(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】調理槽リフト
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20240508BHJP
A47J 27/14 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
A47J37/12 381
A47J27/14 F
A47J37/12 321
(21)【出願番号】P 2020093210
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-03-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年2月12日 SMTS2020 スーパーマーケット・トレードショー 2020年2月18日 HCJ2020 厨房設備機器展
(73)【特許権者】
【識別番号】000242415
【氏名又は名称】北沢産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100063842
【氏名又は名称】高橋 三雄
(72)【発明者】
【氏名】鷹 和夫
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-019089(JP,U)
【文献】実開昭63-022841(JP,U)
【文献】特開平10-276905(JP,A)
【文献】特開平11-018962(JP,A)
【文献】特開平10-257983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0037782(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/10-37/12
A47J 27/14-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に、モーターにより回動される駆動アームと、その駆動軸上方に回動自在に軸支された連動アームとを設けると共に、バスケットを吊り下げるバスケットハンガーを、前記駆動アーム及び前記連動アームに係架させて設け、前記バスケットハンガーの懸吊部の中間部に設けた係合部は前記駆動アーム先端に設けた突起に係合離脱自在とし、該懸吊部の上部に設けた懸止部は前記連動アーム先端に設けた突部に掛け止め離脱自在としたことを特徴とする調理槽リフト。
【請求項2】
前記バスケットハンガーの前記懸吊部は、その中間部に設ける前記係合部を調理槽に面してない側に形成し、上部に設ける前記懸止部は前記調理槽に面した側に形成してあることを特徴とする請求項1に記載の調理槽リフト。
【請求項3】
前記バスケットハンガーは二本の前記懸吊部とその下端を連結したハンガー部により構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の調理槽リフト。
【請求項4】
前記バスケットハンガーの前記懸吊部は一本で構成し、前記懸吊部の下部にハンガー部を構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の調理槽リフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理槽リフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
調理用具として一般的に使用されるフライヤーやゆで麺機に於いて、籠に各種揚物、麺類の調理材を収容して油槽や湯槽に入れ、調理後に該槽から引き上げることは、通常行われる。この作業は加熱した油、湯へ籠の出し入れであり、加熱される高温の油、湯に近接しての作業でフライや湯で作業の特性上油、湯の発泡等があり危険であると共に調理作業時間も特定されることが通常でタイマーにより規制され自動化されるため籠の揚げ作業を自動化するのが一般的である。
【0003】
この作業のための構成としては、モーターにより駆動される回転軸に連接部を介して軸受に支承させた昇降ロッドを垂直線上を上下動させ、昇降ロッドに所望の籠を係架自在としたリフト機構を使用することが常用されている。例えば特許文献1(特開平10-276905)に示されるゆで麺機に於いては、昇降ロッド20の上部に設けた吊り腕部30下部にざる受け部32を設け、昇降ロッド20を軸受支持部16のスラスト軸受17に支承して連接部のリンク21C、クランク22Cを介してモーターの回動により昇降ロッド20を上昇、降下させて、ざる受け部32に設置したざる40に麺を入れて湯槽への浸漬、引上げにより麺類のゆで作業を行っている。
【0004】
又、特許文献2(特開2005-52076)に示されるゆで麺機に於いてはリフト装置としてリフト軸29を上下軸受51と52により支承させモーター54により駆動させるチェーン55により、リフト軸29を昇降させ、該リフト軸29の上端にリフト係合板31を設け、そこに設けられた籠引けピン32にゆで籠21を懸け、ゆで籠21に収納した麺を湯槽26に浸漬し、引上げ調理するものである。更に特許文献3(特開平10-257983)に示すフライヤーには、モーター19の回転運動をリンク機構を介してフライかご2を係止した駆動杆5を昇降させ駆動杆に掛け止めされたフライかご2を昇降させる機構が提案されている。
【0005】
しかし、これらの機構は何れも籠を係架した昇降部の昇降装置を使用したものである。即ち、特許文献1の構成に於いては、昇降部の構成である昇降ロッド20を軸受支持部16のスラスト軸受17にて支承しており、特許文献2の構成に於いてはリフト軸29の上下を軸受51と52により支承させている。又、特許文献3に於いては二つのリンク15、17により駆動される駆動杆5を二つの支承部(番号なし)により上下で支承している。これら従来の調理材を収納するざる・ゆで籠、フライかごを係架して昇降させる主体たる昇降ロッド20、リフト軸29、駆動杆5は何れも軸を支承する軸受により保持され、その保持により垂直線状の上下動の昇降を行っている。
【0006】
又、特許文献4(特開2018-89265)に示されるフライヤーに於いては、昇降機構として支柱にモーターにより回動されるスプロケットを設けそこに係架したるチェーン駆動によりスライド部材を昇降させる昇降機構を提案している。この機構は搬送装置を備えたこともあって機構部は複雑であり製作上もコスト高となりフライヤーとしての実用性に欠ける。
【0007】
然してこの他の調理槽は、油・湯を加熱し高温とする必要により、常時、油・湯・ゆで汁が充満し調理槽上部側部に浮遊し、機器各部に付着する。特に軸及びそれを支承する軸受に付着し溜まってしまう事態は常態である。かかる場合に備え、常に整備する必要があるが食品に直接、接する場にあるだけ慎重な作業を必要とし、手間と時間がかかる作業となる。然るに昇降のためのシャフトやボールネジ等は油汚れに耐久性がなく、軸直動システムは油に弱い。又、オイレスガイドも同様である。従って、昇降ロッドやリフト軸と軸受は一旦設置すればその保修や清掃は中々に困難であるため、該部分の脱着容易なる構成、清掃簡単な構成が求められている。又、このリフト機構としては最も重要部分であり、故障は作業コストに直ちに響くことになりその対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-276905号公報
【文献】特開2005-52076号公報
【文献】特開平10-257983号公報
【文献】特開2018-89265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明に於いてはこの調理材を収納した籠・ざる等を係架し昇降させる機構として昇降ロッド、リフト軸、駆動杆等の昇降部を使用しないで、籠・ざる等を上下に昇降させる機構を提案し就中昇降の軸たる昇降ロッド、リフト軸等を軸受部で軸上下や軸中央を支承させる機構を使用しない機構により構造が簡単で各構成部分が直ちに構成とし分離できる構成とし、必要時はいつでも構成部を容易に脱着して清掃できる構成とし、該昇降部に対する油たまり、麺汁たまり等の障害を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に於いては第一に、モーターにより回動される駆動アームとその駆動軸上方に回動自在に軸支された連動アームとを設けると共にバスケットを吊り下げるバスケットハンガーを、その懸吊部の中間部に設けた係合部は駆動アーム先端に設けた突起に係合離脱自在とし、該懸吊部の上部に設けた懸止部は連動アーム先端に設けた突部に掛け止め離脱自在としたことを特徴とする調理槽リフトを提案する。
【0011】
第二に、前記バスケットハンガーの懸吊部は、その中間部に設ける係合部を調理槽に面してない側に形成し、上部に設ける懸止部は調理槽に面した側に形成してあるバスケットハンガーであることを特徴とする請求項1に記載の調理槽リフトを提案する。
【0012】
第三に、前記バスケットハンガーは二本の懸吊部とその下端を連結したハンガー部により構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の調理槽リフトを提案する。
【0013】
第四に、前記バスケットハンガーの懸吊部は一本で構成し、下端にハンガー部を構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の調理槽リフトを提案する。
【0014】
第五に、前記バスケットハンガーの懸吊部は一本で構成し、モーターにより回動される駆動アームはモーターとの接離可能にして所望数のバスケットハンガーを設置することを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の調理槽リフトを提案する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バスケットを吊り下げるバスケットハンガーを軸やロッド等の固定的手段を必要とすることなく、モーターにより回動される駆動アームにより略直線上の昇降を可能にしたものであり、固定駆動部分は駆動アームの回動だけで、軸やロッドのように上下動時の軸支持の必要性がない。又、バスケットハンガーと駆動アームの係合だけでバスケットハンガーの昇降が可能であり、両者の分解、係合は極めて簡単容易で工具でさえ不要で、簡単に手だけで操作できる。従って、その脱着や清掃が簡単容易であるため、保守点検が極めて容易であり、使用コストも低廉である。又、機構も簡単で、製造コストも安く廉価に提供できる。
【0016】
又、本発明によれば、バスケットハンガーの二本の懸吊部を駆動アームにより押し上げるだけで、連動アームにも自動的に支承され、略垂直線上を他の機構の支持なく上下動する機構であり、機構の分解、取り付けの必要なく通常の使用時に必要部分が分離でき清掃、保守、点検も極めて容易である。
【0017】
又、本発明によればバスケットハンガーの懸吊部は、駆動アームにより係合される係合部は調理槽に面していない側に形成し、上部の連動アームの懸止部は調理槽の側に形成されていることにより、バスケットハンガーの懸吊部は連動アームの突部に懸吊部の懸止部をかけるだけで、懸吊部の自重により、バスケットハンガーは駆動アームの係合部に係合し、又、バスケットハンガーを外す場合には、その逆操作でその作業は極めて簡単容易である。又、本発明によれば、バスケットハンガーの懸吊部を一本即ち一枚の板体、一本の棒状体、パイプ等により一個のバスケット、例えばゆで麺籠を昇降でき、少量の材料の調理の際に使用でき、麺、スパゲッティ等のゆで機に便利である。
【0018】
又、本発明によれば、一の調理槽に於いて、少量の料理材を複数調理する、例えばゆで麺機等に於いて、複数の麺を別に調理する際に夫々麺籠を所望通りに調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図に示す実施例により本発明を詳細に説明する。
本発明は、フライヤーやゆで麺機等の調理槽に使用するが、ここではフライヤーに使用する例について説明する。
【0021】
フライヤーの機体1に設けた調理槽2に調理材を収納したバスケット3を出し入れするための調理槽リフト4につき説明する。該調理槽リフト4は、モーター41により駆動される駆動軸42両端に設けた駆動アーム43、43の回動により、バスケット3を係架させたバスケットハンガー5を昇降させ、それによりバスケット3を調理槽2に出し入れする構成である。ここでバスケット3は通常網状の籠を使用するが、調理材に適応する構成の籠を使用することも出来る。
【0022】
前記駆動軸42は、機体1の上部の調理槽2に面した駆動室6に設置されたモーター41にセットカラー421にて設定されている。該モ ター41は中空軸モーターを使用するのが便である。前記駆動室6の両側に柱7、7を設けその上部に操作部8を設置してある。該駆動室6と柱7、7とは一体に構成しても良い。前記駆動軸42に設けた駆動アーム43、43上に適宜距離を置いて駆動軸42の中心垂直線上に中心を置いて回動軸46、46を設置し、その両端に連動アーム45、45を設けてある。
【0023】
又、駆動軸アーム43、連動アーム45の先端には夫々に係合部431係架部451を突出させ、バスケットハンガー5は二本の懸吊部51とその下部を連結して形成したハンガー部52により構成される。
【0024】
この二本の懸吊部51、51は調理槽2の巾以内の間隔に構成・設置され、必ずしも二本を必須とせず調理材の重量・大きさに応じ増減することは可能である。
【0025】
又、一本の懸吊部51だけでも下部にバスケット3の懸部31の懸けるハンガー部52を設置できれば使用可能である。
【0026】
各懸吊部51は板体にて形成され、中央部の奥側すなわち調理槽2反対側面に係合部511を形成し、駆動アーム43の先端に設けた突起部431を係合する如くを構成してある。該係合部511は、突起部431上に載るだけの平板でも良く、嵌合する溝、凹みでも構成される。又、懸吊部51は柱状、棒状等その形状を問わず使用可能である。
【0027】
該懸吊部51の上部には、前記係合部511と反対の調理槽2側に前記連動アーム45に設けた係架部451に懸けられる懸止部512を形成してある。又、懸吊部51に設ける懸止部512は鍵型に形成して外れ難くすること等により、係合部511と同じ側に設けることも可能である。前記駆動軸42にはリミットハンマー10がセットカラー101により固定され、リミットハンマー10先端101の回動域上端にはリミットスイッチ102、下端にはリミットスイッチ103がセットされている。
【0028】
以下その作動について説明する。
バスケット3をその懸部31により、バスケットハンガー5の下部に設けたハンガー部51に係架させる。この作動は作業の手順により適宜行える。例えば調理材をバスケット3に収容させる作業の前後何れでも選択できる。
【0029】
次いでバスケットハンガー5を、夫々の懸吊部51、51に設けた懸止部512、512を用いて連動アーム45、45の先端に設けた係架部451、451に係架させる。その際、懸吊部51、51の頭頂部513、513を前方に傾斜させて、下部に位置する駆動アーム43、43との間をすり抜けて上方に押し上げ、懸吊部51、51の頭頂部513、513を係架部451、451を廻るようにして懸吊部51、51の傾斜を戻すと、懸吊部51、51懸止部512、512が係架部451、451に嵌合する。そこでこの懸吊部51、51から手を離すと自重により、傾斜を戻す状態になり、その反対側面中央部に設けた係合部511、511が駆動アーム43、43の係合部511、511に当嵌る状態となり且、懸吊部51、51、バスケットハンガー5の重量が係合部511、511に懸りバスケットハンガー5の全重量により懸吊部51、51は安定して係留される。
【0030】
バスケットハンガーの上昇について説明すると、モーター41の始動により、駆動軸42が回動し、駆動軸42両端に設けた駆動アーム43、43も同時に回動する。又、同時にリミットハンマー10は、リミットスイッチ103を離れ、同時に駆動アーム43も回動する。その際、駆動ハンマー43の回動上昇により先端に設けた突起部431、431に載った状況の係合部511、511は押し上げられ同時に懸吊部51、51は上昇を始める。この上昇は懸吊部51、51の懸止部512、512を介して連動アーム45、45を押し上げ、懸吊部51、51の垂直方向上昇を齎す。
【0031】
この様に上昇後、駆動アーム43が上昇上限に至ると、リミットハンマー10がリミットスイッチ102に当りモーター41の駆動を止める。通常使用時にはここでバスケットハンガー5のハンガー部52にバスケット3をその懸部31により係架させ、調理材を収納させ或いは調理材を収納したバスケット3を係架させたバスケット3を調理槽2に降下させる。
【0032】
この降下は、先端の上昇と反対にモーター41の始動により駆動軸42を回動し同時にリミットハンマー10をリミットスイッチ102から放し、リミットスイッチ103に至る回動によりバスケット3を調理槽2内の加工液、揚げ物であれば収容した油に浸透させ揚げ作業を行う。設定タイマー等により所定時間の経過によりバスケット3を引上げる。
【0033】
上記の如くバスケット3の調理槽2に対する浸漬引上げの昇降は駆動軸42の駆動による駆動アーム43の回動のみにより、連動アーム45の位置補助を得て行うため、従来のリフトのバスケットを吊るす支持軸やチェーンロープ等の駆動部を外部に洒したり油まみれによる障害は完全に除去できた。
【0034】
又、本発明は麺、スパゲッティ等の麺類のゆで作業に使用することも出来る。一例として、ゆで麺について説明すれば、一本の懸吊部51を用い下部にハンガー部52を突出させ、麺カゴの保持体を係止出来るように構成しておく。この際懸吊部51の係合部511や懸止部512の駆動アーム43の突起部431、連動アーム45の係架部451への係合に麺カゴがぶれたりしないように係合部511や懸止部512を厚くしたりすれば一層係合が容易になる。又麺カゴを多数設置し別々に作動する構成をとることも出来る。例えば、駆動軸42を別々のモーターに係合する構成やモーター41に別の駆動軸を設け各駆動軸42を各自係合自在とする公知技術を用いる構成をとることも出来る。これらの構成には勿論タイマー設置できることが当然である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、てんぷら、カツ、コロッケを調理するフライヤー、麺、スパゲッティ等の麺ゆで機等に於いて、常時使用されている籠等の所謂バスケットの調理槽の出し入れが構造簡単で、容機械部分が簡単に着脱自在としたことにより、常時清掃可能、油だまり、湯だまりのない状態における。従って、本調理槽リフトは、フライヤー、ゆで麺機等の利用価値を高め、食品機構の産業への利用可能性大である。
【符号の説明】
【0036】
1 機体
2 調理槽
3 バスケット
31 懸部
4 調理槽リフト
41 モーター
42 駆動軸
43 駆動アーム
431 係合部
45 連動アーム
451 係架部
46 回動軸
5 バスケットハンガー
51 懸吊部
511 係合部
512 懸止部
513 頭頂部
10 リミットハンマー
102 リミットスイッチ
103 リミットスイッチ