(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】電解水製造装置及び電解水の製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/461 20230101AFI20240508BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
(21)【出願番号】P 2020078663
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】白土 雅康
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-226887(JP,A)
【文献】特開2002-079250(JP,A)
【文献】特開2002-069683(JP,A)
【文献】特開2000-140851(JP,A)
【文献】特開2015-113479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を含む薬物水溶液を電気分解し、前記薬物の電解生成物を含む電解水を製造する電解水製造装置であって、
前記薬物水溶液を電気分解する無隔膜電解槽と、前記無隔膜電解槽に前記薬物水溶液を送液する送液部と、前記無隔膜電解槽で排出される排出物からガス及び一次電解水を分離する分離部と、前記一次電解水に希釈水を加えて電解水とする第1希釈部と、を備え、
前記分離部は前記排出物が収容される空間を有し、
前記空間内において、前記排出物が、未反応の前記薬物を含む残液と、前記残液の液面よりも上側に生じる、電気分解によって生じたガス及び前記一次電解水を含む成分とに分離され
、
前記無隔膜電解槽の上面には前記排出物を排出する開口部が形成されており、前記開口部は前記分離部の前記空間における前記残液の液面よりも上方に位置している、電解水製造装置。
【請求項2】
前記一次電解水を吸引する第1吸引部と、前記残液を吸引する第2吸引部とをさらに備える、請求項1に記載の電解水製造装置。
【請求項3】
前記残液に希釈水を加えて希釈する第2希釈部をさらに備える、請求項1又は2に記載の電解水製造装置。
【請求項4】
前記一次電解水と希釈水との合流部分よりも下流側で、前記残液の少なくとも一部を前記電解水に合流させる配管をさらに備え、前記配管内の流量を調整しつつ前記電解水に合流させる流量調整部が前記配管に設けられている、請求項2又は3に記載の電解水製造装置。
【請求項5】
前記空間が前記無隔膜電解槽の上面及び側面のいずれか一方又は両方に接するように設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電解水製造装置。
【請求項6】
無隔膜電解槽を用いて薬物を含む薬物水溶液を電気分解して一次電解水を得る電気分解工程と、
前記電気分解工程から排出される排出物を、未反応の前記薬物を含む残液と、前記残液の液面よりも上側に生じる、電気分解によって生じたガス及び前記一次電解水を含む成分とに分離する分離工程と、
前記分離工程で分離したガス及び前記一次電解水に希釈水を加えて電解水とする希釈溶解工程と、を含
み、
前記無隔膜電解槽の上面には、前記排出物を排出する開口部が形成されており、前記開口部は、前記分離工程で前記残液と前記成分とを分離する空間における前記残液の液面よりも上方に位置している、電解水の製造方法。
【請求項7】
薬物を含む薬物水溶液を電気分解し、前記薬物の電解生成物を含む電解水を製造する電解水製造装置であって、
前記薬物水溶液を電気分解する無隔膜電解槽と、前記無隔膜電解槽に前記薬物水溶液を送液する送液部と、前記無隔膜電解槽で排出される排出物からガスを分離する分離部と、前記ガスに希釈水を加えて電解水とする第1希釈部と、前記排出物からガスが分離された残液を吸引する第2吸引部と、を備え、
前記分離部は前記排出物が収容される空間を有し、
前記空間内において、前記排出物が、未反応の前記薬物を含む残液と、前記残液の液面よりも上側に生じる、電気分解によって生じたガスに分離され
、
前記無隔膜電解槽の上面には前記排出物を排出する開口部が形成されており、前記開口部は前記分離部の前記空間における前記残液の液面よりも上方に位置している、電解水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水製造装置及び電解水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素イオンを含有する薬液を電気分解して得られる電解水は、殺菌効果を有しているため、種々の殺菌消毒に広く用いられている。例えば、塩酸水溶液や塩酸水溶液に塩化ナトリウム水溶液を加えたものを無隔膜電解槽で電気分解することにより、殺菌効果を有する微酸性電解水(微酸性次亜塩素酸水)が得られる。微酸性電解水は2002年に食品添加物(有効塩素濃度:10~30ppm、pH=5~6.5)に認定され、2012年には有効塩素濃度が10~80ppm(pH=5~6.5)に拡大されている。
【0003】
従来の電解水製造装置では、得られる電解水に塩酸が混入してpHがばらつく問題があった。特許文献1には、塩酸の混入を抑制して電解水のpHのばらつきを抑制するために、気体のみを通過させ、塩酸を通過させない塩酸除去部を電解槽の下流側に設けた電解水製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の電解水製造装置においても、長時間運転の際には電解水のpHの低下を十分に抑制できない。
【0006】
本発明は、得られる電解水のpHの低下を十分に抑制できる電解水製造装置及び電解水の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]薬物を含む薬物水溶液を電気分解し、前記薬物の電解生成物を含む電解水を製造する電解水製造装置であって、
前記薬物水溶液を電気分解する無隔膜電解槽と、前記無隔膜電解槽に前記薬物水溶液を送液する送液部と、前記無隔膜電解槽で排出される排出物からガス及び一次電解水を分離する分離部と、前記一次電解水に希釈水を加えて電解水とする第1希釈部と、を備え、
前記分離部は前記排出物が収容される空間を有し、
前記空間内において、前記排出物が、未反応の前記薬物を含む残液と、前記残液の液面よりも上側に生じる、電気分解によって生じたガス及び前記一次電解水を含む成分とに分離される、電解水製造装置。
[2]前記一次電解水を吸引する第1吸引部と、前記残液を吸引する第2吸引部とをさらに備える、[1]に記載の電解水製造装置。
[3]前記残液に希釈水を加えて希釈する第2希釈部をさらに備える、[1]又は[2]に記載の電解水製造装置。
[4]前記一次電解水と希釈水との合流部分よりも下流側で、前記残液の少なくとも一部を前記電解水に合流させる配管をさらに備え、前記配管内の流量を調整しつつ前記電解水に合流させる流量調整部が前記配管に設けられている、[2]又は[3]に記載の電解水製造装置。
[5]前記空間が前記無隔膜電解槽の上面及び側面のいずれか一方又は両方に接するように設けられている、[1]~[4]のいずれかに記載の電解水製造装置。
[6]薬物を含む薬物水溶液を電気分解して一次電解水を得る電気分解工程と、
前記電気分解工程から排出される排出物を、未反応の前記薬物を含む残液と、前記残液の液面よりも上側に生じる、電気分解によって生じたガス及び前記一次電解水を含む成分とに分離する分離工程と、
前記分離工程で分離したガス及び前記一次電解水に希釈水を加えて電解水とする希釈溶解工程と、を含む、電解水の製造方法。
[7]薬物を含む薬物水溶液を電気分解し、前記薬物の電解生成物を含む電解水を製造する電解水製造装置であって、
前記薬物水溶液を電気分解する無隔膜電解槽と、前記無隔膜電解槽に前記薬物水溶液を送液する送液部と、前記無隔膜電解槽で排出される排出物からガスを分離する分離部と、前記ガスに希釈水を加えて電解水とする第1希釈部と、前記排出物からガスが分離された残液を吸引する第2吸引部と、を備え、
前記分離部は前記排出物が収容される空間を有し、
前記空間内において、前記排出物が、未反応の前記薬物を含む残液と、前記残液の液面よりも上側に生じる、電気分解によって生じたガスに分離される、電解水製造装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、得られる電解水のpHの低下を十分に抑制できる電解水製造装置及び電解水の製造方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態の電解水製造装置を示す概略構成図である。
【
図2】
図1の電解水製造装置における無隔膜電解槽及び分離部を示した断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の電解水製造装置を示す概略構成図である。
【
図4】本発明の第3実施形態の電解水製造装置を示す概略構成図である。
【
図5】本発明の第4実施形態の電解水製造装置を示す概略構成図である。
【
図6】本発明の第5実施形態の電解水製造装置を示す概略構成図である。
【
図7】本発明の他の実施形態の電解水製造装置における無隔膜電解槽及び分離部を示した断面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態の電解水製造装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電解水製造装置及び電解水の製造方法について、実施形態の一例を示し、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0011】
[第1実施形態]
(電解水製造装置)
図1は、第1実施形態の電解水製造装置100を示す概略構成図である。電解水製造装置100は、薬物を含む薬物水溶液を電気分解し、薬物の電解生成物を含む電解水を連続的に製造する電解水製造装置である。
電解水製造装置100は、送液部10と、無隔膜電解槽12と、分離部14と、第1希釈部16と、第2希釈部18と、第1吸引部20と、第2吸引部22と、を備えている。
【0012】
送液部10は、無隔膜電解槽12に薬物水溶液Aを送液する。送液部10は、薬物水溶液Aを貯留する薬液貯留部24と、薬液貯留部24と無隔膜電解槽12の下部とを接続する配管26と、配管26に設けられたポンプ28と、を備えている。ポンプ28を稼働させることで、薬液貯留部24に貯留されている薬物水溶液Aが無隔膜電解槽12に送液される。
【0013】
無隔膜電解槽12は、送液部10から送液されてきた薬物水溶液Aを電気分解する電解槽である。
図1及び
図2に示すように、無隔膜電解槽12は、電解槽本体30と、電解槽本体30の内部に設けられた板状の陽極32及び陰極34と、を備えている。電解槽本体30の上部には開口部31が形成されている。
【0014】
陽極32と陰極34は、互いの面が対向するように向かい合わせに設けられている。陽極32及び陰極34には、それぞれ導線(図示略)が接続されている。
【0015】
無隔膜電解槽12における電極の構成や通電方法は、特に限定されない。例えば、複数の電極を一定間隔で相互に絶縁して重ね合わせた構造を有し、電源の陽極に接続された電極板と、電源の陰極に接続された電極板との間に、いずれの極とも接続されない電極(中間電極)が少なくとも1枚存在する複極式電極を採用することができる。電極板の数は、特に限定されず、例えば、2枚以上25枚以下とすることができる。
【0016】
本実施形態では、電解槽本体30がハウジング36内に設けられている。この例では、ハウジング36内の下側に、電解槽本体30の少なくとも一部の側壁30aがハウジング36の側壁36aから離間するように設けられている。ハウジング36の内部には、電解槽本体30の側壁30aの外側から電解槽本体30の上側まで繋がる一連の空間38が形成されている。
【0017】
ハウジング36の電解槽本体30が設けられている側の側壁36bの下部には、電解槽本体30内の陽極32及び陰極34の下側に通じる薬液供給部40が設けられている。薬液供給部40には、送液部10の配管26が接続されている。
ハウジング36の電解槽本体30が設けられている側の側壁36bの電解槽本体30よりも上部には、空間38に通じる第1排出部42が設けられている。第1排出部42には、第1排出管44が接続されている。
ハウジング36の電解槽本体30が設けられている側と反対側の側壁36aの下部には、空間38に通じる第2排出部46が設けられている。第2排出部46には、第2排出管48が接続されている。
【0018】
分離部14は、無隔膜電解槽12で電気分解されて排出される排出物Bからガス及び一次電解水を分離する部分である。本実施形態では、ハウジング36内の空間38が、分離部14における排出物Bが収容される空間になっている。
【0019】
分離部14の空間38は、無隔膜電解槽12の上面12a及び側面12bの両方に接するように設けられている。ただし、無隔膜電解槽12の上面12aは、電解槽本体30の上面である。無隔膜電解槽12の側面12bは、電解槽本体30におけるハウジング36の側壁36aから離間した側壁30aの外面である。このように、本実施形態では、無隔膜電解槽12と分離部14とが一体に形成された電解分離ユニット13となっている。ここで、「無隔膜電解槽と分離部とが一体に形成されている」とは、無隔膜電解槽と分離部とが配管等で接続されておらず、無隔膜電解槽の外面の少なくとも一部が、分離部の空間に面し、当該空間の境界の一部を担っている態様を意味する。
【0020】
送液部10から送液されてきた薬物水溶液Aは、薬液供給部40から無隔膜電解槽12内の陽極32及び陰極34の下側に供給され、陽極32と陰極34の間を下から上に通過しながら電気分解される。電気分解された薬物水溶液Aは、無隔膜電解槽12の上面12aの開口部31から排出物Bとして分離部14の空間38へと排出される。分離部14の空間38内では、排出物Bが、未反応の薬物を含む残液Cと、残液Cの液面よりも上側に生じる、電気分解によって生じたガス及び一次電解水を含む成分Dとに分離される。分離部14の空間38における成分Dは、電気分解によって生じたガス中に微粒子状の一次電解水が分散した状態になっている。成分Dは第1排出部42から第1排出管44へと排出される。残液Cは第2排出部46から第2排出管48へと排出される。
【0021】
電解水製造装置100では、無隔膜電解槽12の上面12aの開口部31から排出された排出物B中の成分Dが、分離部14の空間38において残液C中を通過せずに、当該残液Cの液面よりも上方に到達する。具体的には、無隔膜電解槽12から分離部14に排出物Bを供給する供給部である、無隔膜電解槽12の上面12aの開口部31が、分離部14の空間38における残液Cの液面よりも上方に位置している。これにより、成分Dに未電解の塩酸が混入することを防ぎ、よりpHの安定した電解水Fを得ることができる。また、成分Dが残液C中を通過しないことで、溶解性の高い塩素ガスが残液Cに溶解して捕集され、電解水Fの有効塩素濃度が低下することも抑制できる。
【0022】
第1希釈部16は、成分Dに希釈水Eを加えて電解水Fとする部分である。第1希釈部16は、希釈水Eを供給するための配管50を備えている。第1希釈部16の配管50の途中部分には第1排出管44が接続されており、第1排出管44を介して配管50と分離部14とが繋がっている。これにより、配管50を流れる希釈水Eと第1排出管44を流れる成分Dとが合流するようになっている。
【0023】
この例では、第1希釈部16の配管50と第1排出管44との接続部分、すなわち成分Dと希釈水Eとの合流部分に第1吸引部20が設けられている。第1吸引部20は、分離部14の空間38から第1排出管44に排出されるガス及び一次電解水を含む成分Dを吸引する。
【0024】
第1吸引部20としては、分離部14の空間38から成分Dを吸引できるものであればよく、例えば、配管50を流れる希釈水Eを駆動流体とするエゼクタ、オリフィス、吸引ポンプを例示できる。なかでも、経済性に優れ、装置を小型化しやすい点から、第1吸引部20としては、希釈水Eを駆動流体とするエゼクタが好ましい。エゼクタを用いると、希釈水Eの運動エネルギーを有効利用できるのみならず、成分Dと希釈水Eとの混合をエゼクタ内で効果的に行うことができる。
エゼクタの態様は、特に限定されず、例えば、特許第4676185号公報に記載のエゼクタの態様を例示できる。
【0025】
第2希釈部18は、残液Cに希釈水Eを加えて希釈し、希釈残液Gとする部分である。第2希釈部18は、配管50における成分Dと希釈水Eとの合流部分よりも上流側から分岐し、希釈水Eを供給するための配管52を備えている。第2希釈部18の配管52の途中部分には第2排出管48が接続されており、第2排出管48を介して配管52と分離部14とが繋がっている。これにより、配管52を流れる希釈水Eと第2排出管48を流れる残液Cとが合流するようになっている。
【0026】
この例では、第2希釈部18の配管52と第2排出管48との接続部分、すなわち残液Cと希釈水Eとの合流部分に第2吸引部22が設けられている。第2吸引部22は、分離部14の空間38から第2排出管48に排出される残液Cを吸引する。
【0027】
第2吸引部22としては、分離部14の空間38から残液Cを吸引できるものであればよく、例えば、配管52を流れる希釈水Eを駆動流体とするエゼクタ、オリフィス、吸引ポンプを例示できる。なかでも、経済性に優れ、装置を小型化しやすい点から、第2吸引部22としては、希釈水Eを駆動流体とするエゼクタが好ましい。エゼクタを用いると、希釈水Eの運動エネルギーを有効利用できるのみならず、残液Cと希釈水Eとの混合をエゼクタ内で効果的に行うことができる。
【0028】
(電解水の製造方法)
以下、本実施形態の電解水製造装置100を用いた電解水の製造方法について説明する。本実施形態の電解水の製造方法は、下記の電気分解工程、分離工程、希釈溶解工程、及び残液希釈工程を有する。
電気分解工程:薬物を含む薬物水溶液Aを電気分解してガス及び一次電解水を得る。
分離工程:電気分解工程から排出される排出物Bを、未反応の薬物を含む残液Cと、残液Cの液面よりも上側に生じる、電気分解によって生じたガス及び一次電解水を含む成分Dとに分離する。
希釈溶解工程:分離工程で分離したガス及び一次電解水に希釈水Eを加えて電解水Fとする。
残液希釈工程:分離工程で分離した残液Cに希釈水Eを加えて希釈する。
【0029】
電気分解工程では、送液部10のポンプ28を稼働させ、薬液貯留部24に貯留されている薬物水溶液Aを無隔膜電解槽12へと送液し、無隔膜電解槽12内の陽極32及び陰極34の間を下から上に通過させながら薬物水溶液Aを電気分解する。電気分解された薬物水溶液Aは、排出物Bとして無隔膜電解槽12の上面12aの開口部31から分離部14の空間38へと排出される。排出物Bは、無隔膜電解槽12の上面12aの開口部31から、分離部14の空間38における残液Cの液面よりも上方に供給される。
【0030】
薬物を含む薬物水溶液Aとしては、塩素イオンを含有する水を使用することができ、例えば、塩酸水溶液、塩酸水溶液に塩化ナトリウム水溶液を添加したものを例示できる。なかでも、電解水が残留物を生成しない点から、塩酸水溶液のみが好ましい。
薬物としては、塩化水素及び塩化ナトリウムのいずれか一方又は両方を例示でき、塩化水素が好ましい。薬物としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
分離工程では、分離部14の空間38内において、排出物Bを、未反応の薬物を含む残液Cと、電気分解によって生じたガス及び一次電解水を含む成分Dとに分離する。無隔膜電解槽12の上面12aの開口部31から排出された排出物B中の成分Dは、分離部14の空間38において残液C中を通過せずに残液Cの液面よりも上方に出る。
成分Dにおいては、電気分解によって生じたガス中に、一次電解水として、薬物の電解生成物を含む微粒子状の水分が含まれる。ガス中における薬物の電解生成物を含む微粒子状の水分の量が増えると霧状になる。例えば薬物水溶液Aが塩酸水溶液の場合、成分Dには、水素ガス、塩素ガス、及び一次電解水として微粒子状の次亜塩素酸水が含まれる。
【0032】
排出物Bから分離した成分Dは、第1排出部42を通じて分離部14の空間38から第1排出管44へと排出される。電解水製造装置100では、第1吸引部20によって吸引することで、分離部14の空間38から成分Dをより効率良く排出させることができる。
【0033】
排出物Bから分離した残液Cは、第2排出部46を通じて分離部14の空間38から第2排出管48へと排出される。電解水製造装置100では、第2吸引部22によって吸引することで、分離部14の空間38から残液Cをより効率良く排出させることができる。
【0034】
希釈溶解工程では、第1排出管44を流れる成分Dと配管50を流れる希釈水Eとを合流させ、分離工程で分離した成分Dに希釈水Eを加えて希釈溶解し、薬物の電解生成物を含む電解水Fとする。例えば薬物水溶液Aが塩酸水溶液の場合、電解水Fとして微酸性電解水(微酸性次亜塩素酸水)が得られる。電解水Fは、例えば、種々の殺菌消毒に使用することができる。
希釈水Eによる成分Dの希釈溶解は、例えば、食品添加物の条件を満たすように、電解水Fの有効塩素濃度が10~80ppm、pHが5~6.5の範囲内となるように行う。
【0035】
希釈水Eとしては、例えば、水道水、地下水、伏流水、脱塩水、蒸留水、精製水を例示できる。希釈水Eとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、電解水Fを食品添加物として使用する場合は、希釈水Eは水道水質基準に適合した飲用適の水を用いる。
【0036】
残液希釈工程では、第2排出管48を流れる残液Cと配管52を流れる希釈水Eとを合流させ、分離工程で分離した残液Cを希釈水Eで希釈して希釈残液Gとする。例えば薬物水溶液Aが塩酸水溶液の場合、未反応の塩酸を含む希釈残液Gが得られる。希釈残液Gは、廃棄してもよく、有効塩素濃度及びpHによっては殺菌消毒に使用してもよい。
希釈水Eによる残液Cの希釈の度合いは、例えば、目的に応じて適宜調節することができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、分離部14の空間38において、排出物Bを、未反応の薬物を含む残液Cと、電気分解によって生じたガス及び一次電解水を含む成分Dとに分離する。特許文献1のような従来の装置では、未電解の塩酸が塩酸除去部に貯留されるか、又は電解槽に戻されるため、連続運転時に塩酸がオーバーフローして電解水に混入することがある。しかし、無隔膜電解槽12で薬物水溶液Aを電気分解し、分離部14の空間38で残液Cと成分Dに分離して排出することで、未電解の塩酸を電解水Fとは分離した状態で廃棄することが可能である。これにより、連続運転時でも予期せず塩酸が電解水Fに混入することを抑制できるため、pHの低下が十分に抑制された電解水Fを連続的に安定して製造することができる。
【0038】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態の電解水製造装置100Aを示す概略構成図である。電解水製造装置100Aは、送液部10と、無隔膜電解槽12と、分離部14と、第1希釈部16と、第1吸引部20と、第2吸引部22とを備えている。電解水製造装置100Aは、第2希釈部18を備えていない以外は、電解水製造装置100と同様の態様である。
図3における
図1と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。
【0039】
電解水製造装置100Aを用いた電解水の製造では、電気分解工程において無隔膜電解槽12内で薬物水溶液Aを電気分解し、分離部14の空間38に排出物Bとして排出する。そして、分離工程において排出物Bを残液Cと成分Dとに分離し、残液Cと成分Dをそれぞれ分離部14から排出する。分離した成分Dは希釈溶解工程で希釈水Eを加えて電解水Fとする。電解水製造装置100Aには第2希釈部18が備えられていないため、残液Cは希釈されない。
【0040】
第2実施形態においても、無隔膜電解槽12で薬物水溶液Aを連続的に電気分解し、分離部14で排出物Bを残液Cと成分Dとに分離して排出することで、pHの低下が十分に抑制された電解水Fを連続的に製造することができる。
このように、本発明の電解水製造装置は、第2希釈部を備えていなくてもよい。本発明の電解水の製造方法は、残液希釈工程を含まなくてもよい。
【0041】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態の電解水製造装置100Bを示す概略構成図である。電解水製造装置100Bは、送液部10と、無隔膜電解槽12と、分離部14と、第1希釈部16と、第2希釈部18Bと、第1吸引部20と、第2吸引部22とを備えている。電解水製造装置100Bは、第2希釈部18の代わりに第2希釈部18Bを備えている以外は、電解水製造装置100と同様の態様である。
図4における
図1と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。
【0042】
第2希釈部18Bは、配管52と、一端が配管52の第2吸引部22よりも上流側から分岐し、他端が第2吸引部22の下流側に接続された配管54と、配管54に設けられた流量調整部56とを備えている。第2希釈部18Bでは、第1実施形態に比べて残液Cを希釈水Eでさらに高倍率に希釈することができる。そのため、分離部14から排出される残液Cに塩酸が多く含まれ、pHが低くても、例えばpHを食品添加物の微酸性電解水で指定されている5~6.5の範囲まで調整することが容易である。
【0043】
流量調整部56としては、配管54を流れる希釈水Eの流量を調整できるものであればよく、例えば、残液C及び希釈残液GのpHに応じて下流側の圧力を調節し、配管54を流れる希釈水Eの流量を調整できる減圧弁を例示できる。
【0044】
電解水製造装置100Bを用いた電解水の製造では、電気分解工程において無隔膜電解槽12内で薬物水溶液Aを電気分解し、分離部14の空間38に排出物Bとして排出する。そして、分離工程において排出物Bを残液Cと成分Dとに分離し、残液Cと成分Dをそれぞれ分離部14から排出する。分離した成分Dには希釈溶解工程で希釈水Eを加えて電解水Fとする。また、残液Cには第2希釈部18Bによって配管52及び配管54を流れる希釈水Eを加えて希釈し、希釈残液Gとする。
【0045】
第3実施形態においても、無隔膜電解槽12で薬物水溶液Aを連続的に電気分解し、分離部14で排出物Bを残液Cと成分Dとに分離して排出することで、pHの低下が十分に抑制された電解水Fを連続的に製造することができる。また、第3実施形態では、希釈残液GのpHが低くなることを抑制できるため、電解水Fだけでなく希釈残液Gを殺菌消毒に使用することもできる。
【0046】
[第4実施形態]
図5は、第4実施形態の電解水製造装置100Cを示す概略構成図である。電解水製造装置100Cは、送液部10と、無隔膜電解槽12と、分離部14と、第1希釈部16と、第2希釈部18と、第1吸引部20と、第2吸引部22と、残液合流手段58と、を備えている。電解水製造装置100Cは、残液合流手段58をさらに備えている以外は、電解水製造装置100と同様の態様である。
図5における
図1と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。
【0047】
残液合流手段58は、成分Dと希釈水Eとの合流部分よりも下流側で、残液Cの少なくとも一部を電解水Fに合流させる配管60と、配管60に設けられ、配管60内の流量を調整しつつ電解水Fに合流させる流量調整部62とを備えている。
この例では、配管60は、一端が配管52の第2吸引部22の下流側に接続され、他端が配管50の第1吸引部20の下流側に接続されている。そのため、分離部14から排出された残液Cが希釈液Eで希釈された後に希釈残液Gの少なくとも一部が電解水Fに合流されるようになっている。
【0048】
電気分解後に分離部14で分離される残液Cにも、薬物の電解生成物が含まれる。例えば薬物水溶液Aが塩酸水溶液の場合、分離部14から排出される残液Cにも次亜塩素酸水が含まれる。そのため、例えば電解水FのpHが5~6.5を満たす範囲で残液Cの少なくとも一部を電解水Fに合流させることで、残液Cに含まれる次亜塩素酸水も殺菌消毒に利用することができる。
【0049】
流量調整部62としては、配管60を流れる希釈残液G(残液C)の流量を調整できるものであればよく、例えば、電解水F及び希釈残液G(残液C)のpHに応じて電解水F側の圧力を調節し、配管60を流れる希釈残液G(残液C)の流量を調整できる減圧弁を例示できる。
【0050】
電解水製造装置100Cを用いた電解水の製造では、電気分解工程において無隔膜電解槽12内で薬物水溶液Aを電気分解し、分離部14の空間38に排出物Bとして排出する。そして、分離工程において排出物Bを残液Cと成分Dとに分離し、残液Cと成分Dをそれぞれ分離部14から排出する。分離した成分Dに含まれる一次電解水には希釈溶解工程で希釈水Eを加えて電解水Fとする。また、残液Bには残液希釈工程で希釈水Eを加えて希釈残液Gとする。さらに、希釈残液G(残液C)の少なくとも一部を電解水Fに合流させる。
【0051】
第4実施形態においても、無隔膜電解槽12で薬物水溶液Aを連続的に電気分解し、分離部14で排出物Bを残液Cと成分Dとに分離して排出することで、pHの低下が十分に抑制された電解水Fを連続的に製造することができる。また、第4実施形態では、残液Cの少なくとも一部を電解水Fに合流させて殺菌消毒に使用することができる。第1吸引部20側と第2吸引部22側の圧力を調整することで各々の吸引バランスを調節しやすく、有効塩素濃度やpHの調整が容易な点でも有利である。また、本発明の効果を損なわない範囲で電解水Fに希釈残液Gの少なくとも一部を混合することで、希釈残液G中の次亜塩素酸を回収しつつ、残液Cの排水量(廃棄量)も低減できる。
【0052】
[第5実施形態]
図6は、第5実施形態の電解水製造装置100Dを示す概略構成図である。電解水製造装置100Dは、送液部10と、無隔膜電解槽12と、分離部14と、第1希釈部16と、第2希釈部18と、を備えている。電解水製造装置100Dは、第1吸引部20及び第2吸引部22を備えていない以外は、電解水製造装置100と同様の態様である。
図6における
図1と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。
【0053】
本実施形態では、無隔膜電解槽12で電気分解が進むとガスが生じるため、無隔膜電解槽12側に比べて下流の第1希釈部16側や第2希釈部18側は圧力が低くなり、圧力差が生じる。そのため、その圧力差によって、第1吸引部20や第2吸引部22が備えられていなくても、成分Dと残液Cはそれぞれ自然に分離部14から下流へと流れていくことが可能である。
【0054】
第5実施形態においても、無隔膜電解槽12で薬物水溶液Aを連続的に電気分解し、分離部14で排出物Bを残液Cと成分Dとに分離して排出することで、pHの低下が十分に抑制された電解水Fを連続的に製造することができる。
このように、本発明の電解水製造装置は、第1吸引部及び第2吸引部のいずれか一方又は両方を備えていなくてもよい。
【0055】
本発明の電解水製造装置は、分離部の空間が無隔膜電解槽の上面及び側面の両方に接するように設けられている態様には限定されない。分離部の空間は、無隔膜電解槽の上面又は側面のいずれか一方だけに接するように設けられていてもよい。
【0056】
例えば、
図7に示すように、電解槽本体30の少なくとも一部の側壁30aがハウジング36Aの側壁36aから離間し、ハウジング36Aの内部における電解槽本体30の側壁30aの外側だけに分離部14の空間38が形成されている電解分離ユニット13Aであってもよい。この例の分離部14の空間38は、無隔膜電解槽12の側面12bだけに接するように設けられている。
【0057】
この態様では、ハウジング36Aの内部において、ハウジング36Aの側壁36aから離間している電解槽本体30の側壁30aの上部に、電気分解後の排出物Bを分離部14の空間38へと供給するための供給部33が設けられている。供給部33は、分離部14の空間38における残液Cの液面よりも上方に位置している。また、ハウジング36Aの上部に成分Dを排出するための第1排出部42が設けられている。
【0058】
本発明の電解水製造装置では、分離部の空間が無隔膜電解槽の上面及び側面に接しないように、分離部が無隔膜電解槽とは別々に設けられていてもよい。
例えば、本発明の電解水製造装置は、
図8に例示した電解水製造装置100Eであってもよい。電解水製造装置100Eは、以下に説明する構成以外は、電解水製造装置100と同様の態様である。
図8における
図1と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。電解水製造装置100Eでは、無隔膜電解槽12と分離部14とが別々に設けられ、無隔膜電解槽12の排出部41と分離部14の供給部43とが配管45で接続されている。無隔膜電解槽12から分離部14に排出物Bを供給する供給部43は、分離部14の空間38における残液Cの液面よりも上方に位置している。
【0059】
電解水製造装置100Eでは、配管45を通じて排出物Bが無隔膜電解槽12から分離部14に送られる。電解水製造装置100Eを用いる場合においても、無隔膜電解槽12で薬物水溶液Aを連続的に電気分解し、分離部14で排出物Bを残液Cと成分Dとに分離して排出することで、pHの低下が十分に抑制された電解水Fを連続的に製造することができる。また、分離した残液を電解槽に戻すとオーバーフローが起こって塩酸が電解水に混入し、電解水のpHが低下するおそれがあるが、電解水製造装置100Eでは分離部14で分離した塩酸を残液Cとして廃棄するため、電解水FのpH低下を十分に抑制できる。
【0060】
また、電解水製造装置100Eでも、無隔膜電解槽12から排出された排出物B中の成分Dが、分離部14の空間38における残液C中を通過せずに、当該残液Cの液面よりも上方に到達する。これにより、成分Dに未電解の塩酸が混入することが防がれ、よりpHの安定した電解水Fを得ることができる。また、成分Dが残液C中を通過しないことで、溶解性の高い塩素ガスが残液Cに溶解して捕集され、電解水Fの有効塩素濃度が低下することも抑制できる。
【0061】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
本発明の電解水製造装置は、分離部において排出物からガスのみを分離するものであってもよい。具体的には、無隔膜電解槽、送液部、分離部、第1希釈部、及び第2吸引部を備え、分離部の空間内において排出物を残液とガスに分離し、排出物からガスが分離された残液を第2吸引部によって吸引する電解水製造装置であってもよい。
【0062】
分離部において排出物からガスのみを分離する方法としては、例えば、気体透過性フィルターやサイクロン式セパレーター等の設置が挙げられる。
このような電気分解後の排出物からガスのみを分離する態様の電解水製造装置は、高濃度の次亜塩素酸水を製造しやすく、例えば、床等の洗浄用途や、特定防除資材(特定農薬)といった様々な用途に使用できる電解水を製造できる。
【0063】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[有効塩素濃度の測定]
有効塩素濃度の測定は、塩素計(柴田科学社製、製品名:ハンディ水質計AQ-102)を用い、以下の手順で行った。サンプルセルに、電解水のサンプルを10mL採取した。次いで、計測のセルホルダーにサンプルセルをセットし、ゼロ点調整を行った。次に、サンプルセルを取り出して発色試薬(柴田科学社製、製品名:粉体試薬 残留塩素高濃度(100回分))を入れて混合した。計測のセルホルダーにサンプルセルをセットし、濃度を測定した。
【0065】
[pHの測定]
pHは、pH計(堀場製作所製、製品名:pH METER D-51)によって測定した。
【0066】
[実施例1]
図1及び
図2に例示した電解水製造装置100を用いて電解水を製造した。
無隔膜電解槽12としては、12セル複極式の無隔膜電解槽を用いた。薬物水溶液Aとして9質量%塩酸水溶液を用いた。無隔膜電解槽12における電気分解の条件は、電圧24V、電流6Aとした。第1吸引部20及び第2吸引部22としては希釈水Eを駆動流体とするエゼクタを使用した。希釈液Eとしては、pH7.56の水を使用した。電解水Fの流量を1074L/h、希釈残液Gの流量を146L/hとした。
得られた電解水Fと希釈残液Gの有効塩素濃度及びpHを表1に示す。
【0067】
[比較例1]
分離部を備えず、無隔膜電解槽で電気分解後の排出物を分離せずに希釈液で希釈して電解水とする電解水製造装置を用い、電解水の流量を1074L/hとする以外は、実施例1と同様の条件で電解水を製造した。得られた電解水の有効塩素濃度及びpHを表1に示す。
【0068】
【0069】
電気分解後の無隔膜電解槽12からの排出物Bを分離部14で残液Cと成分Dに分離して排出する実施例1では、比較例1に比べて、得られる電解水FのpHが高く、塩酸の混入によるpHの低下が十分に抑制されていた。また、実施例1では塩酸が残液Cとして電解水Fとは分離された状態で廃棄されるため、長期間運転したとしてもオーバーフローによる電解水FのpH低下を抑制できた。
【0070】
[実施例2]
図4に例示した電解水製造装置100Bを用いて電解水を製造した。
無隔膜電解槽12としては、12セル複極式の無隔膜電解槽を用いた。薬物水溶液Aとして21質量%塩酸水溶液を用いた。無隔膜電解槽12における電気分解の条件は、電圧24V、電流6Aとした。第1吸引部20及び第2吸引部22としては希釈水Eを駆動流体とするエゼクタを使用した。希釈液Eとしては、pH7.65の水を使用した。流量調整部56の調節によって、配管54を流れる希釈液Eによる希釈倍率を希釈無し、2倍希釈、3倍希釈にそれぞれ調整した。電解水F及び希釈残液Gの流量は表2に示すとおりとした。
得られた電解水Fと希釈残液Gの有効塩素濃度及びpHを表2に示す。
【0071】
【0072】
表2に示すように、配管54を流れる希釈液Eによって2倍希釈又は3倍希釈して得た希釈残液Gは有効塩素濃度及びpHが十分に高く、電解水Fだけでなく希釈残液Gも微酸性電解水として利用できるものであった。
【符号の説明】
【0073】
100,100A~100E…電解水製造装置、10…送液部、12…無隔膜電解槽、12a…上面、12b…側面、14…分離部、16…第1希釈部、18…第2希釈部、20…第1吸引部、22…第2吸引部、30…電解槽本体、32…陽極、34…陰極、36,36A…ハウジング、38…空間、40…薬液供給部、42…第1排出部、44…第1排出管、46…第2排出部、48…第2排出管、56…流量調整部、58…残液合流手段、62…流量調整部。