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特許7483494建物ユニットの製造装置及び建物ユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】建物ユニットの製造装置及び建物ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20240508BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
E04B1/348 Y
B23P21/00 302A
B23P21/00 302B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020089108
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021183770
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 啓太
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-294874(JP,A)
【文献】特開2002-364177(JP,A)
【文献】特開2018-031177(JP,A)
【文献】実開昭60-117393(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
B23P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物ユニットの床部を構成する床フレームと天井部を構成する天井フレームとが混流された状態で搬入される第1搬入部と、
前記第1搬入部と搬送路で連結され、混流された前記床フレームと前記天井フレームとを異なる搬送路に流す第2搬入部と、
前記第2搬入部と搬送路で連結され、前記第2搬入部から送られる前記床フレームの仮置き場とされる第3搬入部と、
前記第3搬入部と搬送路で連結され、前記建物ユニットの柱が搬入される第4搬入部と、
前記第2搬入部と搬送路で連結され、前記第2搬入部から送られる前記天井フレームの仮置き場とされる第5搬入部と、
前記第4搬入部及び前記第5搬入部のそれぞれと搬送路で連結され、前記第4搬入部から送られる前記床フレームと前記第5搬入部から送られる前記天井フレームとが合流し、前記柱に溶接される第6搬入部と、
前記第4搬入部にて、前記床フレームの四隅を構成する仕口に装着される筒状の治具であって、当該仕口と当該仕口に仮留めされた前記柱の下端を外側から覆うことが可能な柱支持治具と、
建物の天井部に設けられ、前記第4搬入部にて、前記柱を起立姿勢で吊り上げながら前記床フレームの上方側に移動させると共に当該柱の下端を前記柱支持治具に挿入させて前記床フレームの前記仕口に仮留めする柱吊り手段と、
を備える建物ユニットの製造装置。
【請求項2】
前記建物の天井部に設けられ、前記第5搬入部に仮置きされた天井フレームを水平姿勢で吊り上げながら前記柱が設置された前記床フレームの上方側に移動させると共に、前記第6搬入部にて、当該天井フレームの下面を前記柱の上端に設置可能とする天井フレーム吊り手段と、
を備える請求項1に記載の建物ユニットの製造装置。
【請求項3】
前記第5搬入部と前記第6搬入部とを連結させる搬送路は、前記建物の天井に設けられた天井フレーム搬送路で構成とされており、
前記天井フレーム吊り手段は、前記天井フレーム搬送路の一部を構成しており、前記第5搬入部に搬送された前記天井フレームを吊り上げた状態で空中移動させ、前記第6搬入部に搬送する、
請求項2に記載の建物ユニットの製造装置。
【請求項4】
前記柱吊り手段は、前記天井部に設けられたレール部と、当該レール部に沿って横行可能に構成されると共に動力を用いてワイヤロープの巻き上げを可能とするホイスト部と、前記ワイヤロープの先端に回転可能に取り付けられ、前記柱に装着される装着部と、を備えており、
前記ワイヤロープの巻き上げに伴う前記装着部の上昇によって、前記柱を起立姿勢で吊り上げ可能とされている、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の建物ユニットの製造装置。
【請求項5】
請求項1に記載の建物ユニット製造装置を用いた建物ユニットの製造方法であって、
建物ユニットの床部を構成する床フレームと天井部を構成する天井フレームとが混流された状態で前記第1搬入部まで搬送させる工程と、
前記第1搬入部と搬送路で連結された第2搬入部で、混流された前記床フレームと前記天井フレームとを異なる搬送路に流す工程と、
前記第2搬入部と搬送路で連結された第3搬入部で、前記第2搬入部から送られる前記床フレームを仮置きする工程と、
前記第3搬入部と搬送路で連結された第4搬入部で、前記建物ユニットの柱を搬入し、前記床フレームの四隅を構成する仕口に前記柱支持治具を装着させ、前記柱吊り手段を用いて、前記柱を起立姿勢で吊り上げながら前記床フレームの上方側に移動させると共に当該柱の下端を前記柱支持治具に挿入させて前記床フレームの前記仕口に仮留めする工程と、
前記第4搬入部及び前記第5搬入部のそれぞれと搬送路で連結され前記第6搬入部で、前記第4搬入部から送られる前記床フレームと前記第5搬入部から送られる前記天井フレームとが合流し、前記柱に溶接される工程と、を含む、
建物ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物ユニットの製造装置及び建物ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物ユニットの製造工程には、建物ユニットの床部を構成する床フレームに、建物ユニットの柱を設置する柱設置工程が含まれている。この柱設置工程では、横たえられた状態で搬入された柱が、縦向きに起立させられ、持ち上げられながら床フレームの上面に設置される。従って、柱設置工程が手作業で行われる場合、重量物である柱の起立作業及び持ち上げ作業といった重筋作業が発生する。
【0003】
特許文献1に記載された建物ユニットの組立装置では、所定の組立作業エリアまで床フレームを搬送し、組立作業エリアに設けられた一対の組立台を用いて柱設置工程が行われる。この一対の組立台は、所定の組立作業エリアに所定の間隔を空けて設置されており、組立作業エリアに搬送された床フレームの左右両側に配置される。各組立台は、柱を搬送する柱搬送装置側に張り出したオーバーハングレールとオーバーハングレールに沿って移動する倒立機を備え、倒立機を移動させることにより倒立機に載置された柱を組立作業エリアに移動させる。その後、柱は、倒立機に設けられたピストンの動力で起立状態にされ、組立台の治具に支持されながら床フレームのダイヤフラムを貫通するガイドコーンに従って降下し、床フレームに設置される。このようにして、特許文献1に記載された柱設置工程では、重筋作業が不要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-291150号公報
【0005】
しかしながら、上記先行技術では、床フレームの左右両側に一対の組立台が設置されるため、組立台の設置スペースを確保することにより組立作業エリアが大型化し、他のスペースに与える制約が大きいという課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、建物ユニットの製造に伴う重筋作業を低減し、且つ、製造スペースの拡大を抑制することができる建物ユニットの製造装置及び製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る建物ユニットの製造装置は、建物ユニットの床部を構成する床フレームと天井部を構成する天井フレームと混流された状態で搬入される第1搬入部と、前記第1搬入部と搬送路で連結され、混流された前記床フレームと前記天井フレームとを異なる搬送路に流す第2搬入部と、前記第2搬入部と搬送路で連結され、前記第2搬入部から送られる前記床フレームの仮置き場とされる第3搬入部と、前記第3搬入部と搬送路で連結され、前記建物ユニットの柱が搬入される第4搬入部と、前記第2搬入部と搬送路で連結され、前記第2搬入部から送られる前記天井フレームの仮置き場とされる第5搬入部と、前記第4搬入部及び前記第5搬入部のそれぞれと搬送路で連結され、前記第4搬入部から送られる前記床フレームと前記第5搬入部から送られる前記天井フレームとが合流し、前記柱に溶接される第6搬入部と、前記第4搬入部にて、前記床フレームの四隅を構成する仕口に装着される筒状の治具であって、当該仕口と当該仕口に仮留めされた前記柱の下端を外側から覆うことが可能な柱支持治具と、建物の天井部に設けられ、前記第4搬入部にて、前記柱を起立姿勢で吊り上げながら前記床フレームの上方側に移動させると共に当該柱の下端を前記柱支持治具に挿入させて前記床フレームの前記仕口に仮留めする柱吊り手段と、を備えている。
【0008】
第1の態様に係る建物ユニットの製造装置では、床フレームに柱を設置する柱設置工程において、第4搬入部の近傍に搬入された柱の起立及び移動が柱吊り手段を用いて行われる。これにより、人力のみで柱の起立及び移動を行う場合と比べて重筋作業が低減される。更に、柱吊り手段が天井部に設けられることから、床フレームの周辺にマテハン等の大型の作業機器が設置されないため、柱設置工程に伴う製造スペースの拡大を抑制することができる。
また、柱設置工程が第4搬入部で行われ、床フレーム設置工程が第6搬入部で行われる。これにより、柱設置工程の作業中に吊り上げられた天井フレームと柱が干渉するといった事態が回避され、安全性が高まる。また、床フレームに係る製造工程を第4搬入部と第6搬入部に分担させて行うことにより、1つの搬入部における加工時間が均一化される。その結果、製造工程におけるリードタイムの停滞時間(待ち時間)を削減し、製造ラインの整流化を図ることができる。
【0009】
第2の態様に係る建物ユニットの製造装置は、第1の態様に記載の構成において、前前記建物の天井部に設けられ、前記第5搬入部に仮置きされた天井フレームを水平姿勢で吊り上げながら前記柱が設置された前記床フレームの上方側に移動させると共に、前記第6搬入部にて、当該天井フレームの下面を前記柱の上端に設置可能とする天井フレーム吊り手段と、を備えている。
【0010】
第2の態様に係る建物ユニットの製造装置では、上述した柱設置工程により床フレームに設置された柱に天井フレームを設置する天井フレーム設置工程において、天井フレームの吊り上げ及び移動が、建物の天井部に設けられた天井フレーム吊り手段を用いて行われる。これにより、天井フレーム設置工程においても、重筋作業が低減される。更に、床フレームの周辺に大型の作業機器が設置されないため、天井フレーム設置工程に伴う製造スペースの拡大を抑制することができる。
【0013】
第3の態様に係る建物ユニットの製造装置は、第2の態様に記載の構成において、前記第5搬入部と前記第6搬入部とを連結させる搬送路は、前記建物の天井に設けられた天井フレーム搬送路で構成とされており、前記天井フレーム吊り手段は、前記天井フレーム搬送路の一部を構成しており、前記第5搬入部に搬送された前記天井フレームを吊り上げた状態で空中移動させ、前記第6搬入部に搬送するように構成されている。
【0014】
第3の態様に係る建物ユニットの製造装置では、第5搬入部と前記第6搬入部とを連結させる搬送路は、前記建物の天井に設けられた天井フレーム搬送路で構成されている。また、天井フレーム吊り手段は、天井フレーム搬送路の一部を構成しており、第5搬入部に搬送された天井フレームを吊り上げた状態で空中移動させ、第6搬入部に搬送するように構成されている。このように、第5搬入部から第6搬入部への移動は、天井フレーム吊り手段を用いた空中移動とされている。このように、天井フレーム搬送路の一部を天井部に設けることにより、製造スペースの拡大を抑制することができる。
【0015】
第4の態様に係る建物ユニットの製造装置は、第1の態様~第3の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記柱吊り手段は、前記天井部に設けられたレール部と、当該レール部に沿って横行可能に構成されると共に動力を用いてワイヤロープの巻き上げを可能とするホイスト部と、前記ワイヤロープの先端に回転可能に取り付けられ、前記柱に装着される装着部と、を備えており、前記ワイヤロープの巻き上げに伴う前記装着部の上昇によって、前記柱を起立姿勢で吊り上げ可能とされている。
【0016】
第4の態様に係る建物ユニットの製造装置では、天井部に設けられたレール部に沿ってホイスト部が横行することにより、装着部に保持された柱を移動可能に構成されている。また、装着部は、ワイヤロープの先端に回転可能に取り付けられているため、ワイヤロープの巻き上げに伴う装着部の上昇動作のみで柱の起立と吊り上げを行うことができる。これにより、柱設置工程を安全かつ迅速に行うことができる。
【0017】
第5の態様に係る建物ユニットの製造方法は、請求項1に記載の建物ユニット製造装置を用いた建物ユニットの製造方法であって、建物ユニットの床部を構成する床フレームと天井部を構成する天井フレームと混流された状態で前記第1搬入部まで搬送させる工程と、前記第1搬入部と搬送路で連結された第2搬入部で、混流された前記床フレームと前記天井フレームとを異なる搬送路に流す工程と、前記第2搬入部と搬送路で連結された第3搬入部で、前記第2搬入部から送られる前記床フレームを仮置きする工程と、前記第3搬入部と搬送路で連結された第4搬入部で、前記建物ユニットの柱を搬入し、前記床フレームの四隅を構成する仕口に前記柱支持治具を装着させ、前記柱吊り手段を用いて、前記柱を起立姿勢で吊り上げながら前記床フレームの上方側に移動させると共に当該柱の下端を前記柱支持治具に挿入させて前記床フレームの前記仕口に仮留めする工程と、前記第4搬入部及び前記第5搬入部のそれぞれと搬送路で連結され前記第6搬入部で、前記第4搬入部から送られる前記床フレームと前記第5搬入部から送られる前記天井フレームとが合流し、前記柱に溶接される工程と、を含む。
【0018】
第5の態様に係る建物ユニットの製造方法では、上述した通り、第4搬入部の近傍に搬入された柱の起立及び移動が柱吊り手段を用いて行われる。これにより、人力のみで柱の起立及び移動を行うといった重筋作業が不要になる。更に、吊り手段が天井部に設けられることから、床フレームの周辺にマテハン等の大型の作業機器が設置されないため、柱設置工程に伴う製造スペースの拡大を抑制することができる。
また、柱設置工程が第4搬入部で行われ、床フレーム設置工程が第6搬入部で行われる。これにより、柱設置工程の作業中に吊り上げられた天井フレームと柱が干渉するといった事態が回避され、安全性が高まる。また、床フレームに係る製造工程を第4搬入部と第6搬入部に分担させて行うことにより、1つの搬入部における加工時間が均一化される。その結果、製造工程におけるリードタイムの停滞時間(待ち時間)を削減し、製造ラインの整流化を図ることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、第1の態様に係る建物ユニットの製造装置によれば、建物ユニットの製造に伴う重筋作業を低減し、且つ、製造スペースの拡大を抑制することができるという優れた効果を有する。
また、柱設置工程の安全性の向上と、製造ラインの整流化を図ることができるという優れた効果を有する。
【0020】
第2の態様に係る建物ユニットの製造装置によれば、天井フレーム設置工程に伴う重筋作業の低減と製造スペースの拡大抑制を図ることができるという優れた効果を有する。
【0022】
第3の態様に係る建物ユニットの製造装置によれば、製造ラインの整流化と製造スペースの拡大抑制を図ることができるという優れた効果を有する。
【0023】
第4の態様に係る建物ユニットの製造装置によれば、柱設置工程を安全かつ迅速に行うことができるという優れた効果を有する。
【0024】
第5の態様に係る建物ユニットの製造方法によれば、建物ユニットの製造に伴う重筋作業を低減し、且つ、製造スペースの拡大を抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態に係る建物ユニットの分解斜視図である。
図2】本実施形態に係る建物ユニット製造装置を備える建物を概略的に示す概略平面図である。
図3】(A)~(C)は、本実施形態に係る建物ユニット製造装置を用いて建物ユニットの製造方法を模式的に説明する概略図である。
図4】(A)は、本実施形態に係る柱支持用治具を示す平面図であり、(B)は、柱支持用治具の側面図である。
図5】(A)は、本実施形態に係る柱吊り手段を構成する装着部の平面図であり、(B)は装着部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1図5を用いて、本実施形態に係る建物ユニット製造装置(以下、単に「製造装置」という)10及び、製造装置10を用いた建物ユニット12の製造方法について説明する。
【0027】
(建物ユニット)
図1には、建物ユニット12の主要構成部分の分解図が示されている。この図に示されるように、建物ユニット12は、矩形枠状の床フレーム14と、床フレーム14の四隅から立設された4本の柱16と、それぞれの柱16の上端16Aに接合された矩形枠状の天井フレーム18と、によって直方体状の躯体フレームとされている。この建物ユニット12では、床フレーム14が建物ユニット12の床部を構成し、天井フレーム18が建物ユニット12の天井部を構成している。
【0028】
床フレーム14は、短辺側に対向して配置された2本の床梁14Aと長辺側に対向して配置された2本の床梁14Bを備えている。また、2本の床梁14Aの間には、長辺側の床梁14B間に架け渡された図示しない複数の床小梁が配置されている。これら床梁14A、14B及び床小梁は、一例として、C形鋼で構成されている。
【0029】
床フレーム14の四隅には、床梁14Aの一端と床梁14Bの一端とを連結する仕口20がそれぞれ配置されている。これらの仕口20は建物ユニット12の高さ方向を軸方向とする有底筒状に形成されており、建物上方側に向けて開口している。また、仕口20の内側面には、突き合わせ溶接用の裏当て金22が溶接により固定されている。仕口20の側面は床梁との接合面とされており、各々の側面に対応する床梁14A、14Bの一端が溶接されている。また、仕口20の上端(床フレーム14の上面)は、柱16の下端16Bが接合される接合部とされており、仕口20の上端から露出した裏当て金22の先端が対応する柱16の下端16Bに差し込まれる構成となっている。裏当て金22の先端を柱16に差し込むと、仕口20に柱16が仮留めされ、更に、仕口20の上端と柱16の下端16Bが突き合わせられた状態になる。この状態で、仕口20と柱16の突き合わせ部分を外側から溶接することにより、床フレーム14の上面に柱16の下端16Bが固定される。
【0030】
天井フレーム18は、短辺側に対向して配置された2本の天井梁18Aと長辺側に対向して配置された2本の天井梁18Bを備えている。また、2本の天井梁18Aの間には、長辺側の天井梁18B間に架け渡された図示しない複数の天井小梁が配置されている。これら天井梁18A、18B及び天井小梁は、一例として、C形鋼で構成されている。
【0031】
天井フレーム18の四隅には、天井梁18Aの一端と天井梁18Bの一端とを連結する仕口20がそれぞれ配置されている。これらの仕口20は建物ユニット12の高さ方向を軸方向とする有蓋筒状に形成されており、建物下方側に開口している。また、仕口20の下端からは、上記床フレーム14側の仕口20と同様に裏当て金22の先端が露出している。仕口20の側面は天井梁との接合面とされており、各々の側面に対応する天井梁18A、18Bの一端が溶接されている。また、仕口20の下端から露出した裏当て金22の先端が対応する柱16の上端16Aに挿入され、突き合わせ溶接により接合されている。
【0032】
(建物ユニットの製造装置)
次に、図2図5を用いて上述した建物ユニット12を製造する製造装置10について説明する。図2には、製造装置10が設けられた建物100の一部が平面図で示されている。この図に示されるように、製造装置10は、床フレーム14及び天井フレーム18を搬送する搬送装置30を備えている。床フレーム14及び天井フレーム18は、他の作業場所で予め組み立てられた後、搬送装置30を用いて所定の搬入部P(P1~P8)まで搬送される。床フレーム14及び天井フレーム18は、複数の搬入部Pを経由しつつ搬送され、各々の搬入部Pで所定の処理が行われた後、合流地点で組み付けが行われる。なお、図2では、床フレーム14の搬送経路を符号「R1」で示し、天井フレーム18の搬送経路を符号「R2」で示している。
【0033】
搬送装置30は、ローラコンベヤやベルトコンベヤ等のコンベヤと、後述する天井フレーム吊り手段で構成されており、混流路32と床フレーム搬送路34と、天井フレーム搬送路36を備えている。
【0034】
混流路32は、コンベヤで構成されている。混流路32は、搬送方向の最上流側に設けられ、床フレーム14及び天井フレーム18が混流された状態で搬送される混流ラインとされている。混流路は、紙面の左から右に向かって直線状に延びている。この混流路32には、搬送方向の上流側から下流側に向かって、搬入部P1(本発明の「第1搬入部」に相当する)と搬入部P2(本発明の「第2搬入部」に相当する)がこの順で設けられている。搬入部P1、P2は、下流側の搬入部P(P3~P8)の空きを待つ仮置き場とされており、1つの床フレーム14又は1つの天井フレーム18が搬入される。
【0035】
床フレーム搬送路34は、コンベヤで構成されている。床フレーム搬送路34は、搬入部P2から分岐して設けられ、床フレーム14が搬送される専用ラインとされている。この床フレーム搬送路34は、混流路32の延長線上に沿って搬入部P2から右方側に直進し、搬入部P3(本発明の「第3搬入部」に相当する)に至る。そして、搬入部P3から上方向に直進し、搬入部P4(本発明の「第4搬入部」に相当する)に至る。その後、搬入部P4から左方向に直進して搬入部P5(本発明の「第6搬入部」の一部に相当する)に合流する。つまり、床フレーム搬送路34は、平面視でU字状(コ字状ともいう)に折り返された搬送路とされており、2つの搬入部P3、P4をこの順で経由しながら搬入部P5に合流する構成となっている。
【0036】
搬入部P3は、後述する柱設置工程が行われる前の床フレーム14を仮置きする仮置き場とされている。搬入部P4には、搬入部P3を経由して床フレーム14が搬入される。搬入部P4では、床フレーム14に柱16を設置する柱設置工程が行われる。柱設置工程の詳細については後述する。柱設置工程の処理が完了した床フレーム14は、搬入部P4から搬入部P5に搬送され、天井フレーム搬送路36に沿って搬送された天井フレーム18と合流する。
【0037】
天井フレーム搬送路36は、搬入部P2から分岐して設けられ、天井フレーム18が搬送される専用ラインとされている。天井フレーム搬送路36は、搬入部P2から下方側に直進し、搬入部P6を経由して搬入部P7に至る。なお、「搬入部P6」及び「搬入部P7は、」本発明の「第5搬入部」に相当する。そして、搬入部P7から、上方側に直進し、搬入部P5に合流する構成となっている。この天井フレーム搬送路36では、搬送路P2から搬入部P7に至る直線経路はコンベヤで構成されている。一方、搬入部P7から搬入部P5に至る経路は、建物100の天井部に設けられた後述する天井フレーム吊り手段40を用いて構成されている。なお、「搬入部P5」と後述する「搬入部P8」が、本発明における「第6搬入部」に相当する。
【0038】
図2及び図3(C)に示されるように、天井フレーム吊り手段40は所謂天井クレーンで構成されており、搬入部P7と搬入部P5を結ぶ直線の上方側に位置する天井部(不図示)に設けられている。より具体的には、天井フレーム吊り手段40は、レール部42と、ホイスト部48(図2参照)と、天井フレーム吊り具49と、を備えている。
【0039】
レール部42は、搬入部P7と搬入部P5を結ぶ直線に沿って平行に伸びる一対の縦レール44と、一対の縦レール44に架け渡された1本の横レール46を備えている。縦レール44は、搬入部P7の上方側から、搬入部P5の上方側まで伸びている。横レール46は、図示しないモータ等の駆動力により、一対の縦レール44の延在方向に沿って横行可能に構成されている。ホイスト部48は、レール部42の横レール46に取り付けられている。このホイスト部48は、公知のホイストで構成されており、図示しないモータ等の駆動力を用いてワイヤロープW1の巻き取り又は引き出しが可能に構成されている。また、ホイスト部48は、横レール46に沿って横行可能に構成されている。これにより、縦レール44に対する横レール46の相対移動と横レール46に対するホイスト部48の相対移動とを組み合わせることにより、ホイスト部48がレール部42に沿って横行可能とされている。また、ホイスト部48のワイヤロープW1の先端には、天井フレーム18に装着可能な天井フレーム吊り具49が取り付けられている。この天井フレーム吊り具49は、天井フレーム18を水平姿勢(図3(C)参照)で吊り上げることができる。
【0040】
搬入部P6、P7は、後述する天井フレーム設置工程が行われる前の天井フレーム18を仮置きする仮置き場とされている。天井フレーム18は、搬入部P7で天井フレーム吊り手段40に固定され、上方側に吊り上げられる。その後、横レール46が縦レール44に沿って横行し、搬入部P7から搬入部P5の上方側まで移動する。これに伴って、天井フレーム18が、吊り上げられた状態で搬入部P5に搬入される。なお、天井フレーム18が搬入部P5に搬送されるタイムは、床フレーム14が搬入部P5に搬送されるタイムに合わせて行われる。
【0041】
(建物ユニットの製造方法)
次に、製造装置10を用いて、建物ユニット12を製造する方法について説明する。図3(A)~図3(C)には、建物ユニット12の製造工程が模式的に示されている。
【0042】
図3(A)に示されるように、床フレーム14は、搬送装置30の混流路32から床フレーム搬送路34に沿って搬送され、搬入部P4に搬入される(床フレーム搬入工程)。その後、搬入部P4では、床フレーム14の四隅を構成する仕口20に柱支持用治具50が装着される(柱支持用治具設置工程)。
【0043】
図4(A)及び図4(B)には、柱支持用治具50が平面図及び側面図で示されている。これらの図に示されるように、柱支持用治具50は、建物ユニットの上下方向を軸方向とする角筒状に形成され、床フレーム14の仕口20と、仕口20に仮留めされた柱16の下端16Bを外側から覆うように装着される。治具の四方を構成する側面部は、それぞれが側面視で矩形枠状に形成されている。このため、治具の装着状態では、側面のフレームの内側を通して仕口20と柱16の仮留め位置が視認可能に構成されている。また、柱支持用治具50の1つのコーナー部にはヒンジ部52が設けられており、図3(A)に示されるように、側面の一部がヒンジ部52を中心に開閉可能に構成された扉部54とされている。この扉部54の先端側には、ロック部56が設けられている。ロック部56は、一例として、公知のトグルクランプとされており、レバー56Aを図4(A)、(B)に示す水平位置まで下げることによりロック状態にされる。これにより、扉部54が閉塞状態で開放不能にロックされる。そして、柱支持用治具50は、ロック部56のレバー56Aを押し上げてロック状態を解除し、扉部54を開放状態にすることにより、柱16等への装着又は取り外しが可能に構成されている。
【0044】
上述した柱支持用治具設置工程が完了すると、床フレーム14の上面に柱16を設置する(柱設置工程)。この柱設置工程では、先ず、搬入部P4の近傍に搬入された柱16に柱吊り手段60が取り付けられる。
【0045】
図2及び図3(B)に示されるように、柱吊り手段60は、搬入部P4の上方側に位置する天井部(不図示)に設けられている。柱吊り手段60は、天井部に設けられたレール部62と、レール部62に沿って横行可能なホイスト部68(図2参照)と、ホイスト部68のワイヤロープW2の先端に取り付けられた装着部70とを備えている。レール部62は、平面視で搬入部P4の両サイドに位置するように離間して配置され、平行に伸びる一対の縦レール64を備えている。また、レール部62は、一対の縦レール64に架け渡された1本の横レール66を備えている。また、ホイスト部68は、横レール66に取り付けられている。レール部62及びホイスト部68の構成は、天井フレーム吊り手段40のレール部42及びホイスト部48の構成と同様であるため詳細な説明は割愛する。
【0046】
図4(A)、(B)に示されるように、装着部70は、ホイスト部68のワイヤロープW2の先端に柱16を取り付けるための治具とされている。装着部70は、載置部72と、係止ピン74と、柱保持部76と、回転バー78とを含んで構成されている。
【0047】
載置部72は、柱16よりも幅狭の長尺な板状部材で構成されており、横たえられた状態で搬入された柱16の下部の上面16Uに載置される。この載置部72の上面には、上部及び下部に取手部72A、72Bが設けられている。
【0048】
係止ピン74は、載置部72の下部の下面に一体に形成されている。係止ピン74は、載置部72を柱16の上面に載置した状態で、柱16の下部に形成された粘着塗装用の既設孔(不図示)に挿入される。これにより、装着部70が柱16に係止される。
【0049】
柱保持部76は、柱の側面を覆う筒状に形成され、載置部72の上部に設けられている。柱保持部76は、載置部の幅方向両側から延在する上下一対のアーム部76A、76Bを備え、アーム部76A、76Bによって柱16の側面を支持している。上方側のアーム部76Aの先端には、柱16の側面に配置され、長尺な棒状部材で構成された回転バー78の一端が取り付けられている。この回転バー78の一端は、アーム部76Aの先端に回転可能に取り付けられている。また、回転バー78の他端は、リング80を介してホイスト部68のワイヤロープW2の先端に回転可能に取り付けられている。これにより、回転バー78を介して装着部70がワイヤロープW2の先端に回転可能に取り付けられている。一方、下方側のアーム部76Bには、開閉バー82が取り付けられている。開閉バー82は、アーム部76Bの先端に回転可能に取り付けられており、図5(A)に示すように、柱16の下面16Dの下方側に配置される閉塞位置と、柱16と離間した位置に配置され、柱16の下方側を開放する開放位置との間を変位可能に構成されている。開閉バーは、閉塞位置において、アーム部76Bの先端に取り付けられたロックピン84の先端に係合可能とされており、ロックピン84が係合した状態では、開閉バーが開放不能にロックされる。これにより、柱16の中間部が柱保持部76によって保持された状態になる。そして、ロックピン84の係合状態を解除し、開閉バー82を開放位置に変位させることにより、柱保持部76の取り外しが可能に構成されている。
【0050】
上記構成の柱吊り手段60は、係止ピン74を柱16の既設孔に挿入しながら柱16の上面16Uに載置部72を置き、開閉バー82を閉塞位置でロックすることにより柱16に取り付けられる。
【0051】
次いで、ホイスト部68を操作してワイヤロープW2を巻き上げる。これにより、ワイヤロープW2の先端に取り付けられた装着部70が上昇し、柱16が吊り上げられる。ここで、図5(B)には、ワイヤロープW2の巻き上げに伴う柱16の変位が一点鎖線位置と実線位置で示されている。この図に示されるように、ワイヤロープW2の先端は、回転バー78を介して装着部70の上部に取り付けられているため、ワイヤロープW2の巻き上げに伴い、柱16の上部が上昇して起立姿勢で吊り上げられる。その後、作業者は、載置部72の取手部72A、72Bを適宜把持しながら柱16をレール部62に沿って案内し、床フレーム14の上方側に移動させる。そして、ワイヤロープW2を引き出しながら柱16を降下させ、柱16の下端16Bに裏当て金22の先端が差し込まれる。これにより、床フレーム14に柱16が仮留めされる。その後、装着部70を取り外すことにより、柱設置工程が完了する。
【0052】
床フレーム14の四隅の仕口20に柱16を設置した後、柱支持用治具50を装着したまま、床フレーム14を搬入部P5へ搬送させる。搬入部P5では、天井フレーム吊り手段40を用いて搬送された天井フレーム18と合流する。天井フレーム18は、天井フレーム吊り手段40によって降下され、四隅の仕口20に配置された裏当て金22の先端が対応する柱16の上端16Aに差し込まれる。これにより、床フレーム14と柱16、天井フレーム18が仮留めされた建物ユニット12が形成され、天井フレーム設置工程が完了する。
【0053】
その後、仮留めされた状態の建物ユニットを搬入部P8(本発明の「第6搬入部」の一部を構成する)へ搬送し、柱支持用治具50を取り外して柱16の上端16A及び下端16Bを天井フレーム18と床フレーム14にそれぞれ溶接する。これにより、建物ユニット12の製造が完了する。
【0054】
(作用・効果)
以上説明した通り、本実施形態では、床フレーム14に柱16を設置する柱設置工程において、搬入部P4の近傍に搬入された柱16の起立及び移動が柱吊り手段60を用いて行われる。これにより、人力のみで柱の起立及び移動を行う場合と比べて重筋作業が低減される。更に、柱吊り手段60が建物100の天井部に設けられることから、床フレーム14の周辺にマテハン等の大型の作業機器が設置されないため、柱設置工程に伴う製造スペースの拡大を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、床フレーム14に設置された柱16に天井フレーム18を設置する天井フレーム設置工程において、天井フレーム18の吊り上げ及び移動が、建物100の天井部に設けられた天井フレーム吊り手段40を用いて行われる。これにより、天井フレーム設置工程においても、重筋作業が低減される。更に、床フレーム14及び天井フレーム18の周辺に大型の作業機器が設置されないため、天井フレーム設置工程に伴う製造スペースの拡大を抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、柱設置工程を搬入部P4で行われ、床フレーム設置工程が搬入部P5で行われる。これにより、柱設置工程の作業中に吊り上げられた天井フレームと柱が干渉するといった事態が回避され、安全性が高まる。また、床フレーム14に係る製造工程を搬入部P4と搬入部P5に分担させて行うことにより、1つの搬入部における加工時間が均一化される。その結果、製造工程におけるリードタイムの停滞時間(待ち時間)を削減し、製造ラインの整流化を図ることができる。
【0057】
また、本実施形態では、天井フレーム搬送路36に沿って天井フレーム18が搬送される。この天井フレーム搬送路36は、天井フレーム18を仮置きする搬入部P7を経由して天井フレーム設置工程が行われる搬入部P5に至る構成となっている。これにより、床フレーム設置工程の作業中は天井フレーム18を搬入部P7に搬送し、その後、床フレーム設置工程の作業が完了するタイムに合わせて、天井フレーム18を搬入部P5に搬送させることができる。その結果、天井フレーム18のリードタイムにおける停滞時間(待ち時間)を削減し、製造ラインの整流化を図ることができる。更に、搬入部P7から搬入部P5への移動は、天井フレーム吊り手段40を用いた空中移動とされている。このように、天井フレーム搬送路36の一部を天井部に設けることにより、製造スペースの拡大を抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態の柱吊り手段60では、天井部に設けられたレール部62に沿ってホイスト部68が横行することにより、装着部70に保持された柱16を移動可能に構成されている。また、装着部70は、ワイヤロープW2の先端に回転可能に取り付けられているため、ワイヤロープW2の巻き上げに伴う装着部70の上昇動作のみで柱16の起立と吊り上げを行うことができる。これにより、柱設置工程を安全かつ迅速に行うことができる。
【0059】
[補足説明]
上記実施形態では、柱支持用治具設置工程が床フレーム搬入工程の後に行われる構成としたが、これに限らない。柱支持用治具設置工程は、床フレーム14が搬入部P4に搬入される前に、混流路32配置された搬入部P1、P2や、床フレーム搬送路34に配置された搬入部P3で行うこともできる。又は、搬入部P4で、後述する柱設置工程が完了した後に柱支持用治具設置工程を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 製造装置(建物ユニットの製造装置)
12 建物ユニット
14 床フレーム
16 柱
16A 柱の上端
16B 柱の下端
18 天井フレーム
32 混流路(第1搬入部と第2搬入部を連結する搬送路)
34 床フレーム搬送路(第2搬入部と第3搬入部、及び第3搬入部と第4搬入部を連結する搬送路)
36 天井フレーム搬送路(第2搬入部と第5搬入部を連結する搬送路)
40 天井フレーム吊り手段
60 柱吊り手段
62 レール部
68 ホイスト部
70 装着部
100 建物
W2 ワイヤロープ
P1 搬入部(第1搬入部)
P2 搬入部(第2搬入部)
P3 搬入部(第3搬入部)
P4 搬入部(第4搬入部)
P5 搬入部(第6搬入部の一部)
P6 搬入部(第5搬入部の一部)
P7 搬入部(第5搬入部の一部)
P8 搬入部(第6搬入部の一部)
図1
図2
図3
図4
図5