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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-07
(45)【発行日】2024-05-15
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240508BHJP
【FI】
G03G15/20 535
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020108333
(22)【出願日】2020-06-24
(65)【公開番号】P2022006228
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼妻 武史
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-036812(JP,A)
【文献】特開2018-097355(JP,A)
【文献】特開平11-227930(JP,A)
【文献】特開平05-238584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材に画像を定着する定着装置であって、
内側面に潤滑剤が塗布された回転可能なベルトと、
前記ベルトとの間で記録材を挟持搬送するためのニップ部を形成する回転可能な加圧部材と、
前記ベルトの回転方向と交差する幅方向において前記ベルトの位置を検知する検知部と、
前記ベルトを張架し、前記検知部の検知結果に応じて、前記ベルトを前記幅方向に移動させるように揺動するステアリングローラと、
前記ベルトの内面と接触して、前記ベルトの内面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部と、を備え、
前記検知部は、前記幅方向における前記ベルトの端部と接触する接触部と、前記接触部に接続して設けられ、前記接触部から潤滑剤を案内する案内部と、を備え、
前記案内部は、前記接触部よりも鉛直方向下方、前記ベルトの内側、かつ、前記幅方向において前記ベルトと重なる領域に設けられ、
前記案内部は、前記ベルトの径方向内側に設けられた部材と接触しない、
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記接触部を有する回動可能なアーム部を有し、
前記案内部は、第1傾斜部と、第2傾斜部と、を有し、
前記第1傾斜部は、前記接触部に連続して前記鉛直方向下方に傾斜し、前記接触部から前記第2傾斜部に潤滑油を案内し、
前記第2傾斜部は、前記第1傾斜部の下端部に連続して前記ベルトの内周側に向けて前記鉛直方向下方に傾斜し、前記第1傾斜部から前記領域に潤滑油を案内する、
ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記アーム部を前記ベルトの前記端部に向けて付勢する付勢手段を有する、
ことを特徴とする請求項2記載の定着装置。
【請求項4】
前記領域は、前記定着装置の動作時に、前記幅方向に関して前記端部よりも2mm以上前記ベルトの内側にある、
ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項5】
前記ベルトを張架し、前記ベルトを介して前記加圧部材を押圧するパッド部材を備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の定着装置。
【請求項6】
前記検知部は、前記ベルトの回転方向において前記ニップ部よりも下流側で、前記潤滑剤塗布部よりも上流側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の定着装置。
【請求項7】
前記案内部は、先端が先細りする断面形状を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の定着装置。
【請求項8】
前記領域は、前記検知部の鉛直方向における最下点を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の定着装置。
【請求項9】
前記ベルトのステアリング動作によって揺動する前記案内部は、前記潤滑剤塗布部と接触しない位置に設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式等の画像形成装置に適用される定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を用いた画像形成装置では、定着装置として定着ローラ及び無端状の加圧ベルトを用いた定着装置が知られている(特許文献1参照)。この定着装置では、定着ローラを加熱して回転させ、加圧ベルトを定着ローラに接触させて従動回転させる。更に、定着ローラと加圧ベルトの接触部であるニップ部で未定着トナー像を担持した記録材を挟持搬送しつつ、トナー像を加熱及び加圧して記録材に定着させる。また、定着ローラと加圧ベルトをニップ部で圧接させるために、ニップ部において加圧ベルトを定着ローラに向けて押圧するニップ形成部材が、加圧ベルトの内側面に対して摺動自在に設けられている。加圧ベルトの内側面とニップ形成部材との摺動性を向上させるために、加圧ベルトの内側面には潤滑剤が塗布されている。また、適量の潤滑剤が加圧ベルトの内側面に存在する状態をより長く持続させるために、加圧ベルトの内側面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段が設けられている。
【0003】
一方、定着ベルト及び加圧ベルトを備え、加圧ベルトを加熱された定着ベルトに押圧してニップ部を形成する定着装置が知られている(特許文献2参照)。この定着装置では、定着ベルトの回転軸線方向における定着ベルトの位置を検知するための検知部を設けている。この検知部の検知結果に応じて、定着ベルトが幅方向における所定の領域内において往復移動するように制御している。検知部は、揺動可能なアーム状の移動部材と、移動部材の変位を検知する検知センサとを備えている。そして、移動部材を定着ベルトの端面に対して、定着ベルトの幅方向への移動に影響しない程度の圧力で常に接触させ、この移動部材の変位を検知センサで検知するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-79036号公報
【文献】特開2015-59964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の定着装置において、特許文献2に記載の検知部を適用した場合、以下のような課題を発生する可能性がある。即ち、ベルトの内側面に潤滑剤が塗布されていると、ベルトの走行時間が累積するにつれて、ベルトの内側面の潤滑剤がベルトの幅方向の端部まで達し、ベルトの端面に接触しているアーム部材に付着する可能性がある。潤滑剤がアーム部材に付着すると、その潤滑剤はアーム部材を伝わってベルトの内側面から漏出してしまう虞がある。
【0006】
潤滑剤がベルトの内側面から漏出すると、その潤滑剤はアーム部材を伝って周囲に拡散し、アーム部材に隣接する部材が潤滑剤で汚染されてしまう虞や、更にその部材からニップ部を搬送される記録材に潤滑剤が垂れ落ち、画像を汚染してしまう虞がある。また、潤滑剤がベルトの内側面から漏出すると、長期間の使用によってベルトの内側面に存在する潤滑剤が足りなくなり、ベルトの内側面の摺動性が悪化したり、ベルトの寿命を縮めてしまう虞がある。
【0007】
本発明は、ベルトの内側面の潤滑剤が漏出してしまうことを抑制可能な定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、記録材に画像を定着する定着装置であって、内側面に潤滑剤が塗布された回転可能なベルトと、前記ベルトとの間で記録材を挟持搬送するためのニップ部を形成する回転可能な加圧部材と、前記ベルトの回転方向と交差する幅方向において前記ベルトの位置を検知する検知部と、前記ベルトを張架し、前記検知部の検知結果に応じて、前記ベルトを前記幅方向に移動させるように揺動するステアリングローラと、前ベルトの内面と接触して、前記ベルトの内面潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部と、を備え、前記検知部は、前記幅方向における前記ベルトの端部と接触する接触部と、前記接触部に接続して設けられ、前記接触部から潤滑剤を案内する案内部と、を備え、前記案内部は、前記接触部よりも鉛直方向下方、前記ベルトの内側、かつ、前記幅方向において前記ベルトと重なる領域に設けられ、前記案内部は、前記ベルトの径方向内側に設けられた部材と接触しない、ことを特徴とする定着装置である
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ベルトの内側面の潤滑剤が漏出してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
図2】実施形態に係る画像形成装置の制御ブロック図である。
図3】実施形態に係る定着装置を示す断面図である。
図4】実施形態に係る定着装置のステアリングローラを示す斜視図である。
図5】実施形態に係る定着装置の検知部を示す斜視図である。
図6】実施形態に係る定着装置の検知部のアームを示す正面図である。
図7】実施形態に係る定着装置の検知部のアームを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図1図7を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、画像形成装置1の一例としてタンデム型のフルカラープリンタについて説明している。但し、本発明はタンデム型の画像形成装置1に限られず、他の方式の画像形成装置であってもよく、また、フルカラーであることにも限られず、モノクロやモノカラーであってもよい。
【0012】
[画像形成装置]
図1に示すように、画像形成装置1は、装置本体内に4色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像形成部PY、PM、PC、PKを有する電子写真方式のフルカラープリンタである。本実施形態では、画像形成部PY、PM、PC、PKを後述する中間転写ベルト7の回転方向に沿って配置した中間転写タンデム方式としている。画像形成装置1は、装置本体に接続された不図示の原稿読み取り装置又は装置本体に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材Sに形成する。記録材Sとしては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。また、画像形成装置1は、画像形成プロセスなどの各種制御を行うための制御部20を備えている。
【0013】
画像形成プロセスについて説明する。まず、画像形成部PY、PM、PC、PKについて説明する。本実施形態では、画像形成部PY、PM、PC、PKは、トナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外、ほぼ同一に構成される。そこで、以下では代表してイエローの画像形成部PYを例に説明し、その他の画像形成部PM、PC、PKについては説明を省略する。
【0014】
画像形成部PYは、主に感光ドラム2、帯電装置3、露光装置4、現像装置5等から構成される。回転駆動される像担持体の一例としての感光ドラム2の表面は、帯電装置3により予め表面を一様に帯電され、その後、画像情報の信号に基づいて駆動される露光装置4によって静電潜像が形成される。即ち、感光ドラム2には、静電潜像が形成される。感光ドラム2上に形成された静電潜像は、現像装置5によってトナーにより現像され、トナー像として可視像化される。また、画像形成で消費された現像剤中のトナーは、不図示のトナーカートリッジからキャリアと共に補給される。
【0015】
その後、感光ドラム2と中間転写ベルト7を挟んで対向配置される一次転写ローラ6により所定の加圧力及び一次転写バイアスが与えられ、感光ドラム2上に形成されたトナー像が中間転写ベルト7上に一次転写される。一次転写後の感光ドラム2上に僅かに残る転写残トナーは、クリーニング装置8により除去され、再び次の画像形成プロセスに備える。
【0016】
中間転写ベルト7は、テンションローラ10、二次転写内ローラ11、駆動ローラ12によって張架されている。中間転写ベルト7は、駆動ローラ12によって回転方向R1へと移動するように駆動される。上述の画像形成部PY、PM、PC、PKにより処理される各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト7上に一次転写された移動方向上流の色のトナー像上に順次重ね合わせるタイミングで行われる。その結果、最終的にはフルカラーのトナー像が中間転写ベルト7上に形成され、二次転写部15へと搬送される。二次転写部15は、中間転写ベルト7の二次転写内ローラ11に張架された部分と二次転写外ローラ13とにより形成される転写ニップ部である。なお、二次転写部15を通過した後の転写残トナーは、転写クリーナ装置14によって中間転写ベルト7から除去される。
【0017】
二次転写部15まで送られて来るトナー像の形成プロセスに対して、同様のタイミングで二次転写部15までの記録材Sの搬送プロセスが実行される。搬送プロセスでは、記録材Sは、不図示のシートカセット等から給送され、画像形成タイミングに合わせて二次転写部15へと送られる。二次転写部15では、二次転写内ローラ11に二次転写電圧が印加される。
【0018】
以上、画像形成プロセス及び搬送プロセスにより、二次転写部15において中間転写ベルト7から記録材Sにトナー像が二次転写される。その後、記録材Sは定着装置30へと搬送され、定着装置30により加熱及び加圧されることにより、トナー像が記録材S上に溶融固着される。即ち、定着装置30は、画像形成部で形成された未定着のトナー像を記録材Sに定着する。こうしてトナー像が定着された記録材Sは、排出ローラにより不図示の排出トレイに排出される。
【0019】
[制御部]
画像形成装置1は、上記した画像形成動作などの各種制御を行うための制御部20を備えている。画像形成装置1の各部の動作は、画像形成装置1に設けられた制御部20によって制御される。一連の画像形成動作は、装置本体の上面の操作部、あるいは、ネットワークを経由した各入力信号に従って制御部20が制御している。
【0020】
図2に示すように、制御部20は、演算制御手段としてのCPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23等を有する。CPU21は、ROM22に格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら画像形成装置1の各部の制御を行う。RAM23には、作業用データや入力データが格納されており、CPU21は、前述のプログラム等に基づいてRAM23に収納されたデータを参照して制御を行う。制御部20には、後述する定着装置30の検知部54の検知センサ80や、定着ベルト41を駆動するための駆動モータM1や、後述する加熱ヒータ48やサーミスタ49などが接続されており、定着装置30を制御可能である。
【0021】
[定着装置]
次に、定着装置30について、図3を用いて詳細に説明する。図3に示すように、定着装置30は、ベルト加熱方式の加熱装置であり、画像形成装置1(図1参照)の装置本体に対して着脱可能なカートリッジ状に形成されている。定着装置30は、筐体31と、加熱ユニット40と、回転体としての加圧ローラ32と、分離ユニット50とを有している。
【0022】
加熱ユニット40は、無端状で回転方向R2に回転可能なベルトとしての定着ベルト41と、ニップ形成部材であるパッド部材としての加圧パッド42と、加熱ローラ43と、ステアリングローラ44と、ステイ45とを有している。加熱ユニット40は、上述した各構成要素がユニット側板46によりカートリッジ状に一体化され、筐体31に対して着脱可能に装着される。ユニット側板46は、加熱ユニット40の回転軸線方向の両側部に設けられている。
【0023】
定着ベルト41は、記録材Sに当接して加熱可能であり、熱伝導性や耐熱性等を有する薄肉の円筒形状のベルト部材である。本実施形態においては、定着ベルト41は、基層、基層の外周に弾性層、その外周に離型性層を形成した3層構造である。基層は厚さ60μmで材質はポリイミド樹脂(PI)を用い、弾性層は厚さ300μmでシリコーンゴムを用いている。離型性層は、厚さ30μmで、フッ素樹脂としてのPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。定着ベルト41は、加圧パッド42と、張架ローラの一例である加熱ローラ43と、ステアリングローラ44とによって張架されている。本実施形態では、定着ベルト41の外径は例えば120mmとし、定着ベルト41の回転速度は例えば300mm/sとしている。
【0024】
加圧パッド42は、ステイ45に支持され、定着ベルト41を挟んで加圧ローラ32に押圧されている。ステイ45の材質はステンレスで、ステイ45は回転軸線方向の両端部を定着装置30の筐体31の定着フレーム33によって支持されている。定着ベルト41と加圧ローラ32との当接部により、ニップ部の一例である定着ニップ部Nが形成されている。即ち、加圧パッド42は、定着ベルト41を挟んで加圧ローラ32と対向するように配置されると共に、定着ベルト41と加圧ローラ32との間で定着ニップ部Nを形成させる。尚、回転軸線方向は、定着ニップ部Nを通過した記録材Sの搬送方向に直交する副走査方向である。
【0025】
加圧パッド42の材質は、例えば、LCP(液晶ポリマ)樹脂を用いている。加圧パッド42と定着ベルト41の間には、潤滑シート47を介在させている。潤滑シート47としては、例えば、厚さ100μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)をコーティングしたPI(ポリイミド)シートを用いている。このPIシートには、1mm間隔で100μmの突起形状を形成していて、定着ベルト41との接触面積を減らすことにより摺動抵抗を低減させている。定着ベルト41の内面には潤滑剤を塗布しており、定着ベルト41は加圧パッド42に対して滑らかに摺動するようにしている。
【0026】
潤滑シート47の定着ベルト41との接触面側には、摺動性を向上させるために不図示の潤滑剤が予め塗布されている。本実施形態では、潤滑剤としてオイルを使用している。オイルとしては、耐熱性などの観点からシリコーンオイルが好適に使用され、使用条件に応じて種々の粘度のものが使用されるが、粘度が高すぎるものは塗布時の流動性が劣るため、通常30000cSt以下のものが使用される。オイルの具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0027】
加熱ローラ43は厚み1mmのステンレス製パイプで、その内部に例えばハロゲンヒータからなる加熱手段としての加熱ヒータ48が配設されており、加熱ローラ43を所定の温度、例えば180℃に加熱可能である。定着ベルト41は、加熱ローラ43によって加熱され、サーミスタ49による検知温度に基づき、シート種に応じた所定の目標温度に制御される。サーミスタ49は、加熱ローラ43に接触して配置されている。また、加熱ローラ43は、回転軸線方向の一端部に不図示のギヤが固定されており、ギヤを介して駆動モータM1(図2参照)に接続されて回転駆動される。定着ベルト41は、加熱ローラ43の回転に倣って従動回転する。本実施形態では、加熱ヒータ48は定着ベルト41を加熱可能である場合について説明しているが、これには限られず定着ベルト41及び加圧ローラ32の少なくとも一方を加熱可能とすることができる。
【0028】
ステアリングローラ44は、加熱ユニット40のフレームによって支持された不図示のばねによって付勢されており、定着ベルト41に所定の張力を与えるテンションローラであり、定着ベルト41に対して従動回動する。付勢ばねにより発生される張力は例えば50Nで、定着ベルト41に張力を与えることで、定着ベルト41を加圧パッド42に追従させている。ステアリングローラ44は、外径40mm、厚み1mmのステンレス製パイプで、端部が不図示のベアリングにより回転支持される。
【0029】
図4に示すように、ステアリングローラ44は、加熱ローラ43(図3参照)の回転軸線に対して、ステアリングローラ44の回転軸線A1の姿勢を変更できるようになっている。ステアリングローラ44の端部から回転軸線方向に沿って両側に突出した端部軸44aは、不図示のステアリングアームによって方向Zの向きに揺動される。これにより、ステアリングローラ44は、定着ベルト41の幅方向Wにおける中央部を回動中心としながら、方向Zの向きに姿勢角度を変える。このときの角度変動幅は、例えば約±2°程度である。
【0030】
ステアリングローラ44の姿勢角度が変わることにより、これに張架された定着ベルト41は、幅方向Wに張力差を発生し、幅方向Wに沿って移動する。即ち、ステアリングローラ44は、加熱ローラ43の回転軸線方向に対して傾動することで、定着ベルト41を幅方向に移動可能であり、調整可能である。ステアリングローラ44が方向Z1に姿勢を変えた場合は、定着ベルト41は方向W2に移動し、方向Z2にステアリングローラ44が姿勢を変えた場合は、定着ベルト41は方向W1に移動する。この繰り返しによって、定着ベルト41は幅方向Wについて所定の領域内を往復運動する。なお、端部軸44aを揺動させるステアリングアームは、不図示の駆動源から駆動力を受けることで動作する。この駆動源の制御には、後述する定着ベルト41の幅方向Wにおける位置を検知する検知部による検知結果が使用される。
【0031】
図3に示すように、加圧ローラ32は、定着ベルト41に対向して互いに当接し、定着ベルト41との間で加圧された定着ニップ部Nを形成する。加圧ローラ32は、軸の外周に弾性層を、その外周に離型性層を形成したローラである。この加圧ローラ32では、軸にステンレスを用い、弾性層は厚さ5mmで導電シリコーンゴムを用いている。離型性層は、厚さ50μmで、フッ素樹脂としてのPFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)を用いている。加圧ローラ32は、定着装置30の筐体31の定着フレーム33によって軸支持されており、回転軸線方向の一端部にギヤが固定され、ギヤを介して駆動モータM1(図2参照)に接続されて回転駆動される。
【0032】
定着ベルト41と加圧ローラ32との間に形成される定着ニップ部Nにおいて、トナー画像を担持した記録材S(図1参照)を挟持し、搬送しながらトナー画像を加熱する。このように、定着装置30は、記録材Sを挟持搬送しながら、記録材Sにトナー画像を定着させる。よって、熱や圧力を加えるという機能と、記録材Sを搬送するという機能の両立が必要である。
【0033】
定着フレーム33は、回転軸線方向に関して、筐体31の両側部に固定されて設けられ、それぞれガイド部34と、加圧フレーム35と、加圧ばね36とが設けられている。加熱ユニット40のステイ45は、ガイド部34に挿入され、不図示の押圧部によりガイド部34に押圧されて固定される。ステイ45をガイド部34に固定した後、不図示の駆動源及びカムにより加圧フレーム35が加熱ユニット40の側に移動することで、加圧ローラ32が定着ベルト41を介して加圧パッド42に対して加圧される。画像形成時における加圧ローラ32の加圧パッド42への加圧力は、例えば1000Nとしている。尚、定着フレーム33には、定着ニップ部Nを通過した記録材Sを定着ベルト41から分離する分離ユニット50が揺動可能に軸支されている。
【0034】
ガイド部34は、支持面34aと、位置決め面34bと、摺動面34cとを有している。支持面34aは、加熱ユニット40を挿入する装着方向D1に沿って加圧ローラ32の対向側に形成され、加熱ユニット40が図3に示す装着位置に位置する場合に、定着ベルト41の内周側において定着ベルト41が加圧ローラ32から受けた反力を支持する。位置決め面34bは、ガイド部34の装着方向D1の最奥部に略鉛直に形成され、加熱ユニット40が装着位置に位置する場合に、加熱ユニット40に対して装着方向D1に当接して位置決めする。摺動面34cは、支持面34aに対向して装着方向D1に沿って形成され、加熱ユニット40を挿抜する際にステイ45を摺動させて案内する。ステイ45をガイド部34に挿入することにより加熱ユニット40を装着位置に移動させることができ、ステイ45をガイド部34の外部に取り出すことにより加熱ユニット40を筐体31から取り外すことができる。
【0035】
[塗布部材]
加熱ユニット40は、定着ベルト41の内側面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段の一例である塗布部材51を有している。塗布部材51は、加圧パッド42と加熱ローラ43との間に配置され、定着ベルト41の内側面に当接している。塗布部材51は、不図示の付勢部材によって定着ベルト41の内側面に付勢された状態で当接している。なお、本実施形態では、塗布部材51を回転体とした場合について説明したが、これには限られず、非回転体であってもよい。また、本実施形態では塗布部材51は不図示の付勢部材によって定着ベルト41の内側面に付勢される場合について説明したが、これには限られず、塗布部材51を定着ベルト41の内側面に当接する位置に固定してもよい。
【0036】
塗布部材51は、ユニット側板46により回転可能に支持された軸部52と、軸部52の外周に設けられた潤滑剤保持層53とを有している。軸部52を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、真鍮などが挙げられる。潤滑剤保持層53は、塗布する潤滑剤を含浸して保持する層であり、この層に含浸された潤滑剤が滲出して定着ベルト41の内側面に塗布される。潤滑剤保持層53の素材としては、多孔質材料や繊維材料が用いられる。含浸する潤滑剤の量は、本実施形態では例えば3.6gとしている。
【0037】
[検知部]
定着ベルト41の回転方向R2に関して、塗布部材51と加圧パッド42との間には、定着ベルト41の幅方向Wへの移動を検知する検知部54が設けられている。検知部54は、移動部材の一例である検知アーム60と、フラグ部材70と、検知手段の一例である検知センサ80とを有している。本実施形態では、検知部54は、定着ベルト41の幅方向Wの片側だけに設けられている。但し、両側に設けられていてもよい。
【0038】
図5図7に示すように、検知アーム60は、定着ベルト41の幅方向Wに関して定着ベルト41の端面41aに軽圧で接触し、定着ベルト41の幅方向Wへの移動に応じて移動する。即ち、検知アーム60は、定着ベルト41の幅方向Wにおける位置に連動して揺動する。本実施形態では、検知アーム60は、定着ベルト41の回転方向R2に関して、塗布部材51の上流側、かつ、加圧パッド42の下流側に設けられている(図3参照)。但し、検知アーム60の設置位置はこれには限られず、定着ベルト41の端面41aに接触する位置であれば他の位置であってもよい。
【0039】
図5に、検知アーム60が定着ベルト41の端面41aに接触している箇所の概略の斜視図を示す。検知アーム60は、定着ベルト41の端面41aに接触する接触部61と、揺動孔62と、係合ピン63とを有している。検知アーム60は、揺動孔62が不図示の軸部材に嵌合した状態で、加熱ユニット40に揺動中心C1を中心に揺動可能に支持されている(図7参照)。本実施形態では、検知アーム60は、上下方向を揺動中心方向として揺動可能に設けられている。
【0040】
また、加熱ユニット40には、検知アーム60を定着ベルト41の端面41aに向けて付勢する付勢手段の一例である付勢ばね64が設けられている。検知アーム60は付勢ばね64によって、方向X1に揺動するよう付勢されている。検知アーム60に設けられた接触部61は、付勢ばね64の付勢力により、定着ベルト41の幅方向Wにおける移動を阻害しない程度の軽圧で、定着ベルト41の端面41aに接触している。本実施形態では、この圧を1gf程度としている。付勢ばね64の付勢により、接触部61は、定着ベルト41の端面41aに接触した状態を維持でき、定着ベルト41の幅方向Wへの移動に追従することができる。
【0041】
フラグ部材70は、検知アーム60の係合ピン63に係合する係合溝71と、揺動孔72と、遮光部73とを有している。フラグ部材70は、揺動孔72が不図示の軸部材に嵌合した状態で、加熱ユニット40に揺動中心C2を中心に揺動可能に支持されている。本実施形態では、フラグ部材70は、上下方向を揺動中心方向として揺動可能に設けられている。また、係合溝71に係合ピン63が係合しているので、フラグ部材70は、検知アーム60の揺動に連動して揺動する。
【0042】
検知センサ80は、遮光部73の近傍に設けられ、複数の光学式センサ81,82,83を有している。各光学式センサ81,82,83は、構成は同様であるので、以下では検知センサ80として表記する。検知センサ80は投光部と受光部とを有しており、投光部から受光部に向けて、例えば赤外線などの光を投光している。受光部に光が到達した場合、検知センサ80はオン信号を返し、光が遮光されて受光部に到達しなかった場合、検知センサ80はオフ信号を返す。フラグ部材70の遮光部73は、検知センサ80の赤外線を選択的に遮光あるいは透光するように位置しており、フラグ部材70の姿勢角度が変化して、遮光部73が移動すると、検知センサ80のそれぞれが返す信号のオンオフも変化するようになっている。その信号の組み合わせによって、フラグ部材70の姿勢、ひいては検知アーム60の姿勢や移動を検知できるようになっている。尚、本実施形態では、検知アーム60とフラグ部材70とが別部材である場合について説明したが、これには限られず、同一部材であってもよい。また、本実施形態では検知センサ80として光学式センサ81,82,83を3つ設けた場合について説明したが、これには限られず、3つ以外の個数であってもよい。
【0043】
[突出部]
次に、検知アーム60の突出部65の構成と、定着ベルト41の内部に塗布された潤滑剤の検知アーム60からの漏出対策について、図5図7を用いて説明する。図5に示すように、検知アーム60には、突出部65が形成されている。突出部65は、接触部61に連続して形成されると共に、定着ベルト41の内周側に突出して設けられている。図6及び図7に示すように、突出部65は、接触部61よりも幅方向Wに関して定着ベルト41側(ベルト側)、かつ、接触部61よりも重力方向Gの下側に位置する先端部66を有している。即ち、定着ベルト41の端面41aよりも、幅方向Wについて中央へ先端部66が向かうように突出している。先端部66は、突出部65の中で最も下側に位置している。
【0044】
本実施形態では、突出部65は、第1傾斜部65aと第2傾斜部65bとを有している。第1傾斜部65aは、接触部61に連続して幅方向Wに交差する方向に向けて下方に傾斜した形状を有している。第2傾斜部65bは、第1傾斜部65aの下端部に連続して定着ベルト41の内周側に向けて下方に傾斜した形状を有し、先端に先端部66が形成されている。尚、突出部65の形状はこれには限られないが、接触部61に連続すると共に、接触部61から先端部66に亘って全域で下方に傾斜し、かつ、先端部66が定着ベルト41の内側面によって囲まれる空間内に内包された形状であるようにする。
【0045】
定着ベルト41が加熱ローラ43によって回転駆動されると、暫く走行するにつれ、定着ベルト41の内側面の余剰潤滑剤が端面41aまで達し、端面41aに接触している検知アーム60の接触部61に付着する。付着した潤滑剤は、潤滑剤の粘性で接触部61との接触を保ちながら、検知アーム60の表面を重力方向Gの下方に伝わって流動していく。突出部65は接触部61と連続して形成されており、接触部61よりも重力方向Gについて下部に位置するため、検知アーム60に付着した潤滑剤は、突出部65の第1傾斜部65aに沿って下方に誘導される。
【0046】
図6は、検知アーム60の突出部65付近の拡大図である。図6に示すように、突出部65の第2傾斜部65bは幅方向Wに水平ではなく、先端部66側を重力方向Gの下向きに向けて僅かに傾斜している。したがって、突出部65の第2傾斜部65bに誘導された潤滑剤は、突出部65の先端部66に向かって更に誘導されたのち、先端部66に到達したところで流動する先を失い、最終的にはそこから重力によって滴下する。このとき、突出部65の先端部66は定着ベルト41の内側面によって囲まれる空間内に内包されているため、滴下した潤滑剤は定着ベルト41の内側面に再付着する。即ち、突出部65は、定着ベルト41の端面41aから接触部61に付着した潤滑剤が伝わって先端部か66ら定着ベルト41の内側面に滴下する形状を有している。
【0047】
突出部65の先端部66は、検知アーム60がどの姿勢角度にある状態でも、定着ベルト41の端面41aより幅方向Wについて中央側へ入っている必要がある。また、突出部65の先端部66から、定着ベルト41の端面41aまでの幅方向Wについての距離L(図7参照)は、定着ベルト41が方向W2の向きに移動するとき、即ち、検知アーム60が方向X2に揺動するときに減少する。これに対し、本実施形態では、距離Lが常に2mm以上になるように、制御部20は定着ベルト41の往復運動を制御している。
【0048】
上述したように、本実施形態の定着装置30では、検知アーム60は、接触部61に連続すると共に定着ベルト41の内周側に突出する突出部65を有する。また、突出部65は、接触部61よりも幅方向Wに関して定着ベルト41側、かつ、接触部61よりも下側に位置する先端部66を有する。このため、定着ベルト41の端面41aから接触部61に付着した潤滑剤は、突出部65を伝わって先端部66から定着ベルト41の内側面に滴下する。従って、検知アーム60に付着した潤滑剤は、接触部61及び突出部65以外の部分を伝搬することなく、定着ベルト41の内側面に再付着するように誘導されるので、潤滑剤が検知アーム60を伝わって定着ベルト41の内側面から漏出することを抑制できる。
【0049】
このため、定着ベルト41から拡散した潤滑剤が検知アーム60に隣接する部材を汚染してしまう虞や、画像を汚染してしまう虞を抑制することができる。また、潤滑剤が定着ベルト41の内側面へ再供給されるため、定着ベルト41の内側面の潤滑剤の総量が減少することを抑制でき、定着ベルト41の内側面の摺動性が良好に保たれ、定着ベルト41の寿命を向上させることができる。
【0050】
尚、上述した本実施形態の定着装置30では、ベルトは定着ベルト41であり、回転体は加圧ローラ32である場合について説明したが、これには限られない。例えば、ベルトは加圧ベルトであってもよく、回転体は定着ベルト又は定着ローラであってもよい。いずれの場合も、ベルトに関して本発明を適用することができる。
【0051】
また、上述した本実施形態の定着装置30では、検知アーム60を、上下方向を揺動中心方向として揺動可能に設けた場合について説明したが、これには限られない。例えば、水平方向や傾斜した方向を揺動中心方向として揺動可能に設けてもよく、定着ベルト41の傾斜角度に応じて適宜設定することができる。
【0052】
また、上述した本実施形態の定着装置30では、加圧パッド42を設けた場合について説明したが、これには限られず、例えばパッドではなくローラ等であっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
30…定着装置、32…加圧ローラ(回転体)、41…定着ベルト(ベルト)、41a…端面、42…加圧パッド(パッド部材)、43…加熱ローラ(張架ローラ)、44…ステアリングローラ、51…塗布部材(潤滑剤塗布手段)、60…検知アーム(移動部材)、61…接触部、64…付勢ばね(付勢手段)、65…突出部、65a…第1傾斜部、65b…第2傾斜部、66…先端部、80…検知センサ(検知手段)、…定着ニップ部(ニップ部)、R2…回転方向、S…記録材、W…幅方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7