(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】ダイカストマシン
(51)【国際特許分類】
B22D 17/32 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
B22D17/32 F
B22D17/32 J
(21)【出願番号】P 2020100026
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】横山 宏司
(72)【発明者】
【氏名】早川 直哉
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-276760(JP,A)
【文献】特開平03-000458(JP,A)
【文献】特開平11-179520(JP,A)
【文献】特開昭56-063430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 15/00 - 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯が注湯される注湯口を有する筒形状の射出スリーブと、
前記射出スリーブ内に摺動可能に嵌め込まれ、前記射出スリーブ内に進退移動されることにより、前記射出スリーブに注湯された溶湯を射出するプランジャと、
前記プランジャを前記射出スリーブ内に進退移動させるプランジャ駆動機構と、
前記プランジャが所定の状態となるまでの時間を取得するとともに、前記所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内か否かを判定する制御部と、を備え
、
前記所定の状態は、前記プランジャの射出を開始するための信号に応じて、前記プランジャが移動を開始した状態であり、
前記制御部は、前記プランジャが停止している初期状態から、所定の初期移動量分だけ移動するまでに要した時間を、前記プランジャが移動を開始した状態となるまでの時間として取得するように構成されている、ダイカストマシン。
【請求項2】
前記制御部は、前記プランジャの射出を開始するための信号を、前記プランジャ駆動機構に対して出力してから、前記プランジャが所定の状態となるまでの時間を取得するように構成されている、請求項1に記載のダイカストマシン。
【請求項3】
溶湯が注湯される注湯口を有する筒形状の射出スリーブと、
前記射出スリーブ内に摺動可能に嵌め込まれ、前記射出スリーブ内に進退移動されることにより、前記射出スリーブに注湯された溶湯を射出するプランジャと、
前記プランジャを前記射出スリーブ内に進退移動させるプランジャ駆動機構と、
前記プランジャが所定の状態となるまでの時間を取得するとともに、前記所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内か否かを判定する制御部と、を備え、
前記所定の状態は、前記プランジャが所定の位置まで移動した状態であり、
前記制御部は、前記プランジャを低速で移動させる低速射出工程と、前記プランジャを高速で移動させる高速射出工程とを切り替えるように、前記プランジャ駆動機構を制御するように構成されており、
前記所定の位置は、前記低速射出工程から前記高速射出工程に切り替わる位置である
、ダイカストマシン。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲外の場合に、製造された製品を不良品として排出する制御を行うように構成されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載のダイカストマシン。
【請求項5】
前記プランジャの位置を検知する位置検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記位置検知部の検知結果に基づいて、前記プランジャの位置を取得することにより、前記プランジャの前記所定の状態を検知するように構成されている、請求項1~
4のいずれか1項に記載のダイカストマシン。
【請求項6】
前記プランジャ駆動機構は、油圧を供給する油圧供給部と、前記油圧供給部から供給される油圧を調整する油圧調整バルブとを含み、
前記制御部は、前記油圧調整バルブに対して前記プランジャの射出を開始するための信号を出力してから、前記プランジャが前記所定の状態となるまでの時間を取得するように構成されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載のダイカストマシン。
【請求項7】
報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記油圧調整バルブに対して前記プランジャの射出を開始するための信号を出力してから、前記プランジャが前記所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲から外れている場合に、前記報知部により前記油圧調整バルブの確認を促すための報知を行うように構成されている、請求項
6に記載のダイカストマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダイカストマシンに関し、特に、スリーブ内の溶湯を金型内に射出するためのプランジャを備えるダイカストマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スリーブ内の溶湯を金型内に射出するためのプランジャを備えるダイカストマシンが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、溶湯により鋳造品を製造するダイカストマシンが開示されている。このダイカストマシンは、金型内に溶湯を供給するための射出スリーブと、射出スリーブ内に設けられ、射出スリーブ内の溶湯を金型内に射出するための射出プランジャと、射出プランジャを駆動する射出シリンダとを備えている。
【0004】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、上記特許文献1に記載されるような一般的なダイカストマシンでは、射出速度などが予め設定されている。しかしながら、上記特許文献1に記載されているような射出シリンダでは、経年劣化などによって、射出プランジャを駆動させる際に、実際の射出プランジャの駆動と、予め設定された射出プランジャの駆動とに誤差が生じる場合がある。射出プランジャの駆動に誤差が生じると、実際の射出工程と予め設定された射出工程とにおいて、射出プランジャの動作に差異が生じるため、製造される製品の品質が要求される所定の品質を満たさない場合がある。一般的に、製造された製品の品質を確認するために、複数の製品からランダムで選択された一部の製品の品質検査が行われる。品質検査において、1つでも不良品が発見された場合、その製品が含まれる製造ロットの製品のすべてが不良品とみなされ、廃棄される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているダイカストマシンでは、実際の射出工程と、予め設定された射出工程とにおいて、射出プランジャの動作の差異を検知するように構成されていない。したがって、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性があるか否かを判定することが困難であるという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性があるか否かを判定することが可能なダイカストマシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるダイカストマシンは、溶湯が注湯される注湯口を有する筒形状の射出スリーブと、射出スリーブ内に摺動可能に嵌め込まれ、射出スリーブ内に進退移動されることにより、射出スリーブに注湯された溶湯を射出するプランジャと、プランジャを射出スリーブ内に進退移動させるプランジャ駆動機構と、プランジャが所定の状態となるまでの時間を取得するとともに、所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内か否かを判定する制御部と、を備え、所定の状態は、プランジャの射出を開始するための信号に応じて、プランジャが移動を開始した状態であり、制御部は、プランジャが停止している初期状態から、所定の初期移動量分だけ移動するまでに要した時間を、プランジャが移動を開始した状態となるまでの時間として取得するように構成されている。
【0009】
この発明の第1の局面によるダイカストマシンでは、上記のように、射出プランジャが所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内か否かを判定する制御部を備え、所定の状態は、プランジャの射出を開始するための信号に応じて、プランジャが移動を開始した状態であり、制御部は、プランジャが停止している初期状態から、所定の初期移動量分だけ移動するまでに要した時間を、プランジャが移動を開始した状態となるまでの時間として取得するように構成されている。これにより、射出プランジャが所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内でないと判定された場合には、実際の射出工程と予め設定された射出工程とにおいて、プランジャの動作の差異が生じていると判定することができる。その結果、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性があるか否かを判定することができる。また、プランジャが移動を開始した状態となるまでの時間と予め設定された時間とを比較することにより、プランジャが移動を開始した状態が正常であるか否かを容易に判定することができる。その結果、プランジャが移動を開始した状態となるまでの時間を取得することにより、プランジャが移動を開始した状態が正常でないことに起因して、製造される製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性があるか否かを容易に判定することができる。また、プランジャが所定の位置まで移動した状態となるまでの時間が、予め設定された基準値の範囲内であるか否かを判定することにより、プランジャを所定の位置まで移動させる制御に異常が生じているか否かを容易に判定することができる。その結果、プランジャが所定の位置まで移動した状態となるまでの時間を取得することにより、プランジャを所定の位置まで移動させる制御に異常が生じていることに起因して、製造される製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性があるか否かを、容易に判定することができる。
【0010】
上記第1の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、制御部は、プランジャの射出を開始するための信号を、プランジャ駆動機構に対して出力してから、プランジャが所定の状態となるまでの時間を取得するように構成されている。ここで、プランジャの射出を開始するための信号がプランジャ駆動機構に対して出力されてから、実際にプランジャが所定の状態となるまでの時間が、予め設定された基準値の範囲外となった場合、実際の射出工程におけるプランジャの動作が、予め設定された射出工程におけるプランジャの動作と異なっている。このような場合には、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性がある。したがって、上記のように構成すれば、プランジャの射出を開始するための信号が出力されてから、プランジャが所定の状態となるまでの時間を取得することにより、実際にプランジャが所定の状態となるまでに異常が生じているか否かを判定することができる。その結果、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性があるか否かを判定することができる。
【0014】
この発明の第2の局面によるダイカストマシンは、溶湯が注湯される注湯口を有する筒形状の射出スリーブと、射出スリーブ内に摺動可能に嵌め込まれ、射出スリーブ内に進退移動されることにより、射出スリーブに注湯された溶湯を射出するプランジャと、プランジャを射出スリーブ内に進退移動させるプランジャ駆動機構と、プランジャが所定の状態となるまでの時間を取得するとともに、所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内か否かを判定する制御部と、を備え、所定の状態は、プランジャが所定の位置まで移動した状態であり、制御部は、プランジャを低速で移動させる低速射出工程と、プランジャを高速で移動させる高速射出工程とを切り替えるように、プランジャ駆動機構を制御するように構成されており、所定の位置は、低速射出工程から高速射出工程に切り替わる位置である。ここで、低速射出工程では、射出スリーブ内の溶湯の充填率を高めている。また、高速射出工程では、溶湯を金型に行き渡らせる。低速射出工程において、プランジャの移動速度が予め設定された速度よりも大きい場合、射出スリーブ内において溶湯が波打つ場合がある。また、低速射出工程において、プランジャの移動速度が予め設定された速度よりも小さい場合、射出スリーブ内において、溶湯の一部が固まる場合がある。このような状態で低速射出工程から高速前進工程に切り替わると、空気を巻き込んだり、固まった溶湯を含んだりした状態で溶湯が金型に射出される可能性があるため、製造される製品の品質が低下する場合がある。そこで、所定の位置を低速射出工程から高速射出工程に切り替わる位置にすることによって、低速射出工程から高速射出工程に切り替わる位置に射出プランジャが到達するまでの時間が、予め設定された基準値の範囲内であるか否かを判定することにより、低速射出工程が正常に行われたか否かを判定することができる。その結果、低速射出工程が正常に行われたか否かによって、製造される品質が所定の品質を満たしているか否かを、容易に判定することができる。
【0015】
上記第1の局面または上記第2の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、制御部は、所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲外の場合に、製造された製品を不良品として排出する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、不良品が製造ロットに含まれることを抑制することが可能となるので、製品ロット全体の品質が低下することを抑制することができる。
【0016】
上記第1の局面または上記第2の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、プランジャの位置を検知する位置検知部をさらに備え、制御部は、位置検知部の検知結果に基づいて、プランジャの位置を取得することにより、プランジャの所定の状態を検知するように構成されている。このように構成すれば、たとえば、プランジャの移動速度に基づいてプランジャの所定の状態を検知する構成と異なり、プランジャの移動を開始する際の速度が極端に小さく、プランジャの移動速度に基づいてプランジャが所定の状態であるか否かを検知することが困難な場合でも、プランジャの位置を取得することにより、プランジャの所定の状態を検知することができる。その結果、プランジャが所定の状態となるまでの時間を、精度よく取得することができる。
【0017】
上記第1の局面または上記第2の局面によるダイカストマシンにおいて、好ましくは、プランジャ駆動機構は油圧を供給する油圧供給部と、油圧供給部から供給される油圧を調整する油圧調整バルブとを含み、制御部は、油圧調整バルブに対してプランジャの射出を開始するための信号を出力してから、プランジャが所定の状態となるまでの時間を取得するように構成されている。このように構成すれば、プランジャが所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内であるか否かを判定することにより、油圧調整バルブにおいて、劣化などの異常が生じているか否かを容易に判定することができる。
【0018】
この場合、好ましくは、報知部をさらに備え、制御部は、油圧調整バルブに対してプランジャの射出を開始するための信号を出力してから、プランジャが所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲から外れている場合に、報知部により油圧調整バルブの確認を促すための報知を行うように構成されている。このように構成すれば、油圧調整バルブに異常が生じている可能性がある場合には、油圧調整バルブの確認を促すための報知が行われるので、ユーザは、油圧調整バルブに異常が生じている可能性があることを容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性があるか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態によるダイカストマシンの全体構成を模式的に示した図である。
【
図2】第1実施形態によるダイカストマシンの射出工程を説明するための模式図である。
【
図3】プランジャが移動を開始するまでの時間のずれを説明するための模式的なグラフである。
【
図4】プランジャが高速切替位置に到達するまでの時間のずれを説明するための模式的なグラフである。
【
図5】第1実施形態による制御部が、プランジャが移動を開始するまでの時間、および、高速切替位置に到達するまでの時間を取得する構成を説明するための模式的なグラフである。
【
図6】第1実施形態の制御部による製品の品質判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】第2実施形態によるダイカストマシンの全体構成を模式的に示した図である。
【
図8】第2実施形態による制御部が、油圧調整バルブの確認を促す報知を行う構成を説明するための模式的な図である。
【
図9】第2実施形態の制御部による油圧調整バルブの確認を促す報知処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1~
図5を参照して、第1実施形態によるダイカストマシン1の構成について説明する。なお、図面では、Z方向を上下方向とし、Z方向のうちのZ1方向を上方向、Z方向のうちのZ2方向を下方向としている。また、X方向を水平方向とし、X方向のうちのX1方向を後述するプランジャ6の前進方向とし、X方向のうちのX2方向をプランジャ6の後進方向としている。
【0023】
(ダイカストマシンの構成)
図1に示すように、ダイカストマシン1は、移動金型21が水平方向に移動される横型のマシンである。また、ダイカストマシン1は、コールドチャンバ方式のマシンであり、ダイカストマシン1に取り付けられた金型2内(移動金型21と固定金型22とにより形成されるキャビティC)に、液状の金属材料である溶湯を射出することによりダイカスト製品(成形品)を製造するように構成されている。
【0024】
ダイカストマシン1は、金型2と、射出スリーブ3と、注湯機構4と、蓋機構5と、プランジャ6と、射出シリンダ7と、制御部8と、位置センサ9と、表示部10と、表示灯11と、記憶部12と、を備えている。なお、射出シリンダ7は、特許請求の範囲の「プランジャ駆動機構」の一例である。また、位置センサ9は、特許請求の範囲の「位置検知部」の一例である。また、表示部10および表示灯11の各々は、特許請求の範囲の「報知部」の一例である。
【0025】
金型2は、ダイカスト製品(成形品)を成形するためのキャビティC(空洞部分)を形成するように構成されている。
【0026】
具体的には、金型2は、移動金型21と、固定金型22とを含んでいる。固定金型22は、固定ダイプレート23に固定されている。移動金型21は、固定金型22に当接または離間する方向(X方向)に移動可能に移動ダイプレート24に取り付けられている。キャビティCは、固定金型22に移動金型21を当接させることにより形成されている。
【0027】
射出スリーブ3は、筒形状を有している。また、射出スリーブ3は、X方向に延びている。また、射出スリーブ3は、金型2内に溶湯を供給するために設けられている。また、射出スリーブ3は、プランジャ6をX方向に移動可能に収容するとともに溶湯を注湯可能に構成されている。
【0028】
具体的には、射出スリーブ3は、注湯口3aと、溶湯通路3bとを含んでいる。注湯口3aは、注湯機構4により溶湯を溶湯通路3b内に注湯するために設けられている。注湯口3aは、射出スリーブ3の上側(Z1方向側)の部分をZ方向に貫通している。溶湯通路3bは、射出スリーブ3をX方向に貫通する貫通孔である。溶湯通路3bは、X1方向においてキャビティCに連通している。
【0029】
注湯機構4は、保持炉(図示せず)から液状の金属材料である溶湯を汲み取って、射出スリーブ3に供給(注湯)するように構成されている。
【0030】
具体的には、注湯機構4は、ラドル4aと、アーム4bとを備えている。ラドル4aは、保持炉から液状の金属材料である溶湯を汲み取るように構成されている。アーム4bは、射出スリーブ3の注湯口3aまでラドル4aを移動させるとともに、ラドル4aを傾けて溶湯を射出スリーブ3内に注湯するように構成されている。
【0031】
蓋機構5は、注湯機構4により射出スリーブ3内に溶湯が注湯された後、注湯口3aを塞ぐように構成されている。
【0032】
具体的には、蓋機構5は、蓋部5aと、アーム5bとを含んでいる。蓋部5aは、Z1方向から視て、注湯口3aの形状に沿った形状を有している。蓋部5aは、アーム5bの先端部に配置されている。アーム5bは、蓋部5aを注湯口3aまで移動させるように構成されている。
【0033】
プランジャ6は、プランジャチップ6aと、プランジャロッド6bとを含む。プランジャチップ6aは、射出スリーブ3内に摺動可能に嵌め込まれる。また、プランジャロッド6bは、X方向に沿って延びる柱形状を有している。プランジャロッド6bの一端部であるX1方向側の端部には、プランジャチップ6aが連結されている。プランジャロッド6bは、射出スリーブ3内に進退移動されることにより、プランジャチップ6aを摺動させる。プランジャ6は、射出スリーブ3内をX方向に沿って直線的に進退移動可能に構成され、射出スリーブ3内の溶湯を金型2内に射出するように構成されている。
【0034】
射出シリンダ7は、プランジャ6を射出スリーブ3内に進退移動させるように構成されている。射出シリンダ7は、液圧(油圧)により動作する液圧シリンダ(油圧シリンダ)である。射出シリンダ7は、油圧回路7aに接続されており、油圧回路7aにより動作されるように構成されている。なお、射出シリンダ7の詳細な構成は、後述する。
【0035】
制御部8は、ダイカストマシン1の各部の駆動を制御するように構成されている。また、制御部8は、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間を取得するとともに、所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内か否かを判定する。制御部8は、ダイカストマシン1の各部に電気的に接続されている。制御部8は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などのメモリとを含んでいる。制御部8が所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内か否かを判定する構成の詳細については、後述する。また、時間の基準値は、使用される金型2および射出スリーブ3などによって予め設定され、記憶部12に記憶されている。
【0036】
位置センサ9は、プランジャ6の位置を検知するように構成されている。位置センサ9は、たとえば、磁気式または光学式のリニアエンコーダ、または、レーザ式の測長器などを含む。
【0037】
表示部10は、液晶モニタなどの表示媒体を含み、情報を表示するように構成されている。
【0038】
表示灯11は、ランプなどの発光部を含み、点灯または点滅することにより、ユーザへの報知を行うように構成されている。
【0039】
記憶部12は、フラッシュメモリなどの記録媒体を含み、情報を記憶するように構成されている。
【0040】
(射出シリンダの構成)
図2に示すように、射出シリンダ7は、ピストン7bと、カップリング7cと、シリンダ部7dと、後室であるヘッド側室7eと、前室であるロッド側室7fとを含んでいる。
【0041】
また、プランジャロッド6bは、X2方向側の端部において、カップリング7cを介してピストン7bと連結されている。ピストン7bは、シリンダ部7d内をX方向に沿って直線的に往復移動(進退移動)可能に設けられている。すなわち、ピストン7bが進退移動されることにより、プランジャロッド6bが進退移動される。シリンダ部7dは、X方向に沿って延びる筒形状を有し、内部にピストン7bを保持するように設けられている。
【0042】
ヘッド側室7eは、ピストン7bによって区切られたシリンダ部7dの後側(X2方向側)の部屋である。ロッド側室7fは、ピストン7bによって区切られたシリンダ部7dの前側(X1方向側)の部屋である。ヘッド側室7eおよびロッド側室7fは、油圧が供給されたり、油圧が開放されたりされるように構成されている。ヘッド側室7eの油圧およびロッド側室7fの油圧は、それぞれ、圧力センサ13aおよび圧力センサ13bにより検出される。位置センサ9は、ヘッド側室7eの圧力の検出結果を制御部8に送信するように構成されている。同様に、圧力センサ13bは、ロッド側室7fの圧力の検出結果を制御部8に送信するように構成されている。圧力センサ13aおよび圧力センサ13bは、たとえば、油圧センサを含む。
【0043】
また、位置センサ9は、カップリング7cに設けられており、カップリング7cの位置を取得することにより、プランジャ6の位置を取得するように構成されている。
【0044】
油圧回路7aは、油圧供給部70と、作動液貯留部71と、ポンプ72と、第1油圧調整バルブ73と、第2油圧調整バルブ74と、第3油圧調整バルブ75と、を含む。なお、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74は、特許請求の範囲の「油圧調整バルブ」の一例である。
【0045】
油圧供給部70は、第1流路76によって、ヘッド側室7eと機械的に接続されている。油圧供給部70は、ヘッド側室7eに圧力を供給するように構成されている。油圧供給部70は、たとえば、アキュムレーターを含む。
【0046】
また、第1流路76には、第1油圧調整バルブ73が設けられている。第1油圧調整バルブ73は、油圧供給部70から供給される圧力を調整するように構成されている。具体的には、第1油圧調整バルブ73は、制御部8によって開度が調整されることによって、油圧供給部70から第1流路76を介してヘッド側室7eへ流入する作動液(油)の流量を調整することにより、ヘッド側室7eに供給される圧力を調整するように構成されている。第1油圧調整バルブ73は、たとえば、サーボ弁を含む。
【0047】
作動液貯留部71は、第2流路77によって、ロッド側室7fと機械的に接続されている。作動液貯留部71は、ロッド側室7fから排出される作動液を貯留するように構成されている。また、作動液貯留部71は、第3流路78によって、油圧供給部70と機械的に接続されている。作動液貯留部71は、たとえば、オイルタンクを含む。
【0048】
また、第2流路77には、第2油圧調整バルブ74が設けられている。第2油圧調整バルブ74は、ロッド側室7fの圧力を調整するように構成されている。具体的には、第2油圧調整バルブ74は、制御部8によって開度が調整されることによって、ロッド側室7fから流出する作動液の流量を調整することにより、ロッド側室7fの圧力を調整するように構成されている。第2油圧調整バルブ74は、たとえば、サーボ弁を含む。
【0049】
また、第3流路78には、ポンプ72および第3油圧調整バルブ75が設けられている。ポンプ72は、作動液貯留部71に貯留されている作動液を、油圧供給部70に対して流入させるように構成されている。また、第3油圧調整バルブ75は、制御部8によって制御されることより、油圧供給部70からポンプ72に対して作動液が逆流することを抑制するように構成されている。第3油圧調整バルブは、たとえば、逆止弁を含む。
【0050】
油圧供給部70に対してパイロット圧が導入されていない場合、制御部8は、第3油圧調整バルブ75を開くとともに、ポンプ72を作動させることにより、油圧供給部70に対してパイロット圧を導入する。また、油圧供給部70に対してパイロット圧が導入されている場合、制御部8は、第3油圧調整バルブ75を閉じるとともに、ポンプ72を停止させる制御を行う。
【0051】
射出シリンダ7は、射出工程を行うように、プランジャ6を駆動する。射出工程は、射出前進工程と、射出戻り工程とを含んでいる。なお、
図2では、射出前進工程を示している。射出前進工程は、射出スリーブ3内においてプランジャ6を前進させて(すなわち、X1方向側へ移動させて)、金型2内に溶湯を射出する工程である。また、射出戻り工程は、射出前進工程において前進させたプランジャ6を射出スリーブ3内において後進させて(すなわち、X2方向側へ移動させて)、プランジャ6を次の溶湯の射出のための待機位置に移動させる工程である。なお、1回の射出工程のことを、「1ショット」とも称する。
【0052】
射出前進工程では、射出シリンダ7は、プランジャ6を前進させるように駆動する。具体的には、射出シリンダ7は、制御部8の制御の下、油圧供給部70からヘッド側室7eに油圧が供給され、ロッド側室7fの油圧が開放されることにより、ピストン7bがX1方向に移動されるように構成されている。これにより、射出シリンダ7は、ピストン7bに連結されたプランジャロッド6bを介して、プランジャ6にX1方向に移動するような駆動力を伝達するように構成されている。その結果、射出シリンダ7は、プランジャ6を前進させるように構成されている。
【0053】
射出前進工程は、低速前進工程と、高速前進工程とを含んでいる。制御部8は、プランジャ6を低速で移動させる低速射出工程と、プランジャ6を高速で移動させる高速射出工程とを切り替えるように、射出シリンダ7を制御するように構成されている。低速射出工程は、第1速度v1(
図3参照)を目標速度として、プランジャ6を移動させる工程である。また、高速射出工程は、第1速度v1よりも大きい速度である第2速度v2(
図3参照)を目標速度として、プランジャ6を移動させる工程である。低速前進工程から高速前進工程に切り替わる位置(高速切替位置Cp)は、プランジャチップ6aが、注湯口3aを塞ぐ位置である。具体的には、
図2に示すように、プランジャチップ6aのX1方向側の面60が、注湯口3aのX1方向側の壁面3cの位置に到達する位置が、注湯口3aを塞ぐ位置である。なお、低速前進工程は、射出スリーブ3内における溶湯の充填率を高めるために行われる。また、高速前進工程は、溶湯を金型2(キャビティC)内に行き渡らせるために行われる。
【0054】
制御部8は、第1油圧調整バルブ73の開度および第2油圧調整バルブ74の開度を調整することにより、プランジャ6の移動速度を変化させる。具体的には、プランジャ6の移動を開始し、低速射出工程を行う際の第1油圧調整バルブ73の開度および第2油圧調整バルブ74の開度と、低速射出工程から高速前進工程に切り替える際の第1油圧調整バルブ73の開度および第2油圧調整バルブ74の開度とは、予め実験的に取得されており、記憶部12に記憶されている。
【0055】
制御部8から、プランジャ6の射出を開始するための信号40を射出シリンダ7に出力された際に、第1油圧調整バルブ73の開度および第2油圧調整バルブ74の開度は、記憶部12に記憶された低速射出工程を行う際の開度となるように制御される。また、プランジャ6が高速切替位置Cpに到達した場合、制御部8は、第1油圧調整バルブ73の開度および第2油圧調整バルブ74の開度を、低速射出工程用の開度から、高速前進工程用の開度に切り替える制御を行う。
【0056】
第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74が劣化したり、異物が混入したりした場合、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74の制御が正常に行えない場合がある。具体的には、制御部8が、記憶部12に記憶されている開度となるように第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74を制御したとしても、実際の第1油圧調整バルブ73の開度、および、実際の第2油圧調整バルブ74の開度が、記憶部12に記憶されている開度と異なる場合がある。実際の第1油圧調整バルブ73の開度、および、実際の第2油圧調整バルブ74の開度が、記憶部12に記憶されている開度と異なった場合、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間が、予め設定されている時間とずれる。プランジャ6が所定の状態となるまでの時間が、予め設定されている時間とずれると、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性がある
【0057】
(製造された製品の品質の判定)
そこで、第1実施形態では、制御部8は、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間を取得するとともに、所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内か否かを判定するように構成されている。第1実施形態では、制御部8は、プランジャ6の射出を開始するための信号40を、射出シリンダ7に対して出力してから、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間を取得するように構成されている。
【0058】
(プランジャの所定の状態の一例)
所定の状態は、プランジャ6の射出を開始するための信号40に応じて、プランジャ6が移動を開始した状態である。制御部8がプランジャ6の射出を開始するための信号40を射出シリンダ7に対して出力してから、プランジャ6が移動を開始した状態となるまでの時間にすれが生じた場合、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性がある。
【0059】
(プランジャが移動を開始するまでの時間のずれ)
図3を参照して、第1油圧調整バルブ73の劣化などに起因して、プランジャ6が移動を開始するまでの時間がずれる例について説明する。
図3に示すグラフG1は、縦軸が速度であり、横軸が時間である。
【0060】
図3に示すグラフG1において、実線で図示している速度変化曲線30は、第1油圧調整バルブ73に劣化などが生じていない場合のプランジャ6の移動速度の変化を示している。また、グラフG1において、破線で図示している速度変化曲線31は、プランジャ6が移動を開始するまでの時間にずれた乗じた場合のプランジャ6の移動速度の変化を示している。プランジャ6が移動を開始するまでの時間のずれは、たとえば、第1油圧調整バルブ73に生じた劣化などに起因して発生する。
【0061】
第1油圧調整バルブ73に劣化などが生じていない場合には、速度変化曲線30に示すように、プランジャ6の射出を開始するための信号40が出力されてプランジャ6が移動を開始してから、第1時間t1が経過した際に、低速射出工程から高速前進工程に切り替わる。すなわち、プランジャ6の射出を開始するための信号40が出力されてから、第1時間t1が経過した際に、プランジャ6が第1高速切替位置Cp1に到達する。なお、プランジャ6の射出を開始するための信号40は、溶湯の注湯が完了し、射出スリーブ3内の溶湯の波立ちが収まるまでの所定の時間(遅延時間)が経過した後に出力される。また、第1高速切替位置Cp1は、第1油圧調整バルブ73に劣化などが生じていない場合の高速切替位置Cpである。また、グラフG1は、プランジャ6の移動の開始時間のずれを把握しやすくするため、速度変化曲線30が原点から開始されるように図示している。実際には、プランジャ6の射出を開始するための信号40が出力されてから、プランジャ6が移動を開始するまでには、第1油圧調整バルブ73の特性により、所定の時間を要する。
【0062】
一方、第1油圧調整バルブ73に劣化などが生じている場合、速度変化曲線31に示すように、第1油圧調整バルブ73の劣化などに起因して、プランジャ6の射出を開始するための信号40が出力されてから、実際にプランジャ6が移動を開始するまでの時間にずれが生じる。グラフG1に示す例では、プランジャ6の射出を開始するための信号40が出力されてから第2時間t2が経過した後に、実際にプランジャ6が移動を開始する。したがって、速度変化曲線31に示すように、低速射出工程の開始タイミングが、低速射出工程の開始タイミングよりも、第2時間t2分だけ遅れる。また、第2高速切替位置Cp2に到達する時間も、第1高速切替位置Cp1よりも第2時間t2分だけ遅れる。したがって、高速射出工程の開始タイミングも、第2時間t2分だけ遅れる。すなわち、第1油圧調整バルブ73に劣化が生じている場合、プランジャ6の射出を開始するための信号40が出力されてから、第1時間t1よりも第2時間t2分だけ長い時間である第3時間t3が経過した際に、プランジャ6が第2高速切替位置Cp2に到達する。
【0063】
(プランジャの所定の状態の他の例)
所定の状態は、プランジャ6が所定の位置まで移動した状態である。具体的には、所定の位置は、低速射出工程から高速射出工程に切り替わる位置(高速切替位置Cp(
図2参照))である。低速射出工程から高速射出工程に切り替わる位置に到達するまでの時間にずれが生じた場合、製造される製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性がある。
【0064】
(プランジャが高速切替位置に到達するまでの時間のずれ)
図4を参照して、第2油圧調整バルブ74の劣化などに起因して、プランジャ6が高速切替位置Cpに到達するまでの時間がずれる例について説明する。
図4に示すグラフG2は、縦軸が速度であり、横軸が時間である。
【0065】
図4に示すグラフG2において、実線で図示している速度変化曲線30は、第2油圧調整バルブ74に劣化などが生じていない場合のプランジャ6の移動速度の変化を示している。また、グラフG2において、破線で図示している速度変化曲線32は、プランジャ6が高速切替位置Cpに到達するまでの時間が早まった場合のプランジャ6の移動速度の変化を示している。プランジャ6が高速切替位置Cpに到達するまでの時間が早まる原因としては、たとえば、第2油圧調整バルブ74に劣化などが生じ、プランジャ6の飛び出しが生じた場合などが考えられる。また、グラフG2において、一点鎖線で図示している速度変化曲線33は、プランジャ6が高速切替位置Cpに到達するまでの時間が遅れた場合のプランジャ6の移動速度の変化を示している。プランジャ6が高速切替位置Cpに到達するまでの時間が遅れる原因としては、たとえば、第2油圧調整バルブ74に劣化などが生じ、プランジャ6の加速度が所定の加速度よりも小さくなる場合などが考えられる。なお、プランジャ6の飛び出しとは、プランジャ6の移動開始時において、ヘッド側室7eの圧力が急激に上昇するか、または、ロッド側室7fの圧力が急激に下降すことにより、プランジャ6が所定の加速度以上の加速度でわずかに移動する現象である。
【0066】
第1実施形態では、制御部8は、プランジャ6の移動速度および移動時間に基づいて、プランジャ6の移動距離を取得する。制御部8は、取得したプランジャ6の移動距離に基づいて、プランジャ6が高速切替位置Cpに到達したか否かを判定している。高速切替位置Cpは、金型2および射出スリーブ3と、注湯された溶湯の量によって、射出毎に予め設定される。すなわち、制御部8は、プランジャ6の移動速度および移動時間に基づいて取得したプランジャ6の移動距離によって、プランジャ6が高速切替位置Cpに到達したか否かを判定し、プランジャ6が高速切替位置Cpに到達としたと判定した際に、低速射出工程から高速射出工程に切り替える。第2油圧調整バルブ74に劣化などが生じていない場合、プランジャ6が所定の速度は、第1速度v1である。第2油圧調整バルブ74に劣化などが生じていない場合、プランジャ6が所定の時間は、射出開始から第1時間t1までの時間である。また、第2油圧調整バルブ74に劣化などが生じていない場合、高速切替位置Cpは、第1高速切替位置Cp1である。
【0067】
第2油圧調整バルブ74に劣化などが生じ、プランジャ6に飛び出しが生じた場合、速度変化曲線32に示すように、第1速度v1以上となる区間Seが生じる。そのため、第2油圧調整バルブ74に劣化などが生じていない場合と比較して、プランジャ6の移動速度が大きくなるため、所定の距離だけ移動する際に要する時間が短くなる。すなわち、グラフG2に示すように、第2油圧調整バルブ74に劣化などが生じ、プランジャ6に飛び出しが生じた場合、射出開始から第4時間t4が経過した位置が第3高速切替位置Cp3となる。
【0068】
また、第2油圧調整バルブ74に劣化などが生じ、プランジャ6の加速度が所定の加速度よりも小さい場合、速度変化曲線33に示すように、プランジャ6の移動速度が第1速度v1に達するまでの時間が長くなる。したがって、プランジャ6が所定の距離を移動するまでに要する時間も長くなる。すなわち、速度変化曲線33に示すように、第2油圧調整バルブ74に劣化などが生じ、プランジャ6の加速度が所定の加速度よりも小さい場合、射出開始から第5時間t5が経過した位置が第4高速切替位置Cp4となる。
【0069】
上記グラフG1およびグラフG2に示したように、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74に劣化などが生じ、プランジャ6が移動を開始するまでの時間にずれが生じたり、プランジャ6が高速切替位置Cpに到達するまでの時間にずれが生じたりした場合、製造される製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性がある。
【0070】
具体的には、制御部8がプランジャ6の射出を開始するための信号40を射出シリンダ7に対して出力してから、実際にプランジャ6の移動が開始されるまでの時間が、予め設定された基準値よりも遅くなった場合、射出スリーブ3内において溶湯の一部が固まる場合がある。また、高速切替位置Cpが第4高速切替位置Cp4にずれた場合にも、射出スリーブ3内において溶湯の一部が固まる場合がある。溶湯の一部が固まった状態で製造された製品には、固まった溶湯が混入し、製造される製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性がある。
【0071】
また、高速切替位置Cpが第3高速切替位置Cp3にずれた場合、低速射出工程におけるプランジャ6の移動速度が速すぎることにより、射出スリーブ3内において溶湯が波打つ場合がある。溶湯が波打った場合、空気を巻き込んだ状態となる。溶湯が空気を巻き込んだ状態で金型2に射出された場合、製造される製品に隙間(空気を含んだ層)が形成される場合があり、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性がある。
【0072】
なお、プランジャ6が移動を開始した直後は、プランジャ6の移動速度が非常に小さい。そのため、速度センサによってプランジャ6が所定の状態となったか否かを判定する場合、プランジャ6が移動を開始した状態を正確に判定できない場合がある。そこで、第1実施形態では、制御部8は、位置センサ9の検知結果に基づいて、プランジャ6の位置を取得することにより、プランジャ6の所定の状態を検知するように構成されている。第1実施形態では、制御部8は、プランジャ6が停止している初期状態から、所定の初期移動量分だけ移動するまでに要した第6時間t6(
図5参照)を、プランジャ6が移動を開始した状態となるまでの時間として取得するように構成されている。第1実施形態では、所定の初期移動は、たとえば、数mmである。好ましくは、所定の初期移動量は、たとえば、約4mm~約5mmである。
【0073】
図5に示すグラフG3は、縦軸が信号強度であり、横軸が時間である。グラフG3、制御部8が射出シリンダ7に対してプランジャ6の射出を開始するための信号40を出力したタイミングを示すグラフである。
【0074】
グラフG3に示すように、制御部8は、信号40を出力してから、プランジャ6が移動を開始したタイミングtg1までの第6時間t6を、プランジャ6が移動を開始した状態となるまでの時間として取得するように構成されている。
【0075】
また、グラフG3に示すように、制御部8は、信号40を出力してから、プランジャ6が高速切替位置Cpに到達したタイミングtg2までの第7時間t7を、プランジャ6が高速切替位置Cpに到達するまでに要した時間として取得するようにされている。なお、
図5では、便宜上、プランジャ6が移動を開始したタイミングtg1とプランジャ6が高速切替位置Cpに到達したタイミングtg2との間の時間長さPを、実際の時間長さよりも短く図示している。
【0076】
(不良品の排出)
第1実施形態では、制御部8は、所定の状態となるまでの時間(第6時間t6および第7時間t7)が、予め設定された時間の基準値の範囲外の場合に、製造された製品を不良品として排出する制御を行うように構成されている。なお、制御部8は、製品を製造する度に、所定の状態となるまでの時間(第6時間t6および第7時間t7)が、予め設定された時間の基準値の範囲内か否かを判定する。
【0077】
図6を参照して、制御部8が、製品の品質判定を行う処理について説明する。
【0078】
ステップS1において、制御部8は、プランジャ6が移動を開始した状態となるまでの第6時間t6を取得する。
【0079】
ステップS2において、制御部8は、取得した第6時間t6(
図5参照)が、予め設定された時間の基準値の範囲内か否かを判定する。取得した第6時間t6が、予め設定された時間の基準値の範囲内の場合、処理は、ステップS3へ進む。取得した第6時間t6が、予め設定された時間の基準値の範囲外の場合、処理は、ステップS6へ進む。
【0080】
ステップS3において、制御部8は、プランジャ6が高速切替位置Cp(
図2参照)に到達した第7時間t7(
図5参照)を取得する。
【0081】
ステップS4において、制御部8は、取得した第7時間t7が、予め設定された時間の基準値の範囲内の場合、処理は、ステップS5へ進む。取得した第7時間t7が、予め設定された時間の基準値の範囲外の場合、処理は、ステップS6へ進む。
【0082】
ステップS5において、制御部8は、製造された製品の品質が所定の品質を満たしている可能性が高いと判定する。製造された製品の品質が所定の品質を満たしている可能性が高いと判定された製品は、製造ロットとして保管される。その後、処理は、終了する。
【0083】
また、ステップS2またはステップS4から、ステップS6へと処理が進んだ場合、ステップS6において、制御部8は、製造された製品を不良品として排出する。すなわち、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性が高いため、製造ロットとして保管されないように排出する。その後、処理は、終了する。
【0084】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態の効果について説明する。
【0085】
第1実施形態では、上記のように、ダイカストマシン1は、溶湯が注湯される注湯口3aを有する筒形状の射出スリーブ3と、射出スリーブ3内に摺動可能に嵌め込まれ、射出スリーブ3内に進退移動されることにより、射出スリーブ3に注湯された溶湯を射出するプランジャ6と、プランジャ6を射出スリーブ3内に進退移動させる射出シリンダ7と、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間を取得するとともに、所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内か否かを判定する制御部8と、を備える。これにより、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内でないと判定された場合には、実際の射出工程と予め設定された射出工程とにおいて、プランジャ6の動作の差異が生じていると判定することができる。その結果、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性があるか否かを判定することができる。
【0086】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部8は、プランジャ6の射出を開始するための信号40を、射出シリンダ7に対して出力してから、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間を取得するように構成されている。ここで、プランジャ6の射出を開始するための信号40が射出シリンダ7に対して出力されてから、実際にプランジャ6が所定の状態となるまでの時間が、予め設定された基準値の範囲外となった場合、実際の射出工程におけるプランジャ6の動作が、予め設定された射出工程におけるプランジャ6の動作と異なっている。このような場合には、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性がある。したがって、上記のように構成することによって、プランジャ6の射出を開始するための信号40が出力されてから、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間を取得することにより、実際にプランジャ6が所定の状態となるまでに異常が生じているか否かを判定することができる。その結果、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性があるか否かを判定することができる。
【0087】
また、第1実施形態では、上記のように、所定の状態は、プランジャ6の射出を開始するための信号40に応じて、プランジャ6が移動を開始した状態である。ここで、溶湯が射出スリーブ3に供給(注湯)された際に、溶湯が波打つ場合がある。そのため、溶湯の波打ちが収まるまでの所定の時間が経過した後、射出シリンダ7によって、プランジャ6の移動が開始される。しかしながら、制御部8がプランジャ6の射出を開始するための信号40を射出シリンダ7に対して出力してから、実際にプランジャ6の移動が開始されるまでの時間が、予め設定された基準値よりも遅くなった場合、射出スリーブ3内において溶湯の一部が固まる場合がある。射出スリーブ3内において溶湯の一部が固まった場合、固まった溶湯を含んだ状態の溶湯が金型2に射出されるため、製造される製品の品質が低下する。したがって、上記のように構成することにより、プランジャ6の射出を開始するための信号40を射出シリンダ7に対して出力してから、プランジャ6が移動を開始した状態に基づいて、射出スリーブ3内において溶湯の一部が固まった可能性があるか否かを判定することができる。その結果、射出スリーブ3内において溶湯の一部が固まったことに起因して、製造される製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性があることを、容易に判定することができる。
【0088】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部8は、プランジャ6が停止している初期状態から、所定の初期移動量分だけ移動するまでに要した時間を、プランジャ6が移動を開始した状態となるまでの時間として取得するように構成されている。これにより、プランジャ6が移動を開始した状態となるまでの第6時間t6と予め設定された時間とを比較することにより、プランジャ6が移動を開始した状態が正常であるか否かを容易に判定することができる。その結果、プランジャ6が移動を開始した状態となるまでの第6時間t6を取得することにより、プランジャ6が移動を開始した状態が正常でないことに起因して、製造される製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性があることを容易に判定することができる。
【0089】
また、第1実施形態では、上記のように、所定の状態は、プランジャ6が所定の位置まで移動した状態である。これにより、プランジャ6が所定の位置まで移動した状態となるまでの第7時間t7が、予め設定された基準値の範囲内であるか否かを判定することにより、プランジャ6を所定の位置まで移動させる制御に異常が生じているか否かを容易に判定することができる。その結果、プランジャ6が所定の位置まで移動した状態となるまでの第7時間t7を取得することにより、プランジャ6を所定の位置まで移動させる制御に異常が生じていることに起因して、製造される製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性があることを、容易に判定することができる。
【0090】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部8は、プランジャ6を低速で移動させる低速射出工程と、プランジャ6を高速で移動させる高速射出工程とを切り替えるように、射出シリンダ7を制御するように構成されており、所定の位置は、低速射出工程から高速射出工程に切り替わる位置である。ここで、低速射出工程では、射出スリーブ3内の溶湯の充填率を高めている。また、高速射出工程では、溶湯を金型2に行き渡らせる。低速射出工程において、プランジャ6の移動速度が予め設定された速度よりも大きい場合、射出スリーブ3内において溶湯が波打つ場合がある。また、低速射出工程において、プランジャ6の移動速度が予め設定された速度よりも小さい場合、射出スリーブ3内において、溶湯の一部が固まる場合がある。このような状態で低速射出工程から高速前進工程に切り替わると、空気を巻き込んだり、固まった溶湯を含んだりした状態で溶湯が金型2に射出される可能性があるため、製造される製品の品質が低下する場合がある。そこで、所定の位置を低速射出工程から高速射出工程に切り替わる位置にすることによって、低速射出工程から高速射出工程に切り替わる位置(高速切替位置Cp)にプランジャ6が到達するまでの時間が、予め設定された基準値の範囲内であるか否かを判定することにより、低速射出工程が正常に行われたか否かを判定することができる。その結果、低速射出工程が正常に行われたか否かによって、製造される品質が所定の品質を満たしているか否かを、容易に判定することができる。
【0091】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部8は、所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲外の場合に、製造された製品を不良品として排出する制御を行うように構成されている。これにより、不良品が製造ロットに含まれることを抑制することが可能となるので、製品ロット全体の品質が低下することを抑制することができる。
【0092】
また、第1実施形態では、上記のように、プランジャ6の位置を検知する位置センサ9をさらに備え、制御部8は、位置センサ9の検知結果に基づいて、プランジャ6の位置を取得することにより、プランジャ6の所定の状態を検知するように構成されている。これにより、たとえば、プランジャ6の移動速度に基づいてプランジャ6の所定の状態を検知する構成と異なり、プランジャ6の移動を開始する際の速度が極端に小さく、プランジャ6の移動速度に基づいてプランジャ6が所定の状態であるか否かを検知することが困難な場合でも、プランジャ6の位置を取得することにより、プランジャ6の所定の状態を検知することができる。その結果、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間を、精度よく取得することができる。
【0093】
また、第1実施形態では、上記のように、射出シリンダ7は、油圧を供給する油圧供給部70と、油圧供給部70から供給される油圧を調整する第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74とを含み、制御部8は、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74に対してプランジャ6の射出を開始するための信号40を出力してから、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間を取得するように構成されている。これにより、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲内であるか否かを判定することにより、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74において、劣化などの異常が生じているか否かを容易に判定することができる。
【0094】
[第2実施形態]
次に、
図7および
図8を参照して、第2実施形態におけるダイカストマシン101の構成について説明する。製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性がある場合に、製品を不良品として排出するのみの第1実施形態とは異なり、第2実施形態におけるダイカストマシン101は、製造された製品の品質が所定の品質を満たしていない可能性がある場合に、製品を不良品として排出するとともに、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74の確認を促す報知を行うように構成されている。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0095】
図7に示すように、第2実施形態によるダイカストマシン101は、制御部8の代わりに、制御部18を備える点で、上記第1実施形態によるダイカストマシン1とは異なる。
【0096】
第2実施形態による制御部18は、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74に対してプランジャ6の射出を開始するための信号40を出力してから、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲から外れている場合に、表示部10により第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74の確認を促すための報知を行うように構成されている。
【0097】
具体的には、制御部18は、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74に対してプランジャ6の射出を開始するための信号40を出力してから、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間(第6時間t6および第7時間t7)が、予め設定された時間の基準値の範囲から外れている場合には、
図8に示すように、表示部10において第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74の確認を促すメッセージを表示させることにより、報知を行う。なお、予め設定された時間の基準値の範囲は、上記第1実施形態における予め設定された時間の基準値の範囲と同様の範囲である。
【0098】
次に、
図9を参照して、制御部18による報知処理について説明する。なお、上記第1実施形態による制御部8と同様の処理に関しては、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0099】
制御部18は、ステップS1およびS2において、第6時間t6が予め設定された基準値の範囲内と判定され、ステップS3およびS4において、第7時間t7が予め設定された基準値の範囲内と判定された場合には、報知処理は行わない。
【0100】
ステップS2において、第6時間t6が予め設定された基準値の範囲外と判定された場合、または、ステップS4において、第7時間t7が予め設定された基準値の範囲外と判定された場合、処理は、ステップS7へ進む。
【0101】
ステップS7において、制御部18は、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74の確認を促す報知を行う。その後、処理は、終了する。
【0102】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態の構成と同様である。
【0103】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態の効果について説明する。
【0104】
また、第2実施形態では、上記のように、表示部10をさらに備え、制御部18は、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74に対してプランジャ6の射出を開始するための信号40を出力してから、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間が、予め設定された時間の基準値の範囲から外れている場合に、表示部10により第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74の確認を促すための報知を行うように構成されている。これにより、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74に異常が生じている可能性がある場合には、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74の確認を促すための報知が行われるので、ユーザは、第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74に異常が生じている可能性があることを容易に把握することができる。
【0105】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態の効果と同様である。
【0106】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0107】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、ダイカストマシン1(101)を横型に構成した例を示したが本発明はこれに限られない。本発明では、ダイカストマシンを縦型に構成してもよい。
【0108】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部8(18)が、プランジャ6の射出を開始するための信号40を射出シリンダ7に出力してから、プランジャ6が所定の状態となるまでの時間(第6時間t6および第7時間t7)を取得する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部は、溶湯の注湯が完了してからプランジャが所定の状態となるまでの時間を取得してもよい。また、制御部は、溶湯の注湯が完了し、溶湯の波立ちが収まるまでの所定の時間(遅延時間)が経過してからプランジャが所定の状態となるまでの時間を取得してもよい。
【0109】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部8(18)が、プランジャ6が停止している初期状態から、所定の初期移動量分だけ移動するまでに要した時間を、プランジャ6が移動を開始した状態となるまでの時間(第6時間t6)として取得するように構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、プランジャの移動を開始する際の速度を取得することが可能であれば、制御部は、プランジャの移動速度に基づいて、プランジャが移動を開始した状態となるまでの時間を取得するように構成されていてもよい。
【0110】
また、上記第1および第2実施形態では、所定の状態が、プランジャ6が高速切替位置Cp(低速射出工程から高速前進工程に切り替わる位置)まで移動する状態であり、制御部8(18)が、プランジャ6が高速切替位置Cpに到達するまでの時間(第7時間t7)を取得する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、所定の状態は、ユーザが設定した所定の位置までプランジャが移動する状態であってもよい。所定の状態が、ユーザが設定した所定の位置までプランジャが移動する状態の場合、制御部は、プランジャが、ユーザが設定した所定の位置に到達するまでの時間を取得するように構成すればよい。
【0111】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部8(18)が、所定の状態となるまでの時間(第6時間t6および第7時間t7)が、予め設定された基準値の範囲外の場合に、製造された製品を不良品として排出する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部は、所定の状態となるまでの時間が、予め設定された基準値の範囲外の場合に、製造された製品を不良品として排出なくてもよい。しかしながら、不良品が製造ロットに含まれる場合、製造ロット全体としての製品の品質が低下するとともに、品質検査において不良品が発見された場合、製造ロットに含まれる製品をすべて廃棄しなければならない場合がある。そのため、制御部は、所定の状態となるまでの時間が、予め設定された基準値の範囲外の場合に、製造された製品を不良品として排出するように構成されていることが好ましい。
【0112】
また、上記第1および第2実施形態では、ダイカストマシン1(101)が、位置センサ9を備えている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ダイカストマシンが速度センサを備え、プランジャの移動速度と時間とに基づいてプランジャの位置を検知するように構成すれば、ダイカストマシンは、位置センサを備えていなくてもよい。しかしながら、プランジャが移動を開始した直後の速度は、非常に小さい場合があり、速度センサによって速度を取得することが困難な場合がある。したがって、ダイカストマシンは、位置センサを備えていることが好ましい。
【0113】
また、上記第1および第2実施形態では、制御部8(18)が、プランジャ6が移動を開始するまでの時間(第6時間t6)およびプランジャ6が高速切替位置Cpに到達するまでの時間(第7時間t7)を取得し、第6時間t6および第7時間t7が、予め設定された基準値の範囲内であるか否かを判定する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部は、プランジャが移動を開始するまでの時間(第6時間t6)およびプランジャが高速切替位置に到達するまでの時間(第7時間t7)のうち、少なくともいずれか一方を取得し、予め設定された基準値の範囲内であるか否かを判定するように構成されていてもよい。すなわち、制御部は、プランジャ6が移動を開始するまでの時間(第6時間t6)およびプランジャ6が高速切替位置Cpに到達するまでの時間(第7時間t7)の両方を取得しなくてもよい。
【0114】
また、上記第2実施形態では、制御部18が、表示部10にメッセージを表示することにより、ユーザに第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74の確認を促す報知を行うように構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部は、表示灯11を点灯または点滅させることにより、油圧調整バルブの確認を促す報知を行うように構成されていてもよい。
【0115】
また、上記第1実施形態では、制御部8が不良品を排出する制御を行うのみであり、上記第2実施形態では、制御部18が第1油圧調整バルブ73および第2油圧調整バルブ74の確認を促す報知を行うのみの構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、制御部は、不良品を排出するとともに、油圧調整バルブの確認を促す報知を行うように構成されていてもよい。すなわち、制御部は、上記第1実施形態による制御部8の構成と、上記第2実施形態による制御部18の構成とを組み合わせた構成でもよい。
【0116】
また、上記第1および第2実施形態では、説明の便宜上、制御部8(18)の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0117】
1、101 ダイカストマシン
3 射出スリーブ
6 射出プランジャ
8、18 制御部
9 位置センサ(位置検知部)
10 表示部(報知部)
11 表示灯(報知部)
40 プランジャの射出を開始するための信号
73 第1油圧調整バルブ(油圧調整バルブ)
74 第2油圧調整バルブ(油圧調整バルブ)
Cp 高速切替位置(低速射出工程から高速前進工程に切り替わる位置)