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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】切削工具、切削方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/02 20060101AFI20240508BHJP
   B23B 41/12 20060101ALI20240508BHJP
   B23B 35/00 20060101ALI20240508BHJP
【FI】
B23B29/02 B
B23B41/12
B23B35/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020107860
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022002866
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000237499
【氏名又は名称】富士精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 宣哉
(72)【発明者】
【氏名】藤井 章博
(72)【発明者】
【氏名】近藤 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】富田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】國重 祐介
(72)【発明者】
【氏名】安間 康裕
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202824701(CN,U)
【文献】米国特許第04269421(US,A)
【文献】特開2015-013348(JP,A)
【文献】特開2012-030344(JP,A)
【文献】特開2004-283996(JP,A)
【文献】特開2002-283114(JP,A)
【文献】特開2001-129707(JP,A)
【文献】特表2001-525733(JP,A)
【文献】実開昭63-070803(JP,U)
【文献】実開昭60-178508(JP,U)
【文献】実開昭55-107910(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0261988(US,A1)
【文献】米国特許第04842450(US,A)
【文献】米国特許第04693642(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00-29/34
B23B 35/00-49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め一列に並んで形成された複数の穴を有するワークについて切削加工を行う切削工具であって、
前記ワークが、前記複数の穴のうち両端に位置する穴である基準穴と、前記複数の穴から前記基準穴を除く中間に位置する穴のうちの1つ以上の穴である加工穴とを含み、
当該切削工具が、
長手方向に伸びた本体と、
その本体の中間部に設けられた1つ以上の切刃と、
前記本体の両端部にそれぞれ設けられ、それぞれ、前記基準穴の各々の内周面にそれぞれ接触可能なガイド部とを含み、
前記本体が、横断面形状が概して扇形状を成す扇状部を含み、前記扇状部の中心角が180度より小さい切削工具。
【請求項2】
前記扇状部の重心が、当該切削工具の回転軸線より前記扇状部の概して円弧状に湾曲した外周面に近い側に位置し、
前記重心と前記回転軸線との間の距離が、前記回転軸線から前記概して円弧状に湾曲した外周面までの長さの15%以上である請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記扇状部が、当該切削工具の回転軸線を中心とする円筒部材から、前記円筒部材の概して円弧状に湾曲した外周面に対向する部分の一部である除去部を除いた形状を成し、
前記回転軸線から円弧状に湾曲した外周面とは反対側の端部までの距離の、前記円筒部材の半径にする比率が0.7以下であり、かつ、前記除去部の体積の前記円筒部材の体積に対する比率が25%以上である請求項1または2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記ガイド部が、前記本体の両端部の各々の外周面に、それぞれ、設けられた複数のガイドパッドを含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載の切削工具。
【請求項5】
当該切削工具が、主軸にホルダを介して取り付けられるとともに、前記ホルダに、前記ホルダの軸線と直交する方向に相対移動可能、かつ、前記ホルダの軸線に対して傾動可能に保持された請求項1ないし4のいずれか1つに記載の切削工具。
【請求項6】
切削工具をホルダを介して保持する主軸と、
一列に並んで形成された複数の穴を有するワークを保持するワーク保持台と
を含む作業装置において前記主軸の回転と、前記主軸と前記ワーク保持台との相対移動とにより、前記切削工具により、前記ワークの複数の穴のうちの中間に位置する穴のうちの1つ以上の加工穴に切削加工を施す切削方法であって、
前記切削工具が、長手方向に伸びた本体と、その本体の中間部に設けられた1つ以上の切刃と、前記本体の両端部にそれぞれ設けられたガイド部とを含み、
当該切削方法が、
前記切削工具と前記ワークとを接近させることにより、前記切削工具を前記ワークの前記複数の穴に、前記1つ以上の切刃と前記両端部の各々に設けられたガイド部とが前記複数の穴の内周面から離間した状態で、挿入させる挿入工程と、
前記切削工具と前記ワークとを前記切削工具の軸線と直交する方向に相対移動させることにより、前記切削工具の前記両端部に設けられたガイド部をそれぞれ前記ワークの前記複数の穴のうちの両端に位置する穴である基準穴の内周面に近づけ、前記切刃を前記加工穴の内周面に近づけるシフト工程と、
前記切削工具が、前記ガイド部と前記基準穴とにより位置決めされた状態で、前記切削工具の回転と、前記切削工具と前記ワークとの相対移動とにより、前記ワークの加工穴に切削加工を施す切削工程と
を含み、
前記本体が、前記軸線に直交する方向の横断面形状が概して扇形状を成す扇状部を含み、
前記切削工程において、前記切削工具を回転させることにより、前記扇状部に作用する遠心力により前記ガイド部を前記基準穴の内周面に押し付けるとともに、前記切刃を前記加工穴に押し付ける切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の穴を有するワークについて切削加工を行う切削工具、その切削方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の穴を有するワークについて切削加工を行う切削工具、その切削方法が記載されている。
特許文献1に記載の切削工具は中ぐり棒であり、ワークの複数の穴のうちの両端に位置する穴であるサポート穴を除く、中間に位置する穴である加工穴の切削加工を行うものである。中ぐり棒は、長手方向に伸びたものであり、中間部に設けられた1つ以上の切刃と、基端部に設けられた支持装置とを有する。なお、特許文献1の段落[0017]には、中ぐり棒1の基体3の横断面が実質的に円形である旨記載されている。
また、特許文献1に記載の切削方法において、中ぐり棒がワークの複数の穴に挿入された後、先端部に治具の一例であるカウンタツールが連結装置によって連結される。中ぐり棒の先端部がカウンタツールを介してワークのサポート穴の一方に保持され、基端部が支持装置を介してサポート穴の他方に保持される。その状態で、中ぐり棒が回転させられ、軸線方向に相対移動させられることにより、ワークの加工穴について切削加工が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4750253号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、治具等を用いることなく、複数の穴を有するワークについての切削加工を行い得る切削工具、その切削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
切削加工の対象となるワークは、予め形成された複数の穴を有するものであり、これら複数の穴のうちの両端に位置する穴が基準穴であり、複数の穴から両端に位置する基準穴を除く中間に位置する穴のうちの1つ以上が切削加工の対象の加工穴である。
本発明に係る切削工具は、長手方向に伸びたものであり、中間部に設けられた1つ以上の切刃と、両端部にそれぞれ設けられたガイド部とを有する。
本発明に係る切削方法において、切削工具とワークとの軸線方向の相対移動により、切削工具が、ワークの複数の穴に挿入され、軸線と直交する方向に移動させられる。それにより、両端部にそれぞれ設けられたガイド部の各々が基準穴の内周面に近づけられ、切刃が加工穴の内周面に近づけられる。次に、切削工具が回転させられつつ、ワークに対して軸線方向に相対移動させられる。それにより、ワークの加工穴について切削加工が行われる。切削工具の回転により、遠心力が作用し、ガイド部が基準穴の内周面に押し付けられる。ガイド部が基準穴の内周面に接触した状態で、切削加工が行われるのであり、それにより、加工穴を精度よく切削加工することができる。
このように、本発明に係る切削工具は、両端部にそれぞれ設けられたガイド部を有するため、本発明に係る切削方法において、特許文献1に記載の切削方法においては必要であったカウンタツール等の治具等が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一実施形態に係る切削工具が用いられる作業装置の全体を概念的に示す図である。本作業装置において、本発明の一実施形態に係る切削方法が実施される。
図2】上記切削工具の斜視図である。
図3】上記切削工具の別の斜視図である。
図4】上記切削工具の側面図(一部断面図)である。
図5】上記切削工具のAA断面図である。
図6】上記切削工具のBB断面図である。
図7】上記切削工具のCC断面図である。
図8】上記切削工具のDD断面図である。
図9】上記切削工具のEE断面図である。
図10】上記作業装置の作動図である。
図11】上記切削工具を用いて切削加工が行われる場合を概念的に示す作動図である。
図12】上記切削工具を用いて切削加工が行われる場合の作動図(BB断面図)である。
図13】(a),(b)上記切削工具を保持するホルダの作動を示す図である。(c)ワークの評価方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態に係る切削工具を図面に基づいて詳細に説明する。本切削工具は、例えば、ワークWとしてのシリンダブロックのクランク穴の加工に用いることができるものであり、マシニングセンタ、NC工作機械、工作機械等の作業装置に用いることができる。
【実施例
【0008】
切削工具10が用いられる作業装置の一例を図1に示す。作業装置は、装置ベース12、ワーク保持台としてのターンテーブル14、主軸16を保持するコラム18、コンピュータを主体とする制御装置20等を含む。ターンテーブル14には、ワークWが載せられて保持される。本作業装置において、ターンテーブル14が装置ベース12に対して回転可能かつ揺動可能に設けられ、コラム18が装置ベース12に水平方向に移動可能に設けられ、主軸16がコラム18に上下方向に移動可能に保持される。
なお、作業装置の構造は問わない。例えば、ターンテーブル14は装置ベース12に対して水平方向に移動可能かつ上下方向に移動可能に設けることができる。また、主軸16は、概して水平方向に伸びたものとしても、垂直方向に伸びたものとしてもよい。
【0009】
本作業装置において、主軸16には、図示しないツールマガジンに格納された複数のツールのうちの1つ(例えば、切削工具10)が選択的に取り付けられて、作動させられる。それにより、切削加工等の種々の作業が行われる。制御装置20は、コラム18を駆動する駆動装置、主軸16を駆動する駆動装置、ターンテーブル14を駆動する駆動装置等を予め定められた作業プログラムに従って制御する。ワークWに対する作業は、主軸16の回転と、ターンテーブル14と主軸14との相対移動とにより行われる。
【0010】
ワークWは、予め一列に並んで形成された複数の穴(本実施例においては5つの穴)J(J1,J2,J3,J4,J5)を有する。複数の穴Jのうちの両端に位置する穴J1,J5が基準穴であり、中間に位置する穴J2,J3,J4が切削工具10による切削加工の対象の加工穴である。一般的に、切削工具10による切削加工前の加工穴J2,J3,J4の半径Raは、基準穴J1,J5の半径Rbより小さく(Rb>Ra)、加工穴J2,J3,J4の内周面の切削工具10による切削加工により、半径Rbに近づけられる。
【0011】
図2~4に示すように、切削工具10は、中ぐり棒としてのラインバーであり、長手方向に伸びた本体30と、本体30の中間部に設けられ、長手方向に互いに隔たって設けられた複数の切刃カートリッジ32と、本体30の両端部にそれぞれ設けられたガイド部34,36とを含む。ラインバー10は、本体30の基端部においてフローティングホルダ40に保持され、例えば、フローティングホルダ40を介して主軸16に保持される。
【0012】
本体30は、図2~4に示すように、ラインバー10の軸線Lr(長手方向に伸びた軸線をいう)に直交する断面である横断面形状が概して扇形状を成す扇状部30hと、横断面形状が概して円形を成し、フローティングホルダ40に保持される被保持部30vとを有する。扇状部30hは、図5~7,9に示すように、円弧状に伸びた外周面を含む広幅部42と、外形が山形を成し、その頂部を含む山形部44とを有する。図5に示すように、広幅部42の外周面は軸線Lr上に位置する中心Tとする半径Rbより小さい半径Rc(Rc<Rb)の円弧状を成し、その中心角φは180度より小さい。
なお、中心角φは、本体30の半径Rc,基準穴J1,J5の半径Rb等に基づいて設計される。例えば、本体30に設けられたガイド部34,36を基準穴J1,J5の内周面から離間させ得るように、設計することができるのであり、例えば、150度程度の大きさとすることができる。
【0013】
また、扇状部30hの重心Gは、中心Tより広幅部側の位置となり、中心Tと重心Gとの間の軸線Lrと直交する方向の距離はDgとなる。一方、扇状部30hは、図9に示すように、中心Tの半径Rcの円筒部材から、広幅部42に対向する部分である除去部54を除くことにより得られた形状であると考えることができる。
【0014】
例えば、中心Tから山形部側の端部までの距離Dmが同じであり、広幅部42の中心角φが同じ場合には、除去部54の体積が大きい場合は小さい場合より重心Gと中心Tとの間の距離Dgが大きくなる。除去部54の体積が同じであり、広幅部42の中心角φが同じである場合には、中心Tから山形部側の端部までの距離Dmが小さい場合は大きい場合より中心Tと重心Gとの間の距離Dgが大きくなる。また、扇状部30hの重量が同じである場合には、距離Dgが大きい場合は小さい場合よりアンバランス量が大きくなり、回転速度が同じである場合には、ラインバー10の回転時に扇状部30hに作用する遠心力が大きくなる。
【0015】
以上の事情を考慮して、扇状部30hの形状が設計されるのであり、例えば、距離Dmを半径Rcの70%以下とし、除去部54の体積を半径Rcの円筒部材の体積の30%以上とすることができる。この場合には、重心Gと中心Tとの間の距離Dgを半径Rcの15%以上とすることができる。それにより、アンバランス量を大きくすることが可能となり(例えば、0.059kgmm)、扇状部30hに大きな遠心力を付与することが可能となる。
【0016】
なお、扇状部30hの重心Gと中心Tとの間の距離Dgは、本体30の密度が均一であると想定して計算により求めた値である。しかし、実際には、本体30にはクーラント供給穴、軽量化のための空隙等が設けられたり、切刃カートリッジ32等が取り付けられたりするため、距離Dgは計算値とは異なる場合がある。
また、ラインバー10の扇状部30hは、円筒部材から除去部54を削って製造されるとは限らない。上述の記載は、扇状部30hの形状を表現する記載にすぎず、扇状部30hの製造方法を限定する記載ではない。
【0017】
なお、扇状部30hの中心Tに直交する線Hから山形部側の体積VAの広幅部側の体積VBに対する比率(VA/VB)は0.6以下(本実施例においては、0.5以下)となる。比率が小さい場合は大きい場合より、重心Gと中心Tとの間の距離Dgは大きくなる。
なお、扇形部30hには、クーラント供給穴や空隙が設けられることが多いため、体積比率と重量比率とは1対1に対応するとは限らない。
【0018】
切刃カートリッジ32は、図4等に示すように、本体30の中間部に、ラインバー10の軸線Lrが伸びる方向(以下、ラインバー10の軸線方向と称する場合がある)に複数個(本実施例においては、6個)設けられる。これら6個の切刃カートリッジ32のうちの3個は粗削り用のものであり、残りの3個は仕上げ用のものである。粗削り用のものと仕上げ用のものとは互いに隣接して、本実施例においては、粗削り用の切刃カートリッジ32が仕上げ用の切刃カートリッジ32の先端側に位置する。なお、ラインバー10に、粗削り用の切刃カートリッジと仕上げ用の切刃カートリッジとを設けることは不可欠ではない。
【0019】
切刃カートリッジ32は、図6に示すように、それぞれ、本体30の中間部の、扇状部30hの端面付近に設けられる。切刃カートリッジ32は、それぞれ、カートリッジ本体と、カートリッジ本体に設けられたチップ46とを有し、カートリッジ本体がボルト48によりラインバー10の本体30に取り付けられる。チップ46は切刃32cを備え、切刃32cが中心Tとするほぼ半径Rbの円周上に位置する。
【0020】
ガイド部34,36の一方は、本体30の先端側に設けられた図5に示す先端側ガイド部34であり、他方は基端側に設けられた図7に示す基端側ガイド部36である。これら先端側ガイド部34、基端側ガイド部36は、それぞれ、本体30の広幅部42の外周面に設けられた複数(本実施例においては、3つ)のガイドパッド50を含む。ガイドパッド50は、それぞれ、概してラインバー10の軸線方向に伸びたものであり、複数のボルトによって本体30の広幅部42の外周面に、周方向に間隔を隔てて取り付けられる。ガイドパッド50の長さは、それぞれ、基準穴J1,J5の長さと切削加工時のラインバー10とワークWとの軸線方向の相対移動量とに基づいて決まる。また、ガイドパッド50の各々の外周面は、中心Tとする概して半径Rbの円弧状に位置する。本実施例においては、3つのガイドパッド30の外周面によってガイド面が構成される。
【0021】
これら3つのガイドパッド50と切刃32cとは、図6に示すように、ラインバー10の正面視において、扇状部30hの中心Tの周りの中心角θの範囲内に設けられる。中心角θは180度より小さい。また、切削加工時に、切刃32cには、切削抵抗(主分力、背分力、送り分力)が作用するが、ガイドパッド50は本体30の切削抵抗(主分力、背分力)をほぼ受ける部分に設けられる。
【0022】
フローティングホルダ40は、本実施例においては、ラインバー10を、主軸16の回転を伝達し、かつ、フローティングホルダ40の軸線Lfと直交する方向に移動可能、かつ、軸線Lfに対して傾動可能に保持するものである。図4,8に示すように、フローティングホルダ40は、主軸16に一体的に回転可能に保持される第1部材40aと、ラインバー10の被保持部30vに一体的に回転可能に取り付けられる第2部材40bと、第1部材40aと第2部材40bとの間に設けられたオルダム継手60とを含む。第1部材40aは軸線Lfを有するものであり、主軸16に、軸線Lfが主軸16の回転軸線と同一直線上に伸びた状態で保持される。第2軸線40bは、ラインバー10に、ラインバー10の軸線Lrと同一軸線上に位置する状態で取り付けられる。
【0023】
オルダム継手60は、第1部材40aと第2部材40bとを、第1部材40aの回転を第2部材40bに伝達し、かつ、第2部材40bを第1部材40aに対して、軸線Lfと直交する方向に相対移動可能に連結するものである。オルダム継手60の図示しない中間体は、キーとキー溝とにより、第1部材40a(図8参照)に軸線Lfと直交する第1方向に相対移動可能に保持され、第2部材40bは、キーとキー溝とにより、中間体に軸線Lfおよび第1方向と直交する第2方向に相対移動可能に保持される。
【0024】
また、図4に示すように、第2部材40bは半径方向に突出したフランジ部62を有し、フランジ部62の軸線Lfの方向の両側には、一対のボール64,66を備えた軸受が設けられる。フランジ部62の外周面と第1部材40aとの間には半径方向の隙間が設けられる。この半径方向の隙間により、第2部材40bの第1部材40aに対する軸線Lfに直交する方向の相対移動が許容される。また、ボール64,66を備えた軸受の端面と第1部材40aとの間、または、フランジ部62と軸受けとの間に軸線Lfの方向の隙間が設けられる。この軸線Lfの方向の隙間により、第2部材40bの第1部材40aの軸線Lfに対する傾動が許容される。
このように、本実施例において、ラインバー10は、図13(a)、(b)に示すように、フローティングホルダ40により、主軸16に、主軸16の軸線(第1部材40aの軸線Lf)に直交する方向に移動可能、かつ、傾動可能に保持される。
【0025】
以上のように構成された作業装置において、ワークWについて切削加工が行われる場合について説明する。
ワークWの加工穴J2~J4についてのラインバー10による切削加工の前に、基準穴J1,J5についての切削加工が行われる。
ターンテーブル14にワークWが保持され、主軸16にラインバー10とは異なる切削工具80がホルダを介して取り付けられる。図10(a)に示すように、切削工具80による基準穴J5についての切削加工が行われ、次に、図10(b)に示すように、ターンテーブル14が180度回転させられ、基準穴J1についての切削加工が同様に行われる。基準穴J1,J5の半径は、ほぼ半径Rbとされる。
【0026】
次に、加工穴J2~J4についてのラインバー10による切削加工が行われる。
主軸16には、ラインバー10がフローティングホルダ40を介して取り付けられる。
図11(a)、図12(a)に示すように、ラインバー10は、ラインバー10の軸線LrがワークWの軸線Lw(基準穴J1,J5の中心Aを通る線をいう)から直線αの方向に距離Dr隔たった位置、換言すると、切刃32cおよびガイド面がワークWの穴J1~J5の内周面から離間して、切刃32およびガイド面と穴J1~J5の内周面との間にクリアランスが存在する位置にある。直線αは、扇状部30hの、3つのガイドパッド50および切刃32cが位置する領域の中心角θの1/2を通る線である。本実施例において、ラインバー10の正面視において、ガイドパッド50と切刃カートリッジ32とが、中心角が180度より小さい領域内(本実施例においては、約150度の領域内)に設けられているため、ラインバー10の軸線Lrを、ワークWの軸線Lwから、直線αに沿って離間させることにより、ガイドパッド50の外周面および切刃32cを良好に穴J1~J5の内周面から離間させることができる。
【0027】
次に、図11(b)に示すように、ラインバー10がワークWに対して軸線方向に相対移動させられることにより、ワークWの複数の穴Jに挿入される。ラインバー10は、先端側ガイド部34が基準穴J1に達するまで挿入される。この工程を挿入工程と称する。
【0028】
次に、図11(c)、図12(b)が示すように、ラインバー10を矢印pが示す方向(軸線Lrに直交する方向)にDr移動させて、ラインバー10の軸線LrをワークWの軸線Lwに一致させる。この状態で、理論的には、先端側ガイド部34、基端側ガイド部36の各々において、ガイドパッド50の外周面が穴J1,J5の内周面に接触し、切刃32cが加工穴J2,J3,J4の内周面に接触する。この工程をシフト工程と称する。
【0029】
図11(d)に示すように、主軸16が回転させられ、ターンテーブル14とコラム18とが相対移動させられる。ラインバー10が軸線(回転軸線)Lrの周りに回転させられつつ相対的に前進させられる。遠心力によりガイド部34,36が基準穴J1,J5に押し付けられた状態、すなわち、ガイドが効いた状態で加工穴J2,J3,J4について切削加工が行われる。この工程を切削工程と称する。
【0030】
加工穴J2~J4の切削加工後、図11(e)、図12(c)に示すように、ラインバー10が矢印qが示す方向(軸線Lrと直交する方向)に距離Dr移動させられ、ガイドパッド50および切刃32cがワークWの内周面から離間させられる。
次に、図11(f)に示すように、ラインバー10が後退させられ、ワークWから引き抜かれる。
【0031】
このように、本実施例に係る切削工具は、先端部と基端部との両方に設けられたガイド部34,36を含むため、本実施例に係る切削方法において、特許文献1に記載の切削方法においては必要であったカウンタツール等の治具が不要となる。また、ワークWの近傍にサポートを設置し、サポートにおいてラインバーの先端部が保持された状態で切削加工が行われる切削方法が知られているが、本実施例に係る切削方法においては、サポート等の付帯設備も不要となるのであり、換言すると、治具や付帯設備等を用いることなく、作業装置においてワークWについての切削加工を行うことができるのである。
【0032】
また、本実施例に係るラインバー10においては、粗削り用の切刃32cと仕上げ用の切刃32cとが、互いに隣接して、粗削り用の切刃32cが仕上げ用の切刃32cの先端側に位置して設けられる。そのため、ラインバー10の1回の軸線方向の前進により、粗削りと、仕上げとの両方を行うことができる。
なお、粗削り用の切刃32cが仕上げ用の切刃32cの基端側に位置して設けられた場合には、ラインバー10の軸線方向の後退により、粗削りと、仕上げとの両方を行うことができる。本実施例においては、先端側ガイド部34も基端側ガイド部36も本体30の中心角180度以下の部分に設けられるため、ラインバー10を軸線と直交する方向に移動させることにより良好に内周面に接触した位置と内周面から離間した位置とに移動させることが可能となり、前進時にも後退時にも切削加工を行うことができるのである。
【0033】
一方、切削加工後のワークWについては、図13(c)に示すように、ワークWの軸線Lw(基準穴J1,J5の中心Aを通る線)に対する加工穴J2~J4の各々の中心線のずれΔに基づいて評価される。Δが小さい場合は大きい場合よりワークWの評価が高くなる。
それに対して、本実施例においては、遠心力によりラインバー10のガイド部34,36がワークWの基準穴J1,J5に接触した状態で、加工穴J2~J4についての切削加工が行われる。換言すると、切削加工が、穴J1,J5を切削加工の基準穴J1,J5として行われるのであるが、基準穴J1,J5は、ワークWを評価する際の基準穴でもある。このように、評価時の基準穴J1,J5を切削加工時の基準穴J1,J5として切削加工が行われるため、切削加工後のワークについて高い評価を得ることができる。
【0034】
特許文献1に記載の中ぐり棒の基体3の横断面形状は実質的に円形を成すものであるのに対して、本実施例に係るラインバー10の扇状部30hの横断面形状は概して扇形状を成す。そのため、ラインバー10の重心Gの回転軸線Lr(=Lw)からの隔たりを大きくすることができ、ラインバー10に作用する遠心力を、横断面形状が実質的に円形を成すものに比較して大きくすることができる。
【0035】
本実施例において、本体30の切刃32cに加えられる切削抵抗を受ける部分にガイドパッド50が設けられる。また、本体30が扇形状を成すため、本体30にはガイド面を基準穴J1,J5に押し付けるとともに、切刃32cを加工穴J2,J3,J4に押し付ける向きの大きな遠心力が作用する。そのため、ガイドパット50を基準穴J1,J5の内周面に良好に押付け、切刃32cの浮き上がりを良好に防止することができる。その結果、加工穴J2~J4について精度よく切削加工が行われるようにすることができる。
【0036】
また、扇状部30hの設計、主軸16の回転速度等によっては、遠心力を、切削抵抗より大きくすることができ、その場合には、切刃32cの浮き上がりをより一層良好に防止することができる。
さらに、遠心力を、切削抵抗とラインバー10の自重とを加えた値より大きくすることもできる。例えば、主軸16の軸線が概して水平方向に伸びた場合には、回転位相によって、ラインバー10の自重によってガイド部34,36や切刃32cを穴J1~J5に押し付ける押付力が小さくなる場合がある。それに対して、ラインバー10に、切刃32cに作用する切削抵抗とラインバー10に作用する重力とを合わせた値より大きい遠心力が作用する場合には、ラインバー10の回転位相の変化に起因する切刃32cの浮き上がりを良好に抑制することが可能となり、より一層、加工穴J1~J4の加工精度を向上させることができる。
【0037】
例えば、ライバー10において、中心Tと山形部側の端部との間の距離Dmを半径Rcの65%以下とし、除去部54を円筒部材の30%以上とした場合に、重心Gと中心Tとの間の距離を半径Rcの20%以上とすることができ、回転速度を52.3rad/s以上とすることにより、遠心力を自重の2倍以上の大きさとすることができ、切削抵抗と自重とを合わせた値より大きくすることができる。
【0038】
また、主軸16とワークWの軸線Lwとが一直線上に位置しない場合がある。例えば、図10(a),(b)に示すように、基準穴J1,J5を加工する際に、ターンテーブル14の精度等に起因して、基準穴J1と切削工具80との相対位置と、基準穴J5と切削工具80との相対位置とがずれ、基準穴J1とJ5とがずれる場合があるのである。
【0039】
それに対して、本実施例においては、ラインバー10が、フローティングホルダ40を介して主軸16に取り付けられ、フローティングホルダ40に、軸線Lf(主軸16の軸線と同一直線上にある)と直交する方向に相対移動可能、かつ、軸線Lfに対して傾動可能に保持される。そのため、ワークWの軸線Lwが主軸16の軸線(フローティングホルダ40の軸線Lf)に対して水平方向や垂直方向にずれていても、ワークWの軸線Lwが軸線Lfに対して傾いていても、図13(a),(b)に示すように、ラインバー10を、ワークWの軸線Lw、すなわち、基準穴J1,J5の中心を通る軸線Lwに沿って複数の穴J1~J5に挿入させることができる。換言すると、ラインバー10は、一直線状に伸びたものであるが、ラインバー10を複数の穴J1~J5に挿入させた場合のラインバー10の湾曲を小さくすることができる。そのため、ラインバー10が、ガイド部34,36が基準穴J1,J5に接触した状態で軸線Lw(=Lr)の周りに回転させられつつ前進させられることにより、加工穴J2~J4の各々の中心線の軸線Lwからの隔たりΔを小さくすることができ、高い評価のワークWを得ることができる。
【0040】
一方、ラインバーの先端部にのみガイド部が設けられる場合がある。その場合には、先端部に設けられたガイド部と1つの基準穴とによりガイドされた状態で、加工穴について切削加工が行われる。
それに対して、本実施例に係るラインバー10は、先端部と基端部との両方に設けられたガイド部34,36を含み、ガイド部34,36の各々がワークWの基準穴J1,J5に接した状態で加工穴J2~J4についての切削加工が行われる。そのため、上述の場合に比較して、加工穴J2~J4について、高い精度で切削加工を行うことができる。
【0041】
なお、作業装置において、主軸16を、概して垂直方向に伸びたものとした場合には、ラインバー10の自重に起因するガイド部34,36の基準穴J1,J5への押付力の減少を良好に抑制することができ、高い精度で切削加工を行うことができる。
【0042】
また、ラインバー10について、切刃カートリッジ32の個数、ガイドパッド50の個数等は、上記実施例に限定されない。また、ワークWの形状、種類は問わない等、本発明は、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
10:ラインバー 14:ターンテーブル 16:主軸 30:本体 30h:扇状部 32:切刃カートリッジ 32c:切刃 36:基端側ガイド部 34:先端側ガイド部 40:フローティングホルダ 42:広幅部 50:ガイドパッド 60:オルダム継手 62:フランジ部
【特許請求可能な発明】
【0044】
(1)予め一列に並んで形成された複数の穴を有するワークについて切削加工を行う切削工具であって、
前記ワークが、前記複数の穴のうち両端に位置する穴である基準穴と、前記複数の穴から前記基準穴を除く中間に位置する穴のうちの1つ以上の穴である加工穴とを含み、
当該切削工具が、
長手方向に伸びた本体と、
その本体の中間部に設けられた1つ以上の切刃と、
前記本体の両端部にそれぞれ設けられ、それぞれ、前記基準穴の各々の内周面にそれぞれ接触可能なガイド部と
を含む切削工具。
切削工具は、両端部にそれぞれ設けられたガイド部の各々と基準穴とにより位置決めされた状態で、加工穴に切削加工を行う。
【0045】
(2)前記本体が、横断面形状が概して扇形状を成す扇状部を含み、前記扇状部の中心角が180度より小さい(1)項に記載の切削工具。
中心角は、例えば、90度以上、100度以上、110度以上、120度以上とすることができ、170度以下、160度以下、150度以下、140度以下等とすることができる。
本体の横断面の円弧状に湾曲した外周部は、1つの円の円弧から構成されるとは限らず、複数の円の円弧を含むものであってもよい。
【0046】
(3)前記扇状部の重心が、当該切削工具の回転軸線より前記扇状部の概して円弧状に湾曲した外周面に近い側に位置し、
前記重心と前記回転軸線との間の距離が、前記回転軸線から前記概して円弧状に湾曲した外周面までの距離の15%以上である(2)項に記載の切削工具。
回転軸線から外周面までの距離に対する回転軸線と重心との間の距離の比率が大きい場合は小さい場合より、相対的に、アンバランス量が大きくなり、扇状部に作用する遠心力を大きくすることができる。また、比率は20%以上、25%以上とすることが望ましい。
【0047】
(4)前記扇状部が、当該切削工具の回転軸線を中心とする円筒部材から、前記円筒部材の概して円弧状に湾曲した外周面に対向する部分のうちの前記円筒部材の体積の25%以上の部分を除いて得られた形状を成す(2)項または(3)項に記載の切削工具。
円筒部材から除く部分の体積は、円筒部材の体積の60%以下、50%以下、45%以下とすることが望ましく、30%以上、35%以上、40%以上等とすることが望ましい。
【0048】
(5)前記扇状部が、当該切削工具の回転軸線から概して円弧状に湾曲した外周面とは反対側の端部までの距離の、前記回転軸線から前記概して円弧状に湾曲した外周面までの距離に対する比率が0.7以下である(2)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の切削工具。
比率が小さい場合は大きい場合より、重心と回転軸線との間の距離Dgが大きくなる傾向にある。比率は0.65以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下等とすることができる。比率は0であってもよい。
【0049】
(6)前記扇状部の断面の、当該切削工具の回転軸線に直交する線より概して円弧状に湾曲した外周縁が位置する側の部分の面積に対する、前記回転軸線に直交する線より前記概して円弧状に湾曲した外周縁が位置する側とは反対側の部分の面積の比率が0.6以下である(2)項ないし(5)項のいずれかに記載の切削工具。
本体の断面は扇形状を成すため、回転軸線に直交する線H(図9参照)より概して円弧状を成す側の部分Aの断面積SAは、線Hより部分Aとは反対側の部分Bの断面積SBに対して大きい。この比率(SB/SA)は0より大きく、0.55以下、0.5以下、0.45以下、0.4以下等とすることが望ましい。
なお、切削工具には、クーラント供給穴、軽量化のための空洞部等が設けられるため、これら断面積の比率と重量比率とは1対1に対応するとは限らないが、相対的には、断面積の比率が大きい場合は重量比率も大きくなると考えることができる。
【0050】
以上(3)項ないし(6)項に記載の特徴は、本体の横断面形状が概して扇形状を成す場合に限らない。本体の横断面形状が概して円形の一部が切欠かれた形状を成す場合にも適用することができる。
【0051】
(7)前記ガイド部が、前記本体の両端部の各々の外周面に、それぞれ、設けられた複数のガイドパッドを含む(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の切削工具。
ガイドパッドは、本体の扇状部の外周面に設けることもできる。
ガイドパッドは、長手方向に伸びたものであり、切削工具が軸線方向に移動させられても、基準穴に接触可能な長さを有するものである。
また、ガイドパッドは、超硬材料で製造されたものとすることができる。
【0052】
(8)前記複数のガイドパッドと前記切刃とが、当該切削工具の正面視において、前記扇状部の前記中心角が180度より小さい部分に設けられた(7)項に記載の切削工具。
切削工具を軸線と直交する方向に移動させることにより、ガイドパッドと切刃とが基準穴、加工穴の内周面に接触する位置と内周面から離間する位置とに移動させることができる。
【0053】
(9)当該切削工具が、主軸にホルダを介して取り付けられるとともに、前記ホルダに、前記ホルダの軸線と直交する方向に相対移動可能、かつ、前記ホルダの軸線に対して傾動可能に保持された(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の切削工具。
【0054】
(10)切削工具をホルダを介して保持する主軸と、
一列に並んで形成された複数の穴を有するワークを保持するワーク保持台と
を含む作業装置において前記主軸の回転と、前記主軸と前記ワーク保持台との相対移動とにより、前記切削工具により、前記ワークの複数の穴のうちの中間に位置する穴のうちの1つ以上の加工穴に切削加工を施す切削方法であって、
前記切削工具が、長手方向に伸びた本体と、その本体の中間部に設けられた1つ以上の切刃と、前記本体の両端部にそれぞれ設けられたガイド部とを含み、
当該切削方法が、
前記切削工具と前記ワークとを接近させることにより、前記切削工具を前記ワークの前記複数の穴に、前記1つ以上の切刃と前記両端部の各々に設けられたガイド部とが前記複数の穴の内周面から離間した状態で、挿入させる挿入工程と、
前記切削工具と前記ワークとを前記切削工具の軸線と直交する方向に相対移動させることにより、前記切削工具の前記両端部に設けられたガイド部をそれぞれ前記ワークの前記複数の穴のうちの両端に位置する穴である基準穴の内周面に近づけ、前記切刃を前記加工穴の内周面に近づけるシフト工程と、
前記切削工具が、前記ガイド部と前記基準穴とによりガイドされた状態で、前記切削工具の回転と、前記切削工具と前記ワークとの相対移動とにより、前記ワークの加工穴に切削加工を施す切削工程と
を含む切削方法。
主軸は、概して水平方向に伸びたものであっても、概して垂直方向に伸びたものであってもよい。本項に記載の切削方法の実施に用いられる切削工具には、(1)項ないし(9)項に記載の切削工具を適用することができる。
【0055】
(11)前記切削工程において、前記切削工具を回転させることにより、前記本体に作用する遠心力により前記ガイド部を前記基準穴の内周面に押し付けるとともに、前記切刃を前記加工穴に押し付ける(10)項に記載の切削方法。
【0056】
(12)前記切削工程において、前記切刃に作用する切削抵抗より大きい前記遠心力を前記本体に作用させる(10)項または(11)項に記載の切削方法。
【0057】
(13)前記切削工程において、前記切削工具に作用する重力より大きい前記遠心力を前記本体に作用させる(10)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の切削方法。
【0058】
(14)前記本体が、前記軸線に直交する方向の横断面形状が概して扇形状を成す扇状部を含み、
前記切削工程において、前記扇状部に前記遠心力を作用させる(10)項ないし(13)項のいずれか1つに記載の切削方法。
なお、前記本体の横断面形状は概して扇形状に限らず、例えば、円形の一部が切り欠かれた形状を成すものとすることができる。
【0059】
(15)当該切削方法が、前記主軸が概して垂直方向に伸びた状態で、前記ワークについての切削加工を行う(10)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の切削方法。
図1
図2
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図7
図8
図9
図10
図11
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図13