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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】物標識別装置及び物標識別プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/41 20060101AFI20240508BHJP
   G01S 13/58 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
G01S7/41
G01S13/58 200
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020075923
(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公開番号】P2021173573
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】土屋 廣憲
(72)【発明者】
【氏名】板倉 晃
(72)【発明者】
【氏名】平木 直哉
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-308226(JP,A)
【文献】特開平01-282487(JP,A)
【文献】特開2007-120916(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0012081(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号から、距離分散、速度及び速度分散の少なくともいずれか、並びに反射強度を抽出するパラメータ抽出部と、
記距離分散、前記速度及び前記速度分散の少なくともいずれか、並びに前記反射強度について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと、の間の差分に基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号がいずれの物標によるものかを識別する物標識別部と、
を備えることを特徴とする物標識別装置。
【請求項2】
前記物標識別部は、前記反射強度について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて高いとともに、前記速度分散について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて大きいことに基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号がヘリコプターによるものと識別する
ことを特徴とする、請求項1に記載の物標識別装置。
【請求項3】
前記物標識別部は、前記反射強度について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて高いとともに、前記速度分散について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べてほぼ等しいことに基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号が航空機によるものと識別する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の物標識別装置。
【請求項4】
前記物標識別部は、前記反射強度、前記距離分散、前記速度及び前記速度分散について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べてほぼ等しいことに基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号が車両又は船舶によるものと識別する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の物標識別装置。
【請求項5】
前記物標識別部は、前記反射強度について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて低いとともに、前記距離分散について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて大きいことに基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号がクラッタによるものと識別する
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の物標識別装置。
【請求項6】
水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号から、距離分散、速度及び速度分散の少なくともいずれか、並びに反射強度を抽出するパラメータ抽出ステップと、
記距離分散、前記速度及び前記速度分散の少なくともいずれか、並びに前記反射強度について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと、の間の差分に基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号がいずれの物標によるものかを識別する物標識別ステップと、
を順にコンピュータに実行させるための物標識別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物標の種類(例えば、ヘリコプター等)を識別するレーダ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
物標の速度を測定するレーダ技術が、特許文献1等に開示されている。ここで、特許文献1では、物標の速度に基づいて、静止する物標を除去し、移動する物標を抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-008852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、様々な種類の移動する物標(例えば、ヘリコプター等)を抽出するため、様々な移動する物標の種類を識別することができなかった。
【0005】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、レーダ技術を用いて、様々な移動する物標の種類(例えば、ヘリコプター等)を識別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、反射強度、距離分散、速度及び速度分散の少なくともいずれかについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと、の間の差分に基づいて、様々な移動する物標の種類(例えば、ヘリコプター等)を識別することとした。
【0007】
具体的には、本開示は、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号から、反射強度、距離分散、速度及び速度分散の少なくともいずれかを抽出するパラメータ抽出部と、前記反射強度、前記距離分散、前記速度及び前記速度分散の少なくともいずれかについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと、の間の差分に基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号がいずれの物標によるものかを識別する物標識別部と、を備えることを特徴とする物標識別装置である。
【0008】
また、本開示は、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号から、反射強度、距離分散、速度及び速度分散の少なくともいずれかを抽出するパラメータ抽出ステップと、前記反射強度、前記距離分散、前記速度及び前記速度分散の少なくともいずれかについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと、の間の差分に基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号がいずれの物標によるものかを識別する物標識別ステップと、を順にコンピュータに実行させるための物標識別プログラムである。
【0009】
これらの構成によれば、レーダ技術を用いて、様々な移動する物標の種類(例えば、ヘリコプター等)を識別することができる。具体的には、以下に記載の処理を実行する。
【0010】
また、本開示は、前記物標識別部は、前記反射強度について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて高いとともに、前記速度分散について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて大きいことに基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号がヘリコプターによるものと識別することを特徴とする物標識別装置である。
【0011】
この構成によれば、ヘリコプターのブレードが水平面内で延伸するとともに回転することに基づいて、レーダ技術を用いて、ヘリコプターを他の物標と識別することができる。
【0012】
また、本開示は、前記物標識別部は、前記反射強度について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて高いとともに、前記速度分散について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べてほぼ等しいことに基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号が航空機によるものと識別することを特徴とする物標識別装置である。
【0013】
この構成によれば、航空機の主翼が水平面内で延伸するとともに固定されていることに基づいて、レーダ技術を用いて、航空機を他の物標と識別することができる。
【0014】
また、本開示は、前記物標識別部は、前記反射強度、前記距離分散、前記速度及び前記速度分散について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べてほぼ等しいことに基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号が車両又は船舶によるものと識別することを特徴とする物標識別装置である。
【0015】
この構成によれば、車両又は船舶が異方性を有さず塊として移動することに基づいて、レーダ技術を用いて、車両又は船舶を他の物標と識別することができる。
【0016】
また、本開示は、前記物標識別部は、前記反射強度について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて低いとともに、前記距離分散について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて大きいことに基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号がクラッタによるものと識別することを特徴とする物標識別装置である。
【0017】
この構成によれば、クラッタを抑圧するために従来技術では水平偏波を適用していることを考慮して、レーダ技術を用いて、クラッタを他の物標と識別することができる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本開示は、レーダ技術を用いて、様々な移動する物標の種類(例えば、ヘリコプター等)を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示のレーダシステムの設置を示す図である。
図2】本開示のレーダシステムの構成を示す図である。
図3】本開示の物標識別処理の手順を示す図である。
図4】本開示のヘリコプターの物標識別処理の内容を示す図である。
図5】本開示の航空機の物標識別処理の内容を示す図である。
図6】本開示の車両又は船舶の物標識別処理の内容を示す図である。
図7】本開示のクラッタの物標識別処理の内容を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0021】
本開示のレーダシステムの設置を図1に示す。図1の左欄では、レーダシステムは、陸上局Lに設置される。図1の右欄では、レーダシステムは、ドローンDに設置される。図1の左右欄では、レーダシステムは、様々な移動する物標の種類(例えば、ヘリコプターH、航空機A、車両C、船舶S、海波W及び地面G等)を識別する。
【0022】
本開示のレーダシステムの構成を図2に示す。レーダシステムRは、レーダ送受信装置1、物標識別装置2及びレーダ表示装置3を備える。物標識別装置2は、パラメータ抽出部21及び物標識別部22を備える。物標識別装置2は、図3に示した物標識別プログラムをコンピュータにインストールすることにより実現することができる。
【0023】
レーダ送受信装置1は、レーダ照射信号を送信し、レーダ反射信号を受信する。物標識別装置2は、様々な移動する物標の種類(例えば、ヘリコプターH、航空機A、車両C、船舶S、海波W及び地面G等)を識別する。レーダ表示装置3は、様々な移動する物標の位置を表示するとともに、様々な移動する物標の種類を表示してもよい。
【0024】
本開示の物標識別処理の手順を図3に示す。パラメータ抽出部21は、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号から、反射強度、距離分散、速度及び速度分散の少なくともいずれかを抽出する(ステップS1)。物標識別部22は、反射強度、距離分散、速度及び速度分散の少なくともいずれかについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと、の間の差分に基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号がいずれの物標によるものかを識別する(ステップS2)。具体的には、以下に記載の処理を実行する。
【0025】
本開示のヘリコプターの物標識別処理の内容を図4に示す。ヘリコプターHのブレードは、水平面内で延伸するとともに回転する。よって、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度は、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度と比べて高い。そして、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度分散は、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度分散と比べて大きい。
【0026】
そこで、物標識別部22は、反射強度について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて高いとともに、速度分散について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて大きいことに基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号がヘリコプターHによるものと識別する。
【0027】
なお、ヘリコプターHについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された距離分散と、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された距離分散とは、同様に小さい。また、ヘリコプターHについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度と、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度とは、同様に中速度である。
【0028】
このように、ヘリコプターHのブレードが水平面内で延伸するとともに回転することに基づいて、ヘリコプターHを他の物標と識別することができる。そして、ヘリコプターHがホバリングしているときには、ヘリコプターHの速度は0であるものの、ヘリコプターHの速度分散は0でないため(垂直偏波よりは水平偏波の方を用いるとき)、静止物標を除去する速度フィルタを用いるときでも、ヘリコプターHを検知することができる。
【0029】
本開示の航空機の物標識別処理の内容を図5に示す。航空機Aの主翼は、水平面内で延伸するとともに固定されている。よって、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度は、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度と比べて高い。そして、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度分散は、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度分散と比べてほぼ等しい。
【0030】
そこで、物標識別部22は、反射強度について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて高いとともに、速度分散について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べてほぼ等しいことに基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号が航空機Aによるものと識別する。
【0031】
なお、航空機Aについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された距離分散と、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された距離分散とは、同様に小さい。また、航空機Aについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度と、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度とは、同様に高速度である。
【0032】
このように、航空機Aの主翼が水平面内で延伸するとともに固定されていることに基づいて、航空機Aを他の物標と識別することができる。なお、航空機Aが単発機であるときには、反射強度及び速度分散について、左円偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、右円偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて異なることに基づいて、単発機である航空機Aを他の物標と識別することができる。
【0033】
本開示の車両又は船舶の物標識別処理の内容を図6に示す。車両C又は船舶Sは、異方性を有さず塊として移動する。よって、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度、距離分散、速度及び速度分散は、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度、距離分散、速度及び速度分散と比べてほぼ等しい。
【0034】
そこで、物標識別部22は、反射強度、距離分散、速度及び速度分散のすべてについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べてほぼ等しいことに基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号が車両C又は船舶Sによるものと識別する。
【0035】
なお、車両C又は船舶Sについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された距離分散と、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された距離分散とは、同様に小さい。また、車両C又は船舶Sについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度と、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度とは、同様に低速度である。また、車両C又は船舶Sについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度分散と、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度分散とは、同様に小さい。
【0036】
このように、車両C又は船舶Sが異方性を有さず塊として移動することに基づいて、車両C又は船舶Sを他の物標と識別することができる。なお、船舶Sは車両Cと比べて揺れるため、船舶Sによる速度分散は車両Cによる速度分散と比べて大きくなり得る。
【0037】
本開示のクラッタの物標識別処理の内容を図7に示す。海波W又は地面Gによるクラッタを抑圧するために、従来技術では水平偏波を適用している。つまり、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度は、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度と比べて低い。そして、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された距離分散は、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された距離分散と比べて大きい。
【0038】
そこで、物標識別部22は、反射強度について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて低いとともに、距離分散について、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものが、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出されたものと比べて大きいことに基づいて、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号がクラッタによるものと識別する。
【0039】
なお、クラッタについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された距離分散と、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された距離分散とは、いずれも大きい。また、クラッタについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度と、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度とは、同様に低速度である。また、クラッタについて、水平偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度分散と、垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度分散とは、同様に大きい。
【0040】
ただし、大きなうねりに重畳する小さなさざなみと、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ照射信号と、の間の共振の相違を考慮すれば、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された速度及び速度分散は、若干異なる可能性がある。
【0041】
このように、海波W又は地面Gによるクラッタを抑圧するために従来技術では水平偏波を適用していることを考慮して、海波W又は地面Gによるクラッタを他の物標と識別することができる。そして、海波W又は地面Gによるクラッタを除去することができる。
【0042】
図4から図7に基づいて、様々な移動する物標の種類(例えば、ヘリコプターH、航空機A、車両C、船舶S、海波W及び地面G等)を識別することができる。すると、ドローンD等がヘリコプターH等と衝突することを防止すること等ができる。そして、比較的小規模な信号処理回路で実現可能であり、ドローンD等に搭載可能である。
【0043】
図3の右欄に示したように、物標識別部22は、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号から抽出された反射強度、距離分散、速度及び速度分散の少なくともいずれかを入力とし、水平偏波及び垂直偏波を有するレーダ反射信号がいずれの物標によるものかを出力とする、教師データを学習することもできる(ステップS3)。
【0044】
なお、レーダ送受信装置1の仰角方向のビーム幅をドローン搭載又は低コスト化で絞れないときには、高位置のヘリコプターH及び航空機Aと、低位置の車両C、船舶S、海波W及び地面Gと、を同時に抽出してしまうものの、別個の物標として識別することができる。特に、レーダ送受信装置1をドローンDに搭載するときには、物標の高度を推定することができるため、航行の効率を上げることができる(例えば、物標を低位置の車両C又は船舶Sと識別しても、その物標を避ける必要がない。一方で、物標を高位置のヘリコプターH及び航空機Aと識別すれば、その物標を避ける必要がある。)。
【産業上の利用可能性】
【0045】
このように、本開示の物標識別装置及び物標識別プログラムは、レーダ技術を用いて、ドローン等がヘリコプター等と衝突することを防止すること等ができる。
【符号の説明】
【0046】
L:陸上局
D:ドローン
H:ヘリコプター
A:航空機
C:車両
S:船舶
W:海波
G:地面
R:レーダシステム
1:レーダ送受信装置
2:物標識別装置
3:レーダ表示装置
21:パラメータ抽出部
22:物標識別部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7