その後、印刷実行部192は、図7(e)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に新たな走査終了位置である領域S及び領域B2~B2の左端まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データD2~D2にそれぞれ基づいてノズル副配列121N~Nを制御して分割画像I2~I2をそれぞれ領域B2~B2にパスマスクを適用して印刷する。一方、この間、印刷実行部192は、ノズル副配列121Nを制御してこれらのノズルからはインクを吐出させない。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0099】
次に、印刷実行部192は、送り機構150を駆動してメディアMを副走査方向に幅Wだけ送る。これにより、インクジェットヘッド120は新たな走査開始位置である領域B2~B2の右端に位置することとなる。その後、印刷実行部192は、図7(f)に示すように、移動機構140を駆動してキャリッジ141を主走査方向の一方向に新たな走査終了位置である領域B2~B2の左端まで前述の所定速度で移動させながら、分割画像データD2~D2にそれぞれ基づいてノズル副配列121N~Nを制御して分割画像I2~I2をそれぞれ領域B2~B2にパスマスクを適用して印刷する。その後、印刷実行部192は、移動機構140を駆動してインクジェットヘッド120を主走査方向の他方向にメディアM上の走査開始位置まで再び移動させる。
【0100】
以降、印刷実行部192は、従来のマルチパス印刷又は上述の第1の実施形態に従って、画像I2をメディアM上に印刷する。
【0101】
以上により、図7(g)に示すように、画像D1及び画像D2が幅Wの隙間である領域Sを挟んで印刷される。
【0102】
(紫外線照射工程)
紫外線照射工程は、従来どおりに、例えば、印刷中は紫外線照射部160から紫外線を照射し続けることで、行ってもよいし、第1の実施形態と同様に行ってもよい。
【0103】
(第2の実施形態の効果)
従来のマルチパス印刷では、メディア上の画像が印刷された領域の上下の部分には印刷を行うことができない空白領域が生じる。例えば、第1の実施形態のインクジェットプリンタ10を用いて4パスで従来のマルチパス印刷を行う場合、第1の実施形態の効果でも説明したように、図8(a)及び(j)に示すように、副走査方向において領域Bの上にある幅3Wの領域と、副走査方向において領域Bの下にある幅3Wの領域とには空白領域が生じる。このため、メディア上で画像を連続して印刷する場合、画像の間に幅3Wの空白領域が生じてしまう。
【0104】
第2の実施形態によれば、画像D1と画像D2との間の距離はWであり、3Wより短い。このため、メディアを無駄なく有効利用できる。特に、高価なメディア、例えば、アクリル板などの板状メディアを無駄なく利用できるため、こうしたメディアを用いた印刷を安価に行える。
【0105】
(変形例8)
変形例1、2は、第2の実施形態にも適用できる。
【0106】
(変形例9)
領域Sの幅は幅Wの正整数倍であってもよい。この場合、第5印刷工程で、ノズル副配列N~Nは領域S上には印刷を行わない。
【0107】
また、領域Sを省略し、メディアM上で副走査方向において画像D1の直下に画像D2を印刷してもよい。
【0108】
(変形例10)
第1の実施形態では、パス数Pが4である場合について説明したが、パス数Pは2以上の整数であれば任意である。パスマスクの準備及び適用はパス数Pに応じて任意の周知の方法で行われればよい。
【0109】
本変形例の第4印刷工程は、従来のマルチパス印刷又は第1の実施形態若しくはその変形例に従って、行えばよい。従って、本変形例の第4印刷工程は、インクジェットヘッド120を副走査方向に所定距離WだけメディアMに対して相対的に移動させて、インクジェットヘッド120が領域B1~B1N1の1つ以上に印刷可能であり且つ領域B2~B2N2に印刷可能ではない位置とし、その後、インクジェットヘッド120を主走査方向にメディアMに対して相対的に移動させ、この過程で、前述の領域B1~B1N1の1つ以上にそれぞれ対応する分割画像I1~I1N1を1回だけパスマスクを適用して印刷し、この処理を副走査方向への移動後にインクジェットヘッド120が領域B2に印刷可能な位置となるまで繰り返す。
【0110】
本変形例の第5印刷工程は、インクジェットヘッド120を副走査方向に所定距離WだけメディアMに対して相対的に移動させて、インクジェットヘッド120が領域B1~B1N1の1つ以上及び領域B2~B2N2の1つ以上に印刷可能な位置とし、その後、インクジェットヘッド120を主走査方向にメディアMに対して相対的に移動させ、この過程で、前述の領域B1~B1N1の1つ以上にそれぞれ対応する分割画像I1~I1N1を1回だけパスマスクを適用して印刷し、且つ、前述の領域B2~B2N1の1つ以上にそれぞれ対応する分割画像I2~I2N2を1回だけパスマスクを適用して印刷し、この処理を副走査方向への移動後にインクジェットヘッド120が領域B1N1に印刷可能ではない位置となるまで繰り返す。
【0111】
本変形例の第6印刷工程は、従来のマルチパス印刷又は第1の実施形態若しくはその変形例に従って、行えばよい。例えば、本変形例の第6印刷工程は、インクジェットヘッド120を副走査方向に所定距離WだけメディアMに対して相対的に移動させて、インクジェットヘッド120が領域B2~B2N2の1つ以上に印刷可能であり且つ領域B1~B1N1に印刷可能ではない位置とし、その後、インクジェットヘッド120を主走査方向にメディアMに対して相対的に移動させ、この過程で、前述の領域B2~B2N2の1つ以上にそれぞれ対応する分割画像I2~I2N2を1回だけパスマスクを適用して印刷し、この処理を必要なだけ繰り返す。
【0112】
(変形例11)
第2の実施形態及びその変形例において、紫外線硬化型インクジェットインクの代わりに、紫外線硬化処理を必要としないその他のインクジェットインク、例えば、熱硬化型インクや速乾性インクジェットインクを採用してもよい。この場合、紫外線硬化工程を省略してもよい。
【0113】
いうまでもなく、上述の実施形態及び変形例は、矛盾しない限り自由に、組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0114】
10、20 インクジェットプリンタ
11 装置本体
12 架台
110 プラテン
120 インクジェットヘッド
121 ノズル配列
121N~121N ノズル副配列
121 ノズル配列、ノズル
130 インク供給機構
140 移動機構
141 キャリッジ
150 送り機構
160 紫外線照射部
161L~161L 紫外線照射装置
180 入出力部
190 コントローラ、制御部
191 記憶部
192 印刷実行部
193 紫外線照射実行部
~B、B1~B1N1、B2~B2N2 帯状領域
I 画像
J インク滴
W 距離/幅
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図1
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図8