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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】便器及び防露材
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/02 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
E03D11/02 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020080427
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021173141
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿治
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 嵩正
(72)【発明者】
【氏名】中川 舞子
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169002(JP,A)
【文献】特開2001-295351(JP,A)
【文献】米国特許第05210883(US,A)
【文献】実開平06-076478(JP,U)
【文献】実開昭52-101540(JP,U)
【文献】韓国登録実用新案第20-0361182(KR,Y1)
【文献】中国実用新案第210421323(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00 - 7/00
E03D 11/00 - 13/00
E03C 1/12 - 1/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部及び前記便鉢部に連通した便器排水路を有した便器本体と、
前記便器排水路によって形成されたトラップ部の下面との間で空間を形成して前記便器本体に取り付けられた防露材と、
前記トラップ部と前記防露材との間であって、前記防露材の上端よりも下方に設けられ、前記防露材の上面から上方に突出しており、前記防露材が前記トラップ部に近づく方向の移動を制限する制限部と、
を備えている便器。
【請求項2】
前記制限部は前記防露材の外周部よりも内側に設けられている請求項1に記載の便器。
【請求項3】
前記制限部は、前記トラップ部の上下方向の中央よりも下側に位置する前記トラップ部の下面と前記防露材との間に設けられている請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の便器。
【請求項4】
前記制限部は、前記トラップ部の最下端部と前記防露材との間に設けられている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の便器。
【請求項5】
前記制限部は前記防露材に一体的に設けられている請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の便器。
【請求項6】
前記トラップ部に設けられ、前記トラップ部内に洗浄水を吐水するジェット吐水部を備えており、
前記制限部は前記ジェット吐水部に前記防露材が接触しないように前記防露材の移動を制限する請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の便器。
【請求項7】
前記制限部は、前記トラップ部の下面に接触する接触面を有しており、
前記接触面は、接触する前記トラップ部の下面に対応する形状である請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の便器。
【請求項8】
前記トラップ部と前記防露材との間に密閉空間が形成されている請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の便器。
【請求項9】
前記制限部の上面が前記トラップ部に接触することによって、前記防露材が前記トラップ部に近づく方向の移動を制限する請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の便器。
【請求項10】
前記制限部は、前記防露材の上面から上方に延びた立ち面と、前記立ち面の上端縁に連続した略平面である上面と、を有している請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の便器。
【請求項11】
便鉢部及び前記便鉢部に連通した便器排水路を有した便器本体に取り付けられる防露材であって、
前記便器排水路によって形成されたトラップ部の下面との間で空間を形成して前記便器本体に取り付けられる防露材本体と、
前記トラップ部と前記防露材本体との間であって、前記防露材本体の上端よりも下方に設けられ、前記防露材本体の上面から上方に突出しており、前記防露材本体が前記トラップ部に近づく方向の移動を制限する制限部と、
を備えている防露材。
【請求項12】
前記制限部の上面が前記トラップ部に接触することによって、前記トラップ部に近づく方向の移動を制限する請求項11に記載の防露材。
【請求項13】
前記制限部は、前記防露材本体の上面から上方に延びた立ち面と、前記立ち面の上端縁に連続した略平面である上面と、を有している請求項11及び請求項12のいずれか1項に記載の防露材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は便器及び防露材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の便器を開示している。この便器は、便器本体及び防露材を備えている。便器本体は、便鉢部及び便鉢部に連通した便器排水路を有している。便器本体は、便器排水路によってトラップ部が形成されている。防露材は、トラップ部の下面との間で空間を形成して便器本体に取り付けられている。防露材とトラップ部の下面との間に形成された空間は、断熱層として機能し、断熱性を有する防露材とともに、トラップ部の下面に結露が生じることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-159184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された便器は、防露材を便器本体に取り付ける際、トラップ部の下方からトラップ部に近づく方向に防露材を移動させて取り付ける。このため、防露材がトラップ部の下面に近づきすぎたり、防露材の上面の大部分がトラップ部の下面に接触したりするおそれがある。この場合、防露材とトラップ部の下面との間の空間が良好に形成されず、空間による断熱機能が良好に発揮できないおそれがある。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、トラップ部の結露を良好に防止することができる便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の便器は、便鉢部及び前記便鉢部に連通した便器排水路を有した便器本体と、前記便器排水路によって形成されたトラップ部の下面との間で空間を形成して前記便器本体に取り付けた防露材と、前記トラップ部と前記防露材との間であって、前記防露材の上端よりも下方に設けられ、前記防露材がトラップ部に近づく方向の移動を制限する制限部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の便器を左右方向の中央で切断した断面図である。
図2】実施形態1の便器本体を示す一部切り欠き斜視図である。
図3】実施形態1の便器を示す底面図である。
図4】実施形態1の防露材を示す斜視図である。
図5】実施形態1の防露材を制限部の前後方向の中央で切断した断面図である。
図6】実施形態2の便器を左右方向の中央で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の便器を具体化した実施形態1及び実施形態2について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、上下方向は、図1図2及び図6に示すX軸の正方向を上方向とし、X軸の負方向を下方向とする。左右方向については、図2及び図3に示すY軸の正方向を左方向とし、Y軸の負方向を右方向とする。前後方向は、図1図2図3及び図6に示すZ軸の負方向を前方向とし、Y軸の正方向を後方向とする。
【0009】
<実施形態1>
実施形態1の便器1は、図1に示すように、便器本体10、ジェット吐水部100、凍結防止部材である面状ヒータ130、緩衝材である難燃性の発泡ウレタンシート150、及び防露材170を備えている。便器本体10は、便鉢部20、上壁部30、便器排水路40、外周壁部50、後壁部60、及び内壁部70を有している。便鉢部20は上方を向いて開口した略椀形状である。便鉢部20の上端開口21は、上方から見た平面視において、前後方向に長い略楕円形状である。便鉢部20は下端部に便器排水路40の上流端に連通する下端開口23が形成されている。下端開口23は上下方向に開口している。便鉢部20は左側上部に図示しない吐水口が形成されている。吐水口は図示しない洗浄水の供給源に連通している。吐水口から吐水された洗浄水は、上方から見た平面視において、便鉢部20の表面を反時計回転方向に旋回しつつ下端開口23から便器排水路40内へ流れる。
【0010】
上壁部30は、便鉢部20の上端縁に連続して外方向に広がり、便器本体10の上面を形成している。上壁部30は、便鉢部20の上端開口21の後端縁に沿って前後方向及び左右方向に広がった上面凹部31が形成されている。上面凹部31は便鉢部20側と上方に向けて開口している。上壁部30は、上面凹部31より後方に、左右方向に並んだ一対の取付け孔30Hが上下方向に貫通して形成されている(図2参照)。取付け孔30Hは便器本体10の左右対称位置に形成されている。一対の取付け孔30Hは図示しない便座装置を便器本体10の上部に取り付ける際に利用される。
【0011】
便器排水路40は、流入路41、上昇流路43、及び下降流路45を具備している。便鉢部20の下部、流入路41、及び上昇流路43によって、溜水面WLよりも下方に洗浄水が滞留するトラップ部80を形成している。流入路41の上部は前端から前後方向の約3/4の範囲において便鉢部20の下端開口23に連通している。流入路41は、便鉢部20よりも下方に設けられ、便鉢部20の下端開口23から後方に向けて延びている。流入路41は、上壁41A、左右壁41B、及び下壁41Cによって形成されている。上壁41Aは便鉢部20の下端開口23よりも後方の便鉢部20の一部分によって構成されている。
【0012】
流入路41の左右壁41Bは便鉢部20の下部から下方に延びている。流入路41の下壁41Cは、前端が便鉢部20の下部であって、下端開口23の前端縁に連続し、左右両端が左右壁41Bの下端に連続している。流入路41の下壁41Cは湾曲部141と凹部142とを有している。下壁41Cは略均一な厚さである。湾曲部141は、便器本体10の左右中央断面形状において、便鉢部20の下部に連続した前端から下方に向けて斜め前方下方に膨らむように湾曲している。
【0013】
凹部142は、図1及び図2に示すように、湾曲部141の後端に連続しており、内面が下方に凹み、外面が下方に突出している。凹部142は、前面部142A、底面部142B、及び後面部142Cによって形成されている。前面部142Aは凹部142の前面を形成している。前面部142Aは、上端が湾曲部141の後端に連続し、下方に向けて斜め後方に傾斜している。前面部142Aの内面である凹部142の前面、及び前面部142Aの外面は、略平面である。前面部142Aは後述する吐水ノズル110が挿通する貫通孔142Hが形成されている。
【0014】
底面部142Bは凹部142の底面を形成している。底面部142Bは、前端が前面部142Aの下端に連続し、後方へ延びている。底面部142Bの内面である凹部142の底面、及び底面部142Bの外面は、左右縁部及び後縁部を除いて略平面であり、略水平面上に広がっている。
【0015】
後面部142Cは凹部142の後面を形成している。後面部142Cは、下端が底面部142Bの後端に連続し、上方に向けて斜め後方に傾斜している。後面部142Cの内面である凹部142の後面、及び後面部142Cの外面は、左右中央部から左右方向に向けて前方へ湾曲する湾曲面である。後面部142Cの上端部は上昇流路43の左右壁43Bの下端に連続している。
【0016】
凹部142の外面は、流入路41の下壁41Cの湾曲部141の外面よりも下方に突出しており、便鉢部20及び便器排水路40によって形成されたトラップ部80の最も下方に位置している。
【0017】
上昇流路43の上流端は流入路41の下流端に連通している。上昇流路43と流入路41の境界部B1は後方に向けて斜め上方を向いた流路を形成している。上昇流路43は、便鉢部20の下端開口23よりも後方の便鉢部20の左右中央部に沿って、後方に向けて斜め上方に傾斜して延びている。上昇流路43は、下流部において、後方に向けて斜め上方を向いた流路を後方に向けた流路に変化させている。上昇流路43は、上壁43A、左右壁43B、及び下壁43Cによって形成されている。上壁43Aの殆どが便鉢部20の後側の左右中央部によって構成されている。上昇流路43の左右壁43Bの夫々は、流路方向に直交する面で切断した断面形状において、便鉢部20から下方に延びている。上昇流路43の下壁43Cは、後方に向けて斜め上方に延びており、流路方向に直交する面で切断した断面形状において、左右中央部が下方に膨らんで湾曲している。
【0018】
下降流路45の上流端は上昇流路43の下流端に連通している。下降流路45と上昇流路43の境界部B2は後方に向いた流路を形成している。下降流路45は、上流部において湾曲し、後方に向いた流路を鉛直下方に向けた流路に変化させている。下降流路45は筒部45Aによって形成されている。筒部45Aの一部は便器本体10の後壁部60よりも後方に露出している。筒部45Aの下流部は、略円筒状であり、便器本体10の外周壁部50と後壁部60に囲まれた便器本体10の内部に位置している。
【0019】
外周壁部50は、図1から図3に示すように、上壁部30の前端縁から左右方向に延びた外縁部に連続して下方に広がっている。外周壁部50は、便鉢部20、便器排水路40の流入路41及び上昇流路43を前方及び左右側方から覆っている。後壁部60は便器本体10の後面を形成している。外周壁部50の下端面50A及び後壁部60の下端面60Aは、便器本体10を使用状態に設置した際、接地面に接触する。便器本体10は外周壁部50及び後壁部60に囲まれて下方に開口している。内壁部70は、上端部が便鉢部20の溜水面WLよりも下方に連続し、下端部が外周壁部50の下部に連続している。
【0020】
ジェット吐水部100は、図1に示すように、吐水ノズル110と給水管120とを有している。吐水ノズル110は流入路41の凹部142の前面部142Aに形成された貫通孔142Hに挿通して前面部142Aに取り付けられている。給水管120は、図示しない洗浄水の供給源に連通し、下流端が吐水ノズル110に接続されている。吐水ノズル110に接続された給水管120は、便器排水路40の流入路41の凹部142の底面部142Bの外面(以下、「トラップ部80の最下面X」という。)よりも高い位置に配置されている。吐水ノズル110が取り付けられた前面部142Aは下方に向けて斜め後方に傾斜しており、その内面は後方に向けて斜め上方を向いている。このため、吐水ノズル110から吐水される洗浄水は、後方に向けて斜め上方へ吐水され、便器排水路40の上昇流路43の下壁43Cに沿って流れる。
【0021】
面状ヒータ130はアルミ箔にヒータ線を貼ったものである。面状ヒータ130は、トラップ部80の最下面Xを露出させて、流入路41の下流部、上昇流路43、吐水ノズル110及び給水管120を包むように貼られている。
【0022】
発泡ウレタンシート150は、面状ヒータ130と同様、トラップ部80の最下面Xを露出させて、面状ヒータ130の外側に取り付けられる。発泡ウレタンシート150は、面状ヒータ130と防露材170との接触を防ぐものである。発泡ウレタンシート150は、多数の気泡が存在するため、防露材170と面状ヒータ130との間に発泡ウレタンシート150を挟むことによって、防露材170と面状ヒータ130との間に空気層を形成することと同様の断熱効果を奏することができる。
【0023】
防露材170は発泡スチロールによって形成されている。防露材170は、便器本体10の下方開口から便器本体10内に挿入され、トラップ部80の下方からトラップ部80に近づく方向に移動させて、取り付けられる。防露材170は、図3に示すように、防露材本体171及び制限部172を備えている。防露材170は、図1に示すように、防露材本体171の外周端面171Aが便器本体10の内壁部70及び便器排水路40の下降流路45を形成する筒部45Aの前側外周面に接触した状態で取り付けられる。防露材本体171は、トラップ部80を形成する便鉢部20の下部と便器排水路40の流入路41及び上昇流路43の下方に位置し、トラップ部80の下面との間で密閉空間Sを形成している。詳しくは、防露材本体171は、便鉢部20の下部との間、便器排水路40の流入路41の左右壁41B及び下壁41Cとの間、上昇流路43の左右壁43B及び下壁43Cとの間で密閉空間Sを形成している。防露材本体171と、便器排水路40の流入路41の左右壁41B及び下壁41C、上昇流路43の左右壁43B及び下壁43Cとの間には、上述したように、面状ヒータ130及び発泡ウレタンシート150が配置されている。
【0024】
便器本体10は、図1に示すように、便器排水路40の流入路41の凹部142が他の部分よりも低い位置に設けられている。このため、防露材本体171は、図1図4,及び図5に示すように、前後方向及び左右方向の中央部171Bが下方に凹んでおり、便器本体10内に取り付けられた状態において、前後方向の中央部171Bが最も低くなるように形成されている。防露材本体171は前後方向及び左右方向の中央部171Bに制限部172が一体的に形成されている。制限部172は防露材本体171の前後方向及び左右方向の中央部171Bの上面から上方に突出した直方体形状である。つまり、制限部172は、防露材本体171の下方に凹んだ前後方向及び左右方向の中央部171Bからトラップ部80の方向に突出している。
【0025】
制限部172の上面172Aは略平面である。制限部172の突出高さは上面172Aの一辺の長さの約1/4である。制限部172の上面172Aの面積は、トラップ部80の最下面Xの面積よりも大きい。制限部172の上面172Aは、防露材本体171を便器本体10内に取り付けた際、トラップ部80の最下面Xに接触した状態になる。この際、制限部172の上面172Aの全体がトラップ部80の最下面Xに接触しなくても部分的に接触してもよい。制限部172の上面172Aがトラップ部80の最下面Xに接触する接触面に相当する。制限部172の上面172Aがトラップ部80の最下面Xに接触することによって、防露材本体171の前後方向の中央部171Bがトラップ部80に近づく方向の移動を制限している。つまり、制限部172は防露材170がトラップ部80に近づく方向の移動を制限している。防露材170がトラップ部80に近づく方向の移動を制限とは、トラップ部80に近づく方向に防露材本体171の外周部の移動を制限することである。また、防露材170がトラップ部80に近づく方向の移動を制限とは、制限部172の接触面に相当する上面172Aと直交する方向において、トラップ部80に近づく方向に防露材本体171の移動を制限することである。さらに、防露材170がトラップ部80に近づく方向の移動を制限とは、鉛直方向においてトラップ部80に近づく方向に防露材本体171の移動を制限することである。
【0026】
以上説明したように、実施形態1の便器1は、便器本体10、防露材170、及び制限部172を備えている。便器本体10は便鉢部20及び便鉢部20に連通した便器排水路40を有している。防露材170は便器排水路40によって形成されたトラップ部80の下面との間で密閉空間Sを形成して便器本体10に取り付けられている。制限部172は、防露材170の上端よりも下方に位置する防露材170の前後方向の中央部170Bに一体的に形成され、上面172Aがトラップ部80の最下面Xに接触している。制限部172は防露材170の外周部よりも内側に設けられている。つまり、制限部172は、トラップ部80の最下端部である最下面Xと防露材170との間に設けられ、防露材170がトラップ部80に近づく方向の移動を制限している。
【0027】
この便器1は、防露材170に形成された制限部172が、トラップ部80の最下面Xに接触して便器本体10内に取り付けられ、防露材170がトラップ部80に近づく方向の移動を制限している。このため、この便器1は、防露材170とトラップ部80の下面との間に密閉空間Sが形成され、密閉空間Sによる断熱機能を良好に発揮することができる。よって、この便器1はトラップ部80の結露を良好に防止することができる。
【0028】
実施形態1の便器1はジェット吐水部100を備えている。ジェット吐水部100の吐水ノズル110はトラップ部80を形成する便器排水路40の流入路41の凹部142の前面部142Aに取り付けられ、便器排水路40の上昇流路43の下面に沿って、洗浄水を吐水する。吐水ノズル110に接続された給水管120は、トラップ部80の最下面Xよりも高い位置に配置されている。このため、制限部172は、ジェット吐水部100である吐水ノズル110及び給水管120に防露材170が接触しないように防露材170の移動を制限している。このように、この便器1は、防露材170が吐水ノズル110や給水管120に接触することによって吐水ノズル110と給水管120との接続部に力が加わり、漏水の原因になることを防止することができる。
【0029】
実施形態1の便器1の制限部172は、トラップ部80の最下面Xに接触する接触面である上面172Aが、トラップ部80の最下面Xよりも大きい面積を有し、トラップ部80の最下面Xと同じように平面に形成されている。つまり、制限部172の上面172Aはトラップ部80の最下面Xに対応する形状である。このため、この便器1は、防露材170を便器本体10内に取り付ける際、取付け作業者は制限部172を見ることができなくても、制限部172の上面172Aをトラップ部80の最下面Xに確実に接触させることができる。
【0030】
実施形態1の便器1はトラップ部80と防露材170との間に密閉空間Sが形成されている。このため、この便器1は密閉空間Sが空気の断熱層として機能し、防露材170とともに、トラップ部80に結露が生じることを防止している。
【0031】
<実施形態2>
実施形態2の便器2は、図6に示すように、便器本体210の形状、防露材370の形状、及び制限部372,373の位置及び数が実施形態1と異なり、ジェット吐水部、凍結防止部材、及び緩衝材を備えていない。実施形態1と同様な構成は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0032】
実施形態2の便器2は便器本体210及び防露材370を備えている。便器本体210は、実施形態1と同じ構成であり、便鉢部220、上壁部230、便器排水路240、外周壁部250、後壁部260、及び内壁部270を有している。便器排水路240も、実施形態1と同じ構成であり、流入路241、上昇流路243、及び下降流路245を具備している。便鉢部220の下部、流入路241、及び上昇流路243によって、溜水面WLよりも下方に洗浄水が滞留するトラップ部280を形成している。
【0033】
流入路241及び上昇流路243は連続した筒部240Aによって形成されている。流入路241は、便鉢部220の下端開口223から下方に向けて斜め後方に傾斜して延びている。流入路241は、下流部において湾曲し、下方に向いた流路を後方に向けた流路に変化させている。上昇流路243の上流端は流入路241の下流端に連通している。上昇流路243と流入路241の境界部B1は後方に向いた流路を形成している。上昇流路243は、上流部において湾曲し、上方に向けて斜め後方に傾斜して延びている。上昇流路243は、下流部において湾曲し、上方に向けて斜め後方に向いた流路をわずかに後方に向けている。下降流路245の上流端は上昇流路243の下流端に連通している。下降流路245と上昇流路243との境界部B2は後方に向けて斜め上方をむいた流路を形成している。下降流路245は、上流部が大きく広がっており、下流端部が略鉛直下方に向いて延びている。下降流路245の下流端部は、略円筒状の筒部245Aによって形成され、便器本体210の外周壁部250と後壁部260に囲まれた便器本体210の内部に位置している。
【0034】
防露材370は発泡スチロールによって形成されている。防露材370は、便器本体210の下方開口から便器本体210内に挿入され、トラップ部280の下方からトラップ部280に近づく方向に移動させて、取り付けられる。防露材370は、防露材本体371及び制限部372,373を備えている。防露材本体371の外周端面371Aが便器本体210の内壁部270及び便器排水路240の下降流路245を形成する筒部245Aの前側外周面に接触した状態で取り付けられる。防露材本体371は、トラップ部280を形成する便鉢部220の下部と便器排水路240の流入路241及び上昇流路243の下方に位置し、トラップ部280の下面との間で密閉空間Sを形成している。
【0035】
防露材本体371は、便器本体210内に取り付けられた際、トラップ部280の上下方向の中央よりも下側である流入路241の中間部の下面及び上昇流路243の中間部の下面に接触する2個の制限部372,373が一体的に形成されている。各制限部372,373の上面372A,373Aがトラップ部280の流入路241の中間部の下面、及び上昇流路243の中間部の下面に接触する。この際、各制限部372,373の上面372A,373Aの全体がトラップ部280の流入路241の中間部の下面、及び上昇流路243の中間部の下面に接触しなくても部分的に接触してもよい。
【0036】
各制限部372,373の上面372A,373Aは、トラップ部280の下面に接触する接触面に相当する。各制限部372,373の上面372A,373Aは、流入路241及び上昇流路243の下面の湾曲具合に対応した湾曲面で形成されている。各制限部372,373の上面372A,373Aがトラップ部280の流入路241の中間部の下面、及び上昇流路243の中間部の下面に接触することによって、防露材本体371がトラップ部280に近づく方向の移動を制限している。つまり、各制限部372,373は防露材370がトラップ部280に近づく方向の移動を制限している。防露材370がトラップ部280に近づく方向の移動を制限とは、トラップ部280に近づく方向に防露材本体371の外周部の移動を制限することである。また、防露材370がトラップ部280に近づく方向の移動を制限とは、各制限部372,373の接触面に相当する上面372A,373Aと直交する方向において、トラップ部280に近づく方向に防露材370の移動を制限することである。さらに、防露材370がトラップ部280に近づく方向の移動を制限とは、鉛直方向においてトラップ部280に近づく方向に防露材本体371の移動を制限することである。
【0037】
以上説明したように、実施形態2の便器2は、便器本体210、防露材370、及び2個の制限部372,373を備えている。便器本体210は便鉢部220及び便鉢部220に連通した便器排水路240を有している。防露材370は便器排水路240によって形成されたトラップ部280の下面との間で密閉空間Sを形成して便器本体210に取り付けられている。各制限部372,373は、防露材370の上端よりも下方に位置する防露材370の2か所に一体的に形成され、上面372A,373Aがトラップ部280の流入路241の中間部の下面、及び上昇流路243の中間部の下面に接触している。つまり、各制限部372,373は、トラップ部280の上下方向の中央よりも下側に位置するトラップ部280の下面と防露材370との間に設けられ、防露材370がトラップ部280に近づく方向の移動を制限している。
【0038】
この便器2は、防露材370に形成された制限部372,373がトラップ部280の下面に接触して便器本体210内に取り付けられ、防露材370がトラップ部280に近づく方向の移動を制限している。このため、この便器2は、防露材370とトラップ部280の下面との間に密閉空間Sが形成され、密閉空間Sによる断熱機能を良好に発揮することができる。よって、この便器2は、トラップ部280の結露を良好に防止することができる。
【0039】
実施形態2の便器2の各制限部372,373は、トラップ部280の下面に接触する接触面である上面372A,373Aが、流入路241及び上昇流路243の下面の湾曲具合に対応した湾曲面で形成されている。つまり、各制限部372,373の上面372A,373Aはトラップ部280の下面に対応する形状である。このため、この便器2は、防露材370を便器本体210内に取り付ける際、取付け作業者は各制限部3721,373を見ることができないが、各制限部372,373の上面372A,373Aをトラップ部280の下面に確実に接触させることができる。
【0040】
実施形態2の便器2はトラップ部280と防露材370との間に密閉空間Sが形成されている。このため、この便器2は密閉空間Sが空気の断熱層として機能し、防露材370とともに、トラップ部80に結露が生じることを防止している。
【0041】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態1及び2に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1及び2では、制限部が防露材に一体に設けられている。これに限らず、制限部は防露材と一体でなくてもよく、トラップ部に設けられていてもよい。
(2)実施形態1では、便器がジェット吐水部を備えている。これに限らず、便器はジェット吐水部を備えていなくてもよい。
(3)実施形態1では、便器が凍結防止部材と緩衝材とを備えている。これに限らず、便器は凍結防止部材と緩衝材とを備えていなくてもよい。
(4)防露材の形態及び材質は、トラップ部下面との間に空間を形成し、断熱性を有するものであればよく、実施形態1及び2に限らない。
(5)制限部材の数は、3個以上であってもよい。
(6)制限部材の形状は、適宜変更することができる。
(7)実施形態1では、制限部はトラップ部の最下面に接触している。これに限らず、制限部は吐水ノズルに接続された給水管よりも下方においてトラップ部に接触するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1,2…便器、10,210…便器本体、20,220…便鉢部、40,240…便器排水路、80,280…トラップ部、100…ジェット吐水部、170,370…防露材、171,371…防露材本体、172,372,373…制限部、172A,372A,373A…制限部の上面(接触面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6